JP3794623B2 - 珪藻類の生産方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪藻類の生産方法及び珪藻類の生産装置、詳しくは、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材を利用した珪藻類の生産方法及び珪藻類の生産装置、並びに該珪藻類の生産装置を用いた赤潮発生の防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
淡水にも海水にも見い出される代表的な植物プランクトンである珪藻は、単細胞の特殊な形態の藻類で、単細胞性であるが、細胞はすべて二つの行李状に重なった殻に覆われ、外側の殻は上殻、内側の殻は下殻と呼ばれている。これら珪藻の中でも付着性珪藻は、それぞれの種に特異的な付着器をもち、固体表面に付着することによって自身の生活を維持するとともに増殖し種の分布を広げようとすることが知られており、例えば、塩化ビニール板状に付着・増殖する珪藻の微細な分布と分散の様式について、(1)分裂するとともに活発に滑走をして分布を広げているもの、(2)滑走運動が不活発で密集した集落を形成するもの、(3)付着柄や盤状付着器によって強固に付着しながら増殖し、垂直方向に立体的な群体を形成するもの、の3種のパターンがみられることが報告(養殖研報,7,83〜90,1985)されている。
【0003】
従来、これら付着珪藻の増殖方法として、例えば、特開昭59−59129号公報には、日光のあたる海水中に、その表面に珪藻等を繁殖させることができる多数の穴や凹凸を設けたガラス質基板を漁礁構造体に装着してなる人工漁礁が開示されているが、この人工漁礁では表面積が限られている上に、定期的にガラス質基板をブラシなどで清掃する必要があり、凹凸面のブラシ清掃は多大の作業時間と重労働を要するという問題があった。また、特開平9−172890号公報には、ウニやアワビなどの種苗生産を行う際の初期餌料として使用される付着珪藻の増殖させるために、珪藻の付着手段を備える水槽に海水を流入させながら換水するとともに空気を供給することにより珪藻を増殖する方法であって、ケイ素、リン、2価の鉄を一定量以上含む鉄分などからなるガラス状増殖材および窒素肥料を海水の流入位置近傍に配置し、流入する海水や空気によるエアレーションで生じた水流をこの増殖材および窒素肥料に接触させて増殖成分を海水中に溶出させる方法が記載されている。この方法では増殖した珪藻を餌料とすることができるが、餌料としない場合には、珪藻付着部(合成樹脂製波板)表面上の珪藻の増殖には限界があった。
【0004】
他方、植物プランクトン等の異常な大増殖に伴い、水が赤っぽく変色する赤潮現象はよく知られている。赤潮の原因となる主な植物プランクトンとしては、珪藻類と鞭毛藻類を挙げることができるが、植物プランクトンの種類によって漁場や海苔養殖場等の養殖漁業に与える影響が異なり、例えば、これまで珪藻類の増殖によって発生する赤潮が漁業に損害を与えた事例は殆どなく、むしろ、植食生物の餌料として歓迎される場合が多い。しかし、シャットネラ、ヘテロカプサなどの鞭毛藻類の増殖によって発生する赤潮は、養殖漁業等を中心とする漁業に大きな損害を与えることが知られている。珪藻類と鞭毛藻類は共に植物プランクトンであるが、双方が同時に高い密度で共存することが見られないことから、両者は競合関係にあるとされ、日光があたって水温が上昇し、両者が共に増殖する条件が整っている場合には、鞭毛藻類よりも珪藻類の方が優勢であることが知られている。例えば、春になって海水の温度が上昇し、冬の間に蓄積された栄養塩を利用してスプリングブルームと呼ばれる珪藻類の大増殖が起こると、鞭毛藻類による赤潮の発生は抑制される。シャットネラ、ヘテロカプサなどの鞭毛藻類は、発生期である夏季を除く年間の大部分の季節をシスト(胞子)として海底で過ごし、この間はいわゆる休眠状態にあるが、海底の水温が20℃に上昇する初夏に発芽し、この発芽期に表層水中に鞭毛藻類の有力な競争者である珪藻類等が存在しないと、鞭毛藻類が異常に増殖して有害な赤潮が発生すると考えられている。
【0005】
このような珪藻類と鞭毛藻類との相互関係を利用して、赤潮の発生を防止しようとする技術も知られている。例えば、特開平10−94341号公報には、有害赤潮の予防方法として、海面または海中に浮体を設置し、ケイ素を含有したガラス質材料であって、ケイ素の溶出速度の大きいガラス質材料からなる珪藻類の増殖材を前記浮体に装着することによって海水に浸し、周囲の海水中にケイ素を溶出させ、前記ケイ素の供給により珪藻類の増殖を促進させて、周囲の海水中の栄養塩濃度を低下させることにより、鞭毛藻類の増殖を抑制する方法が記載されている。また、特開平11−196697号公報には、人工魚礁・増殖礁・養殖施設を利用した太陽光利用ケーブルによって植物プランクトン増大・藻場造成の活性化、炭酸ガス吸収による地球温暖化防止対策・栄養塩利用による赤潮防止対策、水産資源増大に利用するために、指定した方向に曲げられた光ケーブル照射レンズにより太陽光を海底に照射集配し植物プランクトン増大・藻場造成の活性化を促進するシステムが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
