JP3781591B2 - 前方散乱フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型液晶表示装置に用いられる前方散乱フィルムに関するものである。特に、反射層として鏡面反射板を用いた液晶表示装置に使用される前方散乱フィルムに関し、その光学特性を改良した前方散乱フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置は、従来のバックライトを使用する透過型液晶表示装置に比べ、コントラストが低い、表示が暗いといった短所があるものの、その構成内にバックライト光源を必要としないため薄型軽量で、消費電力を少なくできるといった特長がある。このような特長は、反射型液晶表示装置が特にノート型コンピュータのような携帯用情報端末用の表示素子として使用される大きな理由となるものであり、非常に有用なものとして注目されている。
【0003】
反射型液晶表示装置の低コントラストや表示の暗さといった問題は、主に光の利用効率が低いことに起因しており、この問題を解決するために、いくつかの方法が提案されている。
【0004】
中でも、特開平8−201802号公報に開示されている、鏡面反射電極、液晶層、透明電極、カラーフィルタ、透明基板をこの順で重ね、その上に複屈折フィルム、偏光子及び前方散乱板をこの順で重ねた構造を有する反射型液晶表示素子は、コントラストが高く視角依存性や二重像の問題が無い点で、有用な反射型液晶表示素子である。
【0005】
更に石鍋ら(信学技報,02,125〜130(1996))によって、Mieの散乱理論やHartelの理論を用いて、このようなR−OCB方式といわれる反射型液晶表示素子に好適な透明媒質中に球状微粒子を分散している光散乱フィルム(前方散乱板)を設計する目安となる幾つかのパラメータについての報告がなされている。
【0006】
しかし、ここで報告されているパラメータでは、必ずしも白色表示がペーパーホワイトに近く黒色表示がより黒い高コントラストで画像表示がぼけない等の十分な表示性能をもった前方散乱フィルムを設計することができなかった。
【0007】
また、これら幾つかのパラメーターでは、生産管理に適さず、白色表示がペーパーホワイトに近く黒色表示がより黒い高コントラストで画像表示がぼけない前方散乱フィルムを得られたとしても、それが十分な視認性能を有しているかの確認が極めて困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、白色表示がペーパーホワイトに近く黒色表示がより黒い高コントラストで画像表示がぼけない等の視認性に優れた前方散乱フィルムを提供すると共に、極めて容易に生産管理できる前方散乱フィルムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため研究を行った結果、以下の構成とすることにより、白色表示がペーパーホワイトに近く黒色表示がより黒い高コントラストで画像表示がぼけない等の視認性に優れた前方散乱フィルムを提供することができることがわかった。
【0010】
即ち、本発明の前方散乱フィルムは、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層を有する前方散乱フィルムであって、前記球状微粒子の平均粒径が1.0μm〜10.0μmであり、前記透明高分子バインダーの屈折率に対する前記球状微粒子の相対屈折率nが0.91<n<1.09であり、且つ前記前方散乱フィルムとしてのヘーズが30.0%以上で、像鮮明度が60.0%以上のものである。
【0011】
また、本発明の前方散乱フィルムは、前記光散乱層の少なくとも一方の面に透明樹脂フィルムを有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の前方散乱フィルムは、少なくとも一方の面が粘着性を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の前方散乱フィルムは、前記透明高分子バインダーに粘着剤を用いたことを特徴とするものである。
【0014】
尚、本発明においてヘーズとは、JIS−K7105におけるヘーズの値のことであり、H=Td/Tt×100(%)〔H:ヘーズ、Td:拡散光線透過率、Tt:全光線透過率〕の式から求められる値である。
【0015】
また、本発明における像鮮明度とは、JIS−K7105における像鮮明度の値のことであり、透過法を用いて光学くし0.125mmの時の最高波高〔M〕及び最低波高〔m〕を読み取って次式によって求めた値である。
像鮮明度〔C(0.125)〕={M−m}/{M+m}×100(%)
尚、本発明での像鮮明度の値は、試験片の縦方向と横方向の測定結果の平均値である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の前方散乱フィルム5について、さらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の前方散乱フィルム5は、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層1を有するものである。
【0018】
