JP3809372B2 - 可搬式多彩塗装装置及びそれに用いる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装技術に属するものであり、特に塗装作業者が塗装現場に出向いて被塗物の塗装を行うのに適する可搬式多彩塗装装置及びそれに用いる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、多彩色模様を形成する多彩色塗装を行う際には、各色ごとに塗料供給系及び塗装ガンの組を独立に用いて、各色ごとに適宜のパターンで順次塗装を行って塗り継いだり、或る色の塗料を全面に塗装し、次いでその上に部分的に別の色の塗料を塗装するのが一般的であった。また、被塗物の表面が凹凸状の場合には、各色ごとに適宜のパターンで順次塗装を行って塗り重ね、次いで凸部を拭き取ったり、または、或る色の塗料を全面に塗装し、次いで凸部のみに別の色の塗料をロールコーター塗装するなど、被塗物表面の凹凸形状を利用してそれに対応する模様の多彩色塗装を行うことも行われていた。
【0003】
しかしながら、上記の被塗物表面の凹凸形状を利用した従来の多彩色塗装は、被塗物表面の凹凸形状に対応した模様しか形成できないので意匠上の制約が大きく、更に被塗物表面の凹凸形状に対応して部分的に塗膜の厚さが異なるので塗膜性能の十分な向上が困難であるという難点がある。
【0004】
また、上記の複数の塗装ガンを用いる従来の多彩色塗装は、各塗装ガンへ駆動配線及びエアー配管などを独立に接続するので、装置が大がかりになる。このため、主として量産工場において、各色の塗装ガンを固定し又は適宜揺動又は往復移動させ、被塗物をコンベアなどで移動させながら、各色の塗装ガンにより各色塗料を塗布することでなされていた。
【0005】
一方、各色の境界が鮮明でなく且つ色彩が徐々に変化するような多様で自然感のある多彩色塗膜が要望されるにつれて、このような多彩色塗装を行うための塗装装置として、実公平7−208号公報や実用新案登録第2510411号公報に記載されているように、複数の塗料供給系のそれぞれを各色塗料の吐出のための塗装ガンに接続するのではなく、合流させて1つの塗装ガンへと供給し、各色塗料供給系から合流部へ供給される塗料を適宜切り替えて、1つの塗装ガンから連続的に吐出せしめられる塗料の色を適宜切り替えるようにしたものが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記公報に記載の塗装装置においては、複数の塗料供給系のそれぞれが塗料供給を駆動するためのポンプを備えており、この複数のポンプへの駆動配線及びエアー配管などを独立に接続するので、装置が大がかりになる。このため、主として量産工場において、塗装ガンを固定し又は適宜揺動又は往復移動させ、被塗物をコンベアなどで移動させながら塗装するのに利用されている。
【0007】
以上のように、従来の多彩色塗装のための塗装装置は、主として大量生産される化粧板などを製造するために、工場に設置されているのが一般的であった。
【0008】
しかるに、近年、工場以外の種々の塗装現場においても、各色の境界が鮮明でなく且つ色彩が徐々に変化するような多様で自然感のある多彩色塗膜を、単色塗装のように手軽に行うことが要望されている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、以上のような技術的課題を解決すべく、小型で可搬式の多彩塗装装置を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の他の目的は、以上のような可搬式多彩塗装装置に好適に用いられる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
複数の塗料供給系と該塗料供給系に接続された複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンとを有する可搬式多彩塗装装置であって、
前記複数の塗料供給系のそれぞれは塗料供給駆動部と該塗料供給駆動部の出口側に位置するリリーフバルブとを備えており、前記複数の塗料供給系の塗料供給駆動部は共通の駆動手段により駆動され、該駆動手段及び前記塗料供給駆動部は台に搭載されており、
前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは、前記塗料供給系のそれぞれに個別に接続された複数の塗料流通管と、該複数の塗料流通管に接続された塗料吐出口と、前記複数の塗料流通管のそれぞれに付設され塗料流通のON/OFFを制御する弁と、該弁の動作を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする可搬式多彩塗装装置、
が提供される。
【0012】
本発明の一態様においては、前記駆動手段はポンプである。本発明の一態様においては、前記ポンプはエアー駆動ポンプであり、前記ポンプにはエアー源が接続されている。本発明の一態様においては、前記塗料供給駆動部は往復動シリンダである。本発明の一態様においては、前記台は台車である。
【0013】
本発明の一態様においては、前記弁は電磁弁である。本発明の一態様においては、前記複数の塗料流通管は前記塗料吐出口の近傍の合流部を介して前記塗料吐出口に接続されている。
【0014】
本発明の一態様においては、前記制御手段は前記弁のそれぞれの開放時間を設定するためのタイマを備えている。本発明の一態様においては、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記タイマにより設定される前記弁の開放時間を調整するための調整手段を備えている。本発明の一態様においては、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記制御手段の動作のON/OFFの制御のためのスイッチを備えている。
