JP3795163B2 - パイプ円周自動溶接装置におけるショートアーク左右倣い補正方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイプ円周自動溶接方法および制御装置に係り、特に、ショートアーク溶接における左右倣い補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスパイプライン敷設工事の際には、突き合わせて固定されている2本のパイプの端面を全周溶接により接続する。この溶接を自動溶接により行う場合は、パイプにベルト状のガイドレールを巻き、このガイドレール上に溶接ヘッドを走らせMAG(メタル・アクティブ・ガス)法等により溶接している。
【0003】
従来、アーク溶接には大別して、パルスアーク溶接とショートアーク溶接とがある。
【0004】
パルスマグ溶接では、図13(a)に示すようなパルス状の電流を用いる。その溶滴移行は、臨界電流より高く鋭いパルス電流によりワイヤ先端の溶滴にピンチ力が働き、パルスに同期して、好ましくは1パルス1溶滴の移行が行われる。
【0005】
ショートアーク溶接では、図13(b)に示すようにその溶接電流は非パルス状の電流波形を有し、アークにより溶かされたワイヤ先端の溶滴が溶融池表面と接触して母材へ移行する”短絡移行”によって溶接が行われる。この場合、溶接電源には、通常、定電圧特性の電源が採用されているため、溶滴が短絡すると高い短絡電流が流れ、電磁ピンチ力により短絡部が細く絞られて、短絡が破れ、アークが再生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
パルスアーク溶接は高電流による高溶着量の溶接が可能であるため、高速の溶接が可能である。しかし、低電流域では不安定となり、ビード形成の美観等を考慮してゆっくりとした溶接を行いたい場合には適さない。特に、裏波層、仕上げ層あるいは上向き姿勢等の溶接時には、パルスアーク溶接ではなく、ショートアーク溶接を用いたい場合がある。
【0007】
このショートアーク溶接のアーク倣い、特に左右倣いの補正では、ウィービングの左右端の平均電流値の差に基づいて左右倣い補正を行うことを試したが、必ずしも良好な結果が得られなかった。この理由は必ずしも定かでないが、アークショート(短絡)の発生が平均電流値に影響を与えるからではないかと推測される。
【0008】
そこで、本発明は、ショートアーク溶接におけるより適切な左右倣い補正を実現する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者等は、ショートアーク溶接において、ウィービングの左右のズレとアークショート(短絡)回数の関係を実験により調べた。その結果を図5に示す。同図から分かるように、ウィービング中心を開先中心に一致させた場合(No.1)、左右端および左右の短絡回数の有為な差はみられない。これに対し、ウィービング中心を開先中心から左へずらした場合(No.2)、左端および左の区間の短絡回数がそれぞれ右端および右の区間のそれより有意に少なくなっていることが分かる。同様に、ウィービング中心を開先中心から右へずらした場合(No.3,4,5)、右端および右の区間の短絡回数がそれぞれ左端および左の区間のそれより有意に少なくなっていることが分かる。
【0010】
この理由は明確ではないが、本発明者等は、この実験結果に基づいて、アークショート回数に基づく左右倣い補正を行うことに想到した。
【0011】
すなわち、本発明は、突き合わせて固定されている2本のパイプの端面をショートアーク溶接法により全周溶接する際、パイプの開先に沿って少なくともパイプ円周の接線に直交する左右方向および上下方向にトーチの2次元ウィービングを行う自動溶接装置の左右アーク倣い補正方法であって、溶接電圧からウィービングの1周期の左端および右端におけるアークショート発生回数を求め、該求められた左端および右端のアークショート回数の差に基づいて、該差を相殺する方向に、当該差に応じた補正量だけトーチのウィービング中心をずらすようウィービングを制御することを特徴とする。
【0012】