ここで、前方散乱フィルム5は、透明高分子バインダーからなる成形フィルム内部に球状微粒子を分散した光散乱層1が単層である構造であっても良いが、好ましくは透明高分子バインダー中に球状微粒子を分散してなる光散乱層1の少なくとも一方の面に、透明樹脂フィルム2や粘着層3等の他の層を有するものとすることが望ましい。このように光散乱層1が単層であるような構造を避け、透明樹脂フィルム2や粘着層3を有する構造をとることにより、フィルム表面から突出する粒子の存在に起因する後方散乱光をなくすことができるようなる。
【0019】
ここで透明樹脂フィルム2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が使用できる。中でも加工適性や光学適性の観点からはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好適に使用できる。
【0020】
透明樹脂フィルム2の厚みとしては、特に制限するものではないが、取り扱いの点から、25〜200μmが好ましい。
【0021】
また、界面での反射損失を防止するために、透明樹脂フィルム2を位相差フィルム、または偏光フィルムとしても良い。
【0022】
透明樹脂フィルム2の透明性についても特に制限するものではないが、コントラストを向上させたり、表示に変化をもたせるために必要に応じ着色しても良い。
【0023】
光散乱層1は、前述のように球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる。
【0024】
透明高分子バインダーとしては、熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性のバインダーが使用できる。特に被着体に対して密着することができるような粘着性を有する粘着剤を透明高分子バインダーに用いることにより、光散乱層1を粘着性光散乱層11とすることができ、後述する粘着層3を設けなくとも、前方散乱フィルムの少なくとも一方の面が粘着性を有する構成とすることができ、他の部材に積層した際に空気界面が生じないようにできる。これにより、空気界面での反射によって黒色表示の黒さが損なわれることに起因するコントラストの低下を防ぐことができるようになる。
【0025】
ここでいう被着体に対して密着することができるような粘着性を有する粘着剤としては、天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブタジエン系等のエラストマー粘着剤、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シアノアクリレート系等の合成樹脂粘着剤、その他、UV・EB硬化系粘着剤、エマルジョン系粘着剤等の公知の粘着剤が使用できる。
【0026】
透明高分子バインダーと透明樹脂フィルム2の屈折率の差が大きいと、界面で反射が発生して黒色表示の黒さが損なわれ、コントラストを低下させるので、屈折率の差は0.3以内が好ましい。
【0027】
球状微粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、ジルコニア、酸化亜鉛、二酸化チタン等の無機系の微粒子も使用可能であるが、球形の形状を得易いという観点からポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂等の有機系の微粒子が好適に使用される。
【0028】
球状微粒子の粒子径としては、平均粒径で1.0μm〜10.0μmであることが好ましく、より好適には2.0μm〜6.0μmであることが望ましい。平均粒径を1.0μm以上若しくは10.0μm以下としたのは、散乱光線中の後方散乱光の占める割合を十分少なくさせるためである。散乱光線中の後方散乱光の占める割合を十分少なくさせることにより、反射型液晶表示の黒表示をより黒くさせることができるようになる。
【0029】
また、透明高分子バインダーの屈折率に対する球状微粒子の相対屈折率(球状微粒子の屈折率を透明高分子バインダーの屈折率で割った値で、以下単に相対屈折率という)をnとしたときに、この相対屈折率nが0.91<n<1.09であることが好ましい。相対屈折率nを0.91よりも大きい値若しくは1.09よりも小さい値としたのも、やはり散乱光線中の後方散乱光の占める割合を十分少なくさせるためである。
【0030】
以上のような条件を満たす球状微粒子であれば、単独でも2種以上の混合でも使用できる。2種以上の混合の場合には、屈折率の異なる2種以上の球状微粒子であってもよく、単に粒子径の異なる2種以上の球状微粒子であってもよい。
【0031】
また、光散乱層1には、この他に分散剤、レベリング剤、着色剤、可塑剤等を必要に応じ添加することができる。
【0032】
また、前方散乱フィルム5の少なくとも一方の面が粘着性を有するようにするためには、前述したように透明高分子バインダーに粘着剤を用いて光散乱層1自体に粘着性を持たせる他、光散乱層1とは別個に、光散乱層1の少なくとも一方の面に粘着層3を有することにより実現できる。
【0033】
この光散乱層1の少なくとも一方の面に有することが望ましい粘着層3としては、前述した粘着性光散乱層11の透明高分子バインダーに使用されるような公知の粘着剤を用いることができる。
