以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明の便宜上、従来例と同一の部分については同一の符号を付し、各実施形態や比較例で同一の部分についても同一の符号を付している。
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態の流体発生装置を示す概略平面断面図、図2は本実施形態の流体発生装置を示す概略側断面図である。本実施形態の流体発生装置1aは、気体や液体などの流体を送り出す流体送り装置2と、該流体送り装置2から送り出された流体を搬送する流体流通経路3と、該流体流通経路3の末端に形成され、流体を噴流として送出する吹出口5と、図示しない制御部とから構成されている。流体は、流体送り装置2の駆動により搬送され、流体流通経路3を流通し、吹出口5から噴流となって外部へ放出される。なお、図中の矢印は流体の流れを示している。
また、流体流通経路3において吹出口5の上流部は拡大管部3bにて構成されており、流体が吹出口5に向かうに従い高さが徐々に減少するとともに幅が徐々に増加し、断面積が滑らかに拡大する構成となっている。また、流体送り装置2の直後である流体流通経路3の始点において、拡大管部3bの断面形状は、高さ45mm、幅45mm、即ちアスペクト比:AR=1に設定されている。そして流体流通経路3の終点、即ち吹出口5においては、高さ10mm、幅360mm、即ちアスペクト比:AR=36に設定されている。
ここで、アスペクト比とは、断面の形状を決定する長さのパラメータ同士の比であり、アスペクト比:AR=(長い方のパラメータ)/(短い方のパラメータ)で決定される値である。よって、断面が長方形の場合には、アスペクト比:AR=(長辺)/(短辺)、また断面が楕円の場合には、アスペクト比:AR=(長径)/(短径)、で表される。例えば、断面が正方形の場合は、アスペクト比:AR=1、長辺と短辺の比が2:1の長方形の場合は、アスペクト比:AR=2、断面が真円の場合は、アスペクト比:AR=1となる。従って、本明細書等におけるアスペクト比は常に1以上の値をとる。
さらに、拡大管部3bには、流体送り装置2のすぐ下流部から吹出口5のやや上流部にかけて、複数の案内板6が設置されており、該案内板6により拡大管部3b内が複数に分割されている。本実施形態において拡大管部3bは、3枚の案内板6により4分割され、区切られたそれぞれの流体流通経路3は吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、吹出口5に近い案内板6の端部でのアスペクト比はAR=9程度に設定されている。また、3枚の案内板6は、吹出口5での長手方向の流速分布がどこでも略同一になるように設置されている。従って、吹出口5直後の長手方向の流速分布は吹出口5のどの部分においても略均一となる。
図3は、流体発生装置1aの使用例として、吹出し流速1.5m/sの空気を送出した場合の流速分布を表す図である。図中の格子は1マスが0.5mを表している。なお、吹出口から送出される流体が液体であっても、定性的にはほぼ同様の傾向を示す。後述の比較例1の流体発生装置100aの使用例(図34参照)と比較すれば明らかであるが、図3によると、吹出口5から送出された流体の到達距離が増加し、かつ、広範囲の領域に流速の大きい流体を搬送できていることがわかる。
以下に、本実施形態の流体発生装置1aが比較例1の流体発生装置100aに対して、流体発生装置の能力が大幅に向上したメカニズムについて説明する。噴流の流速は吹出口5から吹出された直後から減衰する。噴流の到達距離は、噴流のポテンシャルコアの長さに関係する。図4は、ポテンシャルコアを説明する概略図である。一般に、吹出口から送出した直後の噴流中央部の速度分布は一様である。この一様な速度の部分は、両側から発達する自由混合層により侵食されて減少し、ある距離のところで消滅する。この部分はくさび状であって、ポテンシャルコアとよばれる。静止流体中に流出する自由噴流の場合、ポテンシャルコアの長さは、吹出口形状、吹出口壁面に沿う境界層の状態、初期乱れ等によって異なるが、2次元乱流噴流では吹出口高さ又は直径の5〜7倍程度、軸対称乱流噴流では吹出口高さ又は直径の5〜8倍程度になることが知られている。このポテンシャルコアの長さが長くなるにつれて、噴流の到達距離が延長される。
本実施形態の流体発生装置1aにおいては、吹出口5のアスペクト比を最適化して噴流のポテンシャルコアを延長することにより流速の減衰を抑制しているため、流体の到達距離が従来技術(比較例1)に比べ大幅に延長されている。例えば吹出口5の高さを一定に、横幅を無限長さに設定すれば、既に説明の通り2次元乱流噴流となり、ポテンシャルコア長は吹出口高さあるいは直径の5〜7倍程度となる。また、例えば吹出口の高さと横幅を同一に設定(AR=1)に設定すれば、軸対称乱流噴流と同様になり、ポテンシャルコア長は吹出口高さおよび吹出口横幅の5〜8倍程度になる。吹出口5のアスペクト比を最適化し、例えば吹出口5の高さに対して横幅を適切に設定してやれば、ポテンシャルコア長は吹出口高さだけでなく吹出口横幅の影響をも受けるため、ポテンシャルコア長は、吹出口高さと幅の平均値の5〜8倍程度となり、同一の吹出し口高さの場合の2次元乱流噴流や軸対称乱流噴流の場合に比べて飛躍的に延長される。
図5および図6は、本実施形態の流体発生装置1aにおいて、吹出口5近傍の断面のアスペクト比と、ポテンシャルコア長との関係を表す図である。図5の■印は、吹出流速、吹出流量、吹出口面積を固定し、アスペクト比(吹出口幅/吹出口高さ)を変化させたときのポテンシャルコア長をアスペクト比が1(吹出口が正方形)となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。○印は、吹出口高さから予測されるポテンシャルコア長をアスペクト比が1となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。◇印は、吹出口高さと幅の平均値から予測されるポテンシャルコア長をアスペクト比が1となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。