前記トーチのウィービング中心をずらす方向は、左端および右端のアークショート回数の多い端の方向である。
【0013】
前記トーチのウィービング中心を1回にずらす補正量は、例えば、アークショート回数の差1回につき予め定められた量である。
【0014】
本発明によれば、ショートアーク溶接においてより正確な左右倣い補正を行うことが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1により本発明の溶接装置の概略構成について述べる。パーソナルコンピュータ1は、自動溶接制御のためのCADデータ(パイプの外径、板厚、材質、開先形状などの設計値)を作成するためのものであり、作成されたデータはフレキシブルディスク(フロッピーディスク)1aに記録される。制御装置2は、自動溶接の実質的な制御(電源およびトーチ位置等の制御)を行うためのものであり、CADデータの格納されたフレキシブルディスク1aからそのCADデータを読み込む。勿論、フレキシブルディスクによらず、周知のデータ通信によってデータ転送を行うようにしてもよい。制御装置2は、この読み込んだデータを用いて実際の溶接条件を設定し、設定された条件に対応して、後述するロジックテーブルに予め記録されたデータにより各種溶接パラメータを設定する。
【0017】
さらに、この制御装置2では、設定された溶接パラメータを実際の溶接の制御に用いるNC言語(数値制御用言語)に変換し、変換した言語を制御データとして制御データテーブルの形で内部のメモリに記録する。このメモリに記録された制御データを用いて、電源装置3、及び溶接ヘッド4を駆動制御する構成となっている。なお、制御装置2の主な制御項目は、溶接ヘッド4の溶接の電圧、電流、及びヘッド4に搭載された溶接トーチ8のパイプ開先93(図9参照)に対するウィービング、溶接ヘッド4の移動速度等である。ヘッド4は、パイプ外周に巻き付けられたガイドレール12上に、円周方向に移動可能に装着される。ヘッド4には、溶接トーチ8に対して溶接ワイヤを供給するワイヤ供給部6が搭載されている。
【0018】
図2に、制御装置2および電源3の内部構成、ならびにこれらとヘッド4のトーチ8およびパイプ5との間の電気的な接続関係を示す。電源3からは、送電ケーブル(図示せず)を介して、ヘッド4のワイヤ7とパイプ5との間に溶接電圧が印加されるようになっている。これにより、ワイヤ7とパイプ5表面との間にアークが発生する。溶接用ワイヤ7は一定速度で送られ、アークにより溶かされて溶着金属となり、開先内で固まり母材5を接合する。
【0019】
制御装置2は、予め定められた溶接条件および溶接パラメータが、ロジックテーブル(後述)としてテーブル形式で格納された溶接データベースを記憶したハードディスクのような記憶装置201を有する。これに対して、電流I、電圧V、ワイヤー径、ワイヤー銘柄等の各種の入力情報が与えられ、これらに応じた溶接用NC動作指令が運転プログラム203の形で得られる。この運転プログラム203はCPU205により実行される。CPU205は溶接電源3に対する各種の指令を出力する機能、芯線速度情報の受信、電流/電圧波形計測等の機能を実現する。なお、CPU動作時に利用されるメモリは図示しないがCPU205内または外部に含むものとする。溶接電源の各種指令には、指令電流値I10、ベース電流値Ib、チャンネル選択情報、電流パルス幅tp、指令電圧値V10が、それぞれDA変換器211、212、チャンネル選択部213、DA変換器214、215を介して電源3へ供給される。
【0020】
なお、本例の装置は、パルスアーク溶接モードとショートアーク溶接モードを選択的に共用できるようにしたものであり、ショートアーク溶接モードで動作する場合には、ベース電流およびパルス幅の指令は不要である。また、電源3の溶接モードを切り替えるため、溶接モード切替指令MODEが電源3へ供給される。
【0021】
後述するタコジェネレータTGの出力ItgはAD変換器216を介してCPU205へ取り込まれる。制御装置2は、電源からの電流フィードバック(FB)波形Ifbおよび電圧フィードバック波形Vfbを受けて各種の波形パラメータを計測するパルス計測回路217を有する。このようなパルス計測回路217は、溶接電流波形および溶接電圧波形から各種のパラメータを実測して、アーク倣い補正等に利用するためのものであり、ショートアーク溶接モードにおいても、溶接電圧波形からアークショートの発生を検出するために用いる。
