JP3805228B2 - 電子放出素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に陽極酸化アルミナナノホールを適用した電子放出素子の製造方法に関する。特に、本発明の電子放出素子は、フラットパネルディスプレーや電子ビーム装置、撮像管などへの応用が可能である。
【0002】
【従来の技術】
現在、フラットパネルディスプレイに代表されるように、均一、微細、高効率、長寿命などの特徴を備えた電子放出素子の研究が盛んである。その微細な電子放出部の形成には、フォトリソグラフィー、電子線露光などの半導体加工技術を駆使して、多くのプロセスを踏んでいるのが一般的である。
【0003】
しかし、電子放出部の形成を均一かつ大面積に行う簡便な方法として、微細な構造をもつ材料(ナノ構造体)の適用があげられる。とくに、自己組織的に形成される構造が注目されている。
【0004】
そのナノ構造体としては、アルミニウムの陽極酸化によって得られるアルミナのポーラス皮膜の採用が適している。まず、アルミニウムの陽極酸化においては、蓚酸、燐酸または硫酸水溶液中などでおこなった場合、バリア層(アルミナ)で囲われたナノホールが形成され、ポーラス皮膜を得ることができ、また、硼酸アンモニウム、または酒石酸アンモニウム、またはクエン酸アンモニウム水溶液中などでおこなった場合、ナノホールは形成されず均一なアルミナの膜(バリア皮膜)が形成され、バリア皮膜を得ることができるという特徴がある。
【0005】
図2はアルミニウムの陽極酸化で得られる膜の模式図であり、図2(a)はポーラス皮膜の平面図、図2(b)は図2(a)のBB’線断面図である。アルミナのポーラス皮膜の特徴は、図2に示すように、直径(26)数nm〜数100nmの円柱状細孔(ナノホール)21が、数10nm〜数100nmの間隔(25)で平行に配列するという特異的な幾何学的構造を有することにある。そして、ナノホール21の配列間隔は、陽極酸化の際の電流、電圧を調整することにより制御が可能である。また、細孔壁および細孔底部には一般的にはアルミナからなる絶縁性のバリア層22が存在する。また図2(c)はバリア皮膜の断面図である。バリア皮膜23は細孔が形成されていない、比較的均一な絶縁性のアルミニウムの酸化物から形成されている。
【0006】
このアルミナのポーラス皮膜においては、ホール一つ一つを電子放出部とし、その複数の集合体で一つの電子放出素子とする試みがなされている(特開平5−211030号公報、特開平10−12124号公報など)。この場合の特徴は、ホールの径が十分小さいということである。これは、電子放出部の先端が単体のものよりも曲率半径が小さく、電界集中しやすく電子放出が容易に起こること、また複数の電子放出部から一つの電子放出素子を形成するため電流が安定するといった利点を利用している。
【0007】
ただし、個々の電子放出部間でのばらつきや、電界のかかり方が不均一ではいけないこと、また、現状の作製プロセスでは、作製が容易でないことも問題となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
大面積で、均一、安定、かつ容易に電子放出素子を形成するにあたり、ナノ構造体であるポーラスアルミナ皮膜を用いることが有用である。しかし、従来の素子では、電子放出部の不均一、電界集中のムラが、電子放出部の寿命の低下を招いている。また、真空中の酸素や水分が電子放出部の寿命を低下させる原因となっていた。
【0009】
これを解決するためには、電子放出部の均一化、および電子放出部の不均一による局所的電界集中に対する耐久性の向上が望まれている。また、作製プロセスを簡略化することも、大面積の電子源形成や低コスト化の為には必要である。
【0010】
すなわち本発明は、前述した様な従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、電界集中時の耐久性を向上させ、連鎖的放電破壊になりにくい且つ水分などの影響を受け難い電子源構造を有する電子放出素子、また容易で均一な電子放出素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明の別の目的は酸素や水分などの電子源動作環境の影響を受けにくい安定した電子放出素子の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、本発明の以下の構成及び製造方法により解決できる。
