JPWO2018079612A1 - ナノカーボン分離膜、ナノカーボン複合分離膜及びナノカーボン分離膜の製造方法 - Google Patents

ナノカーボン分離膜、ナノカーボン複合分離膜及びナノカーボン分離膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

ナノカーボン分離膜は、厚み方向からみて互いに重なり合うように存在し、二価のカチオンにより互いに架橋された複数の酸化グラフェン片と、前記複数の酸化グラフェン片の層間に挿入され、厚みが1nm〜30nmの数層グラフェン片と、を備え、酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する酸化グラフェン片の質量比が0質量%より大きく15質量%以下であり、数層グラフェン片の質量比が85質量%以上100質量%未満である。

Description

本発明は、ナノカーボン分離膜、ナノカーボン複合分離膜及びナノカーボン分離膜の製造方法に関する。
本願は、2016年10月26日に、日本に出願された特願2016−209465号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
水処理に用いられる分離膜(水処理膜)には、UF膜(Ultrafiltration Membrane:限外ろ過膜)、NF膜(Nanofiltration Membrane:ナノろ過膜)、RO膜(ReverseOsmosis Membrane:逆浸透膜)、及びFO膜(Forward Osmosis Membrane:正浸透膜)などがある。また分離膜は水処理に限られず、ガスの分離等にも広く用いられている。
近年、耐薬品性、耐熱性、及び耐久性等のロバスト性(robustness)を高めるために、分離膜にナノカーボン材料を用いる検討が進められている。
例えば、非特許文献1には、酸化グラフェン片が分散した分散液を減圧濾過して作製した分離膜が記載されている。また例えば、非特許文献2には、酸化グラフェン片を1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロライド(TMC)で架橋した分離膜が記載されている。
なお酸化グラフェン片の製造方法としては、グラファイトを原料とする方法が知られている(例えば、特許文献1や非特許文献3を参照)。
特開2014−201492号公報
Renlong Liu, et al. Carbon,77,(2014)933-938. Meng Hu and Baoxia Mi. Environ.Sci.Technol,2013,47,3715-3723. Marcano, D. C. et al. Improved synthesis of graphene oxide.ACS Nano 4, (2010) 4806-4814.
しかしながら、いずれの分離膜もその特性が充分とは言えなかった。分離膜に求められる性能や特性として、透水性能と、分離対象物の分離性能とがある。これらは、いずれか一方を高めようとすると、他方が低下する相関関係を有し、透水性能と分離対象物の分離性能の両方を充分満たす分離膜は得られていなかった。
非特許文献1に記載の分離膜は、酸化グラフェン片が使用途中に剥離するおそれがある。酸化グラフェン片は、水等に分散しやすいためである。一方、非特許文献2に記載の分離膜は、酸化グラフェン片同士が架橋されている。そのため、酸化グラフェン片同士が剥離することは生じにくい。しかしながら、有機分子により架橋しているため、分離膜のロバスト性を充分高めることができない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分離対象物を分離する分離性能に優れたナノカーボン分離膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、二価のカチオンにより複数の酸化グラフェン片を架橋し、その層間に数層グラフェン片が挿入されていることで、分離性能に優れたナノカーボン分離膜が得られることを見出した。すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
本発明の第一の態様は、以下の(1)に述べるナノカーボン分離膜である。
(1)本発明の一態様のナノカーボン分離膜は、厚み方向からみて互いに重なり合うように存在し、二価のカチオンによって互いに架橋された複数の酸化グラフェン片と、前記複数の酸化グラフェン片の層間に挿入され、厚みが1nm〜30nmの数層グラフェン片と、を備え、酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する酸化グラフェン片の質量比が0質量%より大きく15質量%以下であり、数層グラフェン片の質量比が85質量%以上100質量%未満である。
(2)上記(1)に記載のナノカーボン分離膜において、前記酸化グラフェン片の平均径が、前記数層グラフェン片の平均径より大きくてもよい。
(3)上記(1)又は(2)のいずれかに記載のナノカーボン分離膜において、前記複数の酸化グラフェン片の平均面間距離が、7.7Åより大きくてもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つに記載のナノカーボン分離膜において、前記カチオンが、二価のカルシウムイオン又はマグネシウムイオンであってもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載のナノカーボン分離膜において、前記酸化グラフェン片の厚みが1〜1.5nmであってもよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つに記載のナノカーボン分離膜において、酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する、酸化グラフェン片の質量比は、5質量%以上15質量%以下であり、
酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する、数層グラフェン片の質量比が85質量%以上95質量%以下であってもよい。
本発明の第二の態様は、(7)に述べる以下のナノカーボン複合分離膜である。
(7)本発明の第二態様のナノカーボン複合分離膜は、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のナノカーボン分離膜と、前記ナノカーボン分離膜の一面側に配設され、前記ナノカーボン分離膜を支持する多孔質膜と、を有する。
(8)上記(7)に記載のナノカーボン複合分離膜において、前記ナノカーボン分離膜と前記多孔質膜とが、接着されていてもよい。
(9)上記(8)に記載のナノカーボン複合分離膜において、前記ナノカーボン分離膜と前記多孔質膜とが、ポリビニルアルコールによって接着されていてもよい。
本発明の第三の態様は、以下の(10)に述べるナノカーボン分離膜の製造方法である。
(10)本発明の第三の態様のナノカーボン分離膜の製造方法は、複数の酸化グラフェン片と、厚みが1nm〜30nmの複数の数層グラフェン片と、が分散した分散液を塗付、乾燥し、カーボン膜を形成する工程と、前記カーボン膜を二価のカチオンが溶解した溶液に浸漬する工程と、を有する。
本発明の第一の態様に係るナノカーボン分離膜は、分離性能に優れる。
本発明の第一の態様に係るナノカーボン複合分離膜の好ましい例を示す斜視模式図である。 本発明の第一の態様に係るナノカーボン複合分離膜の好ましい例を示す断面模式図である。 酸化グラフェン片単体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 酸化グラフェン片単体の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 数層グラフェン片単体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 数層グラフェン片単体の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜100の表面を示すSEM画像である。 本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜100の断面を示すSEM画像である。 本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜の製造方法を模式的に示した図である。 参考実施例1,2及び参考比較例1,2,3のX線回折(XRD)の測定結果を示す。 参考比較例3、3−1,3−2のFTIR測定の結果を示す。 参考比較例3、3−1,3−2のラマン分光測定の結果を示す。 参考比較例3−1のXPS測定により求められたC1sスペクトルの分析結果を示す。 参考比較例3−2のXPS測定により求められたC1sスペクトルの分析結果を示す。 参考比較例3のXPS測定により求められたC1sスペクトルの分析結果を示す。 参考比較例3のXPS測定により求められたCl2pスペクトルの分析結果を示す。 参考比較例3のXPS測定により求められたCa2pスペクトルの分析結果を示す。 実施例4の処理後のカーボンナノ複合分離膜の表面の写真である。 実施例1の処理後のカーボンナノ複合分離膜の表面の写真である。 ポリビニルアルコール膜の加熱前及び加熱後にFTIR測定を行った結果を示す。
以下に本願発明の好ましい例や好ましい実施形態について説明する。なお本発明はこれら例や実施形態のみに限定されるものではない。本発明の範囲内において、必要に応じて好ましく変更及び/又は追加することも可能である。特に制限の無い限り、数、量、材料、形状、位置、種類などを必要に応じて変更、追加、省略してもよい。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、部分や構成を拡大や縮小や変形や省略をして示している場合がある。
<ナノカーボン複合分離膜>
図1は、本発明の第一の態様に係るナノカーボン複合分離膜の斜視模式図である。図2は、本発明の第一の態様に係るナノカーボン複合分離膜の断面模式図である。図1では、理解を容易にするために、各構成要素を離して図示している。
図1及び図2に示すナノカーボン複合分離膜100は、ナノカーボン分離膜10と、接着層20と、多孔質膜30とを有する。ナノカーボン分離膜10は、高いろ過機能を有する機能膜である。多孔質膜30はナノカーボン分離膜10を支持し、ナノカーボン複合分離膜100全体としての機械的強度を高める支持膜である。ナノカーボン複合分離膜100は、気相分離、液相分離のいずれにも用途に応じて用いることができる。以下、液相分離を中心に説明する。
(ナノカーボン分離膜)
ナノカーボン分離膜10は、酸化グラフェン片1と、数層グラフェン片2とを備える。
一般に、酸化グラフェンはGO(Graphene oxideの略)と表記される場合があり、数層グラフェンはFLG(Few−layer grapheneの略)と表記される場合もある。酸化グラフェンが厚み方向からみて互いに重なり合うように存在するとは、厚み方向からみて互いに少なくとも一部が互いに重なることを意味しても良い。
