JP3796689B2 - 多自然化用組立ブロック - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部空域を石、土等の充填域として提供する多自然化用組立ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境の保全、快適な水辺空間の創造などを目的に河川護岸の整備が推し進められており、この方策にそって、従来より種々の護岸工法、いわゆる多自然護岸工法が提案、実施されている。この多自然護岸工法は、予めネットや格子状フレームなどの多孔部材上に自然石等の石材を載置固定して、多孔部材ごと護岸に据付ける敷石工法(例えば、特公平7−11121号公報、特開平10−331132号公報等)と、プレキャストコンクリート製の籠状(または枠状)ブロックや井桁状ブロックを多数連接して護岸に据付け、その内部の空所に石や土を充填するブロック工法(例えば、特開平11−293647号公報等)とに大別されるが、敷石工法の場合は、多孔部材に対する石材の固定にかなりの困難さを伴うことから、最近は、比較的施工性のよいブロック工法が多用されるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のブロック工法によれば、籠状ブロックや井桁状ブロックが1つの独立したユニットとなっているため、設置範囲を拡大するには、これらブロックをボルト等の連結手段を用いて相互に連結する必要があり、その連結に多くの工数がかかって、思うほど施工性が改善されない、という問題があった。また、連結手段には、強度に加えて耐食性が要求されるため、連結手段自体が高コストとなり、コスト面の負担が大きいという問題もあった。
【0004】
本発明は、上記ブロック工法に伴う問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、ブロック相互の面倒な連結を不要にし、もって施工性の向上とコスト低減とに寄与する多自然化用組立ブロックを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る多自然化用組立ブロックは、4つの多孔板部を十字型をなすように配列したコンクリート製十字ブロックを備え、該十字ブロックの各多孔板部の先端には、同列に並ぶ多孔板部同士で上・下の向きを逆にする段部を設けておき、前記十字ブロックの複数を、各多孔板部の先端の段部が相互に重なる状態で縦横に連接して格子状構造となし、各多孔板部で囲まれた空域を石、土等の充填域としたことを特徴とする。
このように構成した多自然化用組立ブロックにおいては、各多孔板部の先端の段部を相互に重ねて十字ブロックを連接するだけで設置範囲が拡大するので、連結手段による面倒な連結作業は不要となる。また、この組立ブロックの空域内に石、土等を充填した後は、相隣接して配置された十字ブロックの相互間で縦、横両方向の力が相殺されるので、各十字ブロックの連接状態は安定的に維持される。
【0006】
本多自然化用組立ブロックは、3つの多孔板部をT字型をなすように配列したコンクリート製T字ブロックをさらに備え、該T字ブロックの各多孔板部の先端には、相隣接する2つの多孔板部と残りの1つの多孔板部との間で上・下の向きを逆にする段部を設けておき、該T字ブロックの複数を、それぞれの多孔板部の先端の段部が相互にかつ十字ブロックの段部に対して重なる状態て連接して、端縁を画定する構成としてもよいものである。この場合、2つの多孔板部をL字型をなすように配列したコンクリート製L字ブロックをさらに備え、該L字ブロックの各多孔板部の先端には、相互に上・下の向きを逆にする段部または同じ向きの段部を設けておき、該L字ブロックを、その多孔板部の先端の段部がT字ブロックの段部に対して重なる状態で連接して、隅角を画定する構成としてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
図1乃至図3は、本発明に係る多自然化用組立ブロックの第1の実施の形態を示したものである。本第1の実施の形態において、組立ブロック1は、多数の十字ブロック2と多数のT字ブロック3とからなっている。各十字ブロック2は、図2によく示されるように、複数の開口4を有する4つの多孔板部5を十字型をなすように配列した形状となっている。この十字ブロック2の各多孔板部5の先端には、同列に並ぶ多孔板部同士で上・下の向きを逆にする段部6が設けられており、各十字ブロック2は、前記開口4および段部6を有する形態で、プレキャストコンクリートから一体成形されている。一方、各T字ブロック3は、図3によく示されるように、複数の開口7を有する3つの多孔板部8をT字型をなすように配列した形状となっている。このT字ブロック3の各多孔板部8の先端には、相隣接する2つの多孔板部8と残りの1つの多孔板部8との間で上・下の向きを逆にする段部9が設けられており、各T字ブロック3は、前記開口7および段部9を有する形態で、プレキャストコンクリートから一体成形されている。
【0008】