【0015】
本発明の一態様においては、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンには前記制御手段への給電のためのバッテリが接続されており、該バッテリは前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンのグリップ内に具備されるか又は携帯のための装着具に収納されている。本発明の一態様においては、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記制御手段への給電のための乾式電池を内蔵している。
【0016】
本発明の一態様においては、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンはエアーラップ塗装ガンであり、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンにはエアー源が接続されている。
【0017】
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、以上のような可搬式多彩塗装装置に使用されている前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンが提供され、特に、
複数の塗料供給系に接続される複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンであって、前記塗料供給系のそれぞれに個別に接続される複数の塗料流通管と、該複数の塗料流通管に接続された塗料吐出口と、該塗料吐出口と前記複数の塗料流通管との間であって前記塗料吐出口の近傍に介在する合流部と、前記複数の塗料流通管のそれぞれに付設され塗料流通のON/OFFを制御する電磁弁と、該電磁弁の動作を制御する制御手段と、該制御手段への給電手段と、前記制御手段の動作のON/OFFの制御のためのスイッチとを備えており、
前記制御手段は前記電磁弁のそれぞれを予め決められた順にそれぞれ0.05秒〜2.0秒の範囲内の予め決められた時間開放するものであることを特徴とする複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン、
が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本発明による可搬式多彩塗装装置及びそれに用いる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンの一実施形態の構成を示す模式図である。また、図2及び図3は本実施形態の塗料供給系の具体的構造の一部を示す部分正面図及び部分断面図である。
【0020】
図1において、1A,1B,1Cは互いに色の異なる塗料を供給する塗料供給系であり、供給系1A,1B,1CはそれぞれA色塗料、B色塗料及びC色塗料を供給する。尚、3つの塗料供給系1A,1B,1Cを一括して塗料供給系1として示している。2は塗料供給系1A,1B,1Cに接続された1つの複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンである。また、図1において、3は複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2を操作して塗装作業を行う塗装作業者を示し、4は複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2により多彩色塗装の施される被塗物たる壁面である。
【0021】
塗料供給系1Aは、塗料吸引管11Aと、塗料供給管12Aと、これら塗料吸引管11A及び塗料供給管12Aの間に介在し塗料供給駆動部を構成する往復動シリンダ13Aとを有する。塗料吸引管11Aの往復動シリンダ13Aとの接続側の端部と反対側の端部には吸引フィルタ14Aが付されており、この端部はA色塗料タンク15A内のA色塗料16A中に浸漬される。塗料供給管12Aの往復動シリンダ13Aとの接続側の端部と反対側の端部に、上記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2が接続されている。また、往復動シリンダ13Aの塗料出口側にはリリーフバルブ17Aを介して塗料戻り管30Aが接続されており、塗料供給管12A内の圧力が高くなりすぎると、リリーフバルブ17Aの作用によりA色塗料は塗料戻り管30Aを介してA色塗料タンク15Aへと戻される。
【0022】
塗料供給系1B及び塗料供給系1Cは、塗料供給系1Aと類似の構成を有しており、塗料供給系1Aにおけるものと対応する部材には識別符号Aに代えてそれぞれ識別符号Bまたは識別符号Cを使用することを除いて同一の符号を以て示されている。尚、塗料タンク15B及び塗料タンク15Cには、それぞれB色塗料16B及びC色塗料16Cが収容されている。塗料供給管12A,12B,12Cを一括して塗料供給管12として示している。
【0023】
図1及び図2において、17は塗料供給駆動部に対する共通の駆動手段としてのエアー駆動ポンプであり、該ポンプ17の往復駆動部材17’は3つに分岐されており、これら3つの分岐部分が、上記往復動シリンダ13A,13B,13C内の往復動プランジャに接続されている。従って、ポンプ17を作動させることにより、各塗料供給系1A,1B,1Cの往復動シリンダ13A,13B,13Cを同時に駆動することができる。各往復動シリンダ13A,13B,13C内では、プランジャの往復移動に伴って、図3に示されるリリーフバルブ17Aの作用により、塗料吸引管11A,11B,11Cの側から塗料供給管12A,12B,12Cの側へと塗料を移送する圧力が生ぜしめられる。なお、図3に示されている開閉弁32は、塗装装置の作動時には開いている。
