JP3806152B2 - 無機質微孔膜とその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、金属硫化物、金属酸化物、金属などの無機質材料からなる微孔膜と、この無機質微孔膜の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、限外ろ過用などのセラミツク多孔膜は公知である。しかし、この種の多孔膜は、孔径が通常数十μm以上と大きく、また、製法上の理由により厚さ方向の縦断面において蛇行した孔形状となつたり、孔径が表裏面や厚さ方向の横断面において不規則に変化するものがほとんどである。このため、多孔膜としての性能が一定せず、用途的に制約が多かつた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような事情にてらして、基材付きの無機質微孔膜や、基材のない単体の無機質微孔膜として、分離膜、偏光膜、触媒担持フイルム、着色フイルム、電極材、回路板などの幅広い用途に利用でき、また、とくに基材付きの無機質微孔膜として、基材表面の親水性を改良したり、基材上に設ける接着剤層、離型層などの各種層の接着性を改良するための表面処理層として機能する無機質微孔膜を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明者らは、上記の目的に対し、鋭意検討した結果、基材または剥離性基材上に、特定孔形状の超微細孔を有する無機質微孔膜を設けて、基材のない単体の無機質微孔膜や、基材付きの無機質微孔膜とすることにより、上記の目的をすべて達成できることを知り、この発明を完成するに至つた。
【0005】
すなわち、この発明の第1は、SiO 2 またはSiOの蒸着膜からなる長尺状の無機質微孔膜であって、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下であることを特徴とする無機質微孔膜に係るものである。
また、この発明の第2は、長尺状のプラスチックフィルムからなる基材上に、SiO 2 またはSiOの蒸着膜からなる無機質微孔膜を設けてなり、この無機質微孔膜は、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下であることを特徴とする基材付きの無機質微孔膜に係るものである。
さらに、この発明の第3は、これら無機質微孔膜の製法に係る発明として、長尺状のプラスチックフィルムからなる剥離性または非剥離性の基材上に、SiO 2 またはSiOからなる無機質材料を入射角Rが60度以下となるように斜め蒸着して、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下である無機質微孔膜を設けることを特徴とする無機質微孔膜の製法に係るものである。
【0006】
【発明の構成・作用】
以下、この発明の無機質微孔膜とその製法について、図1および図2を用いて説明する。図1は、基材付きの無機質微孔膜の一例を示したものであり、(A)は断面図、(B)は上記(A)におけるB部分の拡大断面図、(C)は平面図、(D)は上記(C)におけるD部分の拡大平面図である。
【0007】
図1において、1は基材2上に設けられた無機質微孔膜で、この微孔膜2は、表面1aおよび裏面1bに直線的にかつ略同径で貫通する、つまり、従来のように厚さ方向の縦断面において蛇行したり、孔径が厚さ方向の横断面において不規則に変化することなく、表面1a側の孔形状が裏面1b側にほぼそのままの形状で貫通する、平均孔径が0.1nm〜10μm、好ましくは1nm〜5μm、さらに好ましくは10nm〜1μmの超微細孔3を多数個有している。
【0008】
また、とくにこの例では、多数個の超微細孔3が表裏面1a,1bに対し傾斜して貫通しており、その傾斜角度αは40〜85度である。さらに、この超微細孔3は、面方向に細長い形状を有し、一般には、TD方向(幅方向)の孔径kがMD方向(長手方向)の孔径tより長い、通常k/tが1.1〜20倍、好ましくは5〜15倍となる細長い形状を有しており、したがつて、この場合、前記の平均孔径は、上記TD方向の孔径kの平均値を意味している。
【0009】
このような超微細孔3を有する無機質微孔膜1の表面空孔率、つまり、〔孔面積/処理膜表面積〕×100(%)として表される空孔率は、超微細孔3の大きさや数に応じて、通常0.5〜99%という広い範囲で適宜設定することができる。超微細孔3の個数としては、一般に、1〜30個/0.5μm角、好ましくは5〜20個/0.5μm角であるのがよいが、これにとくに限定されない。また、この微孔膜1の膜厚としては、一般に、5nm〜100μmの範囲、好ましくは20nm〜1μmの範囲で決めることができる。
【0010】