珪藻には単独性の種と群体性の種があり、共に浮遊性のものと付着性のものが知られている。浮遊性の珪藻は鞭毛などによって積極的に浮遊しているわけではなく、波浪等により攪拌されない場合は光合成のできない暗い海底へ沈んでしまう。これに対して、付着性の珪藻は、付着基材が海面や湖面付近に配設される場合は、日照時には常時光合成を行うことができ、安定的に増殖することができるが、付着基材表面が増殖した珪藻で覆われると、珪藻の繁殖が停止するという問題があった。本発明の課題は、鞭毛藻類と珪藻類がともに増殖しうる条件下では、鞭毛藻類より珪藻類が優勢に増殖するという知見に基づいて、鞭毛藻類の競争者である珪藻類を海(湖)域に供給することによって、養殖漁業に莫大な損害を与える鞭毛藻類の異常繁殖による赤潮の発生を未然に防止する方法や、珪藻類を所定海(湖)域に長期にわたって簡便かつ多量に供給するための珪藻類の生産方法や、そのための装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究する過程で、水(海水、湖水など)中に新しい基面が露出すると、付着性珪藻類が驚くほど急速に増殖することを見い出した。すなわち、いままで水に触れていなかった新たな生分解性基材が水中に配置されると、海草や貝類等の他の付着性水生生物より先に、その表面が珪藻類で覆われることを観察した。生分解性基材表面を覆う珪藻類が一定厚さに達すると珪藻類の増殖速度は飽和し、次いで他の水生生物が繁殖することも観察されたが、この増殖速度が飽和する前の繁殖活性期間に、珪藻類が繁殖した表面から付着性珪藻類が、水中微生物等の作用により生分解した基材表面とともに剥がれ、新たな生分解性基材表面が露出し、その露出生分解性基材表面を再び高速増殖面として利用し珪藻類が急速に増殖するという知見を得た。
【0008】
他方、生分解性高分子は、水中の微生物によって分解されることが知られている。このような生分解性高分子又はそれを主成分とする組成物からなる生分解性基材を、珪藻類の繁殖面として利用すると、珪藻類が生分解性基材表面で増殖するとともに、珪藻類が増殖した生分解性基材表面が水中の微生物によって分解され、生分解性基材表面で増殖した珪藻類とともに波などによって水中に分散され、その結果、新たに構成された生分解性基材表面に珪藻類が増殖し、これが繰り返されることによって、連続的に水中に珪藻類を放散することができることを見い出した。特に、生分解性高分子又はそれを主成分とする組成物の表面分解速度及び/又は組成表面分解速度を、珪藻類の増殖速度に同期させてやると、より効率よく珪藻類を製造しうるという知見を得た。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で珪藻類を増殖させる珪藻類の生産方法であって、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面積を、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定することを特徴とする珪藻類の生産方法(請求項1)や、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材として、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材を用いることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の生産方法(請求項2)や、生分解性高分子が、R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、デプシペプチドあるいは環状カーボネートと、ε−カプロラクトンとの共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の珪藻類の生産方法(請求項3)に関する。
【0010】
また本発明は、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材と、該生分解性基材を水表面近くの水中に保持するための保持手段とからなる珪藻類の生産装置であって、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面積が、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定されていることを特徴とする珪藻類の生産装置(請求項4)や、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材が、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材であることを特徴とする請