【0024】
上記のように、各往復動シリンダ13A,13B,13Cの塗料出口側にはそれぞれリリーフバルブ17A,17B,17Cを介して塗料戻り管30A,30B,30Cが接続されているので、各塗料供給系1A,1B,1Cにて塗料供給管12A,12B,12Cから複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2へと供給すべき各色塗料の量(即ち、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の側で設定される各色塗料の所要量)がそれぞれ各往復動シリンダ13A,13B,13Cからの各色塗料の吐出量と異なっていても、過剰量の各色塗料はリリーフバルブ17A,17B,17Cを介して塗料戻り管30A,30B,30Cから塗料タンク15A,15B,15Cへと戻されるので、ポンプ17を連続的に作動させながら複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2からの各色塗料の吐出量を互いに独立に適宜変化させることができる。
【0025】
ポンプ17及びシリンダ13A,13B,13Cは、台車18に搭載されており、所要の場所へと容易に移動させることができる。但し、台車18に代えて車輪を有しない可搬性のある単なる枠体等の台を使用することも可能である。
【0026】
図1に示されているように、ポンプ17にはエアー配管19を介して駆動エアー源5が接続されている。
【0027】
図4は上記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の具体的構造を示す縦断面図であり、図5はその横断面図である。複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の先端部付近には、上記塗料供給系1A,1B,1Cの塗料供給管12A,12B,12Cとそれぞれ個別に接続された塗料流通管21A,21B,21Cが形成されている。これらの塗料流通管21A,21B,21Cは、塗料供給管12A,12B,12Cとの接続部側の端部から上方へと延びた互いに平行な第1部分21A1,21B1,21C1と、それらの上端から水平方向に延びた互いに平行な第2部分21A2,21B2,21C2とを有する。尚、塗料供給管12A,12Cは、それらの符号が図示されていないが、塗料供給管12Bと同様な構成を有している。また、第1部分21A1,21C1は、それらの符号が図示されていないが、第1部分21B1と同様な構成を有している。第2部分21A2,21B2,21C2の端部(第1部分の側と反対の側の端部)は、合流部分21’を介して1つの塗料吐出口20に接続されている。合流部分21’は、塗料吐出口20の近傍に位置している。
【0028】
塗料流通管21A,21B,21Cの第1部分21A1,21B1,21C1と第2部分21A2,21B2,21C2との間には、当該塗料流通管内の塗料流通のON/OFFを制御する電磁弁22A,22B,22Cが配置されている。
【0029】
複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2は、電磁弁22A,22B,22Cの動作(即ち弁の開放)をそれぞれ制御する制御手段を構成するタイマを備えている。該タイマは、それぞれ電磁弁22A,22B,22Cの動作時間(即ち弁の開放時間)を設定する。該タイマには、設定される弁開放時間を調整するための調整手段が設けられている。制御手段は、更に電磁弁22A,22B,22Cの動作順序(即ち弁の開放順序)を設定する不図示の制御部を有する。該制御部には予め電磁弁22A,22B,22Cの開放順序が設定されるが、この設定を手動操作により適宜変更することが可能なようにすることもできる。この制御部としては、マイクロコンピュータを利用することも可能である。
【0030】
複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2は、その把手部分に、上記制御手段の動作のON/OFFの制御のためのスイッチ26を備えている。図1に示されているように、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2には、制御手段への給電のためのバッテリ6が接続されており、該バッテリ6は携帯のための装着具に収納されており、該装着具は塗装作業者3が腰に巻いて又は肩に掛けて装着する。これにより、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2が軽量化され、塗装作業の一層の効率化が可能である。バッテリ6と制御手段とは、スイッチ26を介して給電コード27により接続されている。該スイッチ26を手指で押すことで、制御手段が動作し、電磁弁22A,22B,22Cの所定の順序及び時間での開放が順次繰り返される。尚、給電手段としては、バッテリ6に代えて乾式電池を使用することも可能であり、特に該乾式電池を複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンに内蔵させることも可能である。また、バッテリを複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンのグリップ内に具備させることも可能である。
【0031】