無機質微孔膜1の材質には、SiO、SiO 2 が好ましく用いられ、用途目的に応じて、その1種を単独でまたは2種以上を混合してあるいは2層以上の多層膜として使用することができる。
【0011】
無機質微孔膜1を設ける基材2としては、たとえば、プラスチツク製のフイルム状物や板状物、特に好ましくはフィルム状物を、用途目的に応じて、適宜選択使用することができる。プラスチツク製のフイルム状物や板状物の素材には、たとえば、ポリエチレンテレフタレ―ト、ポリイミド、ポリエ―テルサルフオン、ポリエ―テルエ―テルケトン、ポリカ―ボネ―ト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル、セルロ―スプロピオネ―ト、ポリテトラフルオロエチレンをはじめとするフツ素系樹脂などを挙げることができる。
【0012】
これらの各種基材、とくにプラスチツク製のフイルム状物や板状物などでは、表面にあらかじめプラズマ(スパツタ)処理、コロナ放電、紫外線照射、火炎、電子線照射、化成,酸化などのエツチング処理や、有機物の下塗り処理を施し、この上に設けられる無機質微孔膜の基材に対する密着性を向上させたものであつてもよい。また、無機質微孔膜を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、除塵清浄化したものであつてもよい。
【0013】
図2は、このように構成される基材付きの無機質微孔膜の製法例を示したものである。基材2がプラスチツクフイルムなどの可撓性のものでは、半径rの半円状ホルダ4の周面に沿つて走行する基材2上に、上記周面の一点Aにおいて、接線Zに対し入射角Rの角度にて、蒸発源5の無機質材料を電子ビ―ム加熱法などの加熱により、シヤツタ部材6を介して、所定の真空度で斜め蒸着する。また、基材2が非可撓性のものでは、上記同様の半円状ホルダ4の周面にこの基材2を固定し、これに、蒸発源5とシヤツタ部材6とを相対移動させて、上記の入射角Rを一定に保ちながら、蒸発源5の無機質材料をシヤツタ部材6を介して、上記同様に斜め蒸着することができる。
【0014】
この斜め蒸着において、上記の入射角Rは通常60度以下、好ましくは0.5〜50度とするのがよい。このように斜め蒸着すると、基材2の表面に微細な凹凸部が存在するため、凸部分での蒸着方向に対し影となる部分には無機質材料が蒸着せず、これが蒸着膜の孔部を構成して、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔3が形成される。また、このように形成される超微細孔3は表裏面に対して傾斜して貫通しており、さらに、面方向の孔形状としては、TD方向(幅方向)の孔径kがMD方向(長手方向)の孔径tより長くなる。
【0015】
ここで、超微細孔3の平均孔径(TD方向の孔径kの平均値)、表裏面に対する傾斜角度α、表面空孔率、TD方向の孔径k/MD方向の孔径tの比や、孔の個数などについては、基材表面の凹凸部の大きさ,形状,方向性などに応じて、蒸着時の入射角Rなどを適宜設定することにより、いずれも、前記した特定範囲に容易に調整することが可能である。また、膜厚については、蒸着するべき無機質材料に応じ、相対移動する基材に対して、所定の蒸着速度および蒸着時間を設定することにより、容易に決めることができる。
【0016】
このようにして作製される基材付きの無機質微孔膜は、この微孔膜が良好な親水性を有しているため、基材への親水性付与層として機能させることができる。たとえば、膜表面の水の接触角としては、高くとも65度以下であり、特に好ましくは後記の実施例に示すように20度以下である。また、この基材上にさらに接着剤層、離型層などの各種層を設ける際の接着性改良層としても機能させることができる。接着性改良層としての機能は、接着剤などが超微細孔に侵入し、かつこの侵入が必要最小限に抑えられる、いわゆるアンカ―効果によるものと推定される。
【0017】
いずれにしても、これらの機能は、微孔膜が前記の膜構造を有してかつ平均孔径が前記範囲にあることにより発現され、この要件を逸脱すると、上記機能が十分に得られなくなる。また、これらの機能は、超微細孔の表裏面に対する傾斜角度α、表面空孔率、TD方向の孔径k/MD方向の孔径tの比や、孔の個数、膜厚などが前記範囲にあることにより、より良く発現されるものである。
【0018】
基材への親水性付与層や接着性改良層として機能させる具体的な例としては、たとえば、下記のa〜eなどが挙げられる。
a)水溶性インクのはじきや剥がれを防ぐための印刷シ―ト用表面処理
b)窓ガラス、温室、テント、ミラ―などにおける結露による光の透過率や反射率の低下、水滴の落下などを防ぐための表面処理
c)ポリカ―ボネ―ト、ポリエ―テルサルフオンなどの無配向のフイルム上に感光(ホログラム)層としてゼラチン層(重クロム酸ゼラチン)を印刷または塗工法で形成する際に、印刷または塗工時のゼラチン層のはじきや剥がれを防止したり、その後の乾燥工程でのゼラチン層の収縮による剥がれを防止するための表面処理
