JP3796579B2 - 耐候性鋼材用塗料組成物とその塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性鋼材の防食表面処理塗装に使用される塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
防錆性に優れる鋼材として、リン、銅、クロム、ニッケル等を少量含む耐候性鋼材と称せられる低合金鋼が公知である。かかる耐候性鋼材を屋外に暴露して、その表面に緻密で強固な連続サビが形成されると、このサビが更なる腐食の進行を抑制して永続的な防食性を発揮する。この特徴あるサビは、一般的に安定サビと称せられている。
【0003】
しかし、安定サビに移行するには数年の長年月を必要とし、その間、特に暴露初期に発生する赤サビや黄サビなどの不安定サビの垂れは、鋼表面の外観を損ねるばかりか、周囲の構造物を汚染する。また、サビ汁が落ちて通行人の衣服を汚したり、サビが飛散して洗濯物等を汚すことも皆無とは言えない。さらに、塩分が飛散するような腐食環境下においては、不安定サビから安定サビへの移行がなされず、安定サビが形成されない。
【0004】
これを防ぐ手段として、例えば特開平6−226198号公報や特開2001−040280公報では、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、硫酸銅、酸化銅等を含む処理剤を耐候性鋼材に塗布している。これらを塗布することにより、不安定サビの垂れや飛散を防ぐことができる。また、安定サビの生成促進を図ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記に記載の処理剤に含まれるクロム、銅、リン等は有害物質であり、これらを処理剤に含ませると、土壌汚染や水質汚濁などの環境破壊問題を招くおそれがある。また、上記処理剤では、多量の有機溶剤を含ませており、これが気化することによる大気汚染も問題である。
【0006】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、地球環境を汚染するおそれがなく、また、耐候性鋼材の暴露初期に発生する不安定サビの垂れや飛散を抑制し得ると共に、安定サビの生成促進を図ることができる耐候性鋼材用の塗料組成物を得るにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
通常の無機塗料に求められる要件は、強固な塗膜を形成して、サビの発生を抑えることにある。これに対して、耐候性鋼材の防食表面処理塗装に使用される塗料には、▲1▼強固な塗膜を形成して、サビ垂れやサビ飛散を抑え得ること、▲2▼雨水や水蒸気ガスが通過できるほどに微細なクラックを有して、サビの形成に好適な条件を与え得ること、▲3▼耐候性鋼材の表面をアルカリ性に保って、急速なサビの生成を抑え得ることなどが求められる。これら▲1▼、▲2▼、▲3▼は相反する要件である。すなわち、全くクラックのない強固な塗膜であると、▲1▼の要件は満たされるが、安定サビが形成されず、耐候性鋼材の本来の目的である永続的な防錆効果が発揮されない。また、防錆性が強すぎると安定サビが生成されず、逆に防錆性が弱いと、急速な腐食反応により赤サビ等の不安定サビのみが生成することとなる。さらに上記▲1▼〜▲3▼の要件に加えて、環境保全の観点からすると、一切の有害物質を含まないものであることが望まれる。
【0008】
そこで、本発明者らは、可溶性珪酸リチウムをバインダー成分とする水性無機塗料組成物にマイカを含ませてなる塗料が、耐候性鋼材の防食表面処理塗装用の塗料として好適であることを見出して、本発明をするに至った。
【0009】
