JP3784480B2 - ゴム粒子、それを用いた多層構造重合体粒子および該重合体粒子の樹脂組成物 - Google Patents

ゴム粒子、それを用いた多層構造重合体粒子および該重合体粒子の樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和カルボン酸エステル化合物および共役ジエン化合物を含む単量体から得られた特定のゴム粒子およびそのラテックス、該ゴム粒子を用いた多層構造重合体粒子の製造法、該製造法により得られた特定の多層構造重合体粒子、該多層構造重合体粒子を用いた樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた成形品に関する。本発明の樹脂組成物では、上記特定の多層構造重合体粒子の配合により、樹脂単独の場合の弾性率、強度等の機械的性質をほとんど低下させることなく、樹脂単独に比べて耐衝撃性(特に低温耐衝撃性)を向上させることができる。また、該樹脂がメタクリル樹脂等の透明性が良好な樹脂の場合には、良好な透明性を保持することができる。このため、本発明の成形品は、上記の樹脂組成物の特長を活かして、オートバイの風防等の車両部品、自動販売機の前面板等の機器用部材、カーポート等の建築部材などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、易成形性、安価、軽量等の長所を活かして、電気・電子部品、ハウジング、建築材料、雑貨、車両用部品、食品用包装材等の多岐にわたる分野で使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂からなる成形品では、熱可塑性樹脂の成形加工による成形品の作製時、成形品を用いた組み立て操作による二次製品の製造時、該二次製品の使用時などにおいて、割れが生じることがあり、特にメタクリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスチレン等の脆性材料では耐衝撃性の不足が用途拡大の障害となっている。
【0003】
熱可塑性樹脂に耐衝撃性を付与する方法のひとつとして、内部にゴム層を有し、最外部に熱可塑性樹脂層を有する多層構造重合体粒子(いわゆる、コアシェル型重合体)を、熱可塑性樹脂に配合することが知られている。例えば、メタクリル樹脂については、ゴム質の外層を有する粒子にメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物をグラフト重合させることによって得られた、ゴム質層が内部に存在し、該単量体混合物の重合体鎖が最外層を形成している多層構造重合体粒子をメタクリル樹脂に分散させて得られた樹脂組成物が、耐衝撃性を改善し、しかもメタクリル樹脂本来の透明性の低下を少なくできることが報告されている(特開昭48−55233号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような多層構造重合体粒子の配合による熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良方法では、多層構造重合体粒子の配合割合を増せば耐衝撃性が向上するものの、それに伴って熱可塑性樹脂本来の優れた性能が低下する傾向がある。例えば、メタクリル樹脂においては、多層構造重合体粒子の配合割合を増加すれば、メタクリル樹脂本来の高い硬度が失われる傾向がある。したがって、熱可塑性樹脂と多層構造重合体粒子との組成物に対しては、該熱可塑性樹脂本来の優れた性能と改善された耐衝撃性とを両立させる観点において、耐衝撃性改良効果ができるだけ大きい多層構造重合体粒子を用い、その配合割合をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、これまでに提案されている多層構造重合体粒子では耐衝撃性の改良効果に限界があるため、耐衝撃性の改良効果がさらに高い多層構造重合体粒子が望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、耐衝撃性の改良効果が高い多層構造重合体粒子を提供すること、該多層構造重合体粒子が配合された耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供すること、該多層構造重合体粒子を与えるゴム粒子およびそのラテックスを提供すること、ならびに該多層構造重合体粒子の製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、単量体の種類、乳化剤の種類および使用量、ならびに重合開始剤の種類、使用量および添加方法についての条件を選択して乳化重合を行ってゴム粒子を調製した場合、得られたゴム粒子が耐衝撃性の改良効果の大きい多層構造重合体粒子を与えることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜()に示すとおりである。
【0009】
(1) メタクリレートおよびアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸エステル化合物を合計量において1〜99重量%含有し、かつ共役ジエン化合物を99〜1重量%含有する単量体を乳化重合法により共重合させるにあたって、
(A)乳化剤として、アニオン系乳化剤を単量体全量に対して1〜8重量%の割合で使用し、
(B)開始剤系として、有機過酸化物と遷移金属塩の混合物を使用し、
(C)該有機過酸化物を、重合反応開始時に、重合反応開始時点における反応系中の水に対して0.006〜0.1重量%の割合となるように使用し、かつ、