すなわち、本発明は、電子放出素子の製造方法であって、基板上に下地導電膜を形成する工程、該下地導電膜の上に被酸化膜を形成する工程、該被酸化膜上にアルミニウムを主成分とする膜を形成する工程、該アルミニウムを主成分とする膜を陽極酸化して細孔を有する酸化アルミニウムを形成する工程、及び前記被酸化膜を陽極酸化処理することにより、該細孔から突出していない酸化物からなる電子放出部を形成する工程を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法である。
【0012】
前記酸化物からなる電子放出部(以下、酸化物電子放出部と記す)に関しては円柱状である電子放出素子が好ましい。また、該酸化物電子放出部がTi、Zr、Hf、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれた少なくとも1種類以上の元素を主体とする酸化物からなる電子放出素子が好ましい。特にTiO2 が好ましい。
【0013】
電子放出部に用いられる酸化物の厚みは5nm以上150nm以下であることが好ましい。細孔内における酸化物の厚みが3nm以上120nm以下であることが好ましい。また、前記酸化物電子放出部がTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wを主成分とする金属の陽極酸化層である電子放出素子が好ましい。
【0014】
前記下地導電膜についてはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれた少なくとも1種類以上の元素を主体とする金属、もしくは貴金属元素を主体とする金属からなる電子放出素子が好ましい。
ここで、該導電性膜に用いる貴金属としてはPtが好ましい。特に電子放出部としてTiO2 を用いた場合にPtが有効である。
【0015】
前記下地導電膜と酸化物電子放出部の間の接合はショットキー接合であることが好ましい。
また、前記酸化アルミニウムを主成分とする層に配置された細孔の上端には引き出し電極が設けられており、バイアスの印加によって電子放出部から電子の放出を可能とする上記電子放出素子が低電圧駆動には好ましい。
【0016】
また、細孔を有する該酸化アルミニウム層がアルミニウムのポーラス陽極酸化層である電子放出素子が好ましい。
また、上記細孔は規則的に配列していることが好ましい。
【0020】
また、前記被酸化膜がTi、Zr、Hf、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれた少なくとも1種類以上の元素を主体とする金属膜からなる電子放出素子の製造方法が好適である。
【0021】
ここで下地導電層と被酸化膜が同じ金属膜である場合には、下地導電膜の上に被酸化膜を形成させる工程は下地導電膜を形成させる工程に含まれることになる。
【0022】
ここで前記被酸化膜を酸化させる工程が、陽極酸化工程であることが好ましい。特に、前記陽極酸化工程が、硼酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムまたはクエン酸アンモニウム水溶液中で陽極酸化することが好ましい。
【0023】
また、200℃以上の熱処理工程を有する上記電子放出素子の製造方法が好ましい。
また、前記細孔を規則的に配列させる電子放出素子の製造方法が好ましい。
【0024】
以下、本発明の特徴を説明する。
本発明の製造方法により得られた電子放出素子(以降、本発明の電子放出素子と記す。)は、ナノ構造体における陽極酸化アルミナナノホールの底部から形成されている内包物である電子放出部が、酸化物、特に絶縁性酸化物であるTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wの酸化物であるものである。これらの酸化物材料は一般的には電子放出材料としては用いられない絶縁性材料であるが、下地導電膜とうまく組み合わせることにより、これら酸化物材料の伝導帯(コンダクションバンド)へ電子を下地導電膜から注入させてやることにより良好な電子放出部となる。すなわち、電子放出部は酸化物層から構成されていると言える。この電子放出部に用いられる酸化物層の厚みは特に制限はないが、駆動電圧から考慮して150nm以下であることが好ましい。
【0025】
また本発明により、電子放出部とした内包物が酸化物であるために、真空中にある酸素や水分の影響を受けにくい電子放出素子を提供することが可能である。
【0026】
また、ナノホールを規則的に配列することにより、不規則な場合に比べてナノホールの形状の均一性が格段に向上し、電界も均一にかかり、電子放出による電流値を安定化することが可能である。また、電子放出部が細孔中に存在しているので、放電などによる電子放出部の損傷を受けにくい特徴がある。