図3は、酸化グラフェン片1の単体の状態にある走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。また図4は、酸化グラフェン片1の単体の状態にある透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
酸化グラフェン片1は、酸化グラフェンの一片である。酸化グラフェンは、グラフェンの単分子層にエポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、及び水酸基などから選択される酸素含有官能基が結合した材料である。酸化グラフェンは、還元するとグラファイトになる材料としても知られている。
酸化グラフェン片1の厚みは、炭素原子一層分であり、1〜1.5nm程度である。酸化グラフェン片1の面内方向の大きさは、適宜設計することができる。図3に示す酸化グラフェン片1の面内方向の平均径は、12μmである。
ここで平均径は、以下のようにして求めた。まず、酸化グラフェン片1が分散した分散液をSi基板上に滴下し、乾燥する。次いで、Si基板をSEMで観察し、酸化グラフェン片1の外接楕円を描く。この際、酸化グラフェン片1は、凝集して外接楕円を描けないものは選択しない。そして、得られた外接楕円の長径を測定する。同様の作業を90個の酸化グラフェン片1に対して行い、平均値を算出することで平均径を求めた。
酸化グラフェン片1は、一部に孔が開いている(図4の点線の領域参照)。言い換えると、酸化グラフェン片1の表面には1つ以上の穴(開口部)が設けられていて良い。この孔は、ナノカーボン分離膜10を通過する流体の流路として機能する。
酸化グラフェン片1に形成された孔の径及び孔の量は任意に選択でき、酸化グラフェン片1の酸化度を変えることで制御できる。酸化グラフェン片1に形成された孔の平均径は、0.5nm以上5nm以下であることが好ましく、1nm以上3nm以下であることがより好ましい。
孔の面積は、酸化グラフェン(GO)の面積の中の0.5%以上5%以下であることが好ましい。
図5は、数層グラフェン片2の単体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。また図6は、数層グラフェン片2の単体の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
数層グラフェン片2は、数層グラフェンの一片である。数層グラフェンは、グラフェンが十層程度積層したものである。
図5に示すように、数層グラフェン片2の平均径は、酸化グラフェン片1の平均径より小さい。数層グラフェン片2の平均径は、数μm程度である。より具体的には、平均径3μm程度の大きなものと、平均径0.5μm程度の小さなものとが混在している。数層グラフェン片2の面内方向の平均径は、任意に選択してよい。
図6に示すように、本実施形態にかかる数層グラフェン片2は、グラフェンが2〜16層程度積層したものである。グラフェンが2〜16層程度積層しているため、数層グラフェン片2の厚みは、厚みが1nm〜30nm程度である。数層グラフェン片2の厚さは、任意に選択してよい。
図7A及び図7Bは、本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜100のSEM画像である。図7Aはナノカーボン複合分離膜100の表面像であり、図7Bは断面像である。
図7Aや図7Bに示すように、複数の酸化グラフェン片1は、厚み方向から見て互いに重なるように存在する。なお、互いに重なるように存在するとは、酸化グラフェン片の少なくとも一部が重なりあっていることを意味する。図7Aの左上の拡大図を見ると、第1の酸化グラフェン片1aの上に、第2の酸化グラフェン片1bが積層している。境界1Bは、第2の酸化グラフェン片1bの端部であり、かつ、第1の酸化グラフェン片1aと第2の酸化グラフェン片1bの境界である。
また少なくとも一つの数層グラフェン片2は、複数の酸化グラフェン片1の層間に挿入されている。図7Aの左上の拡大図において、第2の酸化グラフェン片1bは、数層グラフェン片2を被覆している。すなわち、数層グラフェン片2は、第1の酸化グラフェン片1aと第2の酸化グラフェン片1bの間に挟まれている。数層グラフェン片2の平均径は酸化グラフェン片1の平均径より小さい。このことにより、数層グラフェン片2は、酸化グラフェン片1の層間に容易に挿入される。なお一組の酸化グラフェン片1の間に挿入される数層グラフェン片2の数は任意に選択してよい。
数層グラフェン片2はグラフェン数層分の厚みを有し、酸化グラフェン片1の厚みより厚い。そのため、複数の酸化グラフェン片1の間に、少なくとも一つの数層グラフェン片2が挟まれると、積層される酸化グラフェン片1の間隔が広がる。
酸化グラフェン片1のみからなる場合の、酸化グラフェン片の平均面間距離は7.7Åである。数層グラフェン片2が挟まることで、平均面間距離は7.7Å以上となる。酸化グラフェン片1間の平均面間距離は、例えば12Å程度まで広げることができる。平均面間距離は、X線回折によって得られるピーク値から求められる。なお本発明のナノカーボン分離膜における酸化グラフェン片の平均面間距離は、条件等を変更することによって、必要に応じて任意に選択できる。例えば7.7〜12Åである。
酸化グラフェン片1の平均面間距離が広がることで、ナノカーボン分離膜10を通過する流体の流路が広がる。すなわち、液相分離の場合は透水性が高まる。一方で、平均面間距離の広がりは、Å単位であり僅かである。そのため、分離対象物の分離特性が大きく劣化することが避けられる。
酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の合計質量に対する、酸化グラフェン片1の質量比は、0質量%より大きく20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。また、酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の合計質量に対する数層グラフェン片2の質量比は80質量%以上100質量%未満であり、80質量%より大きく95質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。酸化グラフェン片1と数層グラフェン片2の比率がこの範囲内であると、透水性又は分離対象物の分離特性の一方が著しく低下することを避けられる。なお酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の合計質量を100質量%とする。
また複数の酸化グラフェン片1同士は、二価のカチオンにより、互いに架橋されている。酸化グラフェン片1は、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、及び水酸基などから選択される少なくとも1種の酸素含有官能基を有している。
二価のカチオンは、酸化グラフェン片1の酸素含有官能基の近傍に配位し、隣接する酸化グラフェン片1どうしを架橋する。複数の酸化グラフェン片1が架橋されると、ナノカーボン分離膜10が強固になる。
一般に酸化グラフェン片1は、水に対する分散性が高い。そのため、単純に酸化グラフェン片1を積層しただけでは、通水した際にナノカーボン分離膜10から酸化グラフェン片1が剥離することがある。特に、ナノカーボン分離膜10の膜面に対して平行な方向に通水するクロスフローの場合において、酸化グラフェン片1は剥離しやすくなる。
酸化グラフェン片1同士を架橋することで、酸化グラフェン片1の剥離を抑制できる。
また酸化グラフェン片1間に挟まれる数層グラフェン片2も、層間から脱離し難くなる。
二価のカチオンは、架橋に寄与できるものであれば、そのイオン種は問わない。入手の容易性等の観点からは、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンの少なくとも1種が好ましい。
上述のように、本実施形態にかかるナノカーボン分離膜10は、数層グラフェン片2によって酸化グラフェン片1の層間が適切に広げられている。そのため、本実施形態にかかるナノカーボン分離膜10は、分離膜として、透水性及び分離対象物の分離特性のいずれにも優れる。
また酸化グラフェン片1同士は二価のカチオンにより架橋されている。このため、使用途中で酸化グラフェン片1の剥離が抑制されている。そのため、溶液をナノカーボン分離膜10に対してクロスフローで供給することができる。
なおナノカーボン分離膜の厚さは任意に選択してよい。
(多孔質膜)
多孔質膜30は、ナノカーボン分離膜10の一面側に配設される。多孔質膜30は、ナノカーボン分離膜10を支持し、ナノカーボン複合分離膜100全体としての機械的強度を高める。
多孔質膜30は、図1及び図2に示すように、内部に孔部31を有する。内部に孔部31を有することで、厚み方向に透水性を有する。なお、孔部31は、厚み方向に延在する孔部である必要はない。実際には図7Bに示すように、微小な孔が複数連結した連結孔であってもよい。
多孔質膜30は、透水性と機械的強度を有すれば、公知の多孔質基材を選択し用いることができる。例えば、ポリイミド、ポリサルフォン、またはポリエーテルサルフォン等からなり連通孔を有する樹脂の膜や、ポーラスアルミナ等を、多孔質膜30として用いることができる。後述する接着層20を、熱や光等による架橋により形成する場合は、耐熱性の高いポリサルフォンの使用が特に好ましい。多孔質膜の厚さは任意に選択してよい。
(接着層)
接着層20は、ナノカーボン分離膜10と多孔質膜30とを接着する。接着層20は、透水性を大きく阻害せず、ナノカーボン分離膜10と多孔質膜30とを接着できるものを用いることができる。
接着層の材料は任意に選択できる。例えば、ポリビニルアルコール等を用いることができる。未架橋のポリビニルアルコールをナノカーボン分離膜10と多孔質膜30との間に設け、ポリビニルアルコールを架橋させることで、これらを接着できる。
ナノカーボン複合分離膜100の面内方向に対して、垂直な方向から通液するデッドエンドフローを行う場合は、ナノカーボン分離膜10が多孔質膜30から剥離することはほとんどない。これに対し、ナノカーボン複合分離膜100の面内方向に対して、平行な方向から通液するクロスフローを行う場合は、ナノカーボン分離膜10が多孔質膜30から剥離しやすくなる。そのため、ナノカーボン複合分離膜100に対してクロスフローで通液する場合は、特に接着層20を設けることが好ましい。接着層の厚さは任意に選択してよい。
上述のように、本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜100は、透水性及び分離対象物の分離特性の優れたナノカーボン分離膜10を備える。このため、分離特性に優れる。
またナノカーボン分離膜10の一面が多孔質膜30で支持されることにより、ナノカーボン複合分離膜100の機械強度を高めることができる。さらに、接着層20でナノカーボン分離膜10と多孔質膜30とを接着することで、使用途中においてナノカーボン分離膜10が剥離することが抑制される。
