JP3795196B2 - 農業用フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、農業用フィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
農業上の促成栽培を目的としたハウス栽培、トンネル栽培およびマルチ栽培などでは、一般に被覆材として各種熱可塑性樹脂からなる農業用フィルムが多量に使用されている。このような農業用フィルムの内、特にハウス用のフィルムとしては、従来ポリ塩化ビニル(PVC)製フィルムが主に使用されて来た。
【0003】
しかしながら、PVC製フィルムは、重くて作業性が悪く、しかも低温時の強度が不足しており、また、使用中に可塑剤がブリードアウトしてくるため、埃が付着して時間とともに光線透過率が低下する。また、PVC製フィルムは、焼却時にハロゲン系ガスを発生させる。PVC製フィルムは、上記のような問題を抱えていることから、近年は、PVC製フィルムに代わってポリオレフィン系樹脂製のフィルムの使用が増えつつある。
【0004】
しかしながら、従来使用されているポリオレフィン系樹脂製フィルムは、PVC製フィルムの上記問題に関しては、PVC製フィルムよりも優れているものの、展張初期の光学特性が、PVC製フィルム、特にハウス外側相当面にアクリル樹脂塗布などの方法で防塵加工したPVC製フィルムに比べ劣っている。また、ポリオレフィン系樹脂製フィルムは、PVC製フィルムに比べ、しなやかさに欠けているため、PVC製フィルムに慣れた使用者にとっては、ゴワゴワした感触を持ち、ハウスへの展張、固定がしにくいとの指摘もなされている。
【0005】
したがって、本願発明者らは、鋭意研究し、特定の密度とメルトフローレートを有するエチレン・α- オレフィン共重合体と40重量%以下の高圧法低密度ポリエチレンとの混合物からなり、且つ、ヒンダードアミン系光安定剤を含む樹脂を用いて特定の溶融温度で水冷式インフレーション法によりフィルム成形することにより、従来より使用されているポリオレフィン系樹脂製フィルムの性能が改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、従来のポリオレフィン系樹脂製フィルムからなる農業用フィルムと比べ、特に展張初期の光学特性および展張作業性に優れた農業用フィルムおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係る農業用フィルムは、外層と内層とからなる2層、または外層と1層以上の中間層と内層とからなる3層以上の多層フィルムであり、
該外層および内層の少なくとも一方は、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合して得られ、密度が0.928〜0.940g/cm3 であり、メルトフローレートが0.1〜10g/10分であるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる樹脂(C)、または
該エチレン・α- オレフィン共重合体(A)と40重量%以下の量の高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)で形成され、樹脂(C)が、ヒンダードアミン系光安定剤を樹脂(C)100重量部に対して、0.005〜5重量部含み、且つ、
(i)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜5.0の範囲にあり、
(ii)23℃におけるn-デカン可溶成分量分率(W(重量%))と密度(d(g/cm3 ))とが、W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
(iii) GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1 、低分子量側の分岐数の平均値をB2 とするとき、B1 ≧ B2 であり、
当該樹脂(C)の溶融温度を150〜200℃の範囲で水冷式インフレーション法により形成され、
層フィルムは、
(i) フィルム全体の厚みが60〜200μmであり、
(ii)ヘイズ(ASTM D 1003)が10%未満であり、
(iii) グロス(ASTM D 523)が90%以上である
ことを特徴としている。
【0009】
前記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、メタロセン系触媒を用いて調製されたエチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0010】
記樹脂(C)中に、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、アンチブロッキング剤(D)および/またはスリップ剤(E)をそれぞれ0.01〜3.0重量部含有させることが好ましい。
【0011】
また、前記樹脂(C)中に、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、防曇剤(F)を0.01〜5.0重量部含有させることが好ましい。
防曇剤(F)は、グリセリンアルキルエステル、ジグリセリンアルキルエステル、ジエタノールアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。
【0012】
本発明に係る農業用フィルムのうち、好ましい多層フィルムは、
外層と内層とからなる2層、または外層と1層以上の中間層と内層とからなる3層以上の多層フィルムであり、
該外層および内層の少なくとも一方は、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合して得られ、密度が0.885〜0.940g/cm3 であり、メルトフローレートが0.1〜10g/10分であるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる樹脂(C)、または
該エチレン・α- オレフィン共重合体(A)と40重量%以下の量の高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)で形成され、
樹脂(C)が、ヒンダードアミン系光安定剤を樹脂(C)100重量部に対して、0.005〜5重量部含み、且つ、
(i)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜5.0の範囲にあり、
ii )23℃における n- デカン可溶成分量分率(W(重量%))と密度(d(g/cm 3 ))とが、W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
iii GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB 1 、低分子量側の分岐数の平均値をB 2 とするとき、B 1 2 であり、
当該樹脂(C)の溶融温度を150〜200℃の範囲で水冷式インフレーション法により形成され、
該多層フィルムは、
(i) フィルム全体の厚みが60〜200μmであり、
(ii)ヘイズ(ASTM D 1003)が10%未満であり、
(iii) グロス(ASTM D 523)が90%以上である
ことを特徴としている。
【0014】
また、前記外層または内層の形成に用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、メタロセン系触媒を用いて調製されたエチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0015】
記外層または内層を形成する樹脂(C)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、アンチブロッキング剤(D)および/またはスリップ剤をそれぞれ0.01〜3.0重量部含有していることが好ましい。
【0016】
また、前記外層または内層を形成する樹脂(C)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、防曇剤(F)を0.01〜5.0重量部含有していることが好ましい。
【0017】
前記多層フィルムを構成する中間層は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高圧法低密度ポリエチレン(B)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、およびアイオノマー樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る農業用フィルムの製造方法は、
前記樹脂(C)で形成された層を有する単層または多層構造の農業用フィルムを、バブルの膨比0.5〜2.0、チューブラーフィルムの冷却水温度10〜60℃およびバブルのドラフト率5〜100の条件で、水冷インフレーション成形して得ることを特徴としている。
この製造方法において、特に、前記樹脂(C)で形成された層を有するフィルムを、サーキュラーダイからインフレーション成形法で下向きに押出し、次いで無機系防曇剤組成物を添加した水槽に通して冷却しつつ引き取り、その後フィルム表面を乾燥する方法を採用することが好ましい。