複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2は、エアーラップ塗装ガンであり、図4及び図5に示されているように、吐出口20の周囲には吐出塗料の吐出パターンを調整するために吐出されるラップエアーのための出口20’が形成されている。このエアー出口20’へとエアーを供給するため、図1にも示されているように、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2はエアー配管28を介して駆動エアー源5に接続されている。図4に示されているように、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2内には、エアー配管28と接続されたエアー通路29が形成されており、該エアー通路29は上記ラップエアー出口20’と接続されている。吐出口20から吐出される塗料は、エアー出口20’から吐出されるエアーにより包囲されており、この包囲エアーの吐出の形態を調節するために、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の先端に所要の開口を有するエアーキャップ34が配置されている。このキャップ34は、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の本体に対してネジ込みにより相対回転可能なように適合させることができ、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン本体に対するネジ込み回転角を適宜調節することで所望のラップエアー吐出形態を実現し、所要の塗料吐出パターンを得ることができる。
【0032】
以上のような本実施形態の可搬式多彩色塗装装置の使用に際しては、1A,1B,1Cからなる塗料供給系1の全体、及び複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2、バッテリ6及び給電コード27を台車18に搭載して、所望の被塗物4の前へと搬送する。ポンプ17を1つしか使用しないことで、台車18に搭載される全部材の重量の合計が低減されており、従って、台車18の移動は人手により容易に実行することができる。
【0033】
駆動エアー源5に接続されたエアー配管19,28を塗装装置の近傍まで導き、該エアー配管19,28の先端をそれぞれポンプ17及び複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2のエアー通路29と接続する。ポンプ17が作動せしめられることで、3つのシリンダ13A,13B,13C内のプランジャが同時に上下動を開始し、塗料タンク15A,15B,15C内のA,B,C色の塗料16A,16B,16Cの塗料供給管12A,12B,12Cへの供給が開始される。
【0034】
塗装作業者3は、バッテリ6を収納した装着具を装着し、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2を手でつかみ被塗物4に向け、スイッチ26を押しながら、被塗物4に対する走査を行う。スイッチ26を押すことで、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の制御部が動作し、予め定められた順序でタイマに予め設定された時間だけ電磁弁22A,22B,22Cを開放する。図6に、制御部の動作のON/OFF及び電磁弁22A,22B,22Cの動作のON/OFFのタイムチャートを示す。複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の制御部が動作している限り、以上のような順序での電磁弁22A,22B,22Cの開放が繰り返される。タイマにより設定される時間は、それぞれTA,TB,TCである。これらの時間は、例えば0.05秒〜2.0秒とすることができ、具体例としてはTA=0.2秒,TB=0.1秒,TC=0.3秒である。電磁弁22AがOFFにされると同時に電磁弁22BがONされ、電磁弁22BがOFFにされると同時に電磁弁22CがONされるようにすることができるが、これに限定されることはない。例えば、制御部にマイクロコンピュータを用いた場合には、そのプログラムを適宜設定しておくことで、電磁弁22AがOFFにされる僅か[例えば0.05秒〜0.5秒]前(または後)に電磁弁22BがONされ、同様に電磁弁22BがOFFにされる僅か前(または後)に電磁弁22CがONされるようにしてもよい。
【0035】
タイマにより設定される時間TA,TB,TC及び電磁弁22A,22B,22Cの開放の順序は、上記のように塗装作業者3が適宜設定することができる。また、制御部にマイクロコンピュータを用いた場合には、そのプログラムを適宜設定しておくことで、電磁弁22A,22B,22Cの開放の順序をランダムに設定することも可能であり、また、タイマ25A,25B,25Cに代えて適宜のメモリを使用することも可能である。
【0036】
以上のようにして複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2から塗料を吐出させることで、電磁弁22AがONされている時には主としてA色塗料が吐出され、電磁弁22BがONされている時には主としてB色塗料が吐出され、電磁弁22CがONされている時には主としてC色塗料が吐出される。しかし、A色塗料からB色塗料への切り替えの際や、B色塗料からC色塗料への切り替えの際や、C色塗料からA色塗料への切り替えの際に形成された塗膜の色切り替え部分は境界が不鮮明な(即ちグラデーションがかかった)自然感のあるものとなる。このような作用は、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2内の塗料流通管21A,21B,21Cに連なる合流部21’での色切り替えの際の過渡的な異色塗料の混合に基づくものである。即ち、色切り替えの際に、吐出停止された色の塗料は合流部21’に近接する塗料流通管第2部分21A2,21B2,21C2に存在するので、これが新たに吐出される色の塗料と混合せしめられるのであり、それらの比率が次第に変化するからであると考えられる。尚、合流部21’の容積を大きくして混合室を形成することも可能である。
