JP3792322B2 - 配管の減肉深さ推定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管の減肉深さ推定方法に係り、詳しくは、放射線を用いて配管の減肉部の深さを推定する方法に関する。たとえば、石油プラントなどの実機配管の保守検査などに利用できる。
【0002】
【背景技術】
石油プラントなどは、各種の流体を移送するための配管設備を備えている。これらの配管は、長時間の使用で内部を流れる流体により腐食、壊食などを起こしたり、あるいは、振動などにより亀裂が発生することにより、配管の内側に穴状、クラック状などの種々の形状で局所的な減肉部が生じる。従って、これらの石油プラントなどの実機配管では、その機能面から、あるいは、安全面からもこのような減肉部を見つけるための保守検査が必要とされている。
【0003】
近年、このような配管の保守検査については、主にγ線(イリジウム192線源)による放射線透過試験での保守検査が行われている。
図11は、従来の放射線透過試験による配管の保守検査方法の一例を示している。配管80を挟んで、γ線を放射する線源としての放射線発生装置81および放射線撮影用フィルム82がそれぞれ配置されている。放射線発生装置81から放射されたγ線は、配管80を透過してフィルム82上に達する。すると、フィルム82上には、このときの配管80の投影像が得られる。このようにして、撮影されたフィルム82上の投影像の状態から配管80の減肉深さを推定する。
【0004】
すなわち、配管80の図中左右両側の端部83,84に減肉部85が生じている場合には、フィルム82上の図中Bの部分に幅Cの減肉部85の存在を示す濃淡が現れる。このフィルム82上に現れた幅Cの濃淡は、通常、目視で確認できる程度の濃淡であるから、定規などを用いて幅Cを測定することができる。そして、この幅Cの値から、放射線発生装置81、配管80、フィルム82の配置状況を考慮し、計算により減肉部85の減肉深さを推定することができる。
【0005】
しかし、このような検査方法では、配管80の両側の端部83,84に存在する減肉部85については減肉深さを推定することができるとしても、配管80の中央部86に存在する減肉部87,88については減肉深さを推定することが困難である。
これは、配管80の中央部86に存在する減肉部87,88について、減肉深さを推定しようとすると、放射線発生装置81およびフィルム82の配置位置を変更して撮影する方向を変え、減肉部87,88の位置が両側の端部83、84の位置にくるようにして再び撮影しなおさなければならないから、手間がかかってしまうためである。
【0006】
このような課題に対して、本出願人は、先に、減肉部と健全部とのフィルム濃度の差を健全部のフィルム濃度で徐した値および配管の肉厚をパラメータとして、配管の減肉率が定まるような減肉率の近似式を予め基準片の測定により求めておき、この減肉率の近似式に測定した健全部と減肉部とのフィルム濃度および配管の肉厚を代入して減肉率を求め、減肉深さを推定する方法を提案した(特開平6ー249637号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記推定方法によれば、配管の両端に存在する減肉部は勿論、配管の中央部に存在する減肉部についても減肉率の近似式を用いて推定することができる。
しかし、この推定方法の場合、配管の測定位置での肉厚とその測定位置でのフィルム濃度とが一定の比例関係にあることを前提としているが、実際に測定してみると、実際の肉厚が計算値からずれてしまい、正確な推定ができないという欠点があることがわかった。
【0008】
たとえば、図11において、放射線発生装置81からの放射線を図中左右方向に走査していくと、放射線の透過肉厚は配管80の中央部86で最も小さく(配管80の肉厚の2倍)、その中央部86から両側に向かうに従って次第に大きくなるが、透過肉厚が大きくなるに従って、フィルム濃度から得られる計算値(肉厚)に対して実際に測定した透過肉厚の差が大きく、とくに、透過肉厚が大きな部位において減肉部の減肉深さを正確に推定できないことがわかった。
【0009】
本発明の目的は、このような欠点を解消すべくなされたもので、配管の全部位に生じる減肉部の減肉深さを正確に測定することができる配管の減肉深さ推定方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の配管の減肉深さ推定方法は、検査対象配管を挟んで、放射線発生装置および放射線撮影用感光体を配置し、前記放射線発生装置から前記検査対象配管を透して前記感光体に向けて放射線を照射して前記検査対象配管の像を撮影し、撮影後の前記感光体上の像から前記検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取り、これらの感光体濃度値、幾何学的計算により求めた測定位置における健全部透過肉厚、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配、前記検査対象配管の肉厚に対する測定位置における健全部透過肉厚の割合から定めた肉厚補正率を基に、前記検査対象配管の減肉部の深さを推定する配管の減肉深さ推定方法であって、
