JP3788384B2 - 誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、および通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体ブロックの内部に内導体を形成した内導体形成孔を備え、外面に外導体を備えて成る誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよびそれを用いた通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘電体フィルタについて、図11を参照して説明する。
図11の(a)は誘電体フィルタの外観斜視図であり、(b)は開放端側の正面図である。
図11において、1は誘電体ブロック、2a〜2cは内導体形成孔、3a〜3cは内導体、4は外導体、5は外導体非形成部、6は入出力電極、7a〜7cは内導体非形成部である。
【0003】
略直方体形状の誘電体ブロック1の内部には、一方の面からこれに対向する面にかけて貫通する、内面に内導体3a〜3cをそれぞれ形成した内導体形成孔2a〜2cが設けられている。一方、誘電体ブロック1の外面には、略全面に外導体4が形成されている。内導体形成孔2a〜2cの一方の開口端の付近における内面には内導体非形成部7a〜7cが設けられ、内導体3a〜3cが外導体4から離間されて開放端が構成されている。また、外導体4に短絡する開口端を短絡端としている。このようにして、内導体3a〜3cと誘電体ブロック1と外導体4とからなる誘電体共振器を構成している。
【0004】
また、誘電体ブロック1の外面には、内導体形成孔の配列方向の両端面から実装基板に対向する実装面にかけて、それぞれ外導体非形成部5により外導体4から離間した入出力電極6が形成されている。
【0005】
このように、入出力電極6と三つの誘電体共振器とから、誘電体フィルタを構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の誘電体フィルタにおいては、次のような解決すべき課題があった。
【0007】
図12の(a)は二段の誘電体共振器の等価回路図であり、(b)はevenモード、oddモードの別による電気力線の状態を表した図であり、(c)は飛びの結合容量を考慮した二段の誘電体共振器の等価回路図である。
【0008】
誘電体ブロックを用いて複数の共振器から構成される一体型の誘電体フィルタにおいては、共振器の開放端と接地電極である外導体との間に図12の(a)に示すように先端容量Csが生じる。
この先端容量Csが生じる場合の電気力線は、evenモードとoddモードでそれぞれ図12の(b)に示すように生じる。
【0009】
evenモードでは、電気力線は全て、共振器と接地電極との間に生じる。一方、oddモードでは、電気力線の一部が共振器と共振器との間に生じる。このため、共振器と接地電極との間に生じる先端容量Csは、oddモードの方がevenモードよりも小さくなり、共振器の開放端間に飛びの先端容量dCsが発生する。ここで、Csはevenモードを基準にしているため、この飛びの結合容量dCsはマイナス値をとる。
【0010】
このように共振器の開放端間に発生する飛びの結合容量dCsを考慮すると、図12の(a)に示す等価回路は、図12の(c)に示す等価回路で表すことができる。
【0011】
次に、誘電体共振器が三段である場合について、図13を参照して説明する。
図13の(a)は三段の誘電体共振器の等価回路図であり、(b)は三段の誘電体共振器を備えた誘電体フィルタの減衰特性図である。
図13の(a)に示すように、各共振器は開放端と接地電極である外導体との間に先端容量Csを生じており、それぞれ隣り合う共振器の開放端間には飛びの結合容量dCs1を生じている。また、それぞれ隣り合わない両端の共振器の開放端間においても、隣り合う共振器の開放端間に生じる飛びの結合容量dCs1よりも微少な飛びの結合容量dCs2を生じている。
【0012】
