JP3797572B2 - 浄水施設における洗浄排水の処理方法 - Google Patents

浄水施設における洗浄排水の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浄水施設において、砂濾過池、活性炭吸着池等の浄水処理設備から排出される洗浄排水の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、浄水施設における浄水処理は、河川水や湖沼水等の原水を着水井から沈澱池を介して濾過池に導入し、沈澱濾過を行うとともに、高度な処理の場合には、オゾン処理槽や活性炭吸着池等を経て浄化するという方法が採られている。図3はその従来から実施されている浄水処理の一実施例を示す処理フロー説明図である。本図において、処理対象となる原水は着水井51から沈澱池52に流入し、さらにその上澄水が砂濾過池53へと流入され、その濾過された処理水は活性炭吸着池54を経て浄化水として抽出される。
さて、この浄水処理の工程中、沈澱池52内に沈澱した汚泥は汚水池55に排泥されるとともに、砂濾過池53及び活性炭吸着池54内の懸濁性物質を含んだ分離水も、いわゆる洗浄排水として汚水池55へと排出される。汚水池55においてこれら洗浄排水等は自然沈降分離し、その上澄水は着水井51に返送されて再び浄水処理が施される。また、汚水池55内に沈降した汚泥は濃縮槽56へ排泥され、濃縮処理が施された後、次の汚泥脱水工程へと送られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この洗浄排水の処理については、近年の浄水施設全体の高度処理化に伴って、今後、浄水処理水量に占める洗浄排水の比率が約10%程度と高くなることが予想されており、従って総合的な水処理システムを考慮した場合には洗浄排水の有効な利用法が重要な課題となってくる。
従来の洗浄排水の処理は、上述したように汚水池の上澄水を着水井に返送して再利用を図るという方法が採用されているが、この上澄水には懸濁性物質や溶解性物質が多分に含まれていて水質的に満足できるものでなく、原水とともに再び沈澱池、砂濾過池等に流入させてもその浄水効率は低いものとなっている。
従って、浄水施設全体としての浄水効率という見地から観た場合には、より有効な洗浄排水の処理法が望まれていた。
【0004】
本発明は上述の課題を解決するために創作されたものであり、砂濾過池、活性炭吸着池等、浄水処理設備からの洗浄排水を有効に利用することにより浄水処理の効率を向上させ得る、浄水施設における洗浄排水の処理方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の目的を達成するために以下の手段を用いた。
砂濾過池、活性炭吸着池等の浄水処理設備により原水を浄化する浄水処理工程中に、前記浄水処理設備から排出される洗浄排水の処理方法であって、前記洗浄排水を重力分離させた後、その上澄水を膜濾過処理して前記浄水処理工程に還流させる構成とした。
また、前記膜濾過処理を、前記浄水処理設備から流入する洗浄排水の沈降分離を行う洗浄排水調整池、及び、前記洗浄排水調整池から流入する上澄水の膜濾過を行う、膜モジュールを備えた膜処理槽により行うようにした。
さらに、前記洗浄排水調整池及び前記膜処理槽の排泥を、汚泥の濃縮処理を行う濃縮槽に流入させて、前記濃縮槽内で濃縮汚泥と分離された分離水を前記洗浄排水調整池へ還流させる構成とした。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1乃至図2に基づいて説明する。図1は本発明に係る浄水施設における洗浄排水の処理方法を示す処理フロー説明図であり、図2は洗浄排水調整池及び膜処理槽の詳細説明図で、図2(a)は平面図、図2(b)は断面図である。
【0007】
まず図1において、着水井に貯水された原水は沈澱池1に流入し、さらにその上澄水が砂濾過池2へと流入され、その濾過された処理水は活性炭吸着池3を経て浄化水として抽出される。これら浄水処理設備による浄水処理の工程中、沈澱池1内に沈澱した汚泥は汚水池4に排泥されるとともに、砂濾過池2及び活性炭吸着池3内の懸濁性物質を含んだ洗浄排水も汚水池4に排出される。汚水池4はこれら排泥及び洗浄排水の回収利用を図るべく重力分離を行わせるために設けられるものである。
