JP3807293B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各気筒の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ディーゼルエンジンのコモンレール式噴射システムでは、燃料ポンプにより加圧されてコモンレールで蓄圧された所定圧の燃料を、各インジェクタから各気筒の燃焼室に噴射する。すなわち、各インジェクタに設けたソレノイドの電磁弁に駆動パルス(駆動信号)を与えると、各インジェクタ内で作動ピストンが上昇して針弁がリフトし、燃料噴射ノズル先端の噴孔が開き、燃料が各気筒の燃料室に噴射される。このような噴射システムでは、通常、インジェクタによる燃料の噴射量は、電磁弁にどの位の間(何ms)駆動パルスを与えるかによって、すなわち駆動信号のパルス幅(噴射期間)によって決まる。そのパルス幅で燃料噴射量を調整するようになっている。また、一般に、ディーゼルエンジンにおいては、低速、低負荷の機関運転状態で、インジェクタによる燃料噴射をメイン噴射と該メイン噴射に先行するパイロット噴射とに分割して行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のディーゼルエンジンにおいては、同じ噴射期間であっても、各気筒内の圧力(以下、「筒内圧」という。)の変化によりパイロット噴射量が変化してしまう。すなわち、機関運転状態に基づきマップを参照して設定されるパイロット噴射量指令値が同じである等噴射期間であっても、筒内圧の変化によりパイロット噴射量が変化してしまう。これにより、パイロット噴射量を狙い通りに制御できなくなり、その結果、騒音やスモークの悪化、さらには失火、白煙等の不具合を引き起こしてしまう。このようにパイロット噴射量が変化するのは、次のような理由による。
【0004】
ディーゼルエンジンのインジェクタは近年高圧噴射化が進んでおり、それに伴い燃料噴射ノズルのノズルシートにかかる面圧低減が経年後の噴射量変化に対して重要な課題である。この課題に対して、一般的には作動ピストン径を小さくする方向で対策している。この場合、その背反として、ノズル下部で筒内圧を受けることにより、初期の針弁上昇速度(作動ピストンの上昇速度)が変化し、噴射量変化を引き起こしてしまう。例えば、筒内圧が高くなるほど作動ピストンを上へ押す力が増し、同ピストンの上昇速度(推力)が増す。その上昇速度が増すと、作動ピストンが初期に早く上昇するので、噴孔から燃料が燃焼室にどっと噴射され、実際の噴射量が狙いとする噴射量指令値よりも増えてしまう。
【0005】
また、コモンレール式噴射システムでは、機関運転状態に基づきパイロット噴射およびメイン噴射の各噴射量および噴射期間を決めるマップをECUのROMに記憶させてある。このマップは、ある一定の噴射時期つまり特定の筒内圧で計測した機関回転速度や負荷(負荷率)等のデータに基づいて作成されている。そのため、実際の運転状態では、ある「温間」に対して設定されたパイロット噴射時期が、冷間運転、過渡運転、高地での運転などで変化すると、パイロット噴射を実施している時の筒内圧も刻々と変化する。このように筒内圧が変化することで、パイロット噴射量の要求値が同じでも、実際の噴射量(実噴射量)が変化してしまう。その結果、マップで決まる狙いとするパイロット噴射量を噴けなくなってしまう。このため、等噴射量(等噴射期間)であっても、実噴射量が変化し、上述したような内燃機関に様々不具合を引き起こしてしまう。ここにいう、「温間」とは、基準状態という意味で、平地において完全暖機で、安定した状態をいう。この「温間」を基準に、例えばパイロット噴射でどの位の量の燃料を噴くかを設定する「パイロット噴射量のマップ」等をECUのROMに記憶させてある。また、パイロット噴射終了時からメイン噴射開始時までを通常「インターバル」と呼んでいる。このインターバルの定数は、エンジンの暖機状態や気圧の変化等により変化する。この定数は、音の要求或いは失火の要求等に基づきマップを参照して設定される。
【0006】
次に、筒内圧が変化すると何が問題になるかについて、より詳しく説明する。