(D)反応開始後、該有機過酸化物を1時間あたり、該水に対して0.001〜0.08重量%の割合で追加添加する
造法により得られたゴム粒子
【0011】
) 上記()のゴム粒子を含有するラテックス。
【0012】
) 上記()のゴム粒子を含有するラテックス100重量部に対し、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物および不飽和カルボン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体3〜50重量部を、1時間あたり3〜25重量部の速度で添加しながら重合させることからなる多層構造重合体粒子の製造法。
【0013】
) 上記()の製造法によって得られた多層構造重合体粒子(その中でも、特に、平均粒径が0.06〜0.15μmであるもの)。
【0014】
) 上記()の多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂(特に、メタクリル樹脂)とを混合することによって得られた樹脂組成物。
【0015】
) 上記()の樹脂組成物からなる成形品。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る上記(1)の特定の製造法により得られたゴム粒子および上記()のゴム粒子のラテックスに関して、以下に説明する。
【0017】
上記(1)の製造法においては、主たる単量体として、特定の不飽和カルボン酸エステル化合物と共役ジエン化合物との両方を使用する。該不飽和カルボン酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリレート;および、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリレートが、単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等が、単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。
上記の不飽和カルボン酸エステル化合物は全単量体のうちの1〜99重量%を占め、共役ジエン化合物は全単量体のうちの99〜1重量%を占める。不飽和カルボン酸エステル化合物の含有割合が99重量%を越える場合、得られたゴム粒子のガラス転移温度が高くなり過ぎ、それから製造した多層構造重合体粒子は熱可塑性樹脂に対する耐衝撃性の向上効果が少ないものとなる。また、共役ジエン化合物の含有割合が99重量%を越える場合、得られたゴム粒子の架橋密度が高くなり過ぎるため、それから製造した多層構造重合体粒子も熱可塑性樹脂に対する耐衝撃性の向上効果が少ないものとなる。
【0018】
上記(1)の製造法においては、上記の不飽和カルボン酸エステル化合物および共役ジエン化合物に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ラジカル重合可能な他の単量体を使用することもできる。使用可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;グリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の不飽和カルボン酸アミド化合物;酸化防止機能、光安定化機能、紫外線吸収機能などの機能性を有する単量体などが挙げられる。ただし、その使用量は、単量体全体に対して20重量%以下に止めることが好ましい。
【0019】
上記(1)の製造法では、単量体を、上記の条件の範囲内において任意の化合物の組み合わせおよび相対量で使用することができる。例えば、得られたゴム粒子から製造した多層構造重合体粒子を透明性の良好な熱可塑性樹脂(例えば、メタクリル樹脂等)に分散させて使用する場合、その組成物における透明性を良好に保つ目的においては、ゴム粒子の屈折率が該熱可塑性樹脂の屈折率と同じになるように単量体を構成する化合物群の組み合わせおよび相対量を適宜、選択することが好ましい。
【0020】
また、上記(1)の製造法における重合原料として、必要に応じて、単量体に加えて架橋剤を使用することもできる。架橋剤としては、例えば、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシエチルピバレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ヒドロキシピバレートジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、桂皮酸アリル、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル等のラジカル重合性基を2個以上有する化合物が使用可能である。架橋剤の使用量は、単量体100重量部に対して、0〜1.5ミリモルの範囲内であることが好ましい。架橋剤は、得られたゴム粒子から多層構造重合体粒子を製造する際にグラフト剤としても機能し、また、多層構造共重合体粒子を熱可塑性樹脂に配合した組成物において力学物性や溶融流動性の点で好結果を与える場合がある。
【0021】