ここで、隣り合う共振器間に生じる飛びの結合容量dCs1は、共振器間結合容量に含まれるため、減衰特性に大きな影響を与えないが、隣り合わない共振器間に生じる飛びの結合容量dCs2は、共振器間結合とは異なるため、図13の(b)に示すように、減衰極の位置に影響を及ぼす。例えば、三段の共振器からなり、それぞれがコムライン(誘導性)結合した誘電体フィルタの場合、通過帯域の高域側に二つの減衰極を生じるが、この飛びの結合容量dCs2が大きいと減衰極間隔が広くなり、飛びの結合容量dCs2が小さいと減衰極間隔が狭くなる。このため、この減衰極の生じる位置によっては、通過帯域外に所望の減衰特性が得られない。
【0013】
この課題を解決するため、図14に示すような誘電体フィルタが考えられる。図14は誘電体フィルタの外観斜視図である。
図14の(a)に示す誘電体フィルタは、内導体形成孔2bの内径が他の内導体形成孔2a,2cと比べて大きいものであり、他の構成は図11に示した誘電体フィルタと同じである。また、図14の(b)に示す誘電体フィルタは、内導体形成孔2bの内径が他の内導体形成孔2a,2cと比べて小さいものであり、他の構成は図11に示した誘電体フィルタと同じである。
【0014】
図14の(a)に示した誘電体フィルタでは、内導体形成孔2bの内径が大きいため、内導体3bと外導体4との間隔が狭くなり、内導体3aと内導体3cとの間に生じる飛びの結合容量dCs2は小さくなる。しかし、内導体形成孔2bが最適なQoを得られる内径ではないため、共振器のQoは小さくなってしまい、挿入損失特性に悪影響を与える。
【0015】
また、図14の(b)に示した誘電体フィルタでは、内導体形成孔2bの内径が小さいため、内導体3bと外導体4との間隔が広くなり、内導体3aと内導体3cとの間に生じる飛びの結合容量dCs2は大きくなる。しかし、内導体形成孔2bが最適なQoを得られる内径ではないため、この場合でも共振器のQoは小さくなってしまい、挿入損失に悪影響を与える。
【0016】
この発明の目的は、共振器のQoの劣化を抑制しながら、隣り合わない共振器間に発生する飛び結合容量を制御し、これにより減衰極を所望の位置に設定し、通過帯域外の減衰特性を改善した誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、およびそれらを備えた通信装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明は、配列形成された三つ以上の内導体形成孔のうち、連続する三つの内導体形成孔の中央に位置する内導体形成孔の横断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を両隣に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成し、両隣に位置する二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを小さくして、当該二つの内導体形成孔による共振器間の飛び結合に起因する二つの減衰極の間隔が狭くなる方向に、減衰極周波数をシフトさせる。
【0018】
また、この発明は、配列形成された三つ以上の内導体形成孔のうち、連続する三つの内導体形成孔の両端に位置する内導体形成孔の横断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を中央に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成し、両端に位置する二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを大きくして、当該二つの内導体形成孔による共振器間の飛び結合に起因する二つの減衰極の間隔が広くなる方向に、減衰極周波数をシフトさせる。
【0020】
また、この発明は、内導体形成孔を開放端側と短絡端側とで内径の異なり、開放端側を内径大部とし短絡端側を内径小部するステップ孔とし、中央に位置する内導体形成孔の内径大部を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内径大部の配列方向に垂直な方向の幅を両隣に位置する内導体形成孔の内径大部のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成する。
