JP3796711B2 - 中空パーツの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空パーツの製造方法、詳しくは、肉薄中空部の外周にねじ又は溝を形成してなる中空パーツの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図3に示すように、肉厚が1mm前後といったきわめて薄い肉薄中空部dの外周にねじcを形成してなる中空パーツPの製造方法としては、まず、中実のブランクの外周にねじ転造加工によりねじを形成し、次に、このねじ付きブランクの中心部にドリルによる切削加工により肉厚中空穴aを形成し、その後、該中空穴aに中ぐり加工を施して肉薄中空部dを形成するようになされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した中空パーツの製造方法にあっては、上記ねじ転造によるねじ切り後に、ドリルや中グリ盤などの切削機を用いて穴明け加工を行う必要があるため、生産性が悪い問題があり、また、コストも高くつく問題があった。
【0004】
なお、量産するために圧造成形機によりねじのない肉薄中空部をもつ中空パーツ本体を形成し、その後、該本体の肉薄中空部に区をねじ転造により加工してねじを形成することが考えられるが、ねじを切る中空部の肉厚が薄い場合、ねじを加工する際に肉薄中空部が変形したり或いは破損する問題があり、採用できないものとされていた。
【0005】
そこで、本発明は、肉薄中空部の外周にねじ又は溝を形成してなる中空パーツを圧造成形機を用いて圧造成形できるようにして、生産性の向上を図ることができると共に、低コストで製造できる中空パーツの製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、肉薄中空部の外周にねじ又は溝を形成してなる中空パーツの製造方法として、まず、肉厚中空穴が形成され、一端に鍔をもつ中空ブランクの長さ方向中間部の外周にねじ又は溝を転造加工して、ねじ又は溝付きの中空ブランクを形成し、次に、この中空ブランクを内面に上記ねじ又は溝に合致するためのねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させ、その保持状態のもとでパンチの打ち込みにより上記中空穴内面に、その他端から鍔近くまで至る肉厚中空穴よりも大径の肉薄中空部を圧造成形し、その後、この中空ブランクを、内面に上記ねじ又は溝に合致するためのねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させた保持状態のもとで、中空ブランクの肉薄中空部における他端部内面に、該肉薄中空部よりも小径で、肉厚中空穴よりもやや大径の中肉中空部を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記の手段によれば、予め肉厚中空穴が形成され、一端に鍔をもつ中空ブランクの外周に転造加工によりねじ又は溝部分を形成し、この中空ブランクをめねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させた上で圧造成形することによりまず肉薄中空部を形成し、その後、同様に圧造成形して中肉中空部を形成するようにしたから、ねじ又は溝部分を変形させたり破損させることなく圧造成形機で中空パーツを圧造成形することができ、生産性の向上を図ることができると共に、低コストに抑えることが可能となる。その上、肉薄中空部を圧造成形した中空ブランクの肉薄中空部における他端部内面に、該肉薄中空部よりも小径で、肉厚中空穴よりもやや大径の中肉中空部を形成するようにしたから、全体として一端に鍔をもつと共に長さ方向中間部の外周にねじ又は溝をもち、かつ一端の鍔部分に肉厚中空穴を、中間のねじ又は溝部分に肉薄中空部をさらに他端部分に中肉中空部を有する中空パーツを形成することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図面は、肉薄中空部の外周にねじを形成してなる中空パーツPを、ねじ転造(図示せず)とロータリ式の多段圧造成形機1により製造する場合の実施形態を示す。
【0009】
図1〜図4は中空パーツPを製造する場合のねじ加工及び成形工程における形状の変化を示す。
【0010】
