JP4373509B2 - 塩基性耐火物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種金属精錬用窯炉や焼成窯炉、とくに、鉄鋼製造プロセスにおける二次精錬用窯炉の内張りに好適に用いられる塩基性耐火物に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼製造プロセスにおいては、鋼製品の高級化や品質の厳格化に伴って、AODやRH、取鍋精錬等の二次精錬工程の重要性はますます大きくなってきている。 この二次精錬に用いる窯炉の内張り耐火物としては、マグネシア−クロム質れんが(マグクロれんが)が使用される場合が多い。
【0003】
マグクロれんがは、マグネシアとクロム鉱を主原料としたれんがであり、通常10%以上のCr23を含有する。
【0004】
このCr23を主成分とするれんがは、焼成中にMgR24の化学式(R=Cr,Fe,Al)を有するスピネル族鉱物をマトリックス中に二次スピネルとして析出し、これがマグネシアを主体とする骨材を結合する機能を発揮し、マトリックス部のスラグ浸潤に対する抵抗性を高める作用を有する。
【0005】
しかし、この材質はCr23を含有するために、使用後のれんがを廃棄処分するに当たっては、れんが中に微量含まれる6価クロムが水に溶出しないように特別の処理が必要であるという問題がある。
【0006】
このマグクロれんがに代わる耐火物として、特開平9−309762号公報に開示されている低カーボン質MgO−Cれんがや、特公平7−51458号公報に開示されているマグネシア−スピネル質れんが(マグスピネルれんが)が知られている。
【0007】
MgO−Cれんがはマグネシアを主体とし、マトリックス部にスラグに濡れにくい鱗状黒鉛を配置することによってスラグ浸潤を強力に抑制するものであるが、マトリックスに鱗状黒鉛を含有するため、黒鉛が鋼中に溶出するカーボンピックアップの原因となり、また、酸化鉄を含む精錬中のスラグによって黒鉛が酸化され、マトリックスが粗となるためにれんがの損耗が増大する等の問題を抱えている。そのため、MgO−CれんがはRH炉の一部、そして取鍋精錬用取鍋の一部にしか使用されていない。
【0008】
一方、マグネシア−スピネル質れんがは、マグクロれんがの二次スピネルをコモンスピネル(MgAl24)とすることによってクロムを含有しない組成とし、かつマグクロれんがと同様の効果を狙った材質である。しかし、コモンスピネルは低C/Sスラグに対する耐食性が劣るため、マトリックスが先行溶損し、耐用は不十分となる。そのため、マグネシアを主体とした骨材にコモンスピネル以外の物質でれんがのマトリックスを強化する手法が検討されてきた。
【0009】
例えば、特開昭63−166750号公報には、MgO:29.5〜94.5重量%、Al23:5.0〜70.0重量%、ZrO2:0.5〜17.0重量%、その他:5.0重量%以下のマグネシアアルミナ系スピネルクリンカーからなり、スラグに対する耐食性と耐スポーリング性に優れた耐火物が示されている。
【0010】
また、特開平9−124360号公報には、マトリックスがジルコニア3〜10%とマグネシア、粗粒部がマグネシアからなる焼成塩基性耐火物が示されている。
【0011】
これらは、いずれもれんがのマトリックス部にコモンスピネルと併用または単独でジルコニア相を配し、低C/Sスラグの侵入を抑制してれんがの耐食性を向上させる手法である。しかし、ジルコニアの添加は、れんがの焼結を促進しすぎるため、れんがの弾性率が増大し、耐スポーリング性が劣化するという問題も有している。
【0012】
さらに、特開平7−300361号公報には、マグネシア質原料あるいはマグネシア・アルミナ系スピネル質原料を主原料とし、チタニアを1〜10重量%とアルミナを1〜15重量%を含有する耐火物が開示されている。この耐火物は焼成または使用時の稼働面からの受熱によって、マグネシアとチタニアで構成されるスピネル鉱物(Mg2TiO4)とコモンスピネルの連続固溶体を生成し、気孔径を小さくすることで耐食性が向上するとされている。しかしながら、Mg2TiO4は融点が1732℃とコモンスピネルの融点2105℃に比べて著しく低く、TiO2を増加させることは高温操業下での耐用劣化につながるという側面をも有している。