また、この発明は、内導体形成孔を開放端側と短絡端側とで内径の異なり、開放端側を内径大部とし短絡端側を内径小部するステップ孔とし、両端に位置する内導体形成孔の内径大部を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内径大部の配列方向に垂直な方向の幅を中央に位置する内導体形成孔の内径大部のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成する。
【0021】
また、この発明は、内導体形成孔の開放端側の軸位置と短絡端側の軸位置とを異ならせて誘電体フィルタを構成する。
【0022】
また、この発明は、前記誘電体フィルタを備えて誘電体デュプレクサを構成する。
【0023】
また、この発明は、前記誘電体フィルタ、または前記誘電体デュプレクサを備えて通信装置を構成する。
【0024】
前記「横断面」とは、内導体形成孔の延びる方向に対して垂直な方向の断面である。以下、内導体の横断面形状を、単に内導体の断面形状という。
【0025】
【発明の実施の形態】
第1の実施形態に係る誘電体フィルタの構成について、図1〜図3を参照して説明する。
【0026】
図1の(a)は誘電体フィルタの外観斜視図、(b)はその開放端側の正面図である。(c)は入出力電極が外導体に設けられていない誘電体フィルタの部分外観斜視図である。
図1において、1は誘電体ブロック、2a〜2cは内導体形成孔、3a〜3cは内導体、4は外導体、5は外導体非形成部、6は入出力電極、7a〜7cは内導体非形成部、11a,11bは入出力ピンである。
【0027】
略直方体形状の誘電体ブロック1の内部には、一方の面からこれに対向する面にかけて貫通する、内面に内導体3a〜3cをそれぞれ形成した内導体形成孔2a〜2cが設けられている。一方、誘電体ブロック1の外面の略全面に外導体4が形成されている。内導体形成孔2a〜2cの内面には、一方の開口端付近に内導体非形成部7a〜7cが設けられており、これらの部分で内導体3a〜3cが外導体4から離間されている。この内導体非形成部7a〜7cを開放端とし、外導体4に短絡する開口端を短絡端としている。このようにして、内導体3a〜3cと誘電体ブロック1と外導体4とからなる誘電体共振器をそれぞれ構成している。
【0028】
ここで、内導体形成孔2a,2cは断面円形に形成されており、内導体形成孔2bは内導体形成孔の配列方向の径よりも配列方向に垂直な方向の径が長い長円形の断面形状で形成されている。
【0029】
また、誘電体ブロック1の外面には、内導体形成孔2a〜2cの配列方向の両端面から実装基板に対向する実装面にかけて、それぞれ外導体非形成部5により外導体4から離間した二つの入出力電極6が形成されている。
【0030】
このように、二つの入出力電極6と三つの誘電体共振器とから、誘電体フィルタを構成している。
【0031】
このような構造とすることにより、内導体形成孔2bの開口端と実装面およびこれに対向する上面との間が狭くなる。このため、内導体3aと3cとの間に誘電体ブロックを介して発生する飛びの結合容量が小さくなる。
【0032】
図2は従来品と本発明品の開放端側の正面図であり、(a)は中央の内導体形成孔の断面が円形で全て径が等しい場合、(b)は中央の内導体形成孔の断面が円状で径が大きい場合、(c)は本発明に係る、中央の内導体形成孔の断面が長円形の場合をそれぞれ示している。なお、図2に示す寸法の単位は[mm]である。
また、図3は、図2の(a),(b),(c)に示したそれぞれの構造の誘電体フィルタの周波数特性を示した図である。
【0033】
また、図2の(a),(b),(c)に示したそれぞれの構造の誘電体フィルタの飛びの結合容量およびQoについて、表1に示す。
なお、evenモードとoddモードのそれぞれにQoがあるが、一般にoddモードのQoの方が悪く、挿入損失に与える影響が大きい。したがって、oddモードのQoが良い方が、フィルタとして高特性である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、従来の内導体形成孔の断面が大円形の誘電体フィルタおよび本発明の内導体形成孔の断面が長円形の誘電体フィルタは、従来の内導体形成孔の断面が円形の誘電体フィルタよりも、飛びの結合容量は減少する。また、Qo(odd)は円形型に比べて、大円形型、長円形型ともに低下する。
【0036】
しかし、内導体形成孔の断面が長円形の誘電体フィルタは、内導体形成孔の断面が大円形の誘電体フィルタと比較して、飛びの結合容量が同じ程度であっても、Qo(oddモード)の劣化が少ない。
