JP2022076172A - でんぷん造粒物 - Google Patents

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Abstract

【課題】でんぷん造粒物の取り扱性、でんぷん造粒物の生産性、適用可能樹脂の汎用性、熱可塑性樹脂組成物中でのでんぷんの分散性等に優れるでんぷん造粒物を提供すること。【解決手段】本発明のでんぷん造粒物は、でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを含み、該でんぷん用滑剤が、界面活性剤およびでんぷん用可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部であり、該でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。【選択図】図1

Description

本発明は、でんぷん造粒物に関する。
近年、生分解性樹脂や熱可塑性樹脂に有機系もしくは無機系の充填剤を混合した組成物が多数提案されている。これら充填剤の中で、「でんぷん」は比較的安価な有機系充填剤であり、でんぷんを上記生分解性樹脂や熱可塑性樹脂の増量剤、バイオ度向上剤、あるいは生分解促進剤として含む熱可塑性樹脂(以下、でんぷん含有樹脂組成物とも称す)が注目されている。特許文献1~4では、熱可塑性樹脂とでんぷんを含む樹脂組成物が提案されているが、粉体状のでんぷんを溶融混練装置(その代表として押出機が挙げられる)に供給し、溶融ブレンドすることにより組成物を得ようとした場合、当該でんぷんが嵩密度の小さな粉体であるために、溶融混練装置への供給が容易でなく、でんぷん含有樹脂組成物の生産性が極めて低いという問題がある。また、上記でんぷん含有樹脂組成物では、でんぷんの自己凝集力が強いために、樹脂マトリックス中でんぷんを良分散させるのは容易でないという問題がある。
特開2009-120651号公報 特許第3477440号 特許第4364435号 特許第2961135号
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、でんぷん造粒物の取り扱性、でんぷん造粒物の生産性、適用可能樹脂の汎用性、熱可塑性樹脂組成物中でのでんぷんの分散性等に優れるでんぷん造粒物を提供することにある。
本発明のでんぷん造粒物は、でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを含み、該でんぷん用滑剤が、界面活性剤およびでんぷん用可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部であり、該でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。
1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~5重量部であり、上記でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~5重量部である。
1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部であり、上記でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部である。
1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類が、プルランおよびデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記界面活性剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記でんぷん用可塑剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記でんぷんが、α化でんぷんである。
1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物は、水分含有率が、1重量%~30重量%である。
本発明の別の局面によればでんぷん造粒物の製造方法が提供される。このでんぷん造粒物の製造方法は、でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒する造粒工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記混合工程において、水をさらに混合することを含み、該水の配合量が、上記水溶性多糖類1重量部に対して、5重量部~20重量部である。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒することを含む。
本発明によれば、でんぷん造粒物の取り扱性、でんぷん造粒物の生産性、適用可能樹脂の汎用性、熱可塑性樹脂組成物中でのでんぷんの分散性等に優れるでんぷん造粒物を提供することができる。
実施例1で得られたでんぷん造粒物の外観写真である。 実施例10の評価結果(樹脂組成物中のおけるでんぷんの分散性)を示す外観写真である。
A.でんぷん造粒物の概要
本発明のでんぷん造粒物は、でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを含む。でんぷん用滑剤は、界面活性剤およびでんぷん用可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。水溶性多糖類の含有割合は、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。でんぷん用滑剤の含有割合は、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。
本発明のでんぷん造粒物は、でんぷん含有樹脂組成物の製造で使用され、樹脂組成物の溶融混練時に添加して用いられ得る。
1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物は、でんぷんと、水に溶解した水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを含む混合物を任意の適切な方法により加工して得ることができる。
