JP3801133B2 - ペプチドフルクトース及びそのタンパク質結合体 - Google Patents

ペプチドフルクトース及びそのタンパク質結合体 Download PDF

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Description

【0001】
技 術 分 野
本発明は、ヘモグロビンA1c(以下、HbA1cと略称する)に対する抗体の作製に使用可能な免疫原であるペプチドフルクトース化合物、およびその化合物とタンパク質とのタンパク質結合体、ならびにそのペプチドフルクトースのタンパク質結合体を用いて得られる抗血清および抗体に関する。
【0002】
背 景 技 術
従来、抗HbA1c抗体を作製する際に必要となる免疫原としては、一般にHbA1cそのものを用いてきた。HbA1cは、全ヘモグロビン量の90%をしめるヘモグロビンA0(以下、HbA0と略称する)に構造が似ている。HbA0は、そのβ鎖のN末端が糖鎖に結合していないのに対して、HbA1cはβ鎖のN末端にフルクトースが結合しているという相違点のみしか有していない。したがって、免疫原としてHbA1cそのものを用いれば、作製される抗体の大部分はHbA0をも認識する。このようなヘモグロビンに対する抗体のうちで、目的とするHbA1cのみを認識できるものはわずかである。従来はそのような抗体群の中からHbA1cに結合するものだけを選別する作業を行っていた。
【0003】
そのような選別作業は労働集約的であり、かつ、コストもかかるものである。そこで、HbA1cのみを認識するエピトープを用いることが考えられる。しかし、エピトープを用いた抗血清または抗体の作製においては、エピトープのみでは充分に抗原性または免疫原性を有しないことが多く、アジュバントまたはキャリアを同時に用いて動物に免疫することが行われる。しかし、キャリアとエピトープとを用いて動物に免疫することは、従来労働集約的であり、かつ、必ずしも効率よく目的の抗血清または抗体を得られないことが多く、したがって、コストもかかるものであった。さらに、目的とする抗体の獲得には確率的な要因が存在し、確実な方法であるとはいえない。HbA0と交叉反応性を有しないモノクローナル抗体、および確実にかつ簡便にそのような抗体を得ることのできる作製方法なども従来確立されていない。
【0004】
そこで本発明は上記の問題点に鑑み、確率的な要因を排し、HbA0との交叉反応性を有さない、好ましくは抗HbA1c抗体のみを確実に作製することが可能な免疫原であるタンパク質結合体を提供することを目的とする。本発明はさらに、HbA0との交叉反応性を有さない、HbA1cに対して特異性をもったそのような抗体を、将来においても安定的に供給することのできる抗体産生細胞を提供することをも目的とする。
【0005】
発 明 の 要 旨
上記目的を達成するために、本発明は以下を提供する。
【0017】
1つの局面において、本発明は、ペプチドフルクトース化合物と、タンパク質とが結合体化した、タンパク質結合体であって、
該ペプチドフルクトース化合物は式VI:
【化11】
Figure 0003801133
で示され、
該タンパク質はチキン−γグロブリン(CGG)である、
タンパク質結合体を提供する。
【0021】
さらに別の局面において、本発明は、本発明のペプチドフルクトース化合物または本発明のタンパク質結合体で感作されたマウスの脾臓細胞と、骨髄腫由来の細胞株とを融合後、融合された細胞をクローニングして得られるモノクローナル抗体産生細胞を提供する。このモノクローナル抗体産生細胞は、ヒトヘモグロビンA1cに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する。1つの実施形態において,本発明は、受託番号FERM BP−7636またはFERM BP−7637であるモノクローナル抗体産生細胞を提供する。
【0025】
発 明 の 詳 細 な 説 明
以下に、本発明において用いられる用語を説明するが、特に言及しない限り、本明細書において用いられる用語は、当該分野において通常用いられる意味を有することに留意されたい。
【0026】
用語「ペプチドフルクトース化合物」とはペプチドおよびフルクトースとを含む化合物をいう。代表的なペプチドフルクトース化合物は、以下の構造をしている。
【0027】
【化7】
(I)
Figure 0003801133
【0028】
ここで、R1は、−SH基を有する任意の分子であり、このR1は、(b)において共有結合でR2のカルボキシ末端と結合されており、そしてR2は、1以上のHbA1のアミノ酸配列由来のアミノ酸または上記アミノ酸と機能的に等価なアミノ酸アナログを含み、そのアミノ末端でフルクトースと結合されている。
【0029】
用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、互換的に使用されて、2以上のアミノ酸(天然または非天然)がペプチド結合で重合したポリマーをいう。
【0030】
用語「アミノ酸」は、アミノ基(−NH)およびカルボキシ基(−COOH)を同一分子内に有する有機化合物、および、当該分野で用いられるのと同様に、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ基を有するイミノ酸も包含する。本明細書において使用されるアミノ酸は、天然アミノ酸(アスパラギン(以下、Asnと略称する)、アスパラギン酸(以下、Aspと略称する)、アラニン(以下、Alaと略称する)、アルギニン(以下、Argと略称する)、イソロイシン(以下、Ileと略称する)、グリシン(以下、Glyと略称する)、グルタミン(以下、Glnと略称する)、グルタミン酸(以下、Gluと略称する)、システイン(以下、Cysと略称する)、セリン(以下、Serと略称する)、チロシン(以下、Tyrと略称する)、トリプトファン(以下、Trpと略称する)、スレオニン(以下、Thrと略称する)、バリン(以下、Valと略称する)、ヒスチジン(以下、Hisと略称する)、フェニルアラニン(以下、Pheと略称する)、プロリン(以下、Proと略称する)、メチオニン(以下、Metと略称する)、リジン(以下、Lysと略称する)およびロイシン(以下、Leuと略称する))または非天然アミノ酸であり得る。このアミノ酸は、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸、ω−アミノ酸などであり得る。このアミノ酸は、L型またはD型であり得るが、L型が好ましい。
【0031】
用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。非天然のアミノ酸には、−SH基を有するものも包含される。そのような例としては、ホモシステインが挙げられる。
【0032】
「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する物性または機能を有する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。そのような物性または機能が類似するか否かの判定は、本明細書に記載されるように、他の化合物との結合が実質的に同一か否かを決定することによって行われ得る。
【0033】
本発明のペプチドフルクトース化合物において、機能を実質的に変化させずにアミノ酸の置換などを行う方法は、化学合成、または遺伝子工学を利用する技術においてアミノ酸をコードするDNA配列のコドンを変化させることを含むが、これらに限定されない。
