JP3804521B2 - 電解水生成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解水を生成する電解水生成装置に関し、特に還元力の強いアルカリ水を容易に生成できる電解水生成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解水生成装置には、水道等の給水設備に接続され、流水状態で電解を行い、酸性水やアルカリ水を生成する流水式と、給水設備に接続しない簡易、低コスト構造で水を滞留状態で電解するバッチ方式がある。流水方式では即座に電解水が取水できるメリットがあるが、酸化力の強い酸性水や還元力の強いアルカリ水を得ようとした場合、電極の大型化が必要となり大電力が必要となるとともに複雑な構成が必要となり、装置全体のコストアップとなる。一方、バッチ方式では滞留状態で電解するため長時間にわたる電解が可能であり、簡易な構成で上記酸性水やアルカリ水が得られやすい。
【0003】
従来のバッチ方式の電解水生成装置としては、特開平8−299958号公報に記載されているようなものがあった。この電解装置は図5に示すように、隔膜1によって陽極室2と陰極室3を形成するとともに陽極室2には陽極4を、また陰極室3には陰極5が隔膜1を介して対向配置されている。6は開閉自在な蓋であり、電解時の生成ガスを外部に排出する穴7が設けられている。8は制御回路であり、陽極4と陰極5に通電される。生成された電解水はそれぞれ酸性水出口9およびアルカリ水出口10より取水される構成となっている。
【0004】
この構成において、電解に際しては蓋6を開放して電解質としての手作業によって所定濃度に調整した食塩水を電解槽に充填し、制御回路8によって陽極4と陰極5間に電圧が印可され、電気量(電流と時間の積)に応じて所望のpHとなるように水が電解されて陽極室2には酸性水が、陰極室3にはアルカリ水が生成され、それぞれ酸性水出口9およびアルカリ水出口10より取水される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の電解水生成装置では、電解槽に所定量以上の水を供給すると電装部分などに水がかかる恐れがあり、逆に所定量以下の水しか供給しないと電極の浸水した部分の電流密度が過剰に高くなり、電極寿命が著しく低下するため、使用者は水を所定量になるように注意して供給する必要があった。また、イオンの移動を促進させて電解効率を上げるため、陽極室と陰極室に水位差をつける場合、使用者が所定の水位差をつけるように供給するというわずらわしさがあった。
【0006】
本発明では余水排水手段を設けることによって、使用者が意識をせずに容易に所定量の水を供給できること、および陽極室と陰極室に水位差を設けることでイオンの移動を促進させ、少量の電解質で効率よく強アルカリ水や強酸性水を得る電解水生成装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電解水生成装置は、隔膜を介して陽極室と陰極室を形成し水を電解する電解槽と、前記電解槽の上方に設けられ前記電解槽に水を注水するための注水口と、前記注水口よりも下方で電解槽の側面に設けられた水を排水する余水排水手段と、前記余水排水手段と連通し余水排出手段から排出された水を貯留する余水貯留部と、前記電解槽の陰極室の下方に設けられた陰極水出口と、前記電解槽の陽極室の下方に設けられた陽極水出口とを有し、前記電解槽に滞留している水の水位を、陽極室と陰極室の一方を高水位に、他方を低水位にするとともに、前記陰極水出口から排出されるアルカリ水は電解質容器に取水され、前記陽極水出口から排出される酸性水は前記余水貯留部に貯留される電解水生成装置とする。
【0008】
