JP3787381B2 - 紫外線量検知インキ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線量の測定に利用され、紫外線を含む光の照射によって色調が変化する紫外線量検知インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外線照射の有無やその強度を測定するのに、光電変換を利用した照射量測定計等の装置や、光量に応じて色調の変化を利用するインジケータがある。しかし照射量測定計等の装置は高価で扱いにくいものが多いので、紫外線検知には利用しにくい。
【0003】
紫外線によって色調が変化するインジケータの一例として、特公平7-26095号公報に、フォトクロミズムを利用した紫外線インジケータが記載されている。このインジケータは可逆性であり、紫外線が照射されると発色し、中断されると発色した色が元の色へと戻るものである。
【0004】
一方、不可逆の感光材料を利用したインジケータとしては、特開昭63-179991号公報に高分子包接化合物を利用したもの、特開昭54-123994号公報、特開昭62-161860号公報に有機ハロゲン化合物、芳香族アルデヒド、ジアゾニウム塩等の光活性剤をロイコ染料に組み合わせたものが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載されたインジケータに使用される感光材料は、入手や合成が困難で、高価なものであった。しかも熱に対し不安定であり、ガスを発生することがある。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためなされたもので、一旦、発色したら元に戻らない不可逆の感光材料であり、安値でかつ容易に合成される紫外線量検知インキを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明の紫外線量検知インキは、インキビヒクルと、ブチルセロソルブと、ロイコ染料とを含むものである。
【0008】
インキビヒクルは、紫外線照射によってロイコ染料を発色させる作用を持つアルコール性水酸基を有する樹脂を主成分とするものである。具体的には、マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アルコール性水酸基を有するポリエステル樹脂、アルコール性水酸基を有するブチラール樹脂、アルコール性水酸基を有するアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を溶剤のブチルセルソルブで溶かし、溶液状にしたものである。これらの樹脂は、印刷対象物や印刷方式によって適宜選択される。
【0009】
前記樹脂に含まれる水酸基はアルコール性でなければならない。フェノール性水酸基を有するフェノール樹脂やロジン変性フェノール樹脂は、紫外線の照射なしでロイコ染料を発色させてしまうので好ましくない。
【0010】
インキビヒクルの重量は、ロイコ染料1重量部に対して0.1〜100重量部、特に0.5〜50重量部が好ましい。インキビヒクルが0.1重量部より少ない場合には、インキが印刷対象物上に定着しにくくなる。100重量部より多い場合には、発色前後の色差が小さくなるので、紫外線の検知を判断しにくくなる。
【0011】
ロイコ染料は、通常、無色または淡色で、ブレンステッド酸、ルイス酸等の活性種の作用で発色する性質を有している。このロイコ染料はトリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、フェノチアジン類、インドリルフタリド類、ロイコオーラミン類、ローダミンラクタム類、ローダミンラクトン類、インドリン類、トリアリールメタン類から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。これらの化合物は、色調や発色性能に応じて選択される。
【0012】
具体的にはトリフェニルメタンフタリド類としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトンが挙げられる。フルオラン類としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノベンゾ−α−フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオランが挙げられる。フェノチアジン類としては、3,7−ビスジメチルアミノ−10−(4’−アミノベンゾイル)フェノチアジンが挙げられる。インドリルフタリド類としては、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドル−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−メチルインドル−3−イル)フタリドが挙げられる。ロイコオーラミン類としては、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−フェニルオーラミンが挙げられる。ローダミンラクタム類としては、ローダミン−β−o−クロロアミノラクタムが挙げられる。ローダミンラクトン類としては、ローダミン−β−ラクトンが挙げられる。インドリン類としては、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3’−ジメチルインドリン、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルーが挙げられる。トリアリールメタン類としては、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタンが挙げられる。
【0013】
紫外線量検知インキには、インキビヒクル、ロイコ染料以外に隠ぺい剤、増量剤、色調調製剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光増感剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。紫外線吸収剤、光安定剤、光増感剤を添加することによって、発色に要する紫外線量を任意に設定することができる。
【0014】
紫外線量検知インキは、所定量のインキビヒクル、ロイコ染料、光安定剤等の各種添加剤をボールミル、三本ロール、攪拌機、分散機、らいかい機等によって分散、混練して得られる。
【0015】
得られた紫外線量検知インキは、紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属箔、ガラス、陶磁器、繊維等の印刷対象物に適当な印刷方式(凹版印刷、凸版印刷、平板印刷、孔版印刷)で印刷される。
【0016】
【発明の効果】
本発明の紫外線量検知インキには、インキビヒクルとロイコ染料とが含まれている。インキビヒクルは、紫外線の照射によってロイコ染料を感度よく発色させるアルコール性水酸基を有している。発色したロイコ染料は、暗所に放置しておいても色調が変わらない。この紫外線量検知インキは熱に対して安定であり、紫外線照射による変色時にガスが発生することもない。さらにインキの製造は、特殊な物質を使用しなくても容易に行える。
【0017】
本案の紫外線量検知インキをインジケータ等に利用することによって、紫外線の強度および照射量を容易に測定できる。さらに色調、印刷対象、印刷方法および紫外線量を選択することによって、本案のインキは多様な用途に応用できる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0019】
実施例1
ロイコ染料として3−ジエチルアミノベンゾ−α−フルオラン2重量部、ビヒクルとしてエチルセルロース(エトセル:ダウケミカル社製)1重量部、ブチルセロソルブ10重量部をらいかい機で混練して紫外線量検知インキとした。このインキを用いて紙にスクリーン印刷をして、白色の印刷物を得た。
【0020】
この印刷物に太陽光線を照射すると、徐々に発色し120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。印刷物に照射された紫外線の積算量を紫外線強度計で測定し、印刷物の明度を色差計で測定した。明度と紫外線照射量との関係を図1に示す。さらに発色後の印刷物を100℃で24時間以上加熱したが色調に変化はなく、熱安定性は良好であることが確認された。
【0021】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色性試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0022】
実施例2
