JP3794949B2 - タンクの電着塗装・焼付乾燥方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタンクの電着塗装と焼付乾燥とを連続して行なう方法に関し、詳しくは電着塗装工程でタンク内部に電着液が侵入するのを防止し、焼付乾燥工程で熱膨張によるタンク変形を防止するようにしたタンクの電着塗装・焼付乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タンクを電着塗装する際には、タンクの穴を栓治具を用いて密閉することで、タンク内部に電着液や水洗液が入らないようにしている。例えば図6に示すように、上部に2個の穴を下部に1個の穴を備えたタンク101の場合は、各穴にそれぞれ専用の栓治具102,103,104をそれぞれ取り付けることで、タンク101内を完全に密閉し、この完全密閉状態で電着塗装及び焼付乾燥を行なっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図7は従来のタンクを完全密閉した状態で電着塗装を行なう場合の課題を示す図である。タンク内への入水防止の為にタンクを完全密閉した場合、乾燥炉の温度(約160度)によってタンク内の空気が膨張してタンクが変形してしまう。
【0004】
一方、変形防止の為にタンク内を減圧しておく方法があるが、その内圧管理が困難であるとともに、焼付乾燥条件(温度・時間)の制約が厳しくなる。さらに、減圧のために専用の装置が必要である。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、電着塗装時にタンク内へ電着液等が侵入するのを防止するとともに、焼付乾燥時のタンクの変形を防止することのできるタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法は、タンクの穴にパイプの一端を着脱可能に連結してタンク内部とパイプの内部を連通させ、タンクを電着槽に水没させた際にパイプの大気開放部を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行なった後に、パイプを接続したままの状態で焼付・乾燥を行なう。
【0007】
タンクの穴にパイプを接続しそのパイプの上端を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行なうので、電着液等がタンク内部に侵入することがない。タンク内部はパイプを介して大気側に連通されているので、焼付乾燥時にタンク内の空気が膨張してもタンク内の圧力が上昇することはない。よって、タンクが変形することはない。
【0008】
なお、タンクを吊り下げた状態で移送させる吊り治具に沿ってパイプを配設することで、パイプの固定を確実にすることができる。
【0009】
請求項3に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法は、中空パイプ構造で下端が閉塞された吊り治具にタンク栓治具を介してタンクを着脱可能に連結してタンク内部と吊り治具内部とを連通させ、タンクを電着槽に水没させた際に吊り治具の大気開放部を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行なった後、タンク栓治具を介してタンク内部と吊り治具内部とを連通させたままの状態で焼付・乾燥を行なう。
【0010】
タンク内部と吊り治具内部とを連通させ、吊り治具の大気開放部を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行なうので、電着液等がタンク内部に侵入することがない。タンク内部はパイプを介して大気側に連通されているので、焼付乾燥時にタンク内の空気が膨張してもタンク内の圧力が上昇することはない。よって、タンクが変形することはない。
【0011】
請求項4に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法は、所定の容積を有するチャンバ室の上方にタンクへの連通路を備えるとともにチャンバ室の下方に開口部を備えたチャンバ治具をタンクの穴に着脱可能に連結してタンク内部とチャンバ室を連通させ、タンクにチャンバ治具を連結した状態で電着槽に水没させてタンクの電着塗装を行なった後に、タンクにチャンバ治具を連結したままの状態で焼付・乾燥を行なう。
【0012】