【0013】
以上のように、マグネシアまたはマグスピネルれんがのマトリックス強化のために従来ZrOP2やTiO2の適用が試みられたが、それぞれ実炉への適用における問題点を有しており、依然として大部分の炉ではマグクロれんがを使用しているというのが現状である。
【0014】
一方、セメント焼成用ロータリーキルンなどの焼成炉の内張りれんがも、従来マグクロれんがが多く使用されていたが、鉄鋼二次精錬用窯炉と同様、使用後のれんがを廃棄処分する際に生ずる6価クロムの問題のため、最近では主にマグスピネルれんがが使用されている。
【0015】
しかしながら、マグスピネルれんがは、キルンの中でも最高温度に達する真焼点付近で焼結反応が進んで固くなった焼成物がれんがの稼働面を転動する際に稼働面を磨耗するという問題がある。この磨耗の原因は、Al23の高温域でのマグネシアへの固溶量が大きく、コモンスピネルで構成される二次スピネルが高温域で細く貧弱となるため、マグスピネルれんがの磨耗量が大きくなることによると考えられる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、鉄鋼二次精錬用等の金属精錬用窯炉やセメント焼成用窯炉など各種焼成窯炉の内張りに用いられるCr23を含有しない耐火物における耐用性の向上にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、希土類酸化物を0.2〜20重量%と、MgOを95重量%以上含有するマグネシアクリンカーおよび/またはMgOとCaOを95重量%以上含有するマグネシア−カルシアクリンカーとを配合してなる塩基性耐火物である。
【0020】
マグネシア−カルシアクリンカーとしては、CaO含有量が2重量%前後の製品からドロマイト(MgCO3・CaCO3)鉱石を焼成して得られるCaO含有量が約60重量%の所謂「ドロマイトクリンカー」も使用可能である。
【0021】
ただし、マグネシアクリンカーの場合と同様、スラグに対する耐食性の点からは、MgOとCaOとの含有量が90重量%以上、とくに、95重量%以上であることが望ましい。
【0022】
添加する希土類酸化物としては、Y23,CeO2、La23等を微粉末の形態で使用できる。
【0023】
これらの希土類酸化物は、1種類を単味で99重量%以上含有する高純度のものは好適であるが、ゼノタイム(xenotime)、バストネサイト(bastnasite)などの鉱石から得られる希土類酸化物の混合物(モナズ石、バストネサイトを原料にするものは俗に「酸化希土」と呼ばれる)など、各種希土類酸化物が混合した原料も使用できる。
【0024】
また、希土類酸化物原料をマグネシアクリンカーまたはマグネシア−カルシアクリンカーと混合し、電気炉で溶融する、所謂「ドロマイトクリンカー」中に分散した形での使用も可能である。
【0025】
本発明の耐火物は、希土類酸化物がれんがのマトリックスに主に存在する組織を有する。この組織が如何にして、スラグの浸透を抑制し、れんがの耐食性を向上させるかは十分明らかでないが、希土類酸化物がスラグ中のSiO2と反応し、スラグの融点を上昇させ浸透を抑制すると考えられる。
【0026】
すなわち、CaO−SiO2の2成分系のスラグは、CaO/SiO2のモル比0〜2の範囲では、その融点は、1436〜1464℃という低温である。これに対して、2成分系スラグにY23またはLa23の十分な量を加えることにより、融液生成温度は約300℃上昇する。また、Y23およびLa23以外の希土類酸化物も類似した化学的特性を有することから同様の効果が期待できる。
【0027】
なお、希土類酸化物の配合割合は、0.2重量%未満では量的に少なすぎてスラグの融点を上昇させる希土類酸化物の添加効果が期待できず、また、20重量%を越えると、マグネシア原料と比較すると高価な希土類酸化物の価格に見合った効果が期待できないため、0.2〜20重量%の範囲が適当である。
【0028】
