JP3800974B2 - 車輌用樹脂部品及び車輌用樹脂部品の製造方法 - Google Patents

車輌用樹脂部品及び車輌用樹脂部品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、補強リブ部に含まれる強化繊維を、補強リブ部の延設方向に配向させることにより、クリープ強度を向上させた車輌用樹脂部品及び車輌用樹脂部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製車輌部品(フード、ドア、フェンダ、バックドア、トランクドア等)においては、高強度の樹脂を採用したり、補強リブ部を設けることによって、その強度の向上が図られている。特に図5(a)(b)に示したバックドアのように、開閉動作を補助するガスステイ等が設けられている場合には、ガスステイ取り付け位置付近に大きな力が加わるため、より高い強度が要求される。
このため、従来は、車輌部品を構成する樹脂に強化繊維を混入したり、補強リブ部を太くするといった技術が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂に強化繊維を充填する場合、補強リブ部には繊維長2mm〜15mm程度のチョップド繊維しか充填されず、十分な強度を確保することができないという不都合があった。すなわち、バックドア等の一般部(補強リブ部以外の部分)の樹脂には、ガラス繊維(径約28μ、繊維長2mm〜100mm)のうち長さ80mm〜100mm程度の長繊維を充填させることができるが、補強リブ部の樹脂には短い(繊維長2mm〜15mm)繊維しか充填させることができなかった。また、補強リブ部の箇所を増やしたり、補強リブ部を太くすると、外観品質の低下を招くこととなってしまう。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、補強リブ部を太くすることなく、剛性、強度を向上させ、変形の少ない車輌用樹脂部品及び車輌用樹脂部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、発明によれば、一般部と補強リブ部とを含む車輌用樹脂部品であって、補強リブ部には、長さ15mm以上の強化繊維が、主として補強リブ部の延在方向に配向した状態で充填されている車輌用樹脂部品が提供される。
また、発明によれば、一般部と補強リブ部とを含む車輌用樹脂部品の製造方法であって、長さ15mm以上の強化繊維を含む樹脂シートを、車輌用樹脂部品の成形型にセットし、これと相前後して樹脂シートを加熱し、これを加圧したのちに冷却硬化する車輌用樹脂部品の製造方法が提供される。
【0006】
この発明によれば、補強リブ部には、長さ15mm以上の強化繊維が、主として補強リブ部の延在方向に配向した状態で充填される。加圧充填される強化繊維は、受圧面の向き及びその受圧面積の存在比率に応じて圧力を受け、より多くの圧力を受けた方向へ移動する。繊維長が15mm以上の強化繊維においては、長さ方向に沿って受圧面が連続して存在し、この方向の受圧面積の存在比率が大きくなる傾向がある。このため、本発明の強化繊維は長さ方向に対して略垂直方向に移動しながら補強リブ部に充填される。この充填中に受ける圧力の作用により、強化繊維は、補強リブ部の延在方向に配向した状態で充填される。
【0007】
これにより、補強リブ部の延在方向を中心軸として、この中心軸から外周面(車輌用樹脂部品の表面)を結ぶ方向におけるクリープ強度が強化された車輌用樹脂部品を提供することができる。また、補強リブ部を太くすることなく車輌用樹脂部品の強度を向上させることができるため、変形の少ない外観品質の高い車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0008】
本発明における強化繊維とは、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、アラミド繊維、全芳香性ポリエステル繊維等の有機繊維、金属繊維その他の繊維をいう。
(2)上記目的を達成するために、発明によれば、前記強化繊維の長さが、30mm〜80mmである車輌用樹脂部品が提供される。
また、発明によれば、強化繊維の長さが、30mm〜80mmである車輌用樹脂部品の製造方法が提供される。
【0009】
この発明によれば、硬化前の樹脂のたわみの程度を適当に制御することができるため、成形型に樹脂をセットする作業における樹脂の取り扱いが容易となり、作業効率を向上させることができる。
これにより、発明において、生産効率の高い車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0010】
(3)上記目的を達成するために、発明によれば、強化繊維の長さの分布が平均繊維長から±5mm以内である車輌用樹脂部品が提供される。
また、発明によれば、強化繊維の長さの分布が平均繊維長から±5mm以内である車輌用樹脂部品の製造方法が提供される。