まず、図1に示すような肉厚中空穴aが形成され、一端に鍔bをもつ中空ブランクP1を予め圧造成形などにより形成する。そして、このブランクP1の長さ方向中間部の外周にねじcをねじ転造などによりねじ加工して、図2に示すようなねじ付きの中空ブランクP2を形成する。なお、図に示す実施形態のものでは、ブランクP1のねじcを形成する中間部分の外径が他端部の外径よりもやや大径に形成されている。
【0011】
次に、この中空ブランクP2を後記する多段圧造成形機1の1段目の圧造ステーションにおいて圧造成形して、図3に示すような中空ブランクP2の中空穴a内面に、その他端から鍔b近くまで至る中空穴aよりも大径の肉薄中空部dを形成した中空ブランクP3を形成する。
【0012】
その後、この中空ブランクP3を多段圧造成形機1の2段目の圧造ステーションにおいて圧造成形して、図4に示すような中空ブランクP3の肉薄中空部dにおける他端部内面に、該薄肉中空部dよりも小径で、中空穴aよりもやや大径の中肉中空部eを形成した最終製品としての中空パーツPを形成する。
なお、中肉中空部dは、厚肉中空穴aと同厚又は薄肉中空部dと同厚であってもよい。
【0013】
次に、ねじ付きの中空ブランクP2から圧造成形により上記中空パーツPを形成するためのロータリ式の多段圧造成形機1の構造並びにその製造工程について説明する。
【0014】
図5に示すように、ロータリ式の多段圧造成形機1は、前後方向に延びる回転軸2の外周に取付けられ、6個の半割りダイス3…3を有する回転ドラム4と、該ドラム4の上方位置に配設されるブランク供給部5と、該供給部5の一方側に配置される二つの半割りダイス3,3に対し近接離反可能に設けられる摺動半割りダイス6,7と、回転ドラム4の前方に位置し、かつ該ドラム4に対して進退移動可能で、二つのパンチ8,9を備えたラム(図示せず)とを備えている。
【0015】
具体的には、回転ドラム4の外周部に半割りダイス3…3が等間隔をおいて放射状に6個配置され、各ダイスの割り面3aには、めねじ3bをもつ成形孔3cが形成されている。また、回転ドラム4はモータなどの駆動部材(図示せず)によりダイス3が図5に示す最上端位置の状態から60度づつ間歇的に回転されるようになされている。
【0016】
ブランク供給部5は、ねじ付きの中空ブランクP2を水平状態のまま半割りダイス3の成形孔3c側に案内するための複数のガイド板4a〜4cとこれらガイド板4a〜4c下部の供給口を開閉する閉鎖体4dとを備えている。閉鎖体4dの開閉は、回転ドラム4の間歇的動作に同期して動作するスライド機構(図示せず)により図5の矢印方向へ往復動されることにより行われる。
【0017】
摺動半割りダイス6,7は、6個の半割りダイス3…3のうち、図5に示すようにブランク供給部5の一方隣りに位置する半割りダイス3と該ダイス3と隣り合う半割りダイス3にそれぞれ放射方向で対面し、かつ摺動体61,71を介して放射方向に摺動可能に支持部材(図示せず)に設けられる。各ダイス6,7の割り面6a,7aには、めねじ6b,7bをもつ成形孔6c,7cが形成されている。摺動半割りダイス6,7はエアーシリンダ又は電磁ソレノイドなどにより回転ドラム4の間歇動作に同期して摺動される。つまり、回転ドラム4の回転が停止したときに、半割りダイス3の割り面3a,3aに半割りダイス6,7の割り面6a,7aを密着させ、回転ドラム4の回転開始前にこれら割り面を開放するようになされている。
【0018】
また、ラムには、図7,8に示すように摺動半割りダイス6,7に対応する位置に肉厚中空穴aよりも大径な大径パンチ8と、該大径パンチ8よりも小径で基部側に段部9aをもつ段付パンチ9が設けられている。そして、大径パンチ8と半割りダイス9と摺動半割りダイス6とにより圧造ステーションS1が形成され、段付パンチ9と半割りダイス3と摺動半割りダイス6とにより圧造ステーションS2が形成されている。
【0019】
また、回転ドラム4における各半割りダイス3の後方には、中空ブランクの保持機構10が設けられている。この保持機構10は、回転ドラム4の外周部に支持され、割りダイスの中心部に出退可能な保持ピン11と、該ピン11を割りダイス3側に常時付勢するバネ12と、保持ピン11をバネ12に抗して割りダイス3外の退出位置に移動させる電磁ソレノイド13とを備えている。そして、電磁ソレノイド13のオンにより保持ピン11を割りダイス3外の退出位置に移動させた状態で、閉鎖体5dを開いて中空ブランクP2を割りダイス3に供給する。その後、電磁ソレノイド13のオフによりバネ12により保持ピン11を中空ブランクP2の肉厚中空穴aに挿入してから回転ドラム4が間歇回転されて、次工程に順次搬送されることになる。また、割りダイス3が最下端の3段目の排出ステーションS3に移動したとき、電磁ソレノイド13のオンにより、保持ピン11は割りダイス3外の退出位置に移動され、中空パーツPを落下排出するようになされている。
