JP3803441B2 - 色変換方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、カラーデジタルカメラ(以下、単にデジタルカメラともいう。)から出力されるデジタル信号であるRGB(RGBは、それぞれ、赤、緑、青の意)信号を測色値信号に変換する色変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーデジタルカメラの出力信号であるRGB信号のようなデバイス依存(デバイスディペンデント)の画像信号を、3刺激値信号XYZのようなデバイス非依存(デバイスインディペンデント)の画像信号に色変換する従来技術として、例えば、特開平2−291777号公報または特開平2−291778号公報に開示された色変換に係る技術(第1の技術という。)がある。
【0003】
この第1の技術は、RGB信号を説明変数とし、このRGB信号のそれぞれを1/3乗した後、1/3乗後のRGB信号に対して3×n(nは3の倍数)のマトリクスを作用させて目的変数としてのCIE−L* a* b* 信号を得る技術である。
【0004】
また、デバイス依存の印刷のcmy網%信号からデバイス非依存の3刺激値信号XYZを予測したり、あるいは、cmyの3原色信号に基づいて再現色の濃度を予測する従来の技術として、例えば、特開平4−337965号公報または特開平4−337966号公報に開示された印刷色再現色予測に係る技術(第2の技術という。)がある。
【0005】
この第2の技術は、基準の重回帰モデルに対して、予め設定した説明変数群の中から変数を一つずつ順に選択して重回帰モデルを再構築し、ある許容範囲内に入ったか否かを判定する手順を繰り返しながら、重回帰モデルの精度を上げていく技術である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの第1および第2の技術で対象としている説明変数は、cmy信号、あるいはRGB信号とその2乗項、クロス項等である。このような場合、すなわち、例えば、R信号と、このR信号の2乗信号等の関係のような場合には、説明変数相互の相関が高く、統計学上、不安定なモデルとなることが知られている。例えば、目的変数a * と、R信号項と、R信号の2乗項の説明変数とは、正の相関関係を有するが、R信号項の偏回帰係数は正の値となり、R信号の2乗項の偏回帰係数は負の値となる場合がある(これを統計学用語で多重共線性という。)。
【0007】
したがって、このような要素を有するマトリクスを用いて色信号を変換する場合、マトリクス作成に使用した色以外については色変換の精度を保障することができないという問題がある。ただし、第2の技術では、説明変数を選択することで、この問題をある程度解決している。
【0008】
なお、色を正確に変換する技術として、例えば、画像電子学会誌第18巻第5号(1989年)に発表された、予め、3次元(XYZ)の色空間を例えば512個の立方体に領域分割し、合計729点の格子点での色修正値を出力デバイスの特性に最適化した方法で計算して、いわゆるルックアップテーブル(LUT)として持ち、各格子点間の入力値についてはこのLUTを3次元的に補間して求める補間方法を使用する技術(第3の技術またはLUT+補間方式による技術という。)が知られているが、この第3の技術では、メモリを多量に使用するという欠点があり、また、LUTを作成するために、規則性のある多数のカラーパッチを作成し、かつ測定する必要があることから時間がかかるという欠点もある。
【0009】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、マトリクス方式の精度不足、並びにLUT+補間方式におけるパッチの作成、その測定およびメモリ上の問題を一掃することを可能とする色変換方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、第1の色空間の任意の色信号を第2の色空間の色信号に変換する色変換方法において、所望の代表的な色を彩度、明度、色相に応じて変化させた複数のカラーパッチを有するカラーチャートを前記第1の色空間の色信号を出力するデバイスで読み取る過程と、読み取った第1の色空間の色信号を輝度値又は濃度値に変換し、変換した前記輝度値又は前記濃度値の少なくとも一次項の輝度値又は濃度値を第1の説明変数群として求める過程と、前記第1の説明変数群を主成分分析して求めた前記輝度値又は前記濃度値の主成分スコアを相互の説明変数が直交する第2の説明変数群とする過程と、測色計により求めた前記カラーチャートの各カラーパッチの色についてのXYZまたはL * a * b * の各測色値を目的変数群とし、この目的変数群と前記第2の説明変数群を重回帰分析して、偏回帰係数のマトリクスを求める過程と、前記偏回帰係数の検定を行い、前記第2の説明変数群の中、所定程度有意な説明変数を選択し、この選択した説明変数を使用可能な説明変数とし、この使用可能な説明変数に対応する前記偏回帰係数のマトリクスを所定程度有意な偏回帰係数のマトリクスとする過程とを有し、前記第1の色空間の任意の色信号に対して前記使用可能な説明変数に対応する前記所定程度有意な偏回帰係数のマトリクスを作用させて、前記第2の色空間の色信号に変換することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第1の説明変数群を主成分分析し、相互の説明変数が直交する第2の説明変数群に変換し、この第2の説明変数群と、カラーチャートの測色値である目的変数群とから偏回帰係数をデータ量の少ないマトリクスとして求めるようにしている。このため、色変換の精度が保障され、かつマトリクス方式であるので、メモリ容量を少なくすることができる。
【0012】
また、この発明によれば、求めた偏回帰係数の検定を行って、所定程度(例えば、1%、5%等)有意な第2の説明変数群を選択し、この選択した第2の説明変数群と前記偏回帰係数とでマトリクスを作成するようにしている。このため、一層、精度よく色変換でき、かつマトリクス方式であるので、メモリ容量を少なくすることができる。
【0013】
この場合、前記偏回帰係数のマトリクスを求める過程では、前記カラーチャート中、所望の特定色に対して重み付けを行うことで、その所望の特定色の色変換精度を向上させることができる。
【0014】
また、重み付け用の所望の特定色を灰色としておくことで、一般的に重要な色である灰色を精度よく色変換することができる。
【0015】
さらに所望の特定色を、第1の色空間の色信号を統計処理して得られる、例えば、頻度の高い色とすることで、原シーンの色を精度よく色変換することができる。また、統計処理用の色として、肌色、青色、緑色を抽出することで、顔の肌色、空の青色、葉の緑色を特に正確に色変換することができる。
【0016】
さらに、統計処理を、前記カラーチャートの各カラーパッチの色を中心とした領域に分割して行うことにより、実際の画像に存在している色を中心として色変換することができるので、色変換精度を高くできる。
【0017】
なお、第1の色空間をRGB空間とし、第2の色空間をXYZまたはL * a * b * の測色値空間とすることで、種々のデバイスのRGB信号について、共通の色空間で画像処理を行うことができる。
【0018】
さらにまた、重み付けするための所望の特定色は、RGB信号を、一旦XYZまたはL * a * b * の測色値信号に変換した後、その測色値空間の中で統計処理を行なって決定することもできる。
【0019】
なお、前記カラーチャートとして、市販の既製品であるマクベスカラーチェッカー(登録商標)を用いた場合には、カラーパッチの数は24色分と少なくて済み、かつ市販であるので、容易にカラーチャートを入手することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施の形態が適用された画像信号処理装置10の全体的な構成を示している。
【0022】
この画像信号処理装置10は、測色変換部16を有し、この測色変換部16には、撮像装置であるデジタルカメラ(不図示)で撮影したシーン(場面)の画像情報を有するRGB信号(デジタル画像信号)12が供給されるとともに、必要に応じて、画像読取装置であるスキャナ(不図示)を構成する画像入力部(線走査読取装置またはスキャナ入力部ともいう。)で読み取られたリバーサル原稿の画像情報を有するRGB信号(デジタル画像信号)14が供給される。なお、デジタルカメラはデジタルビデオカメラでもよく、その他、撮像機能を有したデジタル画像信号(デジタル画像データ)を出力する装置であれば、この発明を適用することができる。