【0034】
光散乱層1の少なくとも一方の面に粘着層3を有することにより、前述した透明高分子バインダーに粘着剤を用いたと同様に、他の部材に積層した際に空気界面を無くすことができ、空気界面での反射によって黒色表示の黒さが損なわれること及びそれによるコントラストの低下を防ぐことができるようになる。
【0035】
また、光散乱層1とは別個に粘着層3を設ける構造をとることにより、粘着性光散乱層11に比べて、光散乱層1に用いる透明高分子バインダーの屈折率等の選択の自由度を上げることができるようになる。このように光散乱層1に用いる透明高分子バインダーの屈折率等の選択の自由度を上げることをできるようにすることにより、様々な散乱角度分布を持った前方散乱フィルム5の設計が行い易くなる。
【0036】
このように前方散乱フィルム5として、片側表面が粘着性を有しているような場合には、必要に応じてセパレーターフィルム4等を粘着性を有する面にラミネートすることにより、前方散乱フィルム5の取り扱い性を良くすることが好ましい。
【0037】
また、本発明の前方散乱フィルム5の光学特性としてはヘーズが30.0%以上、好ましくは40.0%以上であることが望ましい。ヘーズを30.0%以上とすることにより、前方散乱光をある程度以上に保つことができ、例えば、得られた前方散乱フィルム5を鏡面反射物体に積層して測定した拡散光線反射率を極めて高くすることができるようになり、反射層として鏡面反射板を用いた液晶表示の白色表示をよりペーパーホワイトに近づけることができるようになる。
【0038】
更に、本発明の前方散乱フィルム5の光学特性として、透過法における像鮮明度が60.0%以上であることが好ましく、より好適には70.0%以上であることが望ましい。像鮮明度を60.0%以上とすることにより、液晶層で得られる画像をぼけることなく表示でき、十分鮮明な画像表示を達成できるようになる。
【0039】
またこのように前方散乱フィルム5としての光学的性能をヘーズ30.0%以上及び像鮮明度60.0%以上とすることにより、初めて確実に前方散乱フィルムとして十分な性能を持ったものを生産することが可能となり、且つ生産管理を極めて簡易に行い得るようになる。このように生産管理が極めて容易に行い得るようになると、生産の際の不慮の事態を早急に検知することができ、直ぐに対処が可能となり、歩留まり低下を防止するのに極めて有効となる。
【0040】
次に、前方散乱フィルム5の製造方法の一例について説明する。
【0041】
まず、前述の透明高分子バインダーを溶剤等で適当な粘度に調整した後、前述の球状微粒子を、攪拌、サンドミル、ジェットミル等の方法で分散し、光散乱層塗布液を作製する。
【0042】
次に、透明樹脂フィルム2の片面に、光散乱層塗布液をダイコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビヤコーター、リバースロールコーター等の方法で、所定の膜厚になるように塗布後、塗布液に応じて熱風乾燥、UV硬化等の方法で乾燥、硬化させて光散乱層1を形成した後、更にその光散乱層1上に、前述の粘着剤等を用いて粘着層3を積層して、セパレーターフィルム4と貼り合わせることにより本発明の前方散乱フィルム5を得る。
【0043】
尚、ハードコート性、反射防止性等の性能を付与するために、透明樹脂フィルム2の外側の面に、ハードコート層、反射防止層、ノングレア層、帯電防止層等を設けることができる。これらは単独でも良いし、複合して用いることもできる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、これらの実施例は本発明に限定を加えるものではない。尚、「部」、「%」は特記しない限り、重量基準である。
【0045】
[実施例1]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液a及び粘着層塗布液を順次塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの光散乱層1と乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を積層形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図1の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0046】
[実施例2]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液bを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの粘着性光散乱層11を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図2の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0047】