これによって、使用者は水の供給過多を気にすることなく容易に給水を行える。また、余水排水手段が作用した後電解を可能とすることにより、水の供給不足を防ぐことができる。さらに、余水排水手段によって陽極室と陰極室に水位差を設ける構成にすることにより、使用者が意識することなく容易に水位差をつけることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、隔膜を介して陽極室と陰極室を形成し水を電解する電解槽と、前記電解槽の上方に設けられ前記電解槽に水を注水するための注水口と、前記注水口よりも下方で電解槽の側面に設けられた水を排水する余水排水手段と、前記余水排水手段と連通し余水排出手段から排出された水を貯留する余水貯留部と、前記電解槽の陰極室の下方に設けられた陰極水出口と、前記電解槽の陽極室の下方に設けられた陽極水出口とを有し、前記電解槽に滞留している水の水位を、陽極室と陰極室の一方を高水位に、他方を低水位にするとともに、前記陰極水出口から排出されるアルカリ水は電解質容器に取水され、前記陽極水出口から排出される酸性水は前記余水貯留部に貯留される電解水生成装置とすることにより、使用者が所定量以上の水を供給しても水が電解槽外に溢れ出ることがない。また、使用者が意識することなく容易に陽極室と陰極室の水位に差を設けることができる。そして、水位差を設けることで、隔膜間に圧力差が生じ、イオンの移動を促進することができるので、少量の電解質で効率よく強アルカリ水や強酸性水を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、注水口は、高水位側の電極室の上方に設けられ、高水位側の電極室に水を注水し、高水位側の電極室から溢れ出た水が低水位側の電極室に供給される構成とし、高水位側の電極室から低水位側の電極室に流れ出た水が、低水位側の電極室で所定量以上になると、低水位側の電極室に設けられた余水排出手段から排出する請求項1に記載の電解水生成装置とすることにより、使用者が意識をすることなくより簡単に陽極室と陰極室の水位に差を設けることができる。そして、水位差を設けることで、隔膜間に圧力差が生じ、イオンの移動を促進することができるので、少量の電解質で効率よく強アルカリ水や強酸性水を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、電解槽により生成された電解水の一部を余水貯留部に排水し、前記余水貯留部に貯留されている水と混合させる請求項1または2に記載の電解水生成装置とすることによって、使用せずに排水する電解水を余水貯留部に貯留された水によって希釈することができるので、配管などの腐食などを防ぐことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、余水排水手段から水が排水された後、電解槽の水を電解する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解水生成装置とすることによって、電解槽への給水不足による電極寿命の低下を防ぐことができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例における電解水生成装置の構成図を示すものである。
【0015】
図1において、11は電解槽であり、隔膜12によって陽極室13と陰極室14が形成されており、陽極室13と陰極室14の水位にはhだけ差がついている。また、陽極15aおよび陰極15bが隔膜12を介して対向配置されている。なお、隔膜12として陽イオン交換膜を用いている。電解槽の下方には陽極水出口16aと陰極水出口16bが設けられており、上方には給水口17を有する着脱自在の蓋18が設けられている。
【0016】
蓋18には原水に含まれる異物を濾過するフィルタ部材19が設けられており、ここでは原水のスケール成分となる陽イオンを除去して軟水化するイオン交換樹脂が設けられている。また、蓋18には、給水口17より供給された水を電解槽11に注水するための注水口20が陽極室13の上部に設けられている。また注水口20は、電解時に陽極室から生成される塩素ガスや酸素ガス、陰極室から生成される水素ガスを外部に排気する役割も担っている。
【0017】
陰極室14には、所定量以上に供給された水を排水するための余水排水口21が設けられており、所定量以上の水は、余水排水路22を通り、余水貯留部23に貯留される。余水貯留部23には、余水排水口21から排水された水を検知するための余水検知手段24が設けられている。余水検知手段24としてはフロートセンサや導電率計などを用いることができる。
【0018】
