JP3805203B2 - 点眼用水性懸濁製剤およびその製造方法 - Google Patents

点眼用水性懸濁製剤およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難水溶性の抗ウイルス剤である9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する点眼用水性懸濁製剤、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニン(一般名:アシクロビル(JAN;INN);以下単にアシクロビルと記載する場合もある。)は、プリン骨格を有する抗ウイルス作用薬であり、ヘルペス群ウイルスに対して選択的に作用し、しかも正常細胞への傷害性が低いことから、ヘルペス感染症治療薬として臨床的に広く使用されている化合物である。
【0003】
しかしながら、アシクロビルは、水に対する溶解性が極めて低く、酸性またはアルカリ性の水溶液中には溶解するものの、中性付近の水溶液には極めて溶けにくい化合物である。そのうえ、酸性あるいはアルカリ性下においても、その溶解状態は不安定なものであり、溶液中で容易に結晶析出を生ずる。したがって、アシクロビルについて、長期間の保存安定性が要求される水溶性製剤の開発を困難なものとしている。そのため、現在眼角膜ヘルペス感染症に対して臨床的に使用されているアシクロビルの眼用製剤としては、眼軟膏剤だけであり、点眼用の水溶性製剤はいまだ開発されていない。
【0004】
ところでアシクロビル含有の眼軟膏剤は、患者自身での投与が比較的困難であること、また、塗布適用直後には視界が遮断されてしまい、通常の状態に戻るまでには数時間を要するなど、多くの問題点を有している。したがって、患者が容易に投与できうる点眼製剤の開発が求められており、これまでに、いくつかの点眼製剤の検討が行なわれてきている。
【0005】
例えば、特開平8−268892号公報には、アシクロビルにポリビニルピロリドンを配合した水溶液製剤が提案されており、また、特開平9−143096号公報には、アシクロビルと多価アルコールとを含有する抗ウイルス剤組成物が提案されている。これらの製剤は、いずれも溶解補助剤としてポリビニルピロリドンあるいは多価アルコール等を用いて、難水溶性のアシクロビルの溶解性を確保しようとした製剤であるが、使用する溶解補助剤の添加量が限定されているうえ、溶解させたアシクロビルは、未だ結晶化しやすいことから、製剤の安定性、特に長期保存安定性の面では不十分なものであった。
【0006】
一方、水溶液製剤とは異なり、点眼用の懸濁製剤の提案もなされている。例えば、特開平10−287552号公報には、アシクロビルに水を加え、加温濾過してなる滅菌されたアシクロビルの水性懸濁点眼剤が提案されている。また、特開平11−228386号公報には、アシクロビル等に代表される難水溶性の有効成分を、塩基性下に溶解水溶液とした後、酸と混合させることにより結晶を沈殿させ、その際に増粘剤としてイオン感受性の親水性ポリマーを添加させた懸濁製剤が提案されている。さらに特開平2000−247887号公報には、親水性高分子の存在下にアシクロビルをpH2以下で一旦完全に溶解させ、次いでpH6〜9に調整することで微細なアシクロビルの結晶を析出させた懸濁製剤が提案されている。
【0007】
上記で提案されている各製剤は、アシクロビルの溶解性が低いために、懸濁液製剤として調製することを目的とするものであり、加熱やpH調整によりアシクロビルを一旦完全に溶解させた後、結晶を再度析出させることにより、アシクロビルの結晶サイズを点眼使用に適する範囲にコントロールした懸濁製剤を得ようとするものである。
【0008】
しかしながらいずれの懸濁製剤にあっても、懸濁含有されたアシクロビルの結晶の安定性は不十分なものであった。すなわち、これらの懸濁製剤は、有効成分となるアシクロビルの含有量を高めるための手段としては有効なものであるが、難水溶性のアシクロビルの結晶を、懸濁製剤の調製時のみに微細化しているだけである。つまり、長期保存にともなう製剤中での結晶の状態変化については対応ができておらず、製剤中の結晶の成長を抑制できない問題点があるため、医薬品製剤としては不十分なものであった。
【0009】
以上のように、アシクロビルを有効成分とするウイルス感染症を治療するための簡便な点眼剤の開発は、眼角膜ヘルペス感染症の治療剤として極めて有効なものであるにもかかわらず、難水溶性のアシクロビルを有効成分として含有する点眼剤は、未だ医薬品として実用化されるに至っていないのが現状である。そのため、アシクロビルを十分量含有するとともに、医薬品としての安定性を維持し得る有用な点眼剤の開発が求められていた。
【0010】
ところで、本発明者らの検討によれば、難水溶性のアシクロビルは、水溶液中に溶解させた後、冷却時に結晶が析出する場合に限らず、微細結晶状態で懸濁させている状態においても、温度変化や含有される分散剤等の影響を受けて、結晶成長が起こり、比較的速やかに、数10〜100μm以上の長径を有し、かつ短径と長径との比が1:10を超える針状晶あるいは板状晶の結晶に成長することを見出した。
【0011】
このような結晶の成長は、点眼用の水性懸濁製剤中では、好ましいものではない。したがって、製剤的に安定であるアシクロビル含有の水性懸濁製剤とするためには、懸濁製剤中でかかる結晶の成長を生じさせないようすればよい点に着目し、検討を加えた。
【0012】