以上の特徴から電子放出部を放電から保護することで長寿命化できる。
【0027】
また、本発明の電子放出素子は、ナノ構造体におけるナノホール上部に引き出し電極を形成することで、効率よく電子を放出させることが可能である。ここで、引き出し電極と電子放出部の距離は、被陽極酸化膜であるアルミニウムを主成分とする膜の厚みと、電子放出部形成時の陽極酸化電圧により高い精度で制御が可能である。
【0028】
さらに、本発明の電子放出素子の製造方法では、続けて行う2段階の陽極酸化工程によって、容易に、かつ大面積に高さの均一な電子放出部となる内包酸化物の形成を可能にする。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の電子放出素子を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の電子放出素子の一実施態様を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はAA’線での断面図を示す。本発明の電子放出素子は、ナノ構造体からなる。図1において、11はナノホール(細孔)、12はバリア層(アルミナ)、13は酸化物からなる電子放出部、14は電子放出部である内包物のない部分、15は電子放出素子の厚みに当たる部分、16は下地導電膜、17は基板、18は引き出し電極、19は上部ナノホール径(電子放出部がない部分)、110は下部ナノホール径(電子放出部がある部分)、111はナノホールの間隔である。
【0030】
上記ナノ構造体のナノホールは、一般的にアルミニウムの陽極酸化においてポーラス皮膜を形成することで知られる浴、例えば蓚酸、燐酸、硫酸などを用いて形成することができる。このときナノホールを囲むアルミナ部分がバリア層(アルミナ)12である。
【0031】
次いで、酸化物からなる電子放出部13を形成する場合には、上記の陽極酸化でも可能であるが、さらに酸化物からなる電子放出部13の形状を制御するには一般にアルミニウムの陽極酸化において均一なアルミナの膜であるバリア皮膜を形成することで知られる浴、例えば硼酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどを用いて形成することで電子放出部の厚み制御などが可能となる。
【0032】
上記電子放出部13は酸化物であり、陽極酸化で作製可能なTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wの酸化物が作製上も特性としても有効である。この電子放出部13は下地導電膜16の構成元素を主成分としたものでも使用可能である。また、電子放出部13の高さは、バリア皮膜を形成する浴中での陽極酸化時の印加電圧で制御可能である。電圧の印加に関しては、所望の電圧に到達するまでに、段階を踏んでも、一気に印加しても電子放出部13の高さは同じにすることが可能である。電子放出部13の厚み、すなわち電子放出部13の表面から下地導電膜の距離は電子放出部13の特性にも依存するが5〜150nm、好ましくは10〜100nmの範囲であることが好ましい。細孔内における酸化物の厚みは3nm以上120nm以下、好ましくは5〜80nmの範囲であることが望ましい。
【0033】
本発明におけるバリア層(アルミナ)12とは、ポーラス皮膜における細孔間を分離するアルミナ部分のことであり、バリア皮膜とは従来アルミニウムの陽極酸化を硼酸アンモニウム等の浴で行った場合に得られるアルミナの一様な膜のことであり、ポーラス皮膜と対比して使われる。したがって、本発明において、ポーラス皮膜を形成する浴を用いて陽極酸化した場合、ポーラス皮膜が得られる。しかし、ポーラス皮膜に対して引き続きバリア皮膜を形成する浴を用いて陽極酸化すると、バリア皮膜が得られる訳でなく、電子放出部13となる柱状の内包物が形成できることが特徴である。この場合にはアルミニウムの下地である被酸化膜が陽極酸化されて内包物となる。この様に作製する場合には被酸化膜としてTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wを主成分とするものが好ましい。
【0034】