すなわち本発明は、可溶性珪酸リチウムとマイカとを、バインダー成分として含有することを特徴とする耐候性鋼材用塗料組成物である。本発明に係る塗料組成物を耐候性鋼材に塗布すると、その水溶液中に存在するポリ珪酸アルカリミセルがFe面に化学吸着し、また(−)に帯電したシリケートミセルが(+)に帯電したFe錆コロイドを中和しながFe面に吸着するので、強固な保護被膜を形成して、サビ垂れやサビ飛散などを抑制できる。
【0010】
可溶性珪酸リチウムには自硬性があるため、それのみをバインダー成分とした場合には、塗膜に大きなクラックが発生して、基材である耐候性鋼材から剥離し易い。その点本発明のごとくバインダー成分にマイカを添加してあると、この欠点をカバーできる。つまり、基材からの剥離を招くような大きなクラックの発生を防止して、雨水等が通過できるほどに微細なクラックを形成できる。これは、マイカが、扁平粒子で塗膜面に平行に累積し、塗膜の膜方向の収縮、膨張を拘束する働きがあることに拠る。繰り返すと、上述のごとく、珪酸リチウムを用いた塗料では、完全にクラックのない塗膜を形成することは本発明の範囲(モル比3〜8の可溶性珪酸カリウム)では難しい。一方、元来、塗料ではその塗膜に如何なるクラックをも生成させないことが常識とされている。ここに、本発明の耐候性鋼用塗料組成物と従来に係る塗料との大きな差異がある。すなわち、本発明の耐候性鋼用塗料組成物では、塗膜剥離につながることのない、しかも目視では観察し得ない微細なクラックを塗膜に形成させることに特徴がある。かくして、本発明に係る塗料組成物は、上述の▲1▼及び▲2▼の要件を満たすものとなる。
【0011】
可溶性珪酸リチウムをバインダー成分としてあると、塗膜の表面が親水性となるために、雨水や水蒸気ガスが接触し易く、この点においてもの要件を満たし得る。つまり、鋼表面をサビの形成に好適な条件にできる。
【0012】
しかし、あまりに急速に腐食反応が起こると、赤サビ等の不安定サビが生成されるといった不具合が生じる。つまり、永続的な防錆性を発揮する安定サビを生成させるには、適度な湿潤下で、いわばサビを熟成させる必要がある。この点、本発明に係る耐候性鋼材用塗料では、可溶性珪酸リチウムが耐候性鋼材の表面をアルカリ性に保つので、急速な腐食反応による不安定サビの生成を防ぐことができる。また、鋼の表面がアルカリ性に保たれていると、グリーンラスト(緑錆)が生成しやすく、このグリーンラストが緻密な層で防食性のあるマグネタイト、すなわち安定サビに移行し易い点でも有利である。以上より、本発明に係る塗料組成物は、上記▲1▼〜▲3▼の全ての要件を満たすものとなる。
【0013】
また、本発明に係る塗料組成物は、リン、クロム等のごとく土壌汚染の原因となる物質を一切含まず、環境破壊問題の解決に大いに寄与し得る。水を溶媒としているので、トルエン、キシレンなどの有機溶剤を含まず、大気汚染を引き起こすおそれがない点でも有利である。
【0014】
本発明で用いられる可溶性珪酸リチウムは、SiO2 /Li2 Oのモル比(n)が3.0〜8.0であることが好ましい。これは、可溶性珪酸リチウムにおいて、nが3未満或いは8を超えると、液の安定性に欠き、結晶が析出する等の不具合が生じることに拠る。
【0015】
具体的には、前記マイカは、平均粒子径で3μm以上、150μm以下の範囲内にあることが好ましい。3μm未満の粒子径では、塗膜の安定性から、添加量を多くする必要があり、その表面積の増加は塗料としての流動物性に不具合を生じさせる(顕著なチキソトロピー性)。さらに緻密で強固な塗膜が得られず、爪で擦ると容易にキズが付くほどに脆くなる点でも不利がある。粒子径が150μmを超えると、その添加量が少なくても所望の性能は得られるが、流動特性としてダイラタンシー挙動を示し、塗装作業性が悪くなる。
【0016】
可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対し、マイカは20重量部以上、250重量部以下含有させることが好ましい。20重量部未満では造膜性が悪く、塗膜表面に目視で確認できるようなクラックが入り、さらには硬化が進むにつれ、鋼材から塗膜が剥離し易くなる。250重量部を超えると、塗膜中の可溶性珪酸リチウム被膜マトリクッス中にマイカが切れ目なく入り込み、可溶性珪酸リチウムの架橋を妨げるため、その塗膜は、爪で擦った程度で容易にキズが付くほどに脆くなる。水に浸漬するだけで塗膜が溶解するほどに、塗膜の耐久性が低下してしまう点でも不利がある。
