JP3784127B2 - 成形型及び成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性プラスチックからなるシート状の表皮を加熱軟化させ成形面に向けて加圧成形する成形型及びその成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のものとしては図4〜図5に開示されたものが知られている。
【0003】
図4には、従来技術に係る成形型及びその成形型を介して表皮から形成した成形表皮を示しいる。
【0004】
まず、成形型2について説明すると、製品部であるトリム線2dを境としてそれよりも上側の製品部となる主成形面2gと、下側のトリム部 となる従成形面2hとよりなる立体状の成形面2aを、ベース面2eに一体に形成して成形型2としたものである。また、この成形型2には、適宜な位置に多数の小孔2fを設け表皮1の吸引手段としている。
【0005】
そして、このような成形型2を用いて表皮1を成形するには、表皮1を加熱・軟化させ成形型2に向けて下降させて押し当ると共に真空吸引(圧空又は圧空と真空との併用としてもよい)すると、表皮1は成形面2aに沿い密着するように形成される。そして、冷却保形して脱型し成形表皮4を得る。
【0006】
この成形時に、成形型2の成形面2aの側面2i,2jが交差する交差線2bには表皮1の一部に余りが出るため、そこに略三角形の誘導板3を設けることにより、この余り表皮が交差線頂部2cからベース面2eに橋渡しをするように誘導して、一般にブリッジ6と呼ばれる重なり部を有する成形表皮4が形成される。
【0007】
この形成された成形表皮4を発泡成形型12に装着して行なう発泡成形は、図5に示すように、ミキシングヘッド11より発泡材13をキャビティ型7内に適量注入してコア型8を矢印P方向に型締めする。型締めした発泡成形型12の中では発泡反応により体積膨張しながら発泡成形型12内に充満する。そして、この反応が完了した時点で芯材9と成形表皮4とが発泡材13により一体に接着成形される。
【0008】
なお、キャビティ型7への成形表皮4の装着は、図5に示すように、キャビティ型7にブリッジ6が挿入される略同一形状の窪み部7aを設け、この窪み部7aにブリッジ6部を挿入した後にキャビティ型7内に成形表皮4が面接するように押し広げて装着している。
【0009】
そして、キャビティ型7内に装着された成形表皮4は、上記の成形型2で成形した成形表皮4のブリッジ6が、誘導板23から外したままでは融着しておらず、この状態では発泡成形時に発泡材13が侵入し洩れを起こすので、ブリッジ6の内面側(成形表皮の裏面側)にシールテープ5を貼付けると同時に、芯材9上には周回するシール材10を設けて、発泡材13が侵入できない状態にして発泡成形を行っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の成形型2では、発泡材13がブリッジ6の間隙に侵入し型外に洩れないように、シールテープ5の貼付け作業が必要であるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記のような従来技術の課題を解決するため、発泡材の洩れ止め用シールテープの貼付けが不要な表皮の成形型及びその成形方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、交差する側面を有する立体を形成する成形型であって、前記側面には、製品部とトリム部とを画成するトリム線が配設され、該トリム線を境として、該トリム線よりも上側の製品部となる主成形面と該トリム線よりも下側のトリム部となる従成形面とを含み、該成形型の主成形面及び従成形面に向けて熱可塑性プラスチックからなるシート状の表皮を加熱軟化させた状態で、前記主成形面及び前記従成形面に向けて加圧することにより、該主成形面及び従成形面に沿って表皮成形する成形型において、