<ナノカーボン複合分離膜>
図8は、本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜の製造方法を、模式的に示した図である。
図8の(a)〜(d)にこの順で示すように、本実施形態にかかるナノカーボン複合分離膜100は、多孔質膜30の一面に接着層20を形成する工程と、接着層20が形成された面にナノカーボン分離膜10を形成する工程とを有する。
ナノカーボン分離膜10は、酸化グラフェン片1と、厚みが1nm〜30nmの複数の数層グラフェン片2と、が分散した分散液を、多孔質膜30の接着層20が形成された面に塗付、乾燥し、カーボン膜を形成する工程と、カーボン膜を二価のカチオンが溶解した溶液に浸漬する工程と、によって形成される。
製造に使用される、前記酸化グラフェン片1の厚みは、任意に選択できるが、1〜1.5nm程度であることが好ましい。
製造に使用される、数層グラフェン片2の平均径は、任意に選択できる。
分散液において、酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の合計質量に対する、酸化グラフェン片1の質量比は任意に選択できるが、0質量%より大きく20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。また、酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の合計質量に対する数層グラフェン片2の質量比は80質量%以上100質量%未満であり、80質量%より大きく95質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。酸化グラフェン片1と数層グラフェン片2の比率がこの範囲内であると、分離膜を得た際に、透水性又は分離対象物の分離特性の一方が著しく低下することを避けられる。
以下、図8を基に具体的に説明する。
まず図8の(a)に示すように、多孔質膜30を準備する。多孔質膜30は、上述のものから選択して用いられている。
次いで、図8の(b)に示すように、多孔質膜30の一面に接着層20を形成する。接着層20は、塗布等の手段によって形成できる。例えばポリビニルアルコール水溶液に、多孔質膜30を浸漬し、又は前記水溶液を前記膜に塗布し、乾燥させることで、多孔質膜30の一面に接着層20を形成できる。
次いで、図8の(c)に示すように、接着層20が形成された面に、酸化グラフェン片1と数層グラフェン片2とが分散した分散液11を塗布する。塗布の方法は特に問わない。公知の方法の中から任意に選択して使用してもよい。
例えば、ノズルからスプレーコートをすると、ノズル先端で分散液11にせん断力が加わり、酸化グラフェン片1及び数層グラフェン片2の分散性が高まる。
分散液11は、例えば、酸化グラフェン片1が分散した第1分散液と、数層グラフェン片2が分散した第2分散液とを、混合して得られる。
第1分散液は、例えば、以下の手順で得られる。まず酸化グラフェン片1を準備する。酸化グラフェン片1は、グラファイトを原料として公知の方法(例えば、特許文献1や非特許文献3に記載の方法など)で得られる。酸化グラフェン片1は水への分散性が高い。このため、水に添加しただけで第1分散液が得られる。
次いで、第2分散液は、例えば、以下の手順で得られる。まずグラファイトを準備し、必要に応じて選択される水溶液中に添加する。水溶液は、例えば、デオキシコール酸ナトリウム水溶液等を用いることができる。そして、グラファイト添加後の水溶液を、超音波分散処理及び遠心分離処理を行い、得られた液の上澄みを回収する。この回収した上澄み液が第2分散液である。
次に、第1分散液と第2分散液とを混合し、必要であれば希釈し、分散液11を得る。
塗布後の分散液11を、乾燥して、例えば自然乾燥して、カーボン膜が得られる。カーボン膜は、多孔質膜30と共に加熱することが好ましい。接着層が熱により架橋するものである場合、加熱により、接着層20が架橋し、カーボン膜と多孔質膜30の接着性が高まる。また余計な水分等も除去できる。
最後に、分散液11の塗布により形成されたカーボン膜を、二価のカチオンが溶解した溶液に浸漬する。例えば、二価のカチオンとしてカルシウムイオンを用いる場合は、塩化カルシウムが溶解した溶液に浸漬する。二価のカチオンが溶解した溶液に浸漬することで、酸化グラフェン片1同士が二価のカチオンを介して架橋する。溶液の溶媒は任意に選択してよい。二価のカチオンは任意に選択できるが、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが挙げられる。
上述のように、本実施形態にかかるナノカーボン分離膜の製造方法によれば、容易に所定のナノカーボン分離膜が得られる。またこのナノカーボン分離膜の製造方法を利用することで、容易にナノカーボン複合分離膜が得られる。
また本実施形態にかかるナノカーボン分離膜の製造方法によれば、酸化グラフェン片1が分散した第1分散液と、数層グラフェン片2が分散した第2分散液を混合するだけで、ナノカーボン分離膜の流体が流れる流路を制御できる。すなわち、ナノカーボン分離膜の透水性及び分離性能を容易に制御できる。
また本実施形態にかかるナノカーボン分離膜の製造方法によれば、ナノカーボン分離膜を分散液の塗布により作製することができる。そのため、ナノカーボン分離膜の大面積化が容易になる。