【0019】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る農業用フィルムおよびその製造方法について具体的に説明する。
【0020】
本発明に係る農業用フィルムは、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる樹脂(C)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)で形成された層を有する。この樹脂(C)中に、アンチブロッキング剤(D)、スリップ剤(E)、防曇剤(F)などの添加剤を配合することができる。本発明に係る農業用フィルムは、このような層からなる単層フィルムであってもよいし、また、このような層を有する2層以上の多層フィルムであってもよい。さらに、本発明に係る農業用フィルムは、上記樹脂(C)で形成された層を有する少なくとも一方の外表面に無機系防曇剤組成物の被膜が設けられていてもよい。
【0021】
エチレン・α - オレフィン共重合体(A)
本発明で用いられる樹脂(C)を構成するエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとからなる共重合体である。
【0022】
エチレンとの共重合に用いられる炭素原子数4〜12のα- オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられる。これらの中では、炭素原子数4〜10のα- オレフィン、特に炭素原子数4〜6のα- オレフィンが好ましい。
【0023】
本発明においては、上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位が50重量%以上100重量%未満、好ましくは55〜99重量%、さらに好ましくは65〜98重量%、特に好ましくは70〜96重量%の量で存在し、炭素原子数4〜12のα- オレフィンから導かれる構成単位が50重量%以下、好ましくは1〜45重量%、さらに好ましくは2〜35重量%、特に好ましくは4〜30重量%の量で存在することが望ましい。
【0024】
エチレン・α- オレフィン共重合体の組成は、通常10mmφの試料管中で約200mgの共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRスペクトルを、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2sec.、パルス幅6μsec.の条件下で測定して決定される。
【0025】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、密度が0.928〜0.940g/cm 3 範囲にある。
【0026】
なお、密度は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られるストランドを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定する。
【0027】
また、このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238-65T,190℃、荷重2.16kg)は、0.1〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分、さらに好ましくは0.5〜2g/10分の範囲にある。
【0028】
このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)のGPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)は、1.5〜5.0、好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは2.0〜3.0の範囲にある。
【0029】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径72mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン[和光純薬工業(株)製]および酸化防止剤としてBHT[武田薬品工業(株)製]0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー(株)製を用い、1000<Mw<4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0030】
また、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶成分量分率(W(重量%))と密度(d(g/cm3 ))とが下記に示される関係を満たしている。
【0031】
W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1
なお、エチレン・α- オレフィン共重合体のn-デカン可溶成分量(可溶成分量の少ないもの程組成分布が狭い)の測定は、エチレン・α- オレフィン共重合体約3gをn-デカン450mlに加え、145℃で溶解した後23℃まで冷却し、濾過によりn-デカン不溶部を除き、濾液よりn-デカン可溶部を回収することにより行なわれる。
【0032】
さらに、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度〔Tm(℃)〕と密度〔d(g/cm3 )〕とが、
Tm<400×d−250
好ましくは Tm<450×d−297
さらに好ましくは Tm<500×d−344
特に好ましくは Tm<550×d−391
で示される関係を満たしていることが望ましい。
【0033】
なお、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)は、試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで、10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求められる。測定は、パーキンエルマー社製DSC-7 型装置を用いる。
【0034】
このように、n-デカン可溶成分量分率(W)と密度(d)との関係、そして示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線における最大ピーク位置の温度(Tm)と密度(d)との関係が上記のような関係を有するようなエチレン・α- オレフィン共重合体は組成分布が狭いことを示している。
【0035】
また、本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1 、低分子量側の分岐数の平均値をB2 とするとき、
1 ≧ B2
である。
【0036】
ここに、GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値(B1 )とは、GPCによって分子量分別された高分子溶出量の累積重量分率が15〜85%(すなわち低分子量領域15%、高分子量領域15%を除く高分子溶出成分)の範囲で各フラクション毎に測定された分岐数の測定値群を、GPC溶出曲線のピーク位置の分子量で2分割したもののうち、高分子量側の値の平均値である。一方、低分子量側の分岐数の平均値(B2 )とは、2分割したもののうち、低分子量側の平均値である。
【0037】
上記B1 およびB2 の測定条件は、次の通りである。
測定装置:パーキン・エルマー 1760X
カラム:東ソー(株)製TSKゲル GMH-HT(7.5mmI.D.×600mm)×1
溶離剤(eluent):MP−Jを0.05%含有のo-ジクロロベンゼン(ODCB)[和光純薬工業(株)製、extra pure grade]
カラム温度:140℃
サンプル濃度:0.1%(weight/volume)
射出容量(inj.volume):100マイクロリットル
検出器:MCT
分解能:8cm-1
このB1 とB2 が上記のような関係にあるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、組成分布が狭く、しかもローポリマーが少ないので、ベトツキが少ない。したがって、上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を用いると、防塵性に優れた農業用フィルムを得ることができる。
【0038】
また、このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなるフィルムは、光線透過率の経時的低下が非常に小さいため、このようなフィルムを農業用フィルムとして展張すると、長期に亘って使用することが可能である。
【0039】
上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、特開平6−9724号公報、特開平6−136195号公報、特開平6−136196号公報、特開平6−207057号公報等に記載されているメタロセン触媒成分を含む、いわゆるメタロセン系オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.885〜0.940g/cm3 となるように共重合させることによって製造することができる。