【0034】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0035】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol. 157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0036】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることことが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0037】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書中において、機能的に等価なペプチドフルクトース化合物を作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0039】
用語「ペプチドアナログ」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、上記のように当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
【0040】
1つの局面において、本発明のペプチドフルクトースは、以下の式(I):
【0041】
【化8】
(I)
Figure 0003801133
【0042】
で示されるペプチドフルクトース化合物である。このペプチドフルクトース化合物は、代表的に、HbA1cの特徴的構造であるフルクトース−バリン−ヒスチジンに加えて、−SH基を有する部分(例えば、システイン残基)が導入されていることから、タンパク質との結合が容易であり、タンパク質と結合させることによりタンパク質結合体を作製することができる。
【0043】
また、本発明のタンパク質結合体は、式(I)で示されるペプチドフルクトース化合物と、ヘモグロビンを除くタンパク質とが結合体化していることを特徴とする。このタンパク質結合体は、代表的に、HbA1cの特徴的構造であるフルクトース−バリン−ヒスチジンと、ヘモグロビンを除くタンパク質とを有していることから、ヘモグロビンHbA0とは共通する構造を持たない。従って、このタンパク質結合体を免疫原として用いることにより、ヘモグロビンHbA0とは交叉反応性を有しない、好ましくはHbA1c以外のヘモグロビンとは交叉反応性を有しない抗HbA1c抗体を確実に作製することができる。
【0044】
ここで、ペプチドフルクトースのタンパク質結合体は、式(I)で示されるペプチドフルクトース化合物は、ヘモグロビンを除くタンパク質と、−SH基において、好ましくは、ジスルフィド結合を介して結合している。システインのようなチオール基を有する官能基のチオール基を介してタンパク質と結合させることにより、容易にタンパク質結合体を作製することができるとともに、タンパク質との反応量の制御やタンパク質への導入量の測定が可能となる。−SH基導入の他の有利な効果としては、結合後に比較的安定なジスルフィド(S−S)結合を形成することなどが挙げられる。
【0045】
タンパク質としては、ヘモグロビンを除くタンパク質であれば特に限定なく用いることができ、例えば、ウシ血清アルブミン(以下、BSAと略称する)、チキン−γ グロブリン(以下、CGGと略称する)、スカシ貝ヘモシアニン(以下、KLHと略称する)などが挙げられる。
【0046】
前記式(I)において、R2が下記式(II)または(III)で示される残基を含むことが好ましい。
【0047】
【化9】
(II) (III)
Figure 0003801133
【0048】
このペプチドフルクトース化合物は、フルクトース−バリン−ヒスチジンに加えて、さらにHbA1cの特徴的構造であるロイシン−スレオニンが導入されていることから、これを用いることにより、HbA1cとの結合力がより強く、かつ/または選択性の高い抗HbA1c抗体を作製することができる。
【0049】
上記式(I)において、R2が、HbA1cの特徴的構造であるアミノ酸またはアミノ酸の多量体を多く有すると、HbA1cとの結合力がより強い抗HbA1c抗体を作製することができるので好ましい。ただし、HbA1cの特徴的構造であるアミノ酸の多量体の数が多くなり過ぎると、得られる抗HbA1c抗体は、HbA1c以外のヘモグロビンとの交叉反応性が大きくなり得る。そこで、R1及びR2における、HbA1cの特徴的構造であるアミノ酸の多量体の数は、得られる抗HbA1c抗体の、HbA1cとの結合力及びHbA1c以外のヘモグロビンとの交叉反応性の観点から調整される。
【0050】
ここで、本発明のタンパク質結合体を作製するためのタンパク質としては、CGGのようなタンパク質を用いることが好ましい。CGGは、マウスタンパク質との類似性がなく、免疫惹起能力が高いタンパク質である。また、水溶性に富むこともまた、本発明における使用に適切な理由の一つである。そのようなタンパク質には、本発明のペプチドフルクトース化合物を、1分子あたり10個以上導入することができ、好ましくは、1分子あたり20個以上、より好ましくは1分子あたり25個以上、さらにより好ましくは30個以上、導入することができる。このように1分子あたりに多くの本発明のペプチドフルクトース化合物によって、より効率的に抗血清または抗体を産生することが可能となる。
【0051】
ペプチドフルクトース化合物とタンパク質との結合に使用する試薬としては、システインのようなチオール基を有する残基のチオール基と反応できる官能基と、タンパク質中のアミノ基またはカルボキシル基と反応できる官能基とを有している化合物であれば用いることができる。そのような化合物としては、例えば、N−γ−マレイミドブチリルオキシ−スクシンイミド エステル(以下、GMBSと略称する)、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(以下、SMCCと略称する)、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(以下、SMPBと略称する)、4−スクシンイミジルオキシカルボニルメチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(以下、SMPTと略称する)、O−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−1−プロピオネート(以下、SPDPと略称する)が挙げられる。この中では、入手しやすく、かつ、ペプチドフルクトースのタンパク質への導入数を測定することができる試薬が好ましく、そのような試薬には、SPDPが挙げられる。
【0052】
また、本発明の抗血清は、前記ペプチドフルクトースのタンパク質結合体を動物に投与することにより、前記動物の血液中に産生されることを特徴とする。この抗血清は、HbA1c以外のヘモグロビンとの交叉反応性が小さく、HbA1cの特徴的構造を認識することができる。
【0053】
また、抗血清を産生するための動物としては、従来、免疫動物として用いられているものであれば特に限定なく使用することができ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマなどが挙げられる。また、本発明のペプチドフルクトースのタンパク質結合体を免疫したマウスなどの脾臓細胞を用いてハイブリドーマを作製することにより、抗HbA1cモノクローナル抗体を作製することが可能となる。本発明の抗体は、ヒト化されていてもよい。抗体をヒト化する方法は、当該分野で周知である。