求項4記載の珪藻類の生産装置(請求項5)や、生分解性高分子が、R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、デプシペプチドあるいは環状カーボネートと、ε−カプロラクトンとの共重合体であることを特徴とする請求項4又は5記載の珪藻類の生産装置(請求項6)や、生分解性基材が、構築物又は砂礫の表面にコーティングされていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の珪藻類の生産装置(請求項7)や、保持手段が、生分解性基材が表面にコーティングされている構築物又は砂礫であることを特徴とする請求項7記載の珪藻類の生産装置(請求項8)や、請求項4〜8のいずれか記載の珪藻類の生産装置を、赤潮発生の可能性のある水域に設置することを特徴とする赤潮発生の防止方法(請求項9)に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の珪藻類の生産方法としては、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で珪藻類を増殖させる方法であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の珪藻類の生産装置としては、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材と、該生分解性基材を水表面近くの水中に保持するための保持手段とからなる装置であれば特に制限されるものではないが、上記珪藻類とは付着性珪藻類を意味し、また、上記生分解性とは水中の微生物により分解されることを意味する。以下、本発明の生分解性高分子を用いた珪藻類の生産について、図面に基づいてまず説明する。
【0012】
図1は、水中における珪藻の生産手順を分かりやすくするために時系列的に併記した図であって、構造体表面は各▲1▼〜▲5▼のいずれかの状態にあることを示している。図1において、1は生分解性高分子の層で、2は生分解性高分子の層1でコーティングされた海底から採取した砂粒などの構造体を示す。また、図1中▲1▼は、水中に浸漬された生分解性高分子層の初発状態や、水中微生物による高分子の分解によって高分子表面部分が珪藻類とともに水中に放散して、新たな露出面が形成された状態を示している。図1中▲2▼は、水中に浸漬された生分解性高分子の表面に珪藻類が増殖し始めた状態を示している。生分解性高分子層の表面に、水中生物のうち珪藻類が最初に付着して増殖を開始する。このとき、窒素・リンなどの栄養塩を有する水と日光が必要である。図1中▲3▼は、生分解性高分子が分解を始める状態を示している。水が生分解性高分子の層内に浸透し、水中の微生物によって生分解性高分子の表面が分解し始めるが、珪藻類の増殖は継続して進行している。図1中▲4▼は、分解の進んだ生分解性高分子が水中に離脱する状態を示している。生分解高分子の表面に水の浸透が進み、組織構造がばらばらになった高分子は、波による流動や互いの接触によって、侵食された部分が表面から離脱する。このとき珪藻類も共に離脱する。図1中▲5▼は増殖した珪藻類が水中に放散・供給される状態を示している。上記▲4▼▲5▼によって、高分子表面には新たな面が露出し、▲1▼の状態に戻る。この各▲1▼〜▲5▼のサイクルが繰り返されることによって、生分解性高分子は表面から漸次分解・侵食され、同時に珪藻類が、長期にわたり連続的かつ多量に生産され、海(湖)中に放散・供給されることになる。
【0013】
本発明における上記生分解性高分子としては、水中の微生物により分解され、その表面に珪藻類を繁殖させることができる基材となりうる高分子化合物であれば、天然系高分子、合成系高分子を問わず特に制限されるものではないが、ポリラクチド、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ε−カプロラクトン又はδ−バレロラクトンとオキセタン又はジメチルトリメチレンカーボネートとの共重合体(特開平7−304835号公報)、(R)又は(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド(MOHEL)と環状エステル(ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、L−ラクチド)との共重合体、環状カーボネート(2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート)とε−カプロラクトンやL−ラクチドとの共重合(高分子論文集、Vol.50,No.11,pp.821-835(Nov.,1993))、ポリデプシペプチド、ポリデプシペプチドとε−カプロラクトンとの共重合体(高分子論文集、Vol.55,No.6,pp.359-366(Jun.,1998)、同Vol.56,No.2,pp.77-85(Feb.,1999))エチレンカーボネートとε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンとの共重合体(Polymer Journal, Vol.32,No.32,pp.280-286(2000))等を具体的に例示することができる。また、生分解性高分子としては、分解物が無害成分となるものが好ましい。本発明における生分解性高分子組成物としては、前記生分解性高分子における生分解性を失わない範囲で他成分が配合されたものであればどのようなものでもよく、例えば前記生分解性高分子と他の高分子とのコポリマーや、種類の異なる生分解性高分子同士の混合物等を挙げることができる。
