JP3799117B2 - 生分解性キトサン含有組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形およびコーティング樹脂として使用することができる微生物による生分解が容易な生分解性キトサン含有組成物とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルなどの汎用樹脂は、実用的な機械的強度や耐久性を有する素材であるものの微生物によって分解されにくく、自然界に廃棄した場合、環境汚染や埋め立て処分場の逼迫などの社会問題を引きおこすこととなる。そこで再資源化とともに、生分解可能な「環境にやさしい材料」の検討が盛んに行われてきた。
【0003】
例えば、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバリレート共重合体、ポリ乳酸などが生分解性を有する熱可塑性樹脂として注目されている。
これらの樹脂は、用途に応じて、微生物による生分解速度を調整したい場合、分子量と共重合組成を変更することで理論上は対応可能である。
しかしながら、実際には溶融粘度や製造技術上の制約から、分子量と共重合組成の変更できうる範囲は限られている。さらに、樹脂の低コスト化が強く望まれる現状では、製造過程に重合工程を含むこともあり、品種を絞り、大量生産しなければならない背景がある。
したがって、樹脂の微生物による生分解速度を細かに調整したいという要望があっても、現実的な対応は難しい。
【0004】
その他には、ポリエチレンに生分解性良好な澱粉をブレンドした生分解性樹脂も広く知られている。
しかし、生分解困難なポリエチレンを含むことで本質的に生分解性を有するとは言い難い。このようなポリマーアロイによる生分解性樹脂の例は多数あるものの、複数の樹脂成分の相溶性あるいは分散性に乏しいと、表面の平滑性、機械的強度に難がある不透明な樹脂にならざるを得ない。
【0005】
これを解決したとされるのが、特開平5−287120号公報に記載の生分解性フィルムである。
この生分解性フィルムは、最大粒子径20μm以下で、かつ含まれる3μm以下の粒子の積算体積割合が25%以上の微粒化セルロース素材と、キトサン溶液とからなる水分散液を製膜してなるものである。
【0006】
キトサンは汎用樹脂と比べて高価格であるが、人畜無害な生分解性樹脂として知られ、アミノ基が4級化すると抗菌性を示すなどの有用な特徴があるもので、キトサンを含有する比較的低価格の生分解性樹脂の要求が高まっている。
しかしながら、この特開平5−287120号公報に記載の生分解性フィルムにおいては、セルロースを微粒子化することが難しく、通常よく用いられる粉砕機、乾式や湿式ボールミル、その他のミル、ホモジナイザーなどを用いて粉砕する方法やセルロース分解酵素を添加する方法では、この生分解性フィルムを作成するのに必要なセルロースの粒子径を得ることは困難と記されている。このような高度な微粒子化技術が必須であるならば工業化は安易ではないと考えられる。
【0007】
また、市販の生分解性樹脂の多くはコーティング加工しにくいという問題がある。
これは、樹脂をコーティング加工するには、溶剤に樹脂を溶解する必要があるが、市販の生分解性樹脂の多くは均一溶解し得る溶剤がないか、近年環境上の問題から規制の対象となりつつあるハロゲン系などの極性溶剤だけに可溶であったりするので、工業規模でコーティング加工を行うには適当な溶剤がないためである。
前記ハロゲン系などの極性溶剤を用いた工業規模のコーティング加工においては、作業安全上および環境上、重大な支障がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は以下の課題を解決することを目的とする。
すなわち、キトサンを含有し、キトサン単独よりも低価格な生分解性キトサン含有組成物を提供する。
また、生分解速度の調整が容易な生分解性キトサン含有組成物を提供する。
さらには、透明性、表面平滑性を有する生分解性キトサン含有組成物を提供する。
また、成形加工のみならず溶液でのコーティング加工ができる生分解性キトサン含有組成物を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、キトサンと、ポリビニルアルコールと、N−アルコキシメチル基、N−メチロール基、カルボジイミド基、イソシアネート基のいずれかを2つ以上有する化合物と、グリセリンを含む水系混合液を乾燥固化して生分解性キトサン含有組成物を製造することを前記課題の解決手段とした。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
キトサンは上述のように人畜無害な生分解性樹脂であり、強固な結晶構造を有する疎水性樹脂として知られているが、アミノ基が4級化することにより親水化できる、抗菌性を付与することができるなどの有用な特徴がある。前記抗菌性は一般にキトサンに酢酸などの有機酸を添加、混合することによって付与される。また、ポリビニルアルコールは、キトサンよりも安価で、合成高分子としてはめずらしく、顕著でないものの幾分かの生分解性が認められているが、耐水性に難がある。