図5によれば、実際のポテンシャルコア長は、アスペクト比が5程度までは吹出し口高さと幅の平均値から予測される値に近似し、アスペクト比が30以上においては2次元乱流噴流となり吹出口高さから予測される値に近似し、アスペクト比が5〜30の領域では、前者2つの予測値の間をなだらかに結ぶ特性を示す。図5より、アスペクト比が2以上で無次元ポテンシャルコア長がアスペクト比1に比べて優位となり、アスペクト比が20以上で優位性を失う(2≦AR≦20)。
図6の■印は、吹出流速、吹出口高さを固定し、アスペクト比を変化させたときのポテンシャルコア長をアスペクト比が1(吹出口が正方形)となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。この場合、アスペクト比が高くなるにつれて吹出口面積および吹出流量が増加する。図6によれば、無次元ポテンシャルコア長から、アスペクト比が30以上で2次元乱流噴流となっているのがわかる。また、アスペクト比が1以上で無次元ポテンシャルコア長がアスペクト比1に比べて優位となり、アスペクト比が30以上で優位性を失う。更に顕著な優位性が現れるのは無次元ポテンシャルコア長が3以上の場合であり、そのときのアスペクト比は5≦AR≦22である。
従って、図5から導かれたアスペクト比の範囲(2≦AR≦20)と図6から導かれたアスペクト比の範囲(5≦AR≦22)の両方を満たす5≦AR≦20の範囲が最適なアスペクト比といえる。なお、図5、図6の特性は、流体の種類(物性)、吹出口形状、吹出口壁面に沿う境界層の状態、初期乱れ等によってやや値や特性が異なる場合もある。
即ち、吹出口面積および吹出口流速が同じ、つまり、同一流量であれば、吹出口5のアスペクト比を最適にすることでポテンシャルコア長、すなわち、流体の到達距離を延長することができる。言い換えれば、同じポテンシャルコア長、つまり、流体の到達距離が同一の場合、流量を小さくできるため、流体送り装置2の消費電力および騒音値を低減することができる。
なお、流体流通経路3および拡大管部3bの終点の断面積は、始点の断面積に対して大きく設定されるのが望ましい。本実施形態においては、流体流通経路3および拡大管部3bはディフューザの働きを持つように設計されており、従って流体の運動エネルギを静圧に変換することができ、流体送り装置2の能力を助けることができるため、流体が各部を流通する際に生ずる圧力損失の全てが流体送り装置2にかかる場合に比べて、流量が増加し、騒音も低くなる。
また、流体送り装置2のアスペクト比、即ち、流体流通経路3の始点のアスペクト比は、AR≦2であることが望ましいが、流体流通経路3の始点のアスペクト比が大きい場合においても、流体流通経路3の終点の断面のアスペクト比を5≦AR≦20に設定するか、または、流体流通経路3を案内板6で分割し、案内板6の吹出口5側の端部での流体流通経路3の断面のアスペクト比を5≦AR≦20に設定することにより、上記に近い効果を得ることができる。
〈第2の実施形態〉
次に、第2の実施形態について説明する。図7は本実施形態の流体発生装置を示す概略平面断面図、図8は本実施形態の流体発生装置を示す概略側断面図である。
本実施形態は第1の実施形態の案内板6が廃止される代わりに流体送り装置2のすぐ下流部から、流体流通経路3が複数の拡大管部3bに分割される。本実施形態において流体流通経路3は、左右に2分割、上下に2分割され、合計4個の拡大管部3bに分割され、従って吹出口5は4個設けられる。また、分割されて区切られた流体流通経路3およびそれぞれの拡大管部3bは吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、吹出口5の位置でのアスペクト比は10程度に設定されている。その他の構成は第1の実施形態と同一である。
本実施形態の流体発生装置1bは第1の実施形態に対して流速分布が異なる。即ち、流体発生装置1bの前方への噴流の到達距離はやや短くなるが、流体発生装置1bの前方空間における上下方向の噴流の搬送領域を拡大することができる。
なお、吹出口5の形状は、高さ<幅に限定されるものではない。図9は、本実施形態に係る他の流体発生装置を示す斜視図である。この流体発生装置1cの吹出口5の形状は、高さ>幅であり、流体流通経路3は、左右に2割、上下に2分割され、合計4個の拡大管部3bに分割され、従って吹出口5は4個設けられる。また、分割されて区切られた流体流通経路3およびそれぞれの拡大管部3bは吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、吹出口5の位置でのアスペクト比は10程度に設定されている。その他の構成は流体発生装置1bと同一である。この流体発生装置1cは、流体発生装置1bに対して流速分布が異なる。即ち、流体発生装置1cの前方への噴流の到達距離は同等、流体発生装置1cの前方空間における上下方向の噴流の搬送領域は大幅に拡大され、左右方向の噴流の搬送領域は縮小される。
なお、流体送り装置2のアスペクト比、即ち、流体流通経路3の始点のアスペクト比は、AR≦2であることが望ましいが、流体流通経路3の始点のアスペクト比が大きい場合においても、流体流通経路3の終点の断面のアスペクト比を5≦AR≦20に設定するか、または、流体流通経路3を案内板6で分割し、案内板6の吹出口5側の端部での流体流通経路3の断面のアスペクト比を5≦AR≦20に設定することにより、上記に近い効果を得ることができる。
〈第3の実施形態〉
次に、第3の実施形態について説明する。図10は本実施形態の流体発生装置を示す斜視図である。
本実施形態の流体発生装置1dは、第2の実施形態に係る他の実施形態と同様に、吹出口5の形状が高さ>幅となっている。流体流通経路3は、左右に7分割、上下に2分割され、合計14個の拡大管部3bに分割され、従って吹出口5は14個設けられる。また、分割されて区切られた流体流通経路3およびそれぞれの拡大管部3bは吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、吹出口5の位置でのアスペクト比(この場合、吹出口高さ/吹出口幅)は8程度に設定されている。その他の構成は第2の実施形態に係る他の実施形態と同一である。
この流体発生装置1dにおいては、第2の実施形態に係る他の実施形態に対して流速分布が異なる。即ち、流体発生装置1dの前方への噴流の到達距離はやや短くなり、流体発生装置1dの前方空間における上下方向の噴流の搬送領域は略同等、左右方向の噴流の搬送領域は大幅に拡大される。即ち、流体発生装置1dの前方の上下左右方向の広範囲の領域に噴流を搬送することが可能となる。
〈第4の実施形態〉
