JP3798090B2 - ステント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば血管、尿管等の人体の管状器官に挿入され、管状器官の内腔を開いた状態に維持させるためのステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば心筋梗塞等の治療に際して、血管の狭窄部にステントと呼ばれる拡張具を挿入し、血管の閉塞を防止する治療が行われている。また、尿管結石等の治療に際しても、結石が排出されやすくするため、尿管を拡張した状態に維持するために、ステントを使用することがある。
【0003】
一般にステントは、縮径した形状でバルーンカテーテルの先端部外周に装着され、案内カテーテルを通して閉塞患部に挿入された後、バルーンカテーテルのバルーンを膨らませて強制的に押し広げ、その状態で閉塞患部に留置させることにより、管状器官を拡張する。
【0004】
従来のステントの一例として、特開平6−181993号には、半径方向に独立に膨張可能で、共通の軸線に略整列するように相互に連結された複数の円筒形状の要素を、長手方向に可撓性をもたせて連結したステントが開示されている。また、その一例として、波形をなして周方向に伸び、環状に連結された円筒要素を、軸方向に所定間隔で複数配列し、これらの円筒要素の一部を軸方向に伸びる相互連結要素で連結したものが開示されている。
【0005】
また、特公平6−44910号には、一連の直線部分及び複数の屈曲部を含むヘビ状形態に成形され、前記直線部分は前記屈曲部により結合されて一連の互い違いのループを形成し、前記ヘビ状形態は縦方向軸線を有する円筒形状に成形され、前記直線部分は前記軸線を取り巻いて該軸線にほぼ垂直なほぼ円筒形態に曲げられている塑性変形可能なワイヤーからなるステントが開示されている。
【0006】
更に、特開平4−256759号には、形状記憶合金からなる網又は横編みされた円筒部材からなり、形状復帰力によって拡径可能なステントが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−181993号のステントでは、波形をなす円筒要素が広がって拡張したとき、各線部の間隔が広くなってしまう構造であるため、留置後にこの隙間より内皮が増大して再狭窄を起こす虞れがあった。
【0008】
また、特公平6−44910号に開示されたステントでは、直線部分が端面から見てC字形に曲げられているだけなので、拡張後の保持力が弱く、血管内壁の圧力に負けて径が小さくなり、再狭窄をする虞れがあった。
【0009】
更に、特開平4−256759号のステントでは、拡張前後の全長変化が大きく、留置後の長さを考慮してステントを選択しなければならず、緊急時の拡張時に手間がかかるという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、拡張後の再狭窄が起こりにくく、拡張前後における全長変化の小さいステントを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、周方向に拡張不能な枠状の三角形トラス構造をなす拡張不能部と、周方向に拡張可能な枠状の拡張可能部とが、周方向に交互に接続されて円筒状をなしていることを特徴とするステントを提供するものである。
【0012】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記拡張不能部は、周方向に真直ぐに伸びる梁と、その梁を囲む枠とで構成されているステントを提供するものである。
【0014】
本発明の第3は、前記第1又は2の発明において、前記拡張可能部は、周方向に対向する辺が、縮径時には内側に湾曲し、拡径時には外側に湾曲する枠で構成されているステントを提供するものである。
【0015】
本発明の第4は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、三角形トラス構造をなす前記拡張不能部が軸方向に複数連結されて、周方向に幅広の部分と幅狭の部分とが軸方向に交互に設けられた拡張不能列が形成されており、この拡張不能列が周方向に所定間隔をおいて複数配置されることにより、それらの間に幅狭の空間と幅広の空間とが形成され、前記幅狭の空間内で前記拡張不能列の幅広の部分に連結され、端部が前記幅広の空間に向かうに従って互いの距離が拡大するように設けられた、周方向に対向する1対の辺と、この辺の端部どうしを連結する周方向に沿った辺とで前記拡張可能部が構成されているステントを提供するものである。