上記(1)の製造法においては、乳化剤として、アニオン系乳化剤を単量体全量に対して1〜8重量%の割合で使用する。アニオン系乳化剤の代わりにノニオン系乳化剤を用いると、多くの場合、大量に使用しても、重合系中のラテックスの状態が安定化せず、生成した重合体が析出してしまう。また、乳化重合が安定な状態で行えた場合であっても、重合の所要時間が極めて長くなり、さらにその結果としてゴム粒子における架橋密度が高くなってしまうためか、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合しても、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。
アニオン系乳化剤の使用量が単量体全量に対して1重量%未満の場合、乳化安定性が不足し、重合の所要時間が長くなり、上記のような不都合を生じる。
逆に、アニオン系乳化剤の使用量が単量体全量に対して8重量%より多い場合、重合中における泡立ちが多くなり、得られるゴム粒子の平均粒径が小さくなりすぎるため、そのゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合しても、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。また、必要量以上のアニオン系乳化剤の使用は経済的に不利であり、さらに、重合後の洗浄時における排出量が多くなりかねないので環境汚染の点でも好ましくない。
【0022】
使用可能なアニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ラウロイルザルコシン酸カリウム、ドデシル硫酸カリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、オクチルベンゼンスルホン酸カリウム、ノニルベンゼンスルホン酸カリウム、オクチルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸カリウム、ノニルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、ラウロイルザルコシン酸アンモニウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アンモニウム、オクチルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ノニルベンゼンスルホン酸アンモニウム、オクチルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム、ノニルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウムなどを挙げることができる。また、アニオン系乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸カリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルカリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウムなどのノニオンアニオン系乳化剤を使用してもよい。
【0023】
上記(1)の製造法においては、重合開始剤系として、有機過酸化物と遷移金属塩の混合物を使用する。重合開始剤としてはペルオキソ2硫酸カリウム等の無機化合物も知られているが、無機化合物の重合開始剤を使用した場合、重合に要する時間が長くなり、さらにその結果としてゴム粒子における架橋密度が高くなってしまうためか、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合しても、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。
【0024】
上記の有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、ジメチルヘキサンジヒドロパーオキシド、テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ビス{(t−ブチルジオキシ)イソプロピル}ベンゼン、ジメチルビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等が好適に使用できる。また、上記の遷移金属塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、チオ硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)、硫酸銅(I)、チオ硫酸銅(I)、炭酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、水酸化銅(I)、酸化銅(I)、またはそれらの水和物などが好適に使用できる。
【0025】
有機過酸化物は、重合反応開始時に使用するだけでなく、重合反応中に追加して使用する。
重合反応開始時における有機過酸化物の使用量は、重合反応開始時点における反応系中の水に対して0.006〜0.1重量%である。有機過酸化物の初期使用量が、水に対して0.006重量%未満の場合には、重合に要する時間が長くなり、さらにその結果としてゴム粒子における架橋密度が高くなってしまうためか、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合しても、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。逆に、有機過酸化物の初期使用量が、水に対して0.1重量%より多い場合にも、架橋反応が過度に起こるため、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合したときにおける、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。