【0040】
このようなメタロセン系触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0041】
本発明で好ましく用いられるメタロセン触媒成分(a)としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物がある。このような遷移金属化合物としては、たとえば下記の一般式[I]で示される遷移金属化合物が挙げられる。
【0042】
ML1 x ・・・ [I]
式中、xは、遷移金属原子Mの原子価である。
Mは、周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属原子であり、具体的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウムである。中でも、ジルコニウムが好ましい。
【0043】
1 は、遷移金属原子Mに配位する配位子であり、これらのうち、少なくとも1個の配位子L1 は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。
上記のような遷移金属原子Mに配位するシクロペンタジエニル骨格を有する配位子L1 としては、具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基、あるいはインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0044】
上記一般式[I]で表わされる化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、イソプロピリデンジフェニルメチレン等の置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0045】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子L1 は、炭素原子数1〜12の炭化水素基;メトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリアルキルシリル基;SO3R (Rはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8の炭化水素基)、ハロゲン原子または水素原子である。
【0046】
炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。
SO3R で表わされる配位子としては、具体的には、P-トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基などが挙げられる。
【0047】
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)としては、アルミノオキサンが好ましく用いられる。具体的には、式
−Al(R)O− [ただし、Rはアルキル基である]
で表わされる繰り返し単位が通常3〜50程度のメチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、メチルエチルアルミノオキサン等が用いられる。
このようなアルミノオキサンは、従来公知の製法で調製することができる。
【0048】
オレフィン重合用触媒の調製で用いられる微粒子状担体(c)は、無機あるいは有機の化合物であって、粒径が通常10〜300μm程度であり、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないし微粒子状の固体である。
【0049】
無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、具体的には、SiO2、Al23 、MgO、ZrO2、TiO2 、B23、CaO、ZnO、BaO、SnO2等またはこれらの混合物を例示することができる。なお、上記無機酸化物には、少量のNa2CO3等の炭酸塩、Al2(SO43 等の硫酸塩、KNO3 等の硝酸塩、Li2O等の酸化物を含有していても差し支えない。
【0050】
このような担体は、その種類および製法により性状は異なるが、本発明で好ましく用いられる担体は、比表面積が50〜1000m2/g 、好ましくは100〜700m2/g であり、細孔容積が0.3〜2.5cm3/g であることが望ましい。
この担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0051】
また、微粒子状担体として用いられる有機化合物としては、エチレン、4-メチル-1- ペンテン等の炭素原子数2〜14のα- オレフィンを主成分として生成される(共)重合体、あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体を例示することができる。
【0052】
オレフィン重合用触媒の調製において必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物触媒成分(d)としては、具体的には、トリメチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、イソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示することができる。
【0053】
イオン化イオン性化合物触媒成分(e)としては、たとえばUSP−5,321,106号公報に記載されたトリフェニルボロン、MgCl2、Al23、S iO2−Al23 等のルイス酸;トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のイオン性化合物;ドデカボラン、ビスn-ブチルアンモニウム(1-カルベドデカ)ボレート等のカルボラン化合物が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、上記のようなメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件で、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させることにより得ることができる。
スラリー重合法または溶液重合法においては、不活性炭化水素を溶媒としてもよいし、オレフィン自体を溶媒とすることもできる。
【0055】
重合を実施する際には、上記のようなメタロセン系オレフィン重合用触媒は、重合反応系内の遷移金属原子の濃度で、通常10-8〜10-3グラム原子/リットル、好ましくは10-7〜10-4グラム原子/リットルの量で用いられることが望ましい。
【0056】
また、重合に際して、担体に担持されている有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および有機アルミニウム化合物触媒成分(c)に加えて、さらに担持されていない有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および/または有機アルミニウム化合物触媒成分(c)を用いてもよい。この場合、担持されていない有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および/または有機アルミニウム化合物触媒成分(c)に由来するアルミニウム原子(Al)と、メタロセン触媒成分(a)に由来する遷移金属原子(M)との原子比[Al/M]は、5〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは15〜150の範囲である。
【0057】
スラリー重合法における重合温度は、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であり、溶液重合法における重合温度は、通常−50〜500℃、好ましくは0〜400℃の範囲である。また、気相重合法における重合温度は、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧ないし100kg/cm2 、好ましくは2〜50kg/cm2 の加圧条件下である。
【0058】
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式においても行なうことができる。
本発明においては、上記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)の調製に際し、必要に応じて(1) 多段重合、(2) 液相と気相の多段重合、または(3) 液相での予備重合を行なった後に気相での重合を行なう等の手段を採用することができる。本発明においては、上記(1)の多段重合が好ましい。
【0059】
多段重合法としては、たとえば、次のような多段重合法が挙げられる。
[1]上記一般式[I]で表わされるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IVB族の遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるメタロセン触媒成分と、