[実施例3]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液c及び粘着層塗布液を順次塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの光散乱層1と乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を積層形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図1の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0048】
[実施例4]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液dを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの粘着性光散乱層11を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図2の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0049】
[実施例5]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液eを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0050】
[実施例6]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液fを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0051】
[実施例7]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液gを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚80μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0052】
[実施例8]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液hを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの粘着性光散乱層11を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図2の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0053】
[実施例9]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表1の組成の光散乱層塗布液iを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0054】
尚、表1中における透明高分子樹脂Aはポリエステル系樹脂(ケミット1249:東レ社)、透明高分子樹脂Bはアクリル系粘着剤(オリバインBPS1109〈固形分40%〉:東洋インキ製造社)、透明高分子樹脂Cはウレタン系接着剤(タケラックA−971〈固形分50%〉:武田薬品工業社)、硬化剤Fはイソシアネート硬化剤(オリバインBHS8515〈固形分38%〉:東洋インキ製造社)、硬化剤Gはイソシアネート硬化剤(タケネートA−3〈固形分75%〉:武田薬品工業社)、球状微粒子Hはシリコーン樹脂粒子(トスパール120<平均粒径2.0μm>:東芝シリコーン社)、球状微粒子Kはポリスチレン樹脂粒子(テクポリマーSBX−6<平均粒径6.0μm>:積水化成品工業社)、球状微粒子Lはアクリル樹脂粒子(テクポリマーMBX−5<平均粒径5.0μm>:積水化成品工業社)を用いた。
【0055】
また、得られた光散乱層の透明高分子バインダー(光散乱層塗布液から球状微粒子を除いた樹脂組成物を成膜した際の(硬化剤を含むものは硬化後の)透明高分子膜)の屈折率、及び使用した球状微粒子の屈折率を、表1に併記する。但し、屈折率はアッベ屈折計(NAR−1T型:アタゴ社)を用いて測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
[比較例1]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液jを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0058】
[比較例2]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液kを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0059】
[比較例3]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液l及び表1の組成の粘着層塗布液を順次塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの光散乱層1と乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を積層形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図1の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0060】