【0020】
次に、以上のごとく構成されるロータリ式圧造成形機1を用いて中空パーツPを圧造成形する場合の動作について説明する。
【0021】
まず、図1に示すような肉厚中空穴aが形成され、一端に鍔bをもつ中空ブランクP1を予め圧造成形などにより形成する。そして、このブランクP1の長さ方向中間部の外周にねじcをねじ転造などにより形成して、図2に示すようなねじ付きの中空ブランクP2を形成する。この場合、最終の中空パーツPに対して肉厚であるのでそのねじ切り時に中空ブランクが変形したりすることはない。
【0022】
次に、この中空ブランクP2をロータリ式圧造成形機1のブランク供給部5から回転ドラム4の最上端に位置する割りダイス3に供給する。
その場合、電磁ソレノイド13のオンにより保持ピン11を割りダイス2外の退出位置に移動させた状態で、閉鎖体5dを開いて中空ブランクP2を割りダイス3に供給し、その後、電磁ソレノイド13のオフによりバネ12により保持ピン11を中空ブランクP2の肉厚厚中空穴aに挿入して保持ピン11で中空ブランクP2を保持する。そして、この保持状態のもとで回転ドラム4が間歇回転されて、中空ブランクP2が1段目の圧造ステーションS1に搬送されることになる。
【0023】
一方、1段目の圧造ステーションS1においては、回転ドラム4の間歇回転の開始前に、電磁ソレノイドにより摺動半割りダイス6,7は退出位置に退避されている。そして、回転ドラム4の間歇回転が停止したときに、電磁ソレノイドにより摺動半割りダイス6,7が前進移動して、半割りダイス6の割り面6aを半割りダイス3の割り面3aに密着させる。これにより、ねじ付き中空ブランクP2をめねじ3b,6bを設けた割り面3a,5aで保持する。この状態で、図7に示すように大径パンチ8を割りダイス3,6に打ち込むことにより、中空ブランクP2の肉厚中空穴aが拡大成形されて、図3に示すような中空ブランクP2の肉厚中空穴a内面に、その他端から鍔b近くまで至る大径の肉薄中空部dを形成した中空ブランクP3が形成される。なお、上記パンチ8の打ち込み時、保持ピン11は図7に示すようにバネ12を圧縮して割りダイス3の後方に逃げることになる。その後、大径パンチ8が後退すると、これに伴い保持ピン11は再び中空ブランクP3の肉厚中空穴a内に挿入される。そして、この挿入状態のもとで回転ドラム4が間歇回転されて、中空ブランクP3が2段目の圧造ステーションS2に搬送されることになる。
【0024】
2段目の圧造ステーションS2においては、回転ドラム4の間歇回転が停止したときに、電磁ソレノイドにより摺動半割りダイス3が前進移動して、半割りダイス7の割り面7aを半割りダイス3の割り面3aに密着させる。これにより、ねじ付き中空ブランクP3をめねじ3b,7bを設けた両ダイス3,7で保持する。この状態で図8に示すように段付きパンチ9を割りダイス3,7に打ち込むことにより、図4に示すような中空ブランクP3の肉薄中空部dにおける他端部内面に、該薄肉中空部dよりも小径で、肉厚中空穴aよりも大径の中肉中空部eを形成した最終製品としての中空パーツ1が形成される。なお、上記パンチ9の打ち込み時、保持ピン11は図8に示すようにバネ12を圧縮して割りダイス3の後方に逃げることになる。その後、段付きパンチ9の後退に伴い保持ピン11は再び中空ブランクP3の肉厚中空穴a内に挿入される。そして、この挿入状態のもとで回転ドラムが間歇回転されて、中空パーツPが3段目の排出ステーションS3に搬送されることになる。
【0025】
その後、上記割りダイス3が最下端の3段目の排出ステーションS3に移動したとき、電磁ソレノイド13のオンにより、保持ピン11は割りダイス3外の退出位置に移動されることにより、中空パーツPが落下排出されて製品収容部に送られる。
【0026】
以上のように、上記中空パーツPを製造するとき、まず、肉厚中空穴aが形成されたブランクP1の外周にねじcを形成し、この中空ブランクP2をめねじをもつ割りダイスで保持したうえで圧造成形することにより肉薄中空部d及び中肉中空部eを形成するようにしたから、肉薄となるねじ部分が変形したり破損することなく圧造成形機を用いて中空パーツPを圧造成形することが可能となり、生産性の向上を図ることができると共に、低コストに抑えることが可能となる。
【0027】