【0019】
d)感圧性接着テ―プなどにおいて非極性プラスチツクフイルムなどからなる基材に対する接着剤層の投錨性を高めて使用時または剥離時に基材と接着剤層との間に剥離が生じるのを防ぐための表面処理
e)感圧性接着テ―プなどの基材背面に離型処理を施したり、離型フイルムなどの作製において基材表面に離型処理を施すにあたり、基材と離型層との接着性を高めて使用時離型層が剥離するのを防ぐための表面処理
【0020】
また、この発明では、上記の表面処理層としての機能のほか、無機質微孔膜自体の前記特殊な膜構造に基づいて、さらにはその親水性や接着性などの特性を加味して、基材付きの無機質微孔膜や、基材のない単体の無機質微孔膜として、以下のf〜kの用途例にみられるように、分離膜、偏光膜、触媒担持フイルム、着色フイルム、電極材、回路板などの幅広い用途に利用できる。ここで、基材のない単体の無機質微孔膜は、前記製法において剥離性基材を用い、微孔膜の形成後に剥離除去する方法にて作製できる。また、微孔膜の形成後に基材を溶解除去するなどの方法にても作製することができる。
【0021】
f)孔の形状をオングストロ―ムオ―ダで設定でき、かつその寸法精度を任意に設定できるために、気体分離(粒径サイズによる分離)膜として、また表面および孔内面のすぐれた親水性を考慮した液体中での分離膜として、さらに無機質材料として金属または金属酸化物を用いたときの導電化機能を考慮したイオン粒子の分離膜として、利用できる。とくに、無機質材料としてSiO2 、SiO、TiO2 、Al2 3 、ZrO2 などの耐熱・耐薬品性にすぐれるものを選択使用することにより、耐熱・耐薬品性を必要とする上記各分離膜として利用できる。
【0022】
g)超微細孔が面方向に細長い形状を有して、TD方向の孔径kがMD方向の孔径tより相当長い、たとえばk/t=約10程度で、かつTD方向の孔径kが光の波長程度である場合に、無機質材料として光の屈折率の高いものを用いるか、この無機質材料層上にさらに金属層を形成することにより、TD方向に振動する光は透過、MD方向に振動する光は反射させ、透過光はTD方向に偏光し、反射光はMD方向に偏光する光のロス(吸収)のない偏光膜として、利用できる。
〔なお、従来の沃素、染料系の偏光膜においては、一方向にのみ偏光し、これと垂直方向の光は吸収するため、光のロスが多い。また、反射機能がないため、反射板と組み合わせて使用する必要がある。さらに、耐熱・耐薬品性などの耐久性に劣つている。このような従来の偏光膜の欠点は、上記この発明の無機質微孔膜によりすべて解消される。〕
【0023】
h)超微細孔の形状を制御することにより、とくにTD方向の孔径kがMD方向の孔径tより長い、面方向に細長い形状を有する場合に、TD方向の孔径kを制御することにより、TD方向の長さより波長の短い光を選択偏光透過する偏光膜として、利用できる。
〔なお、従来の偏光膜には、光の選択偏光透過の機能はなく、光を選択する場合、高価な光選択パスフイルタ―が必要である。この欠点は、上記この発明の無機質微孔膜により解消される。〕
【0024】
i)超微細孔内に触媒を担持させた触媒担持フイルム、顔料,染料を担持させた耐擦傷性にすぐれる着色フイルムなどとして、利用できる。
j)多孔性プラスチツクフイルムや不織布上にニツケルなどの金属からなる無機質微孔膜を形成した電極材として、利用できる。
k)セラミツク板上にSiO2 などからなる無機質微孔膜を形成して、Cuメツキや蒸着層などの回路構成層の接着性を向上させた高誘導率回路基板として、またポリエチレンやポリテトラフルオロエチレン板上にSiO2 などからなる無機質微孔膜を形成して、Cuメツキや蒸着層などの回路構成層の接着性を向上させた低誘導率回路基板として、利用できる。
【0025】
この発明において、このような幅広い用途を有する基材付きの無機質微孔膜、基材を持たない単体としての無機質微孔膜などは、その使用形態などに応じて、前記の斜め蒸着による方法以外に、他のいかなる方法で作製してもよい。要は、膜構造として、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を有するように、またより好適には、超微細孔の表裏面に対する傾斜角度α、表面空孔率、TD方向の孔径k/MD方向の孔径tの比や、孔の個数、膜厚などが前記範囲に入るように、構成されておればよい。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、基材付きの無機質微孔膜や、基材のない単体の無機質微孔膜として、分離膜や偏光膜などの幅広い用途に利用でき、また、とくに基材付きの無機質微孔膜では、基材表面および微細孔内面の親水性を改良したり、基材上に設ける接着剤層、離型層などの接着性を高めるための表面処理層として機能する実用性にすぐれた無機質微孔膜を提供することができる。