タンクにチャンバ治具を連結した状態で電着槽に水没させるとチャンバ室に電着液が侵入し、電着液が侵入した分だけタンク内部の空気が圧縮されタンク内部の圧力が上昇する。そして、タンク内部の圧力と液圧とが均衡した状態でチャンバ室への電着液の侵入が停止する。これにより、タンク内へ電着液等が侵入することはない。タンク及びチャンバ治具を電着槽から引き上げる際に、チャンバ室に侵入した電着液は流出する。焼付乾燥時にタンク内部はチャンバ治具を介して大気側に連通されているので、タンク内の空気が膨張してもタンク内の圧力が上昇することはない。よって、タンクが変形することはない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2は請求項1に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図である。なお、図1はタンクを電着液に水没させた後の状態、図2は水没させる前の状態を示している。
【0014】
タンク1の一方の側面に設けられた各穴2,3に栓4,5をそれぞれ取り付けて各穴2,3を密閉する。このタンク1を吊り治具6に取り付ける。なお、タンク1を吊り治具6に取り付けた後に、各穴2,3に栓4,5を取り付けてもよい。次に、タンク1の他方の側面に設けられた穴7にパイプ8の下端8aを接続してタンク1の内部とパイプ8の内部を連通させる。
【0015】
パイプ8は吊り治具6に沿って配設されている。符号9はパイプ固定具である。パイプ8はコンベア装置10の近傍まで延設されており、タンク1を電着槽に水没させた状態でパイプ8の上端開口部8bは液面よりも上方に位置する。このように、電着塗装の際にパイプ8の上端開口部8bは液面よりも上方に突出させているので、電着液がタンク1内部に入り込むことはない。
【0016】
電着塗装が終了するとタンク1はコンベア装置10によって下流側の焼付・乾燥工程に搬送され、焼付・乾燥が行なわれる。ここで、タンク1の内部はパイプ8を介して大気側に連通されているので、乾燥炉の温度(約160度)によってタンク1内の空気が膨張してもタンク1内の圧力が上昇することはない。よって、タンク1が変形することはない。
【0017】
そして、焼付・乾燥が終了した後に、タンク1の穴7とパイプ8の下端8aとの接続を外し、吊り治具6からタンク1を取り外した後に、各栓4,5を取り外す。各栓4,5を取り外した後に、タンク1とパイプ8との接続を取り外してもよい。
【0018】
図3は本発明に係る他のタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図である。なお、図3はタンクを電着液に水没させた状態を示している。コンベア装置10には、中空パイプ構造で下端が閉塞された吊り治具11が取り付けられている。この吊り治具11の下端側にはタンク栓治具12が取り付けられている。また、吊り治具11の上端側には大気開放部13が設けられている。この大気開放部13は電着槽の液面よりも上方に設けられている。
【0019】
タンク1の一方の側面に設けられた各穴2,3に栓4,5をそれぞれ取り付けて各穴2,3を密閉する。タンク1の他方の側面に設けられた穴7にタンク栓治具12を接続して穴7を密閉する。タンク栓治具12は内部が中空構造であり、タンク栓治具12の内部は吊り治具11の内部と連通されている。したがって、吊り治具11にタンク栓治具12を介してタンク1を連結することで、タンク1の内部と吊り治具11の内部とが連通される。
【0020】
吊り治具11にタンク栓治具12を介してタンク1を連結した状態で、タンク1を電着槽内に入水させて電着塗装を行なう。ここで、吊り治具11の大気開放部13は液面よりも上方に設けられているので、電着液等がタンク1内に侵入することはない。
【0021】
電着塗装が終了するとタンク1はコンベア装置10によって下流側の焼付・乾燥工程に搬送され、焼付・乾燥が行なわれる。ここで、タンク1の内部はタンク栓治具12及び吊り治具11を介して大気側に連通されているので、乾燥炉の温度(約160度)によってタンク1内の空気が膨張してもタンク1内の圧力が上昇することはない。よって、タンク1が変形することはない。そして、焼付・乾燥が終了した後に、吊り治具11からタンク1を取り外し、各栓4,5を取り外す。
【0022】
吊り治具11を中空パイプで構成し、この中空パイプを大気連通路として利用する構造としたので、図1に示したパイプ8及びパイプ固定具9が不要になる。
【0023】
なお、本実施の形態では、吊り治具11にタンク栓治具12が取り付けられている構造を示したが、タンク1の穴7にタンク栓治具12を取り付けた後に、タンク栓治具12の他端側を吊り治具11のタンク栓治具取り付け部に連結することで、タンク1を吊り治具11に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