【0014】
本発明における生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材としては、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物から作られた繊維状、フィルム状、板状、粒状、リング状等任意の形状の成形体や、金属製、プラスチック製、木製、繊維製、セラミックス製等の構築物の表面や砂礫表面にコーティングされた生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなるコーティング層などを例示することができる。そして、かかる生分解性基材として、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材を用いることが、珪藻類の生産効率の点で好ましい。すなわち、珪藻類が繁殖して生分解性基材表面を覆い尽くし、珪藻類の繁殖活性期間が終了して珪藻類の増殖速度が低下し始めると、生分解性基材の表面が分解して新たな表面が露出する結果、珪藻類の繁殖活性期間が継続し、効率よく珪藻類を長期にわたり連続的かつ多量に生産することができる。ここで、珪藻類の繁殖活性期間とは、珪藻類が指数的に増殖する期間又は珪藻類の増殖が飽和する前の期間をいう。
【0015】
また、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面積を、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定することが、珪藻類の生産効率の点で好ましい。すなわち、珪藻類は、水中の珪藻類が付着していない新たな固体表面において、ふつう1〜2週間で自然付着し、その後活発に増殖するので、生分解性基材を多孔性に形成することなどにより、その表面積を調整してこれと同程度の期間で分解するようにすることにより、効率よく珪藻類を生産することができる。反対に、適用水中において分解速度のより速い生分解性高分子を用いる場合は、珪藻類が付着増殖する表面の一部を生分解性基材で構成するなどにより表面積を調整することができる。
【0016】
本発明の珪藻類の生産方法において、前記生分解性基材の表面で増殖・繁殖させる珪藻類としては、水中に自生する付着性の珪藻類をそのまま利用することもできるが、より大型で増殖速度の速い付着性珪藻類や、所定の海(湖)域における赤潮の原因となることが予想される種類の鞭毛藻類に対してその生育抑制あるいは生育停止作用を有する特定の付着性珪藻類等を用いることもでき、これら付着性珪藻類は、遺伝子操作により調製したものも使用することができる。
【0017】
本発明の珪藻類の生産装置における保持手段としては、生分解性基材を日光のあたる水表面近くの水中に保持することができるものであればどのようなものでもよく、生分解性基材が成形体の場合は、海上の浮体から錘をつけたロープで日光のあたる適切な深さに浸漬された不織布製等のネットや、海上の浮体から吊り下げられた網籠などを保持手段として例示することができ、生分解性基材が水中の構築物や砂礫等の表面にコーティングされている場合は、構築物や砂礫自体が保持手段となる。かかる構築物や砂礫としては、養殖用のネット、筏の浮体、発泡体(浮輪・クッション材)、海底の土砂、海岸護岸用のコンクリート構造物を例示することができる。
【0018】
本発明の赤潮発生の防止方法としては、前記本発明の珪藻類の生産装置を、赤潮発生の可能性のある海(湖)域に設置する方法であれば、特に制限されるものではなく、本発明の珪藻類の生産装置を赤潮発生の可能性のある海(湖)域に設置すれば、長期にわたり、連続的にかつ多量に珪藻類を生産することができるので、鞭毛藻類の異常増殖が抑制され赤潮の発生が防止できる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド(MOHEL)とε−カプロラクトン(CL)とのモノマー比15/85との共重合体(MOHEL/CL)の10×10×0.04mmのフィルムを、生分解性高分子生分解性基材として用いた。この生分解性基材を沖合い約30mにある海面網生簀内の水深約1.5mの所に沈め、水温13〜28℃での海水における珪藻類の生産量(表面付着量;SW)と生分解性基材の分解性(分解残存率;RW)を一週間ごとに4週間測定し評価した。生分解性のない塩化ビニルフィルムを対照として同一条件で比較・評価した。