上記多数の十字ブロック2は、それぞれの多孔板部5の先端の段部6が相互に重なる状態で連接されており、これにより、各十字ブロック2の相互間には複数の多孔板部5で囲まれた四角形状の空域S1が多数形成される。したがって、組立ブロック1は、多数の十字ブロック2を段部6を重ねて縦横に連接することで、無限の広がりを有する格子状構造体となる。一方、上記多数のT字ブロック3は、それぞれの多孔板部8の先端の段部9が相互にかつ十字ブロック2に対して重なる状態で連接されており、これにより、各T字ブロック3と十字ブロック2との相互間にはそれぞれの多孔板部8と5とで囲まれた空域S2が多数形成される。T字ブロック3は、組立ブロック1の端縁を画定する役割をなすもので、このT字ブロック3を、適当数連接した十字ブロック2の片側に配置することで、組立ブロック1の全体的な大きさが画定されるようになる。
なお、上記空域S1、S2の大きさは任意であるが、一例として、縦、横それぞれ1〜2M程度、深さ30〜70cm程度に設定される。
【0009】
上記のように構成した組立ブロック1は、十字ブロック2の相互間に形成された空域S1および十字ブロック2とT字ブロック3との相互間に形成された空域S2に石または土を充填し、さらに所望により前記した土内に植物の種子を播種しあるいは苗を移植することで、多自然化に寄与するものとなる。しかして、この組立ブロック1は、十字ブロック2およびT字ブロック3を、それぞれの多孔板部5,8の先端の段部6、9が相互に重ねて連接するだけで拡大するので、その据付けには特別の困難性はなく、施工性に優れたものとなる。しかも、前記空域S1、S2内に石や土を充填した後は、相隣接して配置された十字ブロック2の相互間で横力が相殺されるので、各十字ブロック2は相互に位置ずれを起こすことはなく、これらの連接状態は安定的に維持される。ただし、各ブロック2、3の組立中および各空域S1、S2内への土等の充填途中段階では、横力にバランスを欠いて各ブロック2、3が位置ずれを起こす虞があるので、各段部6、9の重ね部(継目)に、例えばコ字形の押え金具を嵌合して、各ブロック2、3を相互に仮止めするようにしてもよい。
【0010】
ここで、上記組立ブロック1は、十字ブロック2同士の段部6の重ね代および十字ブロック2の段部6とT字ブロック3の段部9との重ね代を、一方向へ向けて次第に変化させることで、図4および図5に示すように、扇形の広がりを有するものとなる。この場合、各段部6、9の重ね部(継目)に間隙δが形成されることになるが、各空域S1、S2内に石や土を充填した後は、上記した横力の相殺により各十字ブロック2の相互の位置ずれが防止されるので、前記した扇形の広がりは安定的に維持される。ただし、各ブロック2、3の組立中および各空域S1、S2内への土等の充填途中段階では、横力にバランスを欠いて、各ブロック2、3が位置ずれを起こす虞があるので、前記した各間隙δに適当なスペーサを介在させて、この間隙を維持するようにしてもよい。
【0011】
また、上記組立ブロック1は、図6および図7に示すように、L字ブロック10を隅角部に配置するようにしてもよい。このL字ブロック10は、図7によく示されるように、複数の開口11を有する2つの多孔板部12をL字型をなすように配列した形状となっている。このL字ブロック10の各多孔板部12の先端には、相互に上・下の向きを逆にする段部13が設けられており、各L字ブロック10は、前記開口11および段部13を有する形態で、プレキャストコンクリートから一体成形されている。各L字ブロック10は、それぞれの多孔板部12の先端の段部13がT字ブロック3の多孔板部8の段部9に重なる状態で、該T字ブロック3に連接されており、これにより、各L字ブロック10とT字ブロック3および十字ブロック2との相互間にはそれぞれの多孔板部12、8、5とで囲まれた空域S3が形成される。L字ブロック10は、組立ブロック1の隅角を画定する役割をなすもので、このL字ブロック10の配置により、組立ブロック1は全体の輪郭が明瞭な矩形状を呈するものとなる。なお、このL字ブロック10は、T字ブロック3の配列数によっては、各多孔板部12に関して段部13の向きを同じにしたL字ブロック10´を必要とする場合もある(図8参照)。
【0012】
図8乃至図9は、本発明に係る多自然化用組立ブロックの第2の実施の形態を示したもので、本第2の実施の形態としての組立ブロック20は、その長手方向の2箇所に屈曲部21を有している。この屈曲部21は、変形十字ブロック22(22A,22B)の重ね部と変形T字ブロック23(23A,23B)の重ね部に設定されている。なお、組立ブロック20の全体構造は前記組立ブロック1(図1)と同じでありかつ前記変形十字ブロック22、変形T字ブロック23の基本構造は前記十字ブロック2(図2)、T字ブロック3(図3)と同じであるので、ここでは、図1〜3に示した部分と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
上記変形十字ブロック22は、図9によく示されるように、上記十字ブロック2の4つの多孔板部5のうちの1つの先端に、前記段部6に代えて凹部24を設けた第1ブロック22Aと同様に凸部25を設けた第2ブロック22Bとからなっている。第1ブロック22Aと第2ブロック22Bとは、相互に凹部24と凸部25とを嵌合(凹凸嵌合)させて連接され、したがって、両者は、図8に示すように任意の連接角度θ1をとり得るようになっている。一方、変形T字ブロック23は、上記T字ブロック3の3つの多孔板部8のうちの1つの先端に、前記段部9に代えて凹部を設けた第1ブロック23Aと同様に凸部を設けた第2ブロック23Bとからなっている。第1ブロック23Aと第2ブロック23Bとは、相互に凹凸嵌合させて連接され、したがって、両者は、前記変形十字ブロック22と同様に任意の連接角度θ2をとり得るようになる。