本発明においては、上記水溶性多糖類とでんぷん用滑剤を添加して製造することにより、優れた生産効率で製造され得、かつ、品質安定性(形状安定性、ペレット硬度の均一性、低微粉混入)に優れるでんぷん造粒物を得ることができる。また、上記でんぷん造粒物を用いて上記でんぷん含有樹脂組成物を調製すれば、当該樹脂組成物の生産性向上を図ることができる。具体的には、上記でんぷん造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該でんぷん造粒物を用いれば、でんぷん含有樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができる。さらに、上記でんぷん造粒物は、設備の清浄機能も有しているので、設備の切り替え清掃の時間の大幅短縮を可能とし得る。さらに、本発明のでんぷん造粒物を使用して得られたでんぷん含有樹脂組成物は、優れたでんぷん分散性を有する。また、本発明のでんぷん造粒物は、成形加工性(高流動性)を高める効果を有するため、本発明のでんぷん造粒物を使用して得られ得るでんぷん含有樹脂組成物は、高濃度にでんぷんを含みながらも、押出機の負荷を低減させることができ、樹脂の過剰発熱を抑制して、樹脂やでんぷんの熱劣化を抑えた溶融混練が可能となり、優れた機械的性能と成形加工性が付与されたでんぷん含有樹脂組成物を得ることができる。このような効果を奏する本発明のでんぷん造粒物を用いれば、でんぷん含有樹脂組成物製造の低コスト化のみならず、高性能化を図ることができる。
1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、上記効果が顕著となる。
上記でんぷん造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記でんぷん造粒物は円筒状(ペレット状)である。
上記でんぷん造粒物が円筒状である場合、上記でんぷん造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、でんぷん造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~5mmである。このような形状であれば、樹脂(特に熱可塑性樹脂)に好ましく組み合わせて用いられる得るでんぷん造粒物を得ることができる。でんぷん造粒物の直径は、造粒の際のダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。でんぷん造粒物を、組み合わせて用いられる樹脂(特に熱可塑性樹脂)のペレットサイズに合わせることにより、ハンドリング性が向上し、また、溶融コンパウンドにおけるでんぷんの分散性が良くなる。
上記フィラー造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~8kgであり、さらに好ましくは1.0kg~7kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性とでんぷん分散性に優れる。ここで、破壊応力とは、20粒以上について測定した平均の崩壊応力を示す。
上記でんぷん造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記でんぷん造粒物の水分量は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物の水分含有率は、好ましくは0.1重量%~30重量%であり、より好ましくは0.5重量%~30重量%であり、さらに好ましくは1重量%~30重量%であり、特に好ましくは1重量%~20重量%であり、最も好ましくは17重量%~20重量%である。このような範囲であれば、樹脂組成物の溶融混練時、でんぷんが、β構造からα化構造に容易に変化し得る。
上記でんぷん造粒物の嵩密度は、好ましくは0.3g/cm~1.0g/cmであり、より好ましくは0.4g/cm~0.8g/cmであり、更に好ましくは、0.5g/cm~0.7g/cmである。嵩密度を上げることで、樹脂(特に熱可塑性樹脂)との溶融混練を行う際に、でんぷん造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。
A-1.でんぷん
上記でんぷんとしては、任意の適切なでんぷんが用いられる。代表的には、でんぷんは粉末状で添加される。でんぷんは1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
1つの実施形態においては、上記でんぷんは、生でんぷんである。生でんぷんとしては、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、甘藷、小麦、キャッサバ、サゴ、モロコシ、コメ、マメ、クズ、ワラビ、ハス、ヒシなどから得られるでんぷんが挙げられる。
別の実施形態においては、上記でんぷんは、加工でんぷんである。加工でんぷんとしては、例えば、物理的変性でんぷん(例えば、α化でんぷん、分別アミロース、湿熱処理でんぷん等)、酵素変性でんぷん(例えば、加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等)、化学分解変性でんぷん(例えば、酸処理でんぷん、次亜塩素酸酸化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等)、化学変性でんぷん誘導体(例えば、エステル化でんぷん、エーテル化でんぷん、カチオン化でんぷん、架橋でんぷん等)が挙げられる。
上記エステル化でんぷんの具体例としては、酢酸エステル化でんぷん、コハク酸エステル化でんぷん、硝酸エステル化でんぷん、リン酸エステル化でんぷん、尿素リン酸エステル化でんぷん、キサントゲン酸エステル化でんぷん、アセト酢酸エステル化でんぷん等が挙げられる。
上記エーテル化でんぷんとしては、例えば、アリルエーテル化でんぷん、メチルエーテル化でんぷん、カルボキシメチルエーテル化でんぷん、ヒドロキシエチルエーテル化でんぷん、ヒドロキシプロピルエーテル化でんぷん等が挙げられる。
上記架橋でんぷんとしては、例えば、ホルムアルデヒド架橋でんぷん、エピクロルヒドリン架橋でんぷん、リン酸架橋でんぷん、アクロレイン架橋でんぷん等が挙げられる。
上記α化でんぷんとは、結晶構造(β構造)を有する生でんぷんを、適当な量の水分の存在下、およそ70℃以上の温度環境で、β構造が崩れて非晶構造(α構造)に変化したでんぷんである。このように、生でんぷんが、水分を含んで加熱されることでβ構造からα構造に変化することを「糊化(のりか)する」と呼ばれるが、α構造のでんぷんはβ構造であった場合と比較して、熱可塑性樹脂中でのでんぷんの分散性に極めて優れるので、好ましい。上記α化でんぷんは、水分を含んだまま低温に放置されると、元のβ構造の結晶状態に戻る現象(「老化(ろうか)」と称する)が起こりうる。α化でんぷんの非晶状態から素早く水分を取り除けば、α構造を維持することができることが知られている。具体的には、水分の存在下で加熱して糊化させた後、そのまま真空装置により雰囲気を減圧することで、脱水されたα構造のでんぷんを得ることができる。β構造のでんぷんが加熱されてα化構造になるのには、通常、水分含有量が17%以上であることが好ましいとされている。
