JP3801066B2 - 静電塗装装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部電極からのコロナ放電により塗料を帯電させる間接印加式静電塗装装置に関し、特にスパークの発生を防止する静電塗装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電塗装装置で被塗物を塗装する際には、高電圧が印加された外部電極による誘電帯電により、回転霧化頭から噴霧された塗料粒子が、一旦外部電極の電気極性とは反対の極性に帯電し、その後コロナ放電により外部電極と同じ極性に帯電する。このコロナ放電においては外部電極の電圧が高すぎたり、外部電極と回転霧化頭とが近づきすぎると、スパークが発生するおそれがある。このため、導電性のある塗料を静電塗装する場合には、塗装装置先端に印加した高電圧が塗料供給経路を伝ってリークしないようにボルテージブロックが必要とされる。
【0003】
また、こうした静電塗装に用いられる塗料には、水希釈型塗料(以下単に水系塗料ともいう)、メタリック塗料又は有機溶剤系塗料などが含まれる。水系塗料はリークが発生しても引火する恐れがないが、有機溶剤系塗料は引火性を有する。
【0004】
従来は、有機溶剤系塗料を塗装する場合の外部電極の電圧値を、水系塗料を塗装する場合の電圧値(例えば−60kV)よりも小さい電圧値(例えば−40kV)に切り替えるという制御が行われていた。また、霧化頭を印加する高電圧発生器と外部電極を印加する高電圧発生器との2つの高電圧発生器を設け、これらを複雑に制御するという技術も知られている(特開平10−71360号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗料の変更の度に外部電極への印加電圧値を切り替える制御は煩雑なものとなる。また、この制御において塗装時に印加電圧値を低下させると塗着効率が低下するという不都合がある。さらに、塗着効率の低下に伴い飛散塗料が増加して、飛散塗料が塗装装置を汚してしまうという弊害も生じる。
本発明は、複数の高電圧発生器を設けることなく、スパークの発生を防止する静電塗装装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1記載の発明によれば、塗装装置本体に対して回転可能に設けられ先端外周縁が塗料放出端縁とされた回転霧化頭と、前記回転霧化頭に塗料を供給する塗料供給系と、前記回転霧化頭の周囲に設けられ前記回転霧化頭の塗料放出端縁から放出された塗料粒子を帯電すべく外部から高電圧が印加される外部電極とを有する静電塗装装置であって、前記回転霧化頭と塗料供給系とを電気的に絶縁し、少なくとも前記回転霧化頭を電気抵抗体を介して接地するとともに、前記塗料供給系を接地する静電塗装装置が提供される。この塗料供給系は塗料供給源から回転霧化頭の吐出口に至る供給経路の一部又は全部を含む。
【0007】
本発明では、まず回転霧化頭と塗料供給系とを構成上、電気的に絶縁し、少なくとも回転霧化頭を含んで構成される電気的回路と、少なくとも塗料供給系を含んで構成される電気回路とを構成上分離する。そのうえで、回転霧化頭を電気抵抗体を介して接地するとともに、これとは独立に塗料供給系を接地する。
【0008】
この発明において、回転霧化頭は、少なくとも塗料供給系と電気的に絶縁されていればよい。すなわち、回転霧化頭は、この回転霧化頭が設けられた静電塗装装置本体と電気的に接続されていてもよい。この場合、静電塗装装置本体は回転霧化頭とともに、回転霧化頭を介して接地されることとなり、これらに蓄積された電荷が除去される。また、同様に塗料供給系も独立に接地されていることから、塗料が帯びた電荷も塗料の供給源にまで流れることなく除去される。なお、回転霧化頭と塗料供給系とは、導電性を有する塗料によって電荷の移動を許している。よって、外部電極の放電によって蓄積された電荷は、回転霧化頭を介して接地のポイント、又は塗料供給系を介して接地のポイントのいずれかへ流れ、静電塗装装置の電位が保たれる。
【0009】