【0011】
これらキトサンとポリビニルアルコールは相溶性が良好であり、これらを含む水系混合液を乾燥することにより、キトサン単独、ポリビニルアルコール単独よりも機械的強度、耐水性が向上した透明な樹脂を得ることができる。
ここで、水系混合液とは水を主成分とする溶媒中にキトサン、ポリビニルアルコールなどの物質が均一に分散しているか、均一に溶解しているものとする。また、以下単に水溶液と記すものは水系混合液に含まれるものとする。
しかしながら、この方法によって得られた樹脂は耐水性が不十分である。
そこで本発明者らが検討した結果、キトサンとポリビニルアルコールを含む水系混合液に、N−アルコキシメチル基、N−メチロール基、カルボジイミド基、イソシアネート基のいずれかを2つ以上有する化合物(以下、架橋剤と称する)を添加して架橋反応させ、ポリマー間に架橋結合を導入することで耐水性が向上し、実用的な樹脂となりうることをが明らかとなった。
すなわち、本発明者らは、キトサンと、ポリビニルアルコールと、前記架橋剤を含む水系混合液を乾燥して水を主成分とする溶媒を除去するとともに、架橋反応を進行させて固化して得られた熱硬化性樹脂が、生分解性樹脂として所望の特性を有する生分解性キトサン含有組成物であることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の特徴は、生分解性キトサン含有組成物の生分解速度の調整が、水系混合液の調整時にキトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤などの材料の配合比率を変える簡便な操作だけで実施できる点である。
また、本発明の生分解性キトサン含有組成物は、架橋結合によって実用可能な耐水性が付与されたものであるが、ポリビニルアルコールを含有するため、従来の生分解性樹脂よりも親水性であることから、微生物による生分解が進行しやすい。
また、材料としてポリマーを用いるので、重合工程を経ずに、比較的簡便に高分子量のものが得られ、この結果、強靱な機械的強度を有するものが得られる。
このように生分解性、機械的強度ともに生分解性樹脂として優位な特性を有するものである。
さらに製造操作が簡便で、重合工程や特殊な粉砕、分散などの工程が必須でないため、工業規模での実施が容易である。
【0013】
以下、本発明の生分解性キトサン含有組成物の製造方法の一例について詳細に説明する。
最初にキトサンを水に分散させ、さらに必要に応じて均一なキトサン水溶液とするための添加剤として酢酸などの酸を加え、撹拌しながら溶解して0.5〜30重量%のキトサン水溶液を調製する。
一方、ポリビニルアルコールを水に分散させ、撹拌しながら溶解して0.5〜30重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製する。
【0014】
このときキトサンあるいはポリビニルアルコールとして固形物を用いる場合には、水中に均一に分散させるために粒径0.2〜5mm程度の粒子状ものが好適に用いられる。キトサンとポリビニルアルコールの性状は粒子状に限らず、ペレット状、チップ状などでもよい。
また、キトサン水溶液とポリビニルアルコール水溶液においては、キトサンあるいはポリビニルアルコールが水に溶解していることが好ましいが、水中に均一に分散している状態であってもよい。
【0015】
ついで、前記キトサン水溶液とポリビニルアルコール水溶液を所定量ずつ混合するとともに、架橋剤と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンあるいはその数量体、エーテル化物、アセチル化物のいずれかの化合物と、必要に応じて性能向上などのための添加剤を加えて撹拌混合して水系混合液とし、ついでこの水系混合液を減圧脱泡する。この減圧脱泡は、生分解性キトサン含有組成物の成形物内に気泡が残存しないために行われる操作である。
さらに、この脱泡した水系混合液をポリエステルフィルムなどの平滑なフィルム上に流延し、熱風乾燥機などを用いて加熱し、架橋反応を進行させつつ同時に水などを除去して乾燥固化し、透明なフィルム(生分解性キトサン含有組成物の成形物)を得る。
【0016】
本発明において用いられるキトサンは、(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するキチンの部分又は完全脱アセチル化物であって、(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するもので、脱アセチル化されたアミノ基の一部、または同一分子内にある水酸基の一部がアシル化反応、エーテル化反応、エステル化反応、その他の反応によって化学修飾されたキトサン誘導体も含まれる。
【0017】