【0027】
【実施例】
つぎに、この発明の実施例として、基材付きの無機質微孔膜であつて、とくに上記微孔膜に基材表面の親水性や接着性などを改良するための表面処理層として機能させる構成例について、より具体的に説明する。
【0028】
実施例1
図2に示す方法(半円状ホルダ4の半径r=200mm)により、基材である厚さが75μmのポリエチレンテレフタレ―トフイルムの片面に、蒸発源5のSiO2 を電子ビ―ム加熱法により、1〜3×10-4Torrの真空度で、シヤツタ部材6を介して、蒸着入射角R=40度で、斜め蒸着した。この蒸着により、基材上に、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔を有する、SiO2 からなる膜厚が約100nmの透明な無機質微孔膜が形成された。
【0029】
この無機質微孔膜について、表面の電子走査顕微鏡(TEM)観察を行つた。その結果、超微細孔は、TD方向の孔径kがMD方向の孔径tより長くされた、面方向に細長い形状を有して、その平均孔径(TD方向の孔径kの平均値)が100nm、TD方向の孔径kとMD方向の孔径tとの比(k/t)が10、孔の個数が約7個/0.5μm角、表面空孔率が3%であつた。また、断面のTEM観察により、この超微細孔は表裏面に対し傾斜して貫通しており、その傾斜角度αは約70度であることがわかつた。
【0030】
実施例2〜4
蒸着入射角Rを60度(実施例2)、3度(実施例3)、1度(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる基材上に、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔を有する、SiO2 からなる膜厚が約100nmの無機質微孔膜を形成した。これらの無機質微孔膜の表面および断面のTEM観察結果を、実施例1の前記結果と合わせて、下記の表1に示した。
【0031】
【表1】
Figure 0003806152
【0032】
実施例5〜8
膜厚を5nm(実施例5)、10nm(実施例6)、30nm(実施例7)、3,000nm(実施例8)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる基材上に、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔を有する、SiO2 からなる無機質微孔膜を形成した。これらの無機質微孔膜について、その表面および断面のTEM観察結果は、実施例1とほとんど同じであり、その平均孔径〔TD方向の孔径kの平均値〕は、いずれも100nmであつた。
【0033】
実施例9
蒸発源としてSiOを用い、かつ蒸着入射角R=10度とした以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる基材上に、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔を有する、SiOからなる膜厚が約100nmの無機質微孔膜を形成した。この微孔膜につき、表面および断面のTEM観察を行つた結果、平均孔径(TD方向の孔径kの平均値)が120nm、TD方向の孔径kとMD方向の孔径tとの比(k/t)が3、孔の個数が25個/0.5μm角、表面空孔率が5%、孔の傾斜角度αは55度であつた。
【0034】
比較例1
蒸着入射角Rを90度に変更した、つまり、斜め蒸着に代えて直角に蒸着した以外は、実施例1と同様に真空蒸着して、ポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる基材上に、SiO2 からなる膜厚が約100nmの無機質膜を形成した。この膜の表面および断面のTEM観察結果では、膜の表面および断面に孔は全くみられず、表面空孔率は0%であつた。
【0035】
以上の実施例1〜9の無機質微孔膜および比較例1の無機質膜について、膜表面の水の接触角およびテ―プ剥離力を、下記の方法にて、測定した。これらの結果を、後記の表2に示す。なお、同表には、基材(ポリエチレンテレフタレ―トフイルム)自体の上記同様の測定結果を、参考例1として、併記した。
【0036】
<水の接触角>
協和界面科学(株)製のCONTACT−ANGLE METER(形式CA−DT)を用いて、膜表面(参考例1では基材表面)の水の接触角〔θ〕を、測定した。
【0037】
<テ―プ剥離力>
日東電工(株)製の感圧性接着テ―プ(No.31B)の接着面を、膜表面(参考例1では基材表面)に貼り合わせたのち、180度方向に引き剥がしたときのテ―プ剥離力F(Kg/15mm幅)を測定した。なお、表2中、>の記号は、180度方向に引き剥がしたとき、接着剤層の凝集破壊を生じたことを示す。
【0038】
【表2】