このとき、塗装に用いられる塗料が電気抵抗の小さい(電気伝導性の高い)水系塗料である場合、回転霧化頭に蓄積した電荷は回転霧化頭に供給された塗料を伝って塗料供給系に流れ、回転霧化頭の電位は接地状態に保たれ、スパーク発生防止のために外部電圧を制御する必要はない。
【0010】
他方、塗装に用いられる塗料が電気抵抗の大きい(電気絶縁性能の高い)塗料(例えば有機溶剤系塗料)である場合、回転霧化頭が帯びた電荷は塗料供給系を介して流れずに回転霧化頭に蓄積する。しかし、回転霧化頭は電気抵抗体を介して接地されているので蓄積された電荷は電気抵抗体を経て接地方向へ向かって流れる。さらに、回転霧化頭は電気抵抗体を介して接地されているため、回転霧化頭の電位は外部電極の電位よりも、やや低い電位に保たれる。すなわち、電気抵抗体の抵抗値に応じて、外部電極の電位と回転霧化頭の電位は所定の電位差に保つことができる。この電位差を所定の範囲に保つことにより、スパークの発生を防止することができる。
【0011】
この発明によれば、電気抵抗値の大きい塗料を用いた場合に、回転霧化頭の電位を制御しつつ、その回転霧化頭に蓄積した電荷を接地方向へ向けて流す(放電する)ことができ、スパークの発生を防止することができる。このように、スパーク発生の防止のために外部電極の電圧を下げる必要がないことから、特に、有機溶剤系塗料についても塗着効率を維持しつつ、安全に塗装を行うことができる。
【0012】
(2)上記発明において、前記電気抵抗体の電気抵抗値は、前記塗料供給系により供給される有機溶剤系塗料のうち最小の電気抵抗値よりも小さいことが好ましく(請求項2)、さらに、前記電気抵抗体の電気抵抗値は、前記塗料供給系により供給される水系塗料のうち最大の電気抵抗値よりも大きいことが好ましい(請求項3)。加えて、前記電気抵抗体の電気抵抗値は、2MΩ以上20GΩ以下であることが好ましい(請求項4)。
【0013】
この発明において、電気抵抗体の電気抵抗値は可変である。電気抵抗体の抵抗値は塗料供給系により供給される塗料の電気抵抗値に応じて適宜決定される。具体的には、塗料供給系により供給される塗料に有機溶剤系塗料が含まれている場合、さらに含まれる有機溶剤系塗料が複数ある場合には、それらのうち最小の電気抵抗値に応じて決定する。同様に、塗料供給系により供給される塗料に水系塗料が含まれている場合、さらに含まれる水系塗料が複数ある場合には、それらのうち最大の電気抵抗値に応じて決定する。
【0014】
塗料が有機溶剤系塗料である場合、塗料の電気抵抗値は比較的高いため、回転霧化頭に蓄積された電荷は塗料供給系には流れにくい。このため、回転霧化頭には電荷が蓄積される。本発明では回転霧化頭と接地ポイントとの間に設けられた電気抵抗体の電気抵抗値を、有機溶剤系塗料のうちの最小の電気抵抗値よりも小さい値としたため、回転霧化頭に蓄積された電荷は電気抵抗体を介して接地方向へ流れる。このとき、少なくとも回転霧化頭(回転霧化頭、回転霧化頭に電気的に接続された構成を含む)は、電気抵抗体による電圧降下分だけ高い電位に保たれる。よって電気抵抗体の抵抗値を制御することにより回転霧化頭を所定の電位に保つことができる。これにより、回転霧化頭と外部電極との間の電位をほぼ等しくすることも可能であるため、回転霧化頭と外部電極との間におけるスパークの発生を防止することができる。
【0015】
さらに、塗料が水系塗料である場合、塗料の電気抵抗値は低く、導電性に富んでいる。よって、回転霧化頭に蓄積された電荷は塗料供給系を介して接地ポイントに流れる。また、水系塗料はスパークによる着火の危険もないことから、水系塗料を用いる場合では回転霧化頭に蓄積された電荷は塗料供給系を介して接地ポイントへ流すことが好ましい。本発明では回転霧化頭と接地ポイントとの間に設けられた電気抵抗体の電気抵抗値を、水系塗料のうちの最大の電気抵抗値よりも大きい値とした。このため、水系塗料を用いる場合には回転霧化頭に蓄積された電荷は塗料供給系を介して接地方向へ流れる。これにより、回転霧化頭の電荷を効率良く取り除き、回転霧化頭と外部電極との間の電位をほぼ等しくすることができ、回転霧化頭と外部電極との間におけるスパークの発生を防止することができる。