もし、パイロット噴射時期がいつも同じであれば、筒内圧の影響があってもそれほど問題ではない。その理由は、筒内圧は通常ある波形で変化する。パイロット噴射時期がいつも同じであれば(いつも同じクランク角度の位置で燃料が噴かれていれば)、そのときの筒内圧はいつもほぼ同じである。要は、パイロット噴射量を決めるマップがあって、そのマップさえ正しいものを作っておけば、パイロット噴射量はそのマップの通りに噴ける。何が問題かというと、インターバルが変化すると、パイロット噴射時期が変化する。そうすると、筒内圧が刻々と変化するので、マップでもっているパイロット噴射量の指令値が同じでも、筒内圧が変化することで、パイロット噴射時期が変わる。これにより、実際の噴射量(実噴射量)が変化してしまう。その結果、マップで決まる狙いとするパイロット噴射量を噴けなくなってしまう。つまり、インターバルの定数を決める「温間」のマップをあるところで決めると、冷間時とか高地での走行時にインターバルが変化することによって、同じ定数では通用しなくなり、パイロット噴射量を最適に制御できなくなるのが問題である。
【0007】
ところで、燃焼室内の圧力(上記筒内圧)に基づいて計算したパイロット噴射に伴う熱発生率のピーク値が目標ピーク値と一致するように、パイロット噴射量を補正する技術が、特開平11−141386号公報に開示されている。ところが、この従来技術では、各気筒の筒内圧を検出するための筒内圧力センサが、各気筒の燃焼室に臨んで取り付けられている。実際、量産を考えた場合、そのような筒内圧力センサを用いて各気筒の筒内圧を検出するのは難しい。これは、そのような筒内圧力センサは、燃焼室の高温、超高圧に晒されるので、耐久性と信頼性にかける。このため、長期にわたりそのセンサを使ってパイロット噴射量を精度よく補正するのは困難であり、噴射量制御の信頼性を確保できないとともに、筒内圧力センサを各気筒に取り付けなければならず、製造コストが増大してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、製造コストの低減と制御の信頼性を確保しつつ、騒音やスモークの発生を抑制し、失火、白煙等の発生を防止した内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明は、各気筒の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタを備えた内燃機関に適用され、前記インジェクタによる燃料噴射をメイン噴射と該メイン噴射に先行するパイロット噴射とに分割して行う内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記各気筒に対し燃料噴射が実行される前に演算されるパイロット噴射量を、パイロット噴射量補正値に基づいて補正する噴射量補正手段を備え、前記噴射量補正手段は、パイロット噴射時期と前記インジェクタに供給される燃料の圧力とに基づき前記パイロット噴射量補正値を設定し、前記パイロット噴射量補正値は、前記パイロット噴射時期が上死点より前になる程前記パイロット噴射量を増加させるように設定されるとともに、前記燃料の圧力が低くなる程前記パイロット噴射量を増加させるように設定されることを要旨とする。
【0010】
通常パイロット噴射が行われるような上死点前(上死点よりかなり前)では、筒内圧とパイロット噴射時期とは強い相関があるので、パイロット噴射時期で筒内圧を代用できる。本発明はこのことを利用し、各気筒に対し燃料噴射が実行される前に演算されるパイロット噴射量を、上記従来技術のように筒内圧力センサを用いずに、パイロット噴射時期に基づいて(筒内圧の予測に基づいて)補正するようにしている。
【0011】
この構成により、上述したように、実際の運転状態で、上記インターバルの定数がエンジンの暖機状態や気圧の変化等により変化して、パイロット噴射時期が変化したとしても、パイロット噴射量を狙い通りに制御できる。また、上記従来技術のように筒内圧を検出するための筒内圧力センサを各気筒の燃焼室に取り付ける必要がない。したがって、製造コストの低減と制御の信頼性を確保しつつ、騒音やスモークの発生を抑制し、失火、白煙等の発生を防止することができる。
さらに、パイロット噴射量を、パイロット噴射時期が上死点より前になる程増加するように補正することができるとともに、燃料の圧力が低くなる程増加するように補正することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料の圧力は、前記各気筒のインジェクタに接続されたコモンレール内のコモンレール圧力であることを要旨とする。