[比較例4]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液m及び表1の組成の粘着層塗布液を順次塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの光散乱層1と乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を積層形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図1の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0061】
[比較例5]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液nを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0062】
[比較例6]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2(ルミラーT-60:東レ社)の片面に表2の組成の光散乱層塗布液oを塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚35μmの接着性を有する光散乱層1を形成して、もう1枚の同じポリエチレンテレフタレートフィルム2と貼り合わせた。
次いで、光散乱層1を挟み込んだポリエチレンテレフタレートフィルム2の一方の面に、表1の組成の粘着層塗布液を塗布し、乾燥することにより乾燥塗膜厚10μmの粘着層3を形成して、セパレーターフィルム4と貼り合わせて図3の構造の前方散乱フィルム5を作製した。
【0063】
尚、表2中における透明高分子樹脂C、硬化剤G、球状微粒子H、球状微粒子K及び球状微粒子Lは表1に用いられているものと同じであり、透明高分子樹脂Dはポリスチレン系樹脂(スタイロン666R:旭化成工業社)、透明高分子樹脂Eはエチルセルロース樹脂(EHEC LOW:Hercules社)、球状微粒子Iはシリコーン樹脂粒子(トスパール105<平均粒径0.5μm>:東芝シリコーン社)、球状微粒子Jはシリコーン樹脂粒子(トスパール3120<平均粒径12.0μm>:東芝シリコーン社)を用いた。
【0064】
また、得られた光散乱層の透明高分子バインダー(光散乱層塗布液から球状微粒子を除いた樹脂組成物を成膜した際の(硬化剤を含むものは硬化後の)透明高分子膜)の屈折率、及び使用した球状微粒子の屈折率を、表2に併記する。但し、屈折率はアッベ屈折計(NAR−1T型:アタゴ社)を用いて測定した。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1〜9、比較例1〜6で得たものをサンプルとして、ヘーズ及び像鮮明度の値を確認した結果、並びにコントラスト、画像表示のぼけの評価を行った結果を表3に示す。また、球状微粒子の粒径及び相対屈折率nも表3に併記する。
【0067】
ヘーズの値の確認は、それぞれのサンプルについてセパレーターフィルム4を剥離して、ヘーズメーター(HGM−2K:スガ試験機社)を用いて測定した。
【0068】
像鮮明度の値の確認は、それぞれのサンプルについてセパレーターフィルム4を剥離して、写像性測定器(ICM−1DP:スガ試験機社)を用いて測定した。
【0069】
コントラストの評価は、それぞれのサンプルについてセパレーターフィルム4を剥離して、アルミ蒸着フィルムと重ね合わせて光学的に密着させた場合の拡散反射率(アルミ反射率Y)、および黒着色フィルムと重ね合わせて光学的に密着させた場合の拡散反射率(黒色反射率Y)を測色計(SM−4−SCH−GV5−H2:スガ試験機社)を用いて三刺激値のYの値として求め(JIS−Z8701)、
コントラスト=(アルミ反射率Y)/(黒色反射率Y)とした。
【0070】
また、画像表示のぼけの評価は以下のように行った。
1.ベースフィルムが白色である銀塩フィルムに線幅90μmの線画を形成し、1mm厚の透明樹脂板を接着させた評価基準サンプルを用意する。
2.当該評価基準サンプル上に、セパレーターフィルム4を剥離した各実施例及び比較例のサンプルを貼り合わせ、測定サンプルを調製する。
3.各測定サンプルをマイクロデンシトメーターを用いて光学スリット幅90μmで光学濃度を測定し図4のような測定チャートを得て、そのチャートの半値幅W(ピークの半分の高さにおけるスペクトルの幅)を求める。
4.得られた測定サンプルの半値幅Wを、各実施例や比較例のサンプルを貼り合わせずに評価基準サンプルだけで測定した結果の半値幅W0で割って、「W/W0」として画像表示のぼけの度合い(即ち画線の太り度合い)を評価した。
【0071】
【表3】
【0072】
