JP3795933B2 - マグネシア−クロム質焼成れんが - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐食性、耐スラグ浸透性に優れたマグネシア−クロム質焼成れんがに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシア質原料とクロム鉄鉱を主骨材とするマグネシア−クロム質焼成れんがは、耐食性、耐熱スポーリング性に優れており、例えば、溶鋼真空脱ガス炉の内張り材として使用されている。
一般にマグネシア−クロム質焼成れんがにおいては、焼結マグネシアが使用されておりその材質改善は、従来から盛んに行われている。一例として電融マグネシアの使用がある。例えば、特開昭59−190257号公報では電融マグネシアを焼結マグネシア、クロム鉄鉱と組み合わせ、さらには電融マグネシア・クロム、酸化クロムを添加使用した例が見られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、高級鋼の需要が増大するにしたがって二次精錬処理比率が増大といった過酷な操業条件に耐え、耐火物原単位の低減化要求にこたえるには、上記従来のマグネシア−クロム質焼成れんがでは十分な成果が得られていない。
そこで、電融マグネシアの使用による材質の改善が試みられてきたが、根本的な解決策には至っていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粒子内に5〜50μmの幅の結晶粒界(単結晶と単結晶の間)を有する電融マグネシア(以下、電融マグネシアAと称する。)を5〜80wt%とクロム鉄鉱を10〜70wt%とを含有し、残部がマグネシア質原料を主体とする配合物を焼結してなるマグネシア−クロム質焼成れんがである。
【0005】
【作用】
電融マグネシアを用いて耐食性、耐スラグ浸透性を向上させることは公知技術である。しかし、従来用いられている電融マグネシアは結晶粒界の幅が5μm未満のものが主体である。
結晶粒界の幅が5μm未満では、結晶粒界における液相量が少ない。この結晶粒界の液相を通ってクロム鉄鉱中のR2O3(Al2O3、Fe2O3、Cr2O3を示す一般式)成分が電融マグネシア中に拡散する。結晶粒界が狭く、液相量が少ない従来の電融マグネシアでは、クロム鉄鉱中のR2O3成分の電融マグネシア中への拡散が不十分で二次スピネルの生成が少なくなり十分な耐食性、耐スラグ浸透性が得られない。
【0006】
一方、結晶粒界の幅が50μmより大きいと、結晶粒界における液相量が過剰となり耐食性、耐スラグ浸透性低下の原因となる。
これに対し、本発明では電融マグネシアAを5〜80wt%使用している。この電融マグネシアAは従来の電融マグネシアに比べ、結晶粒界の幅が広く液相の量が多い。このため、クロム鉄鉱中のR2O3成分の電融マグネシア中への拡散が盛んとなるため二次スピネルの生成が多くなり、耐食性、耐スラグ浸透性が向上する。
【0007】
この電融マグネシアAの配合割合を5〜80wt%とするのは次の理由によるものである。
電融マグネシアAの配合割合が5wt%未満では電融マグネシアAの上記の特性が十分発揮されず、二次スピネルの生成が少ないため耐食性、耐スラグ浸透性に劣り、80wt%を超えると、必然的にクロム鉄鉱の割合が少なくなるため、二次スピネルの生成が少なくなり耐食性、耐スラグ浸透性に劣るからである。
また、マグネシア質原料とクロム鉄鉱の適正な配合割合による耐食性について考慮すると電融マグネシアAの配合割合は20〜70wt%がさらに好ましい。つまり、マグネシア−クロム質焼成れんがにおいては、マグネシア質原料とクロム鉄鉱中の成分の反応による二次スピネルの生成度合が耐食性に大きな影響を与えるからである。
【0008】
電融マグネシアAについては以上の通りである。次に、本発明のマグネシア−クロム質焼成れんがの残部に使用されるマグネシア質原料およびクロム鉄鉱は、従来の材質の耐火物と同様のものが使用できる。
マグネシア質原料の具体例は、焼結マグネシアまたは本発明で使用している電融のマグネシアA以外の電融のマグネシア、電融マグネシア−クロム、焼結マグネシア−クロムクリンカーなどである。
クロム鉄鉱は、例えば、トルコクロム鉄鉱、マシンロッククロム鉄鉱、日本クロム鉄鉱、トランスバールクロム鉄鉱などが使用できる。クロム鉄鉱の構成成分はマグネシア質原料のMgO成分と反応してスピネル組織を生成し、骨材間を強固に結合させる作用をもつ。クロム鉄鉱が配合組成全体に占める割合は、特に限定するものではないが、クロム鉄鉱がもつ組織結合機能、マグネシア質原料の割合が少なくなることによる耐食性低下の点を考慮すれば10〜70wt%、好ましくは20〜60wt%とする。
【0009】
以上の配合物に、本発明の効果を損なわない範囲において、例えばCr、Fe、Al、Si、Mg、Ni、Al−Si、Al−Mg、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Ni、Ni−Crなどの金属粉、酸化クロム、ピクロクロマイト、ジルコン、ジルコニア、炭素、炭化物、窒化物、ほう化物、その他を適量添加してもよいことは、従来のマグネシア−クロム質焼成れんがの製造と同様である。
成形は通常のレンガ製造法と変わりない。有機質、無機質あるいは有機−無機複合質の結合剤を添加し、混練後、フリクションプレス、オイルプレスなどによって加圧成形する。