表面付着量(SW)は、珪藻類が繁殖したフィルム表面を軽く洗浄し水切りしたときの重量と、表面を完全に洗浄し乾燥させた後の重量との差、すなわち付着生物と付着水分を含む重量で表される相対重量(wt)として求めた。また、分解残存率(RW)は、珪藻類が繁殖したフィルム表面を完全に洗浄乾燥させた後の重量と、海水に浸漬する前の重量との比(%)として求めた。結果を表1に示す。表1より、対照の塩化ビニルフィルムの表面では、珪藻類の付着量は比較的多いが、3週間程度でほぼ繁殖が飽和している。これに対して、実施例の生分解性共重合体(MOHEL/CL)の表面では、珪藻類生成と表面分解が同時進行するので、付着量は比較的少ないが、継続的に珪藻類の生産と放出がなされていることがわかる。なお、付着した藻類が珪藻類であることは顕微鏡観察により確認した。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明によると、珪藻類の生産を生分解性基材の表面を利用して行うので、有害物が発生せず、海(湖)域を汚染することなく赤潮の予防が可能となる。また、生分解性基材の表面分解速度と珪藻類の増殖速度を同期させ、生分解性基材の表面分解期間と珪藻類の繁殖活性期間とがほぼ同等になるように設定されているので、生分解性高分子がすべて分解されるまで、連続的に、高効率で珪藻類を長期間にわたり生産することができる。そして、水中に敷設する構築物等の表面に生分解性基材をコーティングして用いる場合は、専用の装置がなくとも珪藻類の生産が可能となる。珪藻類は、水中食物連鎖の一次生産者であることから、本発明の装置を海中に設置することによって、水中の栄養物が増え、珪藻類を食物とする海水生物の活力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生分解性高分子を用いた珪藻類の生産方法を説明する図である。
Claims (9)
- 生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で珪藻類を増殖させる珪藻類の生産方法であって、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面積を、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定することを特徴とする珪藻類の生産方法。
- 生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材として、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材を用いることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の生産方法。
- 生分解性高分子が、R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、デプシペプチドあるいは環状カーボネートと、ε−カプロラクトンとの共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の珪藻類の生産方法。
- 生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材と、該生分解性基材を水表面近くの水中に保持するための保持手段とからなる珪藻類の生産装置であって、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面積が、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定されていることを特徴とする珪藻類の生産装置。
- 生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材が、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材であることを特徴とする請求項4記載の珪藻類の生産装置。
- 生分解性高分子が、R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、デプシペプチドあるいは環状カーボネートと、ε−カプロラクトンとの共重合体であることを特徴とする請求項4又は5記載の珪藻類の生産装置。
- 生分解性基材が、構築物又は砂礫の表面にコーティングされていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の珪藻類の生産装置。
- 保持手段が、生分解性基材が表面にコーティングされている構築物又は砂礫であることを特徴とする請求項7記載の珪藻類の生産装置。
- 請求項4〜8のいずれか記載の珪藻類の生産装置を、赤潮発生の可能性のある水域に設置することを特徴とする赤潮発生の防止方法。
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