もちろんこれらの電子放出部13は陽極酸化法でなくとも、熱処理などの酸化方法で作製可能であるが、均一性などの制御性を考慮すると陽極酸化が最も好ましい。ただし電子源としてもちいる過程において、溶液中で作製された上記電子源はアニール工程を行うことにより水分などを蒸発させたり、結晶性を高めておくことが好ましい。この様なアニール工程としては空気中や酸素中、また真空などの還元雰囲気中で100〜1000℃、特に好ましくは200〜500℃で処理することが好ましい。一般的な電子放出部のアニール工程には、電子放出部表面の酸化を防ぐために酸化性雰囲気は好まれないが、本発明では電子放出部が酸化物であるために安易な空気中などの酸化性雰囲気中でアニール可能である。例えば、ディスプレーなどのガラスの封着工程を電子源部のアニール工程にも利用できることになる。
【0035】
上記ナノホールの間隔111は、ポーラス皮膜を形成する浴中での陽極酸化の印加電圧で制御することが可能である。また、FIB(Focused IonBeam)、または規則的に突起が並んだモールド、または光や電子線を用いたリソグラフィー技術などを用いて、陽極酸化前に細孔形成開始点を規則的に形成しておくことで、ナノホールの間隔111は場所に関わらずに一定にすることができる。この様な規則化には蜂の巣状の配列や正方状の配列が特に好ましい。
【0036】
上記下部ナノホール径(電子放出部のある部分)110は、ポーラス皮膜を形成する浴中での陽極酸化の終了時間や孔径拡大処理の時間によって制御可能である。
【0037】
また、上部ナノホール径(電子放出部のない部分)19は、バリア皮膜を形成する浴中での陽極酸化後、もしくは熱処理後に孔径拡大処理を行う時間によって制御可能である。
上記の孔径拡大処理は、燐酸中に浸漬することにより行なうことができる。また、時間によって径を制御することが可能である。
【0038】
図1における基板17としては、下地導電膜16とアルミニウムを主成分とする膜が成膜可能な材質ならば使用可能である。例えば、基板としては、各種金属やガラス、SiO2、Al2 O3 など酸化物、Si、GaAs、InPなど半導体といった平坦で400℃程度の温度に耐えうるものが有効である。
【0039】
また、下地導電膜としては、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wなどの金属やPt、Ag、Au、Pd、Rh、Irなどの貴金属が好ましい。特にアニール工程で高温を用いる場合には貴金属が好ましい。また、電子放出部に用いる酸化物に依存するが、この酸化物とショットキー接合を形成する下地導電膜が好ましい。
【0040】
図1における引き出し電極18は、ナノホール上端に笠状に被さるように形成すれば効率良く電子を放出させることができる。
【0041】
本発明の電子放出素子はアレー状に配列させてマトリックス駆動することにより、ディスプレーを代表とする画像形成装置に利用できる。このとき、1画素を駆動する電子放出部は、例えば、1画素の電子放出面積を10μm角とし、電子放出部の間隔を100nm程度とすれば、1画素に約104 個の電子放出部を有することになる。1画素に数μAの電流量が必要としても1電子放出部当たり1nA以下になり、電子放出部の負荷が低減可能となる。すなわち、本発明は多数の電子放出部を高密度に作製可能であるため、1つ当たりの電子放出部の負荷が小さくなり、また電子放出部の幾つかが破壊された場合でも1画素あたりの影響を最小限に抑えることが可能となる。このことからも、本発明の電子放出素子は長寿命であるといえる。
【0042】
また、本発明の電子放出素子は電子線描画装置や撮像管などの電子放出素子としても利用可能であることは言うまでも無い。
【0043】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を説明する。以後、ポーラス皮膜を形成する浴中での陽極酸化を第一の陽極酸化と呼び、バリア皮膜を形成する浴中での陽極酸化を第二の陽極酸化と呼ぶことにする。
【0044】
実施例1
本実施例においては、本発明のナノ構造体の作製の手順を示すものである。
以下の図3(a)〜図3(e)に示す手順で作製した。
【0045】
1)ガラス基板33上にRFスパッタ法により、接着層としてTiの膜を5nm、その上に下地導電膜32としてPtの膜を30nm、さらにその上に被酸化膜34としてTiを50nm、その上にアルミニウム31の膜を500nmの厚さにそれぞれを形成した。さらに、その表面にFIB(Focused IonBeam)で蜂の巣状に100nm間隔で細孔形成開始点38となる窪みを形成した。(図3(a)参照)
【0046】
2)上記のアルミニウム31の膜を16℃の0.3mol/L蓚酸水溶液中で、40Vの電圧を印加して第一の陽極酸化を行った。(図3(b)参照)
