JP3799729B2 - ホログラム積層体の製造方法 - Google Patents

ホログラム積層体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材にホログラムが配されたホログラム積層体によって光源からの情報を含む光を回折させて観察者に視認させる表示装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のホログラム材料やレーザ技術の進展により、ホログラムを用いた製品が増加している。例えば、情報を含む光を回折し観察者に情報を表示するホログラフィック表示装置などにおいて、ホログラムは光学素子として用いられている。IDカードやクレジットカードの偽造防止用マークや、装飾用ホログラム、ホログラムカレンダーなどでもイメージを記録したホログラムが用いられている。
【0003】
具体的例として以下のものがある。自動車等の車両の運転者に情報を表示する方法として、ヘッドアップディスプレイ(以下HUDという)などの表示装置が最近用いられるようになっている。これは、液晶表示装置等の情報投射手段から投射された光学的情報を、自動車の風防ガラス等に組み込まれたホログラムやハーフミラー等からなるコンバイナに映し、運転者が運転状態からほとんど視点を動かすことなく情報を読み取れるようにしたものである。
【0004】
特に、コンバイナとしてホログラムを用いたものは、運転者に向かって光学的情報を回折する機能とともにレンズ機能等を併有しうるので、光学的情報を運転者の視野方向に回折でき、また、他にレンズ等の光学系を使用せずに任意の位置に結像させうる。また、回折スペクトルの半値幅が狭いため、前景輝度を損なわずに高輝度の表示像が得られるという特徴を持ち、表示装置のコンバイナとしては有効である。
【0005】
図17は、このようなHUDの一例を示す概念図である。光源6から発し、レンズ系4を介して透過型液晶表示素子5を通過した表示すべき情報を含む光3は、車体の風防ガラス7に備えられたホログラム2に照射され、回折されて運転者に観察位置1で視認される。上記レンズ系4はコリメータとしての機能を持つものである。このとき、風防ガラス7は合わせガラスからなり、ホログラム2はこの合わせガラス内に封入され、全体としてホログラム積層体が構成されている。また、ホログラム2は波長選択機能を持ち、多重露光したホログラムを用いることによって、希望する多色の像が表示可能となる。例えば、速度表示8を緑色、警告表示9を赤色とすることによって、運転者に対してより的確に情報を伝達することが可能となる。
【0006】
かかるホログラムの材料としては、古くからホログラム材料として知られる重クロム酸ゼラチン(DCG)や近年開発が進んだフォトポリマーが考えられる。DCGは光学特性的には優れるものの水分に弱いという致命的欠陥があり、また材料の調合から現像に至るまで多くの工程(ウェットプロセス)を必要とする。一方、フォトポリマー材料の場合はレーザ光によるホログラムの露光以外には、紫外線照射等を行う程度であり、完全なドライプロセスが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フォトポリマーからなるホログラムは有機物であるための欠点として、熱膨張係数が大きいことが挙げられる。そのため、ホログラムを使用する環境の温度変化が激しいと、ホログラムの再生波長が可逆的に変化するという問題があった。
【0008】
例えば自動車に備えて用いる前述のHUDの場合では、ホログラムがおかれる環境は、−20〜−30℃の低温から80℃以上の高温までといった、広い温度範囲にわたる。このように環境温度が大きく変化すると、ホログラム材料の熱膨張のため、ホログラム内部に形成されている回折格子の間隔が変化し、それに伴い再生波長が変化する。可逆的な変化であるため、温度が常温に戻れば再生波長も設定の波長に戻るが、ホログラムの再生波長が使用中に変化すると、設定された情報表示源の光の波長とずれるため、表示像が暗くなり視認性が悪くなる問題があった。
【0009】
図10に従来のホログラム積層体の断面図を示す。ここでホログラム11はガラス基板23および23’間にポリビニルブチラール(PVB)中間膜17とともに封入され、合わせガラス構造となっている。詳細には、ホログラム11の一方の面は接着剤16でガラス基板23に接着されており、もう一方の面は中間膜17に含まれる可塑剤によりホログラムの特性が影響されないようにするバリヤフィルム14’(この例ではポリビニルアルコール(PVA)フィルムを使用)を介して中間膜17に接合されている。
【0010】
風防ガラスには、自動車用安全ガラスとしての安全基準が定められている(例えばJIS R3211)。したがって、上記のようにホログラムを合わせガラスに封入した場合にも、当然安全基準を満足しなければならない。そのために、ホログラム11はガラス基板23に接着剤16によって接着される。
【0011】
図15にこのホログラムの再生波長の温度特性を示す。室温付近では約543nmの再生波長を示している。室温より低温側では変化量は3nm程度であり表示像の輝度に大きな影響は与えないが、高温側では約40℃の温度上昇に対し再生波長は8nm長波長化している。変化率は0.20nm/℃である。室温から80℃までの60℃の温度上昇では12nmもの波長変化が生ずる。
【0012】
図16に、液晶表示素子のバックライト等として利用される陰極管を光源とした場合における、ホログラムの再生波長と表示輝度との関係の理論予測値を示す。波長の整合した543nmの輝度を100%として相対比較している。3nm程度の変化では表示輝度の低下は10%程度であり充分許容されるが、12nmも波長シフトすると表示輝度は20%程度まで劣化することがわかる。
【0013】