その結果、アシクロビルを、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、および非イオン性界面活性剤の両者の存在下に、pH3〜8の範囲内で結晶を溶解させずに懸濁化した後、そのpHを点眼製剤としての適用範囲内である6〜8に調整した場合には、アシクロビルが発揮するバイオアベイラビリティーを損なうことなく、その結晶成長を抑制する、製剤的に極めて安定性に優れた点眼用の水性懸濁製剤を調製し得ることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、有効成分であるアシクロビルを有効治療量として十分量含有するとともに、医薬品として安定性に優れた点眼用の水性懸濁製剤を提供することを課題とする。さらに本発明は、かかる安定性に優れた点眼用の水性懸濁製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明の基本的な一態様は、安定性に優れたアシクロビルを含有した点眼用の水性懸濁製剤の製造方法を提供するものであり、具体的な請求項1に記載の発明は、0.2〜5重量%のアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶を、0.05〜1重量%のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および0.01〜1重量%の非イオン性界面活性剤を含有するpH3〜8の水溶液中に結晶状態のまま懸濁させた後、そのpHを6〜8に調整することを特徴とする点眼用水性懸濁製剤の製造方法である。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、0.2〜5重量%のアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶を、0.05〜1重量%のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含有するpH3〜8の水溶液中に結晶状態のまま懸濁させ、そのpHを6〜8に調整した後、さらに0.01〜1重量%の非イオン性界面活性剤を添加し、攪拌することを特徴とする点眼用水性懸濁製剤の製造方法である。
【0016】
すなわち本発明は、アシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶を、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、および非イオン性界面活性剤の両者の存在下に、特定のpH領域内で、結晶を完全に溶解させない状態で懸濁化することにより、保存時におけるアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の結晶成長を特異的に抑制させた、安定性に優れる点眼用水性懸濁製剤の製造方法を提供する点に特徴を有する。
【0017】
この場合にあって、請求項3に記載する本発明は、請求項1または2に記載の製造方法において、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物のケン化度が、70〜95モル%であるポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を使用する点眼用水性懸濁製剤の製造方法である。かかるケン化度を有するポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を使用することにより、含有されるアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶について、結晶成長がより効果的に抑制される。
【0018】
また、請求項4に記載する本発明は、請求項1または2に記載の製造方法において、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物の重合度が、300〜2000であるポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を使用する点眼用水性懸濁製剤の製造方法である。かかる重合度を有するポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を使用することにより、含有されるアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶について、結晶成長がより効果的に抑制される。
【0019】
さらに、請求項5に記載する本発明は、請求項1または2に記載の製造方法において、0.01〜1重量%のポリビニルピロリドンをさらに含有する点眼用水性懸濁製剤の製造方法である。かかる量のポリビニルピロリドンを添加することにより、懸濁製剤中における有効成分であるアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の分散性が向上される特徴を有する。
【0020】
また本発明の別の態様は、安定性に優れたアシクロビルを含有した点眼用の水性懸濁製剤そのものを提供する。具体的には、請求項6に記載の本発明は、上記の点眼用水性懸濁製剤の製造方法により製造された点眼用水性懸濁製剤を提供する。
【0021】
特に本発明が提供する点眼用の水性懸濁製剤にあっては、懸濁状態で含有されるアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶は、眼房水移行性が妨げられることなく、かつ有効な治療剤効果を発揮し得る粒子径を有する微細結晶であればよい。
【0022】
しかして、請求項7に記載の本発明は、上記請求項6で提案される水性懸濁製剤において、製剤中に懸濁化されたアシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶が、その短径が50μm以下、長径が70μm以下であり、かつ短径と長径の比が1:10以下のものである点眼用水性懸濁製剤である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明で提供される点眼用の水性懸濁製剤について、より詳細に説明する。
【0024】
本発明の点眼用水性懸濁製剤に使用される有効成分は、アシクロビルまたはその薬学的に許容される塩である。この場合のアシクロビルの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またアルカリ土類金属との塩などを挙げることができる。
【0025】
なお、以下、本明細書においては、アシクロビルまたはその薬学的に許容される塩を含め、単にアシクロビルと称する。したがって、アシクロビルとは、遊離のアシクロビルのみならず、その薬学的に許容される塩の形態のアシクロビルをも包含するものである。