【0008】
さて、本発明に係る洗浄排水の処理方法は図1の点線で囲まれた部分によって示される。すなわち、汚水池4に貯水される洗浄排水のうち、その重力分離された上澄水を膜濾過処理した後、前記浄水処理工程に還流させる構成としたものである。このように積極的に膜濾過処理を行うことで、懸濁性物質の少ない処理水を得ることが可能となるため、従来のように単に自然沈降分離させた上澄水を利用する方法に比べて、高い洗浄排水の浄水効率が得られる。
本実施形態では、この膜濾過処理の具体的手段として次のように構成している。まず、汚水池4から流入する上澄水の沈降分離を行わせるための洗浄排水調整池5を設けるとともに、膜モジュール7を備えた膜処理槽6を設けて、洗浄排水調整池5から流入する、分離処理された上澄水の膜濾過処理を行うようにしたものである。本実施形態ではこの膜処理槽6として浸漬型膜モジュール用の槽を使用している。なお、符号8は膜処理水槽を表し、膜モジュール7により膜濾過処理された膜処理水Mを貯水させておくための槽であって、膜処理水Mはこの槽から前記浄水処理工程に還流されるようになっている。膜処理水Mは懸濁性物質の含有量が少ないため、浄水処理工程の後半処理の部位に還流させることが可能であり、本実施形態では砂濾過池2の最終濾過部2aに還流させているが、水質条件によっては直接活性炭吸着池3に還流させることも可能である。
【0009】
洗浄排水調整池5及び膜処理槽6は、図2(a)及び(b)に示すように隣接して一体となるように設けられる。洗浄排水調整池5の内部には、汚水池4から流入する上澄水に含まれた懸濁性物質を所定の排泥部位に効率良く沈降させるための、複数の傾斜板5aが備わるとともに、その底部は、分離沈降した汚泥を凝集させるためのスロープ部5bが形成される。
【0010】
一方、膜処理槽6は、膜処理内槽6a及び膜処理外槽6bの2つの槽から構成される。洗浄排水調整池5から過剰の上澄水が流入したときに膜処理内槽6aから膜処理外槽6bへと上澄水を戻すためであり、膜処理内槽6aは、上澄水が循環するための循環路6cを形成するように配置されるとともに、膜処理内槽6aの底部には開口部6dが形成されており、膜処理内槽6aの上部から溢れた上澄水は循環路6cを通って開口部6dから再び膜処理内槽6aに入り、膜モジュール7により膜濾過処理されるようになっている。なお、上澄水が循環して開口部6dに流入する際、その水流により沈澱した汚泥が舞い上がらないようにするため、膜処理槽6の底部には多孔のパンチングメタル材やハニカム状のコア材等からなる沈澱濁質遮蔽板6eが設けられる。
【0011】
膜処理槽6の内部には、膜モジュール7が上澄水に浸漬される。本実施形態では膜モジュール7として中空糸膜モジュール又は平膜モジュールを利用しており、膜自体は、精密濾過膜(MF膜)を使用する。そして、吸引ポンプ(図示せず)にて一定時間吸引させることにより、上澄水を膜モジュール7内部に透過させ、膜処理水Mとして膜処理水槽8に送水する。この吸引時間、すなわち膜濾過時間は洗浄排水調整池5の流入水位から膜モジュール7の上方の水位までの水位変動に要する時間とし、その後一定の静置時間が設定される。膜濾過処理の運転サイクルはこの膜濾過時間と静置時間を所定の間隔で交互に繰り返すことにより行われる。
また、吸引濾過は定流量濾過方式を採用し、定流量弁(図示せず)等により一定量の膜処理水が得られる構成としてある。上述の膜濾過時間と静置時間との間隔パターンを調整することにより、例えば静置時間を大きく設定すれば、この静置時間中に膜面に付着した懸濁性物質の剥離が進行し、吸引ポンプによる吸引圧力が回復されることから濾過流量を大きく設定することも可能となる。
【0012】
さらに、膜面に付着した懸濁性物質をより効率良く除去させるため、膜処理槽6内にはエアー噴出管11が配設される。エアー噴出管11には、ブロワ等のエアー供給機(図示せず)からエアーが供給され、管に穿設されたエアー噴出孔等からエアーを噴出させ、いわゆるエアースクラビングにより膜モジュール7の膜面の洗浄を行う。エアーは、連続的に噴出するとよいが、洗浄効率に差がなければ、間欠的に噴出しても良い。
