JP3788858B2 - レンズ用樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビデオプロジェクター、プロジェクションテレビ、液晶ディスプレーなどに使用するフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の製造に適するレンズ用樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のレンズは、プレス法、キャスト法等の方法により成形されていた。前者のプレス法は加熱、加圧、冷却のサイクルで製造するため生産性が悪かった。又、後者のキャスト法は金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間ガ長くかかるとともに金型が多数個必要なために、最近ではレンズ型と透明樹脂基材(例えば、ポリカーボネート、塩ビ、ポリエステル、アクリル、スチレン等)との間にレンズ部形成用の紫外線硬化型樹脂液を介在させる方法が種々提案されている(例えば、特開昭61−177215、特開昭61−248707、特開昭61−248708、特開昭63−163330、特開昭63−167301、特開昭63−199302、特開昭64−6935等を参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
レンズ型と透明樹脂基材との間に紫外線硬化型樹脂を介在させてレンズ部を形成する技術においては、レンズ部と透明樹脂基材との間に十分な密着性が得られないことが多い。とりわけ、透明性や耐候性に優れ、この種の材料として好適とされているメタクリル樹脂を含有する樹脂基材を用いた場合、紫外線硬化型樹脂との密着性が不十分であるため密着性を高めることが強く望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究の結果、紫外線による硬化が速く、樹脂基材、特にメタアクリル樹脂に対して密着性に優れ、又その硬化物が脱型性、復元性、耐擦傷性に優れ、高屈折率である樹脂組成物を見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)ウレタン(メタ)アリクレートおよび/又はエポキシ(メタ)アクリレート(A)、式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)
【0005】
【化2】
【0006】
(式(1)中、R1 、R2 は、それぞれ水素原子又はCH3 であり、nは1〜5の数である。)、(B)成分以外の反応性単量体(C)及び光重合開始剤(D)を含有することを特徴とするレンズ用樹脂組成物、
(2)ウレタン(メタ)アクリレートおよび/又はエポキシ(メタ)アクリレート(A)の屈折率(25℃)が1.49以上である(1)記載のレンズ用樹脂組成物、
(3)光重合開始剤(D)が、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤(D−1)と1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび/又は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(D−2)との混合物である(1)又は(2)に記載のレンズ用樹脂組成物、
(4)(1)〜(3)記載のレンズ用樹脂組成物の硬化物、
(5)屈折率(25℃)が1.53以上である(4)記載の硬化物、
(6)硬化物がフレネルレンズ又はレンチキュラーレンズである(4)又は(5)に記載の硬化物、
に関する。
【0007】
本発明では、(A)成分としてウレタン(メタ)アクリレート(A−1)および/又はエポキシ(メタ)アクリレート(A−2)を使用する。ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)としては、例えば1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート(a)と有機ジイソシアネート(b)とジオール化合物(c)とを反応させることにより得ることができる。
【0008】
1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート(a)の具体例としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(重合度:平均値としてn=2〜10)、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(重合度:平均値としてn=2〜10)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましいものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシ(C2〜C4)アルキルアクリレートを挙げることかできる。
【0009】
有機ジイソシアネート(b)の具体例としては、例えばトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。好ましいものとしては、トリレンジイソシアネート、シキシレンジイソシアネート等の芳香族有機ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0010】
ジオール化合物(c)の代表的なものとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、トリシクロデカンジメチロール、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール、ビスフェノールAポリエトキシグリコール、ビスフェノールAポリプロポキシグリコール、ポリテトラメチレングリコール、等のジオール(C−1)、ジオール(C−1)と2塩基酸又はその無水物(例えば、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等)の反応物であるポリエステルジオール(C−2)、前記ジオール(C−1)とε−カプロラクトンとの反応物、あるいは前記ポリエステルジオール(C−2)とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンジオール(C−3)、ポリカーボネートジオール(C−4)等を挙げることができる。
【0011】
ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)を製造するには、例えば前記ジオール化合物(c)と有機ジイソシアネート(b)とを反応させ、次いでこの反応物に1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート(a)を反応させればよい。前記ジオール化合物(c)と有機ジイソシアネート(b)の使用割合は、前記(c)成分の水酸基1当量に対して(b)成分のイソシアネート基の1.1〜2.0当量が好ましい。特に好ましくは1.5〜2.0当量である。このウレタン化反応は当業者に公知の手順において行うことができる。このウレタン化反応の反応温度は通常常温〜100℃、好ましくは50〜85℃である。そして、次に(メタ)アクリレート化反応においては、前記ウレタン化反応で得られた末端イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基の1当量に対して(a)成分の水酸基の0.9〜1.5当量を反応させるのが好ましく、特に好ましくは1.0〜1.1当量である。この反応には、反応中のラジカル重合によるゲル化を防ぐ為に反応混合物を通常50〜2000ppmのハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、p−ベンゾキノン等の重合禁止剤を添加しておくことが好ましい。又、このアクリレート化反応の反応温度は、通常常温〜100℃、好ましくは50〜85℃である。かかるイソシアネート基と水酸基との反応は無触媒で進行するが、例えば、トリエチルアミン、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジアセテート等の慣用の触媒を使用することが好ましい。
【0012】
(A)成分のうちエポキシ(メタ)アクリレート(A−2)の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂等)と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましいものとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0013】
前記、式(1)で表される(メタ)アクリレート(B)としては、例えば次の化合物を挙げることができる。
【0014】
【化3】
【0015】
これらの化合物は市場より入手することができる。例えば、式(1−1)で示されるp−クミルフェニルオキシエチルアクリレートは東亜合成化学工業(株)よりアロニックス M−110(屈折率(25℃):1.555)という品名で市販されている
【0016】
本発明では、(B)成分以外の反応性単量体(C)を使用する。反応性単量体(C)の具体例としては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリ(重合度:平均値としてn=2〜4)エトキシアクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルポリ(重合度:平均値としてn=2〜4)エトキシアクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリ(重合度:平均値としてn=2〜15)エトキシジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0017】
これらの(B)成分以外の反応性単量体(C)のうち好ましいものとしては、例えばフェノキシエチルアクリレート、フェニルポリ(重合度:平均値としてn=2〜4)エトキシアクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルアクリレート、o−フェニルフェニルポリ(重合度:平均値としてn=2〜4)エトキシアクリレート、トリブロモフェニルオキシエチルアクリレート、ビスフェノールAポリ(重合度:平均値としてn=4〜10)エトキシジアクリレート等の屈折率の高いアクリレートモノマー等を挙げることができる。
【0018】
光重合開始剤(D)の具体例としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0019】
これらの光重合開始剤(D)のうち、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび/又は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(D−2)と2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系光重合開始剤(D−1)を組み合せて使用することが好ましい。前記、(D−2)と(D−1)の使用割合は、(D−2):(D−1)=90〜99.5:0.5〜10が好ましく、特に好ましくは95〜99.5:0.5〜5である。
【0020】
本発明の樹脂組成物中、(A)成分の使用量は10〜70重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは20〜60重量%であり、(B)成分の使用量は、5〜60重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜50重量%であり、(C)成分の使用量は、5〜60重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜50重量%であり、(D)成分の使用量は、0.1〜15重量%、範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を、さらに所望により、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、非反応性ポリマー(例えば、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ(メタ)アクリレートポリマー等)等を添加し、溶解、混合して得ることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、常法に従い、本発明の樹脂組成物に紫外線を照射することにより得ることができる。具体的には、本発明のレンズ用樹脂組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を、例えばフレネルレンズ又はレンチキュラーレンズの形状を有するスタンパー上に塗布し、該紫外線硬化型樹脂組成物の層を設け、その層の上に透明樹脂基板を接着させ、次いでその状態で該透明樹脂基板側から高圧水銀灯などにより、紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから剥離する。この様にして通常屈折率(25℃)が1.53以上、好ましい条件下では1.56以上を有したフレネルレンズあるいはレンチキュラーレンズが得られる。透明樹脂板の材質としては、例えばポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、またはこれらの混合樹脂等があげられる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明が下記、実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「重量部」を示す。
【0024】
((A)成分の合成例)
合成例1.
ポリエステルジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオールとテレフタル酸の反応物、分子量1000)500部、エチレングリコール26.3部、トリレンジイソシアネート321.6部を仕込み、昇温後80℃で10時間反応し、次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート225部、メトキノン0.54部を仕込み、80℃で10時間反応を行い、ウレタンアクリレート(A−1−1)を得た。屈折率(25℃)は、1.59であった。
【0025】
合成例2.
ビスフェノールAポリ(n=10)エトキシジオール665部、トリレンジイソシアネート348部を仕込み、昇温後80℃で10時間反応し、次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート234部、メトキノン0.6部を仕込み80℃で10時間反応を行いウレタンアクリレート(A−1−2)を得た。屈折率(25℃)は、1.550であった。
【0026】
実施例1〜3、比較例1
表1に示すような組成(数値は重量部を示す。)の紫外線硬化型樹脂組成物をフレネルレンズ金型と厚さ2.5mmのメタクリル樹脂系基板との間に注入し、常法により紫外線を照射して硬化させフレネルレンズを得た。実施例中の評価は次の方法で行った。
【0027】
(1)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させる時の難易。
○・・・・金型からの離型性が良好
△・・・・離型がやや困難
×・・・・離型が困難あるいは型のこりがある。
(2)型再現性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の表面形状と金型の表面形状を観察した。
○・・・・再現性良好
×・・・・再現性不良
【0028】
(3)密着性:透明メタクリル樹脂系基板上に紫外線硬化性樹脂組成物を膜厚200μm、幅20mm、長さ150mmに塗布し、次いで高圧水銀灯(80w/cm、オゾンレス)で50mj/cm2 の照射を行い硬化させテストピースを作成し、剥離強度の測定を行った。(剥離強度の測定法:引張試験機でメタクリル樹脂系基板上の硬化した樹脂膜の90℃剥離強度を測定した。(剥離スピード100mm/分)
◎・・・・剥離強度 2kg/cm以上
○・・・・剥離強度 1〜2kg/cm
△・・・・剥離強度 0.5〜1kg/cm
×・・・・剥離強度 0.5kg/cm以下
【0029】
(4)復元性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の金型より離型した面に直径10mmの金属丸棒を強く押しつけた後、面についた丸棒の跡が完全に消失するまでの時間を測定した。
◎・・・・瞬時に消失した
○・・・・60秒以内に消失した
△・・・・1〜60分の間に消失した
×・・・・消失しない
【0030】
(5)耐擦傷性:硬化した紫外線硬化性樹脂層を金型より離型した面にメタクリル樹脂系基板(幅100mm、長さ100mm、厚さ2.5mm)を縦に強く押しつけながら約100mmの間隔を1往復約1秒のスピードで10往復させた後、面についた傷を観察した。
◎・・・・傷がまったく認められない
○・・・・スジ状の傷が数本認められる
△・・・・部分的に帯状の傷が認められる
×・・・・全面的に帯状の傷が認められる
(6)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化性樹脂の屈折率(25℃)を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
*1 KAYARAD R−310:日本化薬(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート1004)のエポキシアクリレートで2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレート50%希釈品、屈折率(25℃)は1.555。
*2 アロニックスM−110:東亜合成化学工業(株)製、p−クミルフェニルオキシエチルアクリレート、屈折率(25℃)は1.555。
【0033 】
表1の評価結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物の硬化物は、復元性や耐擦傷性に優れ、離型性、密着性、型再現性が良好で、屈折率(25℃)は1.53以上の高屈折率であった。
【0034 】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、復元性、耐擦傷性に優れ、離型性、密着性、型再現性も良好でフレネルレンズやレンチキュラーレンズに適している。
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