この発明によれば、平均繊維長の分布が小さいため、各強化繊維の長さがほぼ等しく、各強化繊維が充填時に受ける圧力の作用もほぼ等しくなる。よって、短い強化繊維が選択的に補強リブ部に充填される傾向を抑制することができる。すなわち、繊維長が15mm以上又は30mm〜80mmの強化繊維が補強リブ部の全体に均等に存在し、補強リブ部の延在方向に配向した状態で充填される。
これにより、補強リブ部の延在方向を中心軸として、この中心軸から外周面(車輌用樹脂部品の表面)を結ぶ方向におけるクリープ強度が均等に強化された車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0011】
(4)上記目的を達成するために、発明によれば、強化繊維の繊維径が10μm〜18μmである車輌用樹脂部品が提供される。
また、発明によれば、強化繊維の繊維径が10μm〜18μmである車輌用樹脂部品の製造方法が提供される。
この発明によれば、強化繊維の繊維径を10μm〜18μmとすることにより、充填された強化繊維が折れたり絡んだりする傾向を抑制するとともに、補強リブ部における強化繊維の配向(補強リブ部の延在方向への配向)の傾向を向上させ、補強リブ部に強化繊維を均一に分布させることができる。
これにより、補強リブ部全体の強度をむらなく向上させ、全体が均一な強度である車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0012】
(5)上記目的を達成するために、発明によれば、補強リブ部における強化繊維の流動長が、一般部における強化繊維の流動長に対して5倍〜20倍である車輌用樹脂部品が提供される。
また、発明によれば、補強リブ部における強化繊維の流動長が、一般部における強化繊維の流動長に対して5倍〜20倍である車輌用樹脂部品の製造方法が提供される。
この発明によれば、補強リブ部の流動長を一般部の流動長の5〜20倍とすることにより、発明における強化繊維が補強リブ部全体に均一に分布する。
これにより、補強リブ部全体の強度をむらなく向上させ、全体が均一な強度である車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0013】
本発明において、補強リブ部の流動長とは樹脂(強化織物等を除く)の充填位置から補強リブ部の先端(車輌用樹脂部品の表面)までの長さをいい、一般部の流動長とは一般部の板厚をいう。
【0014】
本発明において、補強リブ部の流動長を一般部の流動長に対して5倍未満とした場合には、補強リブ部の深さが浅く車輌用樹脂部品の強度を十分に確保することができない。一方、補強リブ部の流動長を一般部の流動長に対して20倍より長くした場合には、補強リブ部が深すぎて強化繊維の均一な充填を確保することができない。こうした理由から、補強リブ部の流動長を、一般部の流動長に対して5倍〜20倍とすることがより好ましい。
【0015】
【発明の効果】
発明によれば、外観品質が高く、高強度の車輌用樹脂部品を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の車輌用樹脂部品の成形工程を説明するための図、図2(a)、(b)及び(c)は車輌用樹脂部品を説明するための図、図3はガラス繊維長に対する充填性の評価を示す図、図4はガラス繊維長に対する充填性及びハンドリング性の評価を示す図である。
車輌用樹脂部品の製造方法
まず最初に、図1を参照しながら本実施形態の車輌用樹脂部品1の成形工程を説明する。ただし、本実施形態の車輌用樹脂部品1は、一般的な成形方法を用いて製造することができ、以下の成形方法は本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0017】
図1に示す車輌用樹脂部品1の成形型4は、少なくとも、相対的に近接離反が可能に組み合わせられた一対の金型41及び金型42を有し、上型となる金型41は図外の型締め装置により下型42に対して上下移動する。金型41と42との間には樹脂シート3が配置される。型締めされた金型41と42との間には密閉された空間が形成され、加熱・加圧処理が行われ、車輌用樹脂部品1が成形される。
【0018】
この一対の金型41及び42の間に樹脂シート3を挟み、一般的な成形条件として約200℃〜220℃に加熱し、1200から2000t/mに加圧する。この樹脂シート3は車輌樹脂部品1の面に沿って、すなわち面平行となるように配置された強化織物32と樹脂部31とを有している。強化織物32は樹脂部31に挟まれた状態となっている。樹脂部31はシート状であり、強化繊維2がランダムな状態で混在している。また、樹脂部31に含まれる強化繊維2には繊維長が50mm、繊維径15μmのガラス繊維を採用し、その繊維長の分布は±3mmとした。
【0019】
加熱により溶融された樹脂部31は流動化し、矢印p方向の圧力を受けて金型42の補強リブ部の凹部43にも充填される。補強リブ部の凹部43は一般部(車輌用樹脂部品の補強リブ部以外の部分)よりも深さがある。本実施形態においては、一般部の流動長r(板厚から強化織物32の厚さを除く)と、補強リブ部の流動長q(補強リブ部の凹部43の深さから強化織物32の厚さを除く)との比を、3:20とした。
【0020】
車輌用樹脂部品