【0017】
本発明に係る塗料組成物には、塗装作業性の改善のために、別種無機充填剤等を添加することができる。さらに着色塗料にするために、無機顔料やマイカ系パール顔料等の各種着色剤を添加することができる。これら着色剤および/又は充填剤の添加量は、可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対して、マイカを含めて250重量部以下で、それ自体では、80重量部以下(0重量部を含む)にすることが好ましい。80重量部を超えると、塗料に構造性が発現して流動性が悪くなる。また、着色の目的で加える場合には、一般論としてこれ以上添加する必要性もない。マイカ系パール顔料が、本発明のマイカと同様の作用効果を生じさせることは言うまでもないが、この材料は高価なため、塗料の着色剤として、少量のみ用いることが、製造コストの観点からして得策である。
【0018】
本発明者らの知見によれば、さびの発生時期が遅いほど、より確実な安定さびが生成されやすい。これは、下記の実施形態2に示すように、2コート、2常温硬化、又は耐候性鋼材に対して予めリン酸塩処理被膜を施した上に、本発明の耐候性鋼材用塗料組成物を1コート、1常温硬化や2コート、2常温硬化させることで実現できる。つまり、請求項4記載の本発明のごとく、耐候性鋼材にリン酸亜鉛皮膜処理を施す工程と、この耐候性鋼材上に、耐候性鋼材用塗料組成物を塗布し、これを常温で乾燥硬化させて、複数層の塗膜を耐候性鋼材上に形成する工程とを含む塗装方法を採ることが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下の実験1〜4により、本発発明に係る可溶性珪酸リチウムの耐候性鋼材用塗料組成物の特性、および各種数値の臨界的意義を明らかにする。
【0020】
(実験1:マイカの平均粒子径)
モル比3.5の可溶性珪酸リチウム(商標名:リチウムシリケート35,日本化学工業(株)製)120g(固形分28.8重量部)に、酸化チタン白色顔料(商標名:TITANIX JR−600A,テイカ(株)製)5.76g(可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対して20重量部、以下同様に可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対する重量比率で示す)と、分散媒体として2mmφのチタニアビーズ100gを加え、この混合物を50mlのポリ製容器に入れて、ペイントシェーカーで1時間分散した。これに、表1のNo.1〜9の各種平均粒子径を有するマイカ17.3g(60重量部)を加えて、さらにペイントシェーカーで5分間程度分散した。かくしてNo.1〜9にかかる試験用塗料を得た。なお、マイカ添加後のペイントシェーカーの作動時間を5分間程度としたのは、長時間ペイントシェーカーにかけると、マイカ粒子が粉砕されて、粒径が変わってしまうことに拠る。なお、No.1の塗料では、マイカを一切加えなかった。
【0021】
耐候性鋼材(70×150×7mm)の片面にブラスト処理により清掃処理を施して、上述の各試験用塗料を乾燥膜厚が30〜35μmになるようにスプレー塗装し、屋外に3ヶ月間暴露して試験に供した。なお、暴露期間中、降雨日が16日間あった。
【0022】
これらNo.1〜9に係る塗料、およびそれらが塗布された試験片に対して、微小クラックの有無、塗料の流動性、塗装性、サビの状態について評価した。その評価結果を表1に示す。なお、評価は以下のごとくとした。
【0023】
(微小クラックの有無)