【0054】
上記目的を達成するため、本発明のモノクローナル抗体は、式(I)に示す構造式を含むペプチドフルクトース化合物とタンパク質との結合体からなる免疫原で感作されたマウスの脾臓細胞と、骨髄種由来の細胞ラインとを融合後、クローニングして得られるモノクロナール抗体産生細胞によって培養上清中に産生される。
【0055】
また、本発明のモノクローナル抗体産生細胞は、ペプチドフルクトースとタンパク質との結合体からなる免疫原で感作されたマウスの脾臓細胞と、骨髄種由来の細胞ラインとを融合後、クローニングして得られ得る。
【0056】
本発明のモノクローナル抗体は、本発明のペプチドフルクトース化合物またはタンパク質結合体を免疫原として用いて免疫化したマウスの脾臓細胞と、骨髄腫由来の細胞との融合細胞(ハイブリドーマ)が産生する。したがって、融合細胞(ハイブリドーマ)を増殖させる際の培養上清を、たとえば、プロテインAセファロースゲルなどを充填した抗体精製用のカラムを用いて精製することで、目的とする抗体を得ることができる。
【0057】
本発明のペプチドフルクトース化合物は、HbA1cの特徴的構造であるフルクトース−バリン−ヒスチジンを有しており、これをタンパク質と結合させることで、抗HbA1c抗体を得るための有効な免疫原となる。
【0058】
また、本発明のモノクローナル抗体産生細胞は、上述のごとく免疫化したマウスの脾臓細胞と、たとえばp3x63・Ag8・653などの骨髄腫由来の細胞とを、ポリエチレングリコールなどの融合促進試薬を用いて融合し、その結果、数多く作製される融合細胞のなかから、たとえば酵素免疫測定法(以下ELISAと略称する)などの評価法を用いて、HbA1cには反応するがHbA0には反応しないような抗体を産生するものだけを選択することによって得ることができる。
【0059】
実 施 例
以下、本発明を、実施例により詳しく説明する。以下に提供される実施例は、本発明の例示的な実施形態を示すものであり、なんら本発明の限定を意図しないことが理解されるべきである。なお、本実施例においては、タンパク質の例示としてCGGを用いた。
【0060】
(実施例1:ペプチドフルクトースの作製)
本実施例では、以下に示す手順により、下記式(V)で示すペプチドフルクトースを作製した。
【0061】
【化10】
(V)
Figure 0003801133
【0062】
1.Wang樹脂(固相)へのCys基の導入
12.95g(30mmol)のN−フルオレニルメトキシカルボニル−S−t−ブチルチオシステイン(以下、Fmoc−Cys(StBu)と略称する)を50mlのクロロホルムに溶解し、これに3.095g(15mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、DCCと略称する)を加えて10分間室温で撹拌した。生じた沈澱(ジシクロヘキシル尿素)を濾別し、濾液を減圧下で乾固した。乾固物を50mlのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略称する)に溶解し、これに10gのWang樹脂(結合性OH基:1mmol/g)を加え、懸濁液とした。この懸濁液に0.733g(6mmol)のジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと略称する)を加え、室温で60分間撹拌した。反応液を濾別し、樹脂をDMFで2回、クロロホルムで2回洗浄した後、真空下で一晩乾燥して11.8gの乾燥樹脂(以下、Fmoc−Cys(StBu)−Resinと略称する)が得られた。
【0063】
次に、樹脂へのCys基の導入度を以下のような方法で測定した。乾燥樹脂100mgに5mlの50%ピペリジン/DMF混合溶液を加え、室温で5分間撹拌した。樹脂を除いた濾液の301nmにおける吸光度を測定した。吸光度は66.4であった。301nmの吸収は樹脂に導入されたFmoc−Cys基が、ピペリジンによって脱保護を受けた結果生成したフルオレニルメチルピペリジン(以下、Fmpと略称する)に由来するものである。したがって、遊離したFmpの量がすなわち導入されたCys基の量である。Fmpの濃度[Fmp]は、数式(数式1)のように求めることができる。ただし、Fmpの301nmにおけるモル吸光係数を7800とする。
【0064】
【数1】
(数式1)
Figure 0003801133
【0065】
樹脂の反応性OH基は1mmol/gであることから、反応性OH基の濃度は0.02Mであると概算できる。したがって、Cys基の樹脂への導入率は、数式(数式2)のように求めることができる。
【0066】
【数2】
(数式2)
Figure 0003801133
【0067】
2.Fmoc−Cys(StBu)−ResinへのHis基の導入
10g(4.3mmol、Cys換算)のFmoc−Cys(StBu)−Resinを50mlの20%ピペリジン/DMFに分散し、室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別除去した後、再び20%ピペリジン/DMFの反応を繰り返した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄し、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、アミノ基がフリーの状態であることを確認した。この樹脂を20mlのDMFに分散し、これに8.447g(10.75mmol)のフルオレニルメトキシカルボニルトリチルヒスチジン ペンタフルオロフェニルエステル(以下、Fmoc−His(Trt)−Opfpと略称する)を加え、室温で2時間撹拌した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄した後、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、フリーのアミノ基が存在しないことを確認した。その後、樹脂をクロロホルムで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥して、11.2gの乾燥樹脂(以下、Fmoc−His(Trt)−Cys(StBu)−Resinと略称する)を得た。
【0068】
樹脂へのHis基の導入度は、前記の場合と同様に測定した。His基の導入率は、38%であった。
【0069】
3.Fmoc−His(Trt)−Cys(StBu)−Resinへのバリン(以下、Valと略称する)基の導入
11g(4.2mmol、His換算)のFmoc−His(Trt)−Cys(StBu)−Resinを100mlの20%ピペリジン/DMFに分散し、室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別除去した後、再び20%ピペリジン/DMFの反応を繰り返した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄し、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、アミノ基がフリーの状態であることを確認した。この樹脂を20mlのDMFに分散し、これに5.234g(10.53mmol)のフルオレニルメトキシカルボニルバリン ペンタフルオロフェニルエステル(以下、Fmoc−Val−Opfpと略称する)を加え、室温で2時間撹拌した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄した後、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、フリーのアミノ基が存在しないことを確認した。その後、樹脂をクロロホルムで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥して、10.0gの乾燥樹脂(以下、Fmoc−Val−His(Trt)−Cys(StBu)−Resinと略称する)を得た。