1つの実施形態においては、上記でんぷんの平均1次粒径は1μm~100μmの範囲であり、代表的な例としては、コーンスターチ15μm、ジャガイモ50μm、タピオカ(キャッサバ)20μm、米5μm、小麦10-20μm、甘藷15μm、サゴ30μm、緑豆20μm程度の一次粒子径を有する。上記でんぷんの平均1次粒径は、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmである。このような範囲であれば、造粒の生産性に優れるでんぷん造粒物を得ることができる。でんぷんの平均粒子径は顕微鏡観察による形態観察で求めることができる。即ち、顕微鏡下で観察される粉体の写真を撮影し、不作為に抽出された50個のでんぷんの算術平均(数平均)で求めるものとする。
A-2.水溶性多糖類
上記水溶性多糖類とは、グルコースやマンノース等の単糖が長くつながった構成された水溶性の化合物を意味する。1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類は、10個以上の単糖が結合することで構成されている水溶性の炭水化物である。上記水溶性多糖類は、高い親水性を有するため、増粘、結着性、ゲル化、保水性等の機能を発現し、本発明においては、でんぷん造粒物の形状安定性、硬度の向上、水分の保持などの機能を発現する。
1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類は、天然由来の高分子物質であり得る。例えば、植物由来(種子や樹液、果実等)、海藻由来、微生物由来の水溶性多糖類が用いられ得る。
上記水溶性多糖類の具体的例としては、プルラン、デキストリン、キトサン、タマリンドシードガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラヤガム、ペクチン、セルロース、コンニャクマンナン、大豆多糖類、カラギナン、寒天、トラガントガム、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、カルボキシメチルセルロース、カチオン化グアーガム等が挙げられる。なかでも、プルランまたはデキストリンが好ましく、より好ましくはプルランである。水溶性多糖類は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記デキストリンは、デンプンまたはグリコーゲンの加水分解で得られる低分子量の炭水化物である。デンプンの糖化率(DE)により、粉あめ(DEが20~40程度)、マルトデキストリン(DEが10~20程度)、デキストリン(DEが10以下)に分類される。
上記プルランとは、グルコースのみからなる多糖類である。プルランはでんぷんを原料とした植物由来の微生物発酵産物であり、水溶性であり、保水性、増粘性、潤滑性、接着性、結着性、皮膜性、等の特徴を有する。また、プルランは熱分解温度が290℃付近であり、でんぷん造粒物の熱可塑性樹脂への使用に適した耐熱性を有するため、とりわけ好ましい。
上記のとおり、上記水溶性多糖類の含有割合は、上記のでんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。上記水溶性多糖類の含有割合は、上記でんぷん100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~5重量部であり、より好ましくは0.2重量部~7重量部であり、さらに好ましくは0.3重量部~5重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~3重量部である。このような範囲であれば、上記本発明の効果は顕著となる。1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類の含有割合は、上記でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部である。
A-3.でんぷん用滑剤
上記のとおり、上記でんぷん用滑剤は、界面活性剤、でんぷん用可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記のとおり、でんぷん用滑剤の含有割合は、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である。でんぷん用滑剤の含有割合は、上記でんぷん100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~5重量部であり、より好ましくは0.2重量部~7重量部であり、さらに好ましくは0.3重量部~5重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~3重量部である。このような範囲であれば、上記本発明の効果は顕著となる。1つの実施形態においては、上記でんぷん用滑剤の含有割合は、上記でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部である。
(界面活性剤)
上記界面活性剤は、疎水基と親水基とから構成される化合物であり、親水性/疎水性バランスは、界面活性剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。上記界面活性剤は、本発明のでんぷん造粒物の造粒性(でんぷん造粒物の、時間当たりの生産速度の向上、硬度の向上、均一性の向上、造粒設備の清掃性の向上等を例示することができる)を高める効果を有するばかりか、当該でんぷん造粒物と熱可塑性樹脂とを混合して、でんぷん含有樹脂組成物を得る際に、でんぷんの分散性、流動性向上、可塑化、滑性等を付与する効用を奏する。上記界面活性剤の効果の中で、造粒性の向上は、でんぷん造粒物の製造において、滑り性を与えるために、でんぷん造粒の際に発生する摩擦熱の発生を低減し、でんぷんの糊化を抑制できることに起因するものであり、本発明が奏する驚くべき効果である。
上記界面活性剤は、乳化剤(例えば、食品添加物として用いられる乳化剤)であってもよい。
1つの実施形態においては、上記界面活性剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。