【0016】
本発明の第5は、前記第3又は4の発明において、前記拡張可能部の枠の内部には、軸方向に対向する辺を連結するX字状の梁が設けられているステントを提供するものである。
【0017】
本発明の第1によれば、拡張可能部及び拡張不能部がいずれも枠状をなしており、しかも拡張不能部は拡張しても形状が変わらないため、管状器官の内壁を広い面積を有する隙間の小さな枠体で保持することとなり、管状器官の再狭窄を防止することができる。
【0018】
また、拡張可能部の間に拡張不能部が配置され、拡張不能部は拡張後も形状が変わらないので、拡張不能部によって全長(軸方向長さ)の変化も防止される。したがって、拡張後の長さ変化を考慮する必要がなく、拡張手術を容易かつ確実に行うことができる。
更に、拡張不能部が、三角形トラス構造をなすので、周方向にも軸方向にも変化しない形状となり、ステントの強度を向上させると共に、再狭窄を更に効果的に防止できる。
【0019】
本発明の第2によれば、拡張不能部が、周方向に真直ぐに伸びる梁と、その梁を囲む枠とで構成されているので、拡張不能部の線材の配列密度を高めて、再狭窄をより効果的に防止できる。
【0021】
本発明の第3によれば、周方向に対向する辺が、縮径時には内側に湾曲し、拡径時には外側に湾曲する枠で、拡張可能部が構成されているので、拡張前後における拡張可能部の軸方向長さの変化も小さくなり、全長の変化をより小さくすることができる。
【0022】
本発明の第4によれば、拡張不能部及び拡張可能部をできるだけ密に配列することができ、前記拡張不能部が軸方向に連結された拡張不能列が拡張前後において周方向にも軸方向にも変化しないので、ステントの軸方向長さが不変となり、また、拡張可能部の周方向に対向する一対の辺が外側に湾曲することによって拡張するので、拡張代を大きくとることができる。
【0023】
本発明の第5によれば、拡張可能部の枠の内部に、軸方向に対向する辺を連結するX字状の梁が設けられているので、拡張可能部の線材の配列密度を高めて、再狭窄をより効果的に防止できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のステントの材質は、特に限定されないが、例えばステンレス、タンタル、チタン、白金、金、タングステン、形状記憶合金などからなる金属が好ましい。そして、本発明のステントは、例えば、上記のような金属の円筒体を作製し、この円筒体をエッチング、レーザー加工などの手段で所定のパターンにカットすることによって製造することができる。
【0025】
図1〜3には、本発明によるステントの一実施例が示されている。図1は同ステントの縮径状態の斜視図、図2は縮径状態の部分展開図、図3は拡張状態の部分展開図である。
【0026】
このステント10は、前記のように金属の円筒体を特定のパターンにカットして形成したもので、全体として円筒状をなしている。そして、上記パターンは、2種類の枠状部分、すなわち拡張不能部20と、拡張可能部30とを周方向に交互に連結して環状とし、かつ、その環状部分を軸方向に複数個連結した形状をなしている。
【0027】
拡張不能部20は、4つの辺21で囲まれ、対向する角部を周方向A及び軸方向Bに向けられた枠と、この枠21の周方向Aに対向する角部を連結する梁22とで構成され、各辺21と梁22とが三角形状に連結された三角形トラス構造をなし、周方向Aにも軸方向Bにも変形しない形状をなしている。
【0028】
そして、拡張不能部20は、連結部23を介して、軸方向Bに複数個連結されて、周方向に幅広の部分と幅狭の部分とが軸方向に交互に繰り返す拡張不能列を構成している。更に、上記拡張不能列が周方向に所定間隔をおいて複数配列されることによって、それらの間に幅狭の空間と幅広の空間とが軸方向に交互に繰り返す空間が形成されている。
【0029】
拡張可能部30は、軸方向Bに対向する一対の辺31と、周方向Aに対向する一対の辺32とで囲まれた枠と、この枠の軸方向Bに対向する2つの辺31を連結するX字状の梁33とで構成されている。上記周方向Aに対向する一対の辺32は、図1、2の縮径状態においては内側に湾曲しており、図3の拡径状態においては外側に湾曲する。
【0030】