【0023】
また、スキャナとしては、リニアイメージセンサを搭載するカラースキャナである線走査読取装置でもよく、また、エリアイメージセンサを搭載するカラースキャナである面走査読取装置でも、この発明を適用することができる。
【0024】
測色変換部16は、デジタルカメラのRGB信号12をXYZまたはL* a* b* 等の測色値信号(XYZ信号ともいう。)18に変換する測色変換マトリクス(以下、単にマトリクスともいう。)20と、スキャナ入力部のRGB信号14をXYZ信号またはL* a* b* 等の測色値信号22に変換する測色変換テーブル(測色変換ルックアップテーブル、ルックアップテーブルまたは単にテーブルともいう。)24とを有している。
【0025】
なお、通常、RGB信号12、14は、デバイスに依存する(デバイス依存またはデバイスディペンデントともいう。)信号(データ)といい、これに対して測色値信号18、22は、デバイスに依存しない(デバイス非依存またはデバイスインディペンデントともいう。)信号(データ)という。
【0026】
デジタルカメラの測色値信号18は、撮影光源と観察光源の違いを吸収する光源変更部25と、ハイライト部濃度とシャドー部濃度とをセットアップする測色的セットアップ部(単に、セットアップ部ともいう。)26と、原シーン(撮影されたもとの場面)の前記測色値信号18をリバーサル原稿上の色素濃度信号28に変換する色素濃度変換部30と、cmyk変換部32を構成する原シーン忠実再現テーブル42に必要に応じて供給される。
【0027】
一方、スキャナ入力部の測色値信号22は、前記測色的セットアップ部26と、標準条件再現テーブル部43を構成し前記測色値信号22を色素濃度信号34に変換する色素濃度変換部36に供給される。
【0028】
色素濃度変換部30、36から出力される色素濃度信号(cmy信号)28、34は、スイッチ45を通じて選択され、標準条件再現テーブル44に供給される。
【0029】
cmyk変換部32は、基本的には、原シーン忠実再現テーブル42と標準条件再現テーブル部43とを有している。原シーン忠実再現テーブル42は、供給されるデジタルカメラの測色値信号18を測色的に保存された網%信号であるcmyk信号46に変換するルックアップテーブルである。
【0030】
標準条件再現テーブル部43は、測色値信号22を色素濃度信号34に変換する色素濃度変換部36と、色素濃度変換部30または色素濃度変換部36のいずれかの出力信号を選択するスイッチ(マルチプレクサ、選択手段)45と、標準条件再現テーブル44とを有している。標準条件再現テーブル44は、スイッチ45により選択された色素濃度信号28、34のいずれかを網%信号であるcmyk信号48に変換する処理を行う。cmyk変換部32は、3色表色系の信号を4色表色系の信号に変換する、いわゆる3色4色変換機能を有する。
【0031】
cmyk変換部32から出力される網%信号であるcmyk信号46、48は、このcmyk信号46、48に基づく画像を出力する画像出力部35に供給される。画像出力部35は、例えば、図示しない2値化変換部と、レーザ露光走査部(イメージセッタ等)と、現像部と、刷版作成部と、印刷部とからなる公知の構成を採用することができる。2値化変換部では、cmyk信号46またはcmyk信号48をスクリーン線数、網角度等の出力条件に応じて選択されるCMYKの各閾値マトリクスと比較して、2値化処理する。レーザ露光走査部では、この2値信号(2値画像信号ともいう。)に基づいてオンオフするレーザビームによりフイルムを露光走査して潜像を形成する。現像部では、この潜像が形成されたフイルムを現像して画像を顕像化し、製版用フイルムを作成する。刷版作成部では、この製版用フイルムから刷版を作成する。印刷部では、前記刷版、この場合、4版分のCMYK用刷版を印刷機に装着し、刷版に付けられた4色のインキが本紙(印刷用紙)に転写されることで、画像が形成されたハードコピーとしての印刷物が作成される。
【0032】
なお、画像出力部35として、フイルムの現像処理が不要であり、網点やスクリーン線数やスクリーン角度を直接本紙に網点画像として印刷してシミュレーションすることのできる、ダイレクトデジタルカラー校正(DDCP)システムを用いることもできる。
【0033】
前記測色的セットアップ部26は、測色値信号18、22を測色的END(等価中性濃度)信号52に変換する測色的END順変換・逆変換マトリクス(単に、マトリクスともいう。)50と、測色的END信号52から間引き処理により作成した測色的END信号56を出力するラフデータ作成部54と、作成された測色的END信号56に基づいて、ハイライト濃度信号60とシャドー濃度信号62とを自動的に決定するオートセットアップ部58と、測色的END信号52に対して階調変換処理を施して測色的END信号66に変換するEND・END変換部64と、変換された測色的END信号66を測色値信号22に逆変換する測色的END順変換・逆変換マトリクス50とを有する。
【0034】
なお、画像信号処理装置10は、図示していないコンピュータ(CPU、ROM、RAM、外部記憶装置、モニタ、その他、入出力機器等を含む。)により制御される構成となっており、画像信号処理装置10を構成する各ブロックは、ハードウエアばかりでなく、ソフトウエアで構成される部分をも有する。コンピュータは、制御、判断、演算、比較手段等として機能する。
【0035】
次に、画像信号処理装置10を構成する各ブロックの詳細な構成と動作について説明する。
【0036】
測色変換部16を構成し、RGB信号12をXYZ信号18に変換するマトリクス20は、図2に示すフローチャートに基づいて作成される。なお、以下の説明において、マトリクス20は、RGB色空間からCIE−L* a* b* (光源:補助標準の光CIE−D50)色空間への変換を例として説明する。この場合、CIE−L* a* b* 色空間とXYZ色空間との相互の変換は、次に示す公知の(1)式により一意に行うことが可能である。したがって、以下の全ての説明において、XYZ色空間(またはCIE−L* a* b* 色空間)での処理はCIE−L* a* b* 色空間(またはXYZ色空間)での処理に置き換えることができる。また、その他、これらと等価な測色的色空間での処理に置き換えることができる。
【0037】
L* =116(Y/Yn)1/3 −16
a* =500{(X/Xn)1/3 −(Y/Yn)1/3 }
b* =200{(Y/Yn)1/3 −(Z/Zn)1/3 } …(1)
まず、代表的な色を彩度、明度、色相に応じて変化させた複数のカラーパッチ72(図2参照)を有する一種の色票であるカラーチャート70を準備する(ステップS1)。この実施の形態では、カラーチャートとして、マクベスカラーチェッカー{登録商標:米国のコールモージェン社のマクベス部門(Macbeth A division Kollmorgen )製}を用いる。マクベスカラーチェッカーは、公知のように、CIE(1931)xyY値、色相、マンセル表記値、彩度が規定されたカラーチャートである。
【0038】
24色は、具体的には、
1.暗い肌(dark skin )
2.明るい肌(light skin)
3.青い空(blue sky)
4.葉(foliage )
5.青い花(blue flower )
6.青みの緑(bluish green)
7.オレンジ(orange)
8.紫みの青(purplish green)
9.明度彩度のほどよい赤(moderate red)
10.紫(purple)
11.黄緑(yellow green)
12.黄だいだい(orange yellow )
13.青(Blue)
14.緑(Green )
15.赤(Red )
16.黄(Yellow)
17.マゼンタ(Magenta )
18.シアン(Cyan)
19.白(White )
20.中性8(neutral 8:明るい灰色で、8はマンセル表記値の8)
21.中性6.5(neutral 6.5:ライトミディアム灰色)
22.中性5(neutral 5:中間の灰色)