以上、ナノカーボン分離膜、ナノカーボン複合分離膜及びナノカーボン分離膜の製造方法について説明した。本発明は、発明の要旨を変えない範囲で種々の変更をしてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、5質量%の酸化グラフェン片と、95質量%の数層グラフェンとからなるナノカーボン分離膜を有するナノカーボン複合分離膜を作製した。具体的には、以下の手順で実施例1のナノカーボン複合分離膜を作製した。
まずグラファイト(Sigma−Aldrich社製 製品番号332461)を原料として、平均径12μmの酸化グラフェン片が分散した第1分散液を作製した。第1分散液は、以下のようにして作製した。
まず95質量%のHSO水溶液200mLと、85質量%のHPO水溶液40mLと、を混合し、さらに5gのグラファイトを添加し、マグネチックスターラで混合した。次いで、混合液にKMnOを25gゆっくり添加した。この際、液の色は黒から緑に変化した。そしてこの液を5分かけて40℃に昇温し、40℃で1時間保持した。1時間後には、グラファイトが剥離して、液がペースト状になった。得られたペーストを、テフロン(登録商標)棒を用いて40℃で2.5時間さらに混合した。その後、混合後のペーストを常温まで降温した。
次いで、このペーストに、35%のH水溶液40mLと5℃以下の冷水600mLとの混合液を、ゆっくり注いだ。混合液を注ぐと、ペーストは発熱し、泡が発生した。
そして、得られた混合液を1晩以上静置した。
静置した液は、上澄み液と沈殿物に分離した。上澄み液をデカンテーションにより除去し、沈殿物を得た。得られた沈殿物は、5質量%のHSO水溶液(1L)に添加し、分散させた。
そして、分散液を純水中に添加し、遠心分離し、その後純水へ分散する操作、を5回繰り返し、分散媒の清浄を行った。この過程で、遠心分離後の沈殿物は2層になる。下の層は互いに剥離していないグラファイトであり、上の層は剥離した酸化グラフェン片が水を吸ったものであった。下の層を除去することで、固形分濃度が0.9質量%の第1分散液を得た。得られた第1分散液を水で希釈し、Si基板上に滴下、乾燥した試料をSEM観察したところ、酸化グラフェン片の平均径は12μmだった。
次いで、第2分散液を用意した。0.5質量%デオキシコール酸ナトリウム水溶液にグラファイトを添加し、超音波分散を行った。超音波分散後の溶液を遠心分離し、上澄み液を回収した。上澄み液は、数層グラフェン片が分散した第2分散液である。第2分散液中に分散する数層グラフェンは、2層から16層程度(平均4層)の層構造を有し、厚みが1〜2nmであった。
そして得られた第1分散液と第2分散液を混合、希釈して、分散液を得た。分散液中には、酸化グラフェン片と数層グラフェン片とからなるナノカーボンが分散している。分散液中のナノカーボンの構成比率は、酸化グラフェン片が5質量%で、数層グラフェン片が95質量%であった。溶媒に対するナノカーボンの濃度は、0.8mg/mL、デオキシコール酸ナトリウムの濃度を0.5質量%に調製したとした。
また多孔質膜として、市販のポリサルフォン膜(Alfa Lavel社製:GR40PP、大きさ50mm×50mm)を準備した。そして、ポリサルフォン膜を1質量%のポリビニルアルコール水溶液(Sigma−Aldrich社製:分子量31,000−50,000、98〜99%ケン化品)に1時間浸漬した。浸漬後のポリサルフォン膜を、起立させた状態で風乾させた。その結果、ポリサルフォン膜の表面にポリビニルアルコールが被覆された。
次いで、ポリビニルアルコールが被覆された多孔質膜に対して、エアーブラシ(アネストイワタ製:HP−BCS)を用いて、前記分散液をスプレーした。その後、前記多孔質膜を100℃雰囲気下で1時間乾燥させた。この際、ポリビニルアルコールは架橋し、多孔質膜と、分散液が乾燥してなるカーボン膜と、が接着した。
最後に、得られた積層膜を、塩化カルシウム溶液に1時間浸漬した。塩化カルシウム溶液は、塩化カルシウムの濃度が5質量%であり、塩化カルシウム溶液の溶媒は、容積比で1:3の比率でエタノールと水が混合したものとした。そして、浸漬後の積層膜を乾燥させた。乾燥は、まず風乾した後、一度エタノールに一時間浸漬し、再度風乾した。
(実施例2及び3)
実施例2及び3は、第1分散液と第2分散液の混合比率を変更した点以外は、実施例1と同様の手順でナノカーボン複合分離膜を作製した。
得られたナノカーボン分離膜の構成比率は以下である。
実施例2:酸化グラフェン片(10質量%)、数層グラフェン(90質量%)
実施例3:酸化グラフェン片(15質量%)、数層グラフェン(85質量%)
(比較例1及び2)
比較例1及び2は、第1分散液と第2分散液の混合比率を変更した点以外は、実施例1と同様の手順でナノカーボン複合分離膜を作製した。
比較例1のナノカーボン分離膜の構成比率は、酸化グラフェン片を20質量%、数層グラフェンを80質量%とした。
比較例2のナノカーボン分離膜の構成比率は、酸化グラフェン片を40質量%、数層グラフェンを60質量%とした。
(比較例3)
比較例3は、分散液を第1分散液のみとして、第2分散液を用いなかった点以外は、実施例1と同様の手順でナノカーボン複合分離膜を作製した。
すなわち、比較例3のナノカーボン分離膜の構成比率は、酸化グラフェン片を100質量%とした。
(比較例4)
比較例4は、分散液を第2分散液のみとして、第1分散液を用いなかった点以外は、実施例1と同様の手順でナノカーボン複合分離膜を作製した。
すなわち、比較例4のナノカーボン分離膜の構成比率は、数層グラフェン片を100質量%とした。
<ナノカーボン複合分離膜の評価>
実施例1〜3及び比較例1〜4のナノカーボン複合分離膜の透水量及びNaCl除去率を測定した。具体的には、前記膜にクロスフローで、0.2%濃度の塩化ナトリウム水溶液を300mL/分で送液し、ナノカーボン複合分離膜の透水量、及びNaCl除去率を測定した。