前記放射線撮影用感光体として、放射線エネルギーを蓄積し、熱や光の照射によって再び蛍光を発する輝尽性蛍光体を高分子材料の支持体上に塗布したイメージングプレートを用いるとともに、
このイメージングプレートに対してレーザ光を走査し、そのときに発光する輝尽発光光を光電的に検出することにより、イメージングプレート上に蓄積記憶された放射線画像から前記検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取り、
前記検査対象配管の肉厚をt、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚をTTXとしたとき、前記肉厚補正率Kを、
K=TTX/(2・t)
とするとともに、
前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値をDk、前記測定位置Lxにおける減肉部での感光体濃度値をDg、前記濃度勾配をXとしたとき、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTX、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値Dk、前記測定位置Lxにおける減肉部での感光体濃度値Dgおよび前記濃度勾配Xから、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求めたのち、
前記検査対象配管の減肉部の深さdxを
dx=(TTX−ttx)/K
から推定することを特徴とする。
【0011】
このような構成において、まず、放射線発生装置から放射線を検査対象配管に照射すると、その放射線は、検査対象配管を透過して感光体に達する。これにより、感光体上に検査対象配管の像が得られる。ここで、放射線発生装置としてはX線またはγ線を放射する線源、また、放射線撮影用感光体としては、放射線発生装置から放射された放射線エネルギーを蓄積し、熱や光の照射(励起)によって再び蛍光を発する輝尽性蛍光体を高分子材料の支持体上に塗布したイメージングプレートなどが好ましい。イメージングプレートを用いた場合、高感度であるため、放射線照射時間の短縮、管理区域の縮小、作業能率の向上が図れる。さらに、小型線源での撮影が可能となり、Coなど高エネルギー小線源を現場適用することで検査対象範囲の拡大が図れる利点がある。
【0012】
次に、撮影後の感光体上の像から検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取る。たとえば、感光体として、イメージングプレートを用いた場合、イメージングプレートをベルトなどの搬送手段で搬送するとともに、レーザ光走査手段によってレーザ光をイメージングプレート上にかつ搬送方向に対して直交方向に走査し、そのときに発光する輝尽発光光をライトガイドを通じて光電検出器で検出して画像信号を得ることにより行うことができる。
【0013】
次に、読み取った感光体濃度値、幾何学的計算により求めた測定位置における健全部透過肉厚、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配、前記検査対象配管の肉厚に対する測定位置における健全部透過肉厚の割合から定めた肉厚補正率を基に、前記検査対象配管の減肉部の深さを推定する。
たとえば、測定位置における健全部での感光体濃度値、幾何学的計算により求めた測定位置における健全部透過肉厚、および、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配から配管の減肉直線を求めたのち、この減肉直線から減肉部の感光体濃度値に対応する推定透過肉厚を推定する。そして、この推定透過肉厚と測定位置における健全部透過肉厚との差から減肉深さを推定し、この減肉深さを肉厚補正率で補正して検査対象配管の減肉部の深さを推定する。
【0014】
このとき、肉厚補正率として、検査対象配管の肉厚に対する測定位置における健全部透過肉厚の割合から定めた肉厚補正率を用いているから、各測定位置において透過肉厚が変化することによって生じる欠点を解消できる。
つまり、透過肉厚が大きくなるに従って、フィルム濃度から得られる計算値(肉厚)に対して実際に測定した肉厚との差が大きくなり、とくに、透過肉厚が大きな部位において減肉部の減肉深さを正確に推定できないという欠点を解消できる。従って、配管の全部位に生じる減肉部の減肉深さを正確に測定することができる。
【0015】
具体的には、次のようにして行うのが好ましい。