【0037】
また、以上のような色切り替えによる境界が不鮮明な自然感のある塗膜の形成に連続して、電磁弁22A,22B,22CのON−OFFを適宜制御し、いずれか1つの電磁弁のみを所望時間ONして1色の塗料のみの吐出を所望時間継続したり、又は複数の電磁弁を同時に所望時間ONして複数の色の混合塗料の吐出を所望時間継続したりすることが可能である。もちろん、それに連続して、以上のような色切り替えによる境界が不鮮明な自然感のある塗膜の形成に復帰することが可能である。
【0038】
尚、電磁弁22A,22B,22CのうちのOFF状態のものに対応する塗料供給系1A,1B,1Cでは、塗料供給管12A,12B,12C内の圧力が高くなり、塗料は塗料供給管12A,12B,12Cには供給されずにリリーフバルブ17A,17B,17Cの作用により塗料戻り管30A,30B,30Cを介して塗料タンク15A,15B,15Cへと戻される。
【0039】
本実施形態の可搬式多彩塗装装置及びそれに用いる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは、所要の塗装現場に容易に搬送することができ、更に、被塗物が床のように上向き面であるものに限らず、壁や天井などの横向きまたは下向きの面に対しても自由に、また、これら互いに異なる向きの面に対して連続して、多彩塗装を行うことができる。
【0040】
以上の実施形態では複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2としてエアーラップ塗装ガンが使用されているが、本発明では複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンとしてその他のエアアシストガン、エアスプレーガン、エアレススプレーガンなどを使用することも可能である。
【0041】
本発明の可搬式多彩塗装装置での塗装に使用される複数の塗料の組み合わせとしては、色の異なるエナメルどうしの組み合わせ、エナメルとクリヤーとの組み合わせ、色の異なるカラークリヤーどうしの組み合わせ、パール含有の有るものと無いものとの組み合わせなど、多岐にわたる組み合わせが可能である。即ち、本発明でいう多彩塗装とは、必ずしも色の異なる塗料を用いる多彩色塗装に限定されず、視覚的に認識し得るグラデーションを形成し得るものであればよい。
【0042】
また、以上の実施形態では3種類の塗料を用いた塗装がなされており、これによれば、手持ちされる複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2の重量を大きくすることなくかなりの程度の多彩性が得られるので好ましい。しかしながら、本発明の可搬式多彩塗装装置は4種類以上の塗料を用いた塗装にも適用することができ、その場合複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン2を構成する部材として低比重のものを用いるなどの複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン重量低減策を講ずるのが好ましい。また、それほど高い程度の多彩性が要求されない場合には、本発明の可搬式多彩塗装装置を2種類の塗料を用いた塗装に適用することもできる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数の塗料供給系のそれぞれに備えた塗料供給駆動部を共通の駆動手段により駆動し、塗料供給駆動部の出口側にリリーフバルブを備えておき、これらの駆動手段及び塗料供給駆動部を台に搭載し、複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンとして、塗料供給系のそれぞれに個別に接続された塗料流通管と、塗料吐出口と、塗料流通のON/OFF制御弁と、その制御手段とを備えるものを用いることで、小型で可搬式で、多彩な自然感のある多彩塗装の可能な塗装装置が提供され、更にそれに使用される上記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による可搬式多彩塗装装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明による可搬式多彩塗装装置の塗料供給系の具体的構造の一部を示す部分正面図である。
【図3】本発明による可搬式多彩塗装装置の塗料供給系の具体的構造の一部を示す部分断面図である。
【図4】本発明による可搬式多彩塗装装置の複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンの具体的構造を示す縦断面図である。
【図5】本発明による可搬式多彩塗装装置の複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンの具体的構造を示す横断面図である。
【図6】本発明による可搬式多彩塗装装置の複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンの動作のON/OFFのタイムチャートである。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C 塗料供給系
2 複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン(手持ち塗装ガン)
3 塗装作業者
4 被塗物壁面
5 駆動エアー源
6 バッテリ
11A,11B,11C 塗料吸引管
12,12A,12B,12C 塗料供給管
13A,13B,13C シリンダ
14A,14B,14C 吸引フィルタ
15A,15B,15C 塗料タンク
16A,16B,16C 塗料
17 ポンプ
17’ 往復駆動部材
17A,17B,17C リリーフバルブ
