JP3782390B2 - 新規な緑茶飲料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は緑茶飲料の製造方法に係わり、詳しくは加熱殺菌処理によって生ずるレトルト臭等の不快な加熱臭を抑制し、なお且つ良好な香気成分を増加させることができる、新規な緑茶飲料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
緑茶飲料の製造に関しては、従来から、加熱殺菌処理によって生ずる不快臭(レトルト臭)を抑制することが課題とされ、該課題を解決するために種々の技術が提供されてきた。
【0003】
例えば、緑茶飲料のレトルト臭を消失させるために、予め緑茶原料を萎凋させる技術が公知であり、具体的には緑茶原料の酵素失活工程に先立ち、緑茶原料を1〜48時間萎凋処理することが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、レトルト臭の発生を防止するために、温度の異なる2つの抽出液を用い、原料茶を2段階工程で抽出する抽出方法が公知であり、具体的には茶類を20℃以下の冷水で抽出して得られた冷却抽出液を除去した後、該残渣の茶類を30〜95℃の温水で再抽出することにより茶類飲料のレトルト臭を低減させている(例えば、特許文献2参照)。また、サイクロデキストリンを茶抽出液に含浸せしめ、加熱処理した時に発生するレトルト臭を該サイクロデキストリンの環状内に包接させることによりレトルト臭を無臭化する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、上述した原料茶を萎凋させる方法では、萎凋特有の香りが強く感じられ、緑茶本来の良好な香りが失われてしまう(緑茶ではなくどちらかというと烏龍茶に似た風味となる。)という欠点があった。また、原料茶を温度の異なる2種類の抽出液を用いて2段階工程で抽出する上記手段は、製造工程が複雑になるという欠点があった。さらに、サイクロデキストリンを用い該サイクロデキストリンの環状内にレトルト臭を包接させる上記技術では、レトルト臭の抑制は可能であるものの、茶の良好な香気までも奪い取ってしまうという問題点があった。
【0005】
上述した従来の技術は、いずれもレトルト臭を抑制することに重点をおいたものであり、茶本来の新鮮な香味を引き出すという観点からレトルト臭の抑制が考慮されたものではない。
【0006】
一方、酵素処理を用いた従来技術として、茶葉を特定酵素の存在下に特定温度で処理することにより、茶葉から十分には抽出されにくい成分を効率よく得る技術(例えば、特許文献4参照)、また、望ましい茶フレーバを有し不快な異臭を有しない茶固体を得るために、茶残渣を水溶性媒体中で特定酵素により加水分解する技術(例えば、特許文献5参照)が開示されている。しかしながら、これら酵素処理は、加熱殺菌処理工程を含む茶の処理方法において用いられることを意図したものではなく、これら技術を用いても加熱殺菌処理によりレトルト臭等の不快な加熱臭が発生するなかで優れた香気バランスを有する緑茶飲料を得ることはできない。
【0007】
また、食品のフレーバーを改善等するべく、配糖体加水分解酵素を用いて香気を有する化合物を回収する技術が開示されており、具体的には香気を有する化合物の残基を構成要素として有する配糖体に、前記配糖体における糖と香気を有する化合物との結合を加水分解することが可能な配糖体加水分解酵素を用いて作用させて香気を有する化合物を生成させ、反応物から香気を有する化合物を回収する技術が公知である(例えば、特許文献6参照)。また同様の目的から、不揮発性の茶香気成分前駆体から茶飲料に十分活用することのできる茶フレーバーを生成することができる茶香気成分生成酵素ならびにその製造方法も公知である(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
しかしながら、これら技術に基づき製造された香気化合物を香料として緑茶飲料に添加し、加熱殺菌した場合、香りのバランスが悪くなることが後述するように本発明者等により確認されている。
【0009】
ところで、一般的に酵素反応においては所定温度で所定の反応時間が必要とされる一方、飲料製造時は品質劣化を考慮しできるだけ低温・短時間で処理することが所望される。しかしながら、酵素処理を用いた飲料茶の製造方法において茶の品質劣化を抑制すべく低温・短時間で酵素処理するための技術について未だ満足いくものは提供されていなかったのが現状である。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−66156号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平11−113491号公報
【0012】
【特許文献3】
特開平1−174328号公報
【0013】
【特許文献4】
特開平1−300848号公報
【0014】
【特許文献5】
特開平4−228028号公報
【0015】
【特許文献6】
特開平9−28389号公報
【0016】
【特許文献7】