このような変形十字ブロック22および変形T字ブロック23を凹凸嵌合させながら適宜位置に配置することで、連続性を維持しながら本組立ブロック20に屈曲部21を付けることができ、したがって、本組立ブロック20は、屈曲面の多い河川護岸等に向けて有用となる。
【0014】
図10は、上記第2実施の形態である組立ブロック20を用いる多自然護岸工法を示したものである。同図において、Aは、川床30の一部と法面31の下側部分31aとを含む低水域、Bは、法面31の上側部分31bと天端32とを含む高水域である。本多自然護岸工法においては、川床30と法面31との境界部および法面31と天端32との境界部に上記変形十字ブロック22および変形T字ブロック23を配置して、上記屈曲部21(図8)を形成しながら組立ブロック20を護岸に据付ける。なお、この組立ブロック20の据付けに際しては、低水域Aおよび高水域Bの据付面に予め吸出防止材(シート)を敷設するようにしてもよい。
【0015】
そして、上記組立ブロック20の据付けが終了したら、低水域Aに据付けた組立ブロック20の空域S1〜S3(図8)内に割石、栗石等の石33を、高水域に据付けた組立ブロック20の空域S1〜S3内に客土34をそれぞれ充填する。また、必要により、低水域Aに据付けた組立ブロック20の上面をネット(亀甲ネット)35で覆い、さらに、所望により前記客土34内に植物の種子を播種しあるいは苗を移植する。
このようにして造成された多自然型護岸は、水中部分においては川床30を安定させると共に魚類を生息環境を提供し、陸上部分においては動植物の生息環境を提供し、自然環境の保全、快適な水辺空間の創造に大きく寄与するものとなる。
【0016】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る多自然化用組立ブロックによれば、十字型を基本とするブロックの複数を相互に段部を重ねながら縦横に連接するだけで据付けが完了するので、従来のようにブロック同士を連結手段により連結する面倒な作業が不要となり、施工性の大幅な向上はもとより、施工コストの大幅な低減に大きく寄与し、その利用価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多自然化用組立ブロックの第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本組立ブロックを構成する十字ブロックの構造を示す斜視図である。
【図3】本組立ブロックを構成するT字ブロックの構造を示す斜視図である。
【図4】本組立ブロックを扇形状に構築する場合の組立状態を示す斜視図である。
【図5】本組立ブロックを扇形状に構築する場合の組立状態を示す平面図である。
【図6】隅角を画定した本組立ブロックの構造を示す部分斜視図である。
【図7】本組立ブロックを構成するL字ブロックの構造を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る多自然化用組立ブロックの第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図9】第2の実施の形態で用いる変形十字ブロックの構造を示す斜視図である。
【図10】本組立ブロックを用いて造成した多自然型護岸を示す断面図である。
【符号の説明】
1、20 組立ブロック
2 十字ブロック
3 T字ブロック
5 十字ブロックの多孔板部
6 十字ブロックの段部
8 T字ブロックの多孔板部
9 T字ブロックの段部
10、10´ L字ブロック
12 L字ブロックの多孔板部
13 L字ブロックの段部
22 変形十字ブロック
23 変形T字ブロック
33 石、 34 土
A 低水域、 B 高水域

Claims (3)

  1. 4つの多孔板部を十字型をなすように配列したコンクリート製十字ブロックを備え、該十字ブロックの各多孔板部の先端には、同列に並ぶ多孔板部同士で上・下の向きを逆にする段部を設けておき、前記十字ブロックの複数を、各多孔板部の先端の段部が相互に重なる状態で縦横に連接して格子状構造となし、各多孔板部で囲まれた空域を石、土等の充填域としたことを特徴とする多自然化用組立ブロック。
  2. 3つの多孔板部をT字型をなすように配列したコンクリート製T字ブロックをさらに備え、該T字ブロックの各多孔板部の先端には、相隣接する2つの多孔板部と残りの1つの多孔板部との間で上・下の向きを逆にする段部を設けておき、該T字ブロックの複数を、それぞれの多孔板部の先端の段部が相互にかつ十字ブロックの段部に対して重なる状態で連接して、端縁を画定したことを特徴とする請求項1に記載の多自然化用組立ブロック。
  3. 2つの多孔板部をL字型をなすように配列したコンクリート製L字ブロックをさらに備え、該L字ブロックの各多孔板部の先端には、相互に上・下の向きを逆にする段部または同じ向きの段部を設けておき、該L字ブロックを、その多孔板部の先端の段部がT字ブロックの段部に対して重なる状態で連接して、隅角を画定したことを特徴とする請求項2に記載の多自然化用組立ブロック。
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