JP3785087B2 - 光ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、光源部からの光を対物レンズ部により集束して光ディスクの表面にビームスポットを形成するとともに、このビームスポットを光ディスクの半径方向に微小変位させてトラッキング制御を行うように構成された光ディスク装置に関する。なお、本明細書においては、光ディスク装置なる用語は、光ディスクなどの記録媒体に対する情報の読み取り専用装置のみならず、磁界変調方式や光強度変調方式によって光磁気ディスクや相変化ディスクなどの記録媒体に情報を記録し、あるいは記録された情報を再生する装置をも含むものとして使用している。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク装置には、光ディスクの高密度記録化に伴って、磁気ディスク装置で使用されている浮上スライダ技術が導入されたものがある。このような光ディスク装置の一例を図6に示す。この光ディスク装置100は、光源部1からの光を集束して光ディスクDの表面にビームスポットを形成する対物レンズ部2と、上記ビームスポットを光ディスクDの半径方向(トラッキング方向)Rに微小変位させてトラッキング制御を行う微小変位機構3とを備えており、対物レンズ部2および微小変位機構3は、光ディスクDの表面に倣って光ディスクDに対して相対的に移動するスライダ104に搭載されている。
【0003】
上記光源部1から出射される光は、光ディスクDの表面に沿って進行するように配置されており、その光路V上には、この光を屈曲させて対物レンズ部2に導くための立ち上げミラーMが備えられている。この立ち上げミラーMで反射した光源部1からの光は、対物レンズ部2に対して上方から入射する。上記光路Vの一部は、光ディスクDの半径方向に移動可能なキャリッジ(図示略)内を通り、立ち上げミラーMは、このキャリッジ内に備えられている。
【0004】
上記対物レンズ部2は、図7に示すように、光ディスクDに対して近位に配置された第1レンズ21および遠位に配置された第2レンズ22を有しており、これら第1レンズ21および第2レンズ22は、その主平面が光ディスクDと平行となるように配置されている。これにより、光源部1からの光は、第2レンズ22により集束された後さらに第1レンズ21により集束されることとなり、各レンズに入射する光束の径は、第2レンズ22よりも第1レンズ21の方が小さくなる。したがって、第1レンズ21を第2レンズ22よりも小さく、かつ軽量にすることができる。
【0005】
また、第1レンズ21は、上記スライダ104のケース部151内において上記微小変位機構3により光ディスクDの半径方向Rに微小動させられるように構成されている一方、第2レンズ22は、スライダ104のケース部151に支持されており、第1レンズ21が第2レンズ22に対して相対的に移動するように構成されている。したがって、微小変位機構3が第1レンズ21を光ディスクDの半径方向Rに微小動させたときには、ビームスポットSが第1レンズ21の移動方向と同じ方向に微小変位して、トラッキング制御を行うことができるようになっている。
【0006】
上記スライダ104は、図6に示すように、上記キャリッジに取付けられたサスペンション部材9の先端部に支持されており、上記キャリッジが移動することによって光ディスクDに対して相対的に移動することができる。また、スライダ104は、サスペンション部材9によって光ディスクDに対して弾性的に押しつけられるが、光ディスクDが高速回転する際には、光ディスクDとの間に形成される流体くさびの圧力上昇によって、光ディスクDの表面に対してわずかに浮上させられる。
【0007】
このスライダ104において、対物レンズ部2は、図8に示すように、立ち上げミラーMから入射してくる光がサスペンション部材9に遮断されないように、サスペンション部材9の先端部に対して光ディスクDの回転方向にずれるように配置されている。すなわち、対物レンズ部2は、光ディスクDの半径方向Rと平行でありかつサスペンション部材9に対して支持される支持点P′を通る直線Qから距離Lだけ離間して配置されている。
【0008】
このような光ディスク装置100では、上述したように、より軽量な第1レンズ21を微小動させることによりトラッキング制御が行なわれるので、ビームスポットを比較的俊敏に所望の位置まで変位させることができる。したがって、トラッキング制御の応答性がよい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、対物レンズ2(第1レンズ21)は、上述したように、上記直線Qから距離L離間した位置に配置されているので、上記微小変位機構3の作動により第1レンズ21が光ディスクDの半径方向Rに微小動する際には、図8に示すように、スライダ104を上記支持点P′の周りに回転させようとする偶力Gが発生してしまう。これにより、トラッキング制御が不安定となってしまうことがあった。
