JP3804095B2 - コンクリート基材への含浸材の含浸方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンクリート基材への含浸材の含浸方法に関し、特に、ポリマー含浸コンクリート用の含浸材の含浸方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、コンクリートの高耐久化,高強度化は、社会基盤の維持,補修費の低減や、新しい高機能を持つ構造物の建設,急施工,コストダウンなどを目的として、推し進められている。このような要求に応える手段の一種として、ポリマー含浸コンクリートがある。
【0003】
この種のポリマー含浸コンクリートの製造方法は、コンクリート基材に、メタクリル酸メチルなどのモノマーが含まれた含浸材を含浸させ、その後に、熱水や放射線を照射して、モノマーを重合させてポリマー化する方法が一般的に採用されている。
ところが、このようなポリマー含浸コンクリートの製造方法においては、特に、含浸材を含浸させる方法に以下に説明する技術的な課題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、従来の含浸材の含浸方法では、含浸材に圧力を加えつつコンクリート基材中に含浸させていたが、このような含浸方法では、モノマーの含浸深さが、コンクリート基材の表面から20〜30mm程度であって、十分な改質効果が得られないとともに、含浸に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、含浸材の含浸深さが深く、しかも、これが短時間に行なえるコンクリート基材への含浸材の含浸方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、硬化したコンクリート基材にモノマーが含まれた含浸材を含浸させた後に、熱水や放射線などにより前記モノマーを重合させるポリマーコンクリートの製造方法において、前記コンクリート基材の内部に透気性配管を埋設し、前記コンクリート基材を密閉容器内に収納する際に、前記透気性配管の一端側を前記密閉容器外に突出させ、前記密閉容器および前記透気性配管の内部をそれぞれ減圧するとともに、この減圧処理の後に、前記密閉容器内に前記含浸材を投入して密閉した後に、前記含浸材を加圧する。
この構成によれば、コンクリート基材の内部および外部をそれぞれ減圧して脱気するので、十分な脱気が可能になり、これに伴って、含浸材の含浸深さが深くなり、含浸時間も短くすることができる。
前記含浸材を加圧する際には、前記透気性配管内を減圧させながら加圧すること、または、前記透気性配管内を減圧状態に維持して、含浸材を加圧することができる。
この構成を採用すると、コンクリート基材の内部が減圧状態で含浸させるので、含浸材を加圧含浸すると、圧力差が大きくなり、その含浸深さがより一層深くなる。
また、前記透気性配管の前記密閉容器の突出部分には、シール材が介装され、このシール材は、前記密閉容器の壁面を挟んで内外に配置された一対のシール部を設けることができる。
この構成を採用すると、密閉容器の内部を減圧する際には、壁面の外側に配置されたシール部が、減圧することにより壁面の外面に密着して、透気性配管の外周をシールすることができるとともに、密閉容器の内部を加圧する際には、壁面の内側に配置されたシール部が、加圧することにより壁面の内面に密着して、透気性配管の外周をシールすることができる。
さらに、前記コンクリート基材には、前記透気性配管から所定の間隔を隔てて前記含浸材の供給路を設けることができる。
この構成を採用すると、比較的厚みの厚いコンクリート基材の内部側にも含浸材を含浸させることができ、均一的な改質が可能になる。
なお、透気性配管および供給路は、重合処理の後に、必要に応じてモルタルなどを充填すればよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図3は、本発明にかかるコンクリート基材への含浸材の含浸方法の第1実施例を示している。同図に示す含浸方法では、まず、図1に示すコンクリート基材10が製造される。同図に示すコンクリート基材10は、比較的厚みの薄いブロック状のものであって、セメント,骨材,水を混練したコンクリートを製作し、このコンクリートを型枠内に打設して、平板状に形成される。
【0008】
なお、このときのコンクリートは、一般に、この種のポリマー含浸コンクリートは、高強度にはなるが、破壊性状が脆性破壊を示すので、炭素繊維などを混合した繊維補強コンクリートを使用することが望ましい。コンクリート基材10を形成する際には、その内部に配管12が埋設される。この配管12は、コンクリート基材10内に埋設する部分が透気性を有するものであって、例えば、多孔管が使用される。
【0009】
この実施例では、配管12は、一端側(コンクリート基材10中に位置する側)が閉塞され、他端側がコンクリート基材10の端面から外方に突出する多孔管部120と、多孔管部120の突出した部分を合流する合流管部121と、合流管部121に連通接続された接続管部122とを備えている。
各多孔管部120は、コンクリート基材10の厚み方向の中間位置にあって、相互に所定の間隔をおいて基材10内に埋設される。配管12を埋設したコンクリート基材10の形成が終了すると、熱風などにより十分乾燥させ、冷却した後に、脱気処理が行なわれる。図2に、この脱気処理(減圧処理)の一例を示している。
【0010】
