JP3784198B2 - 光アイソレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報通信分野で用いられる光アイソレータであって、透明基板上に物理蒸着法等により島状の金属粒子分散層と透明誘電体層とを交互に積層した偏光層としての積層体を形成し、透明基板及び積層体に延伸処理を施し偏光特性を付与した偏光子を利用した光アイソレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバーを利用した光通信における光波長多重化により、光通信システムの情報量増大、多機能化及び特性向上が盛んに行われている。このような光通信システムでは、通信光の光源として半導体レーザが使用されており、半導体レーザの出射光が各種光学部品,光ファイバー,これらの接続箇所で反射されて戻り半導体レーザに再入射するとその動作が不安定になるため、信頼性の高い光通信を行うには前記反射光を除去する光アイソレータが不可欠である。
【0003】
光アイソレータの構成部品の一つである偏光子は、特定方向に偏光した光を取り出すためのもので、種々の構成の偏光子が研究されている。例えば、複屈折性結晶を組み合わせたグラントムソンプリズム、複屈折性の大きいルチル結晶、二色性を有する高分子材料を偏光方向に延伸した偏光フィルム、透明誘電体層と金属薄膜とを交互に積層した積層型偏光子(「ラミポール」:住友セメント(株)商標名)、ホウ珪酸ガラス中に銀コロイドを析出させて偏光方向に延伸させた析出金属分散型偏光子(「ポーラコア」:コーニンググラスインダストリー社の商標名)、島状の金属粒子分散層と透明誘電体層とを交互に積層した積層体を偏光方向に延伸させた金属粒子分散層型偏光子等が挙げられる。
【0004】
これらの偏光子は、サングラス,液晶表示用フィルター,写真用フィルター,スキー用ゴーグル,自動車用ヘッドライト,CRTディスプレイ用防眩フィルター等のほか、光ピックアップ,光センサー,光アイソレータ等に幅広く使用され、近年光記録及び光通信等の分野で、小型で高性能及び安価な偏光子の必要性が高まっている。特に、ホウ珪酸ガラス中に銀コロイドを析出させて偏光方向に延伸させた析出金属分散型偏光子は、実用化された偏光子の中で光通信分野で最も利用されているものの一つである(特公平2−40619号公報,米国特許第4486213号公報,米国特許第4479819号公報参照)。
【0005】
そして、図4〜図7に従来の光アイソレータA1,A2の動作及び基本構成を示す。図4及び図5の光アイソレータA1において、第一の偏光子16及び第二の偏光子19と、第一,第二偏光子16,19間に設けられた少なくとも1個のファラデー回転子18とを有し、ファラデー回転子18は第一,第二偏光子16,19のいずれかにスペーサー17を介してハンダ,低融点ガラス又は接着剤により接合している。この構成では、ファラデー回転子18と第一の偏光子16は全く異なる材質であるため、ハンダや低融点ガラスで接合しようとすると、熱膨張率の違いによる熱応力が発生する為、ファラデー回転子18と第一の偏光子16を直接接合することはできない。そこで、熱膨張率の違いによる熱応力を緩和するために、スペーサー17を介装させ、各々の表面に反射防止膜を施したファラデー回転子18と第一の偏光子16を間接的に接合しアセンブルしていた。尚、図5において、20は磁石、21は第一のホルダ、22は第二のホルダである。
【0006】
