JP3796785B2 - ベンジルアルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はベンジルアルコールの製造法の改良に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は、高活性で触媒寿命の長い陽イオン交換樹脂触媒を用いて、ベンジルアセテートを加水分解してベンジルアルコールを効率よく、経済的に有利に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ベンジルアルコールは、溶解性に優れた溶剤、無毒性のため医薬用添加剤、農薬、医薬などの中間体として重要な化合物であり、近年その需要はますます増加する傾向にある。ベンジルアルコールの製造法としては一般的に、次の方法が知られ、工業的には1)、3)の方法で製造されている。
【0003】
1)ベンジルクロライドを苛性ソーダを用いて加水分解する方法。
【0004】
2)ベンジルアセテートを触媒の存在下、加水分解する方法。
【0005】
3)ベンズアルデヒドを触媒の存在下、水素還元する方法。
【0006】
上記1)、2)はいずれも加水分解によりベンジルアルコールを製造する方法である。そのうち1)の方法では苛性ゾーダが量論反応するためベンジルクロライドと当量以上必要であり、さらに反応後には有機物を含んだ多量の食塩水が副生し、その処理が問題である。
【0007】
一方、2)のベンジルアセテートを加水分解してベンジルアルコールを製造する方法は、反応で副生する酢酸が再利用されるので排水のないプロセスとなり、経済的で環境にも低負荷である。J.Chem.Soc.No.5,1952,1607にはジビニルベンゼン単位の含有量が8重量%であるスルホン酸型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−100)の存在下、20〜30℃で加水分解してベンジルアルコールを製造する方法が既に報告されている。しかしながらこの方法は触媒活性が低いため工業的な方法としては実用的ではない。
【0008】
また、ロシア特許SU1077875号明細書では2.2〜4.0mg当量/gのニトロ基を含む多孔性のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いて、90〜98℃でバッチ或いは流通式で加水分解反応を実施して、ベンジルアルコールの収率を向上させている。しかしながらこの方法はニトロ基を含む特殊なイオン交換樹脂を用いるため、触媒コストの面から工業的な方法としては実用的ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高活性で触媒寿命の長い陽イオン交換樹脂触媒を用いてベンジルアセテートを加水分解し、ベンジルアルコールを経済的に有利に製造できる方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、触媒として、ジビニルベンゼン単位の含有量が特定の範囲にあるスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を用いることにより、その目的を達成しうることを見出した。すなわち、本発明は、ジビニルベンゼン単位の含有量が8重量%未満のスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の存在下に、ベンジルアセテートを加水分解させること特徴とするベンジルアルコールの製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明においては、ベンジルアセテートの加水分解反応に、触媒として、強酸性陽イオン交換樹脂であるスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体が用いられる。このスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体におけるジビニルベンゼン単位の含有量は8重量%未満であることが必要であり、この含有量が8重量%以上のものは、反応活性が低く、本発明の目的が達せられない。またジビニルベンゼン単位の含有量は、触媒強度を考慮すれば1重量%以上が好ましく、触媒寿命を考慮すれば7重量%以下が好ましい。
【0012】
本発明の方法において使用されるスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体は、ジビニルベンゼン単位の含有量が上記範囲であれば特に限定するものではなく、市販品を使用することができる。また、構造から分類される種類については、ゲル型、MR(macroreticular)型のいずれも用いることができる。ゲル型には単純ゲル型共重合体及び拡大網目型(MP:macroporos)ゲル共重合体があり、どちらも用いることができる。MR型は多孔性共重合体であって、表面積、細孔率、平均細孔径などが任意のものが用いることができる。さらに、乾燥樹脂当たりの総交換容量は3〜6.5m当量/gが好ましい。
【0013】
本発明においては、通常上記のスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる触媒を充填した反応器に、原料のベンジルアセテートと水を連続的に供給して反応させる固定床連続反応方式が用いられる。該原料には、ベンジルアセテートと水以外に、所望により原料の混合をよくする目的で反応生成物である酢酸を加えてもよい。また、水/ベンジルアセテートモル比は、通常0.5〜30、好ましくは1〜15の範囲で選ばれる。このモル比が0.5未満では、ベンジルアセテートの転化率が上がらない場合があり、また、30を超えると反応速度が遅くなり工業的に不利になる場合がある。一方、原料全量に対する酢酸の濃度は通常0〜30重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲で選ばれる。この濃度が30重量%を超えると、ベンジルアセテートの加水分解反応は平衡反応であるため、生成物である酢酸が増えて反応が原料側に偏り、不利となる。
【0014】
本発明において反応温度は、通常40〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で選ばれる。反応温度が40℃未満では、反応速度が遅く、また、150℃を超えるとジベンジルエーテルの副生が増し選択率を低下させ、さらに触媒の陽イオン交換樹脂が分解又は劣化する場合がある。反応圧力に特に限定するものではなく、所望に応じて、加圧下で反応を行っても良い。また、液空間速度(LHSV)は、通常0.1〜30hr-1、好ましくは0.2〜6hr-1の範囲で選ばれる。このようにして反応器から出てきた反応混合物は、公知の方法により後処理が施され、ベンジルアルコールが取り出される。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により、さらに詳しく説明する。
【0016】
実施例1
温度調節器を有する流通式反応器に、表1に示すジビニルベンゼン(DVB)単位の含有量のスルホン酸型酸性陽イオン交換樹脂(母体構造:スチレンージビニルベンゼン共重合体)を充填した。この反応器に原料であるベンジルアセテートと水(組成:水/ベンジルアセテート=63/37モル%)を、80℃、LHSV0.45hr-1で導入して反応させた。ガスクロマトグラフィーによって、ベンジルアセテートの転化率(BC)、ベンジルアルコールの選択率(BS)を計算した。これらの結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
また上記の反応条件で1,000時間反応させて、活性劣化定数(1時間当たりのベンジルアセテートの転化率の低下割合)を測定した結果、活性劣化は見られなかった。
【0019】
実施例2〜実施例3、及び比較例1〜比較例4
表1に示したジビニルベンゼン(DVB)単位の含有量のスルホン酸型酸性陽イオン交換樹脂(母体構造:スチレンージビニルベンゼン共重合体)を実施例1とスルホン酸基の量が同じになるようにして充填した。実施例1と同様にして反応を行い、ガスクロマトグラフィーによって、ベンジルアセテートの転化率(BC)、ベンジルアルコールの選択率(BS)を計算した。これらの結果を表1にまとめた。
【0020】
また比較例4について実施例1と同様の反応条件で1,000時間反応させて、活性劣化定数を測定した結果、0.002%/hであった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によると、ジビニルベンゼン単位の含有量が特定の範囲にあるスルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる触媒を用いることにより、ベンジルアルコールを効率よく経済的に有利に製造することができる。
Claims (1)
- ジビニルベンゼン単位の含有量が7重量%以下のスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の存在下に、水/ベンジルアセテートモル比が0.5〜30、反応温度が40〜150℃及び液空間速度(LHSV)が0.1〜30hr -1 の条件でベンジルアセテートを加水分解させることを特徴とするベンジルアルコールの製造方法。
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