図1、2の縮径状態において、周方向Aに対向する一対の辺32は、その中間部を上記拡張不能列の間の幅狭の空間において拡張不能部20の幅広の部分に連結部34を介して連結され、その両端を上記拡張不能列の間の幅広の空間に向けて互いに距離を広げるように延出され、その両端を上記軸方向Bに対向する一対の辺31で連結されており、それによって拡張不能部20及び拡張可能部30の配列密度をできるだけ高めるようにしている。
【0031】
こうして、拡張可能部30と拡張不能部20とが周方向に交互に連結されて環状をなし、かつ、拡張不能部20が連結部23を介して軸方向に連結されることによって上記環状体が軸方向に所定個数連結されて、円筒状のステント10が構成されている。
【0032】
なお、拡張を容易にするため、上記連結部34が設けられた拡張可能部30の周方向に対向する辺32の中間部、及び拡張可能部30の周方向に対向する辺32と軸方向に対向する辺31との角部35は、他の部分よりも線幅を狭くされていることが好ましい。具体的には、上記部分の線幅が5〜300 μm、他の部分の線幅が10〜500 μmとされることが好ましい。
【0033】
また、ステント10の肉厚は、管状器官の拡張に必要な保持力を付与でき、かつ、挿入時の柔軟性を損なわないようにするため、5〜200 μmとすることが好ましい。また、ステント10の直径及び長さは、適用個所によって適宜定めればよいが、通常、直径2〜10mm、長さ5〜100 mmが好ましい。
【0034】
更に、ステント10の表面は、血栓が付着するのを防止するために、ポリフッ化エチレン系樹脂、ヘパリン含有樹脂、親水性樹脂等で被覆しておくことが好ましい。
【0035】
次に、このステント10の使用方法について、血管の狭窄部に適用する例として説明する。
【0036】
まず、血管内に周知のセルディンガー法によって案内カテーテルを経皮的に挿入し、その先端部を狭窄部の近傍に到達させる。そして、ステント10をバルーンカテーテル先端部のバルーンの外周に縮径状態で装着しておき、バルーンカテーテルを上記案内カテーテルを通して血管内に導く。
【0037】
更に、バルーンカテーテル内に挿入したガイドワイヤをガイドにして、バルーンカテーテルを更に押し進め、その先端部に装着したステント10を狭窄部に配置させる。その状態で、バルーンカテーテルを通して生理食塩水などの液体をバルーン内に注入し、バルーンを膨らませてステント10を拡張させる。
【0038】
その後、バルーン内の液体を抜き出してバルーンを萎ませ、バルーンカテーテルをステント10の内周から抜き出してステント10を留置させる。こうして、ステント10により、血管の狭窄部を拡張させて、心筋梗塞や脳梗塞などの予防や、治療を行うことができる。
【0039】
このステント10は、拡張可能部30の間に拡張不能部20が配置され、拡張可能部30も拡張不能部20も所定の面積を有する枠状をなすので、血管等の管状器官内壁を広い接触面積で平均して保持することができ、内壁の組織がステント10の隙間から内部に増殖して再閉塞を起こす虞れが少なくなる。
【0040】
また、拡張不能部20は、周方向Aにも軸方向Bにも変形せず、かつ、拡張可能部30も、その周方向に対向する辺32が縮径時には内側に湾曲し、拡張時には外側に湾曲して、拡張前後における軸方向長さが変化しない。このため、ステント10は、拡張前後における軸方向長さの変化がほとんどなく、拡張手術を容易かつ確実に行うことができる。
【0041】
図4、5には、本発明によるステントの他の実施例が示されている。図4は同ステントの縮径状態の部分展開図、図5は同ステントの拡張状態の部分展開図である。
【0042】
このステント11も、金属の円筒体を特定のパターンにカットして形成したもので、全体として円筒状をなしている。そして、ステント11は、2種類の枠状部分、すなわち拡張不能部40と、拡張可能部50とを周方向に交互に連結して環状とし、かつ、その環状部分を軸方向に複数個連結した形状をなしている。
【0043】
拡張不能部40は、軸方向Bに対向する辺41と、周方向Aに対向し、それぞれ内側に湾曲した辺42とで囲まれた枠と、この枠の周方向Aに対向する辺42の中間部を連結する梁43とで構成されており、言い換えると、三角形状の梁を上下に逆向きにして連結したような形状をなしている。拡張不能部40は、連結部44を介して軸方向に複数個配列されており、この連結部44がステント11の軸方向における屈曲性を付与している。
【0044】