図4及び図5は本発明に係る更なる他のタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図である。なお、図4は全体図、図5はタンクを電着液に水没させた状態を示している。
タンク1の一方の側面に設けられた各穴2,3に栓4,5をそれぞれ取り付けて各穴2,3を密閉するとともに、タンク1の他方の側面に設けられた穴7にチャンバ治具14を取り付けた後に、そのタンク1を吊り治具6に取り付ける。なお、タンク1を吊り治具6に取り付けた後に、各栓4,5及びチャンバ治具14を取り付けるようにしてもよい。
【0025】
チャンバ治具14は、所定の容積を有するチャンバ室15と、タンクへの連通路16と、電着液等の出入路となる開口部17とを備える。タンクへの連通路16はチャンバ室15の上方に設けられ、開口部17はチャンバ室15の下方に設けられている。
【0026】
タンク1の穴7に連通路16の先端を接続してチャンバ治具14を連結した状態で、タンク1及びチャンバ治具14を電着液内に水没させて、タンク1の電着塗装を行なう。タンク1及びチャンバ治具14が水没すると、電着液が開口部17を経由してチャンバ室15内に侵入し、電着液が侵入した分だけタンク1の内部の空気が圧縮されタンク1の内部の圧力が上昇する。そして、タンク1の内部の圧力と液圧とが均衡した状態でチャンバ室15への電着液の侵入が停止する。これにより、タンク1内へ電着液等が侵入することはない。
【0027】
タンク1及びチャンバ治具14を電着槽から引き上げる際に、チャンバ室15に侵入した電着液は開口部17から流出する。したがって、焼付乾燥時にタンク1の内部はチャンバ治具14を介して大気側に連通されるので、タンク内の空気が膨張してもタンク内の圧力が上昇することはない。よって、タンクが変形することはない。
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法によれば、電着塗装時にタンク内へ電着液等が侵入するのを防止するとともに、焼付乾燥時にタンクの変形を防止することができる。これにより、タンクの電着塗装と焼付乾燥とを連続して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図
【図2】図1に示した電着塗装・焼付乾燥方法を搬送方向から見た図
【図3】別実施例に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図
【図4】別実施例に係るタンクの電着塗装・焼付乾燥方法を示す図
【図5】図1に示した電着塗装・焼付乾燥方法を拡大して示した図
【図6】従来のタンクの密閉方法を示す図
【図7】従来のタンクを完全密閉した状態で電着塗装を行なう場合の課題を示す図
【符号の説明】
1…タンク、2,3,7…タンクの穴、4,5…栓、6,11…吊り治具、8…パイプ、8a…下端部、8b…上端開口部、9…パイプ固定具、10…コンベア装置、12…タンク栓治具、13…大気開放部、14…チャンバ治具、15…チャンバ室、16…連通路、17…開口部。
Claims (4)
- タンクの穴にパイプの一端を着脱可能に連結してタンク内部とパイプの内部を連通させ、前記タンクを電着槽に水没させた際に前記パイプの大気開放部を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行ない、この後、前記パイプを接続したままの状態で焼付・乾燥を行なうことを特徴とするタンクの電着塗装・焼付乾燥方法。
- 前記タンクは吊り治具によって吊り下げられた状態で移送されるとともに、前記パイプは前記吊り治具に沿って配設されていることを特徴とする請求項1記載の電着塗装・焼付乾燥方法。
- 中空パイプ構造で下端が閉塞された吊り治具にタンク栓治具を介してタンクを着脱可能に連結してタンク内部と吊り治具内部とを連通させ、前記タンクを電着槽に水没させた際に前記吊り治具の大気開放部を液面よりも上方に位置させた状態で電着塗装を行ない、この後、前記タンク栓治具を介してタンク内部と吊り治具内部とを連通させたままの状態で焼付・乾燥を行なうことを特徴とするタンクの電着塗装・焼付乾燥方法。
- 所定の容積を有するチャンバ室の上方にタンクへの連通路を備えるとともに前記チャンバ室の下方に開口部を備えたチャンバ治具をタンクの穴に着脱可能に連結して前記タンク内部と前記チャンバ室を連通させ、前記タンクに前記チャンバ治具を連結した状態で電着槽に水没させて前記タンクの電着塗装を行ない、この後、前記タンクに前記チャンバ治具を連結したままの状態で焼付・乾燥を行なうことを特徴とするタンクの電着塗装・焼付乾燥方法。
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