【0026】
重合反応中における有機過酸化物の追加添加量は、1時間あたりで、重合開始時における水に対して0.001〜0.08重量%となる割合である。有機過酸化物の追加添加量が、1時間あたりで、水に対して0.001重量%未満の場合には、重合に要する時間が長くなり、さらにその結果としてゴム粒子における架橋密度が高くなってしまうためか、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合しても、耐衝撃性の向上効果が不十分となる。逆に、有機過酸化物の追加添加量が、1時間あたりで、水に対して0.08重量%より多い場合にも、架橋反応が過度に起こるため、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合したときにおける耐衝撃性の向上効果が不十分となる。有機過酸化物の重合反応系中への追加添加方法としては、連続的添加または断続的添加のどちらでもよい。ただし、これらの添加方法の中でも、連続的添加または2時間に1回以上の頻度での断続的添加が、得られるゴム粒子を用いて製造した多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂に混合した場合における耐衝撃性の向上効果が特に高くなることから好ましい。なお、有機過酸化物の追加添加量完了後も重合反応を継続して行うことによって、単量体の転化率を向上させてもよいことは言うまでもない。
重合反応中に追加添加する際の有機過酸化物の形態は特に限定されるものではないが、有機過酸化物を水および乳化剤と混合して調製した乳化液の形態で添加することが、添加される有機過酸化物の速度または量の制御が容易であり、重合反応系中に形成されたミセルの破壊による重合体の凝固または析出を阻止しやすく、安全性も高いことから好ましい。追加添加する有機過酸化物の乳化液としては、有機過酸化物に、該有機過酸化物10重量部に対して40〜200重量部の水および0.2〜0.5重量部の乳化剤を混合することによって調製したものが好ましい。
【0027】
遷移金属塩の使用量としては、単量体に対して0.01〜1重量%の範囲内が好ましい。
【0028】
上記(1)の製造法における乳化重合反応では、反応温度、反応系の攪拌、重合後の後処理などにおける条件として、メタクリレート、アクリレート、ブタジエン等のラジカル重合性単量体の公知の乳化重合法におけると同様な条件を採用することができる。重合反応温度としては、必ずしも限られるものではないが、0〜100℃の範囲内が好ましい。重合反応系は、系内各位置の環境が均一になるように十分な攪拌条件下におくことが好ましい。なお、必要に応じて、重合反応系中に還元剤、金属イオン安定剤、重合促進剤などを添加してもよい。
上記の乳化重合反応によってゴム粒子のラテックスが形成される。生成したゴム粒子は、例えば、酸析法、スプレードライ法、凍結法等の常法に準じて、ラテックスから分離取得することができるが、次に説明するような多層構造重合体粒子の製造に使用する場合には、そのラテックスを次の重合反応に供してもよい。
【0029】
上記(1)の製造法によれば、重合反応中、有機過酸化物を追加添加することによって、比較的大粒径のゴム粒子を短い重合時間で生成させることができる。例えば、有機過酸化物を追加添加しない場合には通常8時間以上の重合時間を要して製造されるものと同程度の平均粒径を有するゴム粒子が、上記(1)の製造法によれば、4〜7時間程度の短い重合時間で製造される。なお、単に重合時間の短縮を目的とするのであれば、有機過酸化物の追加添加の代わりに開始剤および乳化剤の初期使用量を増加させるのも一手法であるが、この場合、得られるゴム粒子の平均粒径が小さくなるので、大粒径のゴム粒子を短い重合時間で製造することはできない。
【0030】
さらに、上記(1)の製造法によれば、重合反応中、有機過酸化物を追加添加することによって、生成するゴム粒子の架橋密度の制御が可能となり、トルエン膨潤度から求められる架橋密度が3〜12mmol/リットルであるゴム粒子を製造することが可能となる。架橋密度が3〜12mmol/リットルであるゴム粒子は、これを用いて製造された多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂との組成物とした場合に、射出成形後も多層構造粒子の形態を保持しやすくゴムとしての性質を十分に発揮できるために、特に耐衝撃性に優れ、しかもブリードアウトによるタック感の発生及び表面性の劣化が抑制された成形品を与えるという利点を有する。
なお、上記の架橋密度は、次に示す方法によって測定されたゴム粒子のトルエン膨潤度に基づいて算出されたものである。すなわち、十分に洗浄、乾燥させたゴム粒子(試料)の1gを19gのトルエン中、室温下で48時間撹拌し、吸引濾過により膨潤ゲルを取り出して膨潤ゲルの重量(「膨潤したゴム粒子の重量」)を測定し、さらにこの膨潤ゲルからトルエンを除去し乾燥させてゴム粒子の重量(「乾燥ゴム粒子の重量」)を測定する。これらの測定結果を用いて、次式:
【0031】
(膨潤度)={(膨潤したゴム粒子の重量)−(乾燥ゴム粒子の重量)}/(乾燥ゴム粒子の重量)
【0032】
にしたがって膨潤度を算出する。次いで、上記の膨潤度をFlory−Rehnerの式に適用して網目鎖密度を算出し、これをゴム粒子の架橋密度とする。
【0033】