【0026】
本発明において有効成分としてのアシクロビルの微細結晶は、最終的に調製される水性懸濁製剤が、点眼用であることから、懸濁状態で含有されたアシクロビルについての眼房水移行性を妨げられることなく、有効な治療剤効果を発揮し得る粒子径を有する微細結晶であればよい。すなわち、その微細結晶の粒径は、短径および長径が共に75μm以下であり、かつ短径と長径の比が1:10以下のものを使用した場合に、かかる目的が達成されることが判明した。そのなかでも特に、微細結晶の短径が50μm以下、長径が70μm以下であり、かつ短径と長径の比が1:10以下のものを使用するのが好ましく、かかる微細結晶を使用することにより、結晶状態が長期にわたり安定し、良好な水性懸濁製剤が調製できることが判明した。
【0027】
このアシクロビルの微細結晶の含有量は0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。含有量が0.2重量%未満であると、製剤中におけるアシクロビルの含有量が不十分であり、目的とする薬効が十分に発揮されない可能性があり、好ましいものではない。逆に、5重量%を超える場合には、懸濁製剤中で難水溶性のアシクロビルの微細結晶が凝集しやすくなるため、結晶成長抑制効果が十分に発揮でき得ず、その結果、最終的に調製された懸濁製剤の安定性が低くなる恐れがあり、好ましいものではない。
【0028】
本発明の水性懸濁製剤で使用するポリ酢酸ビニルの部分ケン化物は、酢酸ビニルを重合し、分子中のアセチル基の一部をケン化することにより得られる親水性の高分子化合物であり、部分ケン化型ポリビニルアルコールと表記される場合もある。この場合のポリビニルアルコールとは、ポリ酢酸ビニルのほとんど全てのアセチル基が水酸基に変換された多価アルコールであるが、本発明の水性懸濁製剤の調製においては、そのケン化度が70〜95モル%のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を選択するのがよいことが判明した。
【0029】
ケン化度が70モル%より低いと、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物の添加によるアシクロビルの結晶成長抑制効果が十分に得られないばかりでなく、加水分解により酢酸が生成しやすくなるため、最終的に調製される水性懸濁製剤の安定性を低下させる恐れがあり、好ましいものではない。一方、ケン化度が95モル%より高くなると、点眼剤製剤中に配合される他の成分(例えば、ホウ酸、ホウ砂等)の影響により、ゲル化が起こる可能性があり、また好ましいものではない。
【0030】
本発明における上記のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物の添加量は、0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。添加量が0.05重量%未満では、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物による結晶成長抑制効果が十分に得られない恐れがあり、好ましくない。逆に添加量が1重量%を超える場合には、水性懸濁製剤の粘度が著しく高くなる場合があり、その結果、含有される有効成分であるアシクロビルが凝集しやすくなり、結晶成長抑制効果が十分に得られなくなる恐れが生じるだけでなく、点眼時の使用感が大幅に低下するため、好ましくない。
【0031】
一方、本発明で使用するポリ酢酸ビニルの部分ケン化物の重合度は、300〜2000、好ましくは300〜1700、さらに好ましくは300〜1400である。当該重合度が300未満では、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物による結晶成長抑制効果が十分に得られない恐れがあり、逆に重合度が2000を超える場合には、懸濁製剤の粘度が著しく高くなる場合があり、その結果アシクロビルが凝集してしまい、結晶成長抑制効果が十分に得られなくなる恐れが生じるだけでなく、点眼時の使用感が大幅に低下するため、好ましくない。
【0032】
通常市販されているポリ酢酸ビニルの部分ケン化物においては、その重合度を代替的に表す指標として、20℃における4%水溶液の粘度が用いられている(JIS K6726)。この粘度で表示した場合には、本発明で用いるポリ酢酸ビニルの部分ケン化物は、20℃における4%水溶液の粘度が3〜60mPa・sであるものが好ましく、なかでも3〜40mPa・sであるものがさらに好ましい。
【0033】
本発明が提供する水性懸濁製剤においては、有効成分であるアシクロビルの微結晶が製剤中に懸濁化されている製剤であり、その懸濁化のために、分散剤として非イオン性界面活性剤を含有する。
【0034】
使用される非イオン性界面活性剤としては、従来から医薬品に利用されてきた非イオン性界面活性剤のなかから、安全性の高いものから選択すればよく、例えば、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類等を挙げることができる。
【0035】
本発明においては、そのなかでも懸濁製剤の分散性や、点眼剤としての適用を考慮すると、親水性が比較的高い、HLB(親油−親水バランス)が10以上、好ましくはHLBが12以上のものが好ましく選択される。
【0036】
このような非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールや、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール等を挙げることができる。そのなかでも、点眼用製剤に使用する点を考慮すると、ポリソルベート80またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を使用するのが、特に好ましい。
【0037】