上記多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール;該アルカンポリオールの重合体であるポリアルカンポリオール;ショ糖などの糖類;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコールに代表される糖誘導体等が挙げられる。これらのアルコールは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、任意の適切な脂肪酸が用いられ得る。1つの実施形態においては、炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸が用いられる。脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12-ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。なかでも好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸である。脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、上記多価アルコールと脂肪酸をエステル化反応させることで得られ得る。上記多価アルコール脂肪酸エステルの具体例として、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、油脂(ヤシ油、パーム油、大豆油、ヒマシ油、等)、油脂硬化油(ヤシ油硬化油、パーム極度硬化油、等)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、食品用乳化剤として使用される、グリセリンジアセテートモノラウレート、ジグリセリンステアレート、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等を挙げることができる。多価アルコール脂肪酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。
上記ポリグリセリンとしては、任意の適切なポリグリセリンが用いられ得る。上記ポリグリセリンの具体例としては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、エイコサグリセリン、テトラコンタグリセリン等が挙げられる。なかでも好ましくは、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタグリセリンまたはデカグリセリンである。ポリグリセリンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する上記脂肪酸としては、任意の適切な脂肪酸が用いられ得る。1つの実施形態においては、炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸が用いられる。脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12-ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。なかでも好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸である。脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは50%~70%である。このような範囲であれば、製造安定性に優れるでんぷん造粒物を得ることができる。また、当該でんぷん造粒物は、樹脂(特に、熱可塑性樹脂)に対する分散性に優れる。エステル化率(%)は、エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/ポリグリセリンの水酸基の数)×100の式で表される。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、ポリグリセリンと脂肪酸とを、触媒(例えば、リン酸、p-トルエンスルホン酸、苛性ソーダ)の存在下または無触媒で、100℃~300℃(好ましくは120℃~260℃)で、生成水を系外除去しながら、反応させることにより得ることができる。上記反応は不活性ガスの存在下で行うのが好ましい。また、トルエン、キシレン等の共沸溶剤中で行ってもよい。
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、縮合ヒドロキシ脂肪酸とアルコールとをエステル化反応させることで得られ得る。上記縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、例えば、上記縮合ヒドロキシ脂肪酸とアルコールとを混合し、得られた混合物に苛性ソーダ等のアルカリ触媒または燐酸等の酸触媒を添加し、加熱下で反応水を除去することにより、得ることができる。この反応中のエステル化の進行度は酸価、ケン化価、水酸基価等を測定することで確認することができる。ここで、縮合ヒドロキシ脂肪酸とは、ヒドロキシ脂肪酸を脱水縮合して得ることができる化合物である。縮合ヒドロキシ脂肪酸は、例えば、ヒドロキシ脂肪酸に苛性ソーダ等のアルカリ触媒を添加し、加熱下で反応水を除去することにより脱水縮合して、得ることができる。
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ脂肪酸の縮合体であり、その縮合度は、好ましくは2以上であり、より好ましくは4以上である。縮合ヒドロキシ脂肪酸の縮合度の上限は、例えば、20である。なお、縮合度とは、原料ヒドロキシ脂肪酸の酸価と縮合反応後の酸価とから計算して求めることができる。
上記ヒドロキシ脂肪酸は、分子内に1個以上の水酸基を有する脂肪酸である。ヒドロキシ脂肪酸の具体例としては、例えば、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、サビニン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2-ヒドロキシオクタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸、カムロレン酸、フェロン酸、セレブロン酸等が挙げられる。ヒドロキシ脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの二価アルコール等が挙げられる。また、上記アルコールとして、多価アルコールを用いてもよい。多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール;該アルカンポリオールの重合体であるポリアルカンポリオール;ショ糖などの糖類;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコールに代表される糖誘導体等が挙げられる。これらのアルコールは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルの具体例としては、例えば、縮合リシノレイン酸とグリセリン6重合体のヘキサグリセリンのエステルである縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンエステル、縮合リシノレイン酸とグリセリン4重合体のテトラグリセリンのエステルである縮合リシノレイン酸テトラグリセリンエステル、縮合12ヒドロキシステアリン酸とプロピレングリコールのエステルである縮合12ヒドロキシステアリン酸プロピレングリコールエステル、縮合リシノレイン酸とプロピレングリコールとのエステルである縮合リノレイン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記縮合ヒドロキシのアルコールエステルは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、太陽化学(株)社製の「チラバゾールP-4」、「チラバゾールVR-01」、「チラバゾールVR-08」、「チラバゾールH-818」等が挙げられる。