次に、第4の実施形態について説明する。図11は、本実施形態の流体発生装置の概略平面断面図である。
本実施形態の流体発生装置1eは、第1の実施形態の吹出口5近傍に、連動して回動する複数の吹出方向変更板9が追加されており、吹出方向変更板9の方向を変更することで流体の吹出方向を可変できる構成となっている。その他の構成は第1の実施形態と同一である。
複数の吹出方向変更板9の方向を回転軸9aを中心に例えば図12に示すように変更することで、噴流を所望の方向に集中的に散布したり、広範囲に散布することができる。流体発生装置1eを有する機器は、機器の設置場所によっては、壁面や障害物等の影響により噴流を効果的に拡散できない場合があるが、本実施形態の流体発生装置1eの場合には、吹出方向変更板9の方向を変更することにより、壁面や障害物等の影響をある程度軽減することができる。
〈第5の実施形態〉
次に、第5の実施形態について説明する。図13は、本実施形態のファンヒータ10の斜視図である。本実施形態のファンヒータ10は、第2の実施形態の流体発生装置1bを備えている。
一般に、ファンヒータから吹出される暖気は、風速の減衰に伴い、浮力により大きく巻き上がるため、到達距離が短くなる。本実施形態のファンヒータ10は、第2の実施形態の流体発生装置1bを備えているため、風速の減衰が抑えられ、暖気の巻き上がりが抑制されるので床面に暖気が沿って流れる。これにより、ファンヒータの快適性が大幅に高められるとともに、風量を低減できるため騒音も小さい。
なお、第5の実施形態に係る他の実施形態としては、ファンヒータ10の流体発生装置1bを図1、図2に示した第1の実施形態の流体発生装置1aに変更するものである。この場合、第5の実施形態に対して、暖気の流速分布が異なる。即ち、ファンヒータ10の前方への暖気の到達距離はやや長くなり、ファンヒータ10の前方空間における上下方向の暖気の搬送領域が縮小される。
また、第5の実施形態に係るさらに他の実施形態としては、ファンヒータ10の流体発生装置1bを図9に示した第2の実施形態に係る他の流体発生装置1cに変更するものである。この場合、第5の実施形態に対して、暖気の流速分布が異なる。即ち、ファンヒータ10の前方への暖気の到達距離は同等、ファンヒータ10の前方空間における上下方向の暖気の搬送領域は大幅に拡大され、左右方向の暖気の搬送領域は縮小される。
〈第6の実施形態〉
第6の実施形態について説明する。図14は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略平面断面図、図15は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略側断面図、図16は、本実施形態のイオン拡散装置を備えた冷蔵庫の正面図である。
本実施形態のイオン拡散装置11aは、送風機12と、送風経路13と、放電面14aを送風経路13に面するように設置されたイオン発生装置14と、図示しない制御部とから成る。イオン発生装置14の駆動により生成されるイオンは、送風機12の駆動により搬送され、送風経路13を流通し、拡散装置吹出口15から外部へ放出される。なお、図14および図15中の矢印は、この時の気流の様子を示している。
また、冷蔵庫20aの前面に設置される開閉扉21の上部には、前記送風経路13および拡散装置吹出口15が連通する冷蔵庫庫外イオン吹出口22が備えられ、冷蔵庫庫外にイオンが放出、拡散される構成となっている。なお、送風機12の吸込口上流には、イオン拡散装置11a内部への油煙や塵埃の侵入を防ぐために、図示しないエアフィルターが設置されている。
イオン発生装置14は、H+(H2O)n及びO2 -(H2O)mなるイオンを発生させることができ、使用目的に応じて、プラスイオンに比べてマイナスイオンを多く発生させるモード、マイナスイオンに比べてプラスイオンを多く発生させるモード、及び、プラスイオンとマイナスイオンの両方を略同量の割合で発生させるモードの切替えができる。イオン発生装置14の放電面14aから発生したイオンは送風経路13内に放出され、送風機12の駆動により拡散装置吹出口15および冷蔵庫庫外イオン吹出口22から冷蔵庫庫外に吹出される。
特に、イオン発生装置14によりプラスイオン(H+(H2O)n等)とマイナスイオン(O2 -(H2O)m等)をほぼ同量発生させる場合には、冷蔵庫庫外に放出されたH+(H2O)n及びO2 -(H2O)mは微生物の表面で凝集し、空気中の微生物等の浮遊菌を取り囲む。そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH2O2(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝縮生成して浮遊菌の殺菌を行う。
H+(H2O)n+O2 -(H2O)m→・OH+1/2O2+(n+m)H2O ・・・(1)
H+(H2O)n+H+(H2O)n'+O2 -(H2O)m+O2 -(H2O)m'
→ 2・OH+O2+(n+n'+m+m')H2O ・・・(2)
H+(H2O)n+H+(H2O)n'+O2 -(H2O)m+O2 -(H2O)m'
→ H2O2+O2+(n+n'+m+m')H2O ・・・(3)
上記のように、プラスイオンとマイナスイオンを冷蔵庫20aの前方周囲の庫外生活空間に放出することで、その生活空間に存在する浮遊菌を殺菌し、衛生的な生活空間を提供するとともに、開閉扉21開閉時に庫外から庫内への浮遊菌の侵入を抑制し、衛生的な庫内環境を実現できる。
また、送風経路13は絞り部13aと拡大管部13bを備えている。送風機12から拡散装置吹出口15に向かう送風経路13において、絞り部13aはイオン発生装置14の放電面14aの直前に備えられており、送風機12から連通する送風経路13の断面積は絞り部13aにおいてイオン発生装置14の放電面14aに近づくに従い滑らかに小さくなる形状を呈している。該絞り部13aによりイオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気の乱れを整流するとともに、送風機12下流に生ずる流れの偏り、所謂偏流を抑制することができる。
さらに、イオン発生装置14の放電面14aの流れに垂直な方向の幅をw1、放電面14aに面する送風経路13の幅をw2とすると、w2=w1に設定されている。このため、イオン発生装置14下流部の送風経路13内のイオン濃度が流れ方向に垂直な平面内において略均一となる。