かかる非イオン性界面活性剤の添加量は、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。当該添加量が0.01重量%より低いと、有効成分であるアシクロビルが安定に懸濁化されなくなり、結果として、最終的に得られる懸濁液剤の安定性が低下する可能性がある。また、1重量%を超える場合には、製剤中の界面活性剤の濃度が高くなるために、アシクロビルの微細結晶の凝集が生じ易く、分散安定性が低下する恐れがあり、好ましいものではない。
【0038】
本発明により提供される水性懸濁製剤は、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物と非イオン性界面活性剤を含有する水溶液中に、有効成分であるアシクロビルの微細結晶が懸濁状態で分散しているものである。有効成分のアシクロビルの微細結晶が沈降している場合には、使用時に軽く振とうして、再分散させた後、使用すればよく、製剤中でのアシクロビルの微細結晶の沈降は、製剤の品質上に何らの影響を与えるものではないことが判明した。
【0039】
しかしながら本発明においては、さらにポリビニルピロリドンを懸濁製剤中に添加させることにより、有効成分であるアシクロビルの微細結晶が沈降した際の再分散性を、より向上させることができる。かかる再分散性を高めるために添加されるポリビニルピロリドンは、一般に医薬品用途で使用されているものから選択すればよく、分子量が約20000〜50000程度のものが好ましく使用される。
【0040】
ポリビニルピロリドンの添加量は、0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。添加量が0.01重量%より低いと、ポリビニルピロリドンの添加による再分散性向上効果が十分に得られない可能性があり、好ましいものではない。また、逆に1重量%を超えると、最終的に得られる懸濁製剤の粘度が高くなり、その結果、アシクロビルの微細結晶が凝集してしまい、結晶成長抑制効果が十分に得られなくなる可能性があるだけでなく、再分散性が悪くなる恐れがあり、好ましいものではない。
【0041】
一般に水性点眼製剤において、眼刺激のない製剤のpH領域は4.8〜8.5であるが、点眼液のpH調整は、眼刺激を減らす目的よりも、含有される薬液の安定化、薬効の増強を目的とする場合が多いとされている(第十改訂調剤指針、日本薬剤師会編)。
【0042】
本発明が提供する水性懸濁製剤にあっても、そのpHは、一般的に点眼液として許容される中性付近に調整することが好ましい。特に本発明の水性懸濁製剤においては、含有される有効成分であるアシクロビルの微細結晶の安定性を考慮すると、その製剤のpHは、6〜8に調整されることが好ましい。
【0043】
懸濁製剤のpHが6未満の場合、あるいは8を超える場合には、有効成分であるアシクロビルの微細結晶の溶解性が変化するため、結晶成長が起こりやすくなり、好ましいものではない。さらにまた、製剤中に配合されるポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および非イオン性界面活性剤の安定性が低下してしまい、懸濁製剤の安定性が低下する恐れがある。
【0044】
したがって、本発明が提供する水性懸濁製剤にあっては、そのpH安定性を考慮し、その安定性を損なわない限り、上記成分の他に、等張化剤や緩衝剤、保存剤、pH調整剤等、一般に点眼用液剤に用いられる各種の成分をさらに添加することができる。
【0045】
等張化剤としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等の水溶性多価アルコール;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のような電解質物質などを挙げることができる。そのなかでも、グリセロールが好ましく使用される。
【0046】
また緩衝剤としては、例えば、点眼製剤に広く用いられているホウ酸、あるいはホウ酸/ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)混合系の他、リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム混合系や、リン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム混合系などを使用することができる。
【0047】
pH調整剤としては、前記したホウ酸(塩)やリン酸(塩)の他、塩酸や水酸化ナトリウム等の酸、アルカリを用いることも可能である。
【0048】
保存剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩類、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、あるいはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラベン類、または、クロロブタノール等を挙げることができ、これらのうちから一種以上を適宜選択して、使用することがでる。その場合の添加量は、第四級アンモニウム塩にあっては、0.003〜0.02重量%程度であり、パラベン類にあっては、0.05〜0.1重量%程度であり、クロロブタノールにあっては0.25〜0.5重量%の範囲内で用いればよい。
【0049】
次に、本発明が提供する水性懸濁製剤の具体的製造方法について説明する。
【0050】
本発明の水性懸濁製剤の製造にあっては、難水溶性の抗ウイルス剤であるアシクロビルの微細結晶を、特定量のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および非イオン性界面活性剤とを含有する液中において、特定のpH領域で、しかもアシクロビルの微細結晶を完全に溶解させない状態で懸濁、分散させることにより、安定性に優れた、アシクロビル含有の点眼用水性懸濁製剤を製造することができる。
【0051】
したがって、点眼用の製剤の調製方法を適用する限り、その他の条件は特に限定されないが、以下に記載する二段階の調製方法を用いることにより、アシクロビルの微細結晶を含有する安定性に優れた、水性懸濁製剤を製造することができる。