【0016】
以上の観点から、さらに本発明では、電気抵抗体の電気抵抗値を2MΩ以上20GΩ以下とすることを提案する。このような数値範囲としたのは、電気抵抗値が2MΩよりも小さいと、この抵抗体を介して流れる電流が大きくなりすぎる。この場合、回転霧化頭の電位を保つための高電圧発生器の電流供給能力を大きくする必要があり、設備コストが過大になることから望ましくない。また、電流値が大きくなると抵抗体での発熱も無視できなくなることから2KΩを下限とすることが実用的である。また、電気抵抗値が20GΩよりも大きいと、抵抗体を介して流れる電流が小さくなりすぎ、例えば、高電圧の印加を停止した後も長時間回転霧加頭が高い電位を保つことになるため、危険性が高くなる。これは、例えば清掃作業などの次の作業に入るまでの時間も考慮して決められるが、典型的には数秒から数十秒を上限とするため、20MΩを上限とすることが実用的である。
【0017】
以上のとおり、本発明は複数の高電圧発生器を設けることなく、スパークの発生を防止する静電塗装装置を提供することができる。
【0018】
(3)また、上記発明において、前記外部電極への印加を制御するコントローラと、前記接地された回転霧化頭に流れる電流値を検出し、当該検出した電流値を前記コントローラへ出力する第2電流計とを、さらに有する静電塗装装置が提供される(請求項5)。この発明において、前記塗料供給系の電流値を検出し、当該検出した電流値を前記コントローラへ出力する第1電流計を、さらに有することが好ましい(請求項6)。
【0019】
これらの発明において、前記コントローラは、当該コントローラが検出した前記外部電極の電流値と、前記第2電流計により検出された電流値とに応じて、前記外部電極の印加を制御することが好ましく(請求項7)、さらに、前記コントローラは、当該コントローラが検出した前記外部電極の電流値と、前記第1電流計により検出された電流値と、前記第2電流計により検出された電流値とに応じて、前記外部電極の印加を制御することが好ましい(請求項8)。この発明において、第1電流計及び第2電流計の配置場所は特に限定されることはない。すなわち、第2電流計は、回転霧化頭から電気抵抗体の間、又は電気抵抗体から接地ポイントへの何れの電気経路に配置することも可能である。もちろん電気抵抗体を流れる電流値を測定してもよい。いずれに配置しても回転霧化頭から接地ポイントへ至る電気経路の電流値の変化を検出することが可能だからである。同様に第1電流計の配置位置も任意である。
【0020】
この発明では、接地された回転霧化頭を流れる電流値を検出する第2電流計を備えている。上述したとおり、塗料が電気抵抗値の大きい有機溶剤系塗料であるとき、回転霧化頭に蓄積された電荷は電気抵抗体に接続する接地ポイントへ流れる。他方、塗料が電気抵抗値の低い水系塗料であるとき、回転霧化頭に蓄積された電荷は水系塗料を供給する塗料供給系を介して接地ポイントへ流れる。よって、塗料が有機溶剤系であれば外部電極への印加電圧に比例した電流が回転霧化頭乃至電気抵抗体へ流れ、第2電流計はその電流値を検出することができる。言い換えると、第2電流計が回転霧化頭側の電気経路において外部電極への印加に応じた電流値を検出できない場合には、塗装に用いられている塗料は水系塗料であるといえる。このように、電気抵抗体の電流を検出することによって塗装している塗料が水系塗料であるのか有機溶剤系塗料であるのかの別を判別することができる。さらに、電気抵抗体の電流値と、外部電極へ供給される電流値とを比較することにより、接地が正常になされているか、被塗物へ電流が流れていないか、といったことを判別することができる。
【0021】
さらに、本発明では塗料供給系の電流値を検出する第1電流計を備えることを提案する。塗料供給系の電流値を検出することにより、塗料供給系を介して流れる電流の量を検出することができる。上述の第2電流計における判断と同様に、第1電流計において、塗料供給系の電流値が大きければ塗装されている塗料は水系塗料であると判断でき、塗料供給系に電流がほとんど流れていないときには塗装されている塗料は有機溶剤系塗料であると判断できる。これに加えて、第2の電流計により検出された電流値を参照すれば、接地が正常になされているか、被塗物へ電流が流れていないか、といったことを判別することができる。