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分と
を含むメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させ、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を製造する工程と、
[2]上記共重合反応が行なわれる重合器とは異なる重合器において、
上述した一般式[I]で表わされるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IVB族の遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるメタロセン触媒成分と、
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分と
を含むメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させ、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を製造する工程と
を含むオレフィンの多段重合法が挙げられる。ただし、工程[1]における製造条件と工程[2]における製造条件とは異なる。このような製造条件としては、たとえばメタロセン触媒成分の種類および量、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分の種類および量、あるいはエチレンとα- オレフィンの供給量およびその割合(モル比)などが挙げられる。
【0060】
上記共重合工程[1]および/または[2]において用いられるメタロセン系触媒が、メタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)に加え、有機アルミニウム化合物触媒成分(d)を含む触媒であってもよく、また、微粒子状担体(c)にメタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウム触媒成分(b)が担持された固体触媒であってもよい。また、これらのメタロセン系触媒は、微粒子状担体(c)にメタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウム触媒成分(b)が担持された固体触媒成分にオレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒であってもよい。さらに、これらのメタロセン系触媒は、上記固体触媒(固体触媒成分)と有機アルミニウム化合物触媒成分(d)とからなる触媒、あるいは上記予備重合触媒(予備重合触媒成分)と有機アルミニウム化合物触媒成分(d)とからなる触媒であってもよい。
【0061】
この多段重合法では、直列に結合した複数の重合器を用いて、先ず上記のエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を製造し、次いで、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)の製造に用いた重合器とは異なる重合器にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を導入し、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)の存在下にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を製造することができる。
【0062】
また、複数の重合器を並列に結合し、各重合器において、それぞれエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)、(A−2)を製造し、次いで、両共重合体をブレンドすることもできる。
【0063】
本発明においては、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100重量部に対して、60〜100重量部、好ましくは65〜99重量部、さらに好ましくは70〜95重量部の割合で用いられる。
【0064】
高圧法低密度ポリエチレン(B)
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm3 、スウェル比が60%以下であることが好ましい。
【0065】
なお、高圧法低密度ポリエチレン(B)の密度は、上述したエチレン・α- オレフィン共重合体(A)の密度の測定方法と同じ方法で求められる。
【0066】
また、スウェル比は、以下のようにして求める。
メルトフローレート測定時に得られるストランドの先端から5mmの位置の直径をサンプルの径(mm)としてマイクロメーターで測定する。そして、下式によりスウェル比を算出する。
スウェル比(%)=[(L1/L0)−1]×100
1 :サンプルの径(mm)
0 :オリフィスの径(=2.0955mm)
【0067】
上記のような高圧法低密度ポリエチレン(B)は、従来公知の高圧法で製造することができる。
【0068】
本発明においては、高圧法低密度ポリエチレン(B)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100重量%に対して、0〜40重量%、好ましくは1〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の割合で用いられる。
【0069】
アンチブロッキング剤(D)
本発明に係る農業用フィルムは、水冷インフレーション法により成形されるが、成形
後のフィルムがブロッキングして開口性が低下する場合には、上記樹脂(C)中に、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、アンチブロッキング剤(D)を0.01〜3.0重量部、好ましくは0.1〜2.5重量部、特に好ましくは0.5〜1.5重量部添加するとよい。
【0070】
アンチブロッキング剤としては、具体的には、天然シリカ、合成シリカ、ゼオライト、非晶質ゼオライト、ケイソウ土、タルクなどが挙げられる。中でも、シリカ、ゼオライトなどが好ましく用いられる。
【0071】
スリップ剤(E)
本発明で必要に応じて用いられるスリップ剤(E)としては、具体的には、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12- ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。中でも、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドなどが好ましく用いられる。
スリップ剤(E)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、0.01〜3.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.3〜1.5重量部添加するとよい。
【0072】
防曇剤(F)
本発明で必要に応じて用いられる防曇剤(F)としては、有機系防曇剤および無機系防曇剤がある。
有機系防曇剤の種類として次の例を挙げることができる。
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤;
グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート等のグリセリン系界面活性剤;
ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤;
トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤;
ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤;
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン- ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレート、およびアルカノールアルキルアミン系界面活性剤など。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0073】
また、防曇剤(F)の好ましい例として、下式(I)で表わされるグリセリンアルキルエステル、下式(II)で表わされるジグリセリンアルキルエステル、下式(III) で表わされるジエタノールアルキルアミン、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる防曇剤を挙げることができる。
【0074】
【化1】
Figure 0003795196
【0075】
1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数12〜22のアシル基である。
1 、R2 およびR3 のアシル基としては、具体的には、C1123CO−、C1327CO−、C1531CO−、C1735CO−、C1939CO−などが挙げられる。中でも、C1531CO−、C1735CO−が好ましい。