上記界面活性剤の含有割合は、でんぷん100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.2重量部~7重量部であり、さらに好ましくは0.3重量部~5重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~3重量部である。このような範囲であれば、本発明の上記効果が顕著となる。
(でんぷん用可塑剤)
でんぷん用可塑剤とは、でんぷんの分子構造中に取り込まれ、相溶化され、柔軟性や流動性等を付与する作用をもたらす化合物をいう。なお、本明細書において、水は、でんぷん用可塑剤に該当しないものとする。
上記でんぷん用可塑剤の具体例としては、n-オクチルアルコール、イソデシルアルコール、n-デシルアルコール、等の高沸点アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3-メチル-1,3,5-ペンタトリオール、ソルビトール等の多価アルコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体等のポリアルキレンオキシド等が挙げられる。1つの実施形態においては、でんぷん用可塑剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記でんぷん用可塑剤の別の例としては、低分子量脂肪族ポリエステルが挙げられる。低分子量脂肪族ポリエステルとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール等のジオールとアジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸との縮重合物;カプロラクトン、乳酸、ヒドロキシ酪酸等の低重合体からなるヒドロキシアルカノエート等が挙げられる。なかでも、末端のカルボン酸を炭素数2から8のアルコールでエステル化して構成される低分子量脂肪族ポリエステルが好ましく用いられる。
でんぷん用可塑剤の含有割合は、でんぷん100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.3重量部~5重量部であり、さらに好ましくは0.5~3重量部である。このような範囲であれば、でんぷんの分散性と樹脂の溶融流動性に優れる樹脂組成物を形成し得るでんぷん造粒物を得ることができる。
A-5 その他の成分
本発明のでんぷん造粒物は、必要に応じて、任意の適切な、その他の成分(添加剤)をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤等が挙げられる。添加剤は、液体、粉体、ペレット、顆粒の形態、またはマスターバッチ等の形態で、でんぷん造粒物の造粒時、あるいは樹脂コンパウンドの工程において配合することができる。
1つの実施形態においては、上記添加剤は、半湿式造粒機で造粒処理を行う際にでんぷん造粒物に配合することができる。
1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物は、トレハロースを含む。トレハロースを配合することで、でんぷん造粒物の硬度を向上させることができる上、でんぷん含有樹脂組成物中のでんぷんの経時的な劣化を抑制することができる。
B.でんぷん造粒物の製造方法
上記でんぷん造粒物は、任意の適切な方法によって製造することができる。上記でんぷん造粒物は、例えば、上記でんぷんと水溶性多糖類とでんぷん用滑剤とを含む混合物を、半湿式造粒法に供することにより得ることができる。1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物の製造方法は、でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物から造粒物を得る造粒工程とを含む。混合工程においては、水をさらに混合してもよい。でんぷん、水溶性多糖類およびでんぷん用滑剤は、A項で説明したものが用いられ得る。
添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
上記の混合工程において、配合される水の配合量は、通常、でんぷん100重量部に対し、1重量部~30重量部であり、2重量部~20重量部が好ましく、3重量部~17重量部が更に好ましい。なお、本発明でんぷん造粒物で使用される原料としてのでんぷん粉末は、所定量の水分を有し得るが、上記の水の配合量は原料でんぷん粉末が有する水分量を除く配合部数である。
1つの実施形態においては、混合工程における水の配合量は、水溶性多糖類の配合量に応じて、調整される。混合工程における水の配合量は、水溶性多糖類の配合量1重量部に対し、例えば1重量部~30重量部であり、好ましくは3重量部~25重量部であり、より好ましくは5重量部~20重量部の配合である。
1つの実施形態においては、混合工程において、粉体状の原料(でんぷん、水溶性多糖類、でんぷん用滑剤(界面活性剤および/またはでんぷん用可塑剤)、その他の添加剤)を混合して粉体混合物を得;別途、液体状の原料(水、でんぷん用滑剤(界面活性剤またはでんぷん用可塑剤))を混合して混合液(懸濁分散液でもよい)を得;その後、粉体混合物に、混合液を徐々に配合する。このようにすれば、混合時間を短くすることができる。例えば、上記水溶性多糖類を予め水に溶かした水溶液として配合することもできるが、多糖類水溶液の溶液粘度が大きくなりすぎるため、混合時間を長くする必要が生じる。
上記混合工程で得られる混合物は、水溶性多糖類が、でんぷん粒子の表面を広範囲で均一に覆うことができるので、バインダーとして十分かつ均質性の高い結着力を発現する。このため、でんぷん造粒物の造粒性と生産性が著しく向上し、得られた造粒物の適度な硬度発現(形状保持性)や微粉低減性を奏する。
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)等が挙げられる。
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、でんぷんの表面が多糖類水溶液で十分かつ均一に被覆されるように、混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、ダブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られるでんぷん造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、でんぷん混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状のでんぷん造粒物を得ることができる。造粒物の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