【0037】
図3に示すように、内導体形成孔の断面が長円形の誘電体フィルタ(図2の(c))と内導体形成孔の断面が大円形の誘電体フィルタ(図2の(b))は、内導体形成孔の断面が円形である従来の誘電体フィルタ(図2の(a))よりも、飛びの結合容量による二つの減衰極の間隔が狭くなる方向に減衰極周波数がシフトし、両誘電体フィルタは略同じ周波数特性を有する。
【0038】
しかし、内導体形成孔の断面が長円形である本発明の誘電体フィルタは、表1に示したように、Qo(odd)が高いため、挿入損失を少なくすることができる。例えば、図3に示す特性図で、1910MHz点(破線で示す周波数)での挿入損失は、内導体形成孔が断面大円形の誘電体フィルタが2.33[dB]であり、内導体形成孔が断面長円形の誘電体フィルタが2.20[dB]である。
【0039】
このように、内導体形成孔の断面を見たとき、内導体形成孔の配列方向に平行な幅より配列方向に垂直な幅が大きくなるように、内導体形成孔を設けることにより、挿入損失の劣化を抑制しながら、飛び結合に起因する二つ減衰極の間隔が狭くなる方向に減衰極周波数をシフトさせることができる。
【0040】
なお、図1の(c)に示すように、入出力電極が外導体4に設けられておらず、内導体形成孔2a,2cの開放端側に入出力ピン11a,11bを挿入することにより、外部回路と接続する構造の誘電体フィルタを用いても同様の効果が得られる。
【0041】
次に、第2の実施形態に係る誘電体フィルタの構成について、図4を参照して説明する。
図4の(a)は誘電体フィルタの外観斜視図であり、(b)は開放端側の正面図である。
【0042】
図4に示す誘電体フィルタでは、内導体形成孔2a,2b,2cの断面形状は、が内導体形成孔の配列方向の長さよりも垂直方向の長さが長い長円形であり、内導体形成孔2a,2cの長径は内導体形成孔2bの長径よりも短い。その他の構成は図1に示した誘電体フィルタと同様である。
【0043】
このような構造とすることにより、飛びの結合容量を発生する内導体形成孔の形状を変化させることができ、更に広い範囲で減衰極の周波数位置を調整することができる。
【0044】
例えば、中央の内導体形成孔2bの長径を一定とすれば、両端の内導体形成孔2a,2cの長径を長くする程、両端の共振器間で生じる飛びの結合容量が増加し、二つの減衰極の間隔を広くする方向に減衰極周波数をシフトすることができる。
【0045】
次に、第3の実施形態に係る誘電体フィルタの構成について、図5,図6を参照して説明する。
【0046】
図5の(a)は誘電体フィルタの外観斜視図であり、(b)は開放端側の正面図である。
図6は図5に示した構造の誘電体フィルタと、図2の(a)に示した従来構造の誘電体フィルタの周波数特性図である。
【0047】
図5に示す誘電体フィルタでは、内導体形成孔2aおよび2cの断面形状は、内導体形成孔の配列方向の長さよりも垂直方向の長さが長い長円形であり、内導体形成孔2bの断面形状は円形である。その他の構成については、図1の誘電体フィルタと同じである。
【0048】
このような構成とすることにより、両端の内導体形成孔2a,2cからなる共振器間に生じる飛びの結合容量が大きくなり、第1の実施形態に示した例とは逆に、飛びの結合容量による二つの減衰極の間隔を広くすることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、中央の内導体形成孔2bを断面円形になるように設けたが、両端の内導体形成孔2a,2cの長径よりも短い長径を有する内導体形成孔を設けても良い。このような構造とすることで、減衰極周波数の位置を調整することができる。
【0050】
次に、第4の実施形態に係る誘電体フィルタの構成について、図7を参照して説明する。
図7の(a)は誘電体フィルタの外観斜視図であり、(b)は開放端側の正面図である。
また、図7の(c)は他の内導体形成孔の構造を有する誘電体フィルタの正面図である。
図7の(a),(b)に示す誘電体フィルタにおいて、各内導体形成孔は短絡端側の内径よりも開放端側の内径が大きいステップ孔となっている。また、内導体形成孔2a,2cは短絡端側と開放端側で軸位置が異なり、それぞれ内導体形成孔2bに近接する側に短絡端側の軸位置がシフトしている。その他の構成については、図1に示した誘電体フィルタと同じである。