【0016】
この構成により、パイロット噴射時期とコモンレール圧力とに基づいてパイロット噴射量を補正することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記噴射量補正手段は、前記パイロット噴射量と前記燃料の圧力とに応じてパイロット噴射量補正係数を設定し、該補正係数と前記パイロット噴射量補正値とを掛け合わせて得られるパイロット噴射量最終補正量で前記パイロット噴射量を補正することを要旨とする。
【0017】
この構成により、パイロット噴射時期、燃料の圧力(例えば、コモンレール圧力)、およびパイロット噴射量の3つのパラメータに基づいて、パイロット噴射量を最適に補正することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記パイロット噴射量補正係数は、前記パイロット噴射量が少なくなる程小さい値に設定されるとともに、前記燃料の圧力が低くなる程大きい値に設定されることを要旨とする。
【0019】
この構成により、パイロット噴射量を、同噴射量が少なくなる程増加するように補正することができるとともに、燃料の圧力が低くなる程増加するように補正することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置をディーゼルエンジンに適用した一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
図4は、ディーゼルエンジンおよびその燃料噴射制御装置の概略構成を示している。ディーゼルエンジン(以下、「エンジン」という。)2は、複数の気筒(本実施形態では4つの気筒#1〜#4)を備えている。図4では、4気筒のうち1気筒のみを示してある。また、エンジン2には、各気筒#1〜#4の燃焼室3に燃料を噴射するインジェクタ32がそれぞれ配設されている。各インジェクタ32から各気筒#1〜#4の燃焼室3への燃料噴射は、各インジェクタに設けた電磁弁32aを電子制御装置(以下,「ECU」という。)20から出力されるインジェクタ駆動信号でオン、オフさせることで制御される。
【0022】
各インジェクタ32の電磁弁32aは、各気筒#1〜#4に、主たる量の燃料噴射を行う「メイン噴射」と、同メイン噴射の前に、着火を促進させるために微小量の燃料噴射を行う「パイロット噴射」とをそれぞれ行うように制御される。
【0023】
各気筒#1〜#4の燃焼室3には、吸気バルブ4aを介して吸気通路4が接続されている。この吸気通路4には、上流側より、エアクリーナ6、吸入空気量を検出する吸入空気量センサ8、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ10、燃焼室3に導入される吸入空気量を調整するスロットルバルブ14が設けられている。
【0024】
スロットルバルブ14は、駆動機構16によって開閉駆動される。駆動機構16は、ステップモータ18およびこのステップモータ18とスロットルバルブ14とを連結するギアを備える。ステップモータ18は、ECU20によって駆動制御される。駆動機構16には、スロットルバルブ14が全開位置となることでオン状態となる全開スイッチ22が設けられている。
【0025】
一方、各気筒#1〜#4の燃焼室3には、排気バルブ24aを介して排気通路24が接続されている。この排気通路24からはEGR(排気再循環)通路26が分岐し、このEGR通路26は吸気通路4におけるスロットルバルブ14の下流側に接続されている。EGR通路26には、ECU20により制御されるダイアフラム等のアクチュエータ28によって開閉駆動されるEGR弁30が設けられている。
【0026】
スロットルバルブ14によって吸入空気量を、またこのEGR弁30によってEGR量をそれぞれ調整することで、燃焼室3内に導入される吸入空気量とEGR量との割合を自在に設定することが可能となる。これにより、エンジン2の全運転領域にわたって適切な吸入空気量及びEGR量の制御を行うことができる。
【0027】