【0052】
すなわち、本発明が提供する点眼用の水性懸濁製剤の製造方法における第一段階は、アシクロビルの微細結晶を、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含有するpH3〜8、より好ましくはpH4〜7.5の液中で、懸濁化を行う段階である。
【0053】
懸濁させる液のpHが3以下であると、アシクロビルの微細結晶の水に対する溶解性が高くなり、後にpHを中性付近に調整する際に、その溶解度が急激に低下する結果、pHの調整時にアシクロビルの微細結晶の針状化が起こりやすくなる。その結果、最終的に調製される水性懸濁製剤の結晶安定性が低下する恐れがあり、好ましいものではない。
【0054】
一方、懸濁させる液のpHが8以上の塩基性条件下である場合にあっても、アシクロビルの微細結晶の水に対する溶解性が高くなり、後にpHを中性付近に調整する際に、その溶解度が急激に低下する結果、pH調整時にアシクロビル結晶の針状化が起こりやすくなる。さらに、含有されているポリ酢酸ビニルの部分ケン化物中のアセチル基がケン化分解してしまう可能性があり、やはり結果として最終的に得られる水性懸濁製剤の安定性が低下する恐れがあり、好ましいものではない。
【0055】
なお、この第一段階におけるアシクロビルの微細結晶の懸濁化においては、アシクロビルの結晶径が75μm以上である場合には、この懸濁化の段階で、その結晶径を40μm以下、好ましくは30μm以下になるように、微粒子化しておくことにより、最終的に点眼用として良好な懸濁製剤を得ることができる。また、アシクロビルの微細結晶を懸濁化するための攪拌条件は、使用するアシクロビルの粒子径により、適宜選択することができる。
【0056】
次いで、本発明の製造方法の第二段階は、前記した第一段階で調製した懸濁・分散物を、pH6〜8、好ましくはpH6.5〜7.5に再度調整した後、非イオン性界面活性剤、および必要に応じてポリビニルピロリドンを添加し、さらに攪拌、分散させることにより、アシクロビルを含有する、最終製剤としての水性懸濁製剤を製造する段階である。
【0057】
この最終懸濁製剤におけるpHが6未満の場合、あるいはpHが8を超える場合には、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物による結晶成長抑制効果が十分に得られず、アシクロビルの微細結晶が、結晶成長する恐れがあることに加え、そのようなpHでは点眼時に目に刺激を与える場合があり、好ましいものではない。
【0058】
上記した本発明の水性懸濁製剤の製造方法においては、製剤中に添加される非イオン性界面活性剤、および所望により添加されるポリビニルピロリドンの両者は、目的とする水性懸濁製剤の安定性を損なわない限り、この第二段階の製造工程で添加してもよく、また、あらかじめ上記第一段階の製造工程でポリ酢酸ビニルの部分ケン化物と共に添加しておいてもよい。
【0059】
なお、本発明の水性懸濁製剤の製造方法において、第一段階におけるアシクロビルの微細結晶を懸濁させるpH3〜8の液を調製する場合にあっては、最終的に得られる水性懸濁製剤のpH安定性を考慮すると、ホウ酸あるいはリン酸第二水素ナトリウム等の酸を使用するのが好ましい。また、第一段階においてpHを酸性にした後、第二段階でpH6〜8の懸濁製剤を調製する場合にあっては、一般的に点眼剤のpH調整に用いられる塩基から選択して使用すればよく、最終的に得られる水性懸濁製剤のpH安定性を考慮すると、例えば、前記のリン酸二水素ナトリウム等の酸と組み合わせることにより、水性懸濁製剤に緩衝作用を付加することができるリン酸水素二ナトリウムの他、水酸化ナトリウムあるいはホウ砂等を用いるのが望ましい。
【0060】
なお、この場合にあっては、第一段階として上記の酸とアルカリを組み合わせてあらかじめpHが調整されたリン酸緩衝液あるいはホウ酸緩衝液等の緩衝液を使用することもできる。
【0061】
また、本発明の水性懸濁製剤の製造方法にあっては、製剤中にさらに添加することができる保存剤、等張化剤等の配合は、上記した第一段階あるいは第二段階のいずれの工程でおいても、必要に応じて適宜行うことができる。
【0062】
例えば、保存剤を使用する場合は、選択した保存剤の特性に応じてその配合量を調整すればよく、さらに等張化剤を用いる場合は、他の成分による全体の浸透圧を把握したうえで、最終的な製剤の浸透圧が250mOsm〜400mOsmの範囲になるように調整すればよい。
【0063】
本発明の製造方法により得られる水性懸濁製剤は、点眼用であることからあらかじめ滅菌しておくことが必要であり、その方法については、一般に医薬品の滅菌に適用可能な方法から適宜選択して用いることができる。特に、本発明の水性懸濁製剤は、有効成分であるアシクロビルの微細結晶が懸濁している剤型であるため、最終製剤に対して加熱滅菌や濾過滅菌を適用することはできない。したがって、配合するアシクロビルの微細結晶、およびその他の各成分については、懸濁製剤の調製前に、それぞれ適切な方法で滅菌しておくことが望ましい。
【0064】
上記した第一段階あるいは第二段階の攪拌・分散工程において使用する機器により、分散・攪拌時に熱が発生する場合には、適宜冷却しながら実施することが望ましい。そのような攪拌・分散機としては、ディスパーザーやホモミキサー、ホモジナイザーなど、一般に医薬品用途で用いられる攪拌・分散装置であれば種々選択することが可能である。そのなかでも、液中に懸濁する固体(結晶)を効率よく微細化できるものが好ましく選択される。具体的には、例えば、クレアミクス((株)クレアテック製)などの回転式ホモジナイザーの他、湿式ジェットミルや高圧ジェット流乳化装置等が挙げられる。
【0065】