ディスクペレッター方式の造粒機は、通常、加熱・冷却システムを有しない場合が多いが、運転時に発生するせん断発熱により、昇温する。造粒工程において、造粒中の温度が、でんぷんの糊化温度(およそ70℃以上)となると、でんぷんの糊化が生じて造粒が困難となるおそれがある。造粒時のせん断発熱により、でんぷんが糊化しないように、必要に応じて、冷却用ジャケットを装着して、ディスクペレッターを冷却することが好ましく、造粒温度を、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下に制御することが好ましい。
造粒工程においては、必要に応じて水分量の適正化のために、造粒物(または造粒物前駆体)を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。また、造粒物の乾燥前、あるいは乾燥後に、振動ふるい等の処理を行うことで、微粉を除去したでんぷん造粒物が得られ得る。乾燥には、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
C.樹脂とでんぷん造粒物の溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記でんぷん造粒物と樹脂との溶融コンパウンドが提供される。当該樹脂としては、好ましくは、熱可塑性樹脂が用いられる。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、高温での樹脂との混練では、でんぷんの変質が生じるため、加工可能な温度が200℃以下、好ましくは180℃以下である熱可塑性樹脂が好ましく使用される。
上記熱可塑性樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン (PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン系エラストマー(SBS)、水添スチレン・ブタジエン系エラストマー(SEBS)、スチレン・イソプレン系エラストマー(SIS)、水添スチレン・イソプレン系エラストマー(SEPS)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、ポリ酢酸ビニル (PVAc)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂 (PMMA)等が挙げられる。
また、上記樹脂として、生分解性樹脂を用いてもよい。当該生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性した物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)等、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。また、天然由来の生分解性樹脂として天然ゴム等を挙げることができる。生分解性樹脂に上記でんぷん造粒物を用いて、でんぷんを配合することで、樹脂の機械的性質や、バイオ度、更には用途に応じて生分解速度を調節することができ、単独あるいは2種類以上の併用、またはオレフィン樹脂と併用して用いることができる。
熱可塑性樹脂の配合比率は所望の特性並びに用途に応じて任意の適切な配合比率とされ得る。
溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは2軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練された組成物はペレット化される。
溶融コンパウンドにおいて、でんぷん造粒物は、通常、80℃~170℃、好ましくは100℃~160℃の温度範囲で樹脂と溶融混練することで、でんぷん含有樹脂組成物を製造することができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
[実施例1]
粉体用ニーダー(ダルトン社製、商品名「KDHJ-10」;処理量:6L)に、でんぷん(三和澱粉工業(株)、トウモロコシ原料の生澱粉、商品名「コーンスターチY」;表中、「A-1」)100重量部、水溶性多糖類であるプルラン(林原社製、表中;「B-1」)1重量部、その他の成分としてトレハロース(林原社製、表中;「E-1」)1重量部を投入し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、6分間の攪拌処理を行い、粉体混合物Aを得た。
これとは別に、1Lのプラ容器に、水13部、界面活性剤としてのポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(太陽化学社製、商品名「チラバゾールH818」;表中、「C-1」)1重量部、でんぷん用可塑剤としてのグリセリン1重量部を計りとり、室温下で十分攪拌して、水分散混合物Bを得た。
粉体用ニーダー中の粉体混合物Aに対し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、水分散混合物Bを徐々に添加し、水分散混合物Bの全量を配合した後、更に6分間の攪拌処理を行い、粉体混合物Aと水分散混合物Bの混合物(混合物C)を得た。
混合物Cを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175;容量:5L」)に投入し、ペレッド状のでんぷん造粒物を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとし、でんぷん造粒物(MB-1)を得た。
得られたでんぷん造粒物(MB-1)の造粒直後の温度を接触式熱電対で測定したところ、55℃であった。また、水分量を測定したところ、23.4重量%であった。
[実施例2~9、比較例1~10]
表1に示すでんぷん、水溶性多糖類、でんぷん用滑剤(界面活性剤および/またはでんぷん用可塑剤)、その他の成分を、表1に示す配合量(表中単位:重量部)で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、でんぷん造粒物MB-2~MB-9、MB-C1~MB-C10を得た。
実施例1~9、および比較例1~10で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示す通りである。
Figure 2022076172000002
Figure 2022076172000003
<評価>
実施例1~9、比較例1~10で得られたフィラー造粒物を下記の評価に供した。結果を表3に示す。また、でんぷん造粒物(MB-1)の外観写真を図1に示す。