特開平8−140675号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑み開発されたものであり、第1に、加熱殺菌処理を要因とする不快な加熱臭(レトルト臭を含む。以下において同様である。)の発生を抑制し、なお且つ茶本来の良好な香気を増加させることにより、香気バランスのよい茶飲料の製造方法を提供することにある。第2に、製造時の時間の経過に伴う茶の品質劣化をも防止することが可能な、簡易かつ簡便な茶飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく加熱殺菌処理工程を伴う茶飲料の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、緑茶原料から緑茶成分を抽出して得られた未加熱の緑茶抽出液を酵素処理することで、その後に加熱殺菌処理して緑茶飲料とした場合でも、加熱臭に関与する香気成分化合物を減少させ、一方良好な香気成分化合物を増加させ得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0019】
すなわち、本発明は、緑茶原料から緑茶成分を抽出して緑茶抽出液を得る工程と、該工程で得られた緑茶抽出液を加熱殺菌処理して緑茶飲料とする工程とを備えた緑茶飲料の製造方法において、前記緑茶抽出液の加熱殺菌処理工程に先立ち、配糖体分解酵素としてβ−グリコシダーゼを添加することにより、未加熱の緑茶抽出液中に含有される配糖体を香気成分化合物に変化させる酵素処理工程を更に具備することを特徴とする、新規な緑茶飲料の製造方法である。
【0020】
緑茶抽出液の加熱殺菌処理工程に先立ち行われる前記酵素処理工程においては、未加熱の緑茶抽出液中に含有され、加熱臭の要因となる香気成分化合物であるベンジルアルコールおよび/またはインドールが減少し、良好な香気成分化合物であるシス−3−ヘキセノールが増加する。
【0022】
本発明において、β−グリコシダーゼの添加時期としては、緑茶成分の抽出前であることが好ましい。
【0023】
また、β−グリコシダーゼの添加量としては、緑茶成分抽出用溶媒1000mLに対し50〜500unitの範囲であることが好ましい。
【0024】
前記製造方法により製造された新規な緑茶飲料は、加熱殺菌処理により添加されたβ−グリコシダーゼが失活するため、実質的にβ−グリコシダーゼを含有しない。
【0025】
本発明によれば、加熱殺菌時に発生する加熱臭に関与する香気成分化合物(以下において「加熱臭香気成分化合物」とも言う。)の生成が抑制されるのみならず、加熱殺菌前に良好な香気成分化合物が充分に生成され、かかる良好な香気成分化合物はその後に施される加熱殺菌後においても充分残存することが判明した。その結果として香気のバランスのよい、新鮮味の残る緑茶飲料を製造することが可能となった点に本発明の極めて優れた効果が見出されるところである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、緑茶抽出液に最終的に加熱殺菌処理を施しこれを緑茶飲料とする緑茶飲料の製造方法であって、該加熱殺菌処理に先立ち、未加熱の緑茶抽出液中に含有される特定の配糖体に酵素処理を施すことを特徴とするものである。
【0027】
すなわち、本発明は、緑茶原料から緑茶成分を抽出して緑茶抽出液を得る工程と、該工程で得られた緑茶抽出液を加熱殺菌処理して緑茶飲料とする工程とを備え、更に前記緑茶抽出液の加熱殺菌処理工程に先立ち、配糖体分解酵素を添加することにより、未加熱の緑茶抽出液中に含有される配糖体を加水分解しこれを香気成分化合物に変化させる酵素処理工程を具備する新規な緑茶飲料の製造方法である。
【0028】
本発明において緑茶抽出液の加熱殺菌処理に先立ち配糖体分解酵素を添加し酵素処理を行うこととしたのは、その後に施される加熱殺菌処理により発生する不快な加熱臭を抑制するのみならず、尚かつ茶本来の良好な香気を増加させることにより、香気バランスがよく新鮮味を有する緑茶飲料を得ることを意図したものであり、配糖体分解酵素の作用により未加熱緑茶抽出液中では加熱臭香気成分化合物が減少する一方、良好な香気成分化合物が増加するが、この状態は加熱殺菌処理した場合でも変わることがなく、新規な緑茶飲料を得ることができる。
【0029】
すなわち、加熱殺菌前に、茶抽出液中に含有され、加熱殺菌により生成する加熱臭に起因する香気成分配糖体を配糖体加水分解酵素により加水分解することにより、加熱臭の要因となる香気成分化合物の生成が抑制され、これにより加熱殺菌時における加熱臭の発生を抑制することができる。更に、本発明においては加熱臭香気成分化合物の発生が抑制されるのみならず、配糖体加水分解酵素の作用により良好な香気成分が未加熱の緑茶抽出液中に生成され、更にはかかる生成した良好な香気成分は加熱殺菌処理を施した後においても十分な量が残存することをも見出された。このように本発明により、酵素処理後、加熱臭香気成分化合物が減少し、良好な香気成分化合物が増加した未加熱の緑茶抽出液を得ることが可能となり、かかる緑茶抽出液に加熱殺菌処理を施すことにより、加熱臭の発生が抑制され、尚かつ十分良好な香気成分化合物が残存し、その結果として香気のバランスのよい新鮮味の残る新規な緑茶飲料を製造することが可能となったのである。
【0030】