検査対象配管の測定位置Lxにおける健全部および減肉部での感光体濃度値をDk,Dg、幾何学的計算により求めた測定位置Lxにおける健全部透過肉厚をTTX、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配をXとしたとき、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTX、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値Dk、前記測定位置Lxにおける減肉部の感光体濃度値Dgおよび濃度勾配Xから、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求める。
【0016】
次に、検査対象配管の減肉部の深さdxを
dx=(TTX−ttx)/K
から推定する。
ここで、肉厚補正率Kは、検査対象配管の肉厚をt、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚をTTXとしたとき、
K=TTX/(2・t)
で与えられる。
従って、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXが大きくなるに従って肉厚補正率Kも大きくなるから、透過肉厚が大きな部位において減肉部の減肉深さを正確に推定できないという従来の欠点を解消できる。
【0017】
一方、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求めるにあたっては、一方の軸を透過肉厚t、他方の軸を感光体濃度値Dとした方眼紙上に、前記濃度勾配Xをもった回帰直線を描くとともに、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXとその健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値Dkとに対応する点をプロットし、この点に前記回帰直線が重なるように回帰直線を平行移動させ、この回帰直線上において前記測定位置Lxにおける減肉部での感光体濃度値Dgに対応する点をプロットし、この点に対応する前記一方の軸の値から前記推定透過肉厚ttxを求めるようにしてもよい。
このようにすれば、方眼紙上に作図するだけで測定位置における減肉部での推定透過肉厚ttxを簡単に求めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は放射線を利用して配管を撮影するときの状態を示している。同図において、検査対象配管10(外径d)を挟んで、その一方側には放射線を放射する放射線発生装置20が、他方側(放射線発生装置20の反対側)には放射線撮影用感光体30がそれぞれ配置されている。ここで、放射線発生装置20としてはX線またはγ線を放射する線源が、また、放射線撮影用感光体30としては、放射線発生装置20から放射された放射線エネルギーを蓄積し、熱や光の照射(励起)によって再び蛍光を発する輝尽性蛍光体を高分子材料の支持体上に塗布したイメージングプレートが用いられている。
【0019】
このような配置において、放射線発生装置20から放射線を放射する。放射線発生装置20から放射された放射線は、検査対象配管10を透過して感光体30に達する。これにより、感光体30には、検査対象配管10の放射線画像が得られる。つまり、感光体30には、検査対象配管10を透過した放射線エネルギーが蓄積される。ここに蓄積された放射線エネルギーは放射線が透過した検査対象配管10の肉厚に対して略反比例の関係にあるため、検査対象配管10の放射線画像、つまり、検査対象配管10を透過した放射線量(感光体上の像の濃度値)を読み取ることにより、検査対象配管10の減肉部の深さを推定することができる。
【0020】
そこで、感光体30に蓄積記憶された放射線画像を読み取る。この読み取りは、放射線エネルギーを蓄積した輝尽性蛍光体を励起光で励起して輝尽発光させ、この輝尽発光光を光電的に検出することにより行う。
たとえば、図2に示す画像読取装置40によって行う。感光体30(高分子材料からなる支持体31上に輝尽性蛍光体32を塗布したもの)をベルトなどの搬送手段41で矢印方向へ搬送するとともに、レーザ光走査手段42によってレーザ光を感光体30上にかつ搬送方向に対して直交方向に走査し、そのときに発光する輝尽発光光をライトガイド45を通じて光電検出器(図示省略)で時系列的に検出して画像信号を得ることにより行う。ここで、レーザ光走査手段42は、レーザ源43と、このレーザ源43からのレーザ光を感光体30の搬送方向に対して直交方向に走査する走査ミラー44とを含み構成されている。
【0021】
次に、このようにして読み取った画像信号を基に減肉部の深さを推定する方法を説明する。