このような温度変化による再生波長のシフトは、上記HUDのみならず、装飾用のホログラム積層体にも悪影響を与える。例えば3次元像などを記録して意匠性を高めた車両用のホログラムオーナメントや、ショーウィンドウや街頭広告などに用いる装飾ホログラムでは、ホログラムの再生波長の変化により、記録した像の色調が変化する。意匠性が重視されるオーナメントなどの場合、色調は形状と同様に非常に重要であり、色が変わるとその意匠性を大きく損なう。
【0014】
また、ホログラムの再生波長に生じる問題点には、作製上の理由から生じる問題点がある。ホログラムはレーザ光を干渉させて記録するため、その再生波長はレーザ光の波長に依存する。一般にはレーザ光の波長は飛び飛びの値であることが多いため、任意の波長のホログラムを作製するには制限があった。色素レーザのように波長可変のレーザもあるが、きわめて高価でありカバーする波長範囲も限られている。また、露光角度と再生角度とを変える手法もあるが角度範囲に限界があったり、収差が発生するなどの欠点もあり、任意の再生波長を得る充分な手段はなかった。
【0015】
本発明の目的は、従来技術が有していた前述の課題を解決することにあり、従来知られていなかったホログラム積層体の製造方法を新規に提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材とホログラムと被接触媒体とが積層されたホログラム積層体の製造方法であって、
前記ホログラムは、少なくともバインダーポリマー、アクリル系モノマーおよび重合開始剤から構成されるアクリル系フォトポリマーからなり、前記被接触媒体は、少なくとも重合開始剤、粘着剤または前記バインダーポリマーと同系統のポリマーからなり、
前記ホログラムの少なくとも一方の面に前記被接触媒体が当接される工程と前記ホログラムと前記被接触媒体を加熱処理が施され、ホログラム内部の揮発成分外部に拡散させる工程と前記加熱処理が施されたホログラムを保持用基材に積層させる工程とを含むことを特徴とする
ホログラム積層体の製造方法を提供する
【0017
【0018
【0019】
【発明の実施の形態】
(積層例a)
図1は、本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。ホログラム11は、粘着剤12を介して基材13に積層されている。ホログラム11の基材13と反対側の面にはバリヤフィルム14’が積層されていて、さらに接着剤15を介して基材13’が積層されている。こうして、ホログラム積層体10aは、基材13/粘着剤12/ホログラム11/バリヤフィルム14’/接着剤15/基材13’からなる積層体として構成されている。
【0020】
上記のように、ホログラム11と基材13との間には粘着剤12が介在されている。こうして、粘着剤12が被接触媒体としてホログラム11に当接し、さらに基材13が積層された状態で、ホログラム11/粘着剤12/基材13に加熱処理が施されている。その結果、ホログラム内部の揮発成分が粘着剤中に拡散し、ホログラムの熱膨張特性が改善され、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。
【0021】
(積層例b)
図2は、本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。ホログラム11は、粘着剤12を介して基材13に積層されている。ホログラム11の基材13と反対側の面には、粘着剤12を介して基材13’が積層されている。こうして、ホログラム積層体10bは、基材13/粘着剤12/ホログラム11/粘着剤12/基材13’からなる積層体として構成されている。この場合の積層体も、基材とホログラムとの間に粘着剤が介在された状態で、加熱処理されたものである。その結果、ホログラム内部の揮発成分が粘着剤中に拡散し、ホログラムの熱膨張特性が改善され、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。
【0022】
(積層例c)
図3は、本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。ホログラム11にはカバーフィルム14があらかじめ積層されており、カバーフィルム14が積層されていない側の面が、粘着剤12を介して基材13に積層されている。こうして、ホログラム積層体10cは、基材13/粘着剤12/ホログラム11/カバーフィルム14からなる積層体として構成されている。この場合の積層体も、基材とホログラムとの間に粘着剤が介在された状態で、加熱処理されたものである。その結果、ホログラム内部の揮発成分が粘着剤中に拡散し、ホログラムの熱膨張特性が改善され、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。
【0023】
(積層例d)
図4は、本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。ホログラム11は、このホログラム11に含まれるバインダーポリマーと同系統のポリマーからなる被接触媒体層20、さらに粘着剤12を介して基材13に積層されている。ホログラム11の基材13と反対側の面には、カバーフィルム14が積層されている。さらに、基材13からカバーフィルム14までの積層体を包み込む形に基材13”が設けられている。こうして、ホログラム積層体10dは、基材13”/基材13/粘着剤12/被接触媒体層20/ホログラム11/カバーフィルム14からなる積層体として構成されている。上記ホログラム11は、被接触媒体層20に当接した状態で加熱処理が施され、揮発成分を拡散させたものである。
【0024】
図5は、図4のホログラム積層体の加熱処理時の積層形態10d’の一例を示す概略断面図である。ホログラム11は被接触媒体層20を介し、さらに粘着剤12を介して基材13に積層されている。この際、ホログラムの一方の面は空気に曝されていてもよいし保護フィルム(図示せず)に覆われていてもよい。この積層体10d’を加熱処理すると、室温付近での熱膨張に寄与するホログラム内部の揮発成分(未重合モノマーや不純物)が被接触媒体層20中に拡散する。