更に、一般的に酵素の失活温度は80〜90℃であるところ、本発明の製造方法においてはそれよりも高い温度(通常120℃前後)において加熱殺菌処理が施されるため、配糖体分解酵素は失活し、最終製品としては酵素を含まない新規な緑茶飲料を得ることができる
ここで、加熱殺菌処理により発生する加熱臭の要因となる香気成分化合物として特に増加するテルペンアルコール類には、リナロール、ゲラニオール、インドール等があり、テルペンアルコール類以外では、ベンジルアルコール、4−ビニルフェノール、β−ヨノン等を挙げることができる(農化誌、衣笠、Vol. 63、No. 1、pp.29〜35 (1989))。良好な香気成分化合物としては若葉の香りを有するシス−3−ヘキセノールや、茶本来の新鮮な香味を有するベンズアルデヒドを挙げることができる。
【0031】
なお、このように加熱臭の要因となる香気成分化合物であるベンジルアルコールやインドールが減少し、一方良好な香気成分化合物であるシス−3−ヘキセノールやベンズアルデヒドが増加した緑茶飲料は、本発明に係る製造方法を用いた場合に初めて得られるものであり、実施例において詳述するが、前記特許文献4、あるいは5に開示された技術を用いて得られたシス−3−ヘキセノールやベンズアルデヒドを含んだ茶香気抽出液を加熱殺菌前の茶飲料に加えた後加熱殺菌を施しても、このような香気成分配合は十分に得られるものではい。
【0032】
本発明において緑茶原料から緑茶成分を抽出し緑茶抽出液を得る手段としては、特に限定されるものではなく、例えば緑茶葉を60〜80℃程度の温水を用いニーダー抽出する通常の方法を用いて緑茶抽出液を得ることができる。
【0033】
また本発明においては最終的に緑茶抽出液を加熱殺菌処理することにより緑茶飲料を得るが、該加熱殺菌処理温度は特に限定されるものではなく、通常120℃〜130℃で行えばよい。上述した通り、本発明において添加される配糖体分解酵素は、かかる加熱殺菌処理により失活するため、最終的に得られる緑茶飲料は配糖体分解酵素を含有しないものとなる。
【0034】
本発明において用いる配糖体分解酵素としては、配糖体を特異的に加水分解する酵素であるグリコシダーゼを用いることができ、中でもβ−グリコシダーゼが特に好ましい。
【0035】
また、本発明において配糖体分解酵素の添加時期としては、特に限定されるものではなく、通常通り緑茶成分の抽出後に添加してもよいが、緑茶成分の抽出前に予め添加されることが好ましい。具体的には、緑茶成分の抽出前に、緑茶成分を抽出するための溶媒(緑茶成分抽出用溶媒)に添加すること、もしくは緑茶成分の抽出前に予め緑茶原料に直接酵素を添加することにより行うことが好ましい。このように緑茶原料から緑茶成分を抽出する前に酵素を添加することにより、抽出後に酵素を添加していた場合と比較して余分な反応時間が削除され、抽出から殺菌までの茶飲料製造時の時間経過に伴う茶飲料の品質劣化が起きないうちに酵素添加による十分な効果を得ることが可能となるのである。すなわち、一般的に酵素反応においては所定温度で所定の反応時間が必要とされる一方、飲料製造時は品質劣化を考慮しできるだけ低温・短時間で処理することが所望されるところ、緑茶成分の抽出時に酵素を添加する本発明の製造方法は、かかる双方の要求を満足させるものといえる。
【0036】
本発明においては、配糖体分解酵素の添加量は、酵素の種類、性質(力価)、抽出液濃度等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは緑茶成分抽出用溶媒1000mLに対し50〜500unit、より好ましくは100〜500unitである。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
以下に掲げる実施例では、配糖体分解酵素として一般的に市販されているβ−グルコシダーゼ・アーモンド由来(オリエンタル酵母製、36.8unit/mg)を用いた。なお、本発明の製造方法はこれら実施例に示した条件に限定されるものではなく、例えば酵素の添加量も酵素の種類、性質(力価)、抽出液濃度等に応じて適宜設定し得ることはいうまでもない。
【0038】
<実施例1> 酵素処理による茶の香気成分の比較
(1)酵素処理を施さない緑茶飲料の製造
緑茶上級品10gを55℃のイオン交換水1000mLで3.5分間抽出した。得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後25℃以下になるまで冷却し、ネル布にて茶の微粉を除去した。その後、品質安定のためにビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0に調整した。
【0039】
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0040】
(2)酵素処理を施した緑茶飲料の製造
(2−1)酵素を緑茶成分の抽出前に予め添加
産緑茶上級品10gとβ−グルコシダーゼ500unitを55℃のイオン交換水1000mLに添加して3.5分間抽出し、得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後25℃以下になるまで冷却し、ネル布にて茶の微粉を除去した。その後、品質安定のためにビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0に調整した。