また、図6及び図7の光アイソレータA2では、第一の偏光子23及び第二の偏光子25と、第一,第二の偏光子23,25との間に設けられる少なくとも1個のファラデー回転子24とを、ハンダ,低融点ガラス,接着剤等により接合している。この構成においては、光アイソレータA2の小型化、組み立て工程数の削減、構成部品の一括加工による量産性向上を図るために、第一の偏光子23及び第二の偏光子25の間に少なくとも1個のファラデー回転子24を挟持させ、第一,第二の偏光子23,25の偏光方向が互いに45°ずれるように配置し、透光性の接着剤26を接合面全面に塗布して貼り合わせ、一体化している。この場合にも、ファラデー回転子24,第一の偏光子23,第二の偏光子25,接着剤26の屈折率がそれぞれ異なるため、それぞれの界面に反射防止膜を施す必要がある。尚、図7において、27は磁石、28は第一のホルダ、29は第二のホルダである。
【0007】
そして、図4において、所定の偏光方向の入射光3は、偏光方向が同じ第一の偏光子16を通過しファラデー回転子18により45°偏光方向が回転し、第二の偏光子19を通過し出射光4が外部の光ファイバー等に入射する。光ファイバー等から戻って来た戻り光5は、第二の偏光子19と同じ偏光方向又はランダム偏光であり、第二の偏光子19を通過し、ファラデー回転子18により更に45°偏光方向が回転するため、第一の偏光子16の偏光方向と90°偏光方向が異なり、第一の偏光子16を通過できない、又はきわめて出力の小さい戻り光6となる。前記動作は図6においても同様である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5の従来の光アイソレータA1においては、熱膨張率の違いによる熱応力は完全に解消される訳ではなく、また第一の偏光子16とファラデー回転子18との間には空間伝搬領域がありそれが光損失の増大に繋がっていた。
【0009】
また、図7の従来の光アイソレータA2においては、接着面が光の入出射面となることから、接着剤26の塗布状態の均一性が問題となっていた。また組み立て後に接着剤26からアウトガスが発生することも問題であった。更に、ファラデー回転子24,第一の偏光子23,第二の偏光子25の各々の屈折率の違いによる界面反射の問題があった。
【0010】
更に、上記従来の析出金属分散型偏光子では、所望の金属コロイドを一定の大きさに凝集させるためには、媒質となる透明誘電体材料がフォトクロミックガラス等に限定されてしまう。一方、島状の金属粒子分散層と透明誘電体層とを交互に積層させた金属粒子分散層型偏光子では、Auの金属粒子分散層とパイレックスガラス(コーニンググラスインダストリー社商標名)の透明誘電体層とを交互に積層し、透明誘電体層中に金属粒子を分散させた状態とした後、特定の面内方向(水平方向)に加熱延伸し、金属粒子に光吸収異方性を付与したものが提案されている。この構成では、偏光子を構成する透明誘電体層や透明誘電体基板用の材料を比較的自由に選択することができる。
【0011】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、島状の金属粒子分散層と透明誘電体層とを交互に積層させた金属粒子分散層型偏光子を利用したものであって、偏光子とファラデー回転子との熱膨張差による熱応力発生を解消し、空間伝搬領域や界面反射による損失を無くした光アイソレータとすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の光アイソレータは、ファラデー効果を有する透明誘電体基板上に、光吸収異方性を有する金属粒子分散層と透明誘電体基板と同じ材料の透明誘電体層とを交互に直接積層したことにより、前記透明誘電体基板上に偏光層が形成されてなる偏光子を有することを特徴とする。
【0013】
本発明は上記構成により、偏光子としての偏光層と、ファラデー回転子としての透明誘電体基板とが接着剤等を使用せずに直接接合され、その結果空間伝搬領域や界面反射による損失が発生せず、また透明誘電体基板材料と透明誘電体層材料を同じにすることで、熱膨張差による熱応力が解消される。
【0014】
また本発明において、好ましくは、前記透明誘電体基板が、磁性元素を含有するガラス又は磁性金属微粒子を分散させたガラスから成る。