【0010】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、トラッキング制御を安定化することができる光ディスク装置を提供することをその課題とする。
【0011】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
すなわち、光ディスクの表面に倣ってこの光ディスクに対して相対的に移動するスライダと、このスライダに搭載され、上記光ディスクに対して近位の第1レンズ体および遠位の第2レンズ体によって光源部からの光を集束して光ディスクの表面にビームスポットを形成する対物レンズ部とを備えており、かつ、上記スライダ内で微小動可能とされた可動部を有する第1微小変位機構によって上記光ディスクの半径方向に上記第1レンズ体を微小動させることにより、トラッキング制御が行なわれるように構成された光ディスク装置であって、上記スライダには、上記第2レンズ体を支持するケース部内に上記第1レンズ体および上記第1微小変位機構を配置した構成とされた第1スライダ構成部が備えられており、さらに、上記第1微小変位機構とは別の第2微小変位機構を有するとともに上記第1スライダ構成部と同等の重量を有する第2スライダ構成部が少なくとも1つ備えられており、上記第1スライダ構成部ないし上記第2スライダ構成部は、上記第1微小変位機構および上記第2微小変位機構の作動により発生させられる偶力が互いに相殺し合うように配置されていることを特徴としている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記スライダは、その平面視における略重心位置において、サスペンション部材の先端部に対して支持されており、上記第1スライダ構成部ないし上記第2スライダ構成部は、それらの総和が偶数個とされており、かつ、トラッキング方向と平行であるとともに上記スライダの重心を通る直線に対して、略線対称となるように配置される。
【0014】
好ましい実施の形態においてはまた、上記第1微小変位機構ないし上記第2微小変位機構はそれぞれ、上記可動部に形成された複数の第1櫛歯電極と、上記ケース部内に固定された固定部に形成され、かつ隣接する第1櫛歯電極の間に位置する複数の第2櫛歯電極との間に電圧を印加することにより上記可動部を上記光ディスクの半径方向に微小動させるように構成された静電アクチュエータとして設けられている。
【0015】
上記第1レンズ体がスライダの重心から離間した位置に配置されている場合、上記第1微小変位機構が作動して上記可動部が微小動する際には、この第1微小変位機構の駆動力と、可動部からスライダの重心までの距離との積により求められる偶力が発生し、これにより、スライダが、サスペンション部材との間の連結部(スライダの平面視における重心位置)の周りに回転しようとする。これと同様に、第2微小変位機構が作動する際には、第2微小変位機構の可動部からスライダの重心までの距離との積により求められる偶力が発生する。本願発明においては、第1微小変位機構および第2微小変位機構は、これらの偶力が相殺し合うように配置されているので、スライダが回転するのを防止することができる。したがって、トラッキング制御中に、スライダの回転にともなって上記対物レンズ部が回動するのを防止することができる。その結果、トラッキング制御を安定的に行うことができる。
【0016】
好ましい実施の形態においてはさらにまた、上記第2スライダ構成部は、上記第1スライダ構成部の上記対物レンズ部とは別の第2対物レンズ部を備えており、これにより、装置全体として、上記光ディスクの異なる情報記録領域上にそれぞれ異なるビームスポットを形成しうるように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、この光ディスク装置に、たとえば、上記第2対物レンズ部に対応する他の光源部や、光ディスクからの反射光を電気信号に変換する他の光検出器などを設けることによって、多系統の光学回路を構築することができる。したがって、光ディスク上からの情報読み取り時間や、光ディスク上への情報記録時間などを大幅に短縮することができ、光ディスク装置の処理能力を向上させることができる。
【0018】