このように製造された車輌用樹脂部品1を図2に基づき説明する。図2(a)は図1で説明した成形工程により成形された車輌用樹脂部品1である。この車輌用樹脂部品1は一般部11と補強リブ部12とを有している。
図1で示したように樹脂シート3は加熱され圧力を受けて補強リブ部の凹部43に充填される。本実施形態の補強リブ部12には、長さ約50mmの強化繊維2が、主として補強リブ部12の延在方向(図2(a)中、手前方向から奥方向へ向かった方向)に配向した状態で充填されている。樹脂シート3に含まれ、加圧充填された強化繊維2は、受圧面の向き及び受圧面積の存在比率に応じて補強リブ部12の成形型内を移動する。繊維長が15mm以上、特に長さ50mm程度の強化繊維2においては、受圧面が長さ方向に沿って連続的に存在し、この方向の受圧面積の存在比率が大きくなる傾向がある。これにより、強化繊維2は長さ方向に対して略垂直方向に移動しながら補強リブ部12に充填される。この充填中に受ける圧力の作用により、強化繊維2は、補強リブ部12の延在方向(図2(a)中、手前方向から奥方向へ向かった方向)に配向した状態で充填されることとなる。
一般部11に含まれる強化繊維2の配向状態を図2(b)に示し、補強リブ部12に含まれる強化繊維2の配向状態を図2(c)に示した。図2(b)は図2(a)に示すX−X断面における強化繊維2の配向状態を示す。図2(b)に示すように一般部11の強化繊維2はランダムな方向に分布している。図2(c)は図2(a)に示すY−Y断面における強化繊維2の配向状態を示す。図2(c)に示すように補強リブ部12の強化繊維2は補強リブ部の延在方向に沿って配向している。
【0021】
補強リブ部12において、繊維長の長い強化繊維2がこのような配向をすることにより、補強リブ部12の延在方向を中心軸として、この中心軸から外周面(車輌用樹脂部品の表面)を結ぶ方向(図2(a)中矢印aで示した方向)におけるクリープ強度が強化された車輌用樹脂部品1を提供することができる。
【0022】
本実施形態における車輌用樹脂部品1によれば、補強リブ部12を太くすることなく車輌用樹脂部品1の強度を向上させることができるため、外観品質の高い車輌用樹脂部品1を提供することができる。
【0023】
この種の車輌用樹脂部品1は、フード、フロントドア、リヤドア、バックドア、トランクドアその他の車輌ボディを構成する車輌用部品に用いることができ、特にガスステイやヒンジ等の応力を受けるバックドア等、剛性、強度が要求される開閉部品に適している。
【0024】
車輌用樹脂部品の特性
本実施形態における車輌用樹脂部品1について、その特性を評価するため、実施例1〜3と比較例1〜12との比較において、強度評価、ハンドリング性評価、充填性評価を行った。
本実施形態に係る試料として、実施例1、実施例2、実施例3の車輌用樹脂部品1をそれぞれ得た。本実施形態の車輌用樹脂部品1は、車体パネルサッシュ部に用いられる部品1である。樹脂にはガラス繊維2を充填した。
【0025】
[ 試料の作成 ]
実施例1の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長50mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0026】
実施例2の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長30mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0027】
実施例3の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長80mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0028】
本実施形態との比較試料として、比較例1〜比較例12の車輌用樹脂部品1をそれぞれ得た。
【0029】
比較例1の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:5であるものにおいて、平均繊維長50mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0030】
比較例2の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長5mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0031】
比較例3の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長120mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0032】
比較例4の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長50mm、繊維長分布幅±10mm、繊維径が15μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0033】