【0025】
この結果、ホログラムの熱膨張特性が改善され、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。この加熱処理の後、カバーフィルム14を積層し、周囲に基材13”を射出成形などにより成形すれば、図4のホログラム積層体10dが得られる。
【0026】
図6は、図4のホログラム積層体の加熱処理時の積層形態10d”の別の例を示す概略断面図である。ホログラム11は被接触媒体層20を介して、加熱用基体19に積層されている。この積層体10d”を加熱処理すると、ホログラム内部の揮発成分が被接触媒体層20中に拡散し、上述のように環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。この加熱処理の後、ホログラム11および被接触媒体層20を加熱用基体19から剥離し、基材13に粘着剤12を介して積層する。さらに、カバーフィルム14を積層し周囲に基材13”を射出成形などにより成形すれば、図4のホログラム積層体10dが得られる。
【0027】
(積層例e)
図7は、発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。ホログラム11は、粘着剤12を介して基材13に積層されている。ホログラム11の基材13と反対側の面にはカバーフィルム14が積層されている。さらに、基材13からカバーフィルム14までの積層体を包み込む形に基材13”が設けられている。こうして、ホログラム積層体10eは、基材13”/基材13/粘着剤12/ホログラム11/カバーフィルム14からなる積層体として構成されている。上記ホログラム11は、粘着剤12からなる被接触媒体に当接した状態で加熱処理が施され、揮発成分を拡散させたものである。
【0028】
図8は、図7のホログラム積層体の加熱処理時の積層形態10e’を示す概略断面図である。ホログラム11は、粘着剤12を介して基材13に積層されている。ホログラムの一方の面は粘着剤12からなる被接触媒体に当接している。この積層体10e’を加熱処理すると、ホログラム内部の揮発成分が粘着剤中および空気中に拡散する。その結果ホログラムの熱膨張特性が改善され、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないホログラムが得られる。この加熱処理の後、カバーフィルム14を積層し、周囲に基材13”を射出成形などにより成形すれば、図7のホログラム積層体10eが得られる。
【0029】
【0030】
本発明にかかるホログラム積層体は、露光後のホログラムに含まれている揮発成分物質を加熱処理によってホログラム内部から移動させることによって、温度変化がある環境下での使用時の不具合を低減させたものである。すなわち、露光後のホログラムには、室温付近での熱膨張に寄与する揮発成分物質(未重合モノマーや不純物)が含まれている。これは、露光用光源によってホログラム材料に含まれているモノマーが充分に重合せずに残存した結果、露光後のホログラムに含まれる未重合モノマー等である。本発明にかかるホログラムは、積層化に際して、ホログラムに被接触媒体を当接させて加熱処理を施すことにより、揮発成分を被接触媒体に拡散させている。こうして、ホログラムの温度変化による再生波長シフトが低減されている。
【0031】
積層例a〜eのうち、積層例a〜cは、これらの積層体10a〜cの構成要素である粘着剤12自身を被接触媒体とした例である。積層例dは、少なくともバインダーポリマー、アクリル系モノマーおよび重合開始剤から構成されるホログラム感光材料を用いる場合に適した被接触媒体を示す例である。積層例eは、積層体10eの構成要素である粘着剤12自身を被接触媒体とした例を示す。
【0032】
本発明にかかるホログラムの感光材料としては、ポリビニルカルバゾール系やアクリル系等のフォトポリマー、DCG、光レジスト、銀塩等、種々の感光材料が使用できる。そのうち、露光時の取扱いやすさ等の点からフォトポリマーが好ましく、さらに外観性が良好な点から少なくともバインダーポリマー、アクリル系モノマーおよび重合開始剤から構成されるアクリル系フォトポリマーが特に好ましい。このような好ましいホログラムとしては、特開平7−157506や特開平7−210065などに開示されているフォトポリマーが挙げられる。
【0033】
上記の好ましいフォトポリマーを用いたホログラムの場合、積層例dのようにバインダーポリマーと同系統のポリマーからなる被接触媒体を用いることは、好ましい。ホログラム内部の揮発成分が被接触媒体に移動しやすいからである。
【0034】
ホログラムの大きさとしては、通常数十mmから数百mm角程度の面積で、数μmから数十μm程度の厚さが例示される。これらホログラムは、リップマンタイプ等の体積・位相型のホログラムが高い回折効率を得られる点で望ましいが、エンボスタイプ、レインボータイプ等のホログラムと呼ばれるものも広く使用できる。
【0035】
ホログラムのタイプも、透過型、反射型等、特に制限はない。基材に粘着保持されたホログラムの場合、ホログラムの熱膨張は主にその厚さ方向に生ずる場合が多い。したがって、厚さ方向に沿うように回折格子が形成される反射型のホログラムの場合に、特に本発明にかかるホログラムの効果が期待できる。
【0036】
ところで、図17にはホログラムが自動車の風防ガラスに封入された例が示されている。風防ガラスには、自動車用安全ガラスとしての安全基準が定められている(例えばJIS R3211)。したがって、ホログラムを合わせガラスに封入した場合にも、当然安全基準を満足しなければならない。そのために、ホログラム2はガラス基板23に例えばウレタン系の接着剤16によって接着されるものである(図10)。