(1)造粒性
得られたフィラー造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 直径3mmφの造粒物が得られる。
△: でんぷん造粒物の形態になるが、結着力が不足して、崩壊しやすい。
×: でんぷんがダイスに目詰まりする、もしくは、でんぷんの結着性がなく、粒状物にならない。

(2)造粒速度
時間当たりのでんぷん造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。

(3)造粒物温度
接触式の熱電対を用いて、造粒直後のでんぷん造粒物の温度(単位:℃)を測定した。

(4)崩壊強度
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、でんぷん造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値はでんぷん造粒物20粒の平均値とした。

(5)微粉量
でんぷん造粒物を1kg計量し、14メッシュの篩にかけ、微粉量の質量割合(単位:重量%)を測定した。

(6)嵩密度
でんぷん造粒物を1リットルの升を用いて、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、でんぷん造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。

(7)ペレットサイズ
でんぷん造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径を平均値を測定した。

(8)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、でんぷん造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。
Figure 2022076172000004
表3に示す通り、MB-1~MB-9では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状のでんぷん造粒物を得ることができる。一方、MB-C1~ MB-C10では、でんぷん造粒物が得られない、もしくは崩壊強度の小さなでんぷん造粒物であった。MB-C1~MB-C3、およびMB-C5は、でんぷん用滑剤の配合を欠く例であるが、造粒中の発熱により、でんぷんの糊化が進行し、でんぷんがダイスに目詰まりした。
[実施例10]
PBAT樹脂(BASF社製、商品名「エコフレックスF Blend C1200」、MFR3.8g/10min)60重量部と、でんぷん造粒物(MB-1)40重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、でんぷん含有樹脂組成物のペレットを製造した。
PBAT樹脂とでんぷん造粒物MB-1は、それぞれ独立に、重量式フィーダーを介して、定量的に二軸押出機に押出機の最上流部のホッパー位置から投入した。
押出機のシリンダー温度は、押出機の前段部を140℃、中段部を120℃、後段部を140℃に設定した。
2軸押出機の設定条件(吐出速度、主スクリューの回転数)は表4に示す通りである。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
[実施例11]
押出機の中段部に、液添加ノズルを装着し、ギアポンプを使用して、PBAT樹脂とでんぷん造粒物の合計100重量部に対し、5部の水を注入したこと以外は、実施例10と同様にして、でんぷん含有樹脂組成物のペレットを製造した。
[実施例12]
吐出速度を20kg/hとし、押出機の前段部を120℃とし、主スクリューの回転数を200rpmとしたこと以外は、実施例10と同様にして、でんぷん含有樹脂組成物のペレットを製造した。
[実施例13]
吐出速度を30kg/hとした以外は実施例12と同様にして、でんぷん含有樹脂組成物のペレットを製造した。
[比較例11]
でんぷん造粒物MB-1に代えて、でんぷん粉末A-1を使用したこと以外は、実施例11と同様にして、でんぷん含有樹脂組成物のペレットを製造した。
[比較例12]
吐出速度を30kg/hとした以外は、比較例11と同様にして、でんぷん含有樹脂組成物のペレット製造を試みた。原料投入口ででんぷん粉末A-1の食い込み不良が発生して、安定にペレットを得ることができなかった。
実施例13と比較例12の対比により、でんぷん造粒物MB-1を使用することにより、でんぷん粉末A-1のフィードネックが解消され、高生産性を得ることができ、同時に樹脂中のでんぷん良分散性を同時に満足することができる溶融コンパウンドが可能となることがわかる。
<評価>
実施例10~13および、比較例11で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを下記の評価に供した。結果を表4に示す。
(a)樹脂組成物の吐出速度(単位:kg/Hr)
時間当たりのコンパウンド樹脂組成物の吐出量である。