【0070】
樹脂へのVal基の導入度は、前記の場合と同様に測定した。Val基の導入率は、21%であった。
【0071】
4.樹脂からのペプチド鎖の脱離
9gのFmoc−Val−His(Trt)−Cys(StBu)−Resinを100mlの20%ピペリジン/DMFに分散し、室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別除去した後、再び20%ピペリジン/DMFの反応を繰り返した。樹脂を100mlのDMFで3回洗浄し、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、アミノ基がフリーの状態であることを確認した。この樹脂をクロロホルムで3回洗浄した後、100mlの50%クロロホルム/トリフルオロ酢酸(以下、TFAと略称する)混合溶媒に分散し、室温で2時間撹拌した。樹脂を濾別し、100mlのクロロホルム/TFA=4/1の混合溶媒で2回洗浄した。濾液、洗浄液をすべて集めて、減圧下で濃縮した。残渣を少量のTFAに溶解し、約300mlのエーテル中に分散した。遠心分離して上清を除去した後、得られた沈澱のエーテル洗浄を2回繰り返して、真空下で一晩乾燥した。0.63gの粗生成物(Val−His−Cys)が得られた。
【0072】
5.アマドリ転位反応によるペプチド鎖へのフルクトースの導入
500mg(1.126mmol)の合成ペプチド(Val−His−Cys)と270mg(1.5mmol)のグルコースとを、25mlのピリジン/酢酸=1/1混合溶媒中に溶解し、遮光下室温で5日間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、残渣を25mlの水に溶解して再び真空下で濃縮した。これを少量の水に溶解し、強酸性イオン交換樹脂であるDowex50WX8カラム(Sigma製、直径3.5cm×長さ25cm)にチャージした。約2Lの水で洗浄してグルコースを除去した後、1Nアンモニア水で生成物を溶出し、これを凍結乾燥した。これを0.1Mのトリエチルアンモニウム緩衝液(pH=8.2)に溶解し、アフィゲル601カラム(Pharmacia製、直径1.7cm×長さ20cm)にチャージした。1Lの0.1Mトリエチルアンモニウム緩衝液(pH=8.2)、次いで1Lの水で洗浄し、最後に0.1%の蟻酸で溶出して、これを凍結乾燥した。50mgのペプチドフルクトース(フルクトース−Val−His−Cys)粗精製物が得られた。(表1)に、生成物の重メタノール中でのNMRのケミカルシフト及び各ピークの帰属を示す。
【0073】
【表1】
Figure 0003801133
【0074】
(ペプチドフルクトースのタンパク質結合体の作製)
本実施例では、タンパク質としてCGGを用いた。
【0075】
1.CGGのピリジルジチオプロピオニル化(CGG−SPDPの作製)
200mg(1.33×10−3mmol)のCGGを50mlのリン酸バッファーサリン(以下、PBSと略称する)に溶解し、撹拌しながら5mlのSPDP/エタノール溶液(SPDP=40mg、0.13mmol、100等量)を滴下した。室温で30分間撹拌した後、生じた沈澱物を遠心分離(10分間、20000rpm)により除いた。得られた上清をセファデックスG25Mカラム(Pharmacia製、直径2cm×長さ80cm)でゲル濾過し、80mlのCGG−SPDP/PBS溶液を得た。
【0076】
CGG1分子あたりのSPDPの結合数を次のように決定した。得られたCGG−SPDPのPBS溶液のうち1mlを用いて280nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、3.73であった。
【0077】
これに100mMのジチオスイレイトール(以下、DTTと略称する)水溶液50μlを加え、5分間放置した後343nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、2.80であった。
【0078】
DTT還元によって放出されたピリジン−2−チオンの343nmにおける分子吸光係数を8.08×10とするとその濃度[ピリジン−2−チオン]は数式(数式3)のように求めることができる。
【0079】
【数3】
(数式3)
Figure 0003801133
【0080】
この濃度はCGGに導入されたSPDPの濃度に等しい。また、SPDPの2−ピリジルジスルフィド基が280nmおける吸光度に寄与することからCGG濃度の計算には次のような補正が必要である。CGGに起因する280nmにおける吸光度(A280,CGG)は数式(数式4)のように求めることができる。ただし、2−ピリジルジスルフィド基の280nmにおける分子吸光係数を5.1×10とする。
【0081】
【数4】
(数式4)
Figure 0003801133
【0082】
したがって、CGGの濃度[CGG]、及びCGG1分子当たりに導入されたSPDPの分子数[SPDP]/[CGG]は数式(数式5)のように求めることができる。ただし、CGGの280nmにおけるモル吸光係数を1.99×10とする。
【0083】
【数5】
(数式5)
Figure 0003801133
【0084】
2.ペプチドフルクトースのCGG結合体の作製
50mlのCGG−SPDP/PBS溶液に40mg(7.18×10−2mmol)のピリジルジチオ誘導体を加え、4℃で一晩撹拌した。生じた沈澱物を遠心分離(10分間、20000rpm)により除いた後、343nmにおける吸光度(A343)を測定したところ、3.52であった。得られた上清をセファデックスG25カラム(Pharmacia製、直径2cm×長さ80cm)でゲル濾過して48mlのペプチドフルクトースのCGG結合体を得た。
【0085】
CGG1分子当たりのペプチドフルクトースの結合数を次のように決定した。反応直後のA343が3.52であることより、放出されたピリジン−2−チオンの343nmにおける分子吸光係数を8.08×10とすると、その濃度[ピリジン−2−チオン]は数式(数式6)のように求めることができる。
【0086】
【数6】
(数式6)
Figure 0003801133
【0087】
この濃度はCGGに導入されたペプチドフルクトースの濃度に等しい。CGGの濃度は1.40×10−5Mであったことから、CGG1分子当たりに導入されたペプチドフルクトースの分子数[ペプチドフルクトース]/[CGG]は数式(数式7)のように求めることができる。
【0088】
【数7】
(数式7)
Figure 0003801133
【0089】
(実施例2:ペプチドフルクトースの作製)
本実施例では、以下に示す手順により、下記式(VI)で示すペプチドフルクトースを作製した。
【0090】
【化11】
(VI)
Figure 0003801133
【0091】
1.Wang樹脂(固相)へのCys基の導入
実施例1と同様の方法により、Fmoc−Cys(StBu)−Resinを作製した。