また、各気筒#1〜#4のインジェクタ32は、各気筒共通の蓄圧配管としてのコモンレール34に接続されている。各インジェクタ32は、電磁弁32aに入力されるインジェクタ駆動信号がオンの間、コモンレール34内で蓄圧された所定圧の燃料が各インジェクタ32から各気筒の燃焼室3内へ噴射されるようになっている。コモンレール34は、供給配管35を介してサプライポンプ36の吐出ポート36aに接続されている。また、供給配管35の途中には、逆止弁37が設けられている。この逆止弁37により、サプライポンプ36からコモンレール34への燃料の供給が許容され、かつ、コモンレール34からサプライポンプ36への燃料の逆流が規制されている。
【0028】
サプライポンプ36は、吸入ポート36bを介して燃料タンク38に接続されており、その途中にはフィルタ39が設けられている。サプライポンプ36は、燃料タンク38からフィルタ39を介して燃料を吸入する。また、サプライポンプ36は、エンジン2の回転に同期する図示しないカムによってプランジャを往復運動せしめて、燃料圧力を要求される圧力にまで高めた高圧燃料をコモンレール34に供給している。
【0029】
サプライポンプ36の吐出ポート36a近傍には、圧力制御弁40が設けられている。この圧力制御弁40は、吐出ポート36aからコモンレール34へ吐出される燃料圧力(すなわち噴射圧力)を制御するためのものである。この圧力制御弁40が開かれることにより、吐出ポート36aから吐出されない分の余剰燃料が、サプライポンプ36に設けられたリターンポート36cからリターン配管41を経て燃料タンク38へ戻されるようになっている。
【0030】
エンジン2の各燃焼室3には、グロープラグ42が配設されている。このグロープラグ42は、エンジン2の始動直前にグローリレー42aに電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼を促進させる始動補助装置を構成している。
【0031】
エンジン2の図示していない出力軸には、同出力軸の回転に同期し、その回転速度に対応したパルス信号を出力する回転数センサ44が設けられている。このパルス信号はECU20に取り込まれる。
【0032】
その他、ECU20には、吸入空気量センサ8,吸気温センサ10,アクセル開度センサ46による各検出信号やIGスイッチ48のオン・オフ信号がそれぞれ入力される。また、ECU20には、スタータスイッチ50のオン・オフ信号、シリンダブロック2bに設けた冷却水温センサ52,トランスミッション(図示略)に設けたシフトポジションセンサ54および車速センサ56による各検出信号がそれぞれ入力される。さらに、ECU20には、リターン配管41に設けた燃温センサ58,コモンレール34に設けた燃圧センサ60の各検出信号がそれぞれ入力されるようになっている。燃圧センサ60からは、各インジェクタ32に供給される燃料の圧力として、コモンレール34内の圧力であるコモンレール圧力PCRの検出信号が出力される。
【0033】
このように、図2に示す燃料噴射制御装置は、ECU20をはじめ、機関運転状態等を検出する上記吸入空気量センサ8,吸気温センサ10,アクセル開度センサ46、燃圧センサ60等の各種センサやスイッチ等を備えて構成される。
【0034】
ECU20は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、入出力ポート等を備えるマイクロコンピュータを中心に構成されている。CPUはエンジンの燃料噴射制御等の各種演算処理を実行する。ROMは読み出し専用の記憶媒体である。RAMは読み出しと書き込みが可能な揮発性の記憶媒体である。バックアップRAMは、読み込みと書き込みが可能でかつエンジンの停止後も記憶内容が保存される不揮発性の記憶媒体である。
【0035】
また、ECU20は、上記各センサ等から出力される信号に基づき把握される運転状態等に応じて、上記圧力制御弁40やリリーフ弁の開閉制御の他、各インジェクタ32の電磁弁32aを駆動制御して各インジェクタ32からの燃料の噴射制御を実行するようになっている。またECU20は、必要量の燃料を一時に噴射する「通常噴射」に加え、必要量の燃料を「パイロット噴射」と「メイン噴射」との2度に分割して噴射する「分割噴射」を制御するようになっている。この分割噴射は、所定の機関運転状態、例えば低回転、低負荷の機関運転状態で実行されるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態において、ECU20により実行される燃料噴射制御について説明する。