【0037】
一方、上記積層例a〜eにおける積層体は、ホログラム11が粘着剤12を介して基材13に保持されている。そのため、積層例a〜eの積層構成のものは、自動車用安全ガラスの基準に満たないものがある。したがって、このように粘着剤によってホログラムが基材に保持された積層体は、安全ガラス以外の部位への適用時に、好適に用いられる。
【0038】
その適用例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、情報表示源を備えた本体部にコンバイナが軸支され、車両のダッシュボード上に載置され、運転者等に運転情報を視認させる、いわゆる別置き型HUD(図9参照)のコンバイナとして、本発明のホログラム積層体が好ましく使用できる。
【0039】
すなわち、別置き型HUDは、風防ガラスとは別に車両のダッシュボード上等に載置されて使用されるため、風防ガラスの安全基準にとらわれる必要がない。したがって、別置き型HUDのコンバイナに用いるホログラム積層体は、温度変化による再生波長のシフトという課題解決に重点をおいて構成すればよい。その意味で、接着剤を介した接着保持に比べて積層体の耐久性を減少させる傾向にあっても、温度変化による再生波長シフトを抑える粘着剤による粘着保持を用いたホログラム積層体の構成は、別置き型HUDのコンバイナとして有効である。特に、ホログラムを基材に保持させるための粘着剤自身が、本発明における被接触媒体として適用できることは、作製時の作業性の向上と積層体全体の厚さを小さくできる点に鑑みると好ましい。
【0040】
この別置き型HUDの一例を図9に示す。ホログラム積層体を備えたコンバイナ50は、保持部材54を介してHUDの本体部51に回動自在に軸支されている。本体部51の底面には脚部53が設けられていて、この脚部53がHUDの設置場所(例えば車両のダッシュボード上)に保持される。本体部51内には、光源57と表示体56とからなる情報表示源が備えられていて、コンバイナに向けて情報を含む光を入射角θi で照射する。この光がホログラムによって回折角θd で反射回折され、観察者(例えば運転者)に運転情報を視認されることになる。なお、使用時においてコンバイナ50は水平に対してθw の角をなす。
【0041】
この別置き型HUDに代表されるホログラフィック表示装置における情報表示源は光を発して表示する機能を持つものである。そして、液晶表示素子等のいわゆる受光型表示素子からなる表示体に熱陰極管、冷陰極管、蛍光表示管、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザなどからなる光源から発した光を照射するものが例示される。また、これらの機能を併せ持つものであってもよい。
【0042】
本発明にかかるホログラフィック表示装置をカラー表示とする場合、この液晶表示素子としては、カラーフィルタと透過型のツイストネマチック型液晶素子や、スーパーツイストネマチック型液晶表示素子等からなるカラー液晶表示素子等が好ましく、一つの光源から発せられた光を所望の色の光として照射できる。
【0043】
このようにして複数の色の光は、同一の情報表示源から発することができる。これら複数の色の光が同時に表示される場合には、表示像が重なって表示される。逆にこの表示像の重なりを防ぐためには、必要に応じてカラーフィルタと光源との組み合わせによって、またはカラー液晶表示素子を制御することによって、複数の色の光線が同時に照射されないようにしてもよい。
【0044】
それとは別に、受光型表示素子を用いず、上記の光源自体をパターン化して配列し特定の情報を光として発生させてもよい。受光型表示素子に上記光源を併用したものの場合は、この受光型表示素子と光源との間にレンズ系や曲面反射鏡等の適当な光線平行化手段、導光板等の適当な導光手段を配置してもよい。さらに、ホログラムに光が投射されるまでの光径路内に、必要に応じて、光偏光手段、または、KNO3 等の非線形光学素子を配置してもよい。
【0045】
本発明にかかるホログラフィック表示装置をカラー表示とする場合、コンバイナから表示像までの距離は各色で同一とすれば同一平面内にカラー表示ができる。また、色によって表示像までの距離を変えた場合には、表示色によって表示像の観察される距離の異なる立体的な像を得ることができる。
【0046】
本発明にかかるホログラフィック表示装置を乗り物用に用いる場合、表示すべき情報は、その表示用途により適宜選択される。車両のスピード計、タコメータ、シフトレバー表示、さらには種々の警告ランプや、ナビゲーション情報、エアコン、オーディオ機器など付属機器の情報等が例として挙げられる。また、道路情報、駐車場空き情報などの車両外からの情報を表示することもできる。航空機や船舶などでは緯度、経度、高度、進行方向などの位置・方位情報や、気象情報、レーダの障害物情報、魚群探知機の情報など、乗り物の運行や業務に関わる様々な情報が考えられる。また、観察者とは主には車両等の乗り物の運転者であるが、助手席その他の同乗者や、これらすべての者を含めることができる。
【0047】
上記の別置き型HUDをはじめとして、本発明にかかるホログラム積層体は、ホログラムに向けて情報を含む光を出射する情報表示源からの光を観察者に向けて回折し、観察者に表示像を視認させるホログラフィック表示装置のコンバイナに、適切に用いられる。したがって、従来環境温度の変化による再生波長の変動の問題のあった自動車用HUDの風防ガラスを本発明にかかるホログラム積層体とすれば、図17に示した安全ガラスにおいても、環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないHUDが得られる。
【0048】
この場合、ホログラムは基材である合わせガラスのガラス板に接着剤によって保持される。したがって、積層例a〜cのように粘着剤自身を被接触媒体として用いるものではなく、積層例d、eにおけるホログラムのバインダーポリマーと同系統のポリマーからなる被接触媒体層を被接触媒体としたものが、合わせガラス内にホログラムを封入する際等の必要な接着力が欲しい場合に好ましく適用できる。