比較例5の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長50mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0034】
比較例6の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長30mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0035】
比較例7の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長80mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0036】
比較例8の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長120mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0037】
比較例9の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長50mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0038】
比較例10の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長5mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0039】
比較例11の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長80mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0040】
比較例12の車輌用樹脂部品:
車体パネルサッシュ部の一般面とリブとの流動長比率が3:20であるものにおいて、平均繊維長120mm、繊維長分布幅±3mm、繊維径が30μmのガラス繊維40%強化ポリプロピレンマトリックスシートを成形型にセットし、このシートの面沿い方向にガラス繊維織物を充填し、加熱条件220℃、加圧条件1500t/mで成形した。
【0041】
[ 試験の結果 ]
実施例1〜3と比較例1〜12について、その成形条件とクリープ強度、充填性、ハンドリング性を表1にまとめた。
【表1】
Figure 0003800974
【0042】
表1を参照しつつ、各実施例、各比較例について強度、充填性、ハンドリング性を評価する。
【0043】
<強度試験>
本実施形態における車輌用樹脂部品1の強度を評価するため、実施例1〜3及び比較例1〜12について、クリープ試験を行い強度を評価した。
【0044】
クリープ試験は、車輌用樹脂部品1の上辺カット品を試料とした。この試料の設定スパン(試料の両端をそれぞれ支える支点の間の距離)を600mmとし、そのスパン幅の略中央に荷重13.3kgをかける。温度を80℃に保った状態で経時的な形状の変化量(mm)を相対的変化量としてプロットし、その経時的な相対的変化量に基づいてクリープ強度を評価した。その結果を「良」から「悪」の5段階に区分し(評価:(良)◎>○>△>□>×(悪))、クリープ試験結果として表1の「クリープ強度」に整理した。
【0045】
この結果から、本実施例1、2、3の車輌用樹脂部品1は良い(高い)クリープ強度を有していることが判明した。各実施例を詳細に検討する。実施例1と比較例1とを比べると、一般部とリブ部との流動長比率を3:20(5〜20倍)とすることでクリープ強度の向上がみられた。また、実施例1〜3と比較例2とを比べると平均繊維長を15mm以上とすることでクリープ強度の向上がみられた。また、実施例1と比較例4とを比較すると、繊維長分布幅を±3(±5以内)とすることでクリープ強度の向上がみられた。さらに、実施例1、3と比較例9、11とを比較すると、繊維径を15μm(10μm〜18μm)とすることでクリープ強度の向上がみられた。
【0046】
<充填性>
本実施形態における車輌用樹脂部品1の充填性を評価するため、実施例1〜3及び比較例1〜12について、充填性試験を行い充填性を評価した。
充填性とは、成形品に充填された強化繊維の分布の程度を示し、充填口から遠いリブ部まで均一に強化繊維(グラスファイバー:GF)が充填されたことを評価する指標である。充填性の評価は、成形品の各部分ごとのグラスファイバーの量を測定することによって行う。具体的には、リブ部を含めて各部分ごとの総量を測定した後、灰化処理し、残ったグラスファイバーの重量を測定し、重量比を算出する。
【0047】
充填性について、その結果を「良」から「悪」の5段階に区分し(評価:(良)◎>○>△>□>×(悪))、充填性試験結果として表1の「充填性」に整理した。
【0048】
この結果から、本実施例1、2、3の車輌用樹脂部品1は良い(高い)充填性を有していることが判明した。各実施例を詳細に検討する。実施例1と比較例4とを比べると、繊維長分布幅を±3(±5以内)とすることで充填性の向上がみられた。実施例1、3と比較例9、11とを比較すると、繊維径を15μm(10μm〜18μm)とすることで充填性の向上がみられた。