本発明で好ましく用いられるグリセリンアルキルエステルとしては、具体的には、グリセリンパルミテート(モノ、ジおよびトリエステルを含む)、グリセリンステアレート(モノ、ジおよびトリエステルを含む)などが挙げられる。
【0076】
【化2】
Figure 0003795196
【0077】
式(II)中、R4 、R5 、R6 およびR7 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数12〜22のアシル基である。
4 、R5 、R6 およびR7 のアシル基としては、具体的には、
1123CO−、C1327CO−、C1531CO−、C1735CO−、C1939CO−などが挙げられる。中でも、C1531CO−、C1735CO−が好ましい。
【0078】
本発明で好ましく用いられるジグリセリンアルキルエステルとしては、具体的には、ジグリセリンパルミテート(モノ、ジ、トリおよびテトラエステルを含む)、ジグリセリンステアレート(モノ、ジ、トリおよびテトラエステルを含む)などが挙げられる。
【0079】
【化3】
Figure 0003795196
【0080】
8 は、炭素原子数12〜22のアルキル基であり、具体的には、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ラウリル基、ステアリル基などが挙げられる。中でも、オクタデシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましい。
【0081】
本発明で好ましく用いられるジエタノールアルキルアミンとしては、具体的には、ジエタノールステアリルアミン、ジエタノールラウリルアミンなどが挙げられる。
【0082】
本発明で好ましく用いられるポリオキシエチレンソルビタンエステルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンジパルミテートなどが挙げられる。
【0083】
これらの好ましい防曇剤の例において、たとえばグリセリンアルキルエステルとジグリセリンアルキルエステルとジエタノールアルキルアミンとが混合使用される場合には、次の割合で使用される。
グリセリンアルキルエステル、ジグリセリンアルキルエステルおよびジエタノールアルキルアミンの合計量100重量部に対して、グリセリンアルキルエステルは10〜40重量部、好ましくは20〜30重量部の割合で含まれ、ジグリセリンアルキルエステルは20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部の割合で含まれ、ジエタノールアルキルアミンは1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で含まれている。
【0084】
このような防曇剤の中でも、たとえば次のような組合せが好ましい。
(1)グリセリンステアレートと、ジグリセリンステアレートと、ジエタノールステアリルアミンとからなる防曇剤。
(2)グリセリンパルミテートと、ジグリセリンパルミテートと、ジエタノールステアリルアミンとからなる防曇剤。
(3)グリセリンラウレートと、ジグリセリンラウレートと、ジエタノールステアリルアミンとからなる防曇剤。
(4)グリセリンベヘネートと、ジグリセリンベヘネートと、ジエタノールステアリルアミンとからなる防曇剤。
(5)上記(1)から(4)の任意の混合物。
【0085】
防曇剤(F)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、0.01〜5.0重量部、好ましくは0.1〜4.0重量部、さらに好ましくは0.5〜3.0重量部の割合で用いられる。
【0086】
一方、無機系防曇剤の例として、無機親水性コロイド物質とバインダー樹脂成分とを主成分とする無機系防曇剤組成物を挙げることができる。
【0087】
無機親水性コロイド物質としては、具体的には、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイド状のFe(OH)2 、コロイド状のSn(OH)4 、コロイド状のTiO2 、コロイド状のBaSO4 、コロイド状のリチウムシリケートなどが挙げられる。これらの内、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナが特に好ましい。
【0088】
上記バインダー樹脂成分としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの水性エマルジョンなどを挙げることができる。
さらに必要に応じ界面活性剤を含有させることができる。
【0089】
このような無機系防曇剤組成物は、フィルム成形時の冷却水中に添加しておくと、フィルム面上にその無機系防曇剤組成物の層を形成することができるので好都合である。通常、厚みが0.1〜5μm、好ましくは0.5〜2μmになるように無機系防曇剤組成物層を形成すると高い防曇効果が得られる。したがって、そのような膜厚になるようにフィルム冷却水への添加量等を調整すればよい。
【0090】
その他の成分
上記の樹脂(C)中に、必要に応じて、従来公知の耐候安定剤、酸化防止剤、防霧剤、無機化合物、帯電防止剤、熱安定剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0091】
耐候安定剤は、紫外線吸収剤と光安定剤とに大別されるが、光安定剤の方が薄い農業用フィルムには有効であり、耐候安定性の改良効果が大きい。
光安定剤としては、従来公知の光安定剤を用いることができ、中でもヒンダードアミン系光安定剤(HALS;Hindered Amine Light Stabilizers)が好ましく用いられる。
【0092】
ヒンダードアミン系安定剤としては、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
(1)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)セバケート、
(2)コハク酸ジメチル-1- (2-ヒドロキシエチル)-4- ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、
(3)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(4)2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニルベンゾエート、
(5)ビス- (1,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニル)-2- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシベンジル)-2-n- ブチルマロネート、
(6)ビス(N-メチル-2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジニル)セバケート、
(7)1,1'-(1,2- エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、
(8)(ミックスト2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2,3 ,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(9)(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2 ,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(10)ミックスト{2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(11)ミックスト{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(12)N,N'- ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2-4- ビス[N-ブチル -N- (1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル)アミノ]-6- クロロ-1,3,5 - トリアジン縮合物、
(13)N,N'- ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2-ジブロモエタンとの縮合物、
(14)[N-(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル)-2-メチル-2- (2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなど。
(15)ポリ{[6-[(1,1,3,3- テトラメチルブチル)イミノ]-1,3,5-トリアジン -2,4- ジイル][4-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン}(商品名 キマソーブ944、チバガイギー社製)
【0093】
これらのヒンダードアミン系光安定剤は、単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