ここで、w2>1.3×w1に設定すると、流れに垂直な方向にイオン濃度のばらつきが生ずるため望ましくない。特に、イオン発生装置14の放電面14aの流れに垂直な方向の中央と、放電面14aに面する送風経路13の中央を同一位置に一致させた場合には、イオンは拡散装置吹出口15の中央付近でイオン濃度が高く、両端においてイオン濃度が低くなる。また、送風経路13の片側に放電面14aを寄せた構造とすると、拡散装置吹出口15の片側のみイオン濃度が高く、他方においてイオン濃度が低くなる。
また、w2<0.7×w1とすると、放電面14aから放出されるイオンが気流に乗らないため非効率的である。従って、0.7×w1≦w2≦1.3×w1、望ましくはw2=w1に設定することにより、イオンを効率的に搬送して拡散させることができる。
また、イオン発生装置14から拡散装置吹出口15に至る部分は拡大管部13bにて構成されており、イオン発生装置14から拡散装置吹出口15に向かうに従い断面積が滑らかに拡大する構成となっている。また、イオン発生装置14直後における拡大管部13bの断面形状は、高さ10mm、幅30mm、即ちアスペクト比:AR=3であり、拡大管部13bの終点、即ち、拡散装置吹出口15においては、高さ8mm、幅450mm、即ちアスペクト比:AR=56に設定されている。
さらに、拡大管部13bには、イオン発生装置14のすぐ下流部から拡散装置吹出口15のやや上流部にかけて複数の導風板16が設置されており、該導風板16により拡大管部13bの内部が複数に分割されている。本実施形態において拡大管部13bは、6枚の導風板16により7分割され、区切られたそれぞれの送風経路13は拡散装置吹出口15に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、拡散装置吹出口15に近いほうの導風板16の端部でのアスペクト比が8程度に設定されている。また、6枚の導風板16は、拡散装置吹出口15での長手方向の風速分布がどこでも略同一になるように設定されている。従って、拡散装置吹出口15下流部のイオン濃度が流れ方向に垂直な平面内において略均一となる。
また、拡大管部13bは、拡散装置吹出口15に近づくにつれて下に傾斜している。つまり、イオンは冷蔵庫庫外イオン吹出口22から水平面に対し下方向に送出される。本実施形態においては、冷蔵庫庫外イオン吹出口22は、床面から約1700mmに設けられているため、水平面に対し下方向にイオンを送出することにより、冷蔵庫庫外の空間に効率よくイオンを散布することができる。また、冷蔵庫の周囲の空間に存在する浮遊菌等の微生物は、重力により時間とともに沈降し、空間下部に蓄積するため、水平面に対し下方向にイオンを送出することによって、これら微生物をより効率良く殺菌することができる。特に、本実施形態の場合には、床面からの高さが1300mmから1500mmの位置に効果的にイオンを散布することができるため、使用者がウイルス等の微生物を呼吸により体内に吸引するのを効果的に抑制できる。
図17は、室温15℃の部屋において、本実施形態のイオン拡散装置11aを備えた冷蔵庫20の冷蔵庫庫外イオン吹出口22から、H+(H2O)nとO2 -(H2O)mなるイオン、所謂クラスターイオンを室内に放出した場合の部屋の各部でのイオン濃度を示している。図18は本実施形態の冷蔵庫と室内のイオン濃度分布の計測ポイントとの位置関係を示す図である。部屋の大きさは8畳(高さ2400mm、横3600mm、奥行き3600mm)であり、計測ポイントは図18に1点鎖線で示すように、部屋の床面からの高さ1700mmの断面である。また、このときの冷蔵庫庫外イオン吹出口22の風速は、吹出口の長手方向のどの位置においても略均一の1.5m/sであり、図18の矢印は、この時の気流の様子を示している。さらに、このときの冷蔵庫前方1mにおける騒音値は22dBである。
なお、プラスイオン濃度2000個/cm3以上、かつ、マイナスイオン濃度2000個/cm3以上の時、上記の殺菌効果が確認されている。
後述の比較例2のイオン拡散装置110aと比較すれば明らかであるが、図17によると、冷蔵庫庫外イオン吹出口22から吹出されたイオンは、部屋の端まで到達しているのがわかる。また、本実施形態の冷蔵庫庫外イオン吹出口22の前方10mm位置におけるイオン濃度は約1万個/cm3であり、比較例2のように吹出口近傍に高濃度のイオンが停滞するということもない。また、8畳の部屋の約60%以上の領域において、プラスイオン濃度2000個/cm3以上、かつ、マイナスイオン濃度2000個/cm3以上のイオン濃度を示しており、殺菌効果を示す領域が比較例2に対して格段に広がっているのがわかる。
以下に、本実施形態のイオン拡散装置11aが比較例2のイオン拡散装置110aに対して、イオン拡散能力が大幅に向上したメカニズムについて説明する。第1に、拡大管部13bは、ディフューザの働きを持つように設計されており、従って気流の運動エネルギーを静圧に変換することができ、送風機12の送風能力を助けることができるため、図示しないエアフィルター、絞り部13a、その他送風経路13内において生ずる圧力損失の全てが送風機12にかかる場合に比べて送風量が増加し、送風機騒音も低くなる。そのため比較例2に比べ大風量の気流によりイオンを搬送するため、拡散効率が格段に上昇する。イオン拡散装置11aは比較例2に比べて風量が約2倍であり、このときの冷蔵庫29a前方1mにおける騒音値は比較例2と同様で22dBである。
第2に、該絞り部13aによりイオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気の乱れを整流するとともに、送風機12下流に生ずる流れの偏り、所謂偏流を抑制しているため、気流の乱れが比較例2に比べて大幅に抑制されている。イオンは壁面やその他障害物に衝突することにより電荷を失い消滅する。また、イオン発生装置14からプラスイオンとマイナスイオンの両方を略同量の割合で発生させている場合には、プラスイオンとマイナスイオンが衝突することによりイオンが消滅する。即ち、気流が乱れていれば、障害物とイオン及び/またはイオン同士が衝突することによるイオン消滅量が多く、気流が整流されていれば、障害物とイオン及び/またはイオン同士が衝突することによるイオン消滅量が少なくなり、そのためイオンが長寿命化する。比較例2においては約3秒でイオン濃度が1/eに減衰するのに対し、本実施形態においてはイオン濃度が1/eに減衰する時間が約5秒まで延長される。