同図に示す脱気処理では、まず、コンクリート基材10が密閉容器14内に収納される。このとき、配管12は、密閉容器14の壁面を接続管部12cが貫通するように収納し、この貫通部分にシール材16が設置される。
シール材16は、密閉容器14内に設けられる第1シール部16aと、密閉容器14外に設けられる第2シール部16bとを有している。各シール部16a,16bは、接続管部12cが挿通される透孔を備えた金属板と、この金属板に貼着されたゴムなどの可撓性リングとから構成されている。
【0011】
そして、接続管部122の端部に開閉バルブ18を介在させて、図外の真空ポンプなどの吸気装置を接続する。また、密閉容器14にも開閉バルブ19を介在させて、同様な吸気装置が接続される。この状態で、吸気装置を作動させると、配管12内および密閉容器14内からともに空気が脱気され、減圧される。このとき、配管12は、コンクリート基材10の内部に埋設されているので、従来の脱気方法と異なり、コンクリート基材10の表面側に加えて、コンクリート基材10の内部側からも脱気が行なわれる。
【0012】
このため、コンクリート基材10の深いところまで、短時間に脱気をおこなうことができる。このようなコンクリート基材10の脱気が十分に行なわれると、配管12内の減圧状態を維持しながら、密閉容器14内には、含浸材20が投入される。
この場合、含浸材20を密閉容器14内に収納する際には、開閉バルブ19を開放して、容器14の内部を大気に開放するので、密閉容器14内の減圧状態が低下することになるが、本実施例の場合には、コンクリート基材10の内部側は、配管12により減圧された状態が維持される。
【0013】
含浸材20は、例えば、メタクリル酸メチルやスチレンなどの低粘度ビニール系化合物であるモノマーを含むものであって、これに、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの架橋剤および過酸化ベンゾイルなどの触媒を混合したものを使用することができる。含浸材20は、図3に示すように、密閉容器14の上部側に空間ができる量まで投入され、含浸材20の投入が完了すると、空間部に圧縮空気などを導入して、含浸材20に圧力が加えられる。
【0014】
このような条件で含浸材20を含浸させると、含浸材20の含浸範囲は、本実施例の場合には、コンクリート基材10の内部に透気性配管12が埋設されていて、この部分から脱気し、かつ、その脱気状態を維持しながら含浸材20を加圧するので、コンクリート基材10の内部側程減圧状態が良好に保たれている。
従って、コンクリート基体10の全表面側から含浸する含浸材20は、その含浸深さが深くなり、含浸時間も短くすることができる。
【0015】
以上の含浸処理が終了すると、含浸材20を含浸したコンクリート基材10は、容器14内から取り出され、熱水中に浸漬したり、あるいは、放射線を照射する重合処理が行なわれる。このような重合処理を行なうと、含浸材20中に含まれているモノマーが重合してポリマーとなり、コンクリート基材10の高耐久化,高強度化が図れる。
【0016】
この重合処理を行なう際には、配管12内に、例えば、熱水を供給すると、配管12側からも含浸材の重合反応を行なわせることもできる。
この場合、本実施例では、重合させられるモノマーを含む含浸材20の含浸深さが深くなるので、コンクリート基材10の改質の範囲が拡大し、これにより、用途の制限がなくなり、例えば、2次製品に留まらず、構造材としても使用することが可能になる。
【0017】
また、本実施例では、密閉容器14の内部を減圧する際には、壁面の外側に配置されたシール部16bが、減圧することにより壁面の外面に密着して、透気性配管12の接続管部122の外周をシールすることができるとともに、密閉容器14の内部を加圧する際には、壁面の内側に配置されたシール部16aが、加圧することにより壁面の内面に密着して、透気性配管12の接続管部122の外周をシールすることができる。
【0018】
なお、上記実施例では、コンクリート基材10を脱気した後に、含浸材20を含浸させる場合を例示したが、本発明の実施は、これに限定されることはなく、例えば、図2に示した脱気処理を省略して、図3に示した状態で、脱気処理と含浸処理とを同時に行なってもよく、このような含浸方法を採用すると、工程が簡略になり、処理時間も短縮することが可能になる。
【0019】
図4は、本発明にかかるコンクリート基材への含浸材の含浸方法の第2実施例を示しており、上記実施例と同一もしくは相当する部分には、同符号を付してその説明を省略するとともに、以下にその特徴点についてのみ説明する。同図に示した実施例では、含浸材20を含浸させるコンクリート基材10aに特徴がある。
【0020】
すなわち、この実施例のコンクリート基材10aは、比較的厚みの厚いブロック状のものであって、コンクリート基材10a内に埋設されている配管12aは、一端側が閉塞され、他端側がコンクリート基材10aの端面から外方に突出する多孔管部120aと、多孔管部120aの突出した部分を合流する合流管部121aと、合流管部121aに連通接続された接続管部122aとを備えている。
【0021】
多孔管部120aは、コンクリート基材10aの厚み方向に沿って所定の間隔を隔てて多段状に配置されている。このような構造のコンクリート基材10aに含浸材20を含浸する際には、上記実施例と同様に、配管12aの接続管部122aにシール材16を介在させて、コンクリート基材10aを密閉容器14内に収納し、配管12a内および密閉容器14内を減圧し、含浸材20に圧力を加えることにより行なわれる。
【0022】