上記光安定剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の割合で用いられる。
【0094】
紫外線吸収剤としては、具体的には、
フェニルサリシレート、p-tert- ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-5- スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
2-(2'- ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-5'-tert- ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ- 3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3'-tert- ブチル-5'-メチルフェニル)-5- クロロベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3',5'- ジ-tert-ブチルフェニル)-5- クロロベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3',5'- ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系吸収剤;
2-エチルヘキシル-2- シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、エチル-2- シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0095】
上記紫外線吸収剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の割合で用いられる。
【0096】
添加使用できる無機化合物としては、保温剤として有効なMg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、無機複合化合物、ハイドロタルサイト類などが挙げられる。
【0097】
具体的には、SiO2 、Al23、MgO、CaO等の無機酸化物;
Al(OH)3 、Mg(OH)2 、Ca(OH)2 等の無機水酸化物;
式 M2+ 1-xAlx(OH)2(An-x/n・mH2
[式中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、
n-はCl- 、Br- 、I- 、NO3 2- 、ClO4-、SO4 2- 、CO2 2- 、SiO3 2- 、HPO4 2- 、HBO3 2- 、PO4 2- 等のアニオンであり、
xは、0<x<0.5 の条件を満足する数値であり、
mは、0≦m≦2 の条件を満足する数値である]
で表わされる無機複合化合物、あるいはその焼成物等であるハイドロタルサイト類などが挙げられる。これらの中でも、ハイドロタルサイト類が好ましく、特に上記式で表わされる無機複合化合物の焼成物が好ましい。
【0098】
上記のような無機化合物は、単独で、あるいは2種以上組合わせて用いることができる。
無機化合物の平均粒径は、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが望ましい。
無機化合物の平均粒径が上記範囲以内であれば、透明性が良好なフィルムを得ることができる。
【0099】
上記無機化合物は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは1〜18重量部、さらに好ましくは2〜15重量部の割合で用いられる。
無機化合物を上記のような割合で用いると、保温性に優れたフィルムを得ることができる。
【0100】
本発明に係る農業用フィルムは、上記のような各種添加剤を含有することがある樹脂(C)で形成された層を有する。
本発明に係る農業用フィルムが上記の樹脂(C)で形成された層からなる単層フィルムである場合、この農業用フィルムは、厚みが60〜200μm、好ましくは60〜160μmの範囲にある。
【0101】
このような単層フィルムである、本発明に係る農業用フィルムは、ヘイズ(ASTM D 1003)が10%未満であり、かつ、グロス(ASTM D 523)が90%以上である。
【0102】
上記のような本発明に係る単層構造の農業用フィルムは、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、ヒンダードアミン系光安定剤、および必要に応じて高圧法低密度ポリエチレン(B)、アンチブロッキング剤(D)、スリップ剤(E)、防曇剤(F)、上述したその他の添加剤等の成分を混合し、バンバリーミキサーまたはロールミル、押出機等で溶融混合し、次いで、150〜200℃の溶融温度で水冷式インフレーション法によりフィルムを製造することができる。
【0103】
フィルム成形に際し、インフレーション法を採用し、また冷却に際し水冷法を採用する。特に、水冷インフレーション成形法を採用すると、光学特性および展張作業性に優れた農業用フィルムを製造することができる。
【0104】
この水冷インフレーション成形条件としては、樹脂の溶融温度が150〜200℃であり、通常、バブルの膨比(ダイス口径と水冷ジャケット以降のバブル径との比;バブル径/ダイス口径)が0.5〜2.0であり、冷却水温度が10〜60℃であり、バブルのドラフト率(ダイ出口での樹脂の流速と成形速度との比;成形速度/樹脂の流速)が5〜100であることが好ましい。
バブルの膨比が上記範囲内であると、バブルが安定し、成形性もよい。また、冷却水温度が上記範囲内であると、フィルムがカールせず、しかもフィルムの光学特性がよい。ドラフト率が上記範囲内であると、バブルが安定し、しかもフィルムの光学特性がよい。
【0105】
また、前記樹脂(C)で形成された層を有するフィルムを、サーキュラーダイからインフレーション成形法で下向きに押出し、次いで、上述した無機系防曇剤組成物を添加した水槽に通して冷却しつつ引き取り、その後フィルム表面を乾燥し、フィルム表面に無機系防曇剤組成物の被膜を形成することができる。
【0106】
本発明に係る農業用フィルムは、上述した単層フィルムの他に、上記のような樹脂(C)で形成された層を有する多層構造のフィルムであってもよい。本発明に係る多層構造の農業用フィルムとしては、たとえば次のような外層と1層以上の中間層と内層とからなる多層フィルムが特に好ましい。
【0107】
外層および内層
上記多層フィルムを構成する外層および/または内層は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる樹脂(C)、またはエチレン・α- オレフィン(A)と40重量%以下の高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)で形成される。内層が樹脂(C)で形成される場合、外層は樹脂(C)で形成してもよいし、樹脂(C)以外の樹脂で形成してもよい。また、外層が樹脂(C)で形成される場合、内層は樹脂(C)で形成してもよいし、樹脂(C)以外の樹脂で形成してもよい。
本発明においては、外層も内層も、上記樹脂(C)で形成されることが望ましい。
【0108】
樹脂(C)については、既に上述した通りであり、樹脂(C)中に、必要に応じて、前述したアンチブロッキング剤(D)、スリップ剤(E)、防曇剤(F)、さらには従来公知の耐候安定剤、酸化防止剤、防霧剤、無機化合物、帯電防止剤、熱安定剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0109】
中間層
上記多層フィルムを構成する中間層は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高圧法低密度ポリエチレン(B)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体およびアイオノマー樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で形成されていることが好ましい。
ここで、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量が3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%であることが望ましく、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレン含量が99〜70重量%、好ましくは98〜75重量%であることが望ましい。また、アイオノマー樹脂としては、たとえば上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体をNa+ 、Zn++等の金属イオンで架橋した樹脂が挙げられる。
本発明においては、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)を使用することが特に好ましい。
【0110】
この中間層を形成する樹脂は、前述した樹脂単独で構成されていてもよいし、あるいは2種以上の樹脂で構成されていてもよい。さらに、フィルム成形時に発生する耳部や不良品等の成形屑を回収し、この中間層に再使用することもできる。