第3に、イオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気の乱れや偏りを抑制しているため、イオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気は一様となる。これにより、イオン発生装置14の放電面14a上におけるイオン発生効率が増加する。即ち、所望のイオン発生量を確保するのに、低電圧または低風量で可能となり、騒音面でも有利となる。
第4に、送風経路13とイオン発生装置14の位置関係を、イオン発生装置14の放電面14aの流れに垂直な方向の幅と、放電面14aに面する送風経路13の幅とを等しくするように設定したことにより、流れに垂直な方向のイオン濃度のばらつきが抑制され、イオン発生装置14下流部の送風経路13内のイオン濃度が流れ方向に垂直な平面内において略均一となり、イオンを効率良く気流に乗せることができる。そのため、イオンを効率的に搬送し、拡散させることができる。
第5に、吹出口のアスペクト比を最適化し、噴流のポテンシャルコアを延長することにより、風速の減衰を抑制しているため、気流の到達距離が比較例2に比べ、大幅に延長されている。ポテンシャルコアの説明およびポテンシャルコアの延長による気流の到達距離延長のメカニズムおよび効果については、第1の実施形態と同様である。従って、吹出口面積および吹出口風速が同じ、つまり、同一風量であれば、吹出口のアスペクト比を最適にすることでポテンシャルコア長、即ち、気流の到達距離を延長することができる。言い換えれば、同じポテンシャルコア長、つまり、気流の到達距離が同一の場合、風量を小さくできるため、送風機12の消費電力および騒音値を低減することができる。
〈第7の実施形態〉
次に、第7の実施形態について説明する。図19は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略平面断面図、図20は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略側断面図である。
本実施形態は、第6の実施形態の絞り部13aを廃止し、イオン発生装置14の放電面14aの上流の送風経路13に整流装置17が設けられている。これにより、イオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気の乱れを整流することができるため、第6の実施形態における絞り部13aの効果を得ることができるとともに、第6の実施形態における絞り部13aにて生じていた圧力損失を無くし、送風経路13において生ずる圧力損失を低減することができるため、送風機12の風量を増加および/または送風機12の騒音を低減することができる。また、拡大管部13bの導風板16が廃止され、代わりにイオン発生装置14のすぐ下流部から、送風経路13が複数の拡大管部13bに分割される。本実施形態において送風経路13は、左右に5分割、上下に3分割され、合計15個の拡大管部13bに分割され、従って拡散装置吹出口15は15個設けられる。また、分割されて区切られた送風経路3およびそれぞれの拡大管部13bは吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、拡散装置吹出口5の位置でのそれぞれの送風経路はアスペクト比が8程度に設定されている。
その他の構成は第6の実施形態と同一であり、第6の実施形態と同様に送風経路13および拡散装置吹出口15は冷蔵庫20aの前面に設置される開閉扉21の上部に備えられた冷蔵庫庫外イオン吹出口22に連通し、冷蔵庫庫外にイオンが放出、拡散される構成となっている。
本実施形態は第6の実施形態に対してイオンの分布が異なる。即ち、送風経路13の圧力損失低減による風量増加のため、冷蔵庫の前方へのイオンの拡散距離はやや増加し、冷蔵庫の前方空間における上下方向のイオン濃度をより均一化し、冷蔵庫の前方下部のイオン濃度を増加することができる。
なお、拡散装置吹出口15および冷蔵庫庫外イオン吹出口22の形状は、高さ<幅に限定するものでない。
〈第8の実施形態〉
次に、第8の実施形態について説明する。図21は本実施形態のイオン拡散装置を示す斜視図である。
本実施形態は、第7の実施形態の送風経路13及び拡散装置吹出口15が、第3の実施形態の流体発生装置1dの流体流通経路3及び吹出口5と同様に形成されている。従って、拡散装置吹出口15の形状は高さ>幅であり、送風経路13は、左右に7分割、上下に2分割され、合計14個の拡大管部13bに分割され、その結果拡散装置吹出口15は14個設けられる。また、分割されて区切られた送風経路3およびそれぞれの拡大管部13bは吹出口5に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、拡散装置吹出口5の位置でのそれぞれの送風経路はアスペクト比(この場合、吹出口高さ/吹出口幅)が8程度に設定されている。
その他の構成は第7の実施形態と同一であり、第7の実施形態と同様に送風経路13および拡散装置吹出口15は冷蔵庫20の前面に設置される開閉扉21の上部に備えられた冷蔵庫庫外イオン吹出口22に連通し、冷蔵庫庫外にイオンが放出、拡散される構成となっている。
本実施形態は第6の実施形態に対してイオンの分布が異なる。即ち、冷蔵庫の前方へのイオンの拡散距離および冷蔵庫の前方空間における左右方向のイオン拡散領域はやや減少するものの、冷蔵庫の前方空間における上下方向のイオン拡散領域は大幅に拡大され、上下方向のイオン濃度をより均一化し、冷蔵庫の前方下部のイオン濃度を増加することができる。即ち、イオン拡散装置11cの前方の上下左右方向の広範囲の領域にイオンを拡散することが可能となる。
〈第9の実施形態〉
次に、第9の実施形態について説明する。図22は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略側断面図である。
本実施形態は、第7の実施形態の整流装置17が廃止されるとともに、イオン発生装置14の配置が異なり、イオン発生装置14近傍の送風経路13の形状および空気の流れが異なる。イオン発生装置14の放電面14aは送風機12から送出される風の流れを妨げる位置にあり、送風機12から送出された空気はイオン発生装置14の放電面14aに衝突し、放電面14aから発生したイオンを含んで、イオン発生装置14の脇から送風経路13へ流出することにより整流効果を得る。その他の構成は第7の実施形態と同一である。