キトサンの脱アセチル化度、平均分子量は、特に制限はなく用途に応じて選択すればよいが、例えば脱アセチル化度70〜100モル%程度、1重量%とした場合の水溶液粘度1〜1000cps(20℃)のものが好適に用いられる。脱アセチル化度は70モル%未満であるとキトサンが均一に溶解しないことがある。1重量%とした場合の水溶液粘度が1cps未満であると生分解性キトサン含有組成物の機械的強度が不十分である場合があり、また、1000cpsをこえると生分解性がやや低下することがある。
また、生分解性キトサン含有組成物のキトサンの配合量は1〜50重量%とする。1重量%未満であるとキトサンの優位な特性が得られず、50重量%をこえるとコストが上昇し、生分解性キトサン含有組成物の柔軟性がなくなり脆くなるためである。
【0018】
なお、キトサンを均一な水溶液とするために、塩酸などの鉱酸、あるいは酢酸、乳酸、プロピオン酸、アクリル酸、マレイン酸などの有機酸から選ばれる1種あるいは2種以上の酸を適宜添加してキトサン水溶液を調整してもよい。
これらの酸は、キトサンの脱アセチル化度により異なるが、水に懸濁分散したキトサンと同重量添加することによって、一般にその効果が得られる。
これらの酸は、製造過程において水系混合液の乾燥揮発によって除去したりすることもできるが、あるいは生分解性キトサン含有組成物の成形物を苛性ソーダ、炭酸ソーダなどの塩基性水溶液を用いてアルカリ処理して除去することによって、生分解性キトサン含有組成物中により残存しないようにすることができる。特にアルカリ処理は酸の残存量を減少させるのに有効な手段であり、成形物の耐水性を大いに向上させることができる。
あるいは、これらの酸は、生分解性キトサン含有組成物に抗菌性を付与するために、上述の除去操作を行わずに意図的に生分解性キトサン含有組成物中に残存させてもよい。
酸を除去するか否かは、実際の用途に照らして判断する。上述の酸を添加しなくてもキトサンを均一な水溶液にできる場合は酸は不要である。
【0019】
本発明で用いられるポリビニルアルコールは、均一な水溶液(水系混合液)を得ることができれば、エチレン共重合体、またはアクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸塩、メタアクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどの共重合体や化学修飾による変成体も含まれる。前記アクリル酸塩、メタアクリル酸塩の対イオンは、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属やカルシウムなどのアルカリ土類金属などである。また、ポリビニルアルコールの鹸化度、平均分子量に制限はなく、用途に応じて選択すればよい。
例えば、鹸化度70〜97モル%程度、4重量%とした場合の水溶液粘度2〜100cps(20℃)のポリビニルアルコールが好適に用いられる。鹸化度は70モル%未満であると温度条件によっては水溶液中のポリビニルアルコールが分離凝析することがあり、97モル%をこえると水に対する溶解度が著しく低下することがある。また、4重量%とした場合の水溶液粘度が2cps未満であると生分解性含有組成物の機械的強度が不十分である場合があり、100cpsをこえると生分解性が低下することがある。
また生分解性キトサン含有組成物のポリビニルアルコールの配合量は40〜95重量%とする。40重量%未満であると生分解性キトサン含有組成物のコストが上昇し、95重量%をこえると生分解性が低下することがある。
【0020】
本発明において用いられる架橋剤は、アミノ基および/または水酸基と反応しうる官能基、N−アルコキシメチル基、N−メチロール基、カルボジイミド基、イソシアネート基のいずれかを2つ以上、実質的には2〜6有する水溶性あるいは水分散性の化合物で、例えばヘキサメトキシメチルメラミンなどが好適に用いられる。
また、ブロックイソシアネートのように、室温ではアミノ基および/または水酸基と反応しないものであっても、加熱などの手段で分解して反応しうる官能基を生成するものも使用することができる。
架橋剤はキトサンとポリビニルアルコールの合計重量に対して0.5〜20重量%用いられる。0.5重量%未満であると架橋反応が十分に進行せず、20重量%をこえて使用量が著しく多くなると生分解性キトサン含有組成物の生分解性が消失する恐れがあるので留意すべきである。
【0021】
本発明の水系混合液の溶媒としては、水単独で用いる他に乾燥固化時の溶媒の揮発性を調整するなどの目的で、アルコール、ケトン類などの親水性溶媒を水に加えたものを用いてもよい。ただし、水系混合液の均一性を保持するように、前記親水性溶媒の種類と量を調節する必要がある。
【0022】
また、生分解性キトサン含有組成物の性能向上を目的として、以下のような添加剤を水系混合液に添加し、生分解性キトサン含有組成物中に配合する。
すなわち、生分解性キトサン含有組成物に柔軟性を付与するために、可塑化する作用があるグリセリンを水系混合液に添加する。この添加剤の添加量は生分解性キトサン含有組成物中、40重量%以下とする。