前記側面の2つが交差する交差線の頂部から主成形面と従成形面とに跨り且つ前記頂部から離反する方向に延びる稜線を有する誘導板を突設すると共に、前記稜線を頂部から離反する方向に向けて一旦従成形面に向けて谷状に引き込んだ後に、主成形面に向けて山状に張り出した波形状に形成し、この波形状の稜線を有する誘導部により、表皮の一部を誘導して前記主成形面側に位置する表皮の緊張状態を保たせながら形成するようにしたことを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の成形型において、前記誘導板は、薄肉板状とすると共に前記誘導板の基部に沿って吸引手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載の成形型を用いて、前記誘導板の前記稜線の頂部寄りを一旦成形面に向けて引き込んだ後に、主成形面に向けて張り出した波形状の誘導部を有する誘導板に沿って加圧し、表皮の一部を誘導して前記主成形面側の表皮の緊張状態を保たせながら、前記誘導板の基部に設けた前記吸引手段により吸引して、前記稜線の頂部寄りの成形面で重なり融着するように表皮成形する成形方法を特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。なお、従来例と同一または同等部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0016】
この実施の形態の中で、図1及び図2において成形型を示している。
【0017】
図1は、成形型及びこの成形型を用いて表皮から成形表皮を形成した状態を示す説明図である。
【0018】
図1において、1はシート状の表皮、22は成形型、2aは成形型22の成形面、2bは成形面2aの2つの側面2i,2jが交差する交差線、2cは交差線2bの頂部、2dは成形面2aの製品端部を示すトリム線、2eは成形型22のベース面、2fは吸引手段である小孔、23はアルミニウム薄板等からなる誘導板で、23aは頂部2cから離反する方向に延びる稜線である。そして、24は成形型22を介して形成された成形表皮、26は誘導板23で形成されたブリッジで、26aはブリッジ26の表皮融着部である。
【0019】
図2(a)、(b)は、成形型に係る誘導板の説明図である。
【0020】
図2(a)は、成形型の誘導板に係る側面図(図2(b)のB矢視)であり、図中、稜線23aは交差線2bの頂部2cから斜め下方に離反する方向に延ばして設けている。この稜線23aと主成形面2gと従成形面2hとに跨って成形型22のベース面2e上に誘導板23を設けている。そして、稜線23aの頂部2c寄りを一旦従成形面2hに向けて引き込んだ後に、主成形面2gに向けて、余り表皮1を吸収し、また表皮1が破損しないように円弧状に張り出して波形状の誘導部23cを形成させている。
【0021】
図2(b)は成形型の誘導板に係る平面図である。
【0022】
図中、成形面2aの2つの側面2i,2jが交差した交差線2bから離反するように設けたベース面2e上の誘導板23を平面図で示している。この平面図に示すように、誘導板23は板状の薄肉形状としている。
【0023】
なお、この誘導板23の交差線2bからの平面視取付角度±αは、成形面2aの形状や2つの側面2i,2jの交差角度βや表皮1の成形方向から判断して適宜に変えるもので、一方向にのみ固定されるものではない。
【0024】
このように、図1及び図2において、表皮融着部26aが形成できる誘導板23を備えた成形型22の構成が開示されている。
【0025】
図3は、同実施の形態の中で、成形表皮を発泡成形型内に装着し発泡成形している状態を示す説明図である。
【0026】
図3において、12Aはコア型8とキャビティ型27よりなる発泡成形型で、このキャビティ型27内には成形表皮24を装着させている。そして、27aは窪み部でブリッジ26を挿入させている。
【0027】
また、図3の斜視図で示しているように、窪み部27aに挿入されたブリッジ26は、このブリッジ26の一部(下部)が表皮融着部26aを形成し隙間がないため従来のようにシールテープ5を貼付ける必要がない。そして、融着していないブリッジ26の他の一部(上部)にはコア型8を型締めした時点で、コア型8に着脱自在に装着された芯材9上に接合して設けたシール材10が側接してブリッジ26の間隙を塞ぎ、発泡材13がシール材10外へ洩れるのを防ぐ構成としている。