次に、本発明に係る上記()の多層構造重合体粒子の製造法および上記()の多層構造重合体粒子に関して説明する。
【0034】
上記()の製造法では、上記(2)のゴム粒子を含有するラテックス100重量部に対し、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物および不飽和カルボン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体3〜50重量部を、1時間あたり3〜25重量部の速度で添加しながら乳化重合させる。
【0035】
上記の芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の1種または2種以上を使用することができ、不飽和ニトリル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の1種または2種以上を使用することができ、また、不飽和カルボン酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリレート;およびメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリレートのうちの1種または2種以上を使用することができる。これらの単量体は重合反応によりゴム粒子の外部に樹脂層を形成するが、重合後、生成した多層構造重合体粒子の重合系からの取り出しが容易である点などから、樹脂層のガラス転移温度が0℃以上、より好ましくは室温以上となるように単量体の種類、組み合わせなどを適宜、選定するのが好ましい。なお、小割合であれば、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物および不飽和カルボン酸エステル化合物の外に、ラジカル重合可能な共単量体を併用しても差し支えない。該併用可能な共単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0036】
単量体の使用量は、その合計量において、上記(2)のゴム粒子を含有するラテックス100重量部に対し3〜50重量部である。単量体の使用量が3重量部未満の場合、ゴム粒子表面全体を熱可塑性樹脂層で完全に被覆することが困難となるために、重合後の粒子の取り出し時や得られた粒子の熱可塑性樹脂との混練時において粒子同士の融着が起こりやすく、成形性の低下を招くとともに、成形品において表面荒れや白化が発生しやすくなる。一方、単量体の使用量が50重量部より多い場合、得られる多層構造重合体粒子はゴム層の含有割合が低く、熱可塑性を有する最外層の含有割合が高いものとなるため、熱可塑性樹脂との組成物において、耐衝撃性の改善効果が現れにくくなるとともに、熱可塑性樹脂本来の性能が失われやすくなる。
【0037】
また、ゴム粒子を含有するラテックスに対する単量体の重合反応中には、単量体を、1時間あたり、上記(2)のゴム粒子を含有するラテックス100重量部に対して3〜25重量部の速度で添加する。重合開始時に単量体の全量を一括添加した場合または単量体の添加速度が上記の基準で1時間あたり25重量部より多い場合、重合系で重合体の析出が生じるため、良好な多層構造重合体粒子を得ることができない。一方、単量体の添加速度が上記の基準で1時間あたり3重量部未満の場合、添加完了までに長時間を要するために、生産性に劣るだけでなく、ゴム成分の架橋反応が必要以上に進行する結果、得られる多層構造重合体粒子は、熱可塑性樹脂との組成物において耐衝撃性の改善効果が不十分なものとなる。単量体の重合系への添加は連続的に行うことが好ましいが、10分間に1度以上の頻度であれば、断続的な添加方法を採用することもできる。なお、添加終了後も重合反応を継続して行うことによって、単量体の転化率を向上させてもよいことは言うまでもない。
【0038】
上記のゴム粒子を含有するラテックスに対する単量体の重合反応にあたっては、グラフト率および分子量を制御する目的で連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、乳化重合において使用される一般的なものを用いることができ、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンに代表されるチオール化合物等が挙げられる。連鎖移動剤は、一般に、単量体に対して0〜5重量%の量で使用される。連鎖移動剤の添加方法としては、重合初期に一括添加する方法、単量体との混合物として連続的または断続的に添加する方法、一部を重合初期に、残りを単量体と共に連続的または断続的に添加する方法、単量体とは独立に連続的または断続的に添加する方法等が採用できる。
【0039】
上記のゴム粒子を含有するラテックスに対する単量体の重合反応においては、開始剤として、上記のゴム粒子の製造において使用できるような有機過酸化物と遷移金属塩とからなるレドックス系開始剤を使用することができるが、それに限定されず、ペルオキソ2硫酸カリウム、ペルオキソ2硫酸アンモニウム、ペルオキソ2硫酸ナトリウム等の無機系開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤などの一般的な重合開始剤を用いることができる。開始剤は、一般に、単量体に対して0.001〜1重量%の量で使用される。なお、前段階の重合で得られたゴム粒子含有ラテックスを用いる場合、すでに重合系中に遷移金属塩が存在しているために、有機過酸化物のみを添加することによってレドックス系開始剤を形成させることができる。また、必要に応じて、重合系に還元剤、重合促進剤等を添加してもよい。