3)続いて、10℃の0.05mol/L硼酸アンモニウム水溶液中で、20Vの電圧を印加して第二の陽極酸化を行った。(図3(c)参照)
【0047】
4)上記の状態でりん酸5%溶液に40分浸漬させることにより孔径拡大処理を行った。
【0048】
そして空気中で300℃で1時間アニール処理を行いPt上の被酸化導電膜であるTi膜34を完全に酸化させて下地酸化膜37とした。(図3(d)参照)5)最後に、引き出し電極39となるTaを斜入射スパッタ法によって、形成した。(図3(e)参照)
【0049】
以上の作製手順で作製された試料の断面を手順を追ってFE−SEMで観察した。
その結果、各手順において、手順1)で図3(a)に、手順2)で図3(b)に、手順3)で図3(c)、手順4)で図3(d)に、手順5)で図3(e)の構造が得られていることを確認した。
【0050】
また、このときの電子放出部の径は、45nmである。また、ナノホール上部の電子放出部がない部分の径は、孔径拡大処理により45nmから77nmへ拡大した。
【0051】
次に試料に電極をつけ、真空中で電圧を印加した。駆動電圧は下地導電膜と上部の引き出し電極間に印加し、加速電圧(約3kV)は下地導電膜と図示はしていないが上部にある蛍光板間に印加した。比較例としてナノホール中にNiを電着により埋め込んだ電子放出素子を作製して同様な試験を行なった。その結果本発明の酸化チタンを電子放出部としたものと、比較例で、印加電圧が50V付近で電子の放出を確認した。
【0052】
しかし、Niを電子放出部としたものは、充填されたNiの量、すなわちNiのピラーの高さに分布があり、また一部充填されていない細孔が存在していたため、電子放出量の分布が大きかった。また、電流量が安定せず、長時間測定した結果、放出電子量は徐々に減少した。その間、本発明の方は電流値が長時間にわたり安定していることが確認できた。また10-5Paの分圧の水分の影響を観察した結果、本発明の素子の方が影響が少なかった。
【0053】
以上から、本発明では、電子放出部がミクロな放電の影響をうけずらく、電子放出部から安定して均一に電流量を確保できることが確認できた。また、本発明の素子は水分などの影響も少ないことが確認できた。
【0054】
実施例2
本実施例は、本発明における電子放出部の材料に関するものである。
ガラス基板上にTiを5nm、Ptを50nm成膜したのち、RFスパッタ法によりSi、Ni、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W膜を膜厚50nmにそれぞれ成膜した後、アルミニウム膜500nmを形成したもの6種類を使用し、それぞれについて第一の陽極酸化、第二の陽極酸化を実施例1と同様に施した。その後それらのFE−SEMによる観察を行った。
【0055】
観察の結果、Si、Ni、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W膜のうち、電子放出部となる内包物が形成されていたものは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W膜を用いた場合のみで、その他のSi、Ni膜を用いたものは内包物が形成されていなかった。
【0056】
上記の試料を300℃の空気中でアニールした後に陽極酸化膜の表面にTaを斜入射スパッタリング法で作製し引き出し電極とした。そして、真空中で電圧を印加したところ、100V以下の印加電圧で全ての試料から電子放出が見られたが、酸化チタンを電子放出部としたものが最も電子放出が安定していた。
以上から、本発明の構成および作製法により安易に電子放出特性の優れた電子放出部が得られることが分かった。
【0057】
また、電子放出部が形成されたものの内、Tiを詳しく観察すると、第二の陽極酸化前および熱処理前は図4(a)のようにバリア層45の底部の中に電子放出部44が形成されており、その下部には一部被酸化導電膜43が酸化されないままに残っていたが、第二の陽極酸化を施して熱処理後には電子放出部44(内包物)は細孔中で太く円柱状に成長し、またバリア層と下地導電膜間に残留していた被酸化導電膜43は完全に酸化されて下地酸化膜46に変化していた。
【0058】
実施例3
本実施例においては、本発明の電子放出素子の作製時における第二の陽極酸化の印加電圧とそれに伴う内包物の高さの揺らぎに関するものである。
第一の陽極酸化工程は、実施例1と同じ条件で行った。ただし被酸化膜は100nm厚のNb膜を用いた。
【0059】
まず、第一の陽極酸化工程を終了した試料を4つ用意した。また、第二の陽極酸化工程においても実施例1の浴の条件を用いた。