本実施形態のイオン拡散装置11dにおいては、送風機12から送出された空気がイオン発生装置14の放電面14aに衝突する際に、偏流が抑制されるため、整流装置17が廃止されているにもかかわらず、第7の実施形態と略同様の効果を得ることができるため、コスト面で有利となる。
〈第10の実施形態〉
次に、第10の実施形態について説明する。図23は本実施形態のイオン拡散装置を示す概略側断面図である。
本実施形態は、第7の実施形態の整流装置17が廃止されるとともに、イオン発生装置14の配置が異なり、イオン発生装置14近傍の送風経路13の形状および空気の流れが異なる。イオン発生装置14の放電面14aは送風機12から送出される風の流れを妨げる位置にあり、送風機12から送出された空気はイオン発生装置14の放電面14aに衝突し、放電面14aから発生したイオンを含んで、イオン発生装置14の上下両脇から送風経路13へ流出することにより整流効果を得る。その他の構成は第7の実施形態と同一である。
本実施形態のイオン拡散装置11eにおいては、送風機12から送出された空気がイオン発生装置14の放電面14aに衝突する際に、偏流が抑制されるため、整流装置17が廃止されているにもかかわらず、第7の実施形態と略同様の効果を得ることができるため、コスト面で有利となる。
〈第11の実施形態〉
次に、第11の実施形態について説明する。図24は、本実施形態のイオン拡散装置の概略平面断面図である。
本実施形態のイオン拡散装置11fは、第6の実施形態の拡散装置吹出口15近傍に、連動して回動する複数の風向変更板19が追加されており、風向変更板19の方向を変更することでイオンの吹出方向を可変できる構成となっている。その他の構成は第6の実施形態と同一である。
本実施形態においては、複数の風向変更板19の方向を、回転軸19aを中心に例えば図25に示すように変更することで、イオンを所望の方向に集中的に散布したり、広範囲に散布することができる。イオン拡散装置11fを有する機器は、機器の設置場所によっては、壁面や障害物等の影響により効果的にイオンを拡散できない場合があるが、本実施形態のイオン拡散装置11fの場合には、風向変更板19の方向を変更することにより、壁面や障害物等の影響をある程度軽減することができる。
〈第12の実施形態〉
次に、第12の実施形態について説明する。図26は、本実施形態のイオン拡散装置の概略平面断面図である。
本実施形態のイオン拡散装置11gは、第6の実施形態の導風板16が省略されている一方で、拡大管部13bに風向変更ユニット19bが追加されている。該風向変更ユニット19は、導風板の機能を有する3枚の板状部材が一体に成型されており、回転軸19aを中心に回動できる構成となっており、該風向変更ユニット19bの方向を変更することでイオンの吹出方向を可変できる。その他の構成は第6の実施形態と同一である。
本実施形態においては、風向変更ユニット19bの回動角度を、例えば図27に示すように変更することで、広範囲へのイオンの吹出しを、片側のみの吹出しに切り替えることができる。即ち、広範囲にイオンを吹出す場合、一方側にのみイオンを吹出す場合、他方側にのみイオンを吹出す場合の3種類のイオン吹出し方向に切り替えることができる。
また、第11の実施形態のイオン拡散装置11fと比べて可動部が少なく、部品点数を少なくすることができるため、コスト面、信頼性面において優位性がある。
〈第13の実施形態〉
次に、第13の実施形態について説明する。図28は、本実施形態のイオン拡散装置およびそれを備えた冷蔵庫の概略側断面図である。
本実施形態のイオン拡散装置11hは、第6の実施形態の送風機12が省略されており、送風経路13の一部である上昇気流流通経路13cは、冷蔵庫20b本体の背面および/または側面に配されている放熱部23を覆うように配されている。その他の構成は第6の実施形態と同一である。
本実施形態の冷蔵庫20bが動作すると、冷蔵庫20bの圧縮機24からの放熱、および冷蔵庫20b本体の背面および/または側面に配され、図示しない熱交換器の熱を庫外に放出するための放熱部23からの放熱により、上昇気流流通経路13c内に上昇気流25が生じ、図28に示すように冷蔵庫20bの上部に上昇する。上昇気流25は冷蔵庫20bの天面部を送風経路13に沿って流通し、イオン発生装置14を通過する際にイオンを含み、拡散装置吹出口15および冷蔵庫庫外イオン吹出口22から冷蔵庫庫外に放出、拡散される。
本実施形態においては、送風機12を省略することができるだけでなく、送風機12から発生する支配的な送風騒音を無くすことができるため、大幅な低騒音化が可能となる。また、一般に圧縮機24近傍に設けられる図示しないサイクル用送風機により、上昇気流の上昇を助ける構成としてもよい。また、放電面14a近傍にイオン風を生ずるイオン発生装置14を用い、イオン発生装置14の生ずるイオン風により送風しても上記と同様の効果を得ることができる。
〈第14の実施形態〉
次に、第14の実施形態について説明する。図29は、本実施形態の微小粒子拡散装置の主要部を示す概略側断面図、図30は本実施形態の微小粒子拡散装置の主要部を示す概略平面断面図である。本実施形態の微小粒子拡散装置30の主要部は、送風機12と、送風経路13と、図示しない制御部とから成り、微小粒子は送風機12の駆動により搬送され、送風経路13を流通し、拡散装置吹出口15から外部へ放出される。また、送風経路13は絞り部13aと拡大管部13bを備えている。
絞り部13aは、送風経路の高さが徐々に減少するとともに幅が徐々に拡大し、断面積としては緩やかに減少する構成となっている。また、絞り部13aから拡散装置吹出口15に至る部分は拡大管部13bにて構成されており、拡散装置吹出口15に向かうに従い断面積が滑らかに拡大する構成となっている。具体的には、絞り部13aの終点位置で、高さ12mm、幅30mm、即ちアスペクト比:AR=2.5、絞り部13aの終点位置で、高さ8mm、幅40mm、即ちアスペクト比:AR=5、拡大管部13bの終点、即ち、拡散装置吹出口15部においては、高さ8mm、幅450mm、即ちアスペクト比:AR=56に設定されている。