【0049】
具体的には、図6に示す積層体10d”を加熱処理して得られるホログラム11を加熱用基体19から剥離して、合わせガラスの一方のガラス板に接着剤を介して積層することが例示できる。また、上記加熱用基体自身をホログラム積層体の使用時における基材とし、この基材とホログラムとを接着剤を介して積層し、ホログラムの基材側と反対側の面に粘着剤、バインダーポリマーと同系統のポリマー層、空気等を当接させて、加熱処理することもできる。こうして、車両の安全基準を満たしかつ環境温度が変化しても再生波長の変動の少ないHUDが得られる。なお、接着剤としてはアクリル系に代表される光硬化型、エポキシ系などの熱硬化型などの接着剤が広く利用できる。再生光や回折光の損失が少ないという点で透明性の高い接着剤が特に好ましい。
【0050】
上記例以外にも、本発明にかかるホログラム積層体、ホログラフィック表示装置は種々の用途に使用できる。例えば、風防ガラス周辺の暗色セラミック塗装部にホログラムを配置したホログラフィック表示装置にも利用できる。この場合暗色セラミック塗装部が太陽熱を吸収し温度変動が激しいため、本発明の製造方法により製造されたホログラムは特に有効である。また、リヤガラスにホログラムを配し、運転者の制動動作に同期して光を発する発光表示手段からの光をホログラムによって後方車両の運転者等の観察者に向けて制動情報を回折するハイマウントストップランプ、または車両のコーナーを指示する虚像コーナーマーカーなどホログラムを用いた表示装置全般に広く応用できる。
【0051】
さらに、表示装置以外にも3次元像などを記録して意匠性を高めた車両用のホログラムオーナメントや、ショーウィンドウや街頭広告などに用いる装飾ホログラムにも、本発明にかかるホログラム積層体を使用できる。
【0052】
本発明における被接触媒体は、上記積層例a〜eの説明中で述べたように、粘着剤、ホログラムのバインダーポリマーと同系統のポリマーからなる層等が挙げられる。このうち、粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく利用できる。粘着剤中に用いられるモノマーとしては、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸など一般的な粘着剤のモノマーが利用できる。さらに硬化剤が含有されていてもよく、エポキシ系、イソシアネート系などの硬化剤が利用できる。その他、粘着付与剤、UV吸収剤等が含まれていてもよい。
【0053】
さらに、この粘着剤はそれ自身フィルム状であったり、板状やフィルム状の所定の基体に材料が塗布されたものとして使用することも、材料自身を直接基材やホログラムに塗布して使用することもできる。フィルム状のものが、その取扱いの簡便さに鑑みて好ましい。
【0054】
積層例dの被接触媒体層20の種類としては、ホログラム中の未重合モノマーなどの揮発成分が移動しやすい組成であればよいが、ホログラムとの相性がよいという点でホログラムを構成しているバインダーポリマーと同系統の組成であることが好ましい。ここで同系統とは、ホログラム中のバインダーポリマーを構成する重合単位の種類と、被接触媒体層を構成する重合単位の種類とが同一または一部重複していることを意味し、ポリマーの重合度(分子量)や複数種の重合単位からなる場合の組成比は必ずしも一致していなくともよい。
【0055】
すなわち、被接触媒体層は、ホログラム中のバインダーポリマーを構成する重合単位のうちの1種以上を重合単位として含む単独重合体または共重合体から構成される。この場合、ホログラムは、少なくともバインダーポリマー、アクリル系モノマーおよび重合開始剤から構成されるアクリル系フォトポリマーからなることが好ましい。
【0056】
例えば、ホログラム感光材料として特開平7−210065に開示された材料を用いるとき、この材料中のバインダーポリマーは(M)(VAc)(VOH)(VOS)を有する共重合体から構成される(M:フルオロモノマーに基づく重合単位、VAc:ビニルアセテートに基づく重合単位、VOH:ビニルアルコールに基づく重合単位、VOS:ビニルトリメチルシランに基づく重合単位、w:Mが5〜30重量%となる数、x:VAcが40〜80重量%となる数、y:VOHが0〜20重量%となる数、z:VOSが2〜30重量%となる数。)。この場合、被接触媒体層はM、VAc、VOHおよびVOSから選ばれる1種以上のモノマーに基づく重合単位の単独重合体または共重合体から構成される。
【0057】
また、例えばホログラム感光材料として特開平7−157506に開示された材料を用いるとき、この材料中のバインダーポリマーは(M)(VAc)(VOH)(CTFE)を有する共重合体から構成される(M:フルオロモノマーに基づく重合単位、VAc:ビニルアセテートに基づく重合単位、VOH:ビニルアルコールに基づく重合単位、CTFE:クロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、w:Mが5〜25重量%となる数、x:VAcが40〜90重量%となる数、y:VOHが2〜15重量%となる数、z:CTFEが5〜40重量%となる数、上記ポリマーは3〜30重量%のフッ素を含む。)。この場合、被接触媒体層はM、VAc、VOHおよびCTFEから選ばれる1種以上のモノマーに基づく重合単位の単独重合体または共重合体から構成される。
【0058】