【0023】
また、樹脂に通常添加される各種の顔料、染料、紫外線安定剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、界面活性剤なども場合によっては、水系混合液に添加して生分解性キトサン含有組成物中に配合することができる。
これらの添加剤はキトサン水溶液とポリビニルアルコール水溶液とを混合する前に、いずれかの水溶液に加えてもよいし、これらを混合した後に加えてもよい。
【0024】
キトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤を含む水系混合液の調製において、材料の配合順序、温度、撹拌などの条件は特に制限しないが、キトサンやポリビニルアルコールが固形物であれば各々の水溶液を予め作製してからこれらを混合するとともに、室温(好ましくは10〜30℃)付近で最後に架橋剤を添加する方が、均一な水系混合液を調整しやすく、また、急激な反応の進行などがおこりにくいため、安定性の点からも好ましい。
水系混合液の乾燥固化方式とその乾燥温度、圧力、時間などの条件は、水を主成分とする溶媒が除去されるとともに架橋反応が進行し、所望の生分解性キトサン含有組成物が得られるように任意に設定すればよい。
例えば、10〜200ミクロンのフィルムを作成する場合は温度50〜90℃、圧力760mmHg、1〜72時間の条件で溶媒の多くを除去した後、温度80〜150℃、圧力10〜760mmHg、0.5〜24時間の条件で完全に固化することが好ましい。このように段階的に乾燥固化させることによって溶媒の気化に伴う気泡が生分解性キトサン含有組成物内に残存することやカーリングを抑制することができる。
【0025】
また、生分解性キトサン含有組成物の成形物は、フィルム、粉末、ペレット、発泡体、繊維、管などの形態を問わない。また、キトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤などを含む水系混合液を各種ロール、スプレーなどの方式で塗工し乾燥固化することによりコーティング樹脂として利用することができる。
【0026】
本発明においては、キトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤の配合量を調節することによって、容易に生分解性キトサン含有組成物の生分解速度の調整をすることができる。例えば、生分解性速度をはやめるためにはキトサン配合量を増やすことによって対応でき、遅くするためにはポリビニルアルコールあるいは架橋剤の配合量を増やすことによって対応できる。
加えて、機械的強度はキトサンの配合量を増やすことにより大きくなり、耐水性は架橋剤を増やすことにより向上できる。
【0027】
また、本発明の生分解性キトサン含有組成物は、キトサンとポリビニルアルコールの相溶性が良好なので、透明性、表面の平滑性が良好な生分解性樹脂であって、各種容器、発泡体などの樹脂成形体、包装用、農業用などのフィルムなどに用いることができる。
また、この生分解性キトサン含有組成物に用いられるキトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤を含む水系混合液を用いて、コーティング樹脂として使用することができる。
さらに、キトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤を含む水系混合液に有機酸を添加し、生分解性キトサン含有組成物中に残存させることにより、生分解性キトサン含有組成物に抗菌性を付与することができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれにより制限されるものではない。なお、実施例中の百分率は重量によるものとする。
(実施例1)
市販のキトサン(甲陽ケミカル株式会社製、SK-10 脱アセチル化度 84.4%、粘度 7cps(1%水溶液、20℃))100重量部を、水800重量部に分散させ、酢酸100重量部を加え、撹拌しながら溶解し、10%キトサン酢酸水溶液を調製した。
市販のPVA(日本合成化学工業株式会社製、GH-20 鹸化度 88mol%、粘度 43cps(4%水溶液、20℃))100重量部を水900重量部に分散させ、撹拌しながら溶解し10%PVA水溶液を調製した。
【0029】
ついで、この10%キトサン酢酸水溶液20重量部と10%ポリビニルアルコール水溶液80重量部に、架橋剤としてM−3(住友化学工業株式会社製)0.4重量部と、添加剤としてグリセリン1重量部を加えて撹拌混合し、この水系混合液を減圧脱泡した。M−3はN−メチロール基あるいはN−アルコキシメチル基を最大6つ有するメラミンを主成分とするものである。
この脱泡した水系混合液を平滑なポリエステルフィルム上に流延し、熱風乾燥器にて90℃、常圧で30分間、130℃、常圧で30分間順次乾燥し、厚さ30μmの透明なフィルムを得た。
このフィルムの引張強度は6.9kgf/mm2、伸び率は69%であった。
【0030】