以上記載したように、本発明が提供する点眼用の水性懸濁製剤の製造方法により、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および非イオン性界面活性剤の存在下、アシクロビルの微細結晶を、酸性〜中性のpH領域において微細に懸濁化した後、最終的にアシクロビルの水溶性が最も低く、かつ涙液と近いpH領域であるpH6〜8となるように調整することにより、有効成分となるアシクロビルの微細結晶の結晶成長が抑制された、優れた安定性を有する水性懸濁製剤を調製することができる。
【0066】
また、本発明の製造方法により調製された水性懸濁製剤は、懸濁したアシクロビルの微細結晶が、保管時に製剤中に沈降している場合であっても、軽く振とうすることにより容易に再懸濁させることが可能であり、製剤安定性を維持するために製剤の粘度を高める必要がないことから、点眼時に不快な感覚を生ずることなく、他の一般的な点眼製剤と同様に使用することができる利点を有する。
【0067】
【実施例】
以下に本発明を、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
1.実施例/比較例(アシクロビル含有の水性懸濁製剤の製造)
I)配合処方
下記表1−1ないし表1−5に記載の配合処方に基づき、アシクロビル含有の水性懸濁製剤(実施例/比較例)を調製した。
【0069】
【表1】
Figure 0003805203
Figure 0003805203
【0070】
1)アシクロビル:固形分換算
2)リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH6.5)
【0071】
【表2】
Figure 0003805203
Figure 0003805203
【0072】
1)アシクロビル:固形分換算
3)アシクロビル懸濁時に使用
4)アシクロビル懸濁後、pH調整に使用
5)pH調整剤2を添加した後、添加
【0073】
【表3】
Figure 0003805203
Figure 0003805203
【0074】
1)アシクロビル:固形分換算
6)カーボポールは、水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶解状態とした後、使用した。
7)リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH7.0)
8)リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH7.0)
ただし、カーボポール水溶液と混合して使用した。
【0075】
【表4】
Figure 0003805203
Figure 0003805203
【0076】
1)アシクロビル:固形分換算
9)アシクロビル溶解時に使用
10)アシクロビルを完全に溶解した後、pH調整に使用
11)pH調整剤2を用いてpHを中性付近に調整した後、添加
【0077】
【表5】
Figure 0003805203
Figure 0003805203
【0078】
1)アシクロビル:固形分換算
12)リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH7.0)
*)測定不可(氷点降下法による測定結果)
【0079】
II)配合成分
配合成分については以下のとおりのものを使用した。
▲1▼:アシクロビル
アシクロビルの微細結晶は、USPグレードで滅菌済みのものをそのまま使用した。その平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により25.9μmであり、顕微鏡観察下において、短径:長径が1:10を超える針状結晶は認められなかった。使用したアシクロビルの微細結晶についての位相差顕微鏡写真を、図1に示した。
【0080】
▲2▼:ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物
懸濁製剤の調製に用いた酢酸ビニルの部分ケン化物について、そのケン化度、重合度および粘度(4%水溶液;20℃)を、下記表2にまとめた。
【表6】
表2:ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および完全ケン化物のケン化度および重合度
Figure 0003805203
【0081】
比較例として、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物に代えて、他の親水性高分子を添加した懸濁製剤例、およびポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および親水性高分子の両者を添加しない懸濁製剤例をおいた。
なお、各ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物については、水分を除いた固形分で換算した。
【0082】
▲3▼:非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート80(日本薬局方適合品)またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(医薬品添加物規格適合品)を使用した。さらに比較例として、界面活性剤を添加しない場合について、同様に懸濁製剤を調製し比較した。
【0083】
▲4▼:他の添加成分
他の添加成分としての緩衝剤、pH調整剤、等張化剤および保存剤は、表1中に記載したものをそれぞれ使用した。
【0084】
III)懸濁製剤の製造方法
水性懸濁製剤の調製は、いずれの場合も、回転式ホモジナイザーであるクレアミクスCLM−0.8S((株)クレアテック製)を用いて行った。
具体的には、以下の2方法を基本として、その調製を行った。
【0085】
1)方法1:
例えば、製剤1〜8の場合には、あらかじめ有効量の保存剤を溶解させた50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を調製し、表1−1に示したポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および非イオン性界面活性剤を添加(製剤2、5、8にあっては、ポリビニルピロリドンも一緒に添加)し、完全に溶解した後、アシクロビルの微細結晶を加え、グリセロールにより等張化した。次いで、水冷下で10.000rpm、10分間懸濁、攪拌することにより、水性懸濁製剤を調製した。