【0049】
また、実施例1〜3及び比較例1〜12の充填性について、図3に整理した。図3によれば、織物を面沿い方向に充填した場合、強化繊維(グラスファイバー)の繊維径を15μmとすることで(実施例1、2、3、比較例2,3、図3中▲−▲)、繊維径を30μmとする(比較例10、9、11、12図3中●−●)よりも充填性が向上することがわかった。この結果により、繊維径を細くすることによって充填性を向上させることができる。また、このように繊維径を15μmとした場合では、織物がない場合と同等の充填性を示す。
【0050】
<ハンドリング性>
次に、本実施形態における車輌用樹脂部品1のハンドリング性を評価するため、実施例1〜3及び比較例1〜12について、ハンドリング試験を行い、ハンドリング性を評価した。
【0051】
ハンドリング性とは、成形型に樹脂をセットする作業における樹脂の取り扱いの容易さを官能評価する指標である。本ハンドリング試験においては、成形前の樹脂シート3を220℃、2分間(min)加熱する。この加熱は、予熱ラインから成形型にセットするまで、又はこの時間や加熱工程の距離に樹脂シート3が受ける熱量を想定して設定した。この加熱処理の後、作業者が保護具を介して樹脂シート3を持ち運んだ際の作業のし易さを官能的に評価した。その結果を「良」から「悪」の5段階に区分し(評価:(良)◎>○>△>□>×(悪))、ハンドリング性の試験結果として表1の「ハンドリング性」に整理した。
【0052】
この結果から、本実施例1、2、3の車輌用樹脂部品1は良い(高い)ハンドリング性を有していることが判明した。各実施例を詳細に検討する。実施例1〜3と比較例2とを比べると平均繊維長を15mm以上とすることでハンドリング性の向上がみられた。
【0053】
<充填性とハンドリング性とのバランス>
車輌用樹脂部品1の充填性とハンドリング性について、図4にまとめた。充填性は強化繊維(ガラス繊維)の繊維長が短かければ、充填性は向上する傾向がある。一方、ハンドリング性は強化繊維(ガラス繊維)の繊維長が長ければ、ハンドリング性は向上する傾向がある。このように充填性とハンドリング性とはガラス繊維長に対して反対の評価傾向がみられる。図4を検討すると、充填性が良好であり、かつハンドリング性が良好であるのは、実施例1、2、3である。このように、ハンドリング性と充填性とのバランスの観点から、強化繊維(ガラス繊維)の繊維長を検討すると、強化繊維の繊維長は、15mm以上、好ましくは30〜80mm以上であることが適当である。
【0054】
なお、以上説明した実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施例に開示された各要素および各数値は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)(b)(c)は車輌用樹脂部品を説明するための図である。
【図2】本実施形態の車輌用樹脂部品の成形工程を説明するための図である。
【図3】ガラス繊維長に対する充填性の評価を示す図である。
【図4】ガラス繊維長に対する充填性及びハンドリング性の評価を示す図である。
【図5】図5(a)はバックドア構造を示す図であり、図5(b)はバックドアのガスステイ取付部を示す図である。
【符号の説明】
1…車輌用樹脂部品、バックドア
11…一般部
12…補強リブ部
13…配向された強化繊維の中心軸
2…強化繊維、ガラス繊維
3…樹脂シート
31…樹脂部、樹脂
32…強化織物
4…成形型
41、42…金型
43…補強リブ部の凹部
44…補強リブ部の先端部
45…一般部の凹部

Claims (6)

  1. 一般部と補強リブ部とを含み、前記補強リブ部における強化繊維の流動長が前記一般部における強化繊維の流動長に対して5倍〜20倍である車輌用樹脂部品であって、
    前記補強リブ部には、長さ15 mm 以上であって、長さの分布が平均繊維長から±5 mm 以内の強化繊維が、前記補強リブ部の延在方向に配向した状態で充填されている車輌用樹脂部品。
  2. 前記強化繊維の長さが、30mm〜80mmである請求項1記載の車輌用樹脂部品。
  3. 前記強化繊維の繊維径が、10μm〜18μmである請求項1又は2に記載の車輌用樹脂部品。
  4. 一般部と補強リブ部とを含み、前記補強リブ部における強化繊維の流動長が前記一般部における強化繊維の流動長に対して5倍〜20倍である車輌用樹脂部品の製造方法であって、
    長さが15mm以上であって、長さの分布が平均繊維長から±5 mm 以内である強化繊維を含む樹脂シートを前記車輌用樹脂部品の成形型にセットし、これと相前後して前記樹脂シートを加熱し、これを加圧したのちに冷却硬化する車輌用樹脂部品の製造方法。
  5. 前記強化繊維の長さが、30mm〜80mmである請求項4に記載の車輌用樹脂部品の製造方法。
  6. 前記強化繊維の繊維径が、10μm〜18μmである請求項4又は5のいずれかに記載の車輌用樹脂部品の製造方法。
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