また、被接触媒体層には、ホログラムとは別に保持基材に上記のポリマーがコーティングされてフィルム状となったものも使用できる。この場合、このフィルム状となった被接触媒体層がホログラムに積層される。他に、あらかじめホログラムに上記のポリマーをコーティングしてもよい。この際、被接触媒体層中に重合開始剤が含まれていることは好ましい。ホログラムから移動してきたモノマーを重合させ、ホログラム中に逆戻りすることを防止できるからである。開始剤の種類としてはホログラムを構成するアクリル系フォトポリマーの合成に用いた場合の開始剤と同じでもよいが、加熱処理によりモノマーの重合を促すタイプの開始剤が、ホログラムのレーザ露光中にはモノマーに影響を与えず加熱処理時にのみ作用するという点で好ましい。
【0059】
【0060】
本発明における加熱処理は、オーブンやオートクレーブ内に入れて加熱したり、電磁誘導加熱、マイクロ波加熱、(遠)赤外線加熱等の種々の手段により行われ、通常100〜150℃程度の範囲の温度にて1〜50時間程度行われる。
【0061】
上述のように、ホログラムは被接触媒体層に当接した状態で加熱処理が施される。この加熱処理によって、ホログラムの再生波長は加熱処理前の再生波長よりも短波長化させうる。短波長化の度合は、加熱温度、加熱時間、必要に応じて加熱処理時の雰囲気圧力等によって、所望の度合に調整できる。このように、ホログラムの再生波長を加熱処理によって短波長化することにより、露光時の露光用光源の波長に依存するホログラムの再生波長を、所望の再生波長に自由にコントロールできる。
【0062】
本発明における基材は、ホログラム積層体の用途や使用状態に応じて適宜選択される。ホログラムに対して再生光の入射側に配されている基材や、ホログラムに対して回折光の出射側に配されている基材は透明な基材であるが、これは光を部分的に透過するものであってもよい。例えば、色付きでない透明ガラス板や、そのほかにブロンズやグリーンなどに色付けされたガラス板も基材として使用できる。また、再生光や回折光が通過しない部分は不透明であってもよい。
【0063】
基材の材質としては、ガラスのほか、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどの樹脂基板でもよく、透明な結晶体などでもよい。基材の厚さについても厚さ数mmの板のほか、厚さ1mm以下のフィルムでもよく、厚さ数cmのブロック体であってもよい。また、これらの基材の表面は反射防止コーティングやハードコーティングが施されていてもよい。特に別置き型HUDのコンバイナに本発明にかかるホログラム積層体を用いる場合には、基材を樹脂材料とすれば、ガラスとは異なり小型・軽量であり、万一ぶつかっても破損のおそれが小さい点で好ましい。
【0064】
加熱用の基体としては熱処理に耐えること、熱処理後にホログラムを容易に剥離できることを満足すれば、特に制限はない。ホログラムがフィルム状であること、量産性に適することを考えると、長尺の耐熱性フィルムが好ましい。加熱用基体をそのまま保持用の基材として用いる場合は、上述の基材が好ましく用いられる。
【0065】
上述のようにホログラムの種類、材質、基材や粘着剤などの種類については多数の形態がありうる。したがって、本発明にかかるホログラム積層体における積層構成およびその構成要素には様々なバリエーションがあり、本発明の製造方法は、任意の組み合わせに適用できる。
【0066】
【実施例】
(構成例1)
図1に示す積層例aのホログラム積層体を作製した。このとき、基材13、13’として透明なガラス板、ホログラム11の材料としてアクリル系フォトポリマー、バリヤフィルム14’としてPVAフィルム、粘着剤12として25μm厚のアクリル系粘着剤(綜研化学社製AG4175)、接着剤15としてUV硬化型接着剤(東亞合成化学社製LCR0634)を用いた。
【0067】
このホログラム積層体10は、次のように作製した。まず、基材13にアクリル系粘着剤12を介してバリヤフィルム14’付きのホログラム11を、バリヤフィルム14’が配されていない側の面を粘着剤12側として積層する。その後100℃のオーブン内にて3、12、24、48時間加熱処理を施し、UV硬化型接着剤15により別のガラス基材13’を接着して、4種類のホログラム積層体10aを得た。
【0068】
(構成例2)
図2に示す積層例bのホログラム積層体を作製した。このとき、基材13として透明なガラス板、ホログラム11の材料としてアクリル系フォトポリマー、基材13’としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、粘着剤12としてアクリル系粘着剤(綜研化学社製AG4135)を用いた。
【0069】
このホログラム積層体10は、次のように作製した。まず、基材13に25μm厚のアクリル系粘着剤12を介してホログラム11を積層し、基材13’に同じく25μm厚のアクリル系粘着剤12をコートした粘着フィルムをさらに積層した。その後100℃のオーブン内にて3、12、24、48時間加熱処理を施して、4種類のホログラム積層体10bを得た。
【0070】
図11に、構成例1、2のホログラム積層体におけるホログラムの回折波長の温度特性を示す。これは温度による波長の変化率を加熱処理時間に対して示したものである。なお、この例におけるホログラムは、入射角43°で入射させた再生波長約540nmの光が出射角43°で反射回折される光学特性を有する反射型ホログラムである。粘着剤を用いない従来のホログラムでは0.2nm/℃の変化率であったが、粘着剤とともに加熱処理を行うことにより、波長変化率が小さくなり改善されている。
【0071】
また、その改善の効果は加熱処理時間がある程度長いほど、またホログラムの片面よりは両面にアクリル系粘着剤が接触したものの方がより大きいことがわかった。両面に粘着剤を付け100℃、24時間以上加熱処理をすれば波長変化率は0.06nm/℃と、従来の3分の1に改善される。温度変化を40℃とすると波長変化量は2.4nmに相当する。図16から、ほとんど表示輝度が影響されないレベルであることがわかる。
【0072】
実際に、これらの例のホログラム積層体をコンバイナとする別置き型HUD(図9参照)を作製したところ、環境温度変化に対し表示輝度変化の少ない表示像が得られた。