一方、上述の脱泡した水系混合液をポリエステルフィルム上に流延し、熱風乾燥器にて50℃、常圧で1夜放置後、ポリエステルフィルムから剥離して50℃、常圧で1日乾燥した。
さらに減圧乾燥器にて80℃、10mmHgで8時間減圧乾燥し、厚さ120μmの透明なフィルムを得た。
このフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ63.5%と0%であり、JIS K7114に準じた耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率は、それぞれ81.3%と70%であった。
【0031】
(実施例2)
実施例1で調製した10%キトサン酢酸水溶液20重量部と10%ポリビニルアルコール水溶液80重量部に、架橋剤としてM−3 0.8重量部と、添加剤としてグリセリン1重量部を加えて撹拌混合した水系混合液を減圧脱泡した。
この脱泡した水系混合液から実施例1の厚さ30μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムの引張強度は7.2kgf/mm2、伸び率は48%であった。
また、実施例1において厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ83.0%と62.3%であり、耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率は、それぞれ85.3%と82.7%であった。
なお2.18×105個の一般生菌を用いたシェークフラスコ法による抗菌性試験を行ったところ、24時間後の菌数はブランクでは2.00×106個に増加したのに対して、厚さ120μmのフィルムでは3.00×103個に減少していた。
【0032】
(実施例3)
実施例1で調製した10%キトサン酢酸水溶液20重量部と10%ポリビニルアルコール水溶液80重量部に、架橋剤としてM−3 0.8重量部と、添加剤としてグリセリン5重量部を加えて撹拌混合した水系混合液を減圧脱泡した。
この脱泡した水系混合液から実施例1の厚さ30μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムの引張強度は7.5kgf/mm2、伸び率は73%であった。
また、実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ73.8%と51.7%であり、耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率はそれぞれ78.4%と73.4%であった。
【0033】
(実施例4)
実施例1で調製した10%キトサン酢酸水溶液30重量部と10%ポリビニルアルコール水溶液70重量部に、架橋剤としてM−3 0.8重量部と、添加剤としてグリセリン5重量部を加えて撹拌混合した水系混合液を減圧脱泡した。
この脱泡した水系混合液から実施例1の厚さ30μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムの引張強度は8.2kgf/mm2、伸び率は59%であった。
また、実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ73.0%と45.9%であり、耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率はそれぞれ81.1%と80.9%であった。
【0034】
(実施例5)
実施例4で得られた厚さ30μmのフィルムを、フィルム作製に使用した酢酸量の10倍モル量の水酸化ナトリウム0.1規定水溶液中に30分間浸漬した後、流水で1時間洗浄し、熱風乾燥器にて50℃、常圧で24時間乾燥した。得られたフィルムの引張強度は11.1kgf/mm2、伸び率は61%であった。
また、実施例4で得られた厚さ120μmのフィルムを、フィルム作製に使用した酢酸量の10倍モル量の水酸化ナトリウム0.1規定水溶液中に30分間浸漬した後、流水で1時間洗浄し、熱風乾燥器にて50℃、常圧で24時間乾燥した。 このフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ97.9%と80.2%であり、耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率はそれぞれ96.6%と92.5%であった。
【0035】
(比較例1)
実施例1で調製した10%キトサン酢酸水溶液20重量部と10%ポリビニルアルコール水溶液80重量部を撹拌混合した水系混合液を減圧脱泡した。
この脱泡した水系混合液から実施例1の厚さ30μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムの引張強度は6.7kgf/mm2、伸び率は81%であった。