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0041】
(2−2)酵素を緑茶成分の抽出後に添加
緑茶上級品10gを55℃のイオン交換水1000mLで3.5分間抽出した。得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後、β−グルコシダーゼ500unitを添加した。次いで、これを25℃以下になるまで撹拌しながら冷却して、その後30分間放置し、ネル布にて茶の微粉を除去した。その後、品質安定のためにビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0に調整した。
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0042】
(結果)
各試験区の分析結果を図1に示す。酵素無添加をコントロールとし(図1(a))、抽出前(図1(b))と抽出後(図1(c))における酵素の添加時期による効果の差異を比較した。
【0043】
その結果、まず、配糖体分解酵素(β−グルコシダーゼ)を添加することによりレトルト臭の原因物質の一つと考えられているベンジルアルコールやインドールの増加が抑制されていることがわかる。また酵素を添加することにより若葉の香りを有するシス−3−ヘキセノール(青葉アルコール)や茶本来の新鮮な香味を有するベンズアルデヒドが著しく増加しているのがわかる。
【0044】
かかる結果より、β−グルコシダーゼを添加することにより、レトルト臭の原因物質となる香気成分化合物の増加が抑制されるとともに、香気の改善も図られることが明らかとなった。
【0045】
そして、酵素の添加時期については、図1(b)及び図1(c)より、抽出前添加と抽出後添加においてレトルト臭の発生抑制と茶の良好な香気成分増加に関し、得られる官能的な評価に顕著な差は見られない。しかしながら、一般的に酵素反応は所定温度において所定の反応時間が必要である一方、飲料製造時は品質劣化の観点からできるだけ低温・短時間で処理することが所望される。従って、抽出前に酵素を添加する本発明に係る製造方法によれば、茶飲料の劣化が起きないうちに良好な香気成分を増加させることが可能になる。本実施例より、酵素を抽出前に添加することにより、抽出から殺菌までの温度域において短時間で十分な酵素処理による効果が得られることがわかった。このことは飲料製造時における品質劣化の抑制の観点から極めて好ましいものである。
【0046】
<実施例2> 酵素の比較
酵素処理に用いる酵素の相違による香味の差について、β−グルコシダーゼ、プロテアーゼ、α−アミラーゼを用いて検討した。
なお、実施例1と同様に緑茶成分の抽出前にそれぞれの酵素を予め添加して緑茶飲料を製造した。
【0047】
(結果)
官能検査と分析結果により評価を行った。その結果を表1及び図2に示す。これよりβ−グルコシダーゼを用いた場合にレトルト臭を抑制し且つ香気の改善効果が得られることがわかった。
【0048】
【表1】
【0049】
<実施例3> 酵素添加量の検討
緑茶上級品10gと所定量のβ−グルコシダーゼ(0、50、100、500、1000unit)を55℃のイオン交換水1000mLに添加して3.5分間抽出し、得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後25℃以下になるまで冷却し、ネル布にて茶の微粉を除去した。その後、品質安定のためにビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0に調整した。
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0050】
(結果)
官能検査により評価を行った。その結果を表2に示す。これにより酵素の添加量が50unitにおいてレトルト臭が弱くなり、香気も若干改善された緑茶飲料が得られたことがわかる。そして、酵素の添加量が100unit、500unitにおいてレトルト臭は顕著に抑制され、更に新鮮味があり香気のバランスが改善された緑茶飲料が得られた。一方、酵素の添加量が1000unitではレトルト臭は抑制されていたが、香気のバランスの観点から好ましくない結果が得られた。これより、酵素添加量は50〜500unitの範囲が好ましく、更に100〜500unitの範囲においてはレトルト臭が抑制され香気が改善された緑茶飲料として特に好ましいことがわかる。
【0051】
【表2】
【0052】
<実施例4> 茶香気抽出液を利用した緑茶飲料との比較
(1)茶香気抽出液を利用した茶飲料の製造
(1−1)β−グルコシダーゼを利用した茶香気抽出液の製造方法
原料茶50gに対して1000mLの蒸留水を入れ、これに加水分解酵素としてβ−グルコシダーゼを500unit添加した。これを40℃の温浴内で1時間減圧水蒸気蒸留し、茶特有の香りと酵素処理により生成した香りを回収した。
【0053】
(1−2)上記茶香気抽出液を利用した茶飲料の製造方法