透水量は、圧力5.0MPaでの透水性測定の結果から算出した。
NaCl除去率は、膜を直径25mmの円形に切り抜いて、クロスフロー濾過器(トスク社製)を用いて求めた。
NaCl除去率[%]={1−透過水のNaCl濃度[質量%]/原水のNaCl濃度[質量%]}×100
測定結果を表1に示す。表1において、GOは酸化グラフェン片を示し、FLGは数層グラフェン片を示す。
上述のように、実施例1〜3のナノカーボン複合分離膜は、酸化グラフェン片のみからなる比較例3のナノカーボン複合分離膜と比較して、NaCl除去率はほぼ同等であった。これに対し、透水量はいずれも比較例3より向上した。すなわち、透水性能と分離対象物の分離性能をいずれも充分満たす分離膜が得られた。
<数層グラフェンによる酸化グラフェン間の面間距離への影響>
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2及び比較例3で用いた分散液を、多孔質膜の代わりにSi基板上に塗布し、塩化カルシウム溶液への浸漬も含む同様の手順を行い、Si基板上にナノカーボン分離膜を形成した。以下、Si基板上に形成したものを参考実施例、参考比較例等と表記する。参考実施例1は、実施例1と同様の条件で作製されたものに対応し、その他の参考実施例及び参考比較例も同様の対応関係を意味する。
図9は、参考実施例1,2及び参考比較例1,2,3のX線回折(XRD)の測定結果を示す。
図9に示すように、酸化グラフェン片のみからなる参考比較例3は、回折角2θが11°にピークが得られている。このピークは、酸化グラフェンに特徴的なものであり、面間距離7.7Åに対応する。
これに対し、数層ナノグラフェンの比率を高めていくと、回折角2θのピークが11°から低角側に移動している。このピーク位置の移動は、酸化グラフェンの面間距離が広がったことに起因する。すなわち、数層ナノグラフェンは、酸化グラフェンの面間に挟まるように配設されており、挟まった数層ナノグラフェンにより酸化グラフェンの面間距離が広がっている。
酸化グラフェンの面間距離は、最大で12Åまで増加した。また、数層ナノグラフェンの比率が5質量%の参考実施例1では、回折角2θが26.6°に特徴的なピークが見られている。これは、数層ナノグラフェンを構成するグラフェンの面間距離3.34Åに相当するピークである。
<酸化グラフェン同士の架橋>
酸化グラフェン同士が二価のカチオンによって架橋していることを確認する検討を行った。
検討は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)測定、ラマン分光測定、及びX線光電子分光(XPS)測定によって行った。
測定は、酸化グラフェン片のみからなる参考比較例3と、参考比較例3の試料を塩化カルシウム溶液に浸漬する前でとめた試料(以下、参考比較例3−1と言う:塩化カルシウム溶液への浸漬なし)と、参考比較例3の試料を塩化カルシウム溶液に浸漬する前にとめてこの試料を100℃で加熱した試料(以下、参考比較例3−2と言う:塩化カルシウム溶液への浸漬なし)と、の3つの試料に対して行った。
図10は、参考比較例3、3−1,3−2のFTIR測定の結果を示す。FTIRは、全反射測定(ATR)法により行った。FTIR測定の観測ピークは、C-O (alkoxy/alkoxide,1042cm-1)、C-O(carboxy,1410cm-1)、C=C (aromatic,1620cm-1)、C=O (carboxy/carbonyl,1716cm-1)、OH(3300cm-1)に帰属される。
C=Cピークを基準として相対比較すると、CaCl処理を行った参考比較例3は、処理を行う前の参考比較例3−1と比較して、C−OとC=Oピークの強度が下がっている。これはCa2+イオンが酸素イオンに対して配位することで、C−OとC=Oピークの相対強度が低下したためである。
図11は、参考比較例3、3−1,3−2のラマン分光測定の結果を示す。
ラマン分光測定の結果におけるD(1350cm−1)/G(1600cm−1)比は、参考比較例3−1が0.92、参考比較例3−2が0.84、参考比較例3が0.87であった。
参考比較例3−1と参考比較例3−2とを比較すると、参考比較例3−2のD/G比が小さくなっている。
Gバンドはグラファイト構造に由来のピークであり、Dバンドは欠陥由来のピークである。そのため、D/G比が小さくなったことは、結晶性が高まったことを意味する。参考比較例3−2は、参考比較例3−1を100℃で加熱したものであり、加熱により酸化グラフェンの一部が還元され、グラファイト構造に近づいたためと考えられる。
一方で、参考比較例3−2と参考比較例3とを比較すると、参考比較例3のD/G比が大きくなっている。カルシウムイオンが配位することで、結晶配列に乱れが生じたためと考えられる。
図12A〜12Cは、参考比較例3、3−1,及び3−2のXPS測定により求められたC1sスペクトルのそれぞれの分析結果を示す。図12Aは参考比較例3−1の分析結果であり、図12Bは参考比較例3−2の分析結果であり、図12Cは参考比較例3の分析結果である。
図12Aと図12Bを比較すると、C=Cピークを基準としてC−O及びCOOのピーク比が相対的に小さくなっている。加熱により酸化グラフェンの一部が還元され、酸素元素が抜けたためと考えられる。
また図12Bと図12Cを比較すると、C=Cピークを基準としてC−O及びCOOのピーク比が相対的に小さくなっている。これは、酸素元素に対してカルシウムイオンが配位することで、C−O及びCOOピークの検出量が低下したためと考えられる。