【0040】
ゴム粒子を含有するラテックスに対する単量体の重合反応は、上記の点以外は、通常の多層構造重合体粒子の製造において採用される乳化重合法に準じて行うことができる。重合反応温度としては、必ずしも限定されるものではないが、0〜100℃の範囲内が好ましい。重合反応系は、系内各位置の環境が均一になるように十分な攪拌条件下におくことが好ましい。
【0041】
上記のゴム粒子を含有するラテックスに対する単量体の重合反応によって、多層構造重合体粒子のラテックスが得られる。多層構造重合体粒子をラテックスから取り出す方法としては、塩析法、酸析法、スプレードライ法、凍結法等の一般的な取り出し方法を使用することができる。塩析法、酸析法およびスプレードライ法では一般に多層構造重合体粒子中に残存する塩の量が多くなりやすく、一方、凍結法では残存不純物量は少なくなるが、設備的にコスト高となりやすいので、目的、用途等に応じて所望の方法を選択すればよい。
【0042】
ラテックスからの多層構造重合体粒子の取り出し性の向上、ならびに、取り出された後の多層構造重合体粒子における取り扱い性の向上、成形性改良、機能性付与等の目的で、必要に応じて、取り出しの前に、別途製造したメタクリル樹脂等のラテックスを、多層構造重合体粒子ラテックスにブレンドしてもよい。
【0043】
このようにして得られる上記()の多層構造重合体粒子は、内層が上記ゴム粒子から形成され、外層が、上記の第2段階の重合工程で使用した単量体の重合による樹脂から構成される。多層構造重合体粒子の平均粒径は、0.06〜0.15μmの範囲内であることが、耐衝撃性の改善効果が特に著しいことから好ましい。なお、ラテックスから分離取得された多層構造重合体粒子は、一部が相互に融着していても差し支えない。
【0044】
次に、上記()の樹脂組成物および上記()の成形品に関して説明する。上記()の樹脂組成物は、上記()の多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂とを混合することによって得られる。熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ABS、AAS、AES等のスチレン系樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;ビスフェノールAポリカーボネート等のポリカーボネートなどが挙げられる。上記()の多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂との混合割合は、目的、用途等に応じて適宜選択すればよく必ずしも限定されるものではないが、一般に、多層構造重合体粒子/熱可塑性樹脂の重量比において1/99〜99/1の範囲内である。その中でも、該多層構造重合体粒子を熱可塑性樹脂の改質剤として使用する場合には、多層構造重合体粒子/熱可塑性樹脂の重量比において1/99〜40/60の範囲内とするのが好ましい。例えば、メタクリル樹脂の耐衝撃性を改善する目的においては、多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂の重量比を2/98〜40/60の範囲内とすることが望ましく、耐衝撃性の改善に加えてメタクリル樹脂本来の透明性を重視する場合には、多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂の重量比を2/98〜30/70の範囲内とすることがより望ましい。
【0045】
上記の樹脂組成物には、所望に応じて、耐候性、着色防止性等の改良のために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を添加してもよい。
【0046】
上記()の樹脂組成物を得るための熱可塑性樹脂、上記()の多層構造重合体粒子および所望に応じて使用される添加剤の混合方法としては、熱可塑性樹脂組成物の製造において用いられる任意の方法を採用することができるが、熱可塑性樹脂および多層構造重合体粒子の溶融条件下で混練することによって樹脂組成物を調製することが望ましい。なお、この溶融条件では、多層構造重合体粒子は外部の樹脂層が少なくとも部分的に溶融していればよい。
【0047】
上記()の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂が適用される任意の成形方法に供することによって、所望の形状・寸法の成形品を製造することができる。適用可能な成形方法としては、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、カレンダ加工などが挙げられる。また、製造可能な成形品としては、例えば、板状物、シート、フィルム、三次元形状品などが挙げられる。上記のようにして製造される上記()の成形品は、優れた耐衝撃性(特に、低温耐衝撃性)および熱可塑性樹脂本来の優れた性質を両立できるので、車両部品、機器用部材、建築部材などとして有用である。
【0048】
【実施例】
次に実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0049】
実施例1(ゴム粒子−1の合成)