【0015】
上記構成により、ファラデー効果を有する透明誘電体基板材料を従来のガーネット単結晶のように結晶成長させる必要がなく、低コストに製造でき、また磁性元素又は磁性金属微粒子の種類及び含有量を調整することによりファラデー効果を容易に制御でき、更に偏光層用の透明誘電体層と同じ材料が使用でき、熱膨張差による熱応力が発生せず、界面反射による損失も解消される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の光アイソレータについて以下に説明する。図1〜図3に本発明の光アイソレータA3を示す。同図において、1は偏光子としての偏光層1aとファラデー効果を有する透明誘電体基板1bから成る第一の偏光子、2は偏光層2aと透明誘電体基板2bから成る第二の偏光子、7はファラデー回転子に磁界を作用して偏光面を回転させる磁石、8は第一の偏光子1を設置する第一のホルダー、9は第二の偏光子2を設置する第二のホルダーである。前記第一のホルダー8及び第二のホルダー9は、ガラス,プラスチック等の透明材料からなる板状体としても良く、その他不透明な樹脂材料,Al等の金属材料からなる枠状のものでも良い。
【0017】
本発明のファラデー効果を有する透明誘電体基板1b,2bは、従来のCdMnTe,YIG等のガーネット単結晶とは異なり、Pb,Tl,Bi,Sb,Ce,Tb,Te,Pr,Eu,Dy,Nd,Pm,Sm,Gd,Ho,Er,Tm,Yb等の磁性元素を一成分として含有する、硼酸塩ガラス,燐酸塩ガラス,珪酸塩ガラス,弗燐酸塩ガラス,硼珪酸ガラス等から成る所謂ファラデー回転ガラスが好ましい。前記ファラデー回転ガラスは、従来のガーネット単結晶のように結晶成長させる必要がなく、磁性元素を含有させることで低コストに製造でき、また磁性元素の種類及び含有量を調整することによりファラデー効果を容易に制御できる。更に、後述する偏光層1a,2a用の透明誘電体層10と同じ材料が使用でき、熱膨張差による熱応力が発生せず、界面反射による光損失も解消される。
【0018】
前記磁性元素の含有量は0.3〜3.0重量%が良く、0.3重量%未満ではファラデー効果が小さくなり必要なファラデー回転角が得られず、3.0重量%を超えると光吸収が生じて損失が大きくなる。
【0019】
また、透明誘電体基板1b,2bとして、粒径が2〜10nmのFe,Ni,Co等の磁性金属微粒子を分散させた硼酸塩ガラス,燐酸塩ガラス,珪酸塩ガラス,弗燐酸塩ガラス,硼珪酸ガラス等からなる磁性金属微粒子分散ガラスが、上記ファラデー回転ガラスと同様好適である。
【0020】
前記磁性金属微粒子の含有量は10〜30重量%が良く、10重量%未満ではファラデー効果が殆ど得られず、30重量%を超えると光散乱や光反射が大きくなり透明性が劣化する。
【0021】
そして、本発明の光アイソレータA3は以下のようにして製造される。図3の偏光子P1に示すように、透明誘電体基板13の少なくとも一主面上に、島状に金属粒子12を分散させた金属粒子分散層11を真空蒸着法等により設け、次いで透明誘電体基板13と同じ材料の透明誘電体層10をスパッタリング法等で前記金属粒子分散層11上に積層する。更に、金属粒子分散層11と透明誘電体層10を交互に数層ずつ積層し偏光層14を形成する。次に、加熱下で偏光層14及び透明誘電体基板13を特定の面内方向(水平方向)に延伸し、金属粒子12が回転楕円体に成形され光吸収異方性を有することになる。尚、図3において、L1は入射光、L2は出射光を示し、x方向に延伸した結果x方向の光吸収性が高く、y方向に偏光した出射光L2となる。
【0022】
また、透明誘電体基板13中に分散している磁性金属微粒子は粒径が2〜10nmと微小のため、延伸時に引張応力が磁性金属微粒子に加わってもその形状は殆ど変化せず、延伸後も等方性を保ちファラデー効果を生ずる。