屋外暴露5日後に塗膜表面にインクを垂らし、1時間後、濡れ布でインキを拭き取る。微細なクラックが存在するとインキが塗膜に染み込み残存するので、この個所をルーペ(×10倍)で観察して、亀甲状や点状のクラックの有無を調べた。
【0024】
(塗料流動性)
塗料の流動性を目視にて観察した。また、塗料が過剰にパサパサするか否か(チクソトロッピク性)、あるいは力が加わると一層流動性が乏しくなるか否か(ダイラタンシー性)について観察した。
【0025】
(塗装性)
刷毛塗り性:通常の塗装用刷毛で上記耐候性鋼材に塗布したときの塗布のしやすさと、塗布面の仕上がり(塗布ムラ)を観察した。当然、過剰なチクソトロッピク性を示す塗料や強いダイラタンシー性を示す塗料は、塗布し難く、しかも塗りムラが出やすい。
スプレー性塗装性:エアースプレーガンの口径2mmφでスプレー圧1〜4kg/cまで順次変化させて、上記耐候性鋼材に塗装したときの塗装性と塗装表面を観察した。当然、過剰なチクソトロッピク性を示す塗料や強いダイラタンシー性を示す塗料は、ガンノズルから吐出し難く、吐出量を多くして塗装しても、塗膜表面に著しいムラができることは避けられない。
【0026】
(サビの状態)
サビ垂れ:各塗装板を屋外にほぼ水平に対して30度の角度で暴露した。屋外暴露時において、降雨時にサビ垂れが発生するか否かを観察した。サビ垂れが発生すると塗膜表面にサビ汁が見られる。
サビの固着性:屋外暴露後、鋼表面に発生したサビをウエスで強く擦り、このウエスにサビが付着するか否かを観察した。この試験は、発生したサビが鋼材にどの程度強固に固着しているか、換言すれば、サビが強風などで飛散するかどうか評価するものである。
【0027】
【表1】
【0028】
No.3〜8の塗料より、マイカは平均粒子径で3〜150μmの範囲、より好ましくは5〜100μmの範囲にあるものが耐候性鋼材用塗料として良好であることがわかる。No.2より、マイカの平均粒子径が3μm未満となると、チキソトロピー性が強く発現し、塗料はパサパサ状態となって、塗装性に難が生じることがわかる。No.9より、マイカの平均粒子径が150μmを超えると、ダイラタンシー性が強くなり、塗装性に難が生じることがわかる。また、このNo.9の塗料では、スプレーノズルに粒子が詰まる事態も起こった。No.1より、マイカを一切添加しない場合には、塗膜が試験片から剥離してしまい、耐候性鋼材用の塗料組成物として用をなさないことが確認された。
【0029】
(実験2:マイカの添加量について)
モル比4.5の可溶性珪酸リチウム(商標名:リチウムシリケート45,日本化学工業(株)製)120g(固形分28.8重量部)に、分散媒体として2mmφのチタニアビーズ100gを加え、これらの混合物を50mlのポリ製容器に入れてペイントシェーカーで1時間分散した。次に、この混合物にマイカ(商標名:クラライト・マイカ300W、(株クラレ製)を、表2の各添加量(可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対するマイカの重量部)で加えた。そして、これらをペイントシェーカーで5分間分散させて、No.10〜17に係る試験用塗料を得た。試験材は、実験1と同様に処理した耐候性鋼材を使用した。
【0030】
次に、各試験用塗料を乾燥膜厚が30〜35μmになるようにスプレー塗装し、屋外に3ヶ月間暴露して試験に供した。なお、暴露期間中、降雨日が16日間あった。なお、各試験方法、総合評価については、上記実験1と同じであるが、本実験2では、さらに塗膜の安定性について評価した。具体的には、塗装後、屋外に1ヶ月暴露した各試験板の塗膜を目視で剥離の有無を観察し、さらにその表面を爪で擦ったとき塗膜の傷付きの有無を見た。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2より、マイカの添加量は、可溶性珪酸リチウムの固形分100重量部に対して20重量部以上、250重量部以下、特に30重量部以上、240重量部以下の範囲にあることが好ましいことがわかる。