【0092】
2.Fmoc−Cys(StBu)−ResinへのThr基の導入
19.2g(7.668mmol、Cys換算)のFmoc−Cys(StBu)−Resinを50mlの20%ピペリジン/DMFに分散し、室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別除去した後、再び20%ピペリジン/DMFの反応を繰り返した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄し、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、アミノ基がフリーの状態であることを確認した。この樹脂を20mlのDMFに分散し、これに9.719g(19.17mmol)のフルオレニルメトキシカルボニルスレオニン ペンタフルオロフェニルエステル(以下、Fmoc−Thr−Opfpと略称する)を加え、室温で2時間撹拌した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄した後、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、フリーのアミノ基が存在しないことを確認した。その後、樹脂をクロロホルムで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥して、17.2gの乾燥樹脂(以下、Fmoc−Thr−Cys(StBu)−Resinと略称する)を得た。
【0093】
樹脂へのThr基の導入度は、実施例1の場合と同様に測定した。Thr基の導入率は、42%であった。
【0094】
3.Fmoc−Thr−Cys(StBu)−ResinへのLeu基の導入 15.2g(6.444mmol、Cys換算)のFmoc−Thr−Cys(StBu)−Resinを50mlの20%ピペリジン/DMFに分散し、室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別除去した後、再び20%ピペリジン/DMFの反応を繰り返した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄し、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、アミノ基がフリーの状態であることを確認した。この樹脂を20mlのDMFに分散し、これに8.361g(16.11mmol)のフルオレニルメトキシカルボニルロイシン ペンタフルオロフェニルエステル(以下、Fmoc−Leu−Opfpと略称する)を加え、室温で2時間撹拌した。樹脂を50mlのDMFで3回洗浄した後、少量をメタノール液としてニンヒドリンテストを行い、フリーのアミノ基が存在しないことを確認した。その後、樹脂をクロロホルムで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥して、13.4gの乾燥樹脂(以下、Fmoc−Leu−Thr−Cys(StBu)−Resinと略称する)を得た。
【0095】
樹脂へのLeu基の導入度は、前記の場合と同様に測定した。Leu基の導入率は、26%であった。
【0096】
4.Fmoc−Leu−Thr−Cys(StBu)−ResinへのHis基の導入
実施例1と同様の方法により、Fmoc−His(Trt)−Leu−Thr−Cys(StBu)−Resinを作製した。
【0097】
5.Fmoc−His(Trt)−Leu−Thr−Cys(StBu)−ResinへのVal基の導入
実施例1と同様の方法により、Fmoc−Val−His(Trt)−Leu−Thr−Cys(StBu)−Resinを作製した。
【0098】
6.樹脂からのペプチド鎖の脱離
実施例1と同様の方法により、Val−His−Leu−Thr−Cysを作製した。
【0099】
7.アマドリ転位反応によるペプチド鎖へのフルクトースの導入
実施例1と同様の方法により、フルクトース−Val−His−Leu−Thr−Cysを作製した。
【0100】
(ペプチドフルクトースのタンパク質結合体の作製)
本実施例では、タンパク質としてCGG、BSA及びKLHを用いた。
【0101】
1.CGG−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースの作製
200mg(1.33×10−3mmol)のCGGを約10mlのPBSに溶解し、室温で撹拌しながら、1mlのエタノールに溶解した、20.9mg(0.0667mmol、50eq.)のSPDP溶液をゆっくりと加えた。室温で30分間撹拌した後、セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、24ml(2.07mg/ml)のCGG−SPDP溶液を得た。SPDPのCGGへの導入数を以下に示した方法で測定した。
【0102】
0.5mlのCGG−SPDP溶液を採取し、280nmにおける吸光度(A280)を測定したところ、6.03であった。次にこれに100mMのジチオスレイトール溶液25μlを加え、3分間静置した後、343nmにおける吸光度(A343)を測定したところ、4.67であった。343nmにおける吸光はDTT還元によって放出されたピリジン−2−チオンに由来するもので、この量が導入されたSPDPの量と等しい。従って、SPDPの濃度[SPDP]は数式(数式8)に示すように計算することができる。ただし、ピリジン−2−チオンの343nmのモル吸光係数を8080とする。
【0103】
【数8】
(数式8)
Figure 0003801133
【0104】
280nmの吸光はタンパク質由来のものであるが、導入されたSPDPが280nmに吸光を持つことから、CGGの濃度[CGG]を計算するには、数式(数式9)に示す補正が必要である。ただし、SPDPの280nmにおけるモル吸光係数を5100、CGGの280nmにおけるモル吸光係数を1.99×10とし、(A280,SPDP)はSPDPに起因する280nmにおける吸光度、(A280,CGG)はCGGに起因する280nmにおける吸光度を表す。
【0105】
【数9】
(数式9)
Figure 0003801133
【0106】
従って、CGG1分子あたりに導入されたSPDPの分子数[SPDP]/[CGG]は数式(数式10)に示すようになる。
【0107】
【数10】
(数式10)
Figure 0003801133
【0108】
得られたCGG−SPDPのPBS溶液(2.32mg/ml、13.5ml)を室温で撹拌しながら、0.1mlのPBSに溶解した、11.7mg(0.016mmol、2eq.SPDP)のフルクトース−Val−His−Leu−Thr−Cysを滴下し、室温で3時間穏やかに撹拌した。反応の追跡は、反応液の343nmにおける吸光度で行った。セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、32ml(0.885mg/ml)のCGG−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースを得た。以下、このペプチドフルクトースのタンパク質結合体をF−CGGと略称する。
【0109】
2.KLH−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースの作製