【0022】
第1電流計の検出した電流値又は/及び第2電流計の検出した電流値はコントローラへ出力される。もちろんコントローラは、外部電極に供給する電流の電流値、外部電極の電圧といった自らが印加を制御する外部電極に関する情報を検出することができる。よって、コントローラは、外部電極の電流値と第2電流計により検出された電流値とに基づき、又はこれらと第1電流計により検出された電流値とに基づき、外部電極の印加を制御する。
【0023】
例えば、外部電極に供給する電流値と、第2電流計が検出した電流値及び/又は第1電流計が検出した電流値とを比較し、電流値が正常な値であるか否かを判断し、正常値の域を超えたとき、外部電極への印加を停止する。外部電極に供給される電流値が増加しているにもかかわらず第2電流計が検出する電流値にそれに応じた増加がないと判断したときは、印加電流が回転霧化頭以外のもの、例えば被塗物等に流れていると予測できるからである。このような場合、被塗物が正常に搬送又は配置されず静電塗装装置に異常に接近している恐れがあるため、コントローラは外部電極への印加、電流の供給を停止するといった安全性を担保する制御を行うことができる。
【0024】
【発明の効果】
請求項1〜8記載の発明によれば、スパークの発生を防止する静電塗装装置を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の3つの実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図、図2は本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図、図3は本発明の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0026】
以下、第1の実施形態から順に説明をするが、3つの実施形態の基本的な構成は共通するため、共通する部分については第1の実施形態において説明をする。
【0027】
<第1の実施形態>
図1に示すように、本実施形態の回転霧化頭14を備えた静電塗装装置100は、筐体11内にエアモータ12が内蔵され、このエアモータ12は、筒状に形成されたモータ本体121と当該モータ本体121内に収容されたエアタービン122と回転軸13を回転可能に支持する静圧エアベアリング123とにより構成されている。そして、このエアモータ12はエアタービン122に高圧エアを供給することで回転軸13を高速回転させる。
【0028】
回転軸13の先端には回転霧化頭14が取り付けられ、この回転霧化頭14の内周面にはフィードチューブ15から供給される塗料を平滑化する平滑面141が形成され、外周縁には平滑面から供給された塗料を放出させるための塗料放出端縁142が形成されている。なお、フィードチューブ15は回転軸13に貫通され、その先端が回転霧化頭14の中心に臨んで設けられて、図外の塗料供給源及びシンナー供給源から塗料やシンナーが供給される。このフィードチューブ15は回転軸13に挿通されており、このフィートチューブ15は塗料供給タンク60から回転霧化頭14へ至り塗料を供給する。このフィードチューブ15の塗料タンク60側には接地ポイントP2へ接続された金属リング31が設けられており、この金属リング31を介して塗料から電荷が取り除かれる。すなわち、本実施形態の塗料供給系30はエアタービン122の背面側からフィードチューブ15の一部を含んで延在し、金属リング31を介して接地されている。
【0029】