静岡産緑茶上級品10gを55℃のイオン交換水1000mLで3.5分間抽出した。得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後25℃以下になるまで冷却し、ネル布にて茶の微粉を除去した。次いで上記で製造した茶香気抽出液を、最終液量に対して10質量%となるように添加した。その後、品質安定のためのビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0程度に調整した。
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0054】
(2)本発明による茶飲料の製造
静岡産緑茶上級品10gとβ−グルコシダーゼ500unitを55℃のイオン交換水1000mLに添加して3.5分間抽出し、得られた抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで粗濾過後25℃以下になるまで冷却し、ネル布にて茶の微粉を除去した。その後、品質安定のためにビタミンCを100ppm添加し、重曹を加えpH6.0に調整した。
pH調整後、抽出液を200mL缶に充填し、121℃で7分程度の殺菌を行った。
【0055】
(結果)
茶香気抽出液を利用した緑茶飲料の分析結果と本発明の製造方法による緑茶飲料の分析結果を各々図3(a)、図3(b)として示す。これより、β−グルコシダーゼを利用して製造した香気抽出液を添加し製造した緑茶飲料は、若干シス−3−ヘキセノール(青葉アルコール)が増加しレトルト臭も若干減少する傾向であったが、官能的に大きな改善は見られなかった。酵素を使い香気抽出物を製造する分、コストアップにつながるが、かかるコストアップした分の効果は期待できないと言える。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、レトルト臭等の加熱臭の発生を抑制しつつ、茶本来の良好な香気を増加させることのできる茶飲料の製造方法であって、更に製造時の時間の経過に伴う茶の品質劣化をも防止することが可能な、簡易かつ簡便な茶飲料の製造方法の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 緑茶飲料の香気成分のガスクロマトグラムによる分析結果を示す図であって、
(a)は酵素処理を施さずに製造された緑茶飲料の分析結果を示す図、
(b)は抽出前の酵素添加により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図、
(c)は抽出後の酵素添加により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図。
【図2】 各種酵素を用いた緑茶飲料の香気成分のガスクロマトグラムによる分析結果を示す図であって、
(a)はβ−グルコシダーゼ添加により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図、
(b)はプロテアーゼ添加により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図。
(c)はα−アミラーゼ添加により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図、
【図3】 緑茶飲料の香気成分のガスクロマトグラムによる分析結果を示す図であって、
(a)は茶香気抽出液を利用した緑茶飲料の分析結果を示す図。
(b)は本発明の製造方法により製造された緑茶飲料の分析結果を示す図。
Claims (5)
- 緑茶原料から緑茶成分を抽出して緑茶抽出液を得る工程と、該工程で得られた緑茶抽出液を加熱殺菌処理して緑茶飲料とする工程とを備えた緑茶飲料の製造方法において、前記緑茶抽出液の加熱殺菌処理工程に先立ち、配糖体分解酵素としてβ−グリコシダーゼを添加することにより、未加熱の緑茶抽出液中に含有される配糖体を香気成分化合物に変化させる酵素処理工程を更に具備することを特徴とする、新規な緑茶飲料の製造方法。
- 緑茶抽出液の加熱殺菌処理工程に先立ち行われる前記酵素処理により、未加熱の緑茶抽出液中に含有され、加熱臭の要因となる香気成分化合物であるベンジルアルコールおよび/またはインドールが減少し、良好な香気成分化合物であるシス−3−ヘキセノールが増加する、請求項1に記載の新規な緑茶飲料の製造方法。
- β−グリコシダーゼの添加が緑茶成分の抽出前に行われる、請求項1又は2に記載の新規な緑茶飲料の製造方法。
- β−グリコシダーゼの添加量が、緑茶成分抽出用溶媒1000mLに対し50〜500unitである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の新規な緑茶飲料の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により製造された緑茶飲料であって、加熱殺菌処理によりβ−グリコシダーゼが失活するため実質的にβ−グリコシダーゼを含有しない新規な緑茶飲料。
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