(b)押出機負荷(単位:%)
二軸押出機、単軸押出機の実測の動力負荷%(許容最大モーター負荷に対する割合)の表示値である。

(c)ダイス部での溶融樹脂温度(単位:℃)
ダイスから押し出される樹脂組成物の温度を接触式熱電対で測定した。

(d)樹脂組成物中のおけるでんぷんの分散性
樹脂組成物のペレットを熱プレスで圧延し、厚み約0.5mmのシートとする。当該シートを透かして、でんぷん凝集物の残存を目視観察し、以下の基準で評価した。実施例10における上記シートの外観写真を図2に示す。
AA: でんぷんの凝集物がほとんど観察されない良好な分散性状態
A: 比較的小さなでんぷんの凝集が微量残存する状態
BB:比較的小さなでんぷんの凝集物がかなり多く残存する状態
B:でんぷんの凝集物が大きい状態
(分散状態の序列: AA>A>BB>B (左良好))

(e)樹脂組成物中のMFR(単位:g/10min)
樹脂組成物のペレットを190℃、5kg荷重の条件(ISO1133準拠)でMFRの測定を行った。
Figure 2022076172000005
表4から明らかなように、本発明によれば、高濃度にでんぷんを含有していながらも、でんぷんの分散性に優れる樹脂組成物を高い生産性で得ることができる。また、実施例11と比較例11のMFRの対比より、本発明のでんぷん粒状物を使用して得られるでんぷん含有樹脂組成物は流動性が高く、加工性に優れることが示される。

Claims (12)

  1. でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを含み、
    該でんぷん用滑剤が、界面活性剤およびでんぷん用可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    該水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部であり、
    該でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~10重量部である、
    でんぷん造粒物。
  2. 前記水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~5重量部であり、
    前記でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~5重量部である、
    請求項1に記載のでんぷん造粒物。
  3. 前記水溶性多糖類の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部であり、
    前記でんぷん用滑剤の含有割合が、でんぷん100重量部に対して、0.1重量部~3重量部である、
    請求項1に記載のでんぷん造粒物。
  4. 前記水溶性多糖類が、プルランおよびデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載のでんぷん造粒物。
  5. 前記界面活性剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかに記載のでんぷん造粒物。
  6. 前記でんぷん用可塑剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載のでんぷん造粒物。
  7. 前記でんぷんが、α化でんぷんである、請求項1から6のいずれかに記載のでんぷん造粒物。
  8. 水分含有率が、1重量%~30重量%である、請求項1から7のいずれかに記載のでんぷん造粒物。
  9. でんぷんと、水溶性多糖類と、でんぷん用滑剤とを混合する混合工程と、
    混合工程を経て得られた混合物を造粒する造粒工程とを含む、
    でんぷん造粒物の製造方法。
  10. 前記混合工程において、水をさらに混合することを含み、
    該水の配合量が、前記水溶性多糖類1重量部に対して、5重量部~20重量部である、
    請求項9に記載のでんぷん造粒物の製造方法。
  11. 前記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む、請求項9または10に記載のでんぷん造粒物の製造方法。
  12. 前記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒することを含む、請求項9から11のいずれかに記載のでんぷん造粒物の製造方法。


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WO2024065981A1 (zh) * 2022-09-30 2024-04-04 江南大学 V-型结晶淀粉制备方法及其作为调味配料的应用

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