【0023】
透明誘電体基板13にFe,Ni,Co等の磁性金属微粒子を分散させるには、イオン注入法,イオンアシストスパッタ法,超微粒子ビーム成膜法,ゾルゲル法等を用いることができる。また、金属粒子12はAu,Ag,Pt等の貴金属元素及びCu,Cr,Al又はW等の遷移金属のうち少なくとも一種が好ましく、これらは透明誘電体基板13や透明誘電体層10との濡れ性が悪く凝集しやすい金属でしかも酸化され難く、その結果透明誘電体層10中で金属粒子12として存在し得る。これらの内、特に好ましいものは、低融点なため凝集が容易でガラスとの濡れが悪く、しかも酸化され難いAuと、安価でガラスとの濡れ性が悪いCuである。なお、金属粒子12は金属単体でなくとも良く、Au,Ag,Pt等の貴金属元素及びCu,Cr,Al又はW等の遷移金属の少なくとも一種を含む合金でもよい。
【0024】
また、金属粒子12の形状の好ましい条件は、アスペクト比(長軸方向の長さ/短軸方向の長さ)が3〜30、長軸方向の長さの平均値が100〜300nm、短軸方向の長さの平均値が10〜50nmであり、より好ましくはアスペクト比が10〜30、最も好ましくはアスペクト比が10〜20である。
【0025】
前記透明誘電体層10としては、透明誘電体基板13がファラデー回転ガラスの場合にはファラデー回転ガラスと同じガラス材料を用い、磁性金属微粒子分散ガラスの場合には透明誘電体基板13と同じ材料の硼酸塩ガラス,燐酸塩ガラス,珪酸塩ガラス,弗燐酸塩ガラス,硼珪酸ガラス等を用いる。例えば、ホウ珪酸ガラスとしては、BKガラス{BKはホーヤ(株)商標名}、S−BSLガラス{S−BSLは(株)オハラ商標名}、パイレックスガラス(パイレックスはコーニンググラスインダストリー社商標名)等であり、他にシリカガラス等の珪酸塩ガラスを用いる。また、このようなガラス材料に代えてプラスチック等の他の透明材料を用いてもよいが、ガラス材料は安価で延伸が容易である点で好適である。
【0026】
更に、ファラデー回転子一体型の偏光子1,2の製法を、下記工程〔1〕〜〔5〕により具体的に述べる。
【0027】
〔1〕スパッタリング法により、ガラスからなる透明誘電体基板13上に、透明誘電体基板13と同じ成分の下地ガラス薄膜を成膜する。
【0028】
〔2〕前記下地ガラス薄膜上にCu薄膜をスパッタリング法により成膜し、透明透明誘電体基板13を成膜温度にてアニール処理し、Cu薄膜を島状化させる。
【0029】
〔3〕島状化したCu薄膜を逆スパッタリング処理し、Cu薄膜の上に透明誘電体基板13と同じ成分のガラス薄膜を成膜する。
【0030】
〔4〕工程〔2〕,〔3〕を所望の積層数になるように繰り返し、透明誘電体層10中の含有ガスを除去するため透明誘電体基板13を熱処理する。
【0031】
〔5〕脱ガス処理を経た透明誘電体基板13をその軟化点近傍の温度で加熱延伸する。
【0032】
本発明は、図1,2の如く、前記ファラデー回転子一体型の第一の偏光子1,第二の偏光子2を組み合わせて用いることで、界面反射や異種材料の接合による熱応力等の問題を解消した光アイソレータを実現できる。また、図2の構成において、透明誘電体基板1b,2bのうち少なくとも一方がファラデー効果を有していれば良い。
【0033】
また本発明は、第一の偏光子1,第二の偏光子2のいずれかを有し、もう一方の偏光子として、ファラデー効果を有さない透明誘電体基板上に偏光層を設けたタイプのもの、或いは金属粒子分散層型以外の偏光子を用いても良い。
【0034】
かくして、本発明は、偏光子としての偏光層と、ファラデー回転子としての透明誘電体基板とが接着剤等を使用せずに直接接合でき、その結果空間伝搬領域や界面反射による損失が発生せず、また透明誘電体基板材料と透明誘電体層材料を同じにすることで、熱膨張差による熱応力発生が解消されるという作用効果を有する。
