JP3781496B2 - 紫外線吸収剤及びこれを用いた繊維材料用処理剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック、ゴム製品や繊維材料の耐光性向上等に使用される紫外線吸収剤に関する。更に、日光による変褪色を生じるポリエステル繊維からなる繊維材料又はポリエステル繊維を含む複合繊維材料の日光堅牢度を向上させる繊維材料用処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維からなる繊維材料又はポリエステル繊維を含む複合繊維材料(以下、ポリエステル系合成繊維材料と略す。)において高度の耐久性や高度の日光堅牢度が要求されるもの、例えば、カーシート、カーマット、シートベルト等に対しては、染色浴又は捺染糊中に紫外線吸収剤を併用して加工することが一般に行われている。併用する紫外線吸収剤として、例えば、特開昭60−59185号及び特開平2−41468号には、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールが開示されているが、染色後の熱処理(仕上げセット)工程で160〜190℃に加熱すると紫外線吸収剤が繊維表面から昇華してしまい、セット用機械を汚染したり、日光堅牢度を低下させるといった問題を有している。また、特開平4−91274号には2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール及び2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンが開示されており、これらは耐昇華性を有する紫外線吸収剤であることが示されているが、前者においては日光による変褪色を防止する効果が従来品に比較して弱く、また太陽光に近い波長を持っているといわれるキセノン光源での長時間照射の試験結果では、化合物自体の光分解による白化や黄変が起こるという問題を有し、後者においては化合物自体が黄色の色彩を呈していることから、淡色に染色された繊維の加工処理では変色をきたすなどの問題を有している。
【0003】
更に、特開平6−192972号に開示された1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタンや、最近開示された2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンは、耐昇華性に優れることにより、高温処理を行うポリエステル系合成繊維材料の染色品の日光堅牢度を向上させるのに有用であることが知られているが、これらの化合物は、カーシート等に近年使用されているカチオン可染型ポリエステル系繊維材料に対する吸着性が乏しく、かかる繊維に対して日光堅牢度を向上させる効果は得られていない。
【0004】
また、更に、特開平4−198148号には、ヒドロキシベンゾフェノン類へのエポキシ化合物の付加反応について開示されているが、本発明の化合物に関する物性や性能等については何等具体的な記載はなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き従来技術に見られる種々の問題点を解消し、プラスチック、ゴム製品や繊維材料の耐光性向上に必要とされる紫外線吸収剤の固有吸収波長が250から400nmに吸収領域を持ち、昇華性が小さく、耐熱性に優れ、ポリエステル系合成繊維材料、特にカチオン可染型ポリエステル系合成繊維材料に対する耐光性能(日光堅牢度)に優れ、更に安価で、副生物が少なく、工業的にも製造が容易である化合物を有効成分とする紫外線吸収剤及び該化合物を含有するポリエステル系合成繊維材料用処理剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物にフェニル基を有する置換基を導入することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるベンゾフェノン系化合物を有効成分とする紫外線吸収剤を提供する。
【0007】
【化3】
【0008】
〔式中、R1 は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、2−ヒドロキシ−2−フェノキシエトキシ基又は2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ基を表し、R2 はフェニル基又は下記一般式(2)の基を表す。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R3 及びR4 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表す。)〕
本発明は、また、前記一般式(1)で表されるベンゾフェノン系化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリエステル繊維からなる繊維材料又はポリエステル繊維を含む複合繊維材料用処理剤を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明による上記一般式(1)で表されるベンゾフェノン系化合物は、下記一般式(3)
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、R5 は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシル基又はメトキシ基を表す。)
で表される2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物と、スチレンオキシド又は下記一般式(4)
【0014】
【化6】
【0015】
(式中、R3 及びR4 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、2−フェニル−2−プロピル基又はフェニル基を表す。)
で表されるエポキシ化合物とを常圧又は加圧下で反応させることにより合成することができる。また、適当な反応触媒を用いることにより効率よく合成できる。上記一般式(3)を有する化合物は、市販品として入手することも可能であり、あるいはまた常法により、レゾルシン、水及び分散剤の混合液に、ベンゾトリクロリド類を滴下して反応させ、反応終了後濾過、水洗及び乾燥を行い、目的とする2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物を合成して得ることもできる。
