JP3793923B2 - フレキシブル管継手 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレキシブル管継手、特に波形の管壁を備えるフレキシブル金属管の端部にフランジが回転可能に取り付けられているフレキシブル管継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のフレキシブル管継手の従来例として、波形の管壁をステンレス製とし、そのフレキシブル金属管の端部の山形部を軸方向に圧潰して重ね合わせることによりそのフレキシブル金属管に鍔形係止部を具備させ、その鍔形係止部によって、フレキシブル金属管の端部に回転可能に嵌合させたフランジを抜止めするようにしたものが知られていた。このものは、ステンレスに特有の曲がり特性により、フレキシブル金属管の端部を圧潰して鍔形係止部を形成するという加工を亀裂などを生じさせずに容易に行うことができるという利点を持つ反面で、ステンレスが薬品や海水に対する耐用性の面で満足できる性質を示さない場合があるために薬品や海水などを取り扱う過酷環境下での使用が制約され、しかも、ステンレス自体が重いためにフレキシブル管継手の重量が重くて取扱いが不便であるという面がある。そこで、波形の管壁がステンレス製であるフレキシブル金属管をフッ素樹脂で内面ライニングすることによって薬品や海水に対する耐用性を改善することが試みられたけれども、そのようにしても、フッ素樹脂ライニングの劣化などに起因する耐久性の低下が比較的早期に起こることが知見された。
【0003】
このような状況の下で、従来、図3に示した構造のフレキシブル管継手が提案された。このフレキシブル管継手では、フレキシブル金属管10の波形の管壁をチタン製とし、そのフレキシブル金属管10の端部に山形部を持たないストレート部11を一定長に亘って形成すると共に、そのストレート部11の外側に嵌合させたチタン製のスリーブ12の端部に、ルーズカラーと呼ばれる環状部材13を、ストレート部11と共に溶接(TIG溶接)14で固着し、その環状部材13によってスリーブ12に回転自在に外嵌合したフランジ15を抜止めすると共に、その環状部材13の外端面をパッキン座面16として形成している。なお、17は可撓性を持つステンレス製の鋼線ブレードでなる保護ジャケットであり、その端部が上記スリーブ12の根元に固定リング18を用いて固着されている。
【0004】
この構成を備えたフレキシブル管継手によると、フレキシブル金属管10の波形の管壁をチタン製にしたことにより薬品や海水などを取り扱う過酷環境下での耐用性が上記したステンレス製のフレキシブル金属管を用いたものに比べて向上し、しかも、管壁が波形であってフランジ15がフレキシブル金属管10に対し回転可能になっていることにより、曲り管路に介在されるフレキシブル管継手に要求される可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性、さらには取扱い時の軽量性などの性能も満たされる。
【0005】
一方、先行例として、図3で説明したフレキシブル管継手と同様に波形の管壁を有するフレキシブル金属管の端部にストレート部を具備させ、そのストレート部にパッキン座面を有する鍔体を取り付け、かつ、ストレート部にフランジを回転自在に取り付けてなるフレキシブル管継手についての記載がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
実用新案登録第3074303号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3で説明した従来のフレキシブル管継手では、フレキシブル金属管10の管壁をチタン製とし、その管壁のストレート部11の端部を、環状部材13と共にスリーブ12に溶接で接合するという構成を採用しているため、溶接箇所の結合信頼性を確保するには環状部材13やスリーブ12をチタン製にすることが不可欠である。このことから、ステンレスに比べて高価なチタンを環状部材13やスリーブ12の材料として用いざるを得なくなり、加えて、スリーブ12が筒状であるにもかかわらずそのスリーブ12を切削加工によって製作することを余儀なくされ、それらが相乗してフレキシブル管継手としての製品価格が非常に高くつき、そのようなコスト面から使用が制限されるという事態が多々起こっているという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明者は、図4又は図5に示した構造のフレキシブル管継手を試作した。このフレキシブル管継手では、図3で説明したフレキシブル管継手のスリーブ12を省略し、その代わりにチタン製の波形の管壁を有するフレキシブル金属管20の端部の複数の山形部を軸方向に圧潰して重ね合わせることにより鍔形係止部21を形成した上で、フランジ22をフランジ本体23と環状の連結体24とに分割し、そのうちの環状の連結体24を鍔形係止部21とそれに隣接する山形部25とにより挟持させてフレキシブル金属管20に固着すると共に、フレキシブル金属管20に軸方向移動可能及び回転可能に嵌合したフランジ本体23を連結体23に係合させることよって抜止めしている。また、鍔形係止部21に、その鍔形係止部21よりも径大でかつ外端面がパッキン座面27として形成されたチタン製の環状部材26を同心状に重ね合わせ、その環状部材26の内周部を鍔形係止部21に内周部に溶接(TIG溶接)28で固着し、その溶接の肉盛りによって鍔形係止部21と環状部材26との重なり箇所に生じている隙間を塞いでいる。なお、32はステンレス製の保護ジャケットであり、フレキシブル金属管20の端部に締付けバンド33を用いて固着されている。