57.8mg(5.78×10−4mmol)のKLHを約10mlのPBSに溶解し、室温で撹拌しながら、1mlのエタノールに溶解した、2.7mg(0.00867mmol、15eq.)のSPDP溶液をゆっくりと加えた。室温で30分間撹拌した後、セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、28ml(1.47mg/ml)のKLH−SPDP溶液を得た。SPDPのKLHへの導入数を以下に示した方法で測定した。
【0110】
0.5mlのKLH−SPDP溶液を採取し、280nmにおける吸光度(A280)を測定したところ、1.88であった。次に、これに100mMのジチオスレイトール溶液25μlを加え、3分間静置した後、343nmにおける吸光度(A343)を測定したところ、0.365であった。343nmにおける吸光はDTT還元によって放出されたピリジン−2−チオンに由来するもので、この量が導入されたSPDPの量と等しい。従って、SPDPの濃度[SPDP]は数式(数式11)に示すように計算することができる。ただし、ピリジン−2−チオンの343nmのモル吸光係数を8080とする。
【0111】
【数11】
(数式11)
Figure 0003801133
【0112】
280nmの吸光はタンパク質由来のものであるが、導入されたSPDPが280nmに吸光を持つことから、KLHの濃度[KLH]を計算するには、数式(数式12)に示す補正が必要である。ただし、SPDPの280nmにおけるモル吸光係数を5100、KLHの280nmにおけるモル吸光係数を1.12×10とし、(A280,KLH)はKLHに起因する280nmにおける吸光度を表す。
【0113】
【数12】
(数式12)
Figure 0003801133
【0114】
従って、KLH1分子あたりに導入されたSPDPの分子数[SPDP]/[KLH]は数式(数式13)に示すようになる。
【0115】
【数13】
(数式13)
Figure 0003801133
【0116】
得られたKLH−SPDPのPBS溶液(2.65mg/ml、15.5ml)を室温で撹拌しながら、0.1mlのPBSに溶解した、8.81mg(0.012mmol、10eq.SPDP)のフルクトース−Val−His−Leu−Thr−Cysを滴下し、室温で3時間穏やかに撹拌した。反応の追跡は、反応液の343nmにおける吸光度で行った。セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、32ml(1.13mg/ml)のKLH−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースを得た。以下、このペプチドフルクトースのタンパク質結合体をF−KLHと略称する。
【0117】
3.BSA−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースの作製
200mg(0.00303mmol)のBSAを約10mlのPBSに溶解し、室温で撹拌しながら、1mlのエタノールに溶解した、4.73mg(0.0152mmol、5eq.)のSPDP溶液をゆっくりと加えた。室温で30分間撹拌した後、セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、16ml(10.4mg/ml)のBSA−SPDP溶液を得た。SPDPのBSAへの導入数を以下に示した方法で測定した。
【0118】
0.5mlのBSA−SPDP溶液を採取し、280nmにおける吸光度(A280)を測定したところ、9.18であった。次に、これに100mMのジチオスレイトール溶液25μlを加え、3分間静置した後、343nmにおける吸光度(A343)を測定したところ、3.63であった。343nmにおける吸光はDTT還元によって放出されたピリジン−2−チオンに由来するもので、この量が導入されたSPDPの量と等しい。従って、SPDPの濃度[SPDP]は数式(数式14)に示すように計算することができる。ただし、ピリジン−2−チオンの343nmのモル吸光係数を8080とする。
【0119】
【数14】
(数式14)
Figure 0003801133
【0120】
280nmの吸光はタンパク質由来のものであるが、導入されたSPDPが280nmに吸光を持つことから、BSAの濃度[BSA]を計算するには、数式(数式15)に示す補正が必要である。ただし、SPDPの280nmにおけるモル吸光係数を5100、BSAの280nmにおけるモル吸光係数を4.36×10とし、(A280,BSA)はBSAに起因する280nmにおける吸光度を表す。
【0121】
【数15】
(数式15)
Figure 0003801133
【0122】
従って、BSA1分子あたりに導入されたSPDPの分子数[SPDP]/[BSA]は数式(数式16)に示すようになる。
【0123】
【数16】
(数式16)
Figure 0003801133
【0124】
得られたBSA−SPDPのPBS溶液(10.4mg/ml、16ml)を室温で撹拌しながら、0.1mlのPBSに溶解した、10.3mg(0.014mmol、2eq.SPDP)のフルクトース−Val−His−Leu−Thr−Cysを滴下し、室温で3時間穏やかに撹拌した。反応の追跡は、反応液の343nmにおける吸光度で行った。セファデックスG25Mカラムを用いて精製し、24ml(6.51mg/ml)のBSA−Cys−Thr−Leu−His−Val−フルクトースを得た。以下、このペプチドフルクトースのタンパク質結合体をF−BSAと表示略称する。
【0125】
(抗血清の作製及びその性能評価)
作製したペプチドフルクトースのタンパク質結合体のうち、F−CGG及びF−KLHを免疫原として用い、以下の方法により抗血清の作製を行った。(表2)に、抗血清の作製に用いた、免疫原と免疫動物の組み合わせを示す。
【0126】
【表2】
(表2)
Figure 0003801133
【0127】
免疫時には、F−CGGまたはF−KLHと、完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)とをホモジナイザで混合し、この混合物を免疫動物に投与した。前記混合物における最終タンパク濃度は1mg/mlである。2種類の免疫原を用いて、図1に示した免疫スケジュールに従って免疫を行った。初回免疫後7週経過した時点で得られた抗血清について、ELISAを用いて性能の評価を行った。ELISA条件を(表3)に、免疫原がF−CGGの場合の評価結果を図2に、免疫原がF−KLHの場合の評価結果を図3に示す。図2及び図3において、横軸は血清希釈率、縦軸は測定波長492nmでの吸光度を表す。なお、図2及び図3において、血清希釈率が無限大における測定点は、血清が存在しない試料についての測定結果を表す。
【0128】
【表3】
(表3)
Figure 0003801133
【0129】
F−CGGを免疫原とした抗血清及びF−KLHを免疫原とした抗血清ともに、血清希釈率が10〜10において力価がみられ、IgGの産生量がIgMの産生量よりも多いことから、良好な性能を有することがわかる。
【0130】
(実施例3:モノクローナル抗体の作製)
本実施例においては、免疫原として用いる結合体作製用のタンパク質としてCGGおよびKLHを用いた。また、骨髄腫由来の細胞としてはp3x63・Ag8・653を用い、細胞選択の際の評価法としてはELISAを採用した。そしてELISAでの評価用として、BSAをタンパク質とする結合体を作製した。
【0131】
(免疫原となる結合体の作製)