Figure 0003806152
【0039】
上記の表2の結果から明らかなように、この発明の実施例1〜9の無機質微孔膜によれば、ポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる基材表面の親水性と接着剤層の接着力を大きく向上できるものであることがわかる。
【0040】
実施例10〜13
基材として、厚さが80μmのポリカ―ボネ―トフイルム(実施例10)、厚さが50μmのポリイミドフイルム(実施例11)、厚さが60μmのポリエチレンフイルム(実施例12)、厚さが60μmのポリプロピレンフイルム(実施例13)を用いた以外は、実施例1と同様にして、上記の各基材上に、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する超微細孔を有する、SiO2 からなる膜厚が約100nmの無機質微孔膜を形成した。これらの無機質微孔膜の表面および断面のTEM観察結果を、下記の表3に示した。
【0041】
【表3】
Figure 0003806152
【0042】
比較例2〜5
蒸着入射角Rを90度に変更した、つまり、斜め蒸着に代えて直角に蒸着した以外は、実施例10〜13と同様にして、厚さが80μmのポリカ―ボネ―トフイルム(比較例2)、厚さが50μmのポリイミドフイルム(比較例3)、厚さが60μmのポリエチレンフイルム(比較例4)、厚さが60μmのポリプロピレンフイルム(比較例5)の各基材上に、SiO2 からなる膜厚が約100nmの無機質膜を形成した。これら膜の表面および断面のTEM観察結果では、いずれも、膜の表面および断面に孔は全くみられず、表面空孔率は0%であつた。
【0043】
以上の実施例10〜13の無機質微孔膜および比較例2〜5の無機質膜について、膜表面の水の接触角およびテ―プ剥離力を、前記と同様に測定した。これらの結果を、下記の表4に示す。なお、同表には、基材(ポリカ―ボネ―トフイルム、ポリイミドフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム)自体の上記同様の測定結果を、それぞれ参考例2〜5として、併記した。
【0044】
【表4】
Figure 0003806152
【0045】
上記の表4の結果から明らかなように、この発明の実施例10〜13の無機質微孔膜によれば、ポリカ―ボネ―トフイルム、ポリイミドフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルムからなる各基材表面の親水性と接着剤層の接着力を大きく向上できるものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の基材付きの無機質微孔膜の一例を示したもので、(A)は断面図、(B)は上記(A)におけるB部分の拡大断面図、(C)は平面図、(D)は上記(C)におけるD部分の拡大平面図である。
【図2】この発明の基材付きの無機質微孔膜の製法例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 無機質微孔膜
1a 無機質微孔膜の表面
1b 無機質微孔膜の背面
2 基材
3 超微細孔
k 超微細孔のTD方向の孔径(平均孔径)
t 超微細孔のMD方向の孔径
α 超微細孔の傾斜角度
4 半径rの半円状ホルダ
5 蒸発源(無機質材料)
6 シヤツタ部材
R 蒸着入射角

Claims (3)

  1. SiO 2 またはSiOの蒸着膜からなる長尺状の無機質微孔膜であって、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下であることを特徴とする無機質微孔膜。
  2. 長尺状のプラスチックフィルムからなる基材上に、SiO 2 またはSiOの蒸着膜からなる無機質微孔膜を設けてなり、この無機質微孔膜は、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下であることを特徴とする基材付きの無機質微孔膜。
  3. 長尺状のプラスチックフィルムからなる剥離性または非剥離性の基材上に、SiO 2 またはSiOからなる無機質材料を入射角Rが60度以下となるように斜め蒸着して、表裏面に直線的にかつ略同径で貫通する、面方向のTD方向(幅方向)に沿った細長い形状を有し、TD方向(幅方向)の平均孔径が0.1nm〜10μmの超微細孔を1〜30個/0.5μm角の割合で有し、この超微細孔が表裏面に対し傾斜して貫通しており、傾斜角度αが40〜85度であり、膜の表面空孔率が0.5〜99%、膜厚が5nm〜100μm、膜表面の水の接触角が20度以下である無機質微孔膜を設けることを特徴とする無機質微孔膜の製法。
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