【0051】
また、図7の(c)に示す誘電体フィルタにおいて、各内導体形成孔は短絡端側と開放端側のいずれも断面形状を長円形としている。また、短絡端側の内径よりも開放端側の内径が大きいステップ孔としている。さらに、内導体形成孔2a,2cの短絡端側の孔の軸位置は開放端側の孔の軸位置から、内導体形成孔の配列端面側で実装面側にシフトさせており、内導体形成孔2bの短絡端側の孔の軸位置は実装面に対向する上面側にシフトさせている。その他の構成は図4に示した誘電体フィルタと同じである。
【0052】
このような構成とすることにより、ステップ孔の内径、形状、長さ、短絡端側と開放端側の軸位置の関係を変更することで、飛びの結合容量の調節の自由度が上がる。また、共振器間の結合および共振器と接地電極との間の分布定数の自由度が上がる。
【0053】
なお、前述の実施形態における誘電体フィルタの入出力端子は、内導体形成孔の配列端面から実装面にかけて形成されている。この形態の他に、内導体形成孔の軸方向と一致する軸方向に、内面に電極を備えた励振孔を設け、これに導通する入出力電極を内導体形成孔の開口面から実装面にかけて形成してもよい。
【0054】
次に、第5の実施形態に係る誘電体デュプレクサの構成について、図8を参照して説明する。
【0055】
図8は誘電体デュプレクサの外観斜視図である。
図8において、1は誘電体ブロック、2a〜2fは内導体形成孔、3a〜3fは内導体、4は外導体、5は外導体非形成部、6は入出力電極、9はアンテナ端子、10はアンテナ励振孔である。
【0056】
略直方体形状の誘電体ブロック1の内部には、一方の面からこれに対向する面にかけて貫通する、内面に内導体3a〜3fをそれぞれ形成した内導体形成孔2a〜2fが設けられている。一方、誘電体ブロック1の外面には、略全面に外導体4が形成されている。内導体形成孔2a〜2fの内面には、内導体非形成部7a〜7fが設けられており、内導体3a〜3fが外導体4から離間されている。これら内導体非形成部7a〜7fを開放端とし、外導体4に短絡する開口端を短絡端としている。このようにして、内導体3a〜3fと誘電体ブロック1と外導体4とからなる誘電体共振器をそれぞれ構成している。
【0057】
ここで、内導体形成孔2a,2c,2d,2fの断面形状は、円形であり、内導体形成孔2b,2eの断面形状は、内導体形成孔2a〜2fの配列方向の長さよりも配列方向に垂直な方向の長さが長い長円形である。
【0058】
一方、誘電体ブロック1の外面には、内導体形成孔2a〜2fの配列方向の両端面から実装基板に対向する実装面にかけて、それぞれ外導体非形成部5により外導体4から離間した入出力電極6が形成されている。また、内導体形成孔2cと2dとの間には、実装面から短絡面にかけて、外導体非形成部5により外導体4から離間したアンテナ端子9が形成されている。アンテナ励振孔10は、内導体形成孔2a〜2fの軸方向と同じ方向に設けられている。アンテナ励振孔10の内面には、電極が形成されていて、この電極がアンテナ端子9に導通している。
【0059】
このように、内導体形成孔2a〜2cからなる三つ誘電体共振器と入出力電極6とアンテナ端子9とから、一つの誘電体フィルタを構成し、内導体形成孔2d〜2fからなる三つ誘電体共振器と入出力電極6とアンテナ端子9とから、もう一つの誘電体フィルタを構成している。これらの二つ誘電体フィルタの一方を送信側フィルタとし、他方を受信側フィルタとすることにより、誘電体デュプレクサとして用いる。
【0060】
このような構造とすることにより、送信側フィルタ、および受信側フィルタのそれぞれで減衰極の調整を行い、通過帯域外の減衰特性を調整し改善した誘電体デュプレクサを構成することができる。
【0061】
次に、第6の実施形態に係る誘電体デュプレクサの構成について、図9を参照して説明する。
【0062】
図9は誘電体デュプレクサの外観斜視図である。
図9において、1は誘電体ブロック、2a〜2hは内導体形成孔、3a〜3hは内導体、4は外導体、5は外導体非形成部、6a,6bは入出力電極、7a〜7hは内導体非形成部、9はアンテナ端子、10a,10b,10cは励振孔である。
【0063】