【0086】
2)方法2:
例えば、製剤9〜16の場合には、あらかじめ有効量の保存剤を溶解させた50mMリン酸二水素ナトリウム水溶液を調製し、表1−2中に示したポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を加えて完全に溶解した後、アシクロビルの微細結晶を添加し、水冷下で10,000rpm、5分間攪拌することにより懸濁化を行った。このときのpHは4.0〜4.2であった。次いで、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが6.5〜7.5の範囲になるように調整した後、表1−2中に示した非イオン性界面活性剤を添加、グリセロールにより等張化し、水冷下でさらに10,000rpm、5分間攪拌することにより、水性懸濁製剤を調製した。
【0087】
上記に記載した2方法を適宜修飾し、前記表1−1〜表1−5に記載の配処方に基づく水性懸濁製剤(実施例/比較例)を調製した。調製した各水性懸濁製剤について、調製直後のpHおよび浸透圧を測定し、それぞれ表中に示した。
なお浸透圧は、アドバンスドオスモメータModel3D3(ADVANCED INSTRUMENTS社製)を用いて測定した。
【0088】
2.製剤の安定性試験等
調製した各水性懸濁製剤については、攪拌しながら5mL容のポリエチレン製3ピース型点眼容器にそれぞれ5mLずつ分注し、以下の各試験に供した。
【0089】
1)アシクロビルの結晶安定性試験
調製した各水性懸濁製剤については、調製直後にサンプリングを行い、光学顕微鏡(オリンパス(株)製:BX50)を用いた位相差観察または微分干渉観察により結晶状態の観察を行った。その結果、製剤1〜24においては、懸濁化したアシクロビルの微細結晶の針状晶化は認められなかった。しかしながら、アシクロビルの微細結晶をpH調整によって一度完全に溶解した後、析出させる方法で調製した製剤25〜32(比較例)においては、調製直後の段階で既に針状結晶が多数認められた。代表的製剤における結晶状態について、その微分干渉顕微鏡写真および位相差顕微鏡写真を図2〜図5に示した。
【0090】
そこで、上記各実施例/各比較例で調製した水性懸濁製剤について、以下の方法による結晶安定性を評価した。すなわち、各懸濁製剤を分注した容器を、室温および40℃の恒温槽中に保存させ、経時的に取り出して、懸濁液が均一になるように手で振とうした後、光学位相差顕微鏡により製剤中のアシクロビル微細結晶の変化を、以下の評価により観察した。
【0091】
評価基準:
各試験検体については20視野での観察を行い。以下の基準により評価を行った。
◎:結晶の針状成長や凝集が全く認められない。
○:短径:長径が1:10を超える針状結晶は認められないが、わずかに結晶の凝集が見られる。
△:一部の視野で短径:長径が1:10を超える針状または板状の結晶が観察される。
×:多くの視野で短径:長径が1:10を超える針状または板状の結晶が明確に認められるもの。
××:ほとんど全ての結晶が短径:長径が1:10を超えて針状晶化している場合。
【0092】
あわせてアシクロビルの微細結晶の凝集状態を、以下の基準で評価した。
□:多くの視野で結晶の凝集が顕著に観察されるもの。
■:ほとんどの結晶が凝集しているも。
【0093】
なお、アシクロビルの微細結晶の短径と長径の測定は、顕微鏡画像をビデオ入力した画像処理装置(オリンパス(株)製model VM−30)を用いて行った。これらの結果を、下記の表3にまとめて示した。
【0094】
【表7】
表3:水性懸濁製剤におけるアシクロビル微細結晶状態の変化
Figure 0003805203
【0095】
【表8】
表3(続き):水性懸濁製剤におけるアシクロビル微細結晶状態の変化
Figure 0003805203
【0096】
表3に示した結果からも判明するように、本発明の方法により調製された水性懸濁製剤においては、アシクロビルの微細結晶が、調製直後の微細結晶の状態を維持したまま、安定に保持されていることがわかる
【0097】
2)水性懸濁製剤の安定性試験
上記の各実施例および比較例で調製した水性懸濁製剤について、その製剤安定性試験を、以下の方法にしたがって行った。すなわち、各懸濁製剤を分注した点眼容器を室温下、および40℃の恒温槽内に保管し、経時的に取り出して、その製剤のpHの測定を行った。実施例および試験例で調製した代表的な製剤(実施例/比較例)についての測定の結果を、表4に示した。
【0098】
【表9】
表4:水性懸濁製剤のpH
Figure 0003805203
【0099】
表4に示した結果からも明らかなように、本発明の方法により調製された水性懸濁製剤は、製剤的にも安定であることがわかる。これに対して比較例の製剤(製剤25および30)は、懸濁製剤のpHの低下が認められ、製剤的な安定性にかけているものであることが理解される。なお、同時に、本発明の水性懸濁製剤である製剤1〜17中のアシクロビルの定量と浸透圧の測定を経時的に行ったところ、本試験の測定期間中、いずれの製剤においても明確な変化は認められず、全て許容範囲内であり、製剤の安定性が確認された。
【0100】
3)アシクロビルの微細結晶の再分散性試験
上記の実施例で調製した各水性懸濁製剤のうち、製剤1、2、製剤4、5、および製剤7、8、17について、沈降したアシクロビルの微細結晶の再分散性について評価検討した。すなわち、水性懸濁製剤を分注した各容器を、室温下で保存し、経時的に取り出し、容器を転倒させて、沈降したアシクロビルの微細結晶が見かけ上均一になるまでに要する転倒回数を求めた。
【0101】
評価基準は、以下のとおりとした。
◎:再分散に必要な転倒回数が10回以下のもの。
○:再分散に必要な転倒回数が10回〜20回のもの。
△:再分散に必要な転倒回数が20回〜30回のもの。
×:再分散に必要な転倒回数が30回〜40回のもの。
××:再分散に必要な転倒回数が40回以上のもの。
その結果を、表5に示した。