【0028】
以上のように構成された成形型22を用いて行なう表皮成形及びこの成形表皮24を用いて行なう発泡成形について説明する。
【0029】
先ず、成形表皮24の形成について図1に基づいて説明すると、成形型22は加熱され軟化した表皮1を成形面2aに向けて下降させて押し当て、同時に吸引手段2fである小孔から吸引して成形型22に吸着させる。続いて冷却保形した時点で脱型して成形表皮24を得る。このとき表皮1の一部の余り表皮は、波形状の誘導部23cで引っ張られるように成形され、頂部2cと誘導部23cとの間はブリッジ状となり、しかもこの誘導板23の基部23bに沿って設けた小孔2fから吸引され、基部23b側へ引っ張られて屈曲し表皮面は拝合され融着して形成される。
【0030】
次に、この成形表皮24を用いた発泡成形について説明する。
【0031】
図3は、成形表皮を装着し発泡材を注入している状態を示している。
【0032】
図3に示すように、成形表皮24の装着に当たっては、ブリッジ26形状に合わせてキャビティ型27に設けた窪み部27aにブリッジ26を挿入しながら、成形表皮24全体を発泡成形型12A内に押し広げて装着する。
【0033】
また、ミキシングヘッド11からは、キャビティ型27内に装着された成形表皮24上に、発泡材13であるA液とB液との2液をミキシングヘッド11内で混合撹拌しながら発泡成形型12A内に適量注入する。そしてすぐに、コア型8を矢印Y方向に下降させて型締めを行なう。
【0034】
そして、発泡成形型12A内では注入された発泡材13が急速に反応して体積膨張し発泡成形型12A内を充満する。このとき、発泡成形型12A内には発泡圧がかかるが、ブリッジ26の表皮融着部26aは融着しており、また融着していないところはシール材10で間隙が塞がれるので、シールテープ5を用いることなく発泡成形される。 そして、発泡材13の反応が完了した時点で発泡型12Aから脱型して、芯材9と成形表皮24とが発泡材13で接着され一体化された樹脂成形品が形成される。
【0035】
ここで、表皮1とは、ABS樹脂と塩化ビニールをブレンドした樹脂材料を押し出し成形機やカレンダーロール装置でシート状としたものを指しており、表面側はしぼ模様をロール転写し外観を良くしたものが多く使われている。また、表皮厚さは0.7mmや0.8mmのものが車両用内装材としては一般的で、加熱軟化させ各種の内装部品に真空成形して用いられることが多い。
【0036】
また、ここで、発泡材13とは、ウレタン発泡材を指しており、A液であるポリオールとB液であるイソシアネートとをミキシングヘッド11で混合撹拌させて発泡型内形状に沿って発泡層を形成させて行くものである。この2液は極めて短時間に激しく反応し高速な流動と体積膨張をして狭い隙間にも入り込んで行く性質を有している。
【0037】
また、ここで、シール材10とは、一般にウレタンの発泡成形材を丸や四角形等の断面を有する紐状にスライスしたものを指している。このシール材10は発泡状態で軟らかく成形品の凹凸面に沿わせて接合することが容易にできる。また、発泡体13圧力を受けると押された方向に変形し、発泡材13を吸収しながら間隙を埋めて発泡材13の洩れ防止を行なうことができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1記載の発明によれば、交差する側面を有する立体を形成する成形型であって、前記側面には、製品部とトリム部とを画成するトリム線が配設され、該トリム線を境として、該トリム線よりも上側の製品部となる主成形面と該トリム線よりも下側のトリム部となる従成形面とを含み、該成形型の主成形面及び従成形面に向けて熱可塑性プラスチックからなるシート状の表皮を加熱軟化させた状態で、前記主成形面及び前記従成形面に向けて加圧することにより、該主成形面及び従成形面に沿って表皮成形する成形型において、