略直方体形状の誘電体ブロック1の内部には、一方の面からこれに対向する面にかけて貫通する、内面に内導体3a〜3hをそれぞれ形成した内導体形成孔2a〜2hが設けられている。一方、誘電体ブロック1の外面には、略全面に外導体4が形成されている。内導体形成孔2a〜2hの内面には、内導体非形成部7a〜7hが設けられており、内導体3a〜3hが外導体4から離間されている。これら内導体非形成部7a〜7hを開放端とし、外導体4に短絡する開口端を短絡端としている。このようにして、内導体3a〜3hと誘電体ブロック1と外導体4とからなる誘電体共振器を構成している。
【0064】
ここで、内導体形成孔2b,2d,2f,2g,2hの断面形状は円形である。内導体形成孔2a,2c,2eの断面形状は、内導体形成孔の配列方向の長さよりも配列方向に垂直な方向の長さが長い長円形である。
【0065】
一方、誘電体ブロック1の外面には、実装面から短絡面にかけて、それぞれ外導体非形成部5により外導体4から離間した入出力電極6a,6bとアンテナ端子9が形成されている。入出力端子6aは内導体形成孔2aと2gとの間に、入出力端子6bは内導体形成孔2fと2hとの間に、アンテナ端子9は内導体形成孔2cと2dとの間にそれぞれ形成されている。
【0066】
励振孔10a〜10cは、内導体形成孔2a〜2hの軸方向と同じ軸方向に設けられている。これらの励振孔10a〜10cの内面には電極が形成されていて、入出力端子6a,6bおよびアンテナ端子9にそれぞれ導通している。
【0067】
このように、内導体形成孔2a〜2cからなる三つ誘電体共振器、入出力電極6a、アンテナ端子9、およびトラップ共振器として機能する、内導体形成孔2gからなる誘電体共振器により一つの誘電体フィルタを構成している。また、内導体形成孔2d〜2fからなる三つ誘電体共振器、入出力電極6b、アンテナ端子9、およびトラップ共振器として機能する、内導体形成孔2hからなる誘電体共振器によりもう一つの誘電体フィルタを構成している。これらの誘電体フィルタの一方を送信側フィルタとし、他方を受信側フィルタとすることにより、誘電体デュプレクサとして用いる。
【0068】
このような構造とすることにより、送信側フィルタ、および受信側フィルタのそれぞれで減衰極の調整を行い、通過帯域外の減衰特性を調整し、改善した誘電体デュプレクサを構成することができる。これにより、送信側フィルタの通過帯域と受信側フィルタの通過帯域間の周波数領域における相互信号間の干渉を抑制することができる。また、前記周波数領域に減衰極が発生するようにトラップ共振器を備えることにより、さらに抑制効果を高めることができる。
【0069】
なお、前述の第1、第2、第3の実施形態に示した誘電体フィルタや、第5、第6の実施形態に示した誘電体デュプレクサは、内導体形成孔をストレート孔構造としたが、開放端側と短絡端側とで内径の異なる複数の内導体形成孔を有するステップ孔構造としてもよい。
【0070】
次に、第7の実施形態に係る通信装置の構成について、図10を参照して説明する。
【0071】
図10は通信装置のブロック図である。
図10において、ANTは送受信アンテナ、DPXはデュプレクサ、BPFa,BPFb,BPFcはそれぞれ帯域通過フィルタ、AMPa,AMPbはそれぞれ増幅回路、MIXa,MIXbはそれぞれミキサ、OSCは発振器、DIVは分周器(シンセサイザー)である。MIXaはDIVから出力される周波数信号をIF信号で変調し、BPFaは送信周波数の帯域のみを通過させ、AMPaはこれを電力増幅してDPXを介しANTより送信する。AMPbはDPXから出力される信号を増幅し、BPFbはAMPbから出力される信号のうち受信周波数帯域のみを通過させる。MIXbはBPFcより出力される周波数信号と受信信号とをミキシングして中間周波信号IFを出力する。
【0072】
図10に示したフィルタには図1、図4、図5、図7に示した構造の誘電体フィルタを、また、デュプレクサには図8、図9に示した構造の誘電体デュプレクサを用いることができる。このようにして全体に簡素な構造で優れた通信特性を有する通信装置を構成することができる。
【0073】
【発明の効果】
この発明によれば、連続する三つの内導体形成孔の中央に位置する内導体形成孔の断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を両隣に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成することにより、両側にある二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを小さくして、飛び結合に起因する二つの減衰極の間隔を狭くすることにより、挿入損失の劣化を抑制しながら、所望の通過帯域外の減衰特性を得ることができる。