なお、希土類酸化物が、Y23を50重量%以上含有する場合には、とくに優れた耐食性および熱間強度を示す。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例によって本発明の実施の形態を述べる。
【0030】
出発原料として、純度約99重量%の海水マグネシアクリンカーと、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)鉱石を焼成して焼結マグネシア−カルシアクリンカー(純度約98重量%)を得た。希土類酸化物原料として、市販のY23試薬、CeO2試薬、La23試薬(ともに純度99.9重量%以上)を用いた。また、結合剤として、焼成れんが用として市販のフェノールレジン、または、低分子ポリプロピレンを、不焼成れんが用として塩化マグネシウム水溶液を用いた。
【0031】
比較例としてマグネシアれんが、マグクロれんが、マグスピネルれんがを同時に試作した。
【0032】
さらに、出発原料として、トルコ産クロム鉱石(Cr23含有量約50%)、焼結スピネルクリンカー(理論スピネル(MgAl24)組成、純度約99重量%)を使用した。
【0033】
実施例1
表1は、希土類酸化物として代表的なY23を用い、その添加量と各種特性ヘの効果を調べた結果を示す。また、電融処理によって希土類酸化物をマグネシア中に分散させた例も併せて示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004373509
同表に示す量比で各種原料を配合し混練し、油圧プレスで1500kg/cm3の成形圧で並形(230×114×65mm)に成形し、1800℃で12時間焼成した。なお比較試料としてマグネシアれんが、およびマグクロれんがも同時に製造し準備した。
【0035】
試作したれんがについて、一般物性、熱間曲げ強度、耐食性を評価した。一般物性、すなわち、かさ比重、見掛比重、見掛気孔率、そして熱間曲げ強度はJIS記載の方法に則って測定した。
【0036】
耐食性は、スラグ浸漬法で評価した。高周波誘導炉内にセットした黒鉛坩堝中にスラグを投入、溶解し、1700℃に保持した。そして180×20×20mmに加工した試料を90mmの深さまで40分間浸潰した。スラグの組成はCaO=50重量%、SiO2=20重量%、Al23=30重量%とし、B23を外掛1重量%加えた。実験終了後の試料は、冷却後にアルキメデス法によって体積を測定、試験前後に体積の減少した割合を被食率とした。表中には、比較例のマグクロれんが「Q」を100とした割合(被食率指数)で示している。この数値が小さいものが耐食性に優れていることを表す。また試料によっては、試験中に浸漬部の大部分がちぎれるように失われたものもある。これはスラグに対する耐食性が極端に弱い場合に見られる。このような場合は表中に、例えば「10分溶落」と、この現象が確認された時間を示している。
【0037】
希土類酸化物を配合せずにマグネシア原料のみで構成した比較例「P」は、耐食性試験で試料が10分で溶落した。ところが、希土類酸化物を配合した本発明の実施例にはこの現象が見られない。これで、希土類酸化物を配合することによって耐食性が著しく向上したことが明らかである。また、希土類酸化物を配合した実施例は、比較例のマグクロれんが「Q」よりも高耐食性であり、希土類酸化物の添加量は5重量%(発明品「C」)付近が最も耐食性良好であった。また、実施例「C」は、熱間強度もマグクロれんがに匹敵する。さらに、電融処理によって希土類酸化物をマグネシア中に分散させた発明例「E」は、実施例の中でも最も耐食性、および熱間強度が高い。なお、比較例「R」はマグスピネルれんがであるが、耐食性試験では試料の浸漬部が10分で溶落し、耐食性が著しく弱いことを示している。また、熱間曲げ強度の面でも本発明に及ばない。
【0038】
実施例2
表2は、MgO−CaO系材質に希土類酸化物として代表的なY23を配合した例を示す。
【0039】
【表2】
Figure 0004373509
同表に示す量比で各種原料を配合し混練し、油圧プレスで1500kg/cm3の成形圧で並形に成形し、1600℃で12時間焼成した。評価方法については、表1の例と同様である。
【0040】