オートクレーブにイオン交換水250重量部を仕込み、約30分間窒素バブリングした。これに、窒素雰囲気下で、ノニルフェノールフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)社製ペレックスSS−H)4.0重量部、硫酸鉄(II)の7水和物0.009重量部、ロンガリット(ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラートの2水塩)0.334重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA・2Na)0.016重量部およびピロリン酸カリウム0.209重量部を加え、これらを完全に溶解させた。次いで、ブチルアクリレート60重量部およびブタジエン40重量部を加えて乳化させ、50℃に昇温した。これに別途調製したクメンハイドロパーオキシドの乳化液(クメンハイドロパーオキシド10重量部、ペレックスSS−Hの1.8重量部およびイオン交換水90重量部からなる)のうちの1.25重量部を加えて重合を開始させ、さらに2時間毎に該クメンハイドロパーオキシドの乳化液を0.625重量部加え、7時間で重合を終了した。
得られたラテックス中のゴム粒子の平均粒径を動的光散乱法で測定した結果103nmであった。また、得られたラテックスの一部から凍結法でゴム粒子を取り出し、トルエン膨潤度に基づきその架橋密度を測定したところ、11mmol/lであった。
【0050】
実施例2(ゴム粒子−2の合成)
重合開始時における有機過酸化物(クメンハイドロパーオキシド)の乳化液の添加量を0.1重量部とし、有機過酸化物の乳化液の追加量を1時間毎に0.1重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合は6時間で完結した。得られたラテックス中のゴム粒子の平均粒径は88nmであった。また、その架橋密度は8.2mmol/lであった。
【0051】
実施例3(ゴム粒子−3の合成)
単量体として、ブチルアクリレート60重量部およびブタジエン40重量部の混合物の代わりに、ブチルアクリレート50重量部、イソプレン49重量部およびジビニルベンゼン(架橋剤)1重量部の混合物を用いる以外は、実施例2と同様の方法で重合を行った。重合は約7時間で終了した。得られたラテックス中のゴム粒子の平均粒径は63nmであった。また、その架橋密度は4.2mmol/lであった。
【0052】
比較例1(ゴム粒子−4の合成)
重合開始時における有機過酸化物(クメンハイドロパーオキシド)の乳化液の添加量を0.7重量部とし、重合中での有機過酸化物の乳化液の追加を行わない以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合は約20時間で終了した。得られたラテックス中のゴム粒子の平均粒径は72nmであった。また、その架橋密度は15.8mmol/lであった。
【0053】
比較例2(ゴム粒子−5の合成)
重合開始時における有機過酸化物(クメンハイドロパーオキシド)の乳化液の添加量を1.5重量部とし、重合中での有機過酸化物の乳化液の追加を行わない以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合は約10時間で終了した。得られたラテックス中のゴム粒子の平均粒径は53nmであった。また、その架橋密度は23.3mmol/lであった。
【0054】
実施例4(多層構造重合体粒子−1の合成)
実施例1で得られたゴム粒子含有ラテックス250重量部(ゴム粒子の含有量:20重量部)を70℃に昇温してペルオキソ2硫酸カリウム0.0875重量部を加えた後、メタクリル酸メチル28.8重量部、アクリル酸エチル1.2重量部およびオクチルメルカプタン 0.06重量部の混合物を1時間あたり約30重量部の割合で連続的に加えた。フィード終了後、さらに1時間重合を追い込んで反応を終了した。このようにして多層構造重合体粒子のラテックスを得た。得られた多層構造重合体粒子の平均粒径は、115nmであった。
得られたラテックスに、別途乳化重合したメタクリル樹脂のラテックスを固形分の重量比で1:1となるようにブレンドした後、凍結法で固形物を取り出した。洗浄を行って乾燥させることにより、多層構造重合体粒子をメタクリル樹脂粒子との混合物(多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂粒子の重量比:1/1)の形態(白色粉体状)で得た。
【0055】
実施例5、6(多層構造重合体粒子−2、3の合成)
下記表1に示すように実施例2および3でそれぞれ得られたゴム粒子含有ラテックスを用いる以外は、実施例4と同様の方法で乳化重合、取り出し、洗浄を行うことによって、多層構造重合体粒子をメタクリル樹脂粒子との混合物(多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂粒子の重量比:1/1)の形態で得た。得られた多層構造重合体粒子の平均粒径を表1に示す。
【0056】
実施例7(多層構造重合体粒子−4の合成)
単量体として、メタクリル酸メチル28.8重量部およびアクリル酸エチル1.2重量部の混合物の代わりに、スチレン22.8重量部およびアクリロニトリル7.2重量部の混合物を用いる以外は、実施例4と同様の方法で乳化重合、取り出し、洗浄を行うことによって、多層構造重合体粒子をメタクリル樹脂粒子との混合物(多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂粒子の重量比:1/1)の形態で得た。得られた多層構造重合体粒子の平均粒径を表1に示す。
【0057】
比較例3、4(多層構造重合体粒子−5、6の合成)