【0035】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0037】
(実施例1)
図8は、本発明による光アイソレータA4の断面図である。透明誘電体基板としてファラデー効果を有する磁性金属微粒子(Fe)33c,34cを分散させた硼珪酸ガラスから成るガラス基板33b,34bを用い、そのガラス基板33b,34b上に透明誘電体層としてガラス基板33b,34bと同一成分のガラス層を、金属粒子分散層として銅(Cu)粒子分散層を交互に積層することで、図3に示したものと同様に積層体を形成した。尚、同図において、33a,34aは偏光層、33は第一の偏光子、34は第二の偏光子、35は磁石、36は第一のホルダー、37は第二のホルダーである。
【0038】
光アイソレータA4の作製は以下の工程〔1〕〜〔4〕により行った。
【0039】
〔1〕第一の偏光子33において、ガラス基板33b上に、マグネトロンスパッタリング法により真空度2.0×10-3Torr、成膜速度10.6nm/secで、膜厚30nmの第一層目の金属粒子分散層であるCu粒子分散層を形成した。
【0040】
〔2〕Cu粒子分散層上に、真空度2.0×10-3Torr、成膜速度0.2nm/secで、膜厚150nmの第一層目の透明誘電体層であるガラス層を形成した。
【0041】
〔3〕前記〔1〕,〔2〕の成膜工程を繰り返し、Cu粒子分散層とガラス層との交互層からなる積層体(偏光層33a)を作製した。
【0042】
〔4〕この積層体を580℃で脱ガス熱処理した後、ガラス基板33bの軟化点近傍の温度620℃〜630℃で加熱延伸を行い、Cu粒子の形状を回転楕円体状とし光吸収異方性を持たせ、同時にCu粒子の配向化も行った。
【0043】
その結果、各Cu粒子は光吸収異方性をもち、偏光特性が1300nm近傍の光波長領域で得られ、偏光子とファラデー回転子を一体化した第一の偏光子33を作製した。また、第二の偏光子34も同様に作製した。
【0044】
そして、図8の如く、ファラデー回転角が22.5°となる厚みを有する第一,第二の偏光子33,34を用い、これらをそれぞれ第一のホルダー36と第二のホルダー37にハンダにて接合した。その際、第一の偏光子33と第二の偏光子34の偏光方向が互いに45°ずれるように位置合せすることで、光波長1310nmで動作する光アイソレータA4を実現した。
【0045】
本実施例の光アイソレータA4と、図5に示す従来の光アイソレータA1とについて、光波長に関する挿入損失特性を図12に、光波長に関するアイソレーション特性を図13にそれぞれ示す。図12,図13から判るように、アイソレーション特性は本実施例と従来例とで殆ど変化ないが、挿入損失特性は本実施例が光波長1280〜1340nm全域にわたって優れていた。
【0046】
(実施例2)
図9は、本発明による光アイソレータA5の断面図である。透明誘電体基板として、ファラデー回転ガラスであるFR−4ガラス(FRはホーヤ(株)商標名)から成るガラス基板41b,42bを用い、ガラス基板41b,42b上に透明誘電体層としてガラス基板41b,42bと同じ成分のガラス層を、金属粒子分散層として金(Au)粒子分散層を交互に積層することにより、Au−ガラスの積層体(偏光層)を構成した。尚、同図において、41a,42aは偏光層、41は第一の偏光子、42は第二の偏光子、43は磁石、44は第一のホルダー、45は第二のホルダーである。
【0047】
光アイソレータA5の作製は以下の工程〔1〕〜〔4〕により行った。
【0048】
〔1〕第一の偏光子41において、ガラス基板41b上に、マグネトロンスパッタリング法により真空度4.0×10-3Torr、成膜速度15.3nm/secで、膜厚20nmの第一層目の金属粒子分散層であるAu粒子分散層を形成した。
【0049】