No.10より、マイカの添加量が20重量部未満では塗膜安定性に欠き、基材から剥離することがわかる。また、塗膜には、大きい亀甲状のクラックが生じていて、これは、雨水や水蒸気ガスが通過できるほどの微細なクラックとは言えない点でも不利がある。No.17より、マイカの添加量が250重量部を超えると、その塗膜は、爪を擦っただけで傷付くほどに脆くなることがわかる。これは、可溶性珪酸リチウムの固形分に対するマイカの含有分の占める割合が過剰となると、珪酸リチウムの繋がりが阻害されることに拠る。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態をより詳しく説明する。なお本発明は、これらの実施形態により限定されるものではない。
【0034】
(実施形態1)
モル比7.5の可溶性珪酸リチウム(商標名:リチウムシリケート75,日本化学工業(株)製)120g(固形分27.6重量部)に、non−Cr系黒顔料(商標名:ブラック#3078,アサヒ化成工業(株)製)9g(32.6重量部)、酸化鉄系茶色顔料(商標名:トダカラー100ED,戸田工業(株)製)1g(3.6重量部)、分散媒体として2mmφのチタニアビーズ100gを50mlのポリ製容器に入れて、ペイントシェーカーで1時間分散した。次に、平均粒子径18μmのマイカ(商標名:クラライト・マイカ400W、(株)クラレ製)25g(90.6重量部)を加えて、さらに10分間ペイントシェーカーで分散させて耐候性鋼材用塗料を作成した。
【0035】
耐候性鋼材をコンクリートに垂直に埋めて固定した形鋼(高さ1000mm、厚さ38mm)を2本用意し、両者を屋外に置き、清掃表面にするためにブラスト処理を行った。その後、直ちに一方の形鋼に対して上記塗料を乾燥膜厚でおよそ50μmとなるようにスプレー塗装した。もう一方の形鋼は無処理(ブラスト処理のみ)のままにした。屋外暴露3ヶ月経過後に、両者の比較を行った結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3に示すように、両形材には顕著な差異が見受けられる。すなわち、無処理の形材では、不安定サビの生成が見受けられ、コンクリートへのサビ垂れも見られ、サビの固着も不十分である。これに対して塗料を塗装した形材では、均一な黒みを帯びた茶褐色のサビが生成しており、サビ垂れなどの不具合もなく、サビの固着性も良好である。以上より、本発明に係る耐候性鋼材用塗料組成物が、耐候性鋼材表面のサビ垂れ抑制効果およびサビ飛散抑制効果に優れた特性を備えていることが判る。また、安定サビの形成促進効果も備えていることが、生成したサビ色からも推察できる。
【0038】
(実施形態2)
モル比3.5の可溶性珪酸リチウム(商標名:リチウムシリケート35,日本化学工業(株)製)120g(固形分27.6重量部)に、酸化鉄系黒顔料(商標名:トダカラーKN−320、戸田工業(株)製)9g(32.6重量部)、酸化鉄系茶色顔料(商標名:トダカラー100ED,戸田工業(株)製)1g(3.6重量部)、分散媒体として2mmφのチタニアビーズ100gを500mlのポリ製容器に入れて、ペイントシェーカーで1時間分散した。次に、平均粒子径30μmのマイカ(商標名:クラライト・マイカ300W、(株)クラレ製)20g(69.4重量部)を加えて、さらに、10分間ペイントシェーカーで分散させて耐候性鋼材用塗料を作成した。
【0039】