まず、読み取った画像信号を基に減肉部推定の位置を決める。これには、局所的に相対透過線量(濃度値)が高い部分を減肉部推定の位置(測定位置)として決める。
続いて、測定位置における相対透過線量のデータを読み取る。この場合、健全部および減肉部での相対透過線量を読み取る。ここで、測定位置における健全部での相対透過線量をDk、推定位置における減肉部での相対透過線量をDgとする。
【0022】
次に、測定位置において健全部透過肉厚を求める。これには、幾何学的計算により求めることができる。図3に示すように、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXは、配管10の上部の健全部透過肉厚TW1と、配管10の下部の健全部透過肉厚TW2との和、つまり
TTX=TW1+TW2
となる。ここで、各健全部透過肉厚TW1,TW2は、放射線発生装置20と配管10との幾何学的配置により計算で求めることができる。
なお、図3において、dxは減肉部11の深さ、tは配管10の肉厚である。
【0023】
次に、測定位置Lxにおける肉厚補正率Kを求める。これは、前記配管10の肉厚をtとしたとき、
K=TTX/(2・t)
から求める。
【0024】
次に、図4に示すように、横軸(一方の軸)に透過肉厚tを、縦軸(他方の軸)に感光体濃度値としての相対透過線量Dをとった方眼紙50上に、予め対比試験片の測定によって得られた透過肉厚と相対透過線量(感光体濃度値)との関係を表す濃度勾配Xをもった回帰直線51を描く(実線参照)。
これには、図5に示すように、予め、検査対象配管10の肉厚に近似した対比試験片の測定によって透過肉厚tに対する相対透過線量Dのデータを収集し、これらのデータを基に濃度勾配X(ΔD/Δt)をもった回帰直線51を描く。
【0025】
次に、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXとその健全部透過肉厚TTXでの相対透過線量Dkとに対応する点P1をプロットし、この点P1に前記回帰直線51が重なるように回帰直線51を平行移動させる(点線参照)。これにより、対比試験片と配管10との相対透過線量の違いを補正することができるとともに、散乱光の影響をキャンセルすることができる。
【0026】
次に、この回帰直線51上において、前記測定位置Lxにおける減肉部の相対透過線量Dgに対応する点P2をプロットし、この点P2に対応する横軸の値(透過肉厚t)から減肉部での推定透過肉厚ttx(図3において、ttx=TW1+tw)を求める。
そして、配管10の減肉部11の深さdxを
dx=(TTX−ttx)/K
から推定する。
【0027】
本実施形態によれば、配管10を挟んで、放射線発生装置20および放射線撮影用感光体30を配置し、放射線発生装置20から放射線を照射して配管10の像を撮影し、撮影後の感光体30上の像から配管10の健全部および減肉部における放射線の相対透過線量Dk,Dgを読み取る。また、予め、幾何学的計算により測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXを求めておくとともに、対比試験片の測定によって透過肉厚tと相対透過線量Dとの関係を表す濃度勾配Xを持った回帰直線51を求めておく。そして、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTX、その健全部透過肉厚TTXでの相対透過線量Dk、測定位置Lxにおける減肉部の相対透過線量Dgおよび濃度勾配Xから、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求めたのち、配管10の減肉部11の深さdxを
dx=(TTX−ttx)/K
から推定する。
【0028】
ここで、Kは、配管10の肉厚tに対する測定位置における健全部透過肉厚TTXの割合から定めた肉厚補正率で、
K=TTX/(2・t)
としたので、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXが大きくなるに従って肉厚補正率Kも大きくなるから、透過肉厚が大きな部位において減肉部の減肉深さを正確に推定できないという従来の欠点を解消できる。従って、配管の全部位に生じる減肉部の減肉深さを正確に測定することができる。
【0029】
また、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求めるにあたっては、横軸に透過肉厚tを、縦軸に相対透過線量Dをとった方眼紙50上に、予め求めた回帰直線51を描くとともに、測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXとその健全部透過肉厚TTXでの相対透過線量Dkとに対応する点P1をプロットし、この点P1に回帰直線51が重なるように回帰直線51を平行移動させ、この回帰直線51上において測定位置TTXにおける減肉部での相対透過線量Dgに対応する点P2をプロットし、この点P2に対応する横軸の値から減肉部での推定透過肉厚ttxを求めるようにしたので、方眼紙50上に作図するだけで測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを簡単に求めることができる。