このようにしてコンクリート基材10aに含浸材20を含浸させて、その後に重合させると、厚いコンクリート基材10aにおいても、その内部側まで十分に脱気させることができ、性状の改質範囲が広がる。
図5は、本発明にかかるコンクリート基材への含浸材の含浸方法の第3実施例を示しており、上記実施例と同一もしくは相当する部分には、同符号を付してその説明を省略するとともに、以下にその特徴点についてのみ説明する。同図に示した実施例では、含浸材20を含浸させるコンクリート基材10bに特徴がある。
【0023】
すなわち、この実施例のコンクリート基材10bは、比較的厚みの厚いブロック状のものであって、コンクリート基材10b内に埋設されている配管12bは、一端側が閉塞され、他端側がコンクリート基材10bの端面から外方に突出する多孔管部120bと、多孔管部120bの突出した部分を合流する合流管部121bと、合流管部121bに連通接続された接続管部122bとを備えている。
【0024】
多孔管部120bは、コンクリート基材10bの厚み方向に沿って所定の間隔を隔てて多段状に配置されている。また、コンクリート基材10bには、段状の多孔管部120bに対向するようにして、ほぼ同じ長さの含浸材20の供給孔100bが複数設けられている。各供給孔100bは、一端が閉止され、他端側がコンクリート基材10bの側端面に開口している。
【0025】
このような構造のコンクリート基材10aに含浸材20を含浸する際には、上記実施例と同様に、配管12aの接続管部122bにシール材16を介在させて、コンクリート基材10bを密閉容器14内に収納し、配管12b内および密閉容器14内を減圧し、含浸材20に圧力を加えることにより行なわれる。
このようにしてコンクリート基材10bに含浸材20を含浸させて、その後に重合させると、供給孔100bを介して含浸材20が供給され、かつ、これが含浸させられるので、厚いコンクリート基材10bにおいても、その内部側まで十分に脱気および含浸させることができ、改質部分が均一に存在するものが得られる。
【0026】
なお、配管12,12a,12cは、重合処理の後に、コンクリート基材10,10a,10bの側端で切断して、その内部にモルタルなどを充填することができるので、例えば、配管12に鋼製パイプを使用すると、配管12によるコンクリート基材10の補強効果も得られる。また、供給孔100bも重合処理の後に、必要に応じてモルタルなどを充填すればよい。
【0027】
【発明の効果】
以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかるコンクリート基材への含浸材の含浸方法によれば、以下の効果が得られる。
▲1▼内部から脱気するので、含浸材の含浸深さが深くなり、耐久性などのコンクリートの改質範囲が拡大され、構造部材としても使用することができる。
▲2▼高強度で軽い大きなブロックを製作することができるので、プレキャストブロック工法にこれを採用すると、急速施工が可能になる。
▲3▼脱気のための設備が小さくて済み、含浸時間も短縮されるので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる含浸方法に用いるコンクリート基材の一例を示す断面図と上面図である。
【図2】本発明の含浸方法における脱気処理の状態を示す説明図である。
【図3】本発明の含浸方法における含浸処理の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の含浸方法の第2実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の含浸方法の第3実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
10,10a,10b コンクリート基材
12,112a,12b 配管
14 密閉容器
16 シール材
20 含浸材
Claims (5)
- 硬化したコンクリート基材にモノマーが含まれた含浸材を含浸させた後に、熱水や放射線などにより前記モノマーを重合させるポリマーコンクリートの製造方法において、
前記コンクリート基材の内部に透気性配管を埋設し、前記コンクリート基材を密閉容器内に収納する際に、前記透気性配管の一端側を前記密閉容器外に突出させ、前記密閉容器および前記透気性配管の内部をそれぞれ減圧するとともに、
この減圧処理の後に、前記密閉容器内に前記含浸材を投入して密閉した後に、前記含浸材を加圧することを特徴とするコンクリート基材への含浸材の含浸方法。 - 前記含浸材を加圧する際に、前記透気性配管内を減圧させながら加圧することを特徴とする請求項1記載のコンクリート基材への含浸材の含浸方法。
- 前記含浸材を加圧する際に、前記透気性配管内を減圧状態に維持することを特徴とする請求項1記載のコンクリート基材への含浸材の含浸方法。
- 前記透気性配管の前記密閉容器の突出部分には、シール材が介装され、このシール材は、前記密閉容器の壁面を挟んで内外に配置された一対のシール部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のコンクリート基材への含浸材の含浸方法。
- 前記コンクリート基材には、前記透気性配管から所定の間隔を隔てて前記含浸材の供給路が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のコンクリート基材への含浸材の含浸方法。
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