耐候性鋼材(70×150×10mm)を2枚用意し、1枚を通常の方法でリン酸亜鉛被膜処理を2μm施し(A)、もう1枚は、酸洗、水洗乾燥した(B)。次に、これら(A)・(B)に対して、直ちに上記塗料を乾燥膜厚でおよそ30μmになるようにスプレー塗装して室温で1時間乾燥硬化後、さらに同塗料を同様におよそ20μmスプレー塗装(2コート、2常温硬化)した。合計膜厚はおよそ50μmとなった。この両塗装板を水平角30度の角度で屋外暴露した。3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の追跡調査の結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4から明らかなように、サビ発生時期を遅らせるには、耐候性鋼材を予めリン酸塩被膜処理を施すことが極めて有効な手段であり、また、2コート、2常温硬化によっても多少、効果が認められた。いずれにしても、本発明に係る耐候性鋼材用塗料は、本発明の核心であるサビ垂れ、サビ固着性に関しても優れた成果を発揮していることが判った。
【0042】
(実施形態3)
本実施形態3においては、マイカ系パール顔料を用いた点が、上述の実施形態2と相違する。すなわち、モル比4.5の可溶性珪酸リチウム(商標名:リチウムシリケート45,日本化学工業(株)製)120g(固形分27.6重量部)に、粒子径10〜60μmのマイカ系パール顔料(商標名:Iriodin100,メルク・ジャパン(株)製)8.6g(30重量部)、分散媒体として2mmφのチタニアビーズ100gを500mlのポリ製容器に入れてペイントシェーカーで20時間分散し、耐候性鋼材用塗料を作成した。
【0043】
この耐候性鋼材をコンクリートに垂直に埋めて固定した形鋼(高さ1000mm、厚さ38mm)を屋外に置き、清掃表面にするためにブラスト処理を行った。その後、直ちに形鋼に対して上記塗料を乾燥膜厚でおよそ30μmとなるようにスプレー塗装した。屋外暴露6ヶ月経過後、表面を観察した。
【0044】
その結果、マイカ系パール顔料を含有させた場合においても、コンクリートを汚染するようなサビ垂れはなく、生成したサビを白い布で擦っても殆どサビが付かず、サビの固着性も良好であることが確認された。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る耐候性鋼材用塗料組成物では、有害物質であるリン系、クロム系等の化合物に替えて、無公害で水性である可溶性珪酸リチウム、マイカを構成要素としている。従って、本発明に係る塗料組成物は、環境汚染問題の解決に大いに寄与し得るものとなる。
【0046】
また、本発明に係る耐候性鋼材用塗料組成物によれば、ポリ珪酸リチウムミセルがFe面に化学吸着し、また(−)に帯電したシリケートミセルが(+)に帯電したFe錆コロイドを中和しながFe面に吸着するので、強固な保護被膜を形成して、サビ垂れやサビ飛散を抑制する効果を発揮する。
【0047】
その上で、この耐候性鋼材用塗料が硬化してなる塗膜は、雨水や水蒸気ガスが通過できる程の微細なクラックや孔を有している。また、珪酸リチウムにより、鋼表面をアルカリ性に保つことができる。従って、鋼表面に安定サビの生成に適した条件を付与して、安定サビの生成促進を図ることができる。
Claims (2)
- バインダーと着色剤および/又は無機充填剤とからなり、
可溶性珪酸リチウムとマイカとをバインダー成分とし、
前記可溶性珪酸リチウムは、SiO 2 /Li 2 Oのモル比(n)が 3. 0〜 8. 0であり、
前記マイカが、平均粒子径で3〜150μmの範囲内にあり、
可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対し、マイカが20〜250重量部であり、
可溶性珪酸リチウム固形分100重量部に対し、無機顔料もしくはマイカ系パール顔料である着色剤および/又は無機充填剤が0〜80重量部であることを特徴とするリン酸亜鉛皮膜処理を施した耐候性鋼材用塗料組成物。 - 耐候性鋼材の表面にリン酸亜鉛皮膜処理を施す工程と、
この耐候性鋼材上に、請求項1記載の耐候性鋼材用塗料組成物を塗布し、これを常温で乾燥硬化させて、複数層の塗膜を耐候性鋼材上に形成する工程とを含む耐候性鋼材用塗料組成物の塗装方法。
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