18 台車
19 エアー配管
20 塗料吐出口
20’ ラップエアー出口
21A,21B,21C 塗料流通管
21A1,21B1,21C1 塗料流通管第1部分
21A2,21B2,21C2 塗料流通管第2部分
21’ 合流部分
22A,22B,22C 電磁弁
26 スイッチ
27 給電コード
28 エアー配管
29 エアー通路
30A,30B,30C 塗料戻り管
32 開閉弁
34 エアーキャップ

Claims (15)

  1. 複数の塗料供給系と該塗料供給系に接続された複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンとを有する可搬式多彩塗装装置であって、
    前記複数の塗料供給系のそれぞれは塗料供給駆動部と該塗料供給駆動部の出口側に位置するリリーフバルブとを備えており、前記複数の塗料供給系の塗料供給駆動部は共通の駆動手段により駆動され、該駆動手段及び前記塗料供給駆動部は台に搭載されており、
    前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは、前記塗料供給系のそれぞれに個別に接続された複数の塗料流通管と、該複数の塗料流通管に接続された塗料吐出口と、前記複数の塗料流通管のそれぞれに付設され塗料流通のON/OFFを制御する弁と、該弁の動作を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする可搬式多彩塗装装置。
  2. 前記駆動手段はポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の可搬式多彩塗装装置。
  3. 前記ポンプはエアー駆動ポンプであり、前記ポンプにはエアー源が接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の可搬式多彩塗装装置。
  4. 前記塗料供給駆動部は往復動シリンダであることを特徴とする、請求項2〜3のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  5. 前記台は台車であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  6. 前記弁は電磁弁であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  7. 前記複数の塗料流通管は前記塗料吐出口の近傍の合流部を介して前記塗料吐出口に接続されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  8. 前記制御手段は前記弁のそれぞれの開放時間を設定するためのタイマを備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  9. 前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記タイマにより設定される前記弁の開放時間を調整するための調整手段を備えていることを特徴とする、請求項8に記載の可搬式多彩塗装装置。
  10. 前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記制御手段の動作のON/OFFの制御のためのスイッチを備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  11. 前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンには前記制御手段への給電のためのバッテリが接続されており、該バッテリは前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンのグリップ内に具備されるか又は携帯のための装着具に収納されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  12. 前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンは前記制御手段への給電のための乾式電池を内蔵していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  13. 前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンはエアーラップ塗装ガンであり、前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンにはエアー源が接続されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の可搬式多彩塗装装置に使用されている前記複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン。
  15. 複数の塗料供給系に接続される複数バルブ内蔵ハンドスプレーガンであって、
    前記塗料供給系のそれぞれに個別に接続される複数の塗料流通管と、該複数の塗料流通管に接続された塗料吐出口と、該塗料吐出口と前記複数の塗料流通管との間であって前記塗料吐出口の近傍に介在する合流部と、前記複数の塗料流通管のそれぞれに付設され塗料流通のON/OFFを制御する電磁弁と、該電磁弁の動作を制御する制御手段と、該制御手段への給電手段と、前記制御手段の動作のON/OFFの制御のためのスイッチとを備えており、
    前記制御手段は前記電磁弁のそれぞれを予め決められた順にそれぞれ0.05秒〜2.0秒の範囲内の予め決められた時間開放するものであることを特徴とする複数バルブ内蔵ハンドスプレーガン。
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