また図13Aと図13Bは、参考比較例3のXPS測定により求められたCl2pスペクトル及びCa2pスペクトルの分析結果を示す。図13AはCl2pスペクトルの分析結果であり、図13BはCa2pスペクトルの分析結果である。
図13Aや図13Bに示すように、参考比較例3はCaのピークは検出されたが、Clのピークは検出されなかった。すなわち、参考比較例3には、CaClが残存しているのではなく、Caとして取り込まれていることが分かる。
上記の実験結果から、カルシウムイオンは酸素に配位し、酸化グラフェン同士を架橋していると言える。
<接着層の有無の検討>
実施例1のナノカーボン複合分離膜と、実施例1から接着層を除いたナノカーボン複合分離膜(以下、実施例4という)とを準備した。実施例4は、実施例1の作製工程において、ポリサルフォン膜をポリビニルアルコール水溶液に浸漬していない点が異なる。
実施例1と実施例4のカーボンナノ複合分離膜に対して、クロスフローで2〜5MPaの圧力で0.2%濃度の塩化ナトリウム水溶液を流速300ml/分で送液した。
図14Aと14Bは、実施例1及び実施例4の処理後のカーボンナノ複合分離膜の表面の写真である。図14Aは、塩化ナトリウム水溶液を供給開始してから23時間後の、実施例4のカーボンナノ複合分離膜の表面写真である。図14Bは、塩化ナトリウム水溶液を供給開始してから70時間後の、実施例1のカーボンナノ複合分離膜の表面写真である。
実施例4のカーボンナノ複合分離膜は、供給する液の流れによりカーボンナノ分離膜が剥がれている(図14Aの矢印で図示している部分)。これに対して、図14Bに示すように、実施例1のカーボンナノ複合分離膜は、剥がれ等が生じなかった。
すなわち、接着層を設けることで、カーボンナノ分離膜がカーボンナノ複合分離膜から剥離することを抑制できる。特に、カーボンナノ複合分離膜に対して、クロスフローで液を供給する場合は、接着層を設けることが好ましい。これに対し、デッドエンドフローで液や気体を供給する場合は、接着層が無くても使用することはできる。
<接着層の硬化の確認>
図15は、ポリビニルアルコールの加熱前後のFTIR測定を行った結果を示す。
図15に示すように、854cm−1ピークで規格化したときに、1141cm−1のピークが大きくなった。これは、ポリビニルアルコール膜の熱による硬化を示す。
すなわち、ポリビニルアルコール膜は、100度雰囲気下で1時間乾燥させれば充分架橋する。
分離性能に優れたナノカーボン分離膜を提供できる。
1 酸化グラフェン片
1a 第1の酸化グラフェン片
1b 第2の酸化グラフェン片
1B 境界
2 数層グラフェン片
10 ナノカーボン分離膜
11 分散液
20 接着層
30 多孔質膜
31 孔部
100 ナノカーボン複合分離膜

Claims (10)

  1. 厚み方向からみて互いに重なり合うように存在し、二価のカチオンによって互いに架橋された複数の酸化グラフェン片と、
    前記複数の酸化グラフェン片の層間に挿入され、厚みが1nm〜30nmの数層グラフェン片と、を備え、
    酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する、酸化グラフェン片の質量比が0質量%より大きく15質量%以下であり、数層グラフェン片の質量比が80質量%以上100質量%未満である、ナノカーボン分離膜。
  2. 前記酸化グラフェン片の平均径が、前記数層グラフェン片の平均径より大きい請求項1に記載のナノカーボン分離膜。
  3. 前記複数の酸化グラフェン片の平均面間距離が、7.7Åより大きい請求項1又は2のいずれかに記載のナノカーボン分離膜。
  4. 前記二価のカチオンが、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンである請求項1から3のいずれか一項に記載のナノカーボン分離膜。
  5. 前記酸化グラフェン片の厚みが1〜1.5nmである、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノカーボン分離膜。
  6. 酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する、酸化グラフェン片の質量比は、5質量%以上15質量%以下であり、
    酸化グラフェン片及び数層グラフェン片の合計質量に対する、数層グラフェン片の質量比が85質量%以上95質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノカーボン分離膜。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノカーボン分離膜と、
    前記ナノカーボン分離膜の一面側に配設され、前記ナノカーボン分離膜を支持する多孔質膜と、を有するナノカーボン複合分離膜。
  8. 前記ナノカーボン分離膜と前記多孔質膜とが、接着されている請求項7に記載のナノカーボン複合分離膜。
  9. 前記ナノカーボン分離膜と前記多孔質膜とが、ポリビニルアルコールによって接着されている請求項8に記載のナノカーボン複合分離膜。
  10. 複数の酸化グラフェン片と、厚みが1nm〜30nmの複数の数層グラフェン片と、が分散した分散液を塗付、及び乾燥し、カーボン膜を形成する工程と、
    前記カーボン膜を二価のカチオンが溶解した溶液に浸漬する工程と、を有するナノカーボン分離膜の製造方法。
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