JP3786567B2 - 無線通信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PLL周波数シンセサイザを備えた無線送受信機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、PLL周波数シンセサイザを備えた無線受信機は種々のものが提案されている。
例えば、実開平1−67829号公報に開示された無線受信機は、受信周波数を設定するための周波数制御信号の立ち上がりを検出する微分回路と、その微分回路の出力信号でオンとなるスイッチング回路とを有するループフィルタ回路を設け、このループフィルタを構成するコンデンサに早い時間で電荷を蓄積できるようにして、ロックアップタイムを短くしたPLL周波数シンセサイザを備えている。
また、特開平6−260956号公報に開示された無線受信機は、電波を受信した時に受信検出信号を出力する受信検出信号発生手段と、受信検出信号によってループフィルタの時定数を切り換える切り換え手段とを備え、周波数スキャンを行う時には、ループフィルタの時定数を短くして高速で次々にロックアップし、そこに電波が入感した場合にのみ、ループフィルタの時定数を適正値に切り換えるようにすることにより、周波数スキャン時のロックアップタイムを短くすることができるPLL周波数シンセサイザを備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したような従来の無線受信機に備えられたPLL周波数シンセサイザは、スキャン時と通常時との切り換えは可能であっても、送受信のモードを切り換えてもPLL周波数シンセサイザのループフィルタは共用していた。しかし、SSB/CWモードとFMモードでは必要とされるCN特性が違い、SSB/CWモードに適応させるとFMモードで不利となり、FMモードに適応させるとSSB/CWモードに不利になるって、両立させることはできない。
即ち、従来は、変復調モードに連動してそれぞれのモードに最適なループフィルタの特性(即ちCN特性)に切り換えることはできなかった。
【0004】
そこで、本発明は、変復調モードの切り換えに連動してループフィルタの特性を、それぞれの変復調モードに最適な特性に切り換えることによって、各変復調モードにおけるSN比の向上等の特性向上を目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の無線通信機においては、PLL周波数シンセサイザを有して、SSB/CW変復調モードまたはFM変復調モードのうち、いずれの変調方式で送信もしくは受信を行うかを指定する変復調モード切り換え手段を有し、前記変復調モードに応じた受信機能および/もしくは送信機能を備えた無線通信機において、PLL周波数シンセサイザのループフィルタの時定数を、前記変復調モード切り換え手段の操作に連動させて、変復調モード毎に設定された時定数に切り換える時定数切り換え手段を備え、前記ループフィルタの時定数が、前記時定数切り換え手段によって選択された変復調モード毎の時定数に設定された状態で通常の送受信を行うことを特徴としている。
【0006】
ここで、ループフィルタの時定数の大小とキャリアの近傍のノイズ成分のレベルとの関係を図5、6、7を参照して説明する。PLL周波数シンセサイザにおいては、キャリアの上下両側におけるノイズ成分の分布がループフィルタの時定数の大小に応じて変化する。例えば、SSB/CW用のループフィルタのように小さな時定数の場合に図6のようにキャリアの上下両側に生じていたピークは、時定数を大きくするにつれてキャリアに近づきつつレベルが高くなり、FM用のループフィルタのように大きな時定数になると図5のように殆ど目立たなくなる。図7は図5の特性と図6の特性を同一グラフ上に重ねて表示したものである。図6のような特性の場合には、キャリアに極めて近い領域においてはノイズのレベルが小さく、キャリアのノイズの最大レベルとの差Aが十分に大きいので、占有する帯域が非常に狭いSSB/CWモードに適したループフィルタとなる。加えて、小さな時定数によってロックアップタイムが早くなるという効果も得られる。図6のような特性のループフィルタを、FMモードに使用すると比較的広い帯域(例えば±10KHz程度)内におけるノイズ量(ノイズレベルの積分値)が大きくなるため特に送信時SN比が悪く使用に耐えない。