この塗料供給系30に含まれる、エアモータ12の背面側(塗料タンク60側)から金属リング31までのフィードチューブ15は、絶縁性樹脂チューブとなっている。具体的にはフッ素樹脂チューブを用いることが好ましく、本形態では1mm以上の肉厚を有するPFA樹脂(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体)によってコーティングされている。よって、PFA樹脂でコーティングされている部分においては回転霧化頭14とは電気的に絶縁されるが、回転霧化頭14及びエアモータ12部分や回転霧化頭14の平滑面141において、電荷は塗料を介して移動することができる。なお、回転霧化頭14からエアモータ12までを挿通する部分をもPFA樹脂でコーティングしてもよい。
【0030】
この塗料供給系30から電気的に絶縁された回転霧化頭14は、エアタービン122、エアモータ本体121と構造的かつ電気的に接続している。回転霧化頭14は少なくとも塗料供給系30と絶縁されていればよく、そのほかのエアータービン122、エアモータ本体121、静圧エアベアリング123を含むエアモータ12と電気的に接続されていてもよい。本実施形態では、回転霧化頭14とエアモータ12とに電気抵抗体41を接続し、この電気抵抗体41を介して接地する。電気抵抗体41はスライダックを用いて、抵抗値を可変とできるようにした。本実施形態では2GΩとした。
【0031】
ここで、電気抵抗体41の抵抗値を2GΩとした理由について説明する。本実施形態では有機溶剤系塗料と水系塗料との両方を使用する混用型の静電塗装を行う。ここで使用する有機溶剤系塗料は、自動車塗装用上塗りベースコートで、代表的な導電率は20MΩ・cmである。これを内径2mm、長さ1mの絶縁性チューブでアース点に接続した場合、塗料の電気抵抗値は約64GΩとなる。本実施形態のように2GΩの電気抵抗体41を使用した場合は、電流の約97%がこの電気抵抗体41を通過するように設定できるため、塗料を伝ってリークする電流値は小さく、無視しても差し支えない値となる。
【0032】
また、筐体11の先端には、シェーピングエアリング16が装着され、この先端面に形成された多数のエア噴出口161から回転霧化頭14の背面143に向かってシェーピングエアを供給する。このシェーピングエアにより回転霧化頭14の塗料放出端縁142から放出された塗料パターンが調節される。
【0033】
この静電塗装装置100では、筐体11に電極取付リング17が装着され、この電極取付リング17に、複数の電極支持棒18が設けられている。図1には4本の電極支持棒18のみを示すが、本例の静電塗装装置1では、筐体11の周りに等間隔で6本〜12本の電極支持棒18が設けられ、各電極支持棒18の先端に外部電極19が設けられている。
【0034】
本例の静電塗装装置100では、6本の外部電極19へ高電圧を印加する高圧発生器20と電流計21とスイッチ22とが設けられている。また、電流計21により検出された電流値に基づいて高圧発生器20に対する印加電圧の指令値を演算するコントローラ50が設けられている。このコントローラ50が6本の外部電極19の印加電圧を制御する。もちろん、スイッチ22が外部電極19への印加電圧を単独で制御することも可能である。なお、電流計21により検出された電流値はスイッチ22を介してコントローラ50へ送出されるが、直接にコントローラ50へ送出されてもよい。
【0035】
コントローラ50は、高圧発生器20の目標電流値を決定するとともに、上限となる電圧値も決定し、これにより最終的には高圧発生器20を制御する。たとえば、コントローラ50からスイッチ22に対して、各外部電極19に流れる電流値がnアンペアとなるように高圧発生器20を制御せよとの指令を出力すると、スイッチ22は、電流計21により検出された実際の電流値を監視しながらこの電流値がnアンペアとなるように高圧発生器20による印加電圧を調節する。
【0036】
続いて、本実施形態の動作について説明する。
外部電極19には−60kV〜−90kVの高電圧が印加され、外部電極19の先端からコロナ放電による負イオンが放出される。この負イオンは塗料粒子をマイナス電荷に帯電させ、アース電位にある被塗物との間に静電吸着をさせ、これにより被塗物への塗着が行われる。このとき、回転霧化頭14及びこれに電気的に接続するエアモータ12はアース電位にある。
【0037】