【0102】
【表10】
表5:水性懸濁製剤の分散性
Figure 0003805203
【0103】
表5に示した結果からも判明するように、本発明の水性懸濁製剤の調製方法において、ポリビニルピロリドンを配合すること(製剤2、5、8)により、沈降したアシクロビルの微細結晶の再分散性が向上していることが理解される。
【0104】
2.アシクロビルの眼内移行性試験
上記の実施例で調製した各水性懸濁製剤のうち、製剤2、製剤4、製剤8、製剤12、および製剤16について、点眼後のアシクロビルの眼内移行性を以下の方法により測定した。すなわち、実施例で調製したアシクロビル含有の水性懸濁製剤50μLを家兎(ニュージーランド白色種、雄性、体重2.0kg〜3.0kg)4羽に点眼し、1時間後に、ベノキシール点眼麻酔下26G注射針により家兎の房水を全量採取した。
別に点眼に用いたアシクロビルの標準溶液を調製し、房水および標準溶液について、HPLC法によりアシクロビルの定量を行った。
試験した各製剤の眼房水内移行性試験の結果を表6に示した。
【0105】
【表11】
表6:懸濁製剤中のアシクロビルの眼房水移行性
Figure 0003805203
【0106】
表6中に示したとおり、各水性懸濁製剤中のアシクロビルの眼房水内への移行性である眼房水内濃度は、いずれも、アシクロビルのヘルペスウイルスに対するID50(50%阻止濃度)である約0.03μg/mL(Crumpaker,C.S.ら:Antimicrob. Agents Chemother.,15,642(1979))を大きく上回るものであり、点眼剤として有効であることが確認された。
【0107】
【発明の効果】
以上記載のように、本発明により、難水溶性の抗ウイルス剤であるアシクロビルを有効成分とする点眼用水性懸濁製剤において、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および非イオン性界面活性剤を特定量含有する水溶液中に、特定量のアシクロビルの微細結晶を添加して、特定のpH範囲において結晶を溶解させない状態で懸濁化することにより、有効性が損なわれることなく、アシクロビルの結晶成長が抑制された、製剤的な安定性に優れた、点眼用の水性懸濁製剤を調製することができる。
【0108】
したがって、これまで、眼角膜ヘルペス感染症の治療剤として、アシクロビルを有効成分とする簡便な点眼剤は、未だ医薬品として実用化されるに至っていない現状下においては、本発明で提供されるアシクロビルを十分量含有するとともに、医薬品としての安定性を維持し得る水性懸濁製剤は、医療上多大な貢献を与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の水性懸濁製剤の調製に使用した、アシクロビルの微細結晶についての位相差顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明の実施例により調製された製剤8(実施例)について、調製後1日目および室温に1ヶ月保存した後の製剤の微分干渉顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明の実施例により調製された製剤12(実施例)について、調製後1日目の製剤の位相差顕微鏡写真である。
【図4】図4は、比較例で調製された製剤25(比較例)について、調製後1日目および室温に1ヶ月保存した後の製剤の位相差顕微鏡写真である。
【図5】図5は、比較例で調製された製剤32(比較例)について、調製後1日目の製剤の位相差顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 0.2〜5重量%の9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニンまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶を、0.05〜1重量%のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物および0.01〜1重量%の非イオン性界面活性剤を含有するpH3〜8の水溶液中に結晶状態のまま懸濁させた後、そのpHを6〜8に調整することを特徴とする点眼用水性懸濁製剤の製造方法。
  2. 0.2〜5重量%の9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニンまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶を、0.05〜1重量%のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含有するpH3〜8の水溶液中に結晶状態のまま懸濁させ、そのpHを6〜8に調整した後、さらに0.01〜1重量%の非イオン性界面活性剤を添加し、攪拌することを特徴とする点眼用水性懸濁製剤の製造方法。
  3. ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物のケン化度が、70〜95モル%である請求項1または2に記載の点眼用水性懸濁製剤の製造方法。
  4. ポリ酢酸ビニルの重合度が、300〜2000である請求項1または2に記載の点眼用水性懸濁製剤の製造方法。
  5. 0.01〜1重量%のポリビニルピロリドンをさらに含有する請求項1または2に記載の点眼用水性懸濁製剤の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の製造方法により得られた点眼用水性懸濁製剤。
  7. 懸濁化された9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニンまたはその薬学的に許容される塩の微細結晶が、その短径が50μm以下、長径が70μm以下であり、かつ短径と長径の比が1:10以下のものである請求項6に記載の点眼用水性懸濁製剤。
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