【0022】
溶接電源3は、制御装置2からの電流指令301を増幅器303を介してワイヤ供給部6のモータMへ供給する。モータMの回転速度を検出するタコジェネレータTGの速度フィードバック信号は前述したように、制御装置2のAD変換器216へ供給される。溶接電源3は、溶接モード切替指令MODEを受けて、パルス溶接モードとショートアーク溶接モードのいずれでも動作可能であり、電力制御部3051および制御ロジック部3052を含む制御部305を有する。この制御部305は、パルスアーク溶接モードにおいて、制御装置2からのベース電流Ib306、パルス電流Ip309、パルス幅tp、電圧指令311を受けて、これらの条件に合致するパルス出力をヘッドへ供給する。パルス電流Ip309は、制御装置2からのチャンネル選択情報307によりROMテーブル308内の複数のパルス電流設定値のうちの1つを選択したものである。ROMテーブル308は、図ではその出力としてパルス電流Ipのみを示しているが、パルス電流Ipおよびパルス幅tpの組を出力する。パルス幅tp310は、ROMテーブル308から出力されるパルス幅tpの微調整量を示す。また、電源3は、ショートアーク溶接モードにおいて、電圧指令311に応じた電圧出力をヘッドへ供給する。溶接電流フィードバック値SI10および溶接電圧フィードバック値SV10は、それぞれ電流メータ314および電圧メータ313でそれらの平均値が検出されるとともに、前述したパルス計測回路217へ供給される。
【0023】
次に、図6及び図7により、本溶接装置で行う、トーチの2次元ウィービングの例を説明する。図6は、横軸を時間としてY軸位置およびZ軸位置の変化を示したものであり、図7は、X軸方向に沿ってウィービング動作の移動経路を示したものである。ウィービング動作は、図のように、トーチをY軸およびZ軸方向に所定の幅・周期で往復運動させ、トーチの軌跡を波状にするものである。この例では、前述のように、ウィービングの左端(L)、中央(C)、右端(R)で一時的に停止させている。図7の左右での斜めの移動時の速度と、水平移動時の速度とは別個に指定可能である。速度は、ワイヤ先端の移動軌跡に沿った速度(接線速度)で指定される。
【0024】
図8は、ウィービングの指令軌跡と実際のトーチの移動の軌跡(サーボ軌跡)とを対比して示したものである。図の横軸は時間、縦軸はY軸方向位置を示す。図から分かるように、トーチの移動指令に対するサーボ機構の応答の遅延に起因して、サーボ軌跡は指令軌跡より遅れて追従している。図の例では、ウィービング幅(Y軸方向の移動範囲)を、右端、右、中心、左、左端の5区間に分けて、後述する各種データのサンプリングを行っている。各区間の判定は、Y軸エンコーダの出力に応じて、実際の機械的なトーチ位置を示すサーボ軌跡を基に行われる。各区間の境界には、誤差低減のために不感帯を設けてもよい。
【0025】
後述するアーク倣い関連補正では、ウィービングの位置に応じて、左端・右端アークショート時間を求める。なお、アークショートとは、溶接ワイヤ(電極)と母材や溶融金属との間隔が短くなりすぎて、両者の間に短絡(ショート)が生じた状態のことである。
【0026】
図9に、計測用回路211のハードウエア構成例を示す。
【0027】
溶接用電源装置3は、溶接トーチ8に溶接電流を供給する。溶接電流/電圧計測用回路211は、電源装置3から溶接電流信号13および溶接電圧信号32を得て、それぞれフィルター14および33に入力する。なお、本明細書でいう「電圧信号」および「電流信号」は、それらの信号がそれぞれ溶接電圧を表わす信号および溶接電流を表す信号という意味であり、信号が電圧レベルおよび電流レベルで表されるという意味ではない。通常、これらの電圧信号および電流信号は電圧レベルで表される。
【0028】