本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1は、本願発明に係る光ディスク装置の一例を示す概略斜視図、図2は、図1における第1および第2スライダ構成部を示す分解斜視図、図3は、図2における第1微小変位機構を示す平面図である。また、図4は、トラッキング制御を説明するための第1スライダ構成部周りの断面図、図5は、図1におけるスライダを示す平面図である。なお、これらの図において、従来例を示す図6ないし図8に表された部材、部分等と同等のものにはそれぞれ同一の符号を付してある。
【0021】
図1に示す光ディスク装置Aは、スピンドルSpに装着された光ディスクDを回転させた状態において、光ディスクDに対して磁界変調方式により情報を記録し、光を利用して情報を再生する。この光ディスク装置Aには、光学ヘッドユニット部10に備えられた光源部1と、光源部1からの光を集束して光ディスクDの表面にビームスポットを形成する対物レンズ部2と、ビームスポットを光ディスクDの半径方向に微小変位させてトラッキング制御を行うための第1微小変位機構3(図2参照)とが備えられており、対物レンズ部2および第1微小変位機構3は、光ディスクDの表面に倣ってこの光ディスクDに対して相対的に移動するスライダ4に搭載されている。
【0022】
上記光学ヘッドユニット部10は、光源部1の他に、入射した光(光ディスクDからの反射光)を電気信号に変換する光検出器12や、光源部1からの光を光ディスクDへ向けて透過する一方、光ディスクDからの反射光を光検出器12に向けて反射するビームスプリッタ11などが搭載されている。光源部1は、その内部に備えられた半導体レーザ素子から発せられるレーザ光をコリーメータレンズ(図示略)などにより平行光束光とし、これを出射するように構成されている。この光学ヘッドユニット部10は、光ディスク装置Aが光ディスクDの厚み方向に大きくならないように、光源部1から出射される光(光路V)が光ディスクDの表面に沿って進行するように配置されており、この光を屈曲させて対物レンズ部2に導くための立ち上げミラーMがさらに備えられている。この立ち上げミラーMは、対物レンズ部2の上方に配置されており、立ち上げミラーMで反射した光源部1からの光は、対物レンズ部2に対して上方から入射する。
【0023】
また、この光ディスク装置Aには、図示していないが、たとえば直進型ボイスコイルモータなどの直進駆動機構などにより、光ディスクDの半径方向(図1の矢印RA方向またはRB方向:トラッキング方向)に移動可能なキャリッジが、光ディスクDの第1面Da側に配置されており、上記光路Vの一部および立ち上げミラーMは、このキャリッジ内に設けられている。
【0024】
上記対物レンズ部2は、高NA化を達成すべく、図4(a)および図4(b)に示すように、第1レンズ体21と第2レンズ体22とからなり、これらはそれぞれ、所定の焦点距離を有する単体のレンズとして設けられている。第1レンズ体21は光ディスクDに対して近位に配置されており、上記第1微小変位機構3に搭載されている。第2レンズ体22は光ディスクDに対して遠位に配置されており、後述する第1スライダ構成部5のケース部51に支持されている。第1レンズ体21および第2レンズ体22は、その主平面が光ディスクDと平行となるようにスライダ4に搭載されている。光源部1からの平行光束光は、第2レンズ体22により集束された後さらに第1レンズ体21により集束されて、光ディスクD上に結像されることによりビームスポットSとなる。したがって、第2レンズ体22に入射する光束の径よりも第1レンズ体21に入射する光束の径のほうが小さくなり、第1レンズ体21を第2レンズ体22よりも小とすることができ、その分だけ第1レンズ体21をより軽量なものとすることができる。
【0025】
上記第1微小変位機構3は、本実施形態では、図2および図3に示すように、平面視長矩形状を呈したシリコン基板30上に対して、可動部31と、支持部32と、バネ部33と、固定部34とを導体層により形成した静電アクチュエータが採用されている。
【0026】
上記可動部31は、図3においてクロスハッチングを施した部分であり、可動部本体31Aおよび互いに反対方向に延びる一対のフィン31Bを有している。可動部本体31Aの中央部には、貫通孔31aが形成されている。この貫通孔31aに上記第1レンズ体21が嵌合され、第1レンズ体21はこの可動部31と一体動可能とされる。各フィン31Bの両長手縁からは、フィン31Bの幅方向に延びる複数の第1櫛歯電極31bが形成されている。フィン31Bの同一縁から延びる複数の第1櫛歯電極31bは、一定間隔隔てて互いに平行に延びている。