【0016】
上記一般式(4)を有する化合物も、市販品として入手することも可能であり、あるいはまた常法により、フェノール類、過剰のエピクロルヒドリン及び反応触媒(トリメチルベンジルアンモニウムクロリド等の4級カチオン活性剤)を仕込み、還流下に反応させた後、冷却し、水酸化ナトリウム等を滴下して閉環反応させ、反応後溶剤抽出し、水洗し、次いで液体の場合は減圧蒸留を行い、あるいは固体の場合は再結晶を行うことにより精製し、目的のエポキシ化合物を合成して得ることもできる。
【0017】
このようにして得られた式(3)の化合物に式(4)のエポキシ化合物を付加することにより目的の式(1)のベンゾフェノン系化合物を得ることができる。一般式(3)で表される2,4−ジヒドロキベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキベンゾフェノン、4′−クロロ−2,4−ジヒドロキベンゾフェノン、4′−ブロモ−2,4−ジヒドロキベンゾフェノン、4′−メチル−2,4−ジヒドロキベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキベンゾフェノン、4′−メトキシ−2,4−ジヒドロキベンゾフェノン等が挙げられる。
【0018】
一般式(4)で表されるエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、3−メチル−フェニルグリシジルエーテル、3,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、p−フェニル−フェニルグリシジルエーテル、4−(2−フェニル−2−プロピル)−フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
これらの原料を用いて一般式(1)のベンゾフェノン系化合物を合成する時のエポキシ化合物の使用量は、一般式(3)で表される2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物1モルに対し、1.0〜5.0モルが好ましく、1.0〜2.0モルが更に好ましい。エポキシ化合物が1モルより少ないと反応後多量の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物が残存することにより、また5モルより多いと原料2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物の2位のヒドロキル基にエポキシ化合物が付加した化合物が生成することにより、目的とする紫外線吸収機能を損なうこととなる。
【0020】
反応には従来公知の方法が用いられ、例えば、溶媒中でもしくは無溶媒で、反応触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、有機金属化合物、ルイス酸、第4級アンモニウム塩等を用い、加圧反応させる方法が挙げられる。なかでも、スケールアップが容易で反応効率が高く、しかも副生成物が少ない点で、溶媒を用いる溶液法が好ましい。
【0021】
これに有用な溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、水−メタノール、水−エタノール、水−n−プロパノール、水−イソプロパノール等の水−アルコール混合溶媒が挙げられる。
【0022】
反応触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、トリフェニルホスフィン、3フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、なかでも水酸化カリウムが好適である。
【0023】
反応温度は50℃から150℃が好ましく、90℃から120℃がさらに好適である。
ポリエステル系合成繊維材料に前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物を適用する方法としては、水系分散液のパディングによる連続処理、浸漬による吸着処理、捺染糊に配合して用いる印捺処理、あるいは溶剤に溶解して処理する溶液処理等の方法を用いることができるが、これらに特に限定されるものではない。これらの処理は、染色工程や捺染工程の前もしくは後に、あるいは染色工程や捺染工程と同時に行ってもよい。水系で処理する際には、前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物を水中に安定に均一分散させる必要があるが、水への分散は従来公知の方法により容易に行うことができる。一般式(1)のベンゾフェノン系化合物は水に不溶であるので、例えば、この化合物をアニオン又はノニオン系界面活性剤を用いて水に分散させ、5〜50重量%の濃度の一次分散液を調整し、さらにビーズミル等を使用して物理的に粉砕することにより、安定な微粒子水分散液が得られる。粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒子系が2μm以下の大きさに粉砕した状態で使用するのが望ましい。
【0024】
分散剤として用いるアニオン又はノニオン系界面活性剤としては下記のような化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(a)ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物。
(b)炭素数8〜12のアルキルフェノールの4〜50モルのアルキレンオキシド付加物、その硫酸化物あるいは炭素数8〜20の脂肪酸とのエステル化物。ここで、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを挙げることができ、その単独付加物、2者又は3者のブロックあるいはランダム付加物のいずれでもよい。
(c)3〜8モルのスチレンを付加したフェノールの4〜50モルのアルキレンオキシド付加物、その硫酸化物あるいは炭素数8〜20の脂肪酸とのエステル化物。ここで、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを挙げることができ、その単独付加物、2者又は3者のブロックあるいはランダム付加物のいずれでもよい。