図10に溶接電流/電圧信号の一例(フィルター入力)を示す。同図において(a)は電圧信号32、(b)は電流信号13を示す。電圧信号32は、所定周期の波形であり、高周波のノイズ成分15が重畳している。また、この波形のベース電圧部分51には、アークショートの発生を示す電圧低下波形部分50が示されている。この電圧信号32に対応する電流信号13も、電圧信号32と同様に高周波ノイズ成分15を含んでいる。溶接電流信号13には、高周波のノイズ成分15が重畳しており、電圧信号32の波形部分50に対応した波形部分52が示されている。フィルター14および33は、前述したように電源のパルス周波数よりも高いカットオフ周波数(例えば4KHz)を有するものであり、高周波のノイズ成分15を取り除き、溶接電流信号16および溶接電圧信号34を出力する。これにより、高周波ノイズによる電気的特性計測の誤動作を防止することができる。また、このようなカットオフ周波数のフィルターを用いることにより、電流信号13および電圧信号32の波形を維持することができ、後述する方法によりパルス単位の電気的特性の計測を可能とする。
【0029】
図11に、フィルター14および33により出力される溶接電流/電圧信号の一例を示す。同図において(a)は電圧信号、(b)は電流信号を示す。フィルター14、33により電圧信号32および電流信号13からそれぞれの高周波のノイズ成分15を取り除いたものが溶接電流信号16、溶接電圧信号34である。同図中、I1は電流信号のピーク値、E2は電圧信号のベース電圧、T1は電流信号(および電圧信号)のパルス幅、T2は電流信号(および電圧信号)のベース幅、T3は電圧信号(および電流信号)のアークショート幅(アークショート時間)、T4は電流信号(および電圧信号)の繰り返し周期、H1は電流信号16に対するパルス幅及びベース幅計測用スレショルドレベル信号22のレベル、H2は電圧信号34に対するアークショート幅計測用スレショルドレベル信号38のレベルである。
【0030】
図9の計測用回路211中のピークホールド回路17は、タイミング信号20で決まる時間間隔毎に、フィルター14から出力される溶接電流信号16のピーク値を検出、保持する。このピーク値は、タイミング信号20にしたがってA/D変換回路18によりディジタル信号19に変換される。なお、タイミング信号20は、後述する割込回路24による制御装置2への割込に応じて制御装置2が出力する。
【0031】
コンパレータ21は、制御装置2から与えられるスレショルドレベル信号22と溶接電流信号16とを比較し(図11(b)参照)、溶接電流信号16がスレショルドレベル信号22を越えた時に、その出力信号23を低レベルとし、溶接電流信号16がスレショルドレベル信号22より小さくなった時に、出力信号23を高レベルとする。割込回路24は、出力信号23の立ち下がりエッジで制御装置2へ割込信号を出力する。これにより、制御装置2は、溶接電流信号13のパルス波形の立ち上がりを認識し、前述したタイミング信号20を発生する。後述するように、これを高速ウィービング時におけるアーク中溶接線倣い制御等の処理のためのタイミングとして利用することができる。出力信号23はカウンタ25に入力され、反転回路27による出力信号23の反転信号はカウンタ30に入力される。カウンタ25は、出力信号23が高レベルの期間(すなわち、電流信号16がスレショルド信号22より低レベルの期間)、イネーブルされ、制御装置2からのクロック信号43を計数する。これによって、電流信号16の時間T2が求められ、ベース幅26として出力される。一方、カウンタ25は、出力信号23が低レベルの期間(すなわち、電流信号16がスレショルド信号22より高レベルの期間)、イネーブルされ、制御装置2からのクロック信号44を計数する。これによって、電流信号16の時間T1がもとまり、パルス幅31として出力される。このパルス幅31に基づいて、パルス訛りを防止することができる。パルス周期T4は、時間T1と時間T2の加算処理により求められる。あるいは指令値からパルス周期を求めることもできる。
【0032】