【0027】
上記支持部32は、可動部本体31Aに対して、幅方向両端部に上記バネ部33を介して一体化されており、可動部31は、シリコン基板30に形成した凹部の底面(図示略)から離間した状態で、支持部32およびバネ部33を介して支持されている。また、少なくとも一方の支持部32は、リード部36を介してシリコン基板30に繋がっている。このリード部36は、可動部31と固定部34の間に電位を与える際に利用するものである。
【0028】
上記固定部34は、図3において右下がりのシングルハッチングを施した部分であり、シリコン基板30上に形成された矩形枠部34Aを有している。矩形枠部34Aにおける2つの長辺からは、他方の長辺に向けて突出するように複数の第2櫛歯電極34aが形成されている。同一の長辺から延びる複数の第2櫛歯電極34aは、可動部本体31Aを挟む2つのグループからなり、各グループを構成する第2櫛歯電極34aは、一定間隔隔てて互いに平行に延びている。最端に位置する1つの第2櫛歯電極34aを除く他の第2櫛歯電極34aは、その先端部ないし中央部が隣接する2つの第1櫛歯電極31bの間において、これらの第1櫛歯電極31bの中間から偏位した部位に位置している。
【0029】
このような第1微小変位機構3は、半導体製造プロセスを採用することにより形成することができる。たとえば、シリコンウエハに対する成膜およびエッチング処理により固定部および可動部となるべき部分を形成した後、シリコンウエハをダイシングすることにより形成することができる。したがって、第1微小変位機構3は、半導体製造プロセスを応用し、1つのウエハから複数のものを簡易に形成することができるため、量産性に優れ、製造コスト的にも有利である。
【0030】
このような第1微小変位機構3では、上記可動部31と固定部34の間に電圧を印加することにより、固定部34に対して可動部31を矢印RA方向またはRB方向に微小動させることができる。大部分の第1櫛歯電極31bは、第2櫛歯電極34aの間に位置しているが、その位置がこれらの第2櫛歯電極34aの中間位置から偏位している。一方、可動部31と固定部34との間に電圧を印加すれば、第1櫛歯電極31bと第2櫛歯電極34aとの間に静電気力が作用する。
【0031】
ここで、静電気力は、電圧の2乗に比例し、極性とは無関係であり、また第1櫛歯電極31bと第2櫛歯電極34aとの間の距離の2乗に反比例する。したがって、電圧印加時には、第1櫛歯電極31bは、これを挟み込む2つの第2櫛歯電極34aのうち、近い側の第2櫛歯電極34a側に引き寄せられる。その結果、図3においては第1櫛歯電極31bひいては可動部31の全体が図中の矢印RA方向に移動する。このとき、可動部31に第1レンズ体21を保持しておけば、第1レンズ体21もまた矢印RA方向に移動する。
【0032】
このように、可動部31と固定部34との間に電圧を印加すれば可動部31が矢印RA方向に移動するが、その移動距離は静電気力の大きさ、つまり印加電圧値に比例する。ここで留意すべき点は、可動部31と固定部34との間に全く電圧を印加していない状態を基準とし、印加電圧値の大小によりトラッキング制御を行うとすれば、可動部31は矢印のRA方向にしかトラッキング制御できないことである。そのため、この第1微小変位機構3を用いて第1レンズ体21を矢印RA方向およびRB方向のいずれにも移動させる場合には、0よりも大きい基準電圧を印加した状態を原点とし、この基準電圧よりも大きな電圧を印加することにより可動部31ないし第1レンズ体21を原点よりも矢印RA方向に偏位した部位に微小動させる一方、基準電圧よりも小さな電圧を印加することにより可動部31ないし第1レンズ体21を原点よりも矢印RB方向に偏位した部位に微小動させるように構成される。
【0033】
上記スライダ4は、平面視における略重心位置P(図5参照)で、所定の弾性を有するサスペンション部材9の先端部に支持されており、このサスペンション部材9は、上記した図示しないキャリッジに支持されている。これにより、スライダ4は、キャリッジが移動することによって光ディスクDに対して相対的に移動することができる。スライダ4は、サスペンション部材9によって光ディスクDの第1面Daに対して平行となるように弾性的に押しつけられるが、光ディスクDが高速回転する際には、スライダ4と光ディスクDとの間に流入する空気により形成された流体くさびの圧力上昇によって、光ディスクDの表面に対してわずかに浮上させられ、これにより、光ディスクDの表面に倣って移動することができる。
【0034】
