JP3808228B2 - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的特性、電気的特性、摺動特性に優れたフェノール樹脂成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、4フッ化エチレン樹脂やグラファイトといった摺動特性に優れる物質を配合したフェノール樹脂成形材料を成形して得られる成形部品は、摺動性に優れ、機構部品として使用されてきた。そして、使用される部品の強度の向上志向から、より一層の高強度化の要求が高まり、さらに電気絶縁性にも優れた材料が望まれてきた。
【0003】
ところで、ガラス繊維を高充填した高強度のフェノール樹脂成形材料は、上市されてはいるが、摺動特性に問題がある。すなわち、ガラス繊維を高充填することで、機械的強度は向上するものの、摺動特性が低下するため、機械的強度と摺動特性を両立させることは大変困難であった。また、4フッ化エチレン樹脂やグラファイトを配合したフェノール樹脂成形材料は、摺動特性は向上するものの、機械的強度の低下が著しく、特にグラファイトを配合したものについては電気絶縁性も低下するため、前述の要求に応えるのは難しい現状であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、高い機械的強度を保持し、電気絶縁性が良好で、かつ摺動特性に優れたフェノール樹脂成形材料を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、重量平均分子量30,000〜40,000で、脱水工程を省略した初期縮合物であるフェノールノボラック樹脂、4フッ化エチレン樹脂微粉末とともに二硫化モリブデン微粉末を特定量配合することによって、機械的強度、電気絶縁性および摺動特性に優れた成形材料が得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0006】
即ち、本発明は、重量平均分子量30,000〜40,000で、脱水工程を省略した初期縮合物であるフェノールノボラック樹脂、4フッ化エチレン樹脂微粉末および二硫化モリブデン微粉末を必須成分とし、全体の成形材料に対して、上記フェノールノボラック樹脂を30〜70重量%、上記4フッ化エチレン樹脂微粉末を10〜30重量%、上記二硫化モリブデン微粉末を0.1〜10重量%の割合で含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料である。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いるノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類、または糖密、リグニン、キシレン、ナフタレン、石油系芳香族炭化水素による変性フェノール類に対して、ホルマリン、パラホルム等のアルデヒド類を0.85〜0.90のモル比に配合し、蓚酸等の酸性触媒下で反応させた重量平均分子量10,000〜50,000好ましくは30,000〜40,000のフェノールノボラック樹脂であり、これを脱水工程を省略した初期縮合物の状態で成形材料配合に用いる。このフェノール樹脂の樹脂分配合割合は、成形材料全体に対して0.1〜70重量%含有するように配合することが望ましく、より望ましくは30〜60重量%である。この割合が0.1重量%未満では、機械的強度、電気的特性を向上させる効果はなく、また、70重量%を超えると、成形材料を乾式法で製造することが困難となり好ましくない。このフェノールノボラック樹脂の他に、必要に応じて重量平均分子量10,000未満のノボラック型フェノール樹脂を併用することができる。しかし、フェノールノボラック樹脂を成形材料全体に対して70重量%を超えないようにすることが好ましい。
【0009】
本発明に用いる4フッ化エチレン樹脂微粉末としては、平均粒径が10〜50μmで、最大粒径が50〜100μmであることが望ましい。より好ましくは、平均粒径20〜40μm、最大粒径が60〜80μmである。4フッ化エチレン樹脂微粉末の分子量は、特に制限されるものではない。
【0010】
4フッ化エチレン樹脂微粉末の配合量は、全体の成形材料に対して、0.1〜40重量%含有させることが必要であり、より好ましくは、10〜30重量%の範囲内である。その配合量が、0.1重量%未満では、摺動特性が低下し好ましくない。また、40重量%を超えると、摺動特性は向上するものの、機械的強度に劣り好ましくない。
【0011】
本発明に用いる二硫化モリブデン微粉末としては、平均粒径が0.5〜1.5μmで、最大粒径が3〜6μmであることが望ましい。より好ましくは、平均粒径が0.8〜1.2μm、最大粒径が4〜5μmである。
【0013】