25は着脱自在のキャップ26および電解質床27を有する食塩タンクであり、ここでは電解質として食塩(塩化ナトリウム)が充填されている。なお電解質としては、食塩のほかに珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などの水溶性電解質を用いることができる。食塩タンク25には陽極室13の上部に設けられた食塩タンク給水口28からパルスポンより構成される給液手段29によって電解槽11に入れられた原水が導入路30を経て食塩タンク25の上方に送られる。導入された水は食塩と混合して過飽和食塩水となり、電解質床27および給塩路31を通じて食塩供給口32から食塩溶液が陽極室13に供給される構成となっている。
【0019】
ここで、給塩路31の食塩供給口32近傍には陽極室13の原水の侵入を阻止する方向に逆止弁33が設けられている。陰極水出口16bの下流にはギヤードポンプなどの比較的大流量を制御する吐出手段34が設けられており、駆動されることで吐出路35を通じて、陰極室14で生成されたアルカリ水が吐出口36から電解水容器37に取水される。また、陽極水出口16aの下流には酸性水排水弁38が設けられており、陽極室13で生成された酸性水は酸性水排水弁38を開くことにより、余水貯留部23に流入し、余水貯留部23に貯留していた水(余水排水口21より排出された水)によって希釈される。そして、排水弁39を開くことで外部に排出される。
【0020】
40は後述する操作パネル41と制御回路42から成る制御手段であり、所定量以上の水が電解槽11に給水され、余水排水口21から余水貯留部23に水が流入したことを検知する余水検知手段24の信号が制御回路42に入力され、余水検知手段24によって電解槽11に所定量以上の水が供給されたときのみ電解動作を行うように構成されている。また、同様に電解水容器37の存在を検知する容器検知手段43の信号が制御回路42に入力され、容器検知手段43によって電解水容器37が吐出口36の対向位置に存在する時のみ取水動作を行うように構成されている。また44はパルスポンプからなる給液手段27の駆動パルスをカウントするパルスカウンタであり、累積パルス数をカウントすることで食塩の消費量が擬似的に検出され、所定パルス数に達した時点で食塩補給の報知を行うように構成されている。
【0021】
操作パネル41は図2に示すように電源スイッチ45と電解スイッチ46および取水スイッチ47を有するとともに容器検知手段43によって電解水容器が存在することを報知する容器セット報知手段48と、パルスカウンタ44の累積パルスが所定値に達した時点で食塩補給を報知する食塩補給報知手段49と、余水検知手段24によって電解槽11に所定量以上の水が供給されたかどうかを報知する給水不足報知手段50を有しており、電解スイッチ46を投入することで制御回路42が動作して給液手段29、陽/陰極15a、15bが駆動されるように構成されている。そして、取水スイッチ47を投入することで、吐出手段34が駆動されるように構成されている。以上のように構成された電解水生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0022】
電解前に給水口17から電解槽11の所定水位まで原水を入れる。この際、原水は陽イオン交換樹脂からなるフィルタ部材19を通過することとなり、原水に含まれる比較的大きな異物が濾過されるとともに、カルシウム、マグネシウムイオンなどの陽イオンが除去されて軟水化される。バッチ方式では水道に直結せず、食塩水生成時点で異物が混入する可能性があり、電解によってその異物が隔膜に付着して隔膜を劣化させる場合があるが、フィルタ部材19で濾過することにより異物混入が防止されて隔膜12の長寿命化が図れる。
【0023】
また、水道水の硬度(導電率)には大きなばらつきがあり、例えば硬水では水酸化カルシウムなどのスケール成分を多く含み、陰極15bへのスケール析出にばらつきが発生するとともに、所定時間電解した場合、硬度によってpH値にばらつきが生じるが、給水時に陽イオン交換樹脂を通過することで、軟水化されるので硬度差によるpH値のばらつきが解消されるとともに、陰極15bへのスケール析出を低減できる。
【0024】