【0074】
また、この発明によれば、連続する三つの内導体形成孔の両端に位置する内導体形成孔の断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状にするとともに、内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を中央に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状にして誘電体フィルタを構成することにより、両端にある二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを大きくして、飛び結合に起因する二つの減衰極の間隔を広くすることにより、挿入損失の劣化を抑制しながら、所望の通過帯域外の減衰特性を得ることができる。
【0075】
また、この発明によれば、全ての内導体形成孔の断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とすることにより、飛び結合容量の設計自由度が向上し、広い周波数範囲で減衰極周波数の位置を調整し、減衰特性を改善することができる誘電体フィルタを構成することができる。
【0076】
また、この発明によれば、内導体形成孔を開放端側と短絡端側とで内径の異なるステップ孔とし、内導体形成孔の開放端側の形状が内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とすることにより、ステップ孔の形状により結合容量を設定することができる。これにより、一種類の外形寸法で複数の結合容量が設定でき、結合容量の設計自由度を向上させることができる。
【0077】
また、この発明によれば、内導体形成孔の開放端側の軸位置と短絡端側の軸位置とを異ならせることにより、複数の結合容量を設計することができる。これにより、設計自由度の高い誘電体フィルタを構成することができる。
【0078】
また、この発明によれば、前記誘電体フィルタを備えることにより、送信側および受信側のそれぞれで通過帯域外の減衰特性の改善した誘電体デュプレクサを構成することができる。
【0079】
また、この発明によれば、前記誘電体フィルタ、または前記誘電体デュプレクサを備えることにより、優れた通信特性を有する通信装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る誘電体フィルタの外観斜視図および正面図
【図2】第1の実施形態に係る誘電体フィルタおよび従来の誘電体フィルタの正面図
【図3】第1の実施形態に係る誘電体フィルタおよび従来の誘電体フィルタの減衰特性図
【図4】第2の実施形態に係る誘電体フィルタの外観斜視図および正面図
【図5】第3の実施形態に係る誘電体フィルタの外観斜視図および正面図
【図6】第3の実施形態に係る誘電体フィルタおよび従来の誘電体フィルタの減衰特性図
【図7】第4の実施形態に係る誘電体フィルタの外観斜視図および正面図
【図8】第5の実施形態に係る誘電体デュプレクサの外観斜視図
【図9】第6の実施形態に係る誘電体デュプレクサの外観斜視図
【図10】第7の実施形態に係る通信装置のブロック図
【図11】従来の誘電体フィルタの外観斜視図および正面図
【図12】二段の誘電体共振器の等価回路図およびこれに生じる電気力線の状態を示した図
【図13】三段の誘電体共振器の等価回路図およびこれを備えた誘電体フィルタの減衰特性図
【図14】従来の誘電体フィルタの外観斜視図
【符号の説明】
1−誘電体ブロック
2a〜2h−内導体形成孔
3a〜3h−内導体
4−外導体
5−外導体非形成部
6,6a,6b−入出力電極
7a〜7h−内導体非形成部
9−アンテナ端子
10,10a,10b,10c−励振孔
11a,11b−入出力ピン
Claims (7)