23.中性3.5(neutral 3.5:暗い灰色)
24.黒(black )
である。
【0039】
なお、カラーチャートとしては、マクベスカラーチェッカーに限らず、例えば、JIS標準色標等、色空間を概ね均等に網羅したカラーチャートを用いることができる。
【0040】
次に、CIE−D50の撮影光源下でデジタルカメラを用いてカラーチャート70の24色の各色、すなわち24個の各パッチ72を撮影して、パッチ72のそれぞれのRGB信号12を得、得られた各RGB信号12を輝度値に変換した後、1/3乗する(ステップS2)。なお、輝度値への変換は、例えば、デバイス内部で施されているγ補正を解除することで求めることができる。また、1/3乗するのは、上記(1)式からも理解されるように、得られたRGB信号12をCIE−L* a* b* 表色系で処理するためである。
【0041】
次いで、ステップS2で得られた各パッチ72についてのRGB信号12、具体的には、各パッチ72について、輝度変換され1/3乗されたR値、G値、B値から2次項までの各値R、G、B、R2 、G2 、B2 、RG、GB、BR(9変数)を計算する(ステップS3)。
【0042】
次に、後に説明する重回帰分析を行った場合に、マルチコ(多重共線性)現象を起こさないように、ステップS3で得られた9変数の24色のデータに対して主成分分析を行い、9変数の主成分スコア(主成分得点)Vを求める。各色毎に次の(2)式で示す主成分スコアV(Vは、ベクトルと考える。)が求められる。
【0043】
V=(v1 ,v2 ,v3 ,v4 ,v5 ,v6 ,v7 ,v8 ,v9 )…(2)
なお、この(2)式において、主成分スコアVの成分v1 ,v2 ,v3 ,v4 ,v5 ,v6 ,v7 ,v8 ,v9 は、相互に相関が全くなく前記マルチコ現象を起こさない。
【0044】
次に、図示していない測色計により、カラーチャート70の各パッチ72、すなわち24色の各色についての測色値C(L* a* b* )(Cも、24色分得られるので、ベクトルと考える。)を求める(ステップS5)。この測色値Cを求める過程は、ステップS2〜S4の過程に対してどの時点で求めてもよい。
【0045】
次に、測色値Cを目的変数(従属変数)とし、主成分スコアVを説明変数(独立変数)として、重回帰分析により偏回帰係数A(Aもベクトルと考える。)を求める(ステップS6)。
【0046】
この重回帰分析を行う際に、目的変数群となっている測色値Cを構成する24色に1:1に対応した重み付けマトリクス(単に、マトリクスともいう。)P=[Pi](i=1,2,…24)を作用させる(ステップS7)。Piは、各色の重みであり、例えば、上述の24色中、20.中性8(neutral 8:明るい灰色で、8はマンセル表記値の8)、21.中性6.5(neutral 6.5:ライトミディアム灰色)、22.中性5(neutral 5:中間の灰色)、23.中性3.5(neutral 3.5:暗い灰色)の灰色についての重みを大きくすることで、灰色についての色の再現性を向上させることができる。灰色に限らず、目的に応じて所望の色、例えば、人であれば肌色、外の景色であれば空色について限定して重みを大きくすれば、肌色または空色をより忠実に再現することが可能となり、好適である。また、重みは、入力RGB信号12を統計的に処理し、一画面分の画像信号、言い換えれば、画素分割された画像データについて、例えば、カラーチャートの各パッチの色を中心とした領域に色空間を分割し、各領域に存在する画素の頻度値に応じた重み付け、例えば、最頻値の重みを最も大きくし、以下、順に重みを小さくするようにすれば自動的な重み付け処理を行うことができる。なお、色空間の分割は、RGB色空間であってもよく、重みなしのマトリクスで変換されたXYZ(L* a* b* )色空間であってもよい。
【0047】
この場合、重みを大きくした色を画像の主要色と呼ぶ。なお、マトリクスPの各要素の合計値が1になるように、各要素の値を各要素の合計値で割った値に規格化しておく。
【0048】
偏回帰係数Aを求めるステップS6の重回帰分析について詳しく説明する。
【0049】
目的変数である測色値(ベクトル)Cと、求めようとする偏回帰係数(ベクトル)Aと、主成分スコア(ベクトル)Vとの間で、24色の各測色値Cに対して次の(3)式に示す線形1次式が成立するものとする。
【0050】
C=AV …(3)
この(3)式と等価なマトリクスによる表現式を(4)式に、和の記号Σによる表現式を(5)式に各々示す。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
なお、(5)式のように和の記号Σを使用する式を、必要に応じて、L* =Σ(j=1→10)a1jvj と表すこととする。
【0054】
偏回帰係数Aは、L* a* b* のそれぞれ別個に最小二乗法を用いて求める。例えば、L* については、次の(6)式によるeL を最小とする偏回帰係数a1jを求めればよい。
【0055】
eL =Σ(i=1→24)Pi{Ci−Σ(j=1→10)a1jvj }2 …(6)
ここで、iは、カラーチャート70のパッチ番号、Piは、各色の重み、jは、変数の番号(1、2、…、10)である。
【0056】
(6)式をベクトルとマトリクスで表すと(7)式となる。ただし、(7)式において、測色値Cと偏回帰係数aとはベクトル、主成分スコア[V]と重み付けマトリクス[P]とはマトリクスである。tはマトリクスの転置を表す。
【0057】
以下、ベクトルCは単にCと記載し、ベクトルaは単にaと記載する。先ず、(7)式は、以下のように変形することができる。
【0058】
eL =(Ct −[V]t at )t [P](Ct −[V]t a)
ここで、aと[V]とを入れ換えれば、
eL =(C−a[V])[P](Ct −[V]t a)となる。
【0059】
一般的に、(ABC)t =Ct Bt At であるので、
eL =C[P]Ct +a[V][P][V]t at −a[V][P]Ct −C[P][V]t at となる。
【0060】
ここで、[V][P][V]t =[N]、[V][P]Ct =[U]と置けば、
eL =C[P]Ct +a[N]at −2a[U] …(8)
となる。(8)式において、eL を最小にするためには、偏回帰係数aの各要素についての微分が0に等しくならなければならない。従って、次の(9)式が成立する。
【0061】
【数3】
【0062】
この(9)式から、以下に示すように偏回帰係数aを(10)式により求めることができる。
【0063】
([ ]-1は逆行列を示す。)
このようにしてL* についての偏回帰係数a(a1j)が10個求められ、以下、同様の方法で、残りのa* 、b* についても偏回帰係数a2j、a3jを各10個求めることができる。求められた偏回帰係数a1j、a2j、a3jの合計は、3×10個である{(4)式参照}。
【0064】
結局、L* a* b* についての偏回帰係数Aをまとめて表現すると、(11)式で表すことができる。
【0065】
A=CPVt (VPVt )-1 …(11)
次に、各目的変数L* a* b* について求めた偏回帰係数Aの例えば5%有意で検定を行い(ステップS8)、5%有意(信頼度95%)な説明変数Vを記憶手段に格納しておくとともに、偏回帰係数Aを図1に示したマトリクス20として格納する(ステップS9)。なお、1%有意(信頼度99%)で検定してもよい。
【0066】
ステップS8の検定では、(12)式〜(16)式に示すように、回帰平方和SR {求めた推定値L* i(Lの上に記号「^」を付けている。)と測色値の平均L* i(Lの上に記号「- 」を付けている。)の差の2乗和:(12)式参照}と残差平方和SE {測色値L* iと推定値L* iの差の2乗和:(13)式参照}とを求め、さらに回帰平方和SR と残差平方和SE の不偏分散VR 、VE {(14)式、(15)式参照}を各々求める。さらに、偏F値Fj{(16)式参照}を求める。なお、(16)式において、aの頭に「^」を付けたものは、(4)式の右辺のマトリクスの係数の推定値、Sjjは、説明変数vj の分散共分散行列の逆行列の対角項を意味している。
【0067】
【数4】
【0068】
この偏F値Fjが5%有意のF分布を参照して求めた値=F′n-p-1 (0.05)=F′24-9-1(0.05)=F′14(0.05)=4.60011より大きい場合には、5%有意水準で回帰が有意であり、予測に役立つ偏回帰係数と判断してマトリクス20(図1参照)に格納しておく。