二硫化モリブデン微粉末の配合割合は、全体の成形材料にたいして0.1〜10重量%含有させることが必要であり、より好ましくは3〜7重量%の範囲内である。その配合割合が0.1重量%未満では、摺動特性が向上せず、好ましくない。また、10重量%を超えると摺動特性は向上するものの、機械的強度が劣り、好ましくない。
【0014】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、前述したフェノール樹脂、4フッ化エチレン樹脂微粉末および二硫化モリブデン微粉末を必須成分とするが、本発明の目的に反しない範囲において、また必要に応じて、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク等の無機質充填剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、塩化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムベンゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤、種々の硬化促進剤等を適宜添加配合することができる。
【0015】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、通常、次のようにして製造される。前述したフェノール樹脂、4フッ化エチレン樹脂微粉末、二硫化モリブデン微粉末および必要に応じてその他の添加剤を加えて混合して、均一に分散させた後、混練機で加熱混練し、次いで冷却固化させて適当な大きさに粉砕し成形材料とする。
【0016】
【作用】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、脱水工程を省略した高分子量のフェノールノボラック樹脂、二硫化モリブデン微粉末を用いることによって、4フッ化エチレン樹脂微粉末で摺動性を向上させているにもかかわらず、機械的強度に優れたものとすることができた。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。以下、「%」とは、特に説明のないかぎり、「重量%」を意味する。
【0018】
実施例1
重量平均分子量38,000のフェノールノボラック樹脂であって脱水工程を省略した初期縮合物50%、ヘキサミン8%、4フッ化エチレン樹脂微粉末12%、二硫化モリブデン微粉末3%、木粉15%、炭酸カルシウム5%、その他添加剤7%を常温で混合し、さらに熱ロールで混練して冷却した後、粉砕してフェノール樹脂成形材料を製造した。
【0019】
比較例1
実施例1で使用したと同じ重量平均分子量38,000のフェノールノボラック樹脂の初期縮合物50%、ヘキサミン8%、4フッ化エチレン樹脂微粉末15%、木粉15%、炭酸カルシウム5%、その他添加剤7%を常温で混合し、さらに熱ロールで混練して冷却した後、粉砕してフェノール樹脂成形材料を製造した。
【0020】
比較例2
重量平均分子量6,000のフェノールノボラック樹脂50%、ヘキサミン8%、4フッ化エチレン樹脂微粉末15%、木粉15%、炭酸カルシウム5%、その他添加剤7%を常温で混合し、さらに熱ロールで混練して冷却した後、粉砕してフェノール樹脂成形材料を製造した。
【0021】
比較例3
重量平均分子量38,000のフェノールノボラック樹脂50%、ヘキサミン8%、グラファイト粉末15%、木粉15%、炭酸カルシウム5%、その他添加剤7%を常温で混合し、さらに押出機で混練して冷却した後、粉砕してフェノール樹脂成形材料を製造した。
【0022】
実施例1および比較例1〜3で製造したフェノール樹脂成形材料を用いて射出成形で170℃に加熱した金型中で成形硬化させて成形部品とした。得られた成形部品について、機械的特性、電気的特性、摩擦係数を試験した。その結果を表1に示したが、本発明は、諸特性に優れ、かつバランスのとれた特性を示し、本発明の効果を確認することができた。
【0023】
【表1】
Figure 0003808228
【0024】
【発明の効果】
以上の説明および表1から明らかなように、本発明のフェノール樹脂成形材料は、高い機械的強度、電気的特性を保持しながら摺動性に優れたものである。

Claims (1)

  1. 重量平均分子量30,000〜40,000で、脱水工程を省略した初期縮合物であるフェノールノボラック樹脂、4フッ化エチレン樹脂微粉末および二硫化モリブデン微粉末を必須成分とし、全体の成形材料に対して、上記フェノールノボラック樹脂を30〜70重量%、上記4フッ化エチレン樹脂微粉末を10〜30重量%、上記二硫化モリブデン微粉末を0.1〜20重量%の割合で含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
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