【0030】
また、放射線発生装置20としてX線またはγ線を放射する線源を、また、放射線撮影用感光体30として、放射線エネルギーを蓄積し、熱や光の照射(励起)によって再び蛍光を発する輝尽性蛍光体を高分子材料の支持体上に塗布したイメージングプレートを用いたので、つまり、高感度なイメージングプレートを用いたので、放射線照射時間の短縮、管理区域の縮小、作業能率の向上が図れる。さらに、小型線源での撮影が可能となり、Coなど高エネルギー小線源を現場適用することで検査対象範囲の拡大が図れる利点がある。
【0031】
なお、本発明の減肉深さ推定方法の効果を確かめるため、次のような実験を行った。
(第1の実験)
第1の実験は、図6に示すような3種の人工傷d1,d2,d3を形成した呼径2B,3B,4B,6Bの試験配管10A(人工傷d1,d2,d3および各試験配管10Aのサイズは表1参照)を用いて、人工傷d1,d2,d3の減肉深さdxを推定した。推定結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(第2の実験)
第2の実験は、配管内を流れる流体の影響を調べた。3種の人工傷d1,d2,d3を形成した呼径2B,4Bの試験配管10B(人工傷d1,d2,d3および各試験配管10Bのサイズは表2参照)を、図7に示すように配置し、かつ、試験配管10Bの内部に流体である水61を満たし、この状態で人工傷d1,d2,d3の減肉深さdxを推定した。推定結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(第3の実験)
第3の実験は、配管の外側に施工される保温材の影響を調べた。3種の人工傷d1,d2,d3を形成した呼径2B,4Bの試験配管10C(人工傷d1,d2,d3および各試験配管10Cのサイズは表3参照)を、図8に示すように配置し、かつ、試験配管10Cの外部に保温材62を施工し、この状態で人工傷d1,d2,d3の減肉深さdxを推定した。推定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
これらの実験結果から明らかなように、第1の実験では、人工傷d1,d2,d3の実測深さ(デップスゲージで測定した実測値)と推定減肉深さdxとの差の最大が0.3mmであり、精度的にも有効であることが分かる。
【0038】
また、第2の実験では、人工傷d1,d2,d3の実測深さと推定減肉深さdxとの差が、2Bで−0.3mm〜+0.5mm、4Bで−0.8mm〜+0.2mmであった。従って、配管内を流れる流体に影響されることがないから、実際の運転使用中に減肉部の減肉深さを推定することが可能である。
また、第3の実験では、人工傷d1,d2,d3の実測深さと推定減肉深さdxとの差が、2Bで0〜+0.2mm、4Bで+0.2mm〜+0.6mmであった。従って、配管の外側に施工される保温材62に影響されることがないから、減肉部の推定にあたって、保温材62の解体、復旧作業が不要となるから、推定作業を能率的に行うことができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、回帰直線51を求めるにあたって、予め、対比試験片の測定によって透過肉厚tに対する相対透過線量Dのデータを収集し、これらのデータを基に濃度勾配X(ΔD/Δt)をもった回帰直線51を描くようにしたが、他の方法で求めてもよい。たとえば、図9に示すように、検査対象配管10と放射線撮影用感光体30との間に階調計71を入れ、これによって肉厚の異なる数点(たとえば、3点)における相対透過線量を測定し、これらのデータを基に回帰直線51を描くようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、配管10を挟んで放射線発生装置20とは反対側に平板状の放射線撮影用感光体30を配置したが、検査対象配管10が大口径管の場合には、図10に示すように、放射線撮影用感光体30を配管10の外周面に沿って弧状に湾曲させた状態で配置するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、放射線撮影用感光体30としてイメージングプレートを用いたが、これに限らず、従来と同様に、放射線撮影用感光体30として放射線撮影用のフィルムを用いるようにしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明の配管の減肉深さ推定方法によれば、検査対象配管を挟んで、放射線発生装置および放射線撮影用感光体