ロイコ染料に3−ジエチルアミノ−7−ジベンゾイルアミノフルオランを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで緑色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0023】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し90秒で緑色になった。
【0024】
実施例3
ロイコ染料に3,6−ジメトキシフルオランを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、90分ほどで黄色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0025】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し60秒で黄色になった。
【0026】
実施例4
ロイコ染料にローダミン−β−o−クロロアミノラクタムを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで紫色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0027】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し90秒で紫色になった。
【0028】
実施例5
ロイコ染料にクリスタルバイオレットラクトンを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、90分ほどで紺色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0029】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し60秒で紺色になった。
【0030】
実施例6
ロイコ染料にベンゾイルロイコメチレンブルーを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで青色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0031】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し90秒で青色になった。
【0032】
実施例7
ロイコ染料に3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドル−3−イル)フタリドを使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで赤色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0033】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で赤色になった。
【0034】
実施例8
インキビヒクルをポリビニルブチラール(エスラックB:住友化学工業社製)、印刷対象物をアルミニウムとし、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0035】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0036】
実施例9
インキビヒクルをマレイン酸樹脂(テスポール1103:日立化成ポリマー社製)、印刷対象物を布とし、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0037】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0038】
実施例10
インキビヒクルをアクリル樹脂(PAS-800メジウム:十條加工(株)社製)、印刷対象物をポリカーボネートとし、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0039】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0040】
実施例11
インキビヒクルをポリエステル(テトロン900-メジウム:十條加工(株)社製)、印刷対象物をテトロンフィルムとし、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0041】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0042】
実施例12
インキビヒクルをポリエステル(フジロンメジウム:(株)永瀬スクリーン印刷研究所製)、印刷対象物をコート紙とし、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物に太陽光線を照射したところ、徐々に発色し、120分ほどで桃色になった。この時ガスの発生はなかった。発色後の印刷物の熱安定性を実施例1と同一の方法で試験したが、色調に変化はなく、熱安定性は良好であった。
【0043】
太陽光線を照射していない印刷物を紫外線照射装置にかけて、再び発色試験を行った。印刷物は徐々に発色し120秒で桃色になった。
【0044】
比較例1
インキビヒクルにフェノール樹脂(ショウノールCKM-2432:昭和高分子(株)社製)を使用し、その他の条件を実施例1と同一にして印刷物を得た。得られた印刷物は、紫外線が照射される前に桃色に発色してしまった。
【0045】
比較例2
ロイコ染料として3−ジエチルアミノベンゾ−α−フルオラン2重量部、インキビヒクルとしてウレタン樹脂(ハイウレタンNo2000SS白73HV:日本油脂(株)社製)10重量部を混練して紫外線量検知インキとした。このインキを用いて紙にスクリーン印刷をして、無色の印刷物を得た。この印刷物に太陽光線を照射したところ、6時間経過しても発色はみられなかった。
【0046】
実施例1〜12、比較例1、2の紫外線検知インキの組成、印刷対象物、発色性、熱安定性を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるように、実施例1〜12の紫外線量検知インキは、発色性、熱安定性が共に良好であることが確認された。また、発色した色は元に戻ることはなかった。比較例1のインキは、ビヒクルにフェノール樹脂を使用しているため、紫外線照射なしでもロイコ染料が発色してしまう。比較例2のインキは、ビヒクルにウレタン樹脂を使用しているので、紫外線を照射してもロイコ染料が発色しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】印刷物の明度と、紫外線の光量との関係を示す図である。
Claims (3)
- マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アルコール性水酸基を有するポリエステル樹脂、アルコール性水酸基を有するブチラール樹脂およびアルコール性水酸基を有するアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種のアルコール性水酸基を有する樹脂を主成分とするインキビヒクルと、ブチルソロソルブと、ロイコ染料とを含むことを特徴とする紫外線量検知インキ。
- 前記ロイコ染料1重量部に対して、前記インキビヒクルの重量が0.1〜100重量部であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線量検知インキ。
- 前記ロイコ染料がトリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、フェノチアジン類、インドリルフタリド類、ロイコオーラミン類、ローダミンラクタム類、ローダミンラクトン類、インドリン類およびトリアリールメタン類から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線量検知インキ。
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JP27109795A JP3787381B2 (ja) | 1995-10-19 | 1995-10-19 | 紫外線量検知インキ |
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- 1995-10-19 JP JP27109795A patent/JP3787381B2/ja not_active Expired - Lifetime
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