さらに、拡大管部13bは、絞り部13aのすぐ下流部から拡散装置吹出口15のやや上流部にかけて、複数の導風板16が設置されており、該導風板16により複数に分割されている。本実施形態において拡大管部13bは、6枚の導風板16により7分割されて、区切られたそれぞれの送風経路3は拡散装置吹出口15に近づくにつれてアスペクト比が大きくなるように構成され、拡散装置吹出口15に近いほうの導風板16の端部でのアスペクト比が8程度に設定されている。また、6枚の導風板16は、拡散装置吹出口15部での長手方向の風速分布がどこでも略同一になるように設定されており、従って、拡散装置吹出口15下流部のイオン濃度が流れ方向に垂直な平面内において略均一となる。
上記送風系に、所望の微小粒子を発生させる微小粒子発生装置を設置する。設置位置は、図29、図30に示すAまたはBの位置が望ましい。即ち、Aの位置は送風機12の更に上流側であり、この位置に微小粒子発生装置を設置した場合には、送風機12の混合能力により微小粒子が空気に均一に混合する。また、Bの位置は絞り部13aまたは絞り部13aのすぐ下流部であり、この位置に微小粒子発生装置を設置した場合には、絞り部13aの整流効果により微小粒子が空気に比較的均一に混合する。
上記微小粒子の例としては、プラスイオン、マイナスイオン、クラスターイオンといった電荷をもつ粒子、活性を持ったラジカル、原子、酸素分子、水分子(水蒸気)といった各種分子、殺菌作用を呈する微小粒子、芳香成分、薬効成分、空気清浄装置により花粉や塵埃等を清浄した後のきれいな空気、その他、空気中に拡散して効果を発揮する微小粒子ならどのようなものでも用いることができる。
本実施形態によれば、第6の実施形態と同様に微小粒子を広範囲の領域に拡散することができる。なお、絞り部13aに代えて整流装置や整流部を設けてもよい。また、導風板16に代えて送風経路13を分割し、それぞれの送風経路13の終端部、即ち複数設けられた拡散装置吹出口15のアスペクト比を8程度に設定しても同様の効果を得ることができる。
次に、本実施形態に係る他の実施形態について説明する。図31は、本実施形態の微小粒子拡散装置の一例として、加湿器等に搭載する水蒸気拡散装置31を示す概略側断面図である。本実施形態の水蒸気拡散装置31は、上記微小粒子拡散装置30に追加して、図29および図30に記載のBの位置に水蒸気吹出口32が設けられ、水蒸気吹出口32に連通する水蒸気流通経路33および水蒸気発生装置34が設けられる。水蒸気発生装置34は例えば図示しない水タンクと水タンク内の水を加熱して水蒸気を発生させる加熱ヒータから構成される。本実施形態によれば、第14の実施形態と同様に水蒸気を広範囲の領域に拡散することができる。
なお、本発明の冷蔵庫において、冷蔵庫庫外イオン吹出口22は冷蔵庫天井部に設けてもよい。この構成によると、殺菌作用を呈する微小粒子をより遠くまで拡散することができ、冷蔵庫の周囲の空間に存在する浮遊菌等の微生物を殺菌することができる空間を拡大することができるため、開閉扉の開閉時に庫外から庫内へ浮遊菌が侵入するのを防止し、より衛生的な庫内環境を実現できる。
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定される訳ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施される。また、イオン拡散装置および微小粒子拡散装置は冷蔵庫だけでなくあらゆる機器に搭載しても上記と同様の効果を得ることができる。
〈比較例1〉
第1の実施形態と比較するための比較例について説明する。図32は、比較例1の流体発生装置を示す概略平面断面図、図33は比較例1の流体発生装置を示す概略側断面図である。比較例1の流体発生装置100aは、流体送り装置2と、流体流通経路3と、噴流を発生する吹出口5と、図示しない制御部とから構成されている。流体は、流体送り装置2の駆動により搬送され、流体流通経路3を流通し、吹出口5から噴流となって外部へ放出される。なお、図中の矢印は流体の流れを示している。
また図34は、上記流体発生装置100aの使用例として、高さ60mm、幅60mmの形状を呈する吹出口から、吹出し流速1.5m/sの空気を送出した場合の流速分布を表す図である。図中の格子は1マスが0.5mを表している。なお、吹出口から送出される流体が液体であってもほぼ同様の傾向を示す。図34より、比較例1の流体発生装置100aは、噴流の到達距離が短いといった問題があることがわかる。
さらに、比較例1の流体発生装置100aは、広範囲への流体の搬送に不向きであるといった問題があることもわかる。一般に、従来技術を用いた流体発生装置の吹出口形状は、低アスペクト比のものが多く、そのような吹出口から吹出された噴流は、広範囲に広がりにくく、仮に広がったとしても、流速が大幅に低下してしまう。
〈比較例2〉
第6の実施形態と比較するための比較例2について説明する。図35は、比較例2のイオン拡散装置を備えた冷蔵庫の正面図、図36は、比較例2のイオン拡散装置を示す概略平面断面図である。図35の比較例2の冷蔵庫200の天井部には、比較例2のイオン拡散装置110aが備えられている。
比較例2のイオン拡散装置110aは、送風機12と、送風経路13と、放電面14aを送風経路13に面するように設置されたイオン発生装置14と、図示しない制御部とから成る。イオン発生装置14の駆動により生成されるイオンは、送風機12の駆動により搬送され、送風経路13を流通し、拡散装置吹出口15から外部へ放出される。なお、図36中の矢印は、この時の気流の様子を示している。また、冷蔵庫200の開閉扉21の上部には、前記送風経路13および拡散装置吹出口15が連通する冷蔵庫庫外イオン吹出口22が備えられ、冷蔵庫庫外にイオンが放出、拡散する構成となっている。なお、イオン拡散装置110aの送風機12の吸込口上流には、イオン拡散装置110a内部への油煙や塵埃の侵入を防ぐために、図示しないエアフィルターが設置されている。
イオン発生装置14は、H+(H2O)n及びO2 -(H2O)mなるイオンを発生させることができる。イオン発生装置14の放電面14aから発生したイオンは送風経路13内に放出され、送風機12の駆動により拡散装置吹出口15および冷蔵庫庫外イオン吹出口22から冷蔵庫庫外に吹出される。
上記のように、プラスイオンとマイナスイオンを冷蔵庫200の前方周囲の庫外生活空間に放出することで、その生活空間に存在する浮遊菌を殺菌し、衛生的な生活空間を提供するとともに、開閉扉21開閉時に庫外から庫内への浮遊菌の侵入を抑制し、衛生的な庫内環境を実現できる。