【0073】
(構成例3)
図3に示す積層例cのホログラム積層体を作製した。このとき、基材13として透明なガラス板を用い、PETカバーフィルム14付きのアクリル系フォトポリマーからなるホログラム11を、カバーフィルム14の側と反対側の面と基材13との間にアクリル系粘着剤12を介在させて積層した。その後、オーブン内で100℃、3時間の加熱処理を行い、ホログラム積層体10cを得た。なお、本例で用いたホログラムの光学特性は、回折中心波長が540nmで、入射角9°の光を反射回折角65゜で反射回折するものである。
【0074】
上記構成例3において、アクリル系粘着剤12として、綜研化学製の次の4種類の粘着フィルムを用いた。AG−4137(厚さ10μm)、AG−4138(厚さ15μm)、AG−4135(厚さ25μm)、AG−4139(厚さ40μm)。
【0075】
図12に、上記構成例3の構成の4種類のホログラム積層体についての、粘着剤厚さと温度変化に対する波長変化率との関係を示す。粘着剤の厚さが増加するにしたがい波長変化率が小さくなり、改善されることがわかる。本例では、ホログラムの回折角度配置が構成例1で用いたホログラムと異なるため、元々の波長変化率が0.11nm/℃と小さいが、粘着剤による保持および加熱処理によって、約半分の0.06nm/℃まで改善できた。
【0076】
また、図13に粘着剤厚さとの加熱処理前後の再生波長の変化量との関係を示す。粘着剤の厚さに応じて、ホログラム作製時に比較して8〜14nm程度の短波長化をさせることができた。これを利用することにより、今までレーザ光の波長の制限で露光できなかった波長のホログラムを作製できる。
【0077】
なお、この変化量は図12のような可逆的な変化ではない。粘着剤との加熱処理による非可逆的な波長変化である。一旦この非可逆的な変化をし、安定した後には、通常のホログラムと同様に環境温度変化に伴い図12で示したような可逆的な波長変化を示す。
【0078】
(構成例3’)
本例は、構成例3と同じ積層構成のホログラム積層体において、別の粘着剤を用いた例である。ホログラムおよびホログラム積層体の構造、加熱処理条件等は構成例3と同様である。粘着剤として、綜研化学社製のUV吸収剤入り粘着剤AG−41312(厚さ25μm)を用いた。波長変化率が0.071nm/℃まで改善した。波長変化量は±0nmであった。
【0079】
(構成例3”)
本例も、構成例3と同じ積層構成のホログラム積層体において別の粘着剤を用いた例である。ホログラムおよびホログラム積層体の構造、加熱処理条件等は構成例3と同様である。粘着剤としてニチバン社製のセロテープ(登録商標)を用いた。波長変化率が0.068nm/℃まで改善した。波長変化量は+1.9nmであった。
【0080】
(構成例4)
本例は、自動車のリヤガラスに3次元像を記録したホログラムを粘着剤を介して積層し、加熱処理を行ってガラス板/粘着剤/ホログラムの積層構成を有するホログラム積層体の例である。本例に用いたホログラムは、入射角0°の光を回折角0°で反射回折する反射型のイメージホログラムである。3色のレーザ光で露光したホログラムでありシルバーメタリック調の色調を呈する。(再生波長,回折効率)=(470nm,50%)、(560nm,60%)、(640nm,35%)の3本のピークを有する回折特性のものである。このホログラムを粘着剤(AG−4135)を用いて自動車のリヤガラスに貼り加熱処理を施したところ、環境温度変化に対し色調変化の少ないホログラムオーナメントを得ることができた。
【0081】
(構成例5)
図4に示す積層例dのホログラム積層体を作製した。このとき、基材13として透明なアクリル樹脂シート、基材13”として射出成形による透明なアクリル樹脂、ホログラム11の材料として特開平7−157506や特開平7−210065などに開示されているアクリル系フォトポリマー、被接触媒体層20の材料として特開平7−157506や特開平7−210065などに開示されているバインダーポリマーと同系統のポリマー、カバーフィルム14として反射防止フィルム、粘着剤12としてアクリル系粘着剤を用いた。
【0082】
このホログラム積層体10dは、次のように作製した。まず、ホログラム11と被接触媒体層20とをフィルム状態で積層し、これを基材13にアクリル系粘着剤12により粘着して図5の積層体10d’とした。なお、他に離型処理を施したガラス板を加熱用基体19とし、ホログラム11と被接触媒体層20の積層体を加熱用基体19に直接積層し、図6の積層体10d”とすることもできる。その後、積層体10d’または10d”を100℃のオーブン内にて3〜6時間加熱処理を施した。
【0083】
その後、積層体10d’の場合は、そのまま積層体10d’にカバーフィルム14を積層した。積層体10d”の場合は、ホログラム11を加熱用基体19から剥離し、基材13にアクリル系粘着剤12を介してホログラム11を積層し、さらにカバーフィルム14を積層した。最後に、この積層体を金型内に設置し、周囲にアクリル樹脂を射出成形し積層体10dを得た。アクリル樹脂(基材13’)で周囲を覆うことは、温度特性の改善に直接寄与するものではないが、ホログラム積層体の外周部の保護の点から好ましい形態である。
【0084】
従来の加熱条件で作製したホログラムでは、室温から80℃の間に12nmもの波長変化があった。本発明にかかるホログラム積層体10d”では、3時間の加熱処理により波長変化は10nmに、6時間の加熱処理により波長変化は8nmに改善された。室温から80℃の波長変化量はまだ大きいが、室温付近の実用温度領域での波長変化のみを考えると、実用的な改善効果は非常に大きい。ホログラム積層体10d’の場合でも同様の傾向が得られた。また、加熱処理時間が長い程、温度特性が改善されること、再生波長が短波長化することがわかった。
【0085】