【0069】
このようにして、デジタルカメラにより得られたRGB信号12(図1参照)をXYZ測色値信号18に変換するL* a* b* を求めるためのマトリクス20を作成することができる。このマトリクス20に係る式を(17)式に示す。
【0070】
L* =Σa1jvj (j:5%有意な変数)
a* =Σa2jvj (j:5%有意な変数)
b* =Σa3jvj (j:5%有意な変数) …(17)
この(17)式において、(j:5%有意な変数)の意味は、変数として前記検定が5%有意であったもののみを使用するという意味である。その点で上述の(5)式と異なる。なお、a1j、a2j、a3jは、偏回帰係数マトリクスAの要素であり、vj は、ステップS4で求めた説明変数の主成分スコアである。
【0071】
このマトリクス20を使用することにより、既成のカラーチャート70を使用して測色変換を行うことができる。この場合、ルックアップテーブルを使用しないのでメモリ容量が少なくて済み、換言すれば、メモリ容量が少なくても、精度よく測色変換を行うことができる。さらに、重み付けマトリクスPの使用により画像の所望色(主要色)に限定して精度よく色変換を行うこともできる。なお、説明変数の数が9箇の場合には、ステップS8の検定処理を行わず、全ての偏回帰係数Aを用いて(17)式に対応するマトリクスを作成してもよい。
【0072】
このようにして得られたCIE−L* a* b* 色空間の値が、上述の(1)式によりXYZ色空間の値へ変換され、マトリクス20の出力信号である測色値信号18とされる(図1参照)。
【0073】
次に、測色値信号18は、必要に応じて光源変更部25により測色的に変更され、新たな測色値信号18(同一の符号を用いる。)とされる。なお、観察光源をデジタルカメラの撮影時における撮影光源(CIE−D50と同一)とした場合には、この光源変更処理は不要である。
【0074】
測色値XYZを光源変更部25による光源変更処理後の新たな測色値XYZ(符号は、X′Y′Z′とする。)に変更する場合、その変換は、次の(18)式、(19)式、(20)式に基づいて行うことができる。
【0075】
X′=XX2 /X1 …(18)
Y′=YY2 /Y1 …(19)
Z′=ZZ2 /Z1 …(20)
ただし、(18)式〜(20)式において、XYZは各々撮影光源下における測色値、X′Y′Z′は各々観察光源下における測色値、X1 Y1 Z1 は各々撮影光源の白色点、X2 Y2 Z2 は各々観察光源の白色点である。
【0076】
以下、測色値信号18は、必要に応じて光源変更処理のなされた信号であるものとする。
【0077】
一方、スキャナ入力部から出力されたRGB信号14は測色変換テーブル24によりXYZ信号である測色値信号22に変換される。
【0078】
この測色変換テーブル24は、例えば、cmyの色パッチの各濃度を13段階規則正しく振った、合計13×13×13=2197個からなるカラーパッチを有するカラーリバーサル原稿を準備する。そして、このカラーリバーサル原稿を構成する前記各カラーパッチをスキャナの入力部で読み取るとともに、測色計で読み取る。そして、スキャナで読み取ったRGB値と測色計で読み取ったXYZ値との対応関係を求めてテーブルとしたものである。このテーブルに存在しない読取値間の値は補間処理により求める。
【0079】
そして、スキャナの入力部の出力信号であるRGB信号14を測色変換テーブル24により測色値信号22に変換すること、およびデジタルカメラの出力信号であるRGB信号12を測色変換マトリクス20により測色値信号18に変換することにより、次に説明する測色的セットアップ部26を共通に使用して、いわゆるオートセットアップ処理を行うことができる。すなわち、測色値信号18、22を、一旦、測色的ENDに変換することにより、オートセットアップ処理ソフトウエアを共通に使用することができるという利点がある。
【0080】
次に、測色的セットアップ部26について図3のフローチャートをも参照して説明する。
【0081】
従来から、階調変換は、直感的な理解がし易いために濃度空間で行われており、また、現在、市販されているカラースキャナにおける階調変換処理および色修正処理等の画像処理も濃度信号を基準として実施されている。そこで、まず、測色値信号18または測色値信号22を濃度信号の表色系であるcmyのEND(等価中性濃度)信号52に変換する(ステップS11)。この変換処理は、図3に示すように、XYZ表色系からRGB表色系への線形変換処理(ステップS11a)とRGB表色系からcmy表色系への非線形変換処理(ステップS11b)の2段階の処理になっている。なお、測色値信号18または測色値信号22から変換されたEND信号を測色的END信号52と呼ぶ。
【0082】
例えば、リバーサル原稿の測色値信号22を測色的END信号52に変換する場合、図4に示すCIEの色度図上、リバーサルフイルムの色再現領域71(ハッチングで示す領域)を描き、その色再現領域71を包含する領域73の3つの原刺激RGB(それぞれRxyz、Gxyz、Bxyzとする。)の各点の色度図上の座標、すなわち色度座標が(21)式〜(23)式に示す座標であるものとする。この場合、リバーサルフイルムの色再現域71を包含する領域73は、図4に示す色度図上、原刺激Rxyz、Gxyz、Bxyzを頂点とする三角形の領域である。
【0083】
Rxyz=Rxyz(xR ,yR ,zR ) …(21)
Gxyz=Gxyz(xG ,yG ,zG ) …(22)
Bxyz=Bxyz(xB ,yB ,zB ) …(23)
また、色度図上、XYZ表色系の基礎刺激(白色刺激)Wxyzの座標を(24)式に示す。
【0084】
Wxyz=Wxyz(xW ,yW ,zW ) …(24)
この場合、次の(25)式によりXYZ表色系の測色値信号22(右辺の右側のマトリクス)は、変換マトリクス(右辺の左側のマトリクス)を介してRGB表色系の色信号RGB(左辺のマトリクス)に変換することができる(ステップS11a)。
【0085】
【数5】
【0086】
余因数Aijは、下式で求められる。
【0087】
Aij=(−1)i+j Dij
ただし、Dijは、i行j列を除いた小行列式である。
測色的END信号52のcmy値は、基礎刺激(白色刺激)WXYZ の座標を(25)式に代入して求めたR、G、Bの値Rw、Gw、Bwに対する(25)式で求めたR、G、Bの値の各比率を(26)式〜(28)式に示すように各々対数変換することにより求めることができる。
【0088】
c=−log(R/Rw) …(26)
m=−log(G/Gw) …(27)
y=−log(B/Bw) …(28)
ラフデータ作成部54は、セットアップ処理を短時間に行うため、例えば、原稿1枚分の測色的END信号(実際には、デジタルデータ)52を対象とするのではなく、原稿中、オペレータからCPUを通じて領域指定された画像の存在する部分のみのデータを選択すること、あるいは画像が原稿の全面に存在する場合にはデータを間引いて作成すること等、いわゆるラフスキャン処理を行う。
【0089】
次に、オートセットアップ部58において、ラフデータ作成部54により選択されたラフデータである測色的END信号56にもとづいてオートセットアップ処理を行う(ステップS12)。このオートセットアップ処理では、例えば、特開平2−105676号公報にも公知のように、測色的END信号56についてヒストグラムを作成した後、累積ヒストグラムを作成する。
【0090】
そして、図1中、END・END変換部64の動作を示す特性図(図1中に描いている図)に示すように、前記累積ヒストグラムの、例えば、0.1%点データ(HL濃度)D1に対応する測色的END信号56の値をDHに設定し、98%点データ(SD濃度)D2に対応する測色的END信号56の値をDSに設定する(ステップS12)。
【0091】
分かり易く仮想的な値で説明すると、例えば、D1の濃度がD1=1.0、D2の濃度がD2=2.0であった場合、D1の濃度に対応するDHをDH=0.1に設定し、D2の濃度に対応するDSをDS=3.0に設定する。なお、実際上は、0.1%点データ(HL濃度)D1が網%の0%に対応する濃度に変換され、98%点データ(SD濃度)D2が網%の100%に対応する濃度に変換される。