また、この中間層形成用樹脂には、必要に応じて、防曇剤、酸化防止剤、耐候安定剤、無機化合物等の、前述した添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲内で配合することができる。
【0111】
上記のような外層、中間層および内層からなる多層フィルムは、外層の厚みが通常3〜100μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜70μmの範囲にあり、中間層全体の厚みが10〜150μm、好ましくは20〜120μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲にあり、内層の厚みが3〜100μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜70μmの範囲にあり、かつ、これらの層全体の厚みが60〜200μm、好ましくは60〜160μmの範囲にある。
【0112】
このような多層フィルムにおいては、外層[I]、中間層全体[II]および内層[III] の各層の厚みの比(外層[I]/中間層全体[II]/内層[III] )は、0.2〜4/1〜10/1、好ましくは0.5〜2/2〜6/1であることが望ましい。
【0113】
上記のような多層フィルムは、ヘイズ(ASTM D 1003)が10%未満であり、かつ、グロス(ASTM D 523)が90%以上である。
【0114】
このような多層フィルムは、各層で使用するポリエチレン系樹脂および上述した添加剤等の成分をそれぞれ混合し、バンバリーミキサーまたはロールミル、押出機等で溶融混合し、次いで、共押出しフィルム成形法により、外層、中間層および内層を積層することによって調製することができる。この際、水冷インフレーション成形法を採用する。その成形条件は、上述した単層構造の農業用フィルムにおける水冷インフレーション成形条件と同じである。
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のポリオレフィン系樹脂製フィルムからなる農業用フィルムと比べ、特に展張初期の光学特性および展張作業性に優れた農業用フィルムが得られる。すなわち、透明性および表面光沢性に優れるとともに柔軟性に優れた農業用フィルムが得られる。
【0116】
本発明に係る農業用フィルムは、上記のような効果を有するので、ハウス、トンネル等の農園芸施設に展張し、有用作物の栽培に長期に亘って利用することができる。
【0117】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0118】
なお、実施例および比較例における農業用フィルムの評価は、下記のようにして行なった。
(1) ヘイズ(曇り度)
フィルムの透明性の指標となるヘイズは、ASTM D 1003に準拠して測定した。
(2) グロス(光沢度)
フィルムのグロスは、ASTM D 523に準拠して測定した。なお、多層フィルム全体のグロスは、フィルムの角度を20°にして本発明の樹脂(C)で形成された内層側から測定した。
(3) 開口性
インフレーション成形後、2つのロール間で畳まれたチューブ状のフィルムについて、その切り口を指で開けて開口性の難易度を調べた。
【0119】
【参考例1】
エチレン・ 1- ヘキセン共重合体の調製
[オレフィン重合用触媒の調製]
250℃で10時間乾燥したシリカ5.0kgを80リットルのトルエンで懸濁状にした後、0℃まで冷却した。その後、メチルアルミノオキサンのトルエン溶液(Al;1.33モル/リットル)28.7リットルを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0℃に保った。引続き0℃で60分間反応させ、次いで、1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で20時間反応させた。その後60℃まで降温し上澄液をデカンテーション法により除去した。
【0120】
このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン80リットルで再懸濁化した。この系内へビス(1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr;34.0ミリモル/リットル)7.4リットルおよびビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr;28.1ミリモル/リットル)1.0リットルを80℃で30分間かけて滴下し、更に80℃で2時間反応させた。その後、上澄液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、1g当り3.6mgのジルコニウムを含有する固体触媒を得た。
[予備重合触媒の調製]
1.7モルのトリイソブチルアルミニウムを含有する85リットルのヘキサンに、上記で得られた固体触媒0.85kgおよび1-ヘキセン255gを加え、35℃で12時間エチレンの予備重合を行なうことにより、固体触媒1g当り10gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒を得た。このエチレン重合体の極限粘度[η]は1.74dl/gであった。
[重合]
直列に結合した2器の連続式流動床気相重合装置を用い、上記予備重合触媒の存在下に、エチレンと1-ヘキセンとの共重合を行なってエチレン・1-ヘキセン共重合体を得た。
【0121】
上記のようにして得られたエチレン・1-ヘキセン共重合体は、1-ヘキセン含量が7.5重量%であり、密度が0.928g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)が1.63g/10分であり、GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn)が3.5であった。
【0122】
また、この共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク一の温度[Tm]が120℃であり、室温におけるn−デカン可溶成分量分率[W]が0.25重量%であった。
【0123】
この共重合体についてGPC−IR分析で測定した上述のB1 は12.2/1000C(炭素原子1000個当たり12.2)であり、B2 は9.9/1000Cであった。
【0124】
【参考例2】
参考例1と同様の方法で第1表に示すようなエチレン・1-ヘキセン共重合体を得た。
【0125】
【表1】
Figure 0003795196
【0126】
【参考例3】
第1表に示す樹脂、第2表に示すフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム、耐候安定剤、スリップ剤およびアンチブロッキング剤を用いて、第2表に示す条件で、厚み100μmの単層フィルムを水冷式インフレーション成形法により下記の条件で成形した。ただし、下記の3層機のうち、1層のみを使用した。
[水冷式インフレーション成形条件]
成形機 : プラコー社製水冷式3層機
ダイ口径 : 150mmφ
リップ幅 : 2.5mm
成形温度 : 160℃
バブルの膨比 : 0.93
バブルのドラフト率 : 23
冷却水温度 : 25℃
サイジング高さ : 350mm
上記のようにして得られたフィルムの物性を第2表に示す。
【0127】
【比較例1】
第1表に示す樹脂、第2表に示すフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム、耐候安定剤、スリップ剤およびアンチブロッキング剤を用いて、第2表に示す条件で、厚み100μmの単層フィルムを空冷式インフレーション成形法により下記の条件で成形した。ただし、下記3層機のうち、1層のみを使用した。
[空冷式インフレーション成形条件]
成形機 : プラコー社製3層機
ダイ口径 : 75mmφ
リップ幅 : 1.0mm
成形温度 : 190℃
バブルの膨比 : 1.8
白化高さ : 400mm
上記のようにして得られたフィルムの物性を第2表に示す。
【0128】
【表2】
Figure 0003795196
【0129】
【実施例1〜3】
第1表に示す樹脂(フェノール系酸化防止剤[商品名 イルガノックス 3114、チバガイギー社製]0.05重量%、リン系酸化防止剤[商品名 イルガホス 168、チバガイギー社製]0.10重量%、およびステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]0.10重量%を含む)を用いて、第3表に示す条件で、厚み100μmの3層フィルムを水冷式インフレーション成形法により下記の条件で成形した。
[水冷式インフレーション成形条件]
成形機 : プラコー社製水冷式3層機
ダイ口径 : 150mmφ
リップ幅 : 2.5mm
成形温度 : 160℃
バブルの膨比 : 0.94
バブルのドラフト率 : 24
冷却水温度 : 25℃
サイジング高さ : 350mm
厚さ : 層全体100μm
(内層/中間層/外層=20μm/60μm/20μm)
上記のようにして得られたフィルムの物性を第3表に示す。
【0130】
【比較例2および3】