第二の陽極酸化工程において、各試料への印加電圧をそれぞれ10V、40V、100V、200Vとした。
【0060】
評価
陽極酸化終了後、FE−SEMにより試料の断面観察を行い、電子放出部の高さとおおまかな揺らぎの程度を見積った。その結果第二の陽極酸化が10Vでは4nm、50Vでは30nm、100Vでは115nm、200Vでは300nm程度の高さを有する電子放出部(内包物が)得られていた。
【0061】
以上の結果から、電子放出部の高さと印加電圧の関係は、ほぼ高電圧側では比例関係であることがわかり、大まかに次の式で与えられることが判明した。
【0062】
【数1】
【0063】
また、内包物の高さの揺らぎ量を内包物100本ほどの観察で大まかに見積もると、揺らぎの最大値は電子放出部の高さの10%以内であり、非常に均一であった。
以上のことから本発明の製造方法により形状が均一な電子放出部が安易に形成できることが分かる。
【0064】
上記の試料を300℃の空気中でアニールした後に陽極酸化膜の表面にTaを斜入射スパッタリング法で作製し引き出し電極とした。そして、真空中で電圧を印加したところ、電子放出部の高さが5〜150nmの範囲の試料が100V以下の印加電圧で電子放出が見られた。
【0065】
実施例4
本実施例においては、本発明におけるナノホールの規則化に関するものである。
ガラス基板上にRFスパッタ法により、W膜(膜厚50nm)とアルミニウム膜(膜厚500nm)を形成したものに、FIB(Focused Ion Beam)により蜂の巣状に窪みをつけた。窪みの間隔は100nmである。
【0066】
次に、第一の陽極酸化を0.3mol/L蓚酸水溶液中で40Vの電圧を印加して行い、第二の陽極酸化を0.05mol/L硼酸アンモニウム水溶液中で100Vの印加電圧で行った。
【0067】
この試料の断面をFE−SEMで観察した。比較のためにFIBを用いずに作製した試料も観察した。その結果、規則化した場合は、細孔が完全に下地導電膜に対して垂直であり、すべて一直線であった。それに対して、規則化していない場合は、ほぼナノホールは下地導電膜に垂直であるが、下地導電膜に到達していないナノホールや径の小さい内包物(電子放出部)も見受けられた。これにより、周囲のナノホールが影響を受けナノホール径にばらつきが生じる。その結果、一部の電子放出部に電界が集中し、電流値が比較的安定しないことが判明した。
【0068】
したがって、ナノホールを規則化したものは、均一性が高く、電流値を安定化する上で重要であることが確認できた。
【0069】
実施例5
本実施例においては、下地導電膜にTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W膜を用いた場合について説明する。
【0070】
試料の作製は、実施例1と同様の方法で、ガラス基板上にRFスパッタ法により、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W膜(膜厚50nm)とアルミニウム膜(膜厚500nm)を形成したものを第一の陽極酸化電圧40V、第二の陽極酸化電圧100Vとして陽極酸化し、その後孔径拡大処理は無しのものと燐酸5wt%中に50分浸漬したものを準備し、真空雰囲気中で熱処理を300℃で2時間行った。
【0071】
得られた試料をFE−SEMで観察した結果、細孔の底部には表面が酸化された下地導電膜が形成されていた。すなわち金属の下地導電膜に接合された形でその表面に電子放出部になる下地導電膜の酸化物が形成されていた。
【0072】
最後に斜入射スパッタ法によりTaの引き出し電極を形成した。引き出し電極と電子放出部間の距離は、およそ300nmである。また、このとき全ての試料において100〜150V程度の印加電圧で電子放出が観測できた。
以上から、本発明の電子放出部は下地導電膜の表面酸化でも形成可能であることが分かった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により以下の効果がある。
本発明により、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、およびWから選ばれた少なくとも1種類以上の元素を主体とする酸化物を主成分とする電子放出部を持った内包物を有するナノ構造体を形成し、下地導電膜と接合させることにより、酸化物表面から安定な電子放出が得られることが分かった。
また、本発明の電子放出素子は水分などの影響を受け難く、長寿命であることが分かった。
【0074】