【0092】
このようにして設定された直線74の式から、END・END変換部64により本スキャンデータ(ラフスキャン処理の対象となったデータ)の全ての測色的END信号52を測色的END信号66に変換することができる(ステップS13)。すなわち、階調特性を変換すること、言い換えれば階調補正処理を行うことができる。なお、変換式は、ハイライトポイント75(D1,DH)およびシャドーポイント76(D2,DS)を通る曲線の式とすることもできる。なお、HL濃度D1とSD濃度D2(またはセットアップポイント75、76)を上述のように予め定めた一定の条件に基づいて自動的に決定することをオートセットアップというが、HL濃度D1とSD濃度D2の値をマニュアルで決定することも可能であり、あるいは、オートセットアップ後、DHとDSとをマニュアルで修正することも可能である。マニュアルにより決定する動作をマニュアルセットアップという。
【0093】
次いで、測色的END逆変換マトリクス50により、END・END変換後の測色的END信号66のcmy値をXYZ値である測色値信号22に逆変換する(ステップS14)。
【0094】
この逆変換処理は、測色的END信号66のcmy値をRGB表色系のRGB値に変換する処理(ステップS14a)と、このRGB値をXYZ表色系のXYZ値をとる測色値信号22に変換する処理(ステップS14b)とからなる。測色的END信号66のcmy値をRGB表色系のRGB値に変換する処理は、前記の(26)式〜(28)式をRGBについて解いた次の(29)式〜(31)式により行われ、RGB値をXYZ表色系のXYZ値に変換する処理は、前記の(25)式をマトリクスXYZについて解いた次の(32)式により行われる。
【0095】
R=Rw10-c …(29)
G=Gw10-m …(30)
B=Bw10-y …(31)
【0096】
【数6】
【0097】
なお、上述のセットアップ処理は、リバーサル原稿の測色値信号22を例に説明したが、同様にデジタルカメラの測色値信号18に対しても適用することができる。
【0098】
すなわち、一般的に、印刷製版分野においては、オリジナル原稿としてリバーサル原稿を使用する。このリバーサル原稿上に原シーンが露光され、そのリバーサル原稿上で発色している色再現域71内を対象として印刷は仕上げられる。このことは、取り扱う画像信号の色再現域として、リバーサル原稿が発色する色再現域71で十分であることを示唆している。
【0099】
このように、測色的セットアップ部26では、測色的XYZをRGB3原色の表色系へ線形変換し、基礎刺激(光源)Rw、Gw、Bwに対する求めたR、G、Bの比率を対数変換することにより、END値を求め、これを用いてオートセットアップする。END・END変更されたEND値を逆対数変換処理することにより、変更されたRGB値を求め、逆変換マトリクスにより変更された測色値XYZを求めるようにしている。このため、既存のいわゆる濃度信号に基づいたオートセットアップ処理を行うことができるという効果が達成される。なお、セットアップ処理は、マニュアルセットアップ処理として行うことができることはいうまでもない。
【0100】
次に、色素濃度変換部30について図5、図6のフローチャートをも参照して説明する。
【0101】
この色素濃度変換部30では、デジタルカメラにより撮影された原シーンの測色値信号(XYZ)18をリバーサル原稿上の色素濃度信号(cmy)28に変換する。
【0102】
この変換過程は、図5に示す方法と図6に示す方法の2通りの方法が考えられる。
【0103】
すなわち、図5に示す方法は、原シーンの測色値信号(XYZ)18を、後述するルックアップテーブルにより原シーンの色素濃度信号(cmy)81に変換し(ステップS21:第1段階の処理)、この原シーンの色素濃度信号(cmy)81を後述するマトリクスによりリバーサル(単に、RVともいう。)原稿上の色素濃度信号(cmy)28に変換する方法である(ステップS22:第2段階の処理)。また、図6に示す方法は、原シーンの測色値信号(XYZ)18を、後述するマトリクスによりリバーサル原稿上の測色値信号(XYZ)82に変換し(ステップS31:第1段階の処理)、このリバーサル原稿上の測色値信号(XYZ)82を後述するルックアップテーブルによりリバーサル原稿上の色素濃度信号(cmy)28に変換する(ステップS32:第2段階の処理)方法である。
【0104】
まず、図5に示す方法の詳細について、図7のフローチャートをも参照して説明する。図5中、ステップS21の処理に係る測色値XYZを色素濃度cmyに変換するためには、色空間を概ね均等に網羅したカラーチャート、例えば、上述のマクベスカラーチェッカー70の24色の各測色値XYZを測色計により求める(ステップS21a:図7参照)。
【0105】
次に、求めた測色値XYZから色素濃度値cmyを算出し(ステップS21b)、測色値XYZに対する色素濃度値cmyのルックアップテーブルを作成する。このルックアップテーブルを色素濃度変換部30における第1段階の処理であるステップS21のルックアップテーブルとして色素濃度変換部30に設定記憶しておく。なお、ステップS21の処理では、このルックアップテーブルを用いるとともに、上記24色の測色値XYZ以外の色については、その24色の測色値XYZを用いて補間法により色素濃度値cmyを算出することができる。
【0106】
ステップS21bの算出処理、すなわち測色値(三刺激値)XYZから色素濃度cmyを求める処理を説明する。
【0107】
測色値XYZと色素濃度cmyとの間では、次の(33)式〜(36)式が成立する。
【0108】
X=k∫visP(λ)T(λ)x(λ)dλ …(33)
Y=k∫visP(λ)T(λ)y(λ)dλ …(34)
Z=k∫visP(λ)T(λ)z(λ)dλ …(35)
T(λ)=10-h …(36)
ただし、
h={cDc(λ)+mDm(λ)+yDy(λ)+base(λ)}
k=100/∫visP(λ)y(λ)dλ(λは光の波長)
∫vis:可視波長域(380nm〜780nm)での定積分
P(λ):観察光源の分光特性データ
T(λ):透過物体の色素の分光透過率データ
{(36)式はランベルト・ベールの法則が成立すると仮定}
x(λ)、y(λ)、z(λ):等色関数
Dc(λ)、Dm(λ)、Dy(λ):cmy色素の分光濃度データ
base(λ):フイルムベースの分光濃度データ
これら(33)式〜(36)式から色素濃度cmyを求める場合には、逆関数を求めればよいのであるが、直接求めることができない。そこで、公知のニュートン(ニュートン・ラフソン)法(例えば、太田登著「色彩工学」pp254−260 東京電機大学出版局 1993年12月20日 第1版1刷発行)のような逐次近似法を用いればよい。前記参考書を引用して、このニュートン・ラフソン法(N・R法と略記する。)について簡単に説明する。
【0109】
一般的な方程式y=f(x)をf(x)=0の根に近いx=x0でテーラ展開して1次の項のみを取ると、xの微小変化Δxに対して、f(x0+Δx)=f(x0)+f′(x0)・Δxが成立する。ただし、f′(x0)は、f(x)の微分係数f′(x)にx=x0を代入したものである。したがって、f(x)=0のより正しい値x1は、f(x0+Δx)=0として、x1=x0+Δx=x0−f(x0)/f′(x0)で求められる。これは、図8に示すように、関数y=f(x)上の点(x0,y0)で接線83を引き、その接線83とx軸との交点x1を求めることに相当する。
【0110】
これを(33)式〜(36)式に適用するためには、(36)式を(33)式〜(35)式に代入した後、ある関数fx、fy、fzを用いれば、(33)式〜(35)式は、(37)式〜(39)式のように表すことができる。
【0111】
X=fx(c,m,y) …(37)
Y=fy(c,m,y) …(38)
Z=fz(c,m,y) …(39)
これら(37)式〜(39)式において、初期値をc0,m0,y0とし、そのときの三刺激値をX0,Y0,Z0とする。今、c0,m0,y0に微小変化Δc,Δm,Δyを加えたとき、三刺激値がΔX,ΔY,ΔZだけ変化したとすれば、次の(40)式が得られる。
【0112】
ただし、例えば、∂fx/∂cは、関数fxのcに関する偏微分係数を表す。
【0113】