本実施形態では、ECU20は、各気筒#1〜#4に対し燃料噴射が実行される前に、各気筒に対しパイロット噴射量および噴射時期と、メイン噴射量および噴射時期とをそれぞれ算出する。こうした計算処理は、エンジン回転速度NE等、機関運転状態に基づきマップを参照して180°CA毎に実行される。
【0037】
また、ECU20は、こうして算出した噴射量や噴射時期から、各気筒#1〜#4の電磁弁32aの制御時刻に換算する計算処理を行う。この計算処理により、各気筒#に対するパイロット噴射開始時刻、パイロット噴射終了時刻、メイン噴射開始時刻、およびメイン噴射終了時刻がそれぞれ算出される。これらの算出された各制御時刻は、ECU20のRAMの該当するメモリ領域にそれぞれ格納される。
【0038】
そして、ECU20は、各気筒#1〜#4について求めたパイロット噴射開始時期になると、対応する気筒の電磁弁32aにインジェクタ駆動信号(駆動パルス)を出力する。この駆動信号のパルス幅によってパイロット噴射量が決まる。パイロット噴射終了後、所定時間(所定のインターバル)が経過して各気筒#1〜#4について求めたメイン噴射開始時期になると、ECU20は、対応する気筒の電磁弁32aにインジェクタ駆動信号を出力する。この駆動信号のパルス幅によってメイン噴射量が決まる。
【0039】
このような燃料噴射制御を実行する際に、ECU20は、図1に示す「最終パイロット噴射量の算出処理」を実行する。
通常パイロット噴射が行われるような上死点前では、メイン噴射により筒内圧が上死点付近で一気に上昇する前であり、筒内圧とパイロット噴射時期とは強い相関があるので、パイロット噴射時期で筒内圧を代用できる。本処理ではこのことを利用し、各気筒に対し燃料噴射が実行される前に演算されるパイロット噴射量をパイロット噴射時期に基づいて補正するようにしている。つまり、各気筒に対して算出したパイロット噴射量(ベースパイロット噴射量QPL2B)を、パイロット噴射時期で筒内圧を代用して(各気筒の筒内圧の予測に基づいて)補正する。そのために、ECU20は、ベースパイロット噴射量QPL2Bを3つのパラメータに基づいて補正して最終パイロット噴射量QPL2Fを算出するようになっている。3つのパラメータは、パイロット噴射時期AINJP2F、燃圧センサ60で検出されるコモンレール圧力PCR、およびベースパイロット噴射量QPL2Bである。
【0040】
次に、ECU20の実行する図1に示す「最終パイロット噴射量の算出処理」について説明する。本処理は一定クランク角毎(180°CA毎)の割り込みで実行される。
【0041】
本処理が開始されると、まず、回転数センサ44により検出されるエンジン回転速度NE、燃圧センサ60で検出されるコモンレール圧力PCR等、制御に必要なデータがECU20のRAM内の作業領域に読み込まれる。
【0042】
まず、ステップS100では、ベースパイロット噴射量QPL2Bを、エンジン回転速度NEおよび最終噴射量QFINに基づき、ROMに記憶されたマップを参照して算出する。ここにいう最終噴射量QFINは、実際には負荷(負荷率)に当たる。こうして、通常の温間におけるベースパイロット噴射量QPL2Bが算出される。
【0043】
この後、ステップS110に進み、ベースパイロット噴射量QPL2Bが最小パイロット噴射量QPL2MN以下であるか否かを判定する。最小パイロット噴射量QPL2MNは下限ガード値である。ステップS100で算出されたベースパイロット噴射量QPL2Bがあまりに噴射量が少ないと、インジェクタ32の能力上噴けなくなるというハード上の制約があるため、ステップS110での判定を行っている。
【0044】
ステップS110の判定結果がYESの場合には、ステップS120に進む。このステップS120では、ベースパイロット噴射量QPL2Bを「0」にするとともに、パイロット噴射量最終補正量QAIJPL2を「0」にして、本処理を一旦終了する。この場合、ECU20は、パイロット噴射は行わず、メイン噴射のみを行う。
【0045】
ステップS110の判定結果がNOの場合、すなわちベースパイロット噴射量QPL2Bが最小パイロット噴射量QPL2MNより大きい場合には、ステップS130に進む。このステップS130では、ベースパイロット噴射量QPL2Bとコモンレール圧力PCRとからパイロット噴射量補正係数MQPCP2を算出する。すなわち、ベースパイロット噴射量QPL2Bとコモンレール圧力PCRとに基づき、図3に示すマップを参照してパイロット噴射量補正係数MQPCP2を算出する。