前記側面の2つが交差する交差線の頂部から主成形面と従成形面とに跨り且つ前記頂部から離反する方向に延びる稜線を有する誘導板を突設すると共に、前記稜線を頂部から離反する方向に向けて一旦従成形面に向けて谷状に引き込んだ後に、主成形面に向けて山状に張り出した波形状に形成し、この波形状の稜線を有する誘導部により、表皮の一部を誘導して前記主成形面側に位置する表皮の緊張状態を保たせながら形成するようにしている。
【0039】
したがって、誘導板に沿って成形され一定の安定した形状のブリッジとなる。また、この表皮を使用することで発泡型に正確に装着できるので、成形不良の低減が図れる。
【0040】
請求項2の発明によれば、誘導板は、薄肉板状とすると共に前記誘導板の基部に沿って吸引手段を設けている。
【0041】
したがって、成形表皮は、吸引手段である小孔からの吸引により、より誘導板の形状に沿った常に一定の表皮成形ができる。よって、この成形表皮の発泡型への装着性が向上し、発泡成形工数の低減が図れる。
【0042】
請求項3に記載された発明によれば、請求項2記載の成形型を用いて、前記誘導板の前記稜線の頂部寄りを一旦成形面に向けて引き込んだ後に、主成形面に向けて張り出した波形状の誘導部を有する誘導板に沿って加圧し、表皮の一部を誘導して前記主成形面側の表皮の緊張状態を保たせながら、前記誘導板の基部に設けた前記吸引手段により吸引して、前記稜線の頂部寄りの成形面で重なり融着するように表皮成形する成形方法としている。
【0043】
したがって、成形面の交差線と誘導板との間は、表皮の緊張状態と吸引手段とにより、表皮同志が吸着され融着されて隙間のない成形表皮が供給できる。 よって、この成形表皮を使用することで、シールテープが不要な上に貼付け作業が不要となって製造コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る表皮成形を示す説明図である。
【図2】 (a)は、図2(b)のB矢視図である。
(b)は、図1のA部の平面図である。
【図3】 同実施の形態に係る成形表皮を使用した発泡成形を示す説明図である。
【図4】 従来技術の表皮成形を示す説明図である。
【図5】 同従来技術に係る成形表皮を使用した発泡成形を示す断面図である。
【符号の説明】
22…成形型
23…誘導板
23a…稜線
23b…基部
23c…誘導部
1…表皮
2a…成形面
2b…交差線
2c…頂部
2f…吸引手段
2g…主成形面
2h…従成形面
2i,2j…側面

Claims (3)

  1. 交差する側面を有する立体を形成する成形型であって、
    前記側面には、製品部とトリム部とを画成するトリム線が配設され、該トリム線を境として、該トリム線よりも上側の製品部となる主成形面と該トリム線よりも下側のトリム部となる従成形面とを含み、該成形型の主成形面及び従成形面に向けて熱可塑性プラスチックからなるシート状の表皮を加熱軟化させた状態で、前記主成形面及び前記従成形面に向けて加圧することにより、該主成形面及び従成形面に沿って表皮成形する成形型において、
    前記側面の2つが交差する交差線の頂部から主成形面と従成形面とに跨り且つ前記頂部から離反する方向に延びる稜線を有する誘導板を突設すると共に、
    前記稜線を頂部から離反する方向に向けて一旦従成形面に向けて谷状に引き込んだ後に、主成形面に向けて山状に張り出した波形状に形成し、この波形状の稜線を有する誘導部により、表皮の一部を誘導して前記主成形面側に位置する表皮の緊張状態を保たせながら形成するようにしたことを特徴とする成形型。
  2. 前記誘導板は、薄肉板状とすると共に前記誘導板の基部に沿って吸引手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の成形型。
  3. 請求項2記載の成形型を用いて、
    前記誘導板の前記稜線の頂部寄りを一旦成形面に向けて引き込んだ後に、主成形面に向けて張り出した波形状の誘導部を有する誘導板に沿って加圧し、表皮の一部を誘導して前記主成形面側の表皮の緊張状態を保たせながら、前記誘導板の基部に設けた前記吸引手段により吸引して、前記稜線の頂部寄りの成形面で重なり融着するように表皮成形することを特徴とする成形方法。
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