この(40)式を整理すれば、(41)式が得られる。同様に、ΔY、ΔZも(42)式、(43)式に示すように得られる。
【0114】
ΔX=Δc・∂X/∂c+Δm・∂X/∂m+Δy・∂X/∂y …(41)
ΔY=Δc・∂Y/∂c+Δm・∂Y/∂m+Δy・∂Y/∂y …(42)
ΔZ=Δc・∂Z/∂c+Δm・∂Z/∂m+Δy・∂Z/∂y …(43)
(41)式〜(43)式を(44)式に示すように行列表示する。
【0115】
(Q)=(J)(P) …(44)
ただし、(Q)は、要素が1行目から順にΔX,ΔY,ΔZである1行3列のマトリクス、(J)は偏微分係数が3行3列からなるヤコビアンマトリクス、(P)は、要素が1行目から順にΔc,Δm,Δyである1行3列のマトリクスである。
【0116】
(44)式の両辺に、ヤコビアンマトリクス(J)の逆マトリクス(J)-1を掛ければ、(45)式が得られる。
【0117】
(P)=(J)-1(Q) …(45)
したがって、初期値c0,m0,y0を(46)式のようにそれぞれc1,m1,y1に修正すれば、より正しい近似値を得ることができる。
【0118】
c1=c0+Δc
m1=m0+Δm
y1=y0+Δy …(46)
以上のようにして得られるヤコビアンマトリクス(J)を用いて繰り返し計算を行うことにより、任意の目標値である測色値XYZに対する色素濃度信号cmyを求めることができる。同様の処理をXYZ色空間における格子上の全目標値に対して行うことで、原シーンに対する測色値信号(XYZ)18を原シーンに対する色素濃度信号(cmy)81に変換するための逆変換テーブルを生成し、これをルックアップテーブルとして色素濃度変換部30に第1段階の処理用として保持しておく(ステップS21)。
【0119】
次に、この第1段階の処理に続いて行われるステップS22の第2段階処理用のマトリクスの作成処理について説明する。なお、このマトリクスの作成処理は、図2を参照して既に説明した重回帰分析処理を含む処理であり、簡潔に説明する。
【0120】
まず、ステップS21bで算出した色素濃度cmyについて、c、m、y、c2 、m2 、y2 、cm、my、ycの9変数24色のデータを算出する(ステップS22a)。
【0121】
次いで、この9変数24色のデータを主成分分析し、9主成分の主成分スコアを求める(ステップS22b)。
【0122】
一方、リバーサルフイルムに露光されたマクベスカラーチェッカー24色についての測色値を測色計により求める(ステップS22c)。
【0123】
次に、上述したN・R法によりリバーサルフイルム上の色素濃度cmy(RVcmyとも記載する。)を求める(ステップS22d)。
【0124】
次に、リバーサルフイルム上の色素濃度RVcmyの各々(RVc、RVm、RVy)を目的変数とし、ステップS22bで求めた主成分スコア(定数項を含む)を説明変数として、重回帰分析処理により3×10の偏回帰係数マトリクスを求める(ステップS22e)。
【0125】
なお、重回帰分析処理を行う際に、上述したように、目的変数群となっている24色に1:1に対応した重み付けマトリクスを作用させてもよい(ステップS22f)。
【0126】
次に、各目的変数RVc、RVm、RVyについて求めた偏回帰係数について、例えば5%有意で検定を行い(ステップS22g)、5%有意な説明変数を記憶手段に格納しておくとともに、偏回帰係数を第2段階処理用のマトリクスとして、色素濃度変換部30に格納しておく(ステップS22h)。なお、この場合においても、検定を行わず、全ての係数を用いてもよい。
【0127】
このようにして、原シーンの測色値信号(XYZ)18をリバーサルフイルム上の色素濃度信号cmyに変換する色素濃度変換部30が構築される。
【0128】
次に、図6に示す方法の詳細について、図9のフローチャートをも参照して説明する。なお、図9に示す処理も、図2を参照して既に説明した重回帰分析処理を含む処理であり、簡潔に説明する。
【0129】
まず、マクベスカラーチェッカー70の24色の各測色値XYZを測色計により求める(ステップS31a:図9参照)。
【0130】
次に、求めた測色値XYZについて、X、Y、Z、X2 、Y2 、Z2 、XY、YZ、ZXの9変数24色のデータを算出する(ステップS31b)。
【0131】
次いで、この9変数24色のデータを主成分分析し、9主成分の主成分スコアを求める(ステップS31c)。
【0132】
一方、リバーサルフイルムに露光されたマクベスカラーチェッカー24色についての測色値XYZを測色計により求める(ステップS31d)。なお、リバーサルフイルムに露光されたマクベスカラーチェッカーとは、カラーリバーサルフイルムが装着された光学式カメラにより、所定の光源下で前記マクベスカラーチェッカーを撮影してリバーサルフイルムを露光した後、この露光されたリバーサルフイルムを現像して得られるリバーサル原稿をいう。
【0133】
次に、リバーサル原稿上の測色値XYZの各々を目的変数(RVX、RVY、RVZ)とし、ステップS31cで求めた主成分スコア(定数項を含む)を説明変数として、重回帰分析処理により3×10の偏回帰係数マトリクスを求める(ステップS31e)。なお、重回帰分析処理を行う際に、上述したように、目的変数群となっている24色に1:1に対応した重み付けマトリクスを作用させてもよい(ステップS31f)。
【0134】
次に、各目的変数RVX、RVY、RVZについて求めた偏回帰係数の例えば5%有意で検定を行い(ステップS31g)、5%有意な説明変数を記憶手段に格納しておくとともに、偏回帰係数を第1段階の処理用マトリクスとして、色素濃度変換部30に格納しておく(ステップS31h、ステップS31)。この場合においても、検定を行わず、全ての係数を用いてもよい。
【0135】
次いで、ステップS32の第2段階の処理用テーブルは、図7を参照して説明したステップS21bあるいはステップS22dの方法と同一の方法で作成されるので、その説明を省略する。
【0136】
このようにして、原シーンの測色値信号(XYZ)18をリバーサル原稿上の色素濃度信号cmyに変換する図6の処理に基づく色素濃度変換部30が構築される。
【0137】
次に、cmyk変換部32を構成する原シーン忠実再現テーブル42の作成処理について、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0138】
原シーン忠実再現テーブル42は、測色値信号(XYZ)18を測色的に保存された各網%データであるcmyk信号(cmykデータ)46に変換するルックアップテーブルである。
【0139】
なお、この原シーン忠実再現テーブル42の作成処理は、この出願人の出願に係る特願平8−154584号明細書に記載された作成処理と同じ処理である。
【0140】
この場合、まず、画像出力部35に対して、規則的な間隔からなる複数のcmyk網%データを与えることにより、cmykの濃度および混合割合が段階的に変化するカラーパッチを有するcmykカラーチャートを作成する(ステップS41)。
【0141】
この場合、例えば、cmykの規則的な間隔とは、cmykの各色について網%で0、20、…、100%等、20%きざみで増加させた6段階の間隔とすれば、カラーパッチの総数は、46 =1296になる。
【0142】
次いで、画像出力部35により作成されたcmykカラーチャートの各パッチを測色計を用いて測色し(ステップS42)、この測色データから測色値(刺激値)XYZを求め、前記cmyk網%データから測色値XYZデータへの変換テーブル(順変換テーブルという。)を作成する(ステップS43)。
【0143】
なお、この順変換テーブルは、補間用のテーブルとしても使用するので、前記規則的な間隔は、補間の正確性を考慮した場合には細かいほどよいが、その分、測色作業が膨大となるので、その測色作業の繁雑さと前記正確性と以下に説明するコンピュータの処理時間との、いわゆるトレードオフで決定すればよい。
【0144】
ところで、前記原シーン忠実再現テーブル42において、入力される任意の測色値信号(測色値XYZデータ、刺激値データXYZ、または単にXYZともいう。)18からこれに対応するcmyk信号(cmyk網%データ、色データcmyk、または単にcmykともいう。)46を求めることは、変数が3変数から4変数と増加するため、1つの測色値XYZデータ18に対してcmyk網%データ46の複数の解が存在する可能性がある。この問題を解決するためには、3変数同士の関係とする必要があり、ここでは、cmyk網%データのうち、色データkについて画像出力部35が採りうる最大値Kmax(k=Kmax)に固定する(ステップS44)。最大値Kmaxとは、例えば、cmyk網%データのkの値が100%である。