このスライダ4には、図1に示すように、上記対物レンズ部2および第1微小変位機構3が搭載された第1スライダ構成部5と、第1微小変位機構3と同等の構成とされた第2微小変位機構3′(図5参照)を有する少なくとも1つの第2スライダ構成部6とが備えられている。第1スライダ構成部5ないし第2スライダ構成部6は、その総和が偶数個とされており、本実施形態では、スライダ4上に1つずつ合計2つ搭載されている。
【0035】
上記第1スライダ構成部5は、図2に示すように、全体として下部が開放された箱型のケース部51を有しており、このケース部51は、平面視長矩形状を呈している。ケース部51の上壁51Aの中央部には貫通孔51aが形成されており、この貫通孔51aに上記第2レンズ体22が嵌合される。また、このケース部51は、平面視における占有面積が上記第1微小変位機構3と同等とされており、その下部の開放部分を塞ぐように上記第1微小変位機構3が取付けられている。これにより、上記可動部31は、この第1スライダ構成部5内で微小動し、第1レンズ体21は、第2レンズ体22に対して相対的に移動する。また、この第1スライダ構成部5(スライダ4)においては、第1微小変位機構3は、可動部31と一体動する第1レンズ体21の微小動の方向が光ディスクDの半径方向RA,RBとなるように配置されている。したがって、第1微小変位機構3が第1レンズ体21を微小動させた際には、図4(a)および図4(b)に示すように、ビームスポットSが第1レンズ体21と同じ方向、すなわち光ディスクDの半径方向RA,RBに微小変位して、トラッキング制御を行うことができるようになる。
【0036】
たとえば、図4(a)に示したように、ビームスポットSが所望位置から矢印RB方向にずれていた場合には、上記基準電圧よりも大きな電圧を可動部31と固定部34との間に印加すればよい。これに対して、図4(b)に示したように、ビームスポットSが所望位置から矢印RA方向にずれていた場合には、基準電圧よりも小さな電圧を可動部31と固定部34との間に印加すればよい。
【0037】
第1レンズ体21をどの程度微小動させるか、つまりどの程度の電圧を印加するかは、トラッキング信号に基づいて決定される。トラッキング信号は、ビームスポットSが所望のトラックからどの程度ずれた部位に形成されているかを示すものであり、たとえば光ディスクDからの反射光を上記光検出器12などで検出し、そのときの電気的な出力に対してプッシュプル法を適用することにより検出することができる。
【0038】
このようにして、この光ディスク装置Aでは、第1レンズ体21を微小動させることによりトラッキング制御が行われる。したがって、第1レンズ体21は、上述したように、第2レンズ体22よりも軽量とされているので、比較的駆動電力が小さくて済み、ランニングコストを低減することができ、その上、トラッキング信号に対して比較的俊敏に作動させることができ、トラッキング制御の応答性を向上することができる。
【0039】
また、図5から良くわかるように、上記第1スライダ構成部5は、上記立ち上げミラーM(図1参照)で反射した光源部1からの光が、上述したように、対物レンズ部2に対して上方から入射するため、この光が上記サスペンション部材9に遮断されないように配置されている。すなわち、第1スライダ構成部5は、スライダ4上において、対物レンズ部2がサスペンション部材9の先端部から光ディスクDの回転方向にずれるように配置されている。
【0040】
さらに、図2に示すように、第1スライダ構成部5においては、第1微小変位機構3のシリコン基板30に透明基板7が密着して設けられており、この透明基板7がスライダ4の底面で露出して、光ディスクDと対向している。
【0041】
この透明基板7には、図2および図4(a)に示すように、第1レンズ体21と対応するように配置されたコイル70が埋設されている。コイル70は、通電時の発生磁界により光ディスクDにおける磁気記録層の磁気向きを規定し、磁界変調方式による情報の記録を可能にするものである。このようなコイル70は、たとえば銅などの金属膜をパターニングすることにより渦巻き状に形成されており、電気絶縁性を有する透明な材料、たとえば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン、酸化珪素、または窒化珪素などにより覆うことにより透明基板7内に埋設されている。
【0042】
なお、この光ディスク装置Aでは、光ディスクDへの情報の記録方法として、光磁気ディスクに対応した磁界変調方式が採用されているため、上記コイル70を有する透明基板7が備えられているが、これに限ることはなく、たとえば、光ディスクDが相変化ディスクに対して情報の記録を行うことが可能な光強度変調方式を採用したものでは、透明基板7は備えられていない構成とされる。