(d)1〜2モルのスチレンを付加した、炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェノールの4〜50モルのアルキレンオキシド付加物、その硫酸化物あるいは炭素数8〜20の脂肪酸とのエステル化物。ここで、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを挙げることができ、その単独付加物、2者又は3者のブロックあるいはランダム付加物のいずれでもよい。
(e)ポリオキシアルキレンオキシド、その硫酸化物あるいは炭素数8〜20の脂肪酸とのエステル化物。ここで、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを挙げることができ、その単独付加物、2者又は3者のブロックあるいはランダム付加物のいずれでもよい。
(f)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類のアルキレンオキシド付加物、その硫酸化物あるいは炭素数8〜20の脂肪酸とのエステル化物。ここで、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを挙げることができ、その単独付加物、2者又は3者のブロックあるいはランダム付加物のいずれでもよい。
(g)炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルジフェニルエーテルの硫酸化物。
(h)ポリビニルアルコール。
(i)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、アクリルニトリロ、酢酸ビニル等のビニル系モノマーの重合物及び共重合物。
(j)カルボキシメチルセルロース。
(k)アルギン酸ソーダ。
(l)ローカストビン、グアールガム等の天然多糖類のアルキレンオキシド付加物。ここで、アルキレンオキシドは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドである。
【0025】
上記処理剤による処理に特に適する繊維材料としては、ポリエステル繊維またはポリエステル繊維と他の繊維、例えば、綿、レーヨン、ウール、ナイロン、アセテート等との複合繊維からなる不織布、織物、編物、及びそれらの起毛品からなるカーペット、カーマット、カーシート、シートベルト等を挙げることができる。
【0026】
実際の処理に際しては、浸染用の染色浴においては、前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物を5〜50重量%含有する水分散液を、繊維重量に対して0.2〜10%の重量で使用し、他に分散染料等の染料、均染剤としての界面活性剤、酢酸等のpH調整剤、EDTA類もしくはポリアクリル酸ソーダ等のキレート剤、酸化防止剤、消泡剤等の通常の染色に用いられる薬剤が使用される。染色加工工程は、従来実施されているものと同様でよく、繊維製品を精練し、または精練せずに、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等の染色機中において120〜140℃で20〜60分間染色した後、仕上工程を実施する。
【0027】
連続染色では、前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物を5〜50重量%含有する水分散液を0.2〜10重量%含み、かつ、染料、アルギン酸ソーダ、アクリル酸とアクリルアミド共重合物等のマイグレーション防止剤、及び濃染剤、均染剤、浸透剤としての界面活性剤、塩素酸ソーダ等の還元防止剤、クエン酸、リンゴ酸等のpH調整剤を含む染色浴に、精練した繊維製品を浸漬し、絞り、次いで乾燥し、サーモゾール、スチーミング等の固着処理を実施する。その後、ソーピング及び仕上処理を行う。
【0028】
また、捺染においては、繊維材料を精練せず、又は精練後、あるいは染色後に捺染糊を印捺する。捺染糊中には、0.2〜10%重量の前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物の水分散液と、他にアルギン酸ソーダ、加工澱粉、グアーガム系糊剤、カルボキシメチルセルロース等の捺染用糊剤、pH調整用のクエン酸、リンゴ酸等の有機酸、塩素酸ソーダ等の還元防止剤、濃染剤としての界面活性剤やターペンエマルジョン、及び消泡剤等の、通常の捺染において使用される薬剤が用いられる。印捺後乾燥し、HTスチーミング、サーモゾール等での固着処理を行い、次いでソーピングし、仕上処理を行う。
【0029】
本発明は、前記一般式(1)のベンゾフェノン系化合物の少なくとも1種を、一般には繊維重量に対して0.01〜10%、好ましくは0.1〜5%の量で、ポリエステル系合成繊維材料に吸着又は付着させることにより、日光堅牢度が向上し、また耐昇華性に優れたものとなるため、従って熱処理工程後もセット用機械の汚染や耐光性の低下を生じさせることが少なく、更にカチオン可染型ポリエステル系合成繊維材料に対する吸着性、耐光性も良好となり、ポリエステル合成繊維材料用処理剤として極めて有効である。
【0030】
本発明の紫外線吸収剤は、本発明のものを2種以上混合して用いることも可能であり、また、必要に応じ従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などと併用することも可能である。
本発明の紫外線吸収剤は、容易に入手可能な2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンへのエポキシドの付加反応により合成されるが、目的物はほぼ定量的に得られ、工業的生産が可能である。また、分子内にアルコール性水酸基を有しているため、耐昇華性と高温安定性に優れている。特に紫外線吸収剤を微細化し、ポリエステル系合成繊維材料に処理すると、吸着率が高く、カチオン可染型ポリエステルにも同様な性質を示し、従って染色物の日光堅牢度において極めて良好な向上作用を示す。
【0031】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
例中に示す融点は、島津製作所社製示差走差熱量計(以下DSCと記す)の吸熱ピークより求めた。紫外線極大吸収波長は日立製作所社製U−3410型自記分光光度計のUVスペクトル測定により求めた。 1H−核磁気共鳴スペクトル(以下 1H−NMRと記す)は、日立製作所社製FT−NMR R−1900を用いて測定した。赤外吸収スペクトル(以下IRと記す)は、パーキンエルマー社製パーキンエルマー1650を用いて測定した。また、熱減量率は島津製作所社製の示差熱熱重量同時測定装置DTG−50を用いて測定した。