【0145】
そして、3変数である任意のXYZの値を3変数である対応するcmy(kは固定)の値に変換する(ステップS45)。
【0146】
この場合、任意のXYZの値である目標値X0、Y0、Z0に対するcmyk(ここでは、kはk=Kmaxに固定しているのでkは定数であり、その意味でcmyの3変数)の値である、c0、m0、y0、k0=Kmaxを求める場合には、k0=Kmaxであるときの上記順変換テーブルを利用して、回帰式の偏回帰係数を求める。
【0147】
このときの回帰式は、係数項となる3行4列のマトリクスをA、測色値XYZの1行3列のマトリクスをT、kを固定した、換言すれば定数と考えて、これを含めた残りのcmyの1行4列のマトリクスをDと表せば、次の(47)式のように表すことができる。
【0148】
T=AD …(47)
この(47)式は、次の(48)式の関係を表している。
【0149】
【数7】
【0150】
(47)式、(48)式において、マトリクスDを構成する「1」は、cmyの3次元平面式における定数項を与えるために設定した値である。
【0151】
この(48)式における係数Aは、k=Kmaxのときに得られている上述の順変換テーブルの各データセットを代入することで、上述した重回帰分析により求めることができる。
【0152】
次に、k=Kmaxのときに求められた回帰式を用いて、上述のN・R法により、目標値X0、Y0、Z0に対応するcmy(kはKmaxとして設定されている。)の値を求めることができる。
【0153】
次に、求められたcmyの値が画像出力部35の再現範囲内の値(色)であるかどうかの判断を行う(ステップS46)。すなわち、網%データ(色データ)cmyの再現可能な最小濃度をCmin、Mmin、Ymin、最大濃度をCmax、Mmax、Ymaxとして求められたデータcmyが次の(49)式の関係を満足するかどうかを判定する。
【0154】
Cmin≦c≦Cmax
Mmin≦m≦Mmax
Ymin≦y≦Ymax …(49)
求めたcmyの各値が、(49)式を満足している場合には、刺激値データXYZの目標値(X0,Y0,Z0)に対する色データcmykを各々c=csol、m=msol、y=ysol、k=ksol(この場合、ksol=Kmax)として逆変換テーブルを作成し、これを原シーン忠実再現テーブル42として設定する(ステップS47)。以下の説明において、必要に応じて(csol,msol,ysol,ksol)のデータセットをcmyksolという。
【0155】
ステップS45の過程で求めたcmyデータの値が(49)式を満足しない値であった場合には、k=Kmaxに固定してある色データkをk=k−Δk、この場合k=Kmax−Δkとした後(ステップS48)、色データkが所定の最小値k=Kminよりも小さくならない範囲で(ステップS49)、ステップS45の処理を繰り返す。なお、微小変化分Δkは、第1逆変換テーブルを構成する色データkの任意のデータ間隔であり、例えば、色データkが0%〜100%の範囲のデータとして設定される場合には、1%きざみ等に設定すればよく、色データkが0〜255の範囲のデータとして設定されるのであれば、値1きざみに設定すればよい。ステップS45の2回目の処理を行う場合には、色データk=Kmax−1=100−1=99に対する、(48)式の左辺の測色値であるXYZ値は、k=Kmax=100%とk=80%の値で測色され順変換テーブルとして格納されている各XYZデータの補間処理(内挿処理)により求めることができる。
【0156】
一方、ステップS49の処理において、Kmin>kと判定された場合には、目標値(X0,Y0,Z0)に対する色データcmykを画像出力部35の色再現域外のデータに指定し、ここでは、色データcmyksolの算出は行わない(ステップS50)。
【0157】
以上の処理を原シーン忠実再現テーブル42に供給される全ての刺激値データXYZ18を目標値(X0,Y0,Z0)として行うことにより、画像出力部35の色再現域内の色データである網%データcmyk46を得ることのできる刺激値データXYZ18に対して、最大となる色データkを与えた場合の色データcmyksolを求めることができる(ステップS51)。
【0158】
なお、ステップS44における色データkの固定は、最大値Kmaxではなく、その最小値Kmin(k=Kmin)に固定してもよく、その場合には、ステップS48の処理をk=k+Δkとし、ステップS49の処理をKmax<kとすればよい。また、色データkを任意の値とすることも容易に考えられる。例えば、ステップS48の処理は、任意の値に設定したkについて、k=k−Δkとk=k+Δkを交互に行えばよく、ステップS49の処理は、ステップS48の処理に対応させて行えばよい。
【0159】
さらに、ステップS49、S50において色再現域外データに指定された色データcmykは、この発明の要旨ではないので詳しくは説明しないが、前記特願平8−154584号に記載されているように、いわゆるガマットマッピング(Gamat Mapping )処理による色データCMYKの圧縮処理やクリッピング処理により、目標値(X0,Y0,Z0)に対する色データcmykの逆変換テーブルを作成することができる。
【0160】
このようにして、測色値信号18を構成する全ての目標値(X0,Y0,Z0)に対して求められたcmyk信号46の対応表を原シーン忠実再現テーブル42として格納しておくことで、任意の測色値信号18を画像出力部35の色再現範囲内のcmyk信号46に変換することができる。
【0161】
次に、cmyk変換部32を構成する標準条件再現テーブル44の作成について説明する。
【0162】
この標準条件再現テーブル44は、図1に示すように、デジタルカメラにより取り込まれたRGB信号12がマトリクス20により測色値信号(XYZ)18に変換され、この測色値信号XYZが色素濃度変換部30により色素濃度信号(cmy)28に変換され、この変換後の色素濃度信号(cmy)28を網%信号であるcmyk信号48に変換するためのテーブルである。
【0163】
また、標準条件再現テーブル44は、スキャナにより取り込まれたRGB信号14がテーブル24により測色値信号(XYZ)22に変換され、この変換後の測色値信号(XYZ)22が色素濃度変換部36により色素濃度信号(cmy)34に変換され、この変換後の色素濃度信号(cmy)34を網%信号であるcmyk信号に変換するためのテーブルである。この場合、色素濃度変換部36は、前述の色素濃度変換部30の作成過程で示した図7中、ステップS21b、S22dの方法と同様の過程で作成することができるので、その作成過程についての説明は省略する。
【0164】
標準条件再現テーブル44の作成処理を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0165】
まず、リバーサル原稿上に色素濃度cmyが格子状に配列された13×13×13個のカラーパッチを有するカラーチャートを作成する(ステップS61)。このカラーチャートは、c(シアン)m(マゼンタ)y(黄)が、それぞれ最小濃度から最大濃度まで13段階振られた各カラーパッチを有するものである。
【0166】
次に、このカラーチャートをスキャナのデフォルト分解条件で分解する、言い換えれば、透過原稿であるカラーチャートをスキャナで読み取り、デジタルデータ化する(ステップS62)。スキャナのデフォルト分解条件は、少なくとも、階調特性変換処理、色修正処理、UCR(下色除去)処理およびK版生成処理を含んでいる。ただし、分解するとき、カラーパッチのグレーの最小濃度を、cmyk網%が全て0%となるようにし、かつカラーパッチのグレーの最大濃度を、いわゆるベタとなるようなcmyk網%となるように設定する。
【0167】
そして、各カラーパッチの色素濃度とスキャナのデフォルト分解条件で分解したときのcmyk網%値を対応させて変換テーブル(ルックアップテーブル)を作成し(ステップS63)、この変換テーブルを標準条件再現テーブル44として設定する。なお、実際には、この標準条件再現テーブル44と補間処理により、最小濃度から最大濃度までの任意の色素濃度信号(cmy)28または色素濃度信号(cmy)34を所望のcmyk網%信号48に変換することができる。