第1表に示す樹脂(フェノール系酸化防止剤[商品名 イルガノックス 3114、チバガイギー社製]0.05重量%、リン系酸化防止剤[商品名 イルガホス 168、チバガイギー社製]0.10重量%、およびステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]0.10重量%を含む)を用いて、第3表に示す条件で、厚み100μmの3層フィルムを空冷式インフレーション成形法により下記の条件で成形した。
[空冷式インフレーション成形条件]
成形機 : プラコー社製3層機
ダイ口径 : 75mmφ
リップ幅 : 1.0mm
成形温度 : 190℃
バブルの膨比 : 1.8
白化高さ : 400mm
厚さ : 層全体100μm
(内層/中間層/外層=20μm/60μm/20μm)
上記のようにして得られたフィルムの物性を第3表に示す。
【0131】
【表3】
Figure 0003795196
【0132】
第3表中の樹脂(I)および(II)は、フェノール系酸化防止剤[商品名 イルガノックス 3114、チバガイギー社製]0.05重量%、リン系酸化防止剤[商品名 イルガホス 168、チバガイギー社製]0.10重量%およびステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]0.10重量%を含む。
【0133】
また、第3表における添加剤は次の通りである。
耐候安定剤:商品名 キマソーブ 944、チバガイギー社製;HALS系安定剤
ハイドロタルサイト:商品名 DHT−4A、協和化学(株)製;保温剤
非イオン系界面活性剤(実施例2、3、比較例2、3):
グリセリンモノステアレート20%と、ジグリセリンモノおよびジステアレート60%と、ポリオキシエチレンソルビタンモノおよびジステアレート20%とからなる混合物;防曇剤
非イオン系界面活性剤(実施例4):
グリセリンモノステアレート25%と、ジグリセリンモノおよびジステアレート70%と、ジエタノールステアリルアミン5%とからなる混合物;防曇剤
【0134】
【実施例4】
参考例3に記載の方法で単層フィルムの成形を繰り返した。この際、インフレーションフィルムの冷却水に、無機系防曇剤としてコロイダルシリカ[商品名スノーテックス 2
0、日産化学工業(株)製]1%とアクリル樹脂系エマルジョン(樹脂分30%)3%を添加して、サーキュラーダイから下向きに押出されてきたチューブ状フィルムを冷却した
。その後、100℃に設定した乾燥機中で30分間乾燥し、チューブ状フィルムの外表面に防曇剤組成物の被膜を形成させた。
【0135】
このようにして得られたフィルムおよび参考例3で得られたフィルムについて防曇性の評価を次のようにして行なった。すなわち、300ml容量のビーカーに50℃の温水を100ml入れ、前記のフィルムでビーカーの口を覆った。実施例5で得たフィルムでは、防曇剤組成物の被膜が形成されている表面側をビーカーの内面に向けてビーカーの口を覆った。その後、このビーカーを5℃の冷蔵庫に入れ、10分後に冷蔵庫から取り出し、ビーカー側のフィルム面への水滴状態を肉眼で観察した。その結果を第4表に示す。
【0136】
【表4】
Figure 0003795196

Claims (16)

  1. 外層と内層とからなる2層、または外層と1層以上の中間層と内層とからなる3層以上の多層フィルムであり、
    該外層および内層の少なくとも一方は、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合して得られ、密度が0.928〜0.940g/cm3であり、メルトフロ
    ーレートが0.1〜10g/10分であるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる樹脂(C)、または
    該エチレン・α- オレフィン共重合体(A)と40重量%以下の量の高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物からなる樹脂(C)で形成され、樹脂(C)が、ヒンダードアミン系光安定剤を樹脂(C)100重量部に対して、0.005〜5重量部含み、且つ、
    (i)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜5.0の範囲にあり、
    (ii)23℃におけるn-デカン可溶成分量分率(W(重量%))と密度(d(g/cm3 ))とが、W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
    (iii) GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1 、低分子量側の分岐数の平均値をB2 とするとき、B1 ≧ B2 であり、
    当該樹脂(C)の溶融温度を150〜200℃の範囲で水冷式インフレーション法により形成され、
    該多層フィルムは、
    (i) フィルム全体の厚みが60〜200μmであり、
    (ii)ヘイズ(ASTM D 1003)が10%未満であり、
    (iii) グロス(ASTM D 523)が90%以上である
    ことを特徴とする農業用フィルム。
  2. 前記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)が、メタロセン系触媒を用いて調製されたエチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の農業用フィルム。
  3. 前記樹脂(C)が、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、アンチブロッキング剤(D)および/またはスリップ剤(E)をそれぞれ0.01
    〜3.0重量部含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の農業用フィルム。
  4. 前記アンチブロッキング剤(D)が、シリカまたはゼオライトであることを特徴とする請求項3に記載の農業用フィルム。
  5. 前記スリップ剤(E)が、ステアリン酸アミドまたはエルカ酸アミドであることを特徴とする請求項3に記載の農業用フィルム。
  6. 前記樹脂(C)が、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)またはエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合物100重量部に対して、防曇剤(F)を0.01〜5.0重量部含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の農業用フィルム。
  7. 前記多層フィルムを構成する中間層が、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高圧法低密度ポリエチレン(B)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、およびアイオノマー樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の農業用フィルム。
  8. 前記樹脂(C)で形成された外層および/または内層を有する多層フィルムの少なくとも一方の外表面に、さらに無機系防曇剤組成物の被膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の農業用フィルム。
  9. 前記無機系防曇剤組成物が、無機親水性コロイド物質からなることを特徴とする請求項8に記載の農業用フィルム。
  10. 前記無機系防曇剤組成物が、無機親水性コロイド物質とバインダー樹脂成分とからなることを特徴とする請求項9に記載の農業用フィルム。
  11. 前記無機親水性コロイド物質が、コロイダルシリカまたはコロイダルアルミナであることを特徴とする請求項9または10に記載の農業用フィルム。
  12. 前記樹脂(C)で形成された層を有する請求項1に記載の農業用フィルムを、バブルの膨比0.5〜2.0、チューブラーフィルムの冷却水温度10〜60℃およびバブルのドラフト率5〜100の条件で、水冷インフレーション成形して得ることを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
  13. 前記樹脂(C)で形成された層を有するフィルムを、サーキュラーダイからインフレーション成形法で下向きに押出し、次いで無機系防曇剤組成物を添加した水槽に通して冷却しつつ引き取り、その後フィルム表面を乾燥することを特徴とする請求項12に記載の農業用フィルムの製造方法。
  14. 前記無機系防曇剤組成物が、無機親水性コロイド物質からなることを特徴とする請求項13に記載の農業用フィルムの製造方法。
  15. 前記無機系防曇剤組成物が、無機親水性コロイド物質とバインダー樹脂成分とからなることを特徴とする請求項14に記載の農業用フィルムの製造方法。
  16. 前記無機親水性コロイド物質が、コロイダルシリカまたはコロイダルアルミナであることを特徴とする請求項14または15に記載の農業用フィルムの製造方法。
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