また、上記半割りダイス3と摺動割りダイス6,7の製造方法としては、図9に示すように、たとえば半割り割りダイス3にガイドピン14,14を設け、また他方の摺動割りダイス6にガイドピン14,14の嵌合な嵌合穴15,15を形成する。そして、図10に示すように一方側割りダイス3のガイドピン14,14を他方側割りダイス6の嵌合穴15,15に嵌合して組み合わせた状態で、所定径の穴を明け、その後、該穴の所定位置にめねじを中ぐり加工して製作するようにしている。このように半割りダイス3,6,7を組み合わせてめねじ付きの半割りダイス3,6,7を製作することにより、自動的に精度を保つことができる。
【0028】
なお、以上の実施の形態では、ロータリ式の多段圧造成形機を用いたものについて説明したけれども、複数の圧造ステーションを並設した多段圧造成形機であってもよい。また、割りダイスとしては、半割りダイスを用いる他、3個以上の割りダイスを用いてもよいことは勿論である。さらに、以上の実施の形態では、中空パーツPの外周にねじを設けたものについて説明したけれども、ねじでなく例えばウォーム溝などであってもよい。その場合、内面にウォーム溝に合致する凸溝を備えた割りダイスを用いることになる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、予め肉厚中空穴が形成され、一端に鍔をもつ中空ブランクの外周に転造加工によりねじ又は溝部分を形成し、この中空ブランクをめねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させた上で圧造成形することによりまず肉薄中空部を形成し、その後、同様に圧造成形して中肉中空部を形成するようにしたから、ねじ又は溝部分を変形させたり破損させることなく圧造成形機で中空パーツを圧造成形することができ、生産性の向上を図ることができると共に、低コストに抑えることが可能となる。その上、肉薄中空部を圧造成形した中空ブランクの肉薄中空部における他端部内面に、該肉薄中空部よりも小径で、肉厚中空穴よりもやや大径の中肉中空部を形成するようにしたから、全体として一端に鍔をもつと共に長さ方向中間部の外周にねじ又は溝をもち、かつ一端の鍔部分に肉厚中空穴を、中間のねじ又は溝部分に肉薄中空部をさらに他端部分に中肉中空部を有する中空パーツを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る製造方法で製造する中空パーツの製造過程における中空ブランクの断面図である。
【図2】 同ねじ付き中空ブランクの断面図である。
【図3】 同一段目の圧造ステーションで圧造成形された中空ブランクの断面図である。
【図4】 同2段目の圧造ステーションで圧造成形された中空パーツの一部縦断面図である。
【図5】 同本発明で適用するロータリ式圧造成形機の一部省略正面図である。
【図6】 同要部の縦断側面図である。
【図7】 同成形機の1段目の圧造ステーションの動作説明図である。
【図8】 同成形機の2段目の圧造ステーションの動作説明図である。
【図9】 割りダイスの製作方法を示す説明図である。
【図10】 同割りダイスへの成形孔及びねじの製作説明図である。
【符号の説明】
1 ロータリ式多段圧造成形機
3 半割りダイス
6,7 摺動半割りダイス
8 大径パンチ
9 段付きパンチ
P 中空パーツ
P1 中空ブランク
P2 ねじ付き中空ブランク
a 肉厚中空穴
c ねじ
d 肉薄中空部

Claims (1)

  1. 肉薄中空部の外周にねじ又は溝を形成してなる中空パーツの製造方法であって、まず、肉厚中空穴が形成され、一端に鍔をもつ中空ブランクの長さ方向中間部の外周にねじ又は溝を転造加工して、ねじ又は溝付きの中空ブランクを形成し、次に、この中空ブランクを内面に上記ねじ又は溝に合致するためのねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させ、その保持状態のもとでパンチの打ち込みにより上記中空穴内面に、その他端から鍔近くまで至る肉厚中空穴よりも大径の肉薄中空部を圧造成形し、その後、この中空ブランクを、内面に上記ねじ又は溝に合致するためのねじ又は凸溝を備えた割りダイスに保持させた保持状態のもとで、中空ブランクの肉薄中空部における他端部内面に、該肉薄中空部よりも小径で、肉厚中空穴よりもやや大径の中肉中空部を形成したことを特徴とする中空パーツの製造方法。
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