【0046】
このパイロット噴射量補正係数MQPCP2は、ベースパイロット噴射量QPL2Bが少なくなる程小さい値に設定されるとともに、コモンレール圧力PCRが低くなる程大きい値に設定される。例えば、ベースパイロット噴射量QPL2Bが2(mm3/st)で、コモンレール圧力PCRが30(MPa)の場合、パイロット噴射量補正係数MQPCP2は0.85の値に設定される。このような設定にしているのは、ベースパイロット噴射量QPL2Bが少なくなるほど、筒内圧の影響を受け易くなり、コモンレールPCRが低くなるほど、筒内圧の影響を受け易くなるからである。
【0047】
この後、ステップS140に進み、パイロット噴射時期AINJP2Fとコモンレール圧力PCRとからパイロット噴射量補正値QPCIJP2を算出する。すなわち、パイロット噴射時期AINJP2Fとコモンレール圧力PCRとに基づき、図2に示すマップを参照してパイロット噴射量補正値QPCIJP2を算出する。このパイロット噴射量補正値QPCIJP2は、上死点より前になる程ベースパイロット噴射量QPL2Bを増加させるように設定されるとともに、コモンレール圧力PCRが低くなる程同噴射量QPL2Bを増加させるように設定されている。例えば、パイロット噴射時期AINJP2Fが50(°CA BTDC)でかつコモンレールPCRが30(MPa)の場合、パイロット噴射量補正値QPCIJP2はベースパイロット噴射量QPL2Bを1.5倍する値に設定される。
【0048】
この後、ステップS150に進み、ステップS130で算出したパイロット噴射量補正係数MQPCP2とステップS140で算出したパイロット噴射量補正値QPCIJP2とを掛け合わせてパイロット噴射量最終補正量QAIJPL2を算出する。
【0049】
この後、ステップS160に進み、ベースパイロット噴射量QPL2Bとパイロット噴射量最終補正量QAIJPL2とを加算して最終パイロット噴射量QPL2Fを算出する。この後、本処理を一旦終了する。
【0050】
この後、ECU20は、上記処理で算出した最終パイロット噴射量QPL2Fとパイロット噴射時期AINJP2Fとからパイロット噴射開始時刻とパイロット噴射終了時刻とを算出し、RAMの該当するメモリ領域に格納する。各気筒#1〜#4について求めたパイロット噴射開始時期になると、対応する気筒のインジェクタ32の電磁弁32aにインジェクタ駆動信号を出力し、パイロット噴射が実行される。
【0051】
なお、本実施形態では、「噴射量補正手段」は、ステップS130〜160に相当する。
以上のように構成された一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0052】
(イ)パイロット噴射時期AINJP2Fで筒内圧を代用して、ベースパイロット噴射量QPL2Bを補正するようにしている(ステップS130〜160)。つまり、エンジン運転状態に影響の大きいベースパイロット噴射量QPL2Bを、パイロット噴射時期AINJP2Fに基づいて(筒内圧の予測に基づいて)補正するようにしているので、上記従来技術のように筒内圧力センサを用いる必要がない。
【0053】
また、ベースパイロット噴射量QPL2Bを、同噴射量、パイロット噴射時期AINJP2F、およびコモンレール圧力PCRの3つのパラメータに基づいて補正し、最終パイロット噴射量QPL2Fを算出するようにしている(S130〜S160)。このため、実際の運転状態で、上記インターバルの定数がエンジンの暖機状態や気圧の変化等により変化して、パイロット噴射時期が変化したとしても、パイロット噴射量を狙い通りに最適に制御することができる。したがって、製造コストの低減と制御の信頼性を確保しつつ、騒音やスモークの発生を抑制し、失火、白煙等の発生を防止することができる。
(ロ)2次元マップを2つ(図2のマップと図3のマップ)組み合わせてパイロット噴射量最終補正値QAIJPL2を算出するようにしているので、上記3つのパラメータに基づいてパイロット噴射量の補正値を算出するための3次元マップを作る必要がない。これにより、製造がより一層容易になるとともに、より一層のコスト低減を図ることができる。
【0054】