そして、フィルタ部材19を通過した水は、まず陽極室13の上部に設けられた注水口20を通り陽極室13に注ぎ込まれる。そして、陽極室13からあふれ出た水が陰極室14に流れ込むことにより電解槽11に水が供給される。なお、電解槽11に供給された所定量以上の水は余水排水口21、余水排水路22を通り余水貯留部23に貯留される。このことにより、使用者は水位差を付けることを意識することなく、容易に陽極室13と陰極室14の水位にhだけ差をつけることができる。
【0025】
次に、図2に示した操作パネル41の電源スイッチ45を投入し、電解スイッチ46を投入することで電解動作が開始される。このとき、余水排水手段(余水排水口21)が作用したこと、すなわち、所定量以上の水が電解槽11に供給されて余水貯留部23に水が貯留したことを余水検知手段24が検知したときのみ電解動作を可能とすることで、給水不足による電極寿命の低下を防ぐことができる。また、給水不足報知手段50によって使用者は電解槽11に所定量以上の水が供給されたかどうか判断することができる。
【0026】
洗浄水生成時の電解動作について図3に示したタイムチャートに基づいて説明する。電解スイッチ46を投入すると、まず給液手段29が所定時間tpだけ駆動され、陽極室13の原水が導入路30を経て食塩タンク25に送られる。食塩タンク25は水密状態に構成されており、原水が導入されることにより飽和状態の食塩水が電解質床29、給塩路31、逆止弁33を経て食塩供給口32から陽極室13内に所定量供給され、所定濃度の食塩希釈水となる。次いで制御回路42が動作して陽極15aと陰極15b間に逆極性、つまり陽極15a側を−極、陰極15b側を+極として電流が所定時間tr印可される。これにより前回の電解によって陰極15bの表面に析出したスケール成分が酸化還元されて洗浄される。すなわち、原水には各種のイオンが含まれており、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの陽イオンは陰極室14側の水酸基と反応して水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムとなり、溶解限界を越えると陰極15bや隔膜12の表面に析出し、電解電流の妨害因子となるが、電解前に逆電洗浄を所定時間tr行うことで良好に洗浄されてスケール成分が分解され、電極の長寿命化が実現できる。
【0027】
その後通常極性所定時間teだけ電解される。電解時の陽極室13では化式1に示した反応が生じて酸性水が生成される。
【0028】
(化式1)
2Cl-→Cl2↑+2e-
Cl2+H2O→HCl+HClO
2H2O→O2↑+4H++4e-
一方、陰極室14では化式2に示した反応が生じて水酸基OH-を中和するためナトリウムイオンが隔膜12を通過して移動し、アルカリ水が生成される。
【0029】
(化式2)
2H2O+2e-→H2↑+2OH-
Na++e-→Na
2Na+2H2O→2NaOH+H2↑
ここで、陽極室13のみに食塩溶液が供給されるので短時間に還元力の強いアルカリ水が得られる。すなわち、陽極15aと陰極15b間に電圧が印可されると被電解水に含まれるイオンは電気吸引力により陽/陰極15a、15bと逆極性のイオンが隔膜12を通過して移動することとなる。したがって陽極室13に導入された食塩に含まれるナトリウムイオンは隔膜12を経て陰極室14へと即座に移動する。この電気吸引力以外にも例えば拡散理論にしたがえば、ナトリウムイオンが拡散によってイオン濃度を均一にするように作用する。
【0030】
しかし、陰極室14内の圧力が陽極室13内の圧力よりも高い場合、ナトリウムイオンの移動が妨げられ、陰極室14に生成されるアルカリ水のナトリウムイオン濃度が上がらず、その結果pHが低くなってしまう。2Aの電流を10分間流し、400ccのアルカリ水を得る場合、陰極室14の水位を陽極室13の水位よりも40mm高くすると、アルカリ水のナトリウムイオン濃度は510ppmであり、pHは12.0であった。
【0031】
そこで、本実施例のように陽極室13内の圧力が陰極室14内の圧力より高くなるように水位差をつけると、陽極室13から陰極室14へのナトリウムイオンの移動が促進されるため、ナトリウムイオン濃度が高く、pHの高いアルカリ水を得ることができる。前述の例の場合、水位差hを40mmに設定すると、アルカリ水のナトリウムイオン濃度は、陰極室14内の圧力が陽極室13内の圧力よりも高い場合と比べ、30%増の670ppmであり、pHは12.2であった。これは、電解効率で1.6倍の値である。