【0043】
上記第2スライダ構成部6は、第1微小変位機構3と同等の構成とされた第2微小変位機構3′(図5参照)を有するとともに第1スライダ構成部5と同等の重量を有している。好ましくは、この第2スライダ構成部6は、第2微小変位機構3′上に上記第1レンズ体21と同等の重量を有する部材が搭載されている。このような第2スライダ構成部6は、本実施形態では、第1スライダ構成部5と同様の構成とされている。すなわち、第2スライダ構成部6は、上記第2微小変位機構3′に加えて、図2に示すように、対物レンズ部2、ケース部51および透明基板7とそれぞれ同様の構成とされた第2対物レンズ部2′、第2ケース部51′および第2透明基板7′からなる。また、上記光学ヘッドユニット部10には、この第2スライダ構成部6と対応する第2光源部、第2ビームスプリッタおよび第2光検出器(図示略)が備えられており、この第2光源部から発せられる光(光路V′)が第2対物レンズ部2′に入射するように構成されている。したがって、この光ディスク装置Aは、全体として、光ディスクDの異なる情報記録領域上にそれぞれ異なるビームスポットを形成することができ、光ディスクDに記録された情報の読み取り時間を短縮することができる。また、光ディスクDに対して情報の記録を高速に行うことができる。
【0044】
なお、この光ディスク装置Aには、上記したように、第2スライダ構成部6が第1スライダ構成部5と同様の構成とされることによって、2系統の光学回路が構築されているが、これに限ることなく、従来通りに1系統のみの光学回路を備えたものとしてもよい。この場合、第2スライダ構成部6を第1スライダ構成部5と同等の重量とし、かつ、第2微小変位機構3′の可動部に、第1レンズ体21′の代わりにこれと同等の重量を有するたとえばダミーレンズなど部材を搭載しておきさえすればよく、第2レンズ体22′やケース部51′あるいは透明基板7′に対応する部分は自由に設定しても良い。
【0045】
ところで、上記第1スライダ構成部5は、上述したように、スライダ4上において、対物レンズ部2がサスペンション部材9の先端部から光ディスクDの回転方向にずれるように配置されているため、上記第1微小変位機構3が作動して、第1レンズ体21が微小動する際には、図5に示すように、スライダ4に対して、サスペンション部材9の先端との間の連結部P(スライダ4の平面視における重心位置)の周りに回転させようとする偶力Gaが発生する。この偶力Gaは、トラッキング方向(光ディスクDの半径方向)RA,RBと平行でありかつスライダ4の重心Pを通る直線Qから第1レンズ体21までの距離Laと、第1微小変位機構3の駆動力Faとの積により求められる。また、これと同様に、上記第2スライダ構成部6もまた第2微小変位機構3′を有しているので、この第2微小変位機構3′の作動によって、上記直線Qから第2微小変位機構3′の第1レンズ体21′までの距離Lbと第2微小変位機構3′の駆動力Fbとの積により求まる偶力Gbが発生する。
【0046】
そこで、この光ディスク装置Aにおいては、第1スライダ構成部5および第2構成部6は、それぞれの偶力Gaおよび偶力Gbが互いに相殺し合うように配置されている。すなわち、第1スライダ構成部5および第2スライダ構成部6は、第1微小変位機構3と第2微小変位機構3′とが上記直線Qに対して略線対称となるように配置されており、上記スライダ4は、平面視における略重心位置Pで、サスペンション部材9の先端に支持されている。また、光ディスクDにおける比較的近接して互いに隣接する2つの領域に対するトラッキング制御では、ビームスポットを微小変位させる向きが同じであるとすることができるので、第1微小変位機構3の第1レンズ体21がトラッキング方向RB(RA)に微小動する際には、第2微小変位機構3′もまたトラッキング方向RB(RA)に微小動する。したがって、上記距離Laと距離Lbとが同等となり、かつ駆動力Faの作用する方向と駆動力Fbの作用する方向とが同等となる。また、第1微小変位機構3と第2微小変位機構3′とは、上述したように、同様のものであるから、駆動力Faの大きさと駆動力Fbの大きさとは同等となる。これらのことにより、偶力Gaと偶力Gbとは、その大きさが等しくなるとともに、スライダ4を回転させようとする回転方向が互いに逆となり、互いに相殺し合う。
【0047】
したがって、スライダ4が回転するのを防止することができ、トラッキング制御中に、スライダ4の回転にともなって上記対物レンズ部2が回動するのを防止することができる。その結果、トラッキング制御を安定的に行うことができる。