- 略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、該誘電体ブロックの一方の面からそれに対向する他方の面にかけてそれぞれの内面に内導体を形成した少なくとも三つの内導体形成孔を、所定配列方向に連続して設け、前記誘電体ブロックの外面に外導体を形成し、前記内導体形成孔の一方の開口端付近に、前記内導体を前記外導体から離間する内導体非形成部を設けることにより、該内導体非形成部を開放端とし、他方の開口端を外導体に導通させて短絡端とした誘電体フィルタにおいて、
前記少なくとも三つの内導体形成孔における連続する三つの内導体形成孔の中央に位置する内導体形成孔の横断面形状を、前記内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも前記内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とするとともに、前記内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を両隣に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状とすることにより、前記両隣に位置する二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを小さくして、当該二つの内導体形成孔による共振器間の飛び結合に起因する減衰極周波数をシフトさせた誘電体フィルタ。 - 略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、該誘電体ブロックの一方の面からそれに対向する他方の面にかけてそれぞれの内面に内導体を形成した少なくとも三つの内導体形成孔を、所定配列方向に連続して設け、前記誘電体ブロックの外面に外導体を形成し、前記内導体形成孔の一方の開口端付近に、前記内導体を前記外導体から離間する内導体非形成部を設けることにより、該内導体非形成部を開放端とし、他方の開口端を外導体に導通させて短絡端とした誘電体フィルタにおいて、
前記少なくとも三つの内導体形成孔における連続する三つの内導体形成孔の両端に位置する内導体形成孔の横断面形状を、前記内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも前記内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とするとともに、前記内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅を中央に位置する内導体形成孔のそれよりも大きい形状とすることにより、前記両端に位置する二つの内導体形成孔の内導体間に発生するキャパシタンスを大きくして、当該二つの内導体形成孔による共振器間の飛び結合に起因する減衰極周波数をシフトさせた誘電体フィルタ。 - 前記内導体形成孔を前記開放端側と前記短絡端側とで内径の異なり、前記開放端側を内径大部とし、前記短絡端側を内径小部とするステップ孔とし、
前記中央に位置する内導体形成孔の前記内径大部の横断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とするとともに、前記内径大部の配列方向に垂直な方向の幅を両隣に位置する内導体形成孔の内径大部のそれよりも大きい形状とした請求項1に記載の誘電体フィルタ。 - 前記内導体形成孔を前記開放端側と前記短絡端側とで内径の異なり、前記開放端側を内径大部とし、前記短絡端側を内径小部とするステップ孔とし、
前記両端に位置する内導体形成孔の前記内径大部の横断面形状を、内導体形成孔の配列方向に平行な方向の幅よりも内導体形成孔の配列方向に垂直な方向の幅が大きい形状とするとともに、前記内径大部の配列方向に垂直な方向の幅を中央に位置する内導体形成孔の内径大部のそれよりも大きい形状とした請求項2に記載の誘電体フィルタ。 - 前記内導体形成孔の前記開放端側の軸位置と前記短絡端側の軸位置とが異なる請求項3または請求項4に記載の誘電体フィルタ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体フィルタを備えた誘電体デュプレクサ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体フィルタ、または請求項6に記載の誘電体デュプレクサを備えた通信装置。
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