【0032】
また、時間と共に陽極室13と陰極室14のナトリウムイオン濃度差が少なくなり、さらにナトリウムイオンは移動の際に少量の水分子を伴って移動するため、陽極室13の水位が下がり陰極室14の水位が上がっていく。そのため、ナトリウムイオンの移動が困難になってしまう。そこで、あらかじめ電解中は陽極室13と陰極室14の水位差が逆転しないような水位差にhを設定することが望ましい。
【0033】
この結果、短時間に還元力の強いアルカリ水が得られる。この還元力の強いアルカリ水は油脂の鹸化や乳化作用および蛋白質に対する加水分解作用を有し、家具や住宅建材、電気製品などの表面の洗浄水として利用できる。
【0034】
また陽極室13のみに食塩溶液が供給されることで陰極室14には塩素イオン濃度の低いアルカリ水が生成される。塩素イオンは洗浄力を阻害する因子となるため、陽極室13のみに食塩溶液が供給することで洗浄力の高いアルカリ水を生成できる。
【0035】
さらに、本実施例では隔膜として陽イオン交換膜を用いることにより、陽極室13の水位が陰極室14の水位よりも高くても塩素イオンが陽極室13から陰極室14に移動することを防いでいる。しかし、陽極室13と陰極室14の水位差hが大きすぎると圧力差によって塩素イオンが陽極室13から陰極室14へ染み出してしまう。そこで、hは大きくても80mm以下であることが望ましい。これは、水位差hが80mm以上であると、水位差が無いあるいは陽極室13の水位が陰極室14の水位よりも高い場合に比べて3倍以上もの塩素イオンがアルカリ水中に含まれてしまうからである。
【0036】
陽極室13に生成される塩素ガスCl2↑、酸素ガスO2↑および陰極室14に生成される水素ガスH2↑は注水口20、フィルタ部材19を通過して外部に排出される。なお、電解によって生じるガスを余水貯留部23に貯留する水に溶解させ、塩素ガスなどによる電装部分の腐食を防ぐ構成にしてもよい。
【0037】
そして、所定時間te電解を行った後、酸性水排水弁38が制御手段40によって一定時間作動することで、陽極室13に生成された酸性水の一部を余水貯留部23に流入させる。このことにより、電解終了後に水位差が解除されるため、隔膜12を介しての酸性水とアルカリ水の浸透混入による中和が防止でき、pH値の劣化が防止できる。そして、使用者が取水スイッチ47を押すと、吐水手段34が駆動し、吐出路35を通過して吐出口36から電解水容器37に注入される。なお、この時電解水容器37が吐出口36に対向する位置に載置されていない場合は容器検知手段43によって検出され、取水動作に移行しない。これにより誤って容器外に電解水を吐出することがなくなる。なお、取水スイッチを設けず、制御手段40により、電解終了後直ちに吐水手段34を駆動し、アルカリ水を取り出す方式にしてもよい。この場合も電解隔膜を介しての酸性水とアルカリ水の浸透混入による中和が防止でき、pH値の劣化が防止できる。また、電解水容器37には噴霧機構(図示せず)を設けて被洗浄面に直接スプレー噴霧して使用することもできる。
【0038】
また、陽極室13で生成される酸性水は、酸性水排水弁38が開きくことで余水貯留部23に流入し、余水貯留部23に貯留していた水によって希釈された後、排水弁39を開くことによって外部に排出する構成であるため、酸性水による腐食を防ぐことができる。なお、本実施例では酸性水を希釈した後排水する構成としているが、陽極室13の陽イオンが陰極室14に移動しているため、この酸性水は塩素イオンリッチでpHの低い強酸性水であるので、余水貯留部23に貯留していた水で希釈せずに、殺菌水として利用してもよい。
【0039】
また、パルスカウンタ44はパルスポンプから構成される給液手段29の駆動信号であるパルス数をカウントする。このパルス数によって食塩の消費量が決まり、所定パルス数すなわち食塩タンク25内の食塩残量が少なくなった時点で操作パネル41の食塩補給報知手段49が点灯もしくは点滅し、食塩の補給が使用者に報知される。
【0040】