【0009】
図4又は図5で説明したフレキシブル管継手によると、図3で説明したチタン製のスリーブ12が不要になるので、それだけコストダウンを達成しやすい。しかしながら、このものでは、フレキシブル金属管20の管壁がチタン製であるため、フレキシブル金属管20の端部に鍔形係止部21を形成するときに、軸方向に圧潰された山形部の頂部が屈曲してその屈曲箇所に亀裂による隙間が発生し、その隙間から流体が漏洩するという事実が知見された。そこで、鍔形係止部21の外周部にも溶接29による肉盛りを施して亀裂による隙間を塞ぐという対策を講じた。このようなフレキシブル管継手によると、軽量で、薬品や海水に対する耐用性に優れ、しかも、曲り管路に介在されるフレキシブル管継手に要求される可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性を満足することができた。
【0010】
ところが、環状部材26の内周部を鍔形係止部21に内周部に溶接するときに、その溶接箇所に近い管壁の谷形部31、すなわち連結体24が嵌め込まれている谷形部31に溶接熱の影響が顕著に及び、その谷形部31に熱応力が残留してフレキシブル金属管の強度低下をもたらすことがあるということが判明した。そして、そのような強度の低下が生じているフレキシブル管継手を管路の曲り箇所に用いると、上記谷形部31に曲がり荷重が集中してその谷形部31に亀裂や割れが発生して流体漏洩の原因になるということも判った。上掲の先行例によって開示された技術ではこの点を解決することができない。
【0011】
本発明は、以上の問題点や状況に鑑みてなされたものであり、軽量で、薬品や海水に対する耐用性に優れ、しかも、曲り管路に介在されるフレキシブル管継手に要求される可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性を満足するものでありながら、図4又は図5で説明したフレキシブル管継手に備わっている問題点、すなわち、鍔形係止部21の外周部に溶接29による肉盛りを施して亀裂による隙間を塞ぐという溶接作業を行った上で、さらに加えて、環状部材26の内周部を鍔形係止部21に内周部に溶接(TIG溶接)28で固着して両者の隙間を塞ぐという溶接作業を行わねばならないという問題点と、連結体24が嵌め込まれている谷形部31に熱応力が残留してフレキシブル金属管の強度低下をもたらすという問題点を改善することのできるフレキシブル管継手を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るフレキシブル管継手は、波形の管壁を備えるフレキシブル金属管の端部でその管壁の山形部を軸方向に圧潰して重ね合わせることにより形成された鍔形係止部とその鍔形係止部に隣接する山形部とにより挟持された状態で、そのフレキシブル金属管の端部にフランジが取り付けられてなる。
【0013】
そして、上記管壁がチタン製とされ、外端面がパッキン座面として形成されたチタン製の環状部材が上記鍔形係止部に同心状に重ね合わされ、上記鍔形係止部の外周部と上記環状部材の外周部とに亘って施された溶接によって環状部材が鍔形係止部に結合されていると共に、その溶接箇所の肉盛りによって、上記鍔形係止部の外周部の屈曲箇所に生じている亀裂による隙間と上記環状部材と上記鍔形係止部との重なり箇所に生じている隙間が塞がれている。
【0014】
この構成であると、溶接箇所が、鍔形係止部の外周部と環状部材の外周部とに亘る1箇所だけで済み、しかも、その溶接箇所が鍔形係止部や環状部材の外周部であるために、溶接熱の影響が管壁の谷形部に及ぶことがなくなってフレキシブル金属管が残留熱応力に起因する強度低下を伴うおそれがない。そのため、製作コストを安く抑えて、軽量で、薬品や海水に対する耐用性に優れ、可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性を満足するフレキシブル管継手を提供することが可能になる。
【0015】
本発明では、上記環状部材の直径寸法が上記鍔形係止部の直径寸法と同等に定められてそれら両者の外周部同士が上記フレキシブル金属管の軸方向に並んでいることが望ましい。これによれば、鍔形係止部の外周部と環状部材の外周部とに亘る溶接を容易にかつ確実に行うことができ、しかも溶接箇所の外観を良好に仕上げやすいという利点がある。
【0016】
本発明では、上記フランジが、上記鍔形係止部とその鍔形係止部に隣接する上記山形部とにより挟持されることにより上記フレキシブル金属管の端部に固着された連結体と、上記フレキシブル金属管に軸方向移動可能及び回転可能に嵌合されかつ上記連結体に係合することよって抜止めされる環状のフランジ本体とに分割されていることが望ましい。これによれば、分割されていないフランジをフレキシブル金属管に取り付ける場合に比べて、取付け作業を容易に行うことができ、しかも、曲り管路に当該フレキシブル管継手を介在させるときに、管路のねじれを吸収する際にフランジ本体が回転しても、フレキシブル金属管にフランジ本体の回転に伴う無理な力が加わりにくくなってそれだけ耐久性が向上するという利点がある。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態に係るフレキシブル管継手の要部を示した一部破断側面図、図2は図1のII部拡大図である。
【0018】