拡張可能部50は、4つの辺51で囲まれ、対向する角部を軸方向B及び周方向Aに向けて配置されたひし形で構成されている。拡張可能部50は、図4に示す縮径時には、軸方向Bに対向する角部を結ぶ対角線が、周方向Aに対向する角部を結ぶ対角線よりも長く、図5に示す拡張時には、軸方向Bに対向する角部を結ぶ対角線が、周方向Aに対向する角部を結ぶ対角線よりも短くなるように変形する。
【0045】
また、拡張可能部50は、周方向Aにおいて、隣接する拡張不能部40と連結部52を介して連結されている。そして、拡張可能部50と拡張不能部40とが周方向Aに交互に複数個ずつ連結されて環状をなし、この環状部分が拡張不能部40の連結部44によって軸方向に複数個連結されて、全体として円筒状のステント11が構成されている。
【0046】
このステント11は、バルーンカテーテルによって内側から押圧力を付与すると、前記のように拡張可能部50のひし形が変形して周方向Aに変形する。このとき、拡張可能部50の軸方向長さは短くなるが、拡張不能部40の軸方向長さは変わらないため、ステント11の軸方向長さは変化しない。また、拡張不能部40も拡張可能部50も枠状をなして、広い面積で管状器官の内壁を支持するので、管状器官の内壁の組織が内側に入りこんで増殖することを阻止し、再狭窄を防止することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、拡張可能部及び拡張不能部がいずれも枠状をなしており、しかも拡張不能部は拡張しても形状が変わらないため、管状器官の内壁を広い面積を有する隙間の小さな枠体で保持することとなり、管状器官の再狭窄を防止することができる。また、拡張可能部の間に拡張不能部が配置され、拡張不能部は拡張後も形状が変わらないので、拡張不能部によって全長の変化も防止される。したがって、拡張後の長さ変化を考慮する必要がなく、拡張手術を容易かつ確実に行うことができる。更に、拡張不能部が、三角形トラス構造をなすので、周方向にも軸方向にも変化しない形状となり、ステントの強度を向上させると共に、再狭窄を更に効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステントの一実施例を示す縮径状態の斜視図である。
【図2】同ステントの縮径状態における部分展開図である。
【図3】同ステントの拡張状態における部分展開図である。
【図4】本発明のステントの他の実施例を示す縮径状態における部分展開図である。
【図5】同ステントの拡張状態における部分展開図である。
【符号の説明】
10、11 ステント
20 拡張不能部
21 辺
22 梁
23 連結部
30 拡張可能部
31 軸方向に対向する辺
32 周方向に対向する辺
33 X字状の梁
34 連結部
40 拡張不能部
41 軸方向に対向する辺
42 周方向に対向する辺
43 梁
44 連結部
50 拡張可能部
51 辺
52 連結部
A 周方向
B 軸方向
Claims (5)
- 周方向に拡張不能な枠状の三角形トラス構造をなす拡張不能部と、周方向に拡張可能な枠状の拡張可能部とが、周方向に交互に接続されて円筒状をなしていることを特徴とするステント。
- 前記拡張不能部は、周方向に真直ぐに伸びる梁と、その梁を囲む枠とで構成されている請求項1記載のステント。
- 前記拡張可能部は、周方向に対向する辺が、縮径時には内側に湾曲し、拡径時には外側に湾曲する枠で構成されている請求項1又は2記載のステント。
- 三角形トラス構造をなす前記拡張不能部が軸方向に複数連結されて、周方向に幅広の部分と幅狭の部分とが軸方向に交互に設けられた拡張不能列が形成されており、この拡張不能列が周方向に所定間隔をおいて複数配置されることにより、それらの間に幅狭の空間と幅広の空間とが形成され、前記幅狭の空間内で前記拡張不能列の幅広の部分に連結され、端部が前記幅広の空間に向かうに従って互いの距離が拡大するように設けられた、周方向に対向する1対の辺と、この辺の端部どうしを連結する周方向に沿った辺とで前記拡張可能部が構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のステント。
- 前記拡張可能部の枠の内部には、軸方向に対向する辺を連結するX字状の梁が設けられている請求項3又は4記載のステント。
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