コンパレータ37は、制御装置2から与えられるアークショート用スレショルドレベル信号38と電圧信号34とを比較し(図11(a)参照)、電圧信号34がアークショート用スレショルドレベル信号38より小さくなった時に、その出力信号39を高レベルとし、電圧信号34がスレショルドレベル信号38を越えた時に、出力信号39を低レベルとする。カウンタ41は出力信号39が高レベルの期間、制御装置2からのクロック信号45を計数する。これによって、電圧信号34の時間T3が求められ、アークショート幅42として出力される。スレショルドレベル信号22、アークショート用スレショルドレベル信号38は、溶接作業条件の変化(パイプ径、鋼種等)に応じて、制御装置2により可変制御できる。なお、46は電流/電圧計測用回路211と制御装置2との間の信号であり、前述した各種の信号を含む。
【0033】
なお、高精度な計測を行うためには当然ながら、クロック信号43、44、45としては、被計測対象の時間幅に比べて十分短い周期を有するものを用いる。
【0034】
図12は、図9に示した計測用回路211の各信号に関するタイミングの概要を示したものである。16、34はフィルター14、33の出力で、図11に示したものと同じである。このフィルター14から出力される電流信号16の立ち上がりエッジでコンパレータ21の出力信号23が立ち下がり、これにより前述した割込回路24が制御装置2に割込をかける。制御装置2はこれに応答してタイミング信号20を発生する。このタイミング信号20により、ピークホールド回路17の出力がリセットされ、続いて、次のタイミング信号20発生までの間、信号16のピーク値を検出し保持する。この例では、ピーク値は信号16のパルスの高レベルの値であり、これが次のタイミングパルス信号20の発生まで保持される。コンパレータ21の出力信号23は、電流信号16のベース幅時間T2の期間高レベルとなり、この期間が前述のようにカウンタ25により計測される。反転回路27の出力信号28は出力信号23を反転した波形であり、その高レベル期間が電流信号16のパルス幅時間T1に相当する。この時間T1は、前述のようにカウンタ30により計測される。コンパレータ37の出力信号39は、電圧信号34のアークショート時間T3の間、高レベルとなり、この時間T3が前述したカウンタ41により計測される。
【0035】
なお、図示の例では、アークショート幅と、パルス幅・パルス周期の計測を同じ低域通過フィルターの出力で行ったが、パルス幅・周期の方を若干低いカットオフ周波数(例えば1kHz)の別のフィルターを用いて、ノイズによる誤動作を低減するようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明によるショートアーク左右倣い補正について、以下に説明する。溶接電流、溶接電圧の計測に基づく各種データのサンプリングは、平均電流・電圧値計測処理/波形計測処理と、インターバルタイマ処理の2段階で行う。平均電流・電圧計測処理は、一定周期(例えば1ms)毎に起動される処理であり、前述した低いカットオフ周波数にて平滑化された電流電圧フィードバック値を読み出し、前記誤差を加味した値を求める。波形計測処理は、フィードバックパルス周期(計測されたパルス周期)毎に起動され、前述した溶接電流電圧波形に基づいて検出されたピーク電流・電圧値、パルス周期、ピークパルス幅、アークショート時間を読み出す。インターバルタイマ処理は、一定周期(例えば4ms)毎に起動され、波形計測処理より出力される電流・電圧・アークショート時間値を平均化する。このインターバルタイマ周期は、サーボ制御周期とも呼ぶ。また、ウィービング動作中は、ウィービング位置に応じて、右端、右、中、左、左端の各区間の各種平均値を求める。ウィービング動作中でない場合は、32ms分(8個)のデータの平均化を行う。
【0037】
但し、本実施の形態におけるショートアーク左右倣い補正においては、図4に示したような溶接電圧波形から検出したアークショート時間(短絡時間)の情報のみを用いる。
【0038】
図3に、本実施の形態におけるショートアーク左右倣い補正の処理のフローチャートを示す。
【0039】