図1に示す静電塗装装置100の構造にのみ着目すると、外部電極19に最も近いアース電位部は回転霧化頭14である。よって、印加電圧の異常等の何らかの異常が起きた場合、外部電極19と回転霧化頭14との間にはスパークが生じるおそれがある。特に、微粒化性の悪い塗料は霧化頭回転から液糸として延び、この液糸もアース電位であるため、電極先端からの距離が近くなってスパークを生じさせることもある。通常、スパークが発生したとき、霧化頭14には塗料が付着しており、この塗料に導電性がある場合には電流が塗料タンク60にまで流れて障害を起こすこともあり得る。特に、有機溶剤系の塗料を使用する場合には着火を起こすこともあり得る。
【0038】
このような構造上の課題を踏まえて、本実施形態の場合の電荷の流れを、水系塗料を塗装する場合と有機溶剤系塗料で塗装する場合とを分けて説明する。
水系塗料は、それ自体に導電性があるため、電荷は塗料を伝わって流れる。しかし、塗料供給系31の塗料タンク側60には金属リング31が備えられ、金属リング31を介して接地されている。このため塗料に蓄積された電荷は、接地ポイントP2へ流れて放電し、塗料の電荷は取り除かれる。また、塗料供給系30と回転霧化頭14とは電気的に絶縁されているため、塗料供給系30に流れる電荷が回転霧化頭14に流れることはない。
【0039】
他方、有機溶剤系塗料は、塗料の電気抵抗値が一般に高く、導電性が低い。このため、電荷は塗料を伝わって流れることなく、塗料供給系30側に電流は流れ込まない。回転霧化頭14側に接続された電気抵抗体41の抵抗値は、使用する有機溶剤系塗料の電気抵抗値よりも低い2GΩである。よって、外部電極19の印加によって蓄積した電荷は電気抵抗体41を介して接地ポイントP1へ流れる。このため、有機溶剤系塗料に電荷が蓄積されることを防ぐことができる。
【0040】
この電気抵抗体41の電気抵抗は、使用する複数の有機溶剤系塗料の電気抵抗値うち、最も小さい電気抵抗値よりも、少なくとも小さくなるように設定した。さもなければ、蓄積された電荷が有機溶剤系塗料を供給する塗料供給系30へ流れてしまうからである。他方、電気抵抗体41の電気抵抗値の上限は、使用する複数の水系塗料の電気抵抗値のうち、最も大きい電気抵抗値よりも、少なくとも大きくなるように設定した。これにより、水系塗料を用いる塗装においては電荷は水系塗料を介して接地ポイントP2へ流すことができる。
【0041】
このように、本実施形態においては、電気抵抗体41の電気抵抗値を、塗装に用いられる水系塗料の電気抵抗値よりも少なくとも大きく、また塗装に用いられる有機溶剤系塗料の電気抵抗値よりも少なくとも小さくする。これにより、本実施形態の静電塗装装置100は、水系塗料と有機溶剤系塗料の両方を用いる混用静電塗装において利用することができる。
【0042】
以上、電気抵抗体41の電気抵抗値の好適な範囲を使用する塗料の観点から説明した。続いて、電気抵抗体4の電気抵抗値の設定値を回転霧化頭14の電位制御の観点から説明する。
【0043】
塗装に有機溶剤系塗料を用いるときには、上述したとおり装置に蓄積した電荷は、より電気抵抗値の低い回転霧化頭14及びエアモータ12から電気抵抗体41を介して接地ポイントP1へ流れる。このとき、回転霧化頭14及びエアモータ12は、電気抵抗体41による電圧降下分だけ高い電位に保たれる。例えば、抵抗値を2MΩとした場合、電流が30μAだけ流れるとすると、回転霧化頭14及びエアモータ12は−60kVに保たれる。このため、外部電極から回転霧化頭14へ流れるコロナ放電電流は約30μAとなる。この状態においては、回転霧化頭14の電位と外部電極19の電位とがほぼ等しくなるから、スパークの発生を防止することができる。この結果、有機溶剤系塗料を塗装する場合に外部電極19の印加電圧を低く制限する必要がなくなり、塗料に応じて電圧を変更することなく、水系塗料と同じ印加電圧(例えば−60kV)のままで塗装を行うことができる。このように、電気抵抗値を回転霧化頭14及びエアモータ12の目標設定電位に応じて決定することができる。
【0044】