〔2〕Au粒子分散層上に、真空度2.0×10-3Torr、成膜速度0.2nm/secで、膜厚170nmの第一層目の透明誘電体層であるガラス層を形成した。
【0050】
〔3〕前記〔1〕,〔2〕の成膜工程を繰り返し、Au粒子分散層とガラス層との交互層からなる積層体(偏光層41a)を作製した。
【0051】
〔4〕この積層体を580℃で脱ガス熱処理した後、ガラス基板41bの軟化点近傍の温度660℃〜670℃で加熱延伸を行い、Au粒子の形状を回転楕円体状とし光吸収異方性を持たせ、同時にAu粒子の配向化も行った。
【0052】
その結果、各Au粒子は光吸収異方性をもち、偏光特性が1550nm近傍の光波長領域で得られ、偏光子とファラデー回転子を一体化した第一の偏光子41を作製した。また、第二の偏光子42も同様に作製した。
【0053】
そして、図9の如く、ファラデー回転角が22.5°となる厚みを有する第一の偏光子41,第二の偏光子42を用い、これらをそれぞれ第一のホルダー44と第二のホルダー45に低融点ガラスにて接合した。その際、第一の偏光子41と第二の偏光子42の偏光方向が互いに45°ずれるように位置合せすることで、光波長1550nmで動作する光アイソレータA5を実現した。
【0054】
本実施例の光アイソレータA5と、図5に示す従来の光アイソレータA1とについて、光波長に関する挿入損失特性及び光波長に関するアイソレーション特性を調べたところ、光波長1550nm帯域で上記実施例1と同様の結果が得られた。
【0055】
(実施例3)
図10,図11は、本発明による光アイソレータA5の動作を説明する斜視図及びその断面図である。図10において、光アイソレータA5の動作は図4の場合と同様でありその説明は省略する。
【0056】
透明誘電体基板として、ファラデー回転ガラスであるFR−4ガラス(FRはホーヤ(株)商標名)から成るガラス基板46b,46b′を用い、ガラス基板46b,46b′上に透明誘電体層としてガラス基板46b,46b′と同じ成分のガラス層を、金属粒子分散層としてCu粒子分散層を交互に積層することにより積層体(偏光層)を構成した。尚、同図において、46はファラデー回転子と偏光子を一体化した偏光子を2個接合した偏光子、47は磁石、48は第一のホルダー、49は第二のホルダーである。
【0057】
光アイソレータA6の作製は以下の工程〔1〕〜〔4〕により行った。
【0058】
〔1〕ガラス基板46bと偏光層46aについて、ガラス基板46b上に、マグネトロンスパッタリング法により真空度4.0×10-3Torr、成膜速度15.3nm/secで、膜厚20nmの第一層目の金属粒子分散層であるCu粒子分散層を形成した。
【0059】
〔2〕Cu粒子分散層上に、真空度2.0×10-3Torr、成膜速度0.2nm/secで、膜厚170nmの第一層目の透明誘電体層であるガラス層を形成した。
【0060】
〔3〕前記〔1〕,〔2〕の成膜工程を繰り返し、Cu粒子分散層とガラス層との交互層からなる積層体(偏光層46a)を作製した。
【0061】
〔4〕この積層体を580℃で脱ガス熱処理した後、ガラス基板46bの軟化点近傍の温度660℃〜670℃で加熱延伸を行い、Cu粒子の形状を回転楕円体状とし光吸収異方性を持たせ、同時にCu粒子の配向化も行った。
【0062】
その結果、各Cu粒子は光吸収異方性をもち、偏光特性が1310nm近傍の光波長領域で得られ、偏光子とファラデー回転子を一体化したガラス基板46b及び偏光層46aを作製した。また、ガラス基板46b′及び偏光層46a′も同様に作製した。
【0063】
そして、図11の如く、2つのファラデー回転子一体型の偏光子を接合した偏光子46を、ファラデー回転角が22.5°となる厚みを有するガラス基板46b,46b′の主面(偏光層46a,46a′の反対面)同士を対向させ、かつ各偏光子層46a,46a′の偏光方向が互いに45°ずれるように配置し、約580℃で熱処理し表面接合させて作製した。そして、偏光子46を第一のホルダー48に低融点ガラスを用いて接合し、光波長1310nmで動作する光アイソレータA6を実現した。