また、給塩路31に逆止弁33を設けたので陽極室13への給水時に食塩タンク25側への原水の逆流が防止され、電解質溶液の原水逆流による希釈が防止される。この結果、常に所望の濃度の電解質溶液が精度良く食塩供給口32から電解槽へ供給されることとなり、安定したpH値が得られる。
【0041】
さらに、陽極室13側の水を食塩タンク25に供給する構成としているので、陰極15bや陰極室14内に生成されるスケール片による給液手段29の目詰まりを防止できる。すなわち電解を行うことで原水に含まれるカルシウムやマグネシウムイオンが水酸基と反応して水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどのスケールとなって陰極15bや陰極室14壁面に付着し、電解槽11に原水を入れる際の剥離作用によって微少なスケール片となって原水に混入される場合がある。したがって陰極室14側の水を食塩タンク25に供給する構成とした場合、微少流量を制御する給液手段29にスケール片が堆積して目詰まりが発生し、電解質溶液が供給されなくなる場合があるが、陽極室13側の水を食塩タンク25に供給することで上記不具合が防止され、給液手段29の長寿命化が図れる。
【0042】
なお、本実施例では陽極室13の水位を陰極室14の水位よりもhだけ高くし、ナトリウムイオンの移動を促進させて強アルカリ水と強酸性水を得る構成にしたが、陰極室14の水位を陽極室13の水位よりも高くすることで、塩素イオンの移動を促進させて強酸性水と強アルカリ水を得る構成にしてもよい。なお、この場合は隔膜として陰イオン交換膜を用いることで、より効果的に塩素イオンを移動させることができる。また、陰極室14に供給される水道水中の塩素イオンも陽極室13に移動するため、塩素イオン濃度の低い強アルカリ水を得ることができる。
【0043】
(実施例2)
図4は本発明の第2の実施例の電解水生成装置の構成図である。なお、実施例1の電解水生成装置と同一構造のものは同一符号を付与し、説明を省略する。同図において、実施例1と異なる点は、陽極室13と陰極室14のそれぞれに陽極室余水排水口51と陰極室余水排水口52が高さがh異なる位置に設けられ、これによって陽極室13と陰極室14の水位にhだけ差を設けること、および、陽極室余水排水口51が余水貯留部23の下部に連通し、陽極室13で発生した塩素ガスが余水貯留部23に貯留した水に溶解する点である。
【0044】
また,本実施例では水位差に加え、陽極室13と陰極室14にそれぞれガス抜き用の通孔である陽極通孔53、陰極通孔54を備えた着脱自在の陽極室蓋55と陰極室蓋56を設け、陽極通孔53の孔径および陽極室余水排水口51の口径を小さくすることで電解によって陽極室13で生成される酸素ガスや塩素ガスを充満させて隔膜12間に圧力差を設けている。
【0045】
上記構成において次に動作、作用について説明する。なお、実施例1の電解水生成装置と同じ動作、作用のものは説明を省略する。
【0046】
まず使用者は、陽極室蓋55および陰極室蓋56を空け、中に水を供給する。この際、実施例1のようにフィルタを通した水を供給することで、異物やスケール成分を除去することができる。そして、使用者が所定量以上の水を電解槽11に供給した場合、余分な水は陽極室余水排水口51と陰極室余水排水口52から、余水貯留部23に流れ出る。ここで,陽極室余水排水口51と陰極室余水排水口52はhだけ高さが異なっているため、使用者が意識をすることなく容易に陽極室13と陰極室14の水位にhだけ差をつけることができる。
【0047】
そして、電解を行うと、化式1、化式2の反応が起こり、陽極室13からは塩素ガスと酸素ガスが、陰極室14からは水素ガスが発生する。このガスはそれぞれ陽極通孔53と陰極通孔54および陽極室余水排水口51と陰極室余水排水口52より外部に排気されるが、本実施例では、陽極通孔53の孔径および陽極室余水排水口51の口径を小さく設計しているため、陽極室13にガスが充満し陽極室13内の圧力が増加することによって、隔膜12間に圧力差が設けられている。
【0048】
また、電解を行うと共に、ナトリウムイオンの移動に伴い陽極室13と陰極室14のナトリウムイオン濃度に差が少なくなり、ナトリウムイオンが陽極室13から陰極室14へ移動しにくくなるが、電解を行うと共にガスがさらに充満し、陽極室13内の圧力が増すことで、隔膜12間の圧力差が増していくため、ナトリウムイオン移動促進効果が持続される。