一方、図5のような特性の場合には、キャリアを中心にしてノイズのレベルが急に下がっているので、キャリアとノイズのレベル差Bが大きく受信の場合には高い受信時SN比が得られる。また、比較的広い帯域(例えば±10KHz程度)に含まれるノイズ量(ノイズレベルの積分値)が小さいので高い送信時SN比が得られる。従って、占有する帯域が比較的広いFMモードに適したループフィルタとなる。図5のような特性のループフィルタを、占有する帯域が非常に狭いSSB/CWモードに使用するとキャリアに極めて近い領域(超近傍領域、例えば±2KHz程度)におけるノイズレベルが図6のような特性に比較して高いため、音の濁りとなって歪率が高くなりやすいという欠点がある。本発明は、このような、それぞれの変復調モード(FMモード又はSSB/CWモード)に適したループフィルタを変復調モード切り換えに連動して切り換えるようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる無線通信機を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1は、本発明の無線通信機の実施の形態としての無線送受信機TRのブロック図であり、受信部1と送信部2とPLL周波数シンセサイザ3と変復調モード切り換え手段4と送受信切り換え手段5とを備えている。受信部1の受信周波数及び送信部2の送信周波数は、前記PLL周波数シンセサイザ3から出力される周波数に基づいて制御される。そして、受信部1及び送信部2は前記送受信切り換え手段5の操作に基づいて受信動作もしくは送信動作に切り換え制御される。さらにまた、受信部1及び送信部2は前記変復調モード切り換え手段4の操作に基づいて複数の変復調モード、例えばSSB/CWモードと、FMモードの何れかの変復調モードに切り換え制御される。
【0009】
PLL周波数シンセサイザ3の詳細を示した図2において、前記PLL周波数シンセサイザ3は、基準周波数refと分周器31から出力される分周周波数との位相差を出力する位相比較器32と、位相比較器32からのパルス状の出力波形を平滑化してアナログ電圧信号として出力するループフィルタ33と、ループフィルタ33から出力されるアナログ電圧信号に応じた周波数を発振出力する電圧制御発振器(以後VCO)34とを備え、前記分周器31における分周比を制御することによって前記VCOから出力される周波数を制御するように構成されている。
前記ループフィルタ33は、SSB/CWモード用に設定された時定数回路RC1と、FMモード用に設定された時定数回路RC2と、これらの時定数回路を相互に排他的に選択する時定数切り換え手段35と、増幅器36とを備えている。なお、前記二つの時定数回路においては、SSB/CWモード用の時定数回路RC1の時定数が、FMモード用の時定数回路RC2の時定数より小さく設定されている。
【0010】
ループフィルタ33の具体的な回路構成の例を図3に示した。この回路構成例において、トランジスタQ1とトランジスタQ2とで増幅器36を構成し、2.2KΩの抵抗と1μFのコンデンサとでFMモード用の時定数回路RC2を構成し、1.8KΩの抵抗と0.1μFのコンデンサとでSSB/CWモード用の時定数回路RC1を構成している。そして、アナログスイッチS1,S2で時定数切り換え手段35を構成している。
なお、時定数回路は、図2、図3に示したようなフィードバック回路型に限らず、図4に示した例のようなバイパス回路型としてもよい。
【0011】
上記構成のPLL周波数シンセサイザ3を用いた送受信機TRにおいて、SSBもしくはCWモードの場合には、変復調モード切り換え手段4を操作してSSB/CWモードに切り換える。この変復調モード切り換え手段4は運用する周波数帯に応じて自動的に制御されることも可能である。また、受信する場合には送受信切り換え手段5を受信側に切り換えて受信部1を作動させる。
【0012】
変復調モード切り換え手段4を操作してFMモードに切り換えると、PLL周波数シンセサイザ3の時定数切り換え手段35へ変復調モード切り換え信号が入力され、FM用の時定数回路RC2が選択される。この時定数回路RC2の時定数は大きく設定されているので、図5に示したように、キャリア周波数の近くの領域におけるノイズ成分のレベルがキャリア周波数から離れるに連れて急激に低下し、占有する帯域内のノイズ成分の全体的な積分値が小さくなり、復調時のノイズ量が少なくなる。