この処理において、まず、溶接電圧32の電圧波形測定に基づいてアークショート時間を測定する(301)。そこで、ウィービング1周期内の左端と右端の区間における各アークショートの発生回数(アークショート回数すなわち短絡回数)を求める(302)。具体的には、単位時間当たりの左端アークショート回数および右端ショートアーク回数を求める。この結果に基づいて、左右アーク倣い補正を行い(303)、その補正量を求める(304)。すなわち、左端アークショート回数および右端ショートアーク回数の差を算出し、この差が予め定めた閾値を超えた場合に、所定の量だけそれを相殺する側に、ウィービング中心位置をずらす操作を行う。より具体的には、短絡回数がより多い端の方向へウィービング中心位置をずらす。前述の実験結果によれば、開先壁により近い方の端でのアークショート回数が減少すると考えられるからである。一度にずらす補正量は、アークショート回数の差1回につき例えば1μmないし2μmである。
【0040】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、システム構成および処理の具体的内容は例示であり、請求の範囲を逸脱することなく種々の変形・変更が可能である。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ウィービングの左右端のアークショート発生回数の差に基づいてショートアーク左右倣い補正を行うようにしたので、より精度の高い左右倣い補正が行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパイプ円周自動溶接装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】図1に示した制御装置および溶接用電源の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明によるショートアーク溶接における左右倣い制御のフローチャートである。
【図4】ショートアーク電圧波形を示す波形図である。
【図5】ショートアーク溶接モードにおける左右倣い実験の結果を示す説明図である。
【図6】図1の溶接装置で行われるウィービング動作におけるトーチ位置の時間的変化を示すタイミング図である。
【図7】図6のウィービング動作におけるトーチの軌跡の説明図である。
【図8】ウィービング動作における指令軌跡とサーボ軌跡の関係を示すタイミング図である。
【図9】図2に示したパルス計測回路217の構成例を示すブロック図である。
【図10】図9のパルス計測回路217が測定する電圧信号及び電流信号を示す波形図である。
【図11】図10のフィルタリング後の電圧信号及び電流信号を示す波形図である。
【図12】図9のパルス計測回路217の動作を説明するためのタイミング図である。
【図13】パルスアーク溶接のパルス電流波形と、ショートアーク溶接のショートアーク電流波形とを示す波形図である。
【符号の説明】
1…コンピュータ、2…制御装置、3…電源装置、4…ヘッド、5…パイプ、6…ワイヤ供給部、7…ワイヤ、8…溶接トーチ、12…ガイドレール。
Claims (3)
- 突き合わせて固定されている2本のパイプの端面をショートアーク溶接法により全周溶接する際、パイプの開先に沿って少なくともパイプ円周の接線に直交する左右方向および上下方向にトーチの2次元ウィービングを行う自動溶接装置の左右アーク倣い補正方法であって、
溶接電圧からウィービングの1周期の左端および右端におけるアークショート発生回数を求め、
該求められた左端および右端のアークショート回数の差に基づいて、該差を相殺する方向に、当該差に応じた補正量だけトーチのウィービング中心をずらすようウィービングを制御することを特徴とするパイプ円周自動溶接装置の左右アーク倣い補正方法。 - 前記トーチのウィービング中心をずらす方向は、左端および右端のアークショート回数の多い端の方向であることを特徴とする請求項1記載のパイプ円周自動溶接装置の左右アーク倣い補正方法。
- 前記トーチのウィービング中心を1回にずらす補正量は、アークショート回数の差1回につき予め定められた量であることを特徴とする請求項1または2記載のパイプ円周自動溶接装置の左右アーク倣い補正方法。
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