1.CGGのピリジルジチオプロピオニル化(CGG−SPDPの作製)
200mg(1.33×10−3mmol)のCGGを50mlのリン酸バッファーサリン(以下、PBSと略称する)に溶解し、撹拌しながら5mlのSPDP/エタノール溶液(SPDP=40mg、0.13mmol、100等量)を滴下した。室温で30分間撹拌した後、生じた沈澱物を遠心分離(10分間、20000rpm)により除いた。得られた上清をセファデックスG25Mカラム(Pharmacia製、直径2cm×長さ80cm)でゲル濾過し、80mlのCGG−SPDP/PBS溶液を得た。
【0132】
CGG1分子あたりのSPDPの結合数を次のように決定した。得られたCGG−SPDPのPBS溶液のうち1mlを用いて280nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、3.73であった。
【0133】
これに100mMのジチオスイレイトール(以下、DTTと略称する)水溶液50μlを加え、5分間放置した後343nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、2.80であった。
【0134】
DTT還元によって放出されたピリジン−2−チオンの343nmにおける分子吸光係数を8.08×10とするとその濃度[ピリジン−2−チオン]は数式(数A)のように求めることができる。
【0135】
(数A)
[ピリジン−2−チオン] = 2.80/(8.08×10
= 3.47×10−4(M)
この濃度はCGGに導入されたSPDPの濃度に等しい。また、SPDPの2−ピリジルジスルフィド基が280nmおける吸光度に寄与するのでCGG濃度の計算には次のような補正が必要である。CGGに起因する280nmにおける吸光度(A280,CGG)は数式(数B)のように求めることができる。ただし、2−ピリジルジスルフィド基の280nmにおける分子吸光係数を5.1×10とする。
【0136】
(数B)
280,CGG = 3.73−(3.47×10−4×5.1×10
= 1.96
したがって、CGGの濃度[CGG]、及びCGG1分子当たりに導入されたSPDPの分子数[SPDP]/[CGG]は数式(数C)のように求めることができる。ただし、CGGの280nmにおけるモル吸光係数を1.99×10とする。
【0137】
(数C)
[CGG] = 1.96/(1.99×10
= 9.85×10−6(M)
[SPDP]/[CGG] = 3.47×10−4/(9.85×10−6
= 35.2
2.ペプチドフルクトースとCGGとの結合体作製
50mlのCGG−SPDP/PBS溶液に40mg(7.18×10−2mmol)のピリジルジチオ誘導体を加え、4℃で一晩撹拌した。生じた沈澱物を遠心分離(10分間、20000rpm)により除いた後、343nmにおける吸光度(A343)を測定した。A343=3.52であった。得られた上清をセファデックスG25カラム(Pharmacia製、直径2cm×長さ80cm)でゲル濾過して48mlのペプチドフルクトースのCGG結合体を得た。
【0138】
CGG1分子当たりのペプチドフルクトースの結合数を次のように決定した。反応直後のA343が3.52であることより、放出されたピリジン−2−チオンの343nmにおける分子吸光係数を8.08×10とすると、その濃度[ピリジン−2−チオン]は数式(数D)のように求めることができる。
(数D)
[ピリジン−2−チオン] = 3.52/(8.08×10
= 4.35×10−4(M)
この濃度はCGGに導入されたペプチドフルクトースの濃度に等しい。CGGの濃度は1.40×10−5Mであったことから、CGG1分子当たりに導入されたペプチドフルクトースの分子数[ペプチドフルクトース]/[CGG]は数式(数E)のように求めることができる。
(数E)
[ペプチドフルクトース]/[CGG] = 4.35×10−4/1.40×10−5
= 31.1
3.KLHとペプチドフルクトースとの結合体作製
54mgのKLHと5.42mg(30eq.)のSPDPとを用いて、前述のCGGの場合と同様の操作を行って、ピリジルジチオプロピオニル化KLH(KLH−SPDP)を作製し、KLH−SPDPのPBS溶液28mlを得た(濃度1.47mg/ml)。KLH1分子あたりのSPDPの導入数は3.0であった。
【0139】
得られたKLH−SPDP溶液のうち、15.5ml(41.1mg)を用いて、前述の場合と同様にペプチドフルクトース(6.4mg)との反応を行い、33.3mg(3.33mg/ml、10ml)のペプチドフルクトースのKLH結合体を得た。KLH1分子あたりのペプチドフルクトースの導入数は2.7であった。
【0140】
4.BSAとペプチドフルクトースとの結合体作製
ELISAでの評価用としてペプチドフルクトースとBSAとの結合体を作製した。200mgのBSAと4.73mg(5eq.)のSPDPとを用いて、前述のCGG、KLHの場合と同様の操作を行って、ピリジルジチオプロピオニル化BSA(BSA−SPDP)を作製し、BSA−SPDPのPBS溶液16mlを得た(濃度10.4mg/ml)。BSA1分子あたりのSPDPの導入数は2.8であった。
【0141】
得られたBSA−SPDP溶液16mlを用いて、前述の場合と同様にペプチドフルクトース(7.4mg)との反応を行い、156.2mg(6.51mg/ml、24ml)のペプチドフルクトースのBSA結合体を得た。BSA1分子あたりのペプチドフルクトースの導入数は2.5であった。
【0142】
(モノクローナル抗体産生細胞およびモノクローナル抗体の作製方法)
1.マウスの免疫
生後約8週のマウス(Balb/c)10匹を5匹ずつ2つのグループに分け、前述のように作製した2種類の免疫原(CGG結合体、KLH結合体)をそれぞれ腹腔内に100μLずつ注射した。
【0143】
2.抗体産生のチェック
免疫注射後、77日を経過したマウスについて、眼静脈より50〜100μLの血液を遠心管に採取した。血清を遠心分離し、ELISA法(後出)による抗体価の評価を行ったところ、全てのマウスについて抗HbA1c抗体の産生が確認された。
【0144】
3.マウスのブースト
前述の抗体価の評価で、特に力価の高かったマウス(CGG結合体を免疫原として用いたグループ)についてマウスの脾臓を肥大させるためにブースト(弱い免疫原の注射)を行った。免疫原はフルクトースのCGG結合体をPBSで希釈して得た1mg/mL溶液を、アジュバントを加えずにそのまま用いた。
【0145】
4.細胞融合
ブースト後3日を経過したマウスの脾臓細胞を摘出し、平均分子量1,500のポリエチレングリコールを用いた常法により、マウス骨髄腫由来細胞ライン(P3X63−Ag8.653)と融合した。フィーダー(成長因子を供給する細胞)として同じマウスの脾臓細胞を用い、96ウェルプレート2枚の上で15%のウシ胎児血清(以下、FCS)を含むHAT培地で培養した。1週間後、15%のFCSを含むHT培地と交換した。
【0146】
5.クローニング
ELISA法による抗体価の測定を行い、力価の高いものから上位5ウェルを選択した。
【0147】
ウェルあたり1個の細胞が含まれる濃度に希釈(限界希釈)し、96ウェルのマイクロプレート5枚に分注した。フィーダーとして生後5週のマウス(Balb/c)の胸線細胞を用いて初期増殖を促した。プレートのサイズを上げながら培養を進め、適時上清についてELISA法による抗体価測定を繰り返し、HbA1cに対して高い力価を示し、かつ良好な増殖を示している細胞群を最終的に選別し、200ml中で5x10 細胞/mLの濃度に至るまで培養を進めた。