また、実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを土中に埋め込み、1週間後の残存率を測定したところ、0%であり、耐水性試験における1週間後の残存率は39.6%であった。
【0036】
(比較例2)
実施例1で調製した10%ポリビニルアルコール水溶液100重量部に、架橋剤としてM−3 0.8重量部と、添加剤としてグリセリン1重量部を加えて撹拌混合した水系混合液を減圧脱泡した。
この脱泡した水系混合液から実施例1の厚さ30μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムの引張強度は3.4kgf/mm2、伸び率は86%であった。
また、実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを土中に埋め込み、1週間後と12週間後の残存率を測定したところ、それぞれ89.9%と80.1%であり、耐水性試験における1週間後と12週間後の残存率はそれぞれ90.6%と79.8%であった。
なお実施例2と同時にシェークフラスコ法による抗菌性試験を行ったところ、24時間後の菌数はブランクの2.00×106個に対して、2.21×105個に減少したが、実施例2のような顕著な菌数減少は見られなかった。
【0037】
(比較例3)
実施例1で調製した10%キトサン酢酸水溶液100重量部を減圧脱泡した。この脱泡した水溶液から、実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを用いた耐水性試験における1週間後の残存率は15.0%であった。
【0038】
(比較例4)
実施例1で調製した10%ポリビニルアルコール水溶液100重量部を減圧脱泡した。この脱泡した水溶液から実施例1の厚さ120μmのフィルムを作製したのと同様の流延・乾燥操作で得られたフィルムを用いた耐水性試験における1週間後の残存率は0%であった。
【0039】
実施例1〜5および比較例1〜4で得られたフィルムの引張強度、伸び率、土中埋め込み残存率、耐水性残存率、沸騰水吸水率における残存率、抗菌性試験結果を表1に示す。
これらの結果より、本発明の実施例においては、キトサンの配合によってキトサン無配合のポリビニルアルコールよりも生分解性速度をはやめ、機械的強度を向上させる傾向があること、架橋剤の配合によって耐水性の向上と生分解性速度の調整ができることから、生分解性樹脂として好ましい特性を有することがわかった。さらに、アルカリ処理することにより大幅に耐水性が向上すること、グリセリンの配合によって耐水性は幾分低下する傾向があるものの伸び率が向上することがわかった。
また、酢酸が残存する場合には抗菌性を有することが確認された。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、水系混合液の調整時にキトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤の配合量を調節することによって、容易に生分解性速度などを調整することができる。
また、本発明の生分解性キトサン含有組成物は、キトサン、ポリビニルアルコールの相溶性が良好であることから、透明性、表面の平滑性が良好な生分解性樹脂であって、各種容器、発砲体などの樹脂成形体、包装用、農業用などのフィルムなどに用いることができる。また、製造時に調整するキトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤を含む水系混合液を用いることによってコーティング樹脂として使用することができる。
また、キトサン、ポリビニルアルコール、架橋剤を含む水系混合液に有機酸を添加し、これを生分解性キトサン含有組成物中に残存させることにより、生分解性キトサン含有組成物に抗菌性を付与することができる。
また、架橋結合によって実用可能な耐水性が付与されているのと同時に、ポリビニルアルコールを含有するため、従来の生分解性樹脂よりも親水性である。このため、微生物による生分解が進行しやすい。
さらに、材料としてポリマーを用いるので、重合工程を経ずに、比較的簡便に高分子量のものが得られ、強靱な機械的強度を有するものとすることができる。さらに製造過程が簡便で、重合工程や特殊な粉砕、分散などの工程が必須ではないので、工業規模での実施が比較的容易で、製造効率がよい。
Claims (2)
- キトサンと、ポリビニルアルコールと、N−アルコキシメチル基、N−メチロール基、カルボジイミド基、イソシアネート基のいずれかを2つ以上含む化合物と、グリセリンを含む水系混合液を乾燥固化して得られたことを特徴とする生分解性キトサン含有組成物。
- キトサンと、ポリビニルアルコールと、N−アルコキシメチル基、N−メチロール基、カルボジイミド基、イソシアネート基のいずれかを2つ以上有する化合物と、グリセリンを含む水系混合液を乾燥固化することを特徴とする生分解性キトサン含有組成物の製造方法。
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