図37は、室温15℃の部屋において、比較例2のイオン拡散装置110aを備えた冷蔵庫200の冷蔵庫庫外イオン吹出口22から、H+(H2O)nとO2 -(H2O)mなるイオン、所謂クラスターイオンを室内に放出した場合の、部屋の各部でのイオン濃度を示している。部屋の大きさは8畳(高さ2400mm、横3600mm、奥行き3600mm)であり、計測ポイントは図18に1点鎖線で示した部屋の床面からの高さ1700mmの断面である。また、このときの冷蔵庫庫外イオン吹出口22の風速は1.5m/sである。さらに、このときの冷蔵庫前方1mにおける騒音値は22dBである。なお、このときのイオン発生装置14の制御方法に関しては、第6の実施形態と同等である。
図37によると、冷蔵庫庫外イオン吹出口22の周囲には高濃度のイオンが存在するものの、その領域は狭く、必ずしも十分とは言えない。比較例2の冷蔵庫庫外イオン吹出口22の前方10mm位置におけるイオン濃度は約10万個/cm3であり、イオン発生装置14から十分なイオンが発生しているものの、吹出口近傍に高濃度のイオンが停滞した状態となっており、部屋全体に拡散していない。即ち、比較例2のイオン拡散装置110aを備えた冷蔵庫200は、イオンの発生量に対して、イオンの拡散能力が低いといった問題があることがわかる。
イオン濃度が高い領域を拡大するには、イオン拡散装置110aの送風機12の回転数を増加してやればよいが、これだと送風騒音が著しく増加するという問題が生ずる。または、イオン濃度が高い領域を拡大するには、イオン発生装置14によるイオンの生成量を増加してやればよいが、この場合、イオン発生装置14に印加する電圧を大幅に増加する必要があるだけでなく、イオン発生音の増大、および、イオンと同時に発生するオゾン量が爆発的に増加してしまうとう問題が生ずる。
比較例2のイオン拡散装置110aおよび/またはイオン発生装置14と同様のものが、多くの家電製品に搭載されているが、何れも上記と同様にイオン拡散能力が低いという問題がある。
〈比較例3〉
第6の実施形態と比較するための比較例3について説明する。図38は比較例3のイオン拡散装置を示す概略平面断面図、図39は比較例3のイオン拡散装置を示す概略側断面図である。
比較例3のイオン拡散装置110bでは、第6の実施形態の絞り部13aが廃止されている。このため、送風経路3の圧力損失は低減するものの、イオン発生装置14の放電面14a近傍を流通する空気の乱れを整流することができず、さらに、送風機12下流に生ずる流れの偏り、所謂偏流を抑制することもできない。即ち、気流の乱れによるイオン同士の衝突確率上昇のためイオン消滅量が多くなりイオンの寿命が短くなるとともに、気流の乱れや偏りのため放電面14a近傍を流通する空気は一様とならず、イオン発生装置14の放電面14a上におけるイオン発生効率が低下する。即ち、所望のイオン発生量を確保するのに更なる高電圧または大風量が必要となるだけでなく、騒音面でも不利となる。また、偏った気流がイオンを含んで拡大管部13bを流通し、拡散装置吹出口15から送出されるため、拡散装置吹出口15での長手方向の風速分布にも偏りが生じる。従って、拡散装置吹出口15下流部のイオン濃度も流れ方向に垂直な平面内において偏りが生じ、イオンの拡散能力が低下してしまう。
〈比較例4〉
第6の実施形態と比較するための比較例4について説明する。図40は比較例4のイオン拡散装置を示す概略平面断面図であり、概略側断面図は図15に示す第6の実施形態と全く同一となる。
比較例4のイオン拡散装置110cは、第6の実施形態のイオン拡散装置11aと比較して放電面14aとその近傍の送風経路13の形状および配置が異なる。イオン発生装置14の放電面14aの流れに垂直な方向の幅をw1、放電面14aに面する送風経路13の幅をw2とすると、w2=2×w1に設定し、さらに、イオン発生装置14の放電面14aの流れに垂直な方向の中央と、放電面14aに面する送風経路13の中央を同一位置に一致する構成となっている。このため、流れに垂直な方向にイオン濃度のばらつきが生じ、拡散装置吹出口15の中央付近でイオン濃度が高く、両端においてイオン濃度が低くなる。特に、送風機12から送出される空気の偏りが大きく、気流が送風経路13の左右どちらかの壁面に沿って流れるような場合には、沿って流れる壁面の下流側の拡散装置吹出口15の風速が大きく、拡散装置吹出口15のそれ以外の場所では風速が小さくなる。従って、風速の小さい部分の下流域のイオン濃度が低下するとともに、風速の大きい気流がイオン発生装置14の放電面14aを通過しないため、イオン発生効率も大幅に低下し、イオンの拡散能力が低下してしまう。
〈比較例5〉
第6の実施形態と比較するための比較例5について説明する。図41は比較例5のイオン拡散装置を示す概略平面断面図であり、概略側断面図は図15に示す第6の実施形態と全く同一となる。
比較例5のイオン拡散装置110dは、第6の実施形態のイオン拡散装置11aの導風板16が廃止されている。このため、拡大管部13bの左右の壁面から気流が剥離してしまい、ディフューザの効果が得られないとともに、図41に示すCの領域に渦領域が生じ、送風効率が低下する。また、気流が左右に広範囲に拡散せず、拡散装置吹出口15の中央部付近に偏って流れるため、イオンも左右方向に広範囲に拡散せず、一方向にのみ分布する。さらに、拡散装置吹出口15でのアスペクト比が最適化されないため、気流の到達距離も短縮される。従って、イオンの拡散能力が低下してしまう。
〈比較例6〉
第6の実施形態と比較するための比較例6について説明する。図42は比較例6のイオン拡散装置を示す概略平面断面図、図43は比較例6のイオン拡散装置を示す概略側断面図である。
比較例6のイオン拡散装置110eは、比較例3からさらにイオン発生装置の設置位置を変更した構成となる。即ち、比較例3においては、イオン発生装置14の長手方向を気流の流れと垂直になるように配置していたのに対し、比較例6においては、イオン発生装置14の長手方向を気流の流れと平行にすると同時に、拡大管部13bの右側の側壁に配置している。このため、比較例3の不都合にあわせて、イオン発生装置14の設置されている拡大管部13bの右側の側壁の下流である拡散装置吹出口15の右側から送出されるイオンの濃度は高く、拡散装置吹出口15の左側および中央部から送出されるイオンの濃度は低くなるという不都合が生じる。即ち、イオンは左右方向に広範囲に拡散せず、一方向(右方向)にのみ分布するため、イオンの拡散能力が低下してしまう。