実際に、これらの例のホログラム積層体をコンバイナとする別置き型HUD(図9参照)を作製したところ、環境温度変化に対し表示輝度変化の少ない表示像が得られた。
【0086】
加熱処理後の再生波長は、加熱時間や温度、粘着剤の有無により変わる。これを利用することにより、今までレーザ光の波長の制限で露光できなかった波長のホログラムを作製できる。
【0087】
(構成例6)
図7に示す積層例10eのホログラム積層体を作製した。このとき、基材13として透明なアクリル樹脂シート、基材13’として射出成形による透明なアクリル樹脂、ホログラム11の材料としてアクリル系フォトポリマー、カバーフィルム14として反射防止フィルム、粘着剤12としてアクリル系粘着剤を用いた。
【0088】
このホログラム積層体10eは、次のように作製した。まず、基材13にアクリル系粘着剤12を介してホログラム11を積層し図8の積層体10e’とした。その後これらの積層体10e’を100℃のオーブン内にて3、6、12時間加熱処理を施した。オーブン内を減圧する方がホログラム内部の揮発成分をオーブンの雰囲気内に拡散しやすいので、オーブン内部をダイヤフラム式の真空ポンプで排気した。到達圧力は0.1気圧程度である。
【0089】
その後、積層体10e’の場合は反射防止フィルム14を積層した。最後に、この積層体を金型に設置し周囲にアクリル樹脂13’射出成形し積層体10eを得た。アクリル樹脂(基材13’)で周囲を覆うことは、温度特性の改善のためには本質的ではないが、ホログラム積層体の外周部の保護の点から好ましい形態である。
【0090】
【0091】
図14に、3時間の加熱処理後のホログラム積層体10e’の再生波長の温度特性を示す。再生波長が大きく短波長化する傾向が得られた。
【0092】
【0093】
実際に、これらの例のホログラム積層体をコンバイナとする別置き型HUD(図10参照)を作製したところ、環境温度変化に対し表示輝度変化の少ない表示像が得られた。
【0094】
また、図14からわかるとおり、加熱処理後の再生波長は、加熱時間や加熱時の圧力、粘着剤の有無により変わる。これを利用することにより、今までレーザ光の波長の制限で露光できなかった波長のホログラムを作製できる。
【0095】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、ホログラムの少なくとも一方の面を被接触媒体に接触した状態で加熱処理を施すことによって、環境温度変化に対するホログラムの再生波長の変化を低減させうる。そのため、本発明の製造方法を用いれば、表示輝度の低下の少ないホログラフィック表示装置や、色調変化の少ないホログラムオーナメントなどを製造することができる。
【0096】
さらに、本発明の製造方法において、所定の温度、加熱時間によって所定の圧力で加熱処理を加えることで、ホログラムの再生波長を加熱処理前のホログラムの再生波長よりも所望の分だけ短波長化できる。そのため、本発明の製造方法を用いれば露光用光源であるレーザの発振波長により制限されていたホログラムの再生波長の範囲を広げることができ、任意の再生波長を有するホログラム積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図2】本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図3】本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図4】本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図5】本発明にかかるホログラム積層体の加熱処理時の形態の一例を示す概略断面図。
【図6】本発明にかかるホログラム積層体の加熱処理時の形態の一例を示す概略断面図。
【図7】本発明にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図8】本発明にかかるホログラム積層体の加熱処理時の形態の一例を示す概略断面図。
【図9】本発明にかかるHUDの一例を示す概略断面図。
【図10】従来にかかるホログラム積層体の一例を示す概略断面図。
【図11】本発明にかかるホログラム積層体の熱処理時間と再生波長変化率との関係を示すグラフ。
【図12】本発明にかかるホログラム積層体の粘着剤厚さと再生波長変化率との関係を示すグラフ。
【図13】本発明にかかるホログラム積層体の粘着剤厚さと再生波長変化率との関係を示すグラフ。
【図14】本発明にかかるホログラム積層体の再生波長の温度特性の一例を示すグラフ。
【図15】従来のホログラム積層体の再生波長の温度特性を示すグラフ。
【図16】ホログラムの再生波長と表示像の相対輝度との関係を示すグラフ。
【図17】HUDの一例を示す概念図。
【符号の説明】
10:ホログラム積層体
11:ホログラム
12:粘着剤
13、13’、13”:基材
14:カバーフィルム、バリヤフィルム
15、16:接着剤
17:ポリビニルブチラール中間膜
19:加熱用基体
20:被接触媒体層

Claims (1)

  1. 基材とホログラムと被接触媒体とが積層されたホログラム積層体の製造方法であって、
    前記ホログラムは、少なくともバインダーポリマー、アクリル系モノマーおよび重合開始剤から構成されるアクリル系フォトポリマーからなり、前記被接触媒体は、少なくとも重合開始剤、粘着剤または前記バインダーポリマーと同系統のポリマーを含み
    前記ホログラムの少なくとも一方の面に前記被接触媒体が当接される工程と前記ホログラムと前記被接触媒体を加熱処理が施され、ホログラム内部の揮発成分外部に拡散させる工程と前記加熱処理が施されたホログラムを保持用基材に積層させる工程とを含むことを特徴とするホログラム積層体の製造方法
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