図1で判るように、このフレキシブル管継手は、図4又は図5で説明した試作品としてのフレキシブル管継手に改良を加えたものである。
【0019】
すなわち、チタン製の波形の管壁を有するフレキシブル金属管20の端部の複数の山形部を軸方向に圧潰して重ね合わせることにより鍔形係止部21を形成してある。また、フランジ22をフランジ本体23と環状の連結体24とに分割し、そのうちの環状の連結体24を鍔形係止部21とそれに隣接する山形部25とにより挟持させてフレキシブル金属管20に回転不能に固着すると共に、フレキシブル金属管20に軸方向移動可能及び回転可能に嵌合したフランジ本体23を連結体23に係合させることよって抜止めしている。
【0020】
また、外端面をパッキン座面27として形成したチタンでなる平板円環状の環状部材26の直径寸法を鍔形係止部21の直径寸法と同等に定めた上で、その管状部材26を鍔形係止部21に同心状に重ね合わせて両者の外周部同士をフレキシブル金属管20の軸方向に並べ、鍔形係止部21の外周部と環状部材26の外周部とに亘る溶接(TIG溶接)34を施して環状部材26を鍔形係止部21に結合してあると共に、その溶接箇所の肉盛りによって、鍔形係止部21の外周部の屈曲箇所に生じている亀裂による隙間と環状部材26と鍔形係止部21との重なり箇所に生じている隙間を塞いでいる。32はステンレス製の保護ジャケットであり、フレキシブル金属管20の端部に締付けバンド33を用いて固着されている。
【0021】
この構成であると、図3で説明したチタン製のスリーブ12が不要になってコストダウンが達成された。また、フレキシブル金属管20の端部に鍔形係止部21を形成するときに軸方向に圧潰された山形部の頂部が屈曲してその屈曲箇所に発生した亀裂による隙間や環状部材26と鍔形係止部21との重なり箇所に生じている隙間が溶接箇所の肉盛りによって塞がれているために、流体漏洩を生じることもなかった。さらに、軽量で、薬品や海水に対する耐用性に優れ、曲り管路に介在されるフレキシブル管継手に要求される可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性を満足することができた。
【0022】
その上、溶接箇所が、鍔形係止部21の外周部と環状部材26の外周部とに亘る1箇所だけで済み、しかも、その溶接箇所が鍔形係止部21や環状部材26の外周部であるために、溶接熱の影響が、連結体24の嵌まり込んでいる管壁の谷形部31に及ぶことがなくなり、そのために、その山形部31に熱応力が残留してフレキシブル金属管の強度が低下するという事態もなくなった。
【0023】
なお、図1にはフレキシブル管継手の一端部だけを示したけれども、実施形態のフレキシブル管継手は、その他端部にも図1に示したものと同様の構造を備えている。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、軽量で、薬品や海水に対する耐用性に優れ、しかも、曲り管路に介在されるフレキシブル管継手に要求される可撓性や伸縮性、ねじれ吸収性を満足するフレキシブル管継手を提供することが可能になる。特に、溶接を1箇所に施すだけで済み、しかも、溶接熱による影響でフレキシブル金属管が強度低下を来すという事態も起こらないので、耐久性に優れたチタン製フレキシブル金属管を用いたフレキシブル管継手を安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブル管継手の要部を示した一部破断側面図である。
【図2】図1のII部拡大図である。
【図3】従来例のフレキシブル管継手の要部を示した一部破断側面図である。
【図4】試作品としてのフレキシブル管継手の要部を示した一部破断側面図である。
【図5】図4のV部拡大図である。
【符号の説明】
20 フレキシブル金属管
21 鍔形係止部
22 フランジ
23 フランジ本体
24 連結体
25 山形部
26 環状部材
27 パッキン座面
34 溶接

Claims (3)

  1. 波形の管壁を備えるフレキシブル金属管の端部でその管壁の山形部を軸方向に圧潰して重ね合わせることにより形成された鍔形係止部とその鍔形係止部に隣接する山形部とにより挟持された状態で、そのフレキシブル金属管の端部にフランジが取り付けられてなるフレキシブル管継手において、
    上記管壁がチタン製とされ、外端面がパッキン座面として形成されたチタン製の環状部材が上記鍔形係止部に同心状に重ね合わされ、上記鍔形係止部の外周部と上記環状部材の外周部とに亘って施された溶接によって環状部材が鍔形係止部に結合されていると共に、その溶接箇所の肉盛りによって、上記鍔形係止部の外周部の屈曲箇所に生じている亀裂による隙間と上記環状部材と上記鍔形係止部との重なり箇所に生じている隙間が塞がれていることを特徴とするフレキシブル管継手。
  2. 上記環状部材の直径寸法が上記鍔形係止部の直径寸法と同等に定められてそれら両者の外周部同士が上記フレキシブル金属管の軸方向に並んでいる請求項1に記載したフレキシブル管継手。
  3. 上記フランジが、上記鍔形係止部とその鍔形係止部に隣接する上記山形部とにより挟持されることにより上記フレキシブル金属管の端部に固着された連結体と、上記フレキシブル金属管に軸方向移動可能及び回転可能に嵌合されかつ上記連結体に係合することよって抜止めされる環状のフランジ本体とに分割されている請求項1又は請求項2に記載したフレキシブル管継手。
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