以上のとおり、本実施形態の静電塗装装置100は、スパークの発生を防止することができ、塗料に応じて印加電圧を変更する必要がない。従来、有機溶剤系塗料においてスパーク防止の観点から、印加電圧を低くして塗着効率を犠牲にしてきたが、本実施形態では印加電圧を低くしなくともスパークの発生を防止できるため、実質的に塗着効率を向上させることができる。また、この塗着効率の向上によって、静電塗装装置100自体の汚れを防止することもできる。
【0045】
<第2の実施形態>
続いて、図2に示した第2の実施形態の静電塗装装置100について説明する。この静電塗装装置100の基本的な構成は図1に示した第1の実施形態と同じである。異なる点は電気抵抗体41から接地ポイントP1の間に第2電流計42を設けた点である。この第2電流計42は、回転霧化頭14及びエアモータ12から電気抵抗体を介して接地ポイントP1へ至る電気的な回路を流れる電流値を測定し、その結果をコントローラ50へ出力する。第2電流計42の配置位置は、この電気的回路の電流値の変化が検出できるのであれば、特に限定されることなく、電気抵抗体41の電流を計測するものであってもよい。
【0046】
第2電流計42の計測する電流は、回転霧化頭14及びエアモータ12に蓄積された電荷の流れである。第2電流計42が閾値以上の電流を検出する場合は、静電塗装装置100に蓄積した電荷が、塗料供給系30に流れずに電気抵抗体41側へ流れている状態である。とすれば、塗料供給系30側にある塗料(塗装されている塗料)は、電気抵抗体41よりも高い抵抗値を有する有機溶剤系塗料であると判断できる。他方、第2電流計42が閾値以上の電流を検出できないときには、塗料供給系側にある塗料(塗装されている塗料)は、電気抵抗体41よりも低い抵抗値を有する水系塗料であると判断できる。このように、コントローラ50は、第2電流計42が検出する電流値に基づいて、塗装に用いられている塗料の種類を判断できる。
【0047】
また、コントローラ50は、回転霧化頭14に蓄積される電荷を管理することができる。具体的に、コントローラ50が有機溶剤系塗料であると判断した場合の管理動作を説明する。まず、コントローラ50は、第2電流計42が計測した電流値を取得する。他方、コントローラ50は外部電極19に供給した電流の電流値を取得する。もし、外部電極19へ供給する電流が増加しているにもかかわらず、第2電流計42の検出する電流値が増加しない場合、被塗物が外部電極19に異常に接近していることが予測できる。第2電流計41が検出すべき電流が、回転霧化頭14又はエアモータ12に蓄積している可能性があるからである。このような状態を判断したコントローラ50は、外部電極19への電流の供給を停止する。このまま外部電極19がコロナ放電を続ければスパークの危険があるからである。このように、第2電流計42の検出した電流値を利用した保安管理を行うことができる。
【0048】
<第3の実施形態>
次に、図3に示した第3の実施形態について説明する。図2に示した第2の実施形態と比較すると、本実施形態は、異なる点は塗料供給経路30に設けられた金属リング31と接地ポイントP2との間に第1電流計32を有している。この第1電流計32は、塗料供給系30内を搬送される塗料を介して流れる電流の電流値を計測する。
【0049】
この第1の電流計32が検出した電流値に基づいて、第2の実施形態よりも直接的に塗装されている塗料が水系塗料であるか、又は有機溶剤系塗料であるかの判断を行うことができる。具体的には、第1電流計32が閾値以上の電流を検出する場合には、電気抵抗体41よりも低い抵抗の水系塗料が塗装されていると判断できる。また、第1電流計32が閾値以下の電流を検出する場合には電気抵抗体41よりも高い抵抗の有機溶剤系塗料が塗装されていると判断できる。
【0050】
さらに、コントローラ50は、第2電流計42が検出する電流値と、第1電流計32が検出する電流値と、コントローラ50が外部電極19へ供給する電流の電流値とに基づいて被塗物側へ流れる電流を管理することができる。
【0051】