下記表1に示すように比較例1および2でそれぞれ得られたゴム粒子含有ラテックスを用いる以外は、実施例4と同様の方法で乳化重合、取り出し、洗浄を行うことによって、多層構造重合体粒子をメタクリル樹脂粒子との混合物(多層構造重合体粒子/メタクリル樹脂粒子の重量比:1/1)の形態で得た。得られた多層構造重合体粒子の平均粒径を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0003784480
【0059】
上記表1中、「MMA」はメタクリル酸メチルを、「EAA」はアクリル酸エチルを、「St」はスチレンを、「AN」はアクリロニトリルをそれぞれ意味する。
【0060】
実施例8〜11(多層構造重合体粒子含有樹脂組成物の調製)
実施例4〜7でそれぞれ得られた多層構造重合体粒子とメタクリル樹脂粒子との混合物を、メタクリル樹脂((株)クラレ製HR−L)と、該混合物/メタクリル樹脂の重量比が57.2/42.8となる割合(すなわち、多層構造重合体粒子/全メタクリル樹脂の重量比が28.6/71.4となる割合)で溶融混練することによって、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を射出成形し、ASTM D256にしたがって成形品のIzod(アイゾット)衝撃強度を測定した。また、射出成形品について、ASTM D1003にしたがって、全光線透過率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0061】
比較例5、6(多層構造重合体粒子含有樹脂組成物の調製)
比較例3および4でそれぞれ得られた多層構造重合体粒子とメタクリル樹脂粒子との混合物を、メタクリル樹脂((株)クラレ製HR−L)と、該混合物/メタクリル樹脂の重量比が57.2/42.8となる割合(すなわち、多層構造重合体粒子/全メタクリル樹脂の重量比が28.6/71.4となる割合)で溶融混練することによって、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物についての評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
Figure 0003784480
【0063】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、熱可塑性樹脂に配合した場合における耐衝撃性の改良効果が大きい多層構造重合体粒子ならびに該多層構造重合体粒子を与えるゴム粒子およびそのラテックスが提供される。該多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物およびその成形品によれば、優れた耐衝撃性と該熱可塑性樹脂本来の優れた性能とを両立させることができる。

Claims (11)

  1. メタクリレートおよびアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸エステル化合物を合計量において1〜99重量%含有し、かつ共役ジエン化合物を99〜1重量%含有する単量体を乳化重合法により共重合させるにあたって、
    (A)乳化剤として、アニオン系乳化剤を単量体全量に対して1〜8重量%の割合で使用し、
    (B)開始剤系として、有機過酸化物と遷移金属塩の混合物を使用し、
    (C)該有機過酸化物を、重合反応開始時に、重合反応開始時点における反応系中の水に対して0.006〜0.1重量%の割合となるように使用し、かつ、
    (D)反応開始後、該有機過酸化物を1時間あたり、該水に対して0.001〜0.08重量%の割合で追加添加する
    造法により得られたゴム粒子
  2. 有機過酸化物を連続的または断続的に追加添加して得られた請求項1記載のゴム粒子
  3. 有機過酸化物に、該有機過酸化物10重量部に対して40〜200重量部の水および0.2〜0.5重量部の乳化剤を混合することによって調製した乳化液を追加添加して得られた請求項1または2に記載のゴム粒子
  4. トルエン膨潤度から求められる架橋密度が3〜12mmol/リットルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム粒子。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム粒子を含有するラテックス。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム粒子を含有するラテックス100重量部に対し、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物および不飽和カルボン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体3〜50重量部を、1時間あたり3〜25重量部の速度で添加しながら重合させることからなる多層構造重合体粒子の製造法。
  7. 請求項記載の製造法によって得られた多層構造重合体粒子。
  8. 平均粒径が0.06〜0.15μmである請求項記載の多層構造重合体粒子。
  9. 請求項またはに記載の多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂とを混合することによって得られた樹脂組成物。
  10. 熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂である請求項記載の樹脂組成物。
  11. 請求項または10に記載の樹脂組成物からなる成形品。
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