また、ナノホールを規則的に配列させることで、一直線な内包物が基板に対して垂直に形成され、均一性が格段に向上した。これにより従来のものより電界が均一にかかり、電子放出による電流値を安定化することを可能にした。
さらに、本発明の電子放出素子の製造方法においては、続けて行う2段階の陽極酸化工程によって、容易に、かつ大面積に高さの均一な電子放出部となる内包物の形成を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子放出素子の一実施態様を示す模式図である。
【図2】陽極酸化アルミナナノホールの模式図である。
【図3】本発明の電子放出素子における各作製段階の状態を示す模式図である。
【図4】本発明の電子放出素子における酸化物の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
11 ナノホール(細孔)
12 バリア層(アルミナ)
13 電子放出部(内包物)
14 電子放出部のない部分
15 酸化物の電子放出部のある部分
16 下地導電膜
17 基板
18 引き出し電極
19 上部ナノホール径(電子放出部のない部分)
21 ナノホール(細孔)
22 バリア層(アルミナ)
23 バリア皮膜
24 基板(アルミニウム)
25 ナノホールの間隔
26 ナノホールの直径
31 アルミニウム
32 下地導電膜(Pt)
33 基板(ガラス)
34 被酸化膜
35 アルミナナノホール
36 電子放出部(酸化チタン)
37 下地酸化膜(酸化チタン)
38 細孔形成開始点
39 引き出し電極(タンタル)
41 基板
42 下地導電膜
43 被酸化導電膜
44 電子放出部(酸化チタン)
45 バリア層(アルミナ)
46 下地酸化膜(酸化チタン)
110 下部ナノホール径(内包物のある部分)
111 ナノホールの間隔
Claims (10)
- 電子放出素子の製造方法であって、基板上に下地導電膜を形成する工程、該下地導電膜の上に被酸化膜を形成する工程、該被酸化膜上にアルミニウムを主成分とする膜を形成する工程、該アルミニウムを主成分とする膜を陽極酸化して細孔を有する酸化アルミニウムを形成する工程、及び前記被酸化膜を陽極酸化処理することにより、該細孔から突出していない酸化物からなる電子放出部を形成する工程を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
- 前記下地導電膜がTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、およびWから選ばれた少なくとも1種類以上の元素を主体とする金属からなる請求項1記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記下地導電膜が貴金属元素からなる請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記被酸化膜がTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、およびWから選ばれる少なくとも1種類以上の元素の金属膜からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記陽極酸化処理が、硼酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムまたはクエン酸アンモニウム水溶液中で陽極酸化することを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
- 200℃以上の熱処理工程を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記細孔が規則的に配列している請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記下地導電膜と前記酸化物との界面から、前記酸化物の表面までの厚さが5nm以上150nm以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記細孔内における前記酸化物の厚みが3nm以上120nm以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記酸化物と前記下地導電膜との間がショットキー接合している請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
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