【0148】
6.最終的に選別された細胞は、上清を遠心分離し、5×10 細胞/mLの濃度でFCS:ジメチルスルホキシド=9:1の溶液1mLに浮遊させ、−80℃で凍結した後、液体窒素中に移して長期保存状態にした。
【0149】
7.2−メルカプトピリジン結合ゲル(HiTrap IgM Purification、Pharmacia製)
を用いたアフィニティークロマトグラフィにより細胞培養上清からモノクローナル抗体を精製した。このモノクローナル抗体は、Mouse Monoclonal Typing Kit(Binding Site製)による検定の結果、IgMであることを確認した。
【0150】
(ELISA法による抗体価の測定)
前述の抗体作製時に得られた抗血清、培養上清の評価はELISA法を用いて行った。その測定条件および測定方法を以下に記載する。
【0151】
1.抗原のコーティング
ペプチドフルクトースのBSA結合体を、0.1mg/mlおよび0.04%のアジ化ナトリウムを含むPBSで希釈して(BSA・PBS・Az)BSAの濃度として0.1mg/mLの抗原溶液を調製した。マイクロプレート(塩化ビニル製96ウェルプレート Costar製)に抗原溶液を100μL/ウェル注入し、20℃で一晩静置した。アスピレータで抗原溶液を除去した後、PBSで3回洗浄し、アスピレータで残存するPBSを除去した。
【0152】
また、測定の必要に応じて、コート用の抗原として精製HbA1c、および精製HbA0を用いた。この場合、抗原の濃度は0.02mg/mlとし、ウェルに注入後4℃で一晩静置した。
【0153】
2.ブロッキング
1%BSA・PBS・Azを200μL/ウェル注入し、30分間室温で静置した。その後、アスピレータでBSA・PBS・Azを除去し、PBSで3回洗浄した。即日に以降の実験を行わないときは、この状態で、水で湿したろ紙と共に4℃で保存した。
【0154】
3.抗体の反応
上記手順で調整したプレートを用いて、1%BSA・PBS・Azで種々の希釈率に希釈した抗体溶液(血清、培養上清、精製抗体など)100μL/ウェルを注入した。室温で3時間静置した後、アスピレータで抗体溶液を除去し、PBSで3回洗浄し、アスピレータで残存するPBSを除去した。
【0155】
4.二次抗体の反応
0.2μg/mLのペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG、もしくはIgM抗体ヤギ由来(KPL製)を1%BSAのPBS溶液に溶解したもの(二次抗体溶液)100μL/ウェル注入し、室温で30分静置した。アスピレータで二次抗体溶液を除去し、PBSで3回洗浄し、さらにアスピレータで残存するPBSを除去した。
【0156】
5.基質の反応および停止
o−フェニレンジアミン(生化学用)40mgを、10mLのクエン酸−リン酸バッファー(pH5)に溶解し、使用直前に30%過酸化水素水4μLを加えた溶液(基質溶液)を100μL/ウェル注入し、室温で静置した。3〜5分後、4N硫酸を25μL/ウェル注入して反応を停止した。
【0157】
6.測定
マイクロプレートリーダ(東ソー製)を用いて492nmの吸光度を測定した。
【0158】
(抗体価測定の結果)
上記の方法によって、細胞融合の直前に採取した抗血清(免疫後77日)の抗体価の測定結果を図4に、クローニングによって選択した2クローン(4Fおよび8E)の培養上清より精製分取したモノクローナル抗体の抗体価の測定結果を図5(4F)および図6(8E)に示す。
【0159】
図4の結果は免疫後77日時点での抗血清が、擬似抗原であるBSA−ペプチドフルクトースと、HbA1cとに同様の結合能を有していることを示している。また、HbA0に対してはほとんど結合能を示さないことから、この抗血清は当初の目的どおりHbA1cのフルクトース結合部位を認識するものであると考えられる。
【0160】
また、細胞融合後のクローニングによって選択した2種類のクローン(4F,8E)は、結合半値でそれぞれ1×10−9M、3×10−9Mの結合能を有していることを示している。
【0161】
寄託
本発明において得られたハイブリドーマ2株を、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2001年6月22日付けでFERM BP−7637およびFERM BP−7636として寄託した。
【0162】
産 業 上 の 利 用 可 能 性
以上のように、本発明のペプチドフルクトースは、HbA1cの特徴的構造であるフルクトース−バリン−ヒスチジンに加えて−SH基が導入されていることから、タンパク質との結合が容易であり、タンパク質と結合させることによりタンパク質結合体を作製することができる。
【0163】
また、本発明のペプチドフルクトースのタンパク質結合体は、HbA1cの特徴的構造であるフルクトース−バリン−ヒスチジンと、ヘモグロビンを除くタンパク質とを有していることから、HbA1c以外のヘモグロビンとは共通する構造を持たないため、これを免疫原として用いることにより、HbA0とは交叉反応性を有さず、好ましくは、HbA1c以外のヘモグロビンとは交叉反応性を持たない抗HbA1c抗体を確実に作製することができる。
【0164】
本発明は(I)に示す構造式を含むペプチドフルクトースとタンパク質との結合体からなる免疫原で感作されたマウスの脾臓細胞と、骨髄種由来の細胞ラインとを融合後、クローニングして得られるモノクローナル抗体産生細胞であり、その産生細胞が作り出すものモノクローナル抗体である。したがって、ヒトヘモグロビン中のHbA1cに対して特異性をもつモノクローナル抗体、およびこれを産生する抗体産生細胞を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の1実施形態において用いた免疫スケジュールを示す。
【図2】 図2は、本発明の1実施形態(F−CGG)の抗血清の性能評価を示す図である。
【図3】 図3は、本発明の1実施形態(F−KLH)の抗血清の性能評価を示す図である。
【図4】 図4は、本発明の1実施形態の抗血清について、免疫後77日での抗体価を示す図である。
【図5】 図5は、本発明の1実施形態のモノクローナル抗体(4F)の抗体価を示す図である。
【図6】 図6は、本発明の1実施形態のモノクローナル抗体(8E)の抗体価を示す図である。

Claims (2)

  1. ペプチドフルクトース化合物と、タンパク質とが結合体化した、ヒトヘモグロビンA1cに特異的に結合する抗体を作製する際の免疫原として用いられるタンパク質結合体であって、
    該ペプチドフルクトース化合物は式VI:
    Figure 0003801133
    で示され、
    該タンパク質はCGGである、
    タンパク質結合体。
  2. 請求項1に記載のタンパク質結合体で感作されたマウスの脾臓細胞と、骨髄腫由来の細胞株とを融合後、融合された細胞をクローニングして得られるモノクローナル抗体産生細胞であって、該モノクローナル抗体産生細胞は、ヒトヘモグロビンA1cに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するモノクローナル抗体産生細胞であって、受託番号FERM BP−7637またはFERM BP−7636である、モノクローナル抗体産生細胞。
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