表3からも明らかなように、実施例1〜5のサンプルは、コントラスト及び画像表示のぼけ共に良好な結果が得られ、高コントラストで画像表示がぼけない等の視認性に優れた前方散乱フィルム5が得られた。また、実施例6のサンプルでは、画像表示のぼけが若干劣るが、アルミ反射率Yを高くして白色表示をペーパーホワイトに近づけることができ、これにより特に高コントラストで視認性に優れた前方散乱フィルムを得ることができた。また、実施例7〜9のサンプルでは、コントラストこそ若干低いが、後方散乱光を更に少なくすることによって黒色反射率Yを低くして黒色表示をより黒く鮮明にすることができ、これにより特に画像表示が鮮明で視認性に優れた前方散乱フィルム5を得ることができた。
【0073】
一方、比較例1については、平均粒径0.5μmの球状微粒子を使用しているために散乱光線中の後方散乱光の占める割合を少なくすることができず、結果として実施例と比べて黒色反射率の上昇を招いた。これによりコントラストが低下すると共に黒色表示の黒さが損なわれてしまって画像表示の鮮明さが失われ、極めて視認性に劣るものとなってしまった。
【0074】
同様に、比較例2については平均粒径12.0μmの球状微粒子を使用しているために、比較例3については相対屈折率nが0.91であるために、比較例4については相対屈折率nが1.09であるために、それぞれ散乱光線中の後方散乱光の占める割合を少なくすることができず、結果として実施例と比べて黒色反射率の上昇を招いた。これによりコントラストが低下すると共に黒色表示の黒さが損なわれてしまって画像表示の鮮明さが失われ、極めて視認性に劣るものとなってしまった。
【0075】
比較例5については、平均粒径5.0μmで相対屈折率nも0.99と共に条件を満たしているが、ヘーズの値が低いサンプルであったが為に、前方散乱光を十分なものとすることができず、結果として実施例に比べてアルミ反射率の低下を招き、コントラストが非常に低下してしまい、極めて視認性に劣るものとなってしまった。
【0076】
比較例6については、平均粒径が2.0μm、相対屈折率nが0.96、ヘーズが40.0%以上と条件を満たしているが、像鮮明度の値が低いサンプルであった為に、画像表示のぼけを抑えることができなくなってしまい、極めて視認性に劣るものとなってしまった。
【0077】
【発明の効果】
本発明の前方散乱フィルムによれば、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層を有する前方散乱フィルムであって、前記球状微粒子の平均粒径が1.0μm〜10.0μmであり、前記透明高分子バインダーの屈折率に対する前記球状微粒子の相対屈折率nが0.91<n<1.09であり、且つ前記前方散乱フィルムとしてのヘーズが30.0%以上で、像鮮明度が60.0%以上のものとすることにより、白色表示がペーパーホワイトに近く黒色表示がより黒い高コントラストで画像表示がぼけない等の視認性に優れた前方散乱フィルムを提供することができる。
【0078】
また、本発明によれば、極めて容易に生産管理できる前方散乱フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の前方散乱フィルムの一実施例を示す断面図
【図2】 本発明の前方散乱フィルムの他の実施例を示す断面図
【図3】 本発明の前方散乱フィルムの他の実施例を示す断面図
【図4】 本発明の像のぼけの評価における測定チャート
【符号の説明】
1・・・・光散乱層
11・・・粘着性光散乱層
2・・・・透明樹脂フィルム
3・・・・粘着層
4・・・・セパレーターフィルム
5・・・・前方散乱フィルム
6・・・・半値幅
Claims (4)
- 球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層を有する前方散乱フィルムであって、
前記光散乱層は、上面および下面からそれぞれ他の層によって挟まれ、前記上面および下面が平滑であり、
前記球状微粒子の平均粒径が1.0μm〜10.0μmであり、前記透明高分子バインダーの屈折率に対する前記球状微粒子の相対屈折率nが0.91<n<1.09であり、且つ前記前方散乱フィルムとしてのヘーズが30.0%以上で、像鮮明度が60.0%以上であることを特徴とする前方散乱フィルム。 - 球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層を有する前方散乱フィルムであって、
前記光散乱層は、上面および下面からそれぞれ他の層によって挟まれ、前記上面および下面が平滑であり、
前記球状微粒子の平均粒径が1.0μm〜10.0μmであり、前記透明高分子バインダーの屈折率に対する前記球状微粒子の相対屈折率nが0.91<n<1.09であり、且つ前記前方散乱フィルムとしてのヘーズが30.0%以上で、像鮮明度が60.0%以上であり、
前記透明高分子バインダーは粘着剤であり、前記光散乱層の上面および下面の前記他の層のうちの一方は、前記光散乱層から剥離可能なフィルムであることを特徴とする前方散乱フィルム。 - 請求項1または2に記載の前方散乱フィルムにおいて、前記球状微粒子の平均粒径が2.0μm〜10.0μmであることを特徴とする前方散乱フィルム。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前方散乱フィルムにおいて、前記光散乱層の上面および下面の少なくとも一方の前記他の層は、透明であることを特徴とする前方散乱フィルム。
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