また、膜モジュール7の種類によっては、例えば中空糸膜モジュールの場合には逆洗浄処理9を行い、図1に示すように膜処理水槽8内の膜処理水Mの一部を逆洗用水として利用する。平膜モジュール等の場合には、洗浄排水調整池5から流入する上澄水を噴出管等により直接膜面に噴出させるようにして、濁質の除去を行うようにしても良い。
【0013】
さて、汚水池4内に沈降した汚泥は、通常、攪拌機等を備える濃縮槽10へ送られ、濃縮処理が施されて次の汚泥の脱水工程へと送られる。本発明は、洗浄排水の回収率(浄水効率)を高める目的で、洗浄排水調整池5及び膜処理槽6に沈降した汚泥もこの濃縮槽10へ排出させて、この濃縮槽10内で濃縮汚泥と分離される分離水Bを洗浄排水調整池5へ還流させる構成としている。
なお、洗浄排水調整池5及び膜処理槽6の排泥は、所定量或いは所定時間に達した場合に弁体等が作動して行われる。
【0014】
以上、本発明に係る浄水施設における洗浄排水の処理方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の主な特徴は、洗浄排水を膜濾過処理してから浄水処理工程に還流させる構成としたことである。本実施形態では膜モジュールに対する懸濁性物質等の固形物負荷量を低減する目的で洗浄排水調整池を設置したが、原水自体の性質、又は浄水処理工程、洗浄排水処理工程の運転条件によっては汚水池の上澄水を直接膜処理槽へ流入させて膜濾過処理することも可能である。
その他、本発明は既述した実施形態に限られることなく、洗浄排水調整池、膜処理槽の構造或いは形状等については図面に記載したものの他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更することが可能である。
【0015】
【発明の効果】
本発明は、洗浄排水を膜濾過処理する方法としてあるので、懸濁性物質の少ない処理水を得ることが可能となり、従来の自然沈降分離させた上澄水を再利用する方法に比べて、高い浄水効率を得ることができる。
また、洗浄排水が貯水される汚水池の容量を小さくできるために、浄水施設の省スペース化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る洗浄排水の処理方法を示す処理フロー説明図である。
【図2】洗浄排水調整池及び膜処理槽の詳細説明図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は断面図である。
【図3】従来の洗浄排水の処理方法を示す処理フロー図である。
【符号の説明】
1 沈澱池
2 砂濾過池
3 活性炭吸着池
4 汚水池
5 洗浄排水調整池
6 膜処理槽
7 膜モジュール
8 膜処理水槽
9 逆洗浄処理
10 濃縮槽
11 エアー噴出管
B 分離水
M 膜処理水

Claims (3)

  1. 砂濾過池、活性炭吸着池等の浄水処理設備により原水を浄化する浄水処理工程中に、前記浄水処理設備から排出される洗浄排水の処理方法であって、前記洗浄排水を重力分離させた後、その上澄水を膜濾過処理して前記浄水処理工程に還流させる構成としたことを特徴とする浄水施設における洗浄排水の処理方法。
  2. 前記膜濾過処理は、前記浄水処理設備から流入する洗浄排水の沈降分離を行う洗浄排水調整池、及び、前記洗浄排水調整池から流入する上澄水の膜濾過を行う、膜モジュールを備えた膜処理槽により行われることを特徴とする請求項1に記載の浄水施設における洗浄排水の処理方法。
  3. 前記洗浄排水調整池及び前記膜処理槽の排泥を、汚泥の濃縮処理を行う濃縮槽に流入させて、前記濃縮槽内で濃縮汚泥と分離された分離水を前記洗浄排水調整池へ還流させる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の浄水施設における洗浄排水の処理方法。
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