(ハ)パイロット噴射時期AINJP2Fとコモンレール圧力PCRとからパイロット噴射量補正値QPCIJP2を算出するので(ステップS140)、コモンレール圧力PCR(燃料の圧力)を考慮してパイロット噴射量を補正することができる。
【0055】
(ニ)パイロット噴射量補正係数MQPCP2とパイロット噴射量補正値QPCIJP2とを掛け合わせてパイロット噴射量最終補正量QAIJPL2を算出するので(ステップS150)、上記3つのパラメータに基づいて、ベースパイロット噴射量QPL2Bを最適に補正することができる。
【0056】
[変形例]
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記一実施形態では、本発明をディーゼルエンジンに適用した例を示したが、本発明は、各インジェクタによる燃料噴射をメイン噴射とパイロット噴射に分割して行う全ての内燃機関に適用できる。
【0057】
・上記一実施形態では、本発明を4気筒のディーゼルエンジンに適用した例を示したが、4気筒以外のディーゼルエンジンにも本発明は適用可能である。
・上記一実施形態では、パイロット噴射時期AINJP2F、コモンレール圧力PCR、およびベースパイロット噴射量QPL2Bの3つのパラメータに基づいて補正しているが、本発明はこの構成に限定されない。パイロット噴射時期のみに基づいて、或いはパイロット噴射時期とコモンレール圧力に基づいて、或いはパイロット噴射時期とパイロット噴射量に基づいてベースパイロット噴射量を補正する場合にも本発明は適用可能である。
【0058】
・図2および図3の両マップ中における数値は一例として示したものであり、本発明はそれらの数値に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施形態による燃料噴射制御の実行手順を示すフローチャート。
【図2】 同制御に用いるパイロット噴射量補正値のマップを示す説明図。
【図3】 同制御に用いるパイロット噴射量補正係数のマップを示す説明図。
【図4】 一実施形態に係るディーゼルエンジンおよびその燃料噴射制御装置の概略を示す構成図。
【符号の説明】
2…4気筒ディーゼルエンジン、3…燃焼室,20…電子制御装置(ECU)、32…インジェクタ、32a…電磁弁。
Claims (4)
- 各気筒の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタを備えた内燃機関に適用され、前記インジェクタによる燃料噴射をメイン噴射と該メイン噴射に先行するパイロット噴射とに分割して行う内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記各気筒に対し燃料噴射が実行される前に演算されるパイロット噴射量を、パイロット噴射量補正値に基づいて補正する噴射量補正手段を備え、
前記噴射量補正手段は、パイロット噴射時期と前記インジェクタに供給される燃料の圧力とに基づき前記パイロット噴射量補正値を設定し、
前記パイロット噴射量補正値は、前記パイロット噴射時期が上死点より前になる程前記パイロット噴射量を増加させるように設定されるとともに、前記燃料の圧力が低くなる程前記パイロット噴射量を増加させるように設定されることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料の圧力は、前記各気筒のインジェクタに接続されたコモンレール内のコモンレール圧力であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記噴射量補正手段は、前記パイロット噴射量と前記燃料の圧力とに応じてパイロット噴射量補正係数を設定し、該補正係数と前記パイロット噴射量補正値とを掛け合わせて得られるパイロット噴射量最終補正量で前記パイロット噴射量を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記パイロット噴射量補正係数は、前記パイロット噴射量が少なくなる程小さい値に設定されるとともに、前記燃料の圧力が低くなる程大きい値に設定されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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