具体的にコントローラ50が有機溶剤系塗料であると判断した場合における管理動作を説明する。まず、コントローラ50は、第2電流計42が計測した電流値を取得し、同じく第1電流計32が計測した電流値を取得する。他方、コントローラ50は外部電極19に供給した電流の電流値を取得する。続いて、コントローラ50は第1電流計32の電流値と第2電流計42の電流値を比較する。もし、外部電極19へ供給する電流が増加し、これに応じて第1電流計32が検出する電流値も増加しているにもかかわらず、第2電流計42の検出する電流値が増加しない場合、被塗物が外部電極19に異常に接近していることがより確実に予測できる。第2電流計41が検出すべき電流が、回転霧化頭14又はエアモータ12に蓄積している可能性があるからである。この可能性は、第1電流計32が検出する電流計の増加の程度を参照することにより、その原因が被塗物の接近によるものか否かを確かめることができる。このような状態を判断したコントローラは、外部電極19への電流の供給を停止する。このまま外部電極19がコロナ放電を続ければスパークの危険があるからである。このように、第1電流系32の検出した電流計及び第2電流計42の検出した電流値を利用して、より確実な保安管理を行うことができる。
【0052】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電塗装装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の静電塗装装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明の静電塗装装置の第3の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
1…静電塗装装置
11…筐体(塗装装置本体)
12…エアモータ
121…エアモータ本体
122…エアタービン
123…静電ベアリング
13…回転軸
14…回転霧化頭
141…平滑面
142…塗料放出端縁
15…フィードチューブ
16…シェーピングエアリング
161…エア噴出口
17…電極取付けリング
18…電極支持棒
19…外部電極
20…高圧発生器
21…電流計
22…スイッチ
30…塗料供給系
31…金属リング
32…第1電流計
41…電気抵抗体
42…第2電流計
50…コントローラ
Claims (8)
- 塗装装置本体に対して回転可能に設けられ先端外周縁が塗料放出端縁とされた回転霧化頭と、前記回転霧化頭に塗料を供給する塗料供給系と、前記回転霧化頭の周囲に設けられ前記回転霧化頭の塗料放出端縁から放出された塗料粒子を帯電すべく外部から高電圧が印加される外部電極とを有する静電塗装装置であって、
前記回転霧化頭と塗料供給系とを電気的に絶縁し、
少なくとも前記回転霧化頭を電気抵抗体を介して接地するとともに、前記塗料供給系を接地する静電塗装装置。 - 前記電気抵抗体の電気抵抗値は、前記塗料供給系により供給される有機溶剤系塗料のうち最小の電気抵抗値よりも小さい請求項1記載の静電塗装装置。
- 前記電気抵抗体の電気抵抗値は、前記塗料供給系により供給される水系塗料のうち最大の電気抵抗値よりも大きい請求項2記載の静電塗装装置。
- 前記電気抵抗体の電気抵抗値は、2MΩ以上20GΩ以下である請求項1記載の静電塗装装置。
- 前記外部電極への印加を制御するコントローラと、
前記接地された回転霧化頭に流れる電流の電流値を検出し、当該検出した電流値を前記コントローラへ出力する第2電流計とを、さらに有する請求項1〜4のいずれかに記載の静電塗装装置。 - 前記塗料供給系の電流値を検出し、当該検出した電流値を前記コントローラへ出力する第1電流計を、さらに有する請求項5記載の静電塗装装置。
- 前記コントローラは、当該コントローラが検出した前記外部電極の電流値と、前記第2電流計により検出された電流値とに応じて、前記外部電極の印加を制御する請求項5又は6記載の静電塗装装置。
- 前記コントローラは、当該コントローラが検出した前記外部電極の電流値と、前記第2電流計により検出された電流値と、前記第1電流計により検出された電流値とに応じて、前記外部電極の印加を制御する請求項6記載の静電塗装装置。
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