希土類酸化物を配合しないMgO−CaOれんがである比較例「S」は、従来のマグクロれんが(比較例「Q」)とほぼ同等の耐食性を持つ。一方、希土類酸化物を配合した発明品は、比較例「S」や比較例「Q」よりも高耐食性である。また、希土類酸化物の添加量は5重量%付近が最も耐食性良好であり、MgO系材質に希土類酸化物を配合した結果と類似している。
【0041】
実施例3
さらに、希土類酸化物の種類と添加による効果との関係を調査するために、マグネシア原料をベースに希土類酸化物を5重量%配合した焼成れんがを作成した。
【0042】
表3に示す量比で各種原料を配合した。製造条件および評価方法は表1の例と同様である。
【0043】
【表3】
Figure 0004373509
その結果、希土類酸化物の全量をY23が占める実施例「C」(表1の結果を再録)が最も耐食性良であった。また、Y23を半量(2.5重量%)配合した実施例「L」、同「M」がそれに次ぎ、いずれも、比較例であるマグクロれんが「Q」よリ優れている。熱間強度に関しても、実施例「L」、同「M」は実施例「C」に準ずる。Y23を含有しない実施例「J」、同「K」、同「N」は、いずれもマグクロれんが「Q」と同等程度の耐食性であり、熱間強度もやや低い結果であった。
【0044】
実施例4
【表4】
Figure 0004373509
不焼成れんがにおける希土類酸化物の作用効果を調査した例を示す。各種原料を表4の割合で配合し混練した。さらに、油圧プレスで1500kg/cm3の成形圧で並形に成形し、150℃で乾燥した。なお比較試料としてマグネシア不焼成れんがとマグクロ不焼成れんがも同時に製造、準備した。評価方法については実施例1と同様である。実施例「O」はマグクロ不焼成れんがの比較例「U」に比べて耐食性で勝っている。希土類を添加していない比較例「T」は、耐食性試験では10分で試料が溶落しているのに対して、実施例「O」はこの現象が見られないことから、焼成品の例と同様に不焼成れんがにおいても、希土類酸化物を配合することによって耐食性が著しく向上していることが明らかである。
【0045】
適用例1
表1の実施例「C」をRH炉下部槽の側壁に部分的に使用し、使用後に状況を調査した。これに隣接して、マグクロれんがを施工し、本発明との比較ができるようにした。残寸から推定した損耗速度は周囲のマグクロれんがのそれよリも約10%少なく、本発明の効果が確認できた。また、れんがを回収して調査したところ、周囲のマグクロれんがと比較してスラグ浸潤深さは約半分で、亀裂も認められなかった。
【0046】
適用例2
同じく表1に示す実施例「C」をセメント焼成用ロータリーキルンの焼成帯(真焼点付近およびその他)に部分的に施工し、6ケ月間使用後に状況を調査した。これに隣接して、真焼点付近にマグクロれんがを、それ以外の焼成帯にマグスピネルれんがを施工し、本発明との比較ができるようにした。残寸から推定した本発明の塩基性耐火物の損耗速度は、真焼点付近のマグクロれんがとの比較ではほぼ同等で、その他の部位のマグスピネルれんがとの比較では約20%少なく、本発明の効果が確認できた。またれんがを回収して調査したところ、周囲のマグスピネルれんがと比較してコーティング層の厚みが約2倍で、マグクロれんがとはほぼ同等であり、れんが原質層との間に亀裂は認められなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、鉄鋼二次精錬用等の金属精錬用窯炉やセメント焼成用窯炉など各種焼成窯炉の内張りに用いられる耐火物として、Cr23を含有せず、かつ高耐用な材質を提供できる。このため、耐火物コスト増加や炉修頻度増加など、設備稼働率や生産性に悪影響を与えることなく、マグクロれんがの廃棄処分に伴う特別な処理の手間とコストの問題を解決することができる。

Claims (2)

  1. 希土類酸化物を0.2〜20重量%と、MgOを95重量%以上含有するマグネシアクリンカーおよび/またはMgOとCaOを95重量%以上含有するマグネシア−カルシアクリンカーとを配合してなる塩基性耐火物。
  2. 希土類酸化物が、Y 2 3 を50重量%以上含有する請求項1に記載の塩基性耐火物。
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