【0168】
以上詳述したように、上述の実施の形態によれば、第1の色空間の任意の色信号、例えば、デジタルカメラで撮影したRGB信号12を、第2の色空間の色信号、例えば、測色値信号(XYZまたはL* a* b* )18に変換する際に、まず、所望の代表的な色を彩度、明度、色相に応じて変化させた複数のカラーパッチを有するカラーチャート、例えば、市販のマクベスカラーチェッカーを前記第1の色空間の色信号を出力するデバイスであるデジタルカメラで撮像する。そして、撮像し読み取ったカラーチャートのRGB信号の、少なくとも一次項、二次項、クロス項を算出し、これらを第1の説明変数群とする。そして、前記第1の説明変数群を主成分分析し、相互の説明変数が直交する第2の説明変数群に変換する。次いで、前記カラーチャートの各カラーパッチの各測色値(前記第2の色空間の色信号)を目的変数群とし、この目的変数群と第2の説明変数群を重回帰分析して、偏回帰係数のマトリクスを求める。最後に、前記マトリクスを構成する偏回帰係数の検定を行い、前記第2の説明変数群の中、所定程度有意な説明変数を選択し、この選択した説明変数を使用可能な説明変数とする。
【0169】
このようにして得られた、使用可能な説明変数に係る偏回帰係数のマトリクスを前記RGB信号12に作用させて、前記測色値信号(XYZ)18に変換するようにしている。
【0170】
したがって、この実施の形態によれば、色信号を変換する方法として、データ量の少ないマトリクスによる方法であるので、このマトリクス等を記憶するためのメモリの記憶容量を少なくすることができる。また、主成分分析した第2の説明変数群を用いるようにしているので、従来の技術の項で説明したマトリクス方式に比べて色変換精度が優れている。さらに、目的変数群を構成する測色値Cのうち、原稿のシーン種(人物の肌色、空の青色、植物の緑色)等に対応して所望の色に対する重みを大きくすることで、その所望の色に限定して色精度よく変換することができる。さらにまた、その所望の色は、デジタルカメラから供給される1画面についてのRGB信号を統計処理して得られる、最頻値または平均値等の色とすることで、この1画面の原稿全体を最も精度よく色変換できる可能性が高くなる。さらにまた、カラーチャートとして、色空間を概ね均等に網羅する24色のカラーパッチを有するマクベスカラーチェッカーを用いることで、RGB信号を精度よく測色値に色変換するための変換マトリクスを簡易に作成することができる。
【0171】
なお、この発明は上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0172】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、改良されたマトリクス方式を採用しているので、少ないメモリ容量で精度よく色変換処理を行うことができるという効果が達成される。
【0173】
また、画像の所望の色に限定して精度よく色変換することも可能である。
【0174】
さらに、必要に応じて、既成のカラーチャートを使用することができる。例えば、マクベスカラーチェッカー(登録商標)をカラーチャートとして用いた場合には、24色分のパッチで色空間全体に対して色変換精度のよいマトリクスを作成することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態が適用された画像信号処理装置の全体的な構成を示すブロック図である。
【図2】測色変換マトリクスの作成処理の説明に供されるフローチャートである。
【図3】測色的セットアップ部の説明に供されるフローチャートである。
【図4】CIE色度図上でのリバーサルフイルムの色再現域等の説明に供される色度図である。
【図5】デジタルカメラの測色信号をリバーサル原稿上の色素濃度信号に変換する変換過程の説明に供されるフローチャートである。
【図6】デジタルカメラの測色信号をリバーサル原稿上の色素濃度信号に変換する他の変換過程の説明に供されるフローチャートである。
【図7】色素濃度変換マトリクスの作成処理の説明に供されるフローチャートである。
【図8】ニュートン・ラフソン法の説明に供される線図である。
【図9】色素濃度変換マトリクスの作成処理の一部の説明に供されるフローチャートである。
【図10】原シーン忠実再現テーブルの作成処理の説明に供されるフローチャートである。
【図11】標準条件再現テーブルの作成処理の説明に供されるフローチャートである。
【符号の説明】
10…画像信号処理装置 12、14…RGB信号
16…測色変換部 18、22…測色値信号(XYZ)
20…測色変換マトリクス 24…測色変換テーブル
25…光源変更部 26…測色的セットアップ部
28、34…色素濃度信号(cmy) 30、36…色素濃度変換部
32…cmyk変換部 35…画像出力部
42…原シーン忠実再現テーブル 44…標準条件再現テーブル
46、48…cmyk信号 64…END・END変換部
Claims (7)
- RGB空間の任意の色信号をXYZまたはL * a * b * の測色値空間の色信号に変換する色変換方法において、
所望の代表的な色を彩度、明度、色相に応じて変化させた複数のカラーパッチを有するカラーチャートを前記RGB空間の色信号を出力するデバイスで読み取る過程と、
読み取ったRGB空間の色信号を輝度値又は濃度値に変換し、変換した前記輝度値又は前記濃度値の少なくとも一次項の輝度値又は濃度値を第1の説明変数群として求める過程と、
前記第1の説明変数群を主成分分析して求めた前記輝度値又は前記濃度値の主成分スコアを相互の説明変数が直交する第2の説明変数群とする過程と、
測色計により求めた前記カラーチャートの各カラーパッチの色についてのXYZまたはL * a * b * の各測色値を目的変数群とし、この目的変数群と前記第2の説明変数群を重回帰分析して、偏回帰係数のマトリクスを求める過程と、
前記偏回帰係数の検定を行い、前記第2の説明変数群の中、所定程度有意な説明変数を選択し、この選択した説明変数を使用可能な説明変数とし、この使用可能な説明変数に対応する前記偏回帰係数のマトリクスを所定程度有意な偏回帰係数のマトリクスとする過程とを有し、
前記カラーチャートの各カラーパッチの各測色値を中心とした領域に色空間を分割し、かつ前記RGB空間のRGB信号を、一旦、重み付けのない前記偏回帰係数のマトリクスにより前記XYZまたは前記L * a * b * の測色値信号に変換し、前記分割した各領域に存在する前記測色値信号の画素の頻度値を求め、この頻度値に応じて、前記カラーチャート中、所望の特定色に対して重み付けを行い、前記所望の特定色の色変換精度を向上させ、
前記RGB空間の任意の色信号に対して前記使用可能な説明変数に対応する前記所定程度有意な偏回帰係数のマトリクスを作用させて、前記測色値空間の色信号に変換することを特徴とする色変換方法。 - 請求項1記載の方法において、前記偏回帰係数のマトリクスを求める過程では、前記カラーチャート中、所望の特定色に対して重み付けを行い、前記所望の特定色の色変換精度を向上させることを特徴する色変換方法。
- 請求項2記載の方法において、所望の特定色は、灰色であることを特徴とする色変換方法。
- 請求項2記載の方法において、所望の特定色は、前記RGB空間の色信号を統計処理して得られる色とすることを特徴とする色変換方法。
- 請求項4記載の方法において、前記統計処理は、前記RGB空間の色信号中、肌色、青色、緑色を抽出して行うことを特徴とする色変換方法。
- 請求項4記載の方法において、前記統計処理は、前記カラーチャートの各カラーパッチの色を中心とした領域に色空間を分割し、分割した各領域に存在する、前記RGB空間の色信号の画素の頻度値を求める処理であり、この頻度値に応じて前記所望の特定色の重み付けを行うことを特徴とする色変換方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、前記カラーチャートはマクベスカラーチェッカーであることを特徴とする色変換方法。
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