【0048】
もちろん、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのあらゆる設計変更はすべて本願発明の範囲に含まれる。たとえば、上記第1スライダ構成部5および第2スライダ構成部6は、本実施形態では、その総数が2つであるとされているが、たとえばその総数を4つとしてもよく、この場合、これら4つのスライダ構成部を、たとえば2列×2行に配列すればよい。
【0049】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本願発明に係る光ディスク装置は、トラッキング制御の第1微小変位機構による偶力を相殺する構成を有しているので、スライダが回転するのを防止することができ、トラッキング制御を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る光ディスク装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1における第1および第2スライダ構成部を示す分解斜視図である。
【図3】図2における第1微小変位機構を示す平面図である。
【図4】トラッキング制御を説明するための第1スライダ構成部周りの断面図である。
【図5】図1におけるスライダを示す平面図である。
【図6】従来の光ディスク装置の一例を示す概略斜視図である。
【図7】図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【図8】図6におけるスライダを示す平面図である。
【符号の説明】
1 光源部
2 対物レンズ部
2′ 第2対物レンズ部
3 第1微小変位機構
3′ 第2微小変位機構
4 スライダ
5 第1スライダ構成部
6 第2スライダ構成部
9 サスペンション部材
21 第1レンズ体
22 第2レンズ体
31 可動部
31b 第1櫛歯電極
34 固定部
34a 第2櫛歯電極
51 ケース部
A 光ディスク装置
D 光ディスク
Claims (4)
- 光ディスクの表面に倣ってこの光ディスクに対して相対的に移動するスライダと、このスライダに搭載され、上記光ディスクに対して近位の第1レンズ体および遠位の第2レンズ体によって光源部からの光を集束して光ディスクの表面にビームスポットを形成する対物レンズ部とを備えており、かつ、上記スライダ内で微小動可能とされた可動部を有する第1微小変位機構によって上記光ディスクの半径方向に上記第1レンズ体を微小動させることにより、トラッキング制御が行なわれるように構成された光ディスク装置であって、
上記スライダには、上記第2レンズ体を支持するケース部内に上記第1レンズ体および上記第1微小変位機構を配置した構成とされた第1スライダ構成部が備えられており、さらに、上記第1微小変位機構とは別の第2微小変位機構を有するとともに上記第1スライダ構成部と同等の重量を有する第2スライダ構成部が少なくとも1つ備えられており、
上記第1スライダ構成部ないし上記第2スライダ構成部は、上記第1微小変位機構および上記第2微小変位機構の作動により発生させられる偶力が互いに相殺し合うように配置されていることを特徴とする、光ディスク装置。 - 上記スライダは、その平面視における略重心位置において、サスペンション部材の先端部に対して支持されており、
上記第1スライダ構成部ないし上記第2スライダ構成部は、それらの総和が偶数個とされており、かつ、トラッキング方向と平行であるとともに上記スライダの重心を通る直線に対して、略線対称となるように配置される、請求項1に記載の光ディスク装置。 - 上記第2スライダ構成部は、上記第1スライダ構成部の上記対物レンズ部とは別の第2対物レンズ部を備えており、これにより、装置全体として、上記光ディスクの異なる情報記録領域上にそれぞれ異なるビームスポットを形成しうるように構成されている、請求項1または2に記載の光ディスク装置。
- 上記第1微小変位機構ないし上記第2微小変位機構はそれぞれ、上記可動部に形成された複数の第1櫛歯電極と、上記ケース部内に固定された固定部に形成され、かつ隣接する第1櫛歯電極の間に位置する複数の第2櫛歯電極との間に電圧を印加することにより上記可動部を上記光ディスクの半径方向に微小動させるように構成された静電アクチュエータとして設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の光ディスク装置。
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