【0064】
本実施例の光アイソレータA6と、図5に示す従来の光アイソレータA1とについて、光波長に関する挿入損失特性及び光波長に関するアイソレーション特性を調べたところ、光波長1310nm帯域で上記実施例1と同様の結果が得られた。
【0065】
【発明の効果】
本発明は、ファラデー効果を有する透明誘電体基板上に、光吸収異方性を有する金属粒子分散層と透明誘電体基板と同じ材料の透明誘電体層とを交互に直接積層したことにより、前記透明誘電体基板上に偏光層が形成されてなる偏光子を有することにより、偏光子としての偏光層と、ファラデー回転子としての透明誘電体基板とが接着剤等を使用せずに直接接合でき、その結果空間伝搬領域や界面反射による光損失が発生せず、また透明誘電体基板材料と透明誘電体層材料を同じにすることで、熱膨張差による熱応力発生が解消される。
【0066】
また、透明誘電体基板と偏光層用の透明誘電体層を同じ材料で作製でき、それらの屈折率を同一とすることができるため、従来のような反射防止膜を光出入射界面に施す必要がない。また、従来のように偏光子とファラデー回転子を貼り合わせる必要がないため、接着剤の塗布状態の均一性の問題、接着剤からのアウトガス発生の問題は生じない。その結果、本発明の光アイソレータは、組み立ての工程数を大幅に削減でき、構成部品の一括加工により量産性が向上し、接着剤が不要となるため長期的信頼性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光アイソレータA3の動作を説明する斜視図である。
【図2】本発明の光アイソレータA3の断面図である。
【図3】本発明のファラデー回転子一体型の偏光子P1の基本構成を示す斜視図である。
【図4】従来の光アイソレータA1の動作を説明する斜視図である。
【図5】従来の光アイソレータA1の断面図である。
【図6】従来の光アイソレータA2の動作を説明する斜視図である。
【図7】従来の光アイソレータA2の断面図である。
【図8】本発明の光アイソレータA4の断面図である。
【図9】本発明の光アイソレータA5の断面図である。
【図10】本発明の光アイソレータA6の動作を説明する斜視図である。
【図11】本発明の光アイソレータA6の断面図である。
【図12】本発明の光アイソレータA3と従来の光アイソレータA1について、光波長に関する挿入損失特性を示すグラフである。
【図13】本発明の光アイソレータA3と従来の光アイソレータA1について、光波長に関するアイソレーション特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1:第一の偏光子
1a:偏光層
1b:ファラデー効果を有する透明誘電体基板
2:第二の偏光子
2a:偏光層
2b:ファラデー効果を有する透明誘電体基板
3:入射光
4:出射光
5:戻り光
6:戻り光の出射光
7:磁石
8:第一のホルダー
9:第二のホルダー
10:透明誘電体層
11:金属粒子分散層
12:金属粒子
13:ファラデー効果を有する透明誘電体基板
14:偏光層
Claims (2)
- ファラデー効果を有する透明誘電体基板上に、光吸収異方性を有する金属粒子分散層と前記透明誘電体基板と同じ材料の透明誘電体層とを交互に直接積層したことにより、前記透明誘電体基板上に偏光層が形成されてなる偏光子を有することを特徴とする光アイソレータ。
- 前記透明誘電体基板が、磁性元素を含有するガラス又は磁性金属微粒子を分散させたガラスから成る請求項1記載の光アイソレータ。
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