【0049】
なお、電解終了後に陽極通孔53を大きくし、陽極室13内に充満したガスを開放する構成にすることで、陽極室13内の圧力を開放し、陽極室13内と陰極室14内の圧力差を解除することができるので、電解終了後の隔膜12を介しての酸性水とアルカリ水の浸透混入が防止できる。
【0050】
そして、電解によって陽極室13に発生した塩素ガスは空気よりも重いため、陽極室13上部の陽極室蓋55に設けられた陽極室通孔53からではなく、陽極室余水排水口51から余水貯留部23に排気され、余水貯留部23に貯留する水に溶解する。このことによって、外部に塩素ガスが流出することがないため、電装部分などの腐食を防ぐことができる。
【0051】
なお、本実施例では,陽極室13の水位を陰極室14の水位よりも高くすること、および、陽極通孔53を小さく設計して陽極室13内の圧力を増加させることにより、ナトリウムイオンの移動を促進させて強アルカリ水と強酸性水を得る構成にしたが、逆に陰極室14内の圧力を陽極室13内の圧力よりも大きくすることで、塩素イオンの移動を促進させて強酸性水と強アルカリ水を得る構成にしてもよい。なお、この場合は隔膜として陰イオン交換膜を用いることで、より効果的に塩素イオンを移動させることができる。また、陰極室14に供給される水道水中の塩素イオンも陽極室13に移動するため、塩素イオン濃度の低い強アルカリ水を得ることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、使用者は水の供給過多を気にすることなく容易に給水を行える。また、余水排水手段が作用した後電解を可能とすれば、水の供給不足を防ぐことができる。さらに、余水排水手段によって陽極室と陰極室に水位差を設ける構成にすれば、使用者が意識することなく容易に水位差をつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における電解水生成装置の構成図
【図2】 本発明の実施例1における操作パネルの構成図
【図3】 本発明の実施例1における給液手段、電解電流、吐出手段の動作を示すタイムチャート
【図4】 本発明の実施例2における電解水生成装置の構成図
【図5】 従来の電解水生成装置の構成図
【符号の説明】
11 電解槽
12 隔膜
13 陽極室
14 陰極室
15a 陽極
15b 陰極
21 余水排水口(余水排水手段)
22 余水排水路
23 余水貯留部
51 陽極室余水排水口
52 陰極室余水排水口

Claims (4)

  1. 隔膜を介して陽極室と陰極室を形成し水を電解する電解槽と、前記電解槽の上方に設けられ前記電解槽に水を注水するための注水口と、前記注水口よりも下方で電解槽の側面に設けられた水を排水する余水排水手段と、前記余水排水手段と連通し余水排出手段から排出された水を貯留する余水貯留部と、前記電解槽の陰極室の下方に設けられた陰極水出口と、前記電解槽の陽極室の下方に設けられた陽極水出口とを有し、前記電解槽に滞留している水の水位を、陽極室と陰極室の一方を高水位に、他方を低水位にするとともに、前記陰極水出口から排出されるアルカリ水は電解質容器に取水され、前記陽極水出口から排出される酸性水は前記余水貯留部に貯留される電解水生成装置。
  2. 注水口は、高水位側の電極室の上方に設けられ、高水位側の電極室に水を注水し、高水位側の電極室から溢れ出た水が低水位側の電極室に供給される構成とし、高水位側の電極室から低水位側の電極室に流れ出た水が、低水位側の電極室で所定量以上になると、低水位側の電極室に設けられた余水排出手段から排出する請求項1に記載の電解水生成装置。
  3. 電解槽により生成された電解水の一部を余水貯留部に排水し、前記余水貯留部に貯留されている水と混合させる請求項1または2に記載の電解水生成装置。
  4. 余水排水手段から水が排水された後、電解槽の水を電解する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解水生成装置。
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