焼成温度は、例えば1600〜1900℃とする。未焼成部分が残らないように十分な保定時間をとることが好ましい。
【0010】
【実施例】
以下、本発明実施例とその比較例を示す。表1は、本発明実施例、比較例およびその試験結果である。
【0011】
【表1】
【0012】
各例は、表1に示す配合組成に結合剤としてフェノール樹脂を外掛けで5wt%添加し、混練後、フリクションプレスにて並型形状に加圧成形した。焼成は、トンネルキルンにて1800℃×3時間で行ない供試れんがとした。
こうして得られた供試れんがを使用し、表1に示す物性、特性を評価した。
試験項目、測定方法は以下の通りである。
【0013】
かさ比重、見掛気孔率;JIS R2205−74に準じて行った。
耐食性;回転侵食法によって行なった。重量比でスラグ(CaO/SiO2=3):鋼を6:4とした侵食剤を投入し、ドラムを回転させながら1700℃×30分間バーナーで加熱後、侵食剤を排出し、20分間空冷させる。これを10回繰り返した後、溶損寸法を測定した。溶損寸法は7ケ所測定してその平均値とした。
耐スラグ浸透性;回転浸食法によって前記の耐食性を測定した供試レンガについて稼働面から10mmの部分を採取し、化学分析を行い、スラグ成分量をwt%で表わした。これにより、CaO、SiO2の浸透程度の比較を行った。
【0014】
表1に示す比較例1はマグネシア質原料として焼結マグネシアのみを使用したものであり、実施例1〜8に比べて、耐食性、耐スラグ浸透性ともにかなり劣っている。
比較例3、4は電融マグネシアAを全く使用せず、従来の電融マグネシアのみを使用したものであり、RH式真空脱ガス炉に使用されているものである。これに対し、電融マグネシアAを本発明の範囲内で使用した実施例1〜8は、比較例3、4に比べていずれも耐食性、耐スラグ浸透性ともにすぐれた結果を示している。また、実施例1と2および実施例3と4との比較により、電融マグネシアAの好ましい配合割合は20〜70wt%と推定される。
なお、実施例5は電融マグネシアAと従来の電融マグネシアを併用したものであるが、電融マグネシアAを同量つまり20wt%使用した実施例2と見劣りしない結果が出ているのがわかる。
【0015】
比較例2、5は電融マグネシアAを使用したものであるが、使用量が本発明の範囲より少ない例と多い例である。
比較例2は電融マグネシアAの使用量が少ないため、比較例1と大差無く、耐食性、耐スラグ浸透性はほとんど向上していない。
逆に、比較例5は電融マグネシアAの使用量が多いため、クロム鉄鉱の割合が少なくなっており、耐食性、耐スラグ浸透性に劣っている。これは不適正な配合割合により二次スピネルの生成が少なくなったためである。
【0016】
実機試験;前記実施例の項で示したのとほぼ同様の方法で実機形状に製造したマグネシア−クロム質焼成れんがのうち、実施例1、実施例3、比較例1および比較例4について実際に、RH式真空脱ガス炉の下部槽の内張りに築造し、稼働した。
比較例1、比較例4の溶損速度1.85、1.40に対し、実施例1、実施例3は0.92、0.74と小さく良好な結果を示した。また、稼働面から10mmのスラグ成分の侵入量は、比較例1、比較例4に比べ、実施例1、実施例3は約半分の値であり、良好な耐スラグ浸透性を示した。その結果、表には記載していないが、2倍程度の耐用性が得られた。
【0017】
実機試験における築造部位は、RH式真空脱ガス炉の中でも溶鋼の環流による損傷が著しい部位である。この試験結果からも明らかなように、本発明により得られたマグネシア−クロム質焼成れんがは、実機においても十分な効果を発揮した。
実機試験の例としてRH式真空脱ガス炉の下部槽で行われた場合を記載したが、DH式真空脱ガス炉、CAS装置などにおいても同様な効果が得られた。
【0018】
【発明の効果】
本発明により製造されるマグネシア−クロム質焼成れんがは、電融マグネシアAを特定量使用しており、従来のマグネシア−クロム質焼成れんがに比べ、耐食性に優れている。また、耐スラグ浸透性にも優れ、マグネシア−クロム質焼成れんがの損傷の大きい要因となっているスラグ浸透による変質層の生成を抑制し、構造的スポーリングを解決できる。その結果、従来品に比し2倍程度の耐用性が得られ、その経済的効果が大きい。
Claims (1)
- 粒子内に5〜50μmの幅の結晶粒界を有する電融マグネシアを5〜80wt%とクロム鉄鉱を10〜70wt%とを含有し、残部がマグネシア質原料を主体とする配合物を焼結してなるマグネシア−クロム質焼成れんが。
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JP18404894A JP3795933B2 (ja) | 1994-07-12 | 1994-07-12 | マグネシア−クロム質焼成れんが |
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JPH08208316A JPH08208316A (ja) | 1996-08-13 |
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1994
- 1994-07-12 JP JP18404894A patent/JP3795933B2/ja not_active Expired - Fee Related
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