を配置し、放射線発生装置から放射線を照射して検査対象配管の像を撮影し、撮影後の感光体上の像から検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取り、これらの感光体濃度値、幾何学的計算により求めた測定位置における健全部透過肉厚、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配、検査対象配管の肉厚に対する測定位置における健全部透過肉厚の割合から定めた肉厚補正率を基に、検査対象配管の減肉部の深さを推定するようにしたので、配管の全部位に生じる減肉部の減肉深さを正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の推定方法を適用した実施形態における撮影状態を示す配置図でる。
【図2】同上実施形態における画像読取装置を示す斜視図である。
【図3】同上実施形態における健全部透過肉厚、減肉部を示す図である。
【図4】同上実施形態において推定透過肉厚を求める手順を示す図である。
【図5】同上実施形態において回帰直線を求めるための図である。
【図6】同上実施形態において、第1の実験で用いる人工傷を付けた試験配管を示す図である。
【図7】同上実施形態において、第2の実験を行う状態を示す図である。
【図8】同上実施形態において、第3の実験を行う状態を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態において、回帰直線を求める他の方法を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態において、放射線撮影用感光体の配置状態を示す図である。
【図11】従来の放射線透過試験を示す図である。
【符号の説明】
10 検査対象配管
20 放射線発生装置
30 放射線撮影用感光体
50 方眼紙
51 回帰直線
Claims (2)
- 検査対象配管を挟んで、放射線発生装置および放射線撮影用感光体を配置し、前記放射線発生装置から前記検査対象配管を透して前記感光体に向けて放射線を照射して前記検査対象配管の像を撮影し、撮影後の前記感光体上の像から前記検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取り、これらの感光体濃度値、幾何学的計算により求めた測定位置における健全部透過肉厚、予め求めた透過肉厚と濃度値との関係を表す濃度勾配、前記検査対象配管の肉厚に対する測定位置における健全部透過肉厚の割合から定めた肉厚補正率を基に、前記検査対象配管の減肉部の深さを推定する配管の減肉深さ推定方法であって、
前記放射線撮影用感光体として、放射線エネルギーを蓄積し、熱や光の照射によって再び蛍光を発する輝尽性蛍光体を高分子材料の支持体上に塗布したイメージングプレートを用いるとともに、
このイメージングプレートに対してレーザ光を走査し、そのときに発光する輝尽発光光を光電的に検出することにより、イメージングプレート上に蓄積記憶された放射線画像から前記検査対象配管の健全部および減肉部の感光体濃度値を読み取り、
前記検査対象配管の肉厚をt、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚をTTXとしたとき、前記肉厚補正率Kを、
K=TTX/(2・t)
とするとともに、
前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値をDk、前記測定位置Lxにおける減肉部での感光体濃度値をDg、前記濃度勾配をXとしたとき、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTX、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値Dk、前記測定位置Lxにおける減肉部での感光体濃度値Dgおよび前記濃度勾配Xから、測定位置Lxにおける減肉部での推定透過肉厚ttxを求めたのち、
前記検査対象配管の減肉部の深さdxを
dx=(TTX−ttx)/K
から推定することを特徴とする配管の減肉深さ推定方法。 - 請求項1に記載の配管の減肉深さ推定方法において、一方の軸を透過肉厚t、他方の軸を感光体濃度値Dとした方眼紙上に、前記濃度勾配Xをもった回帰直線を描くとともに、前記測定位置Lxにおける健全部透過肉厚TTXとその健全部透過肉厚TTXでの感光体濃度値Dkとに対応する点をプロットし、この点に前記回帰直線が重なるように回帰直線を平行移動させ、この回帰直線上において前記測定位置Lxにおける減肉部の感光体濃度値Dgに対応する点をプロットし、この点に対応する前記一方の軸の値から前記推定透過肉厚ttxを求めることを特徴とする配管の減肉深さ推定方法。
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