【0013】
変復調モード切り換え手段4を操作してSSB/CWモードに切り換えると、PLL周波数シンセサイザ3の時定数切り換え手段35へも変復調モード切り換え信号が入力され、SSB/CW用の時定数回路RC1が選択される。この時定数回路RC1の時定数は小さく設定されている。この時定数回路を選択した場合には、キャリア周波数に極めて近い周波数領域、図6における超近傍領域におけるノイズ成分のレベルがFM用の時定数回路RC2を選択した場合より抑制されている(図7において、A>B)ので、基本的に占有する帯域が非常に狭いSSB/CWモードの場合には、ノイズ量が少なくなり、復調信号の歪率も低くなる。さらに、時定数が小さいためにロックアップタイムが早くなるという効果も得られる。
【0014】
このようにして、SSB/CWモードの場合には、変復調モード切り換えに連動して図6のような特性のSSB/CW用ループフィルタを選択するので、キャリアに極めて近い領域においてはノイズのレベルが小さく、キャリアとノイズの最大レベルとの差Aが十分に大きいので、低い歪率が得られると共に、ロックアップタイムが早くなるという効果も得られる。また、FMモードの場合には、変復調モード切り換えに連動して図5のような特性のFM用ループフィルタを選択するので、ノイズの積分値が小さくなり送受信において優れたSN比が得られる。図7において、Cで示した部分が、復調信号の歪率がFM用の時定数回路RC2に比較してSSB/CW用の時定数回路RC1が有利になる部分であり、Dで示した部分が、ノイズの積分値がSSB/CW用の時定数回路RC1に比較してFM用の時定数回路RC2が有利になる部分である。
【0015】
なお、PLL周波数シンセサイザのループフィルタの構成は図示した構成に限定されたものではなく、ループフィルタの時定数を切り換えることができれば種々の回路構成が可能である。
【0016】
【発明の効果】
請求項1の無線通信機においては、変復調モード切り換えに応じてループフィルタの時定数をそれぞれの変復調モードに適したものに切り換えるので、それぞれの変復調モードで最適なSN比等の特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる無線通信機の実施の形態としての無線送受信機の構成を示した構成図である。
【図2】図1の要部の構成図である。
【図3】図2のさらに要部の構成図である
【図4】図2の要部の別の構成例を示した図である。
【図5】FM用のループフィルタの特性例を示した図である。
【図6】SSB/CW用のループフィルタの特性例を示した図である。
【図7】図5と図6の特性を重ねて表示した図である。
【符号の説明】
TR 無線送受信機
1 受信部
2 送信部
3 PLL周波数シンセサイザ
4 変復調モード切り換え手段
5 送受信切り換え手段
31 分周器
32 位相比較器
33 ループフィルタ
34 電圧制御発振器(VCO)
RC1 SSB/CWモード用に時定数が設定された時定数回路
RC2 FMモード用に時定数が設定された時定数回路
35 時定数切り換え手段
36 増幅器
Claims (1)
- PLL周波数シンセサイザを有して、SSB/CW変復調モードまたはFM変復調モードのうち、いずれの変調方式で送信もしくは受信を行うかを指定する変復調モード切り換え手段を有し、前記変復調モードに応じた受信機能および/もしくは送信機能を備えた無線通信機において、
PLL周波数シンセサイザのループフィルタの時定数を、前記変復調モード切り換え手段の操作に連動させて、変復調モード毎に設定された時定数に切り換える時定数切り換え手段を備え、
前記ループフィルタの時定数が、前記時定数切り換え手段によって選択された変復調モード毎の時定数に設定された状態で通常の送受信を行うことを特徴とする無線通信機。
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- 2000-07-31 JP JP2000231905A patent/JP3786567B2/ja not_active Expired - Lifetime
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