【0032】
実施例1
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン107g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及びフェニルグリシジルエーテル97.5g(0.65mol)を仕込み、撹拌加熱し、100℃まで昇温し、反応温度100℃〜110℃で5時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、触媒を中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)ベンゾフェノンの淡黄色粉末が収率90%で得られた。生成物の融点は119℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は328及び287nmであり、テトラメチルシランを標準品にした2%−重クロロホルム溶液の 1H−NMR分析(図1)及びIR分析(図2)はいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0033】
【化7】
【0034】
実施例2
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン107g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及び3,5−ジメチルフェニルグリシジルエーテル98g(0.55mol)を仕込み、撹拌加熱し、120℃まで昇温し、120〜130℃で5時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロポキシ〕ベンゾフェノンの淡黄色粉末を収率92%で得た。生成物の融点は128℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は327及び279nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0035】
【化8】
【0036】
実施例3
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン107g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及び3−メチルフェニルグリシジルエーテル98.4g(0.6mol)を仕込み、撹拌加熱し、120℃まで昇温し、120〜130℃で5時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェノキシ)プロポキシ〕ベンゾフェノンの淡黄色粉末を収率79%で得た。生成物の融点は104℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は327及び278nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0037】
【化9】
【0038】
実施例4
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン107g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及びp−フェニルフェニルグリシジルエーテル124.3g(0.55mol)を仕込み、撹拌加熱し、120℃まで昇温し、120〜130℃で5時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(4−フェニルフェノキシ)プロポキシ〕ベンゾフェノンの白色粉末を収率73%で得た。生成物の融点は164℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は327及び279nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0039】
【化10】
【0040】
実施例5
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、4′−メトキシ−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン122g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及びフェニルグリシジルエーテル94.5g(0.63mol)を仕込み、撹拌加熱し、110℃まで昇温し、110〜120℃で4時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)−4′−メトキシベンゾフェノンの淡黄色粉末を収率90%で得た。生成物の融点は115℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は330及び290nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0041】
【化11】
【0042】
実施例6
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン107g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及びスチレンオキシド108g(0.9mol)を仕込み、撹拌加熱し、110℃まで昇温し、110〜120℃で4時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンゾフェノンの淡黄色粉末を収率70%で得た。生成物の融点は142℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は327及び287nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0043】
【化12】
【0044】
実施例7
1000mlオートクレーブにイソプロピルアルコール360g、2,4,4′−トリヒドロキシ−ベンゾフェノン115g(0.5mol)、水酸化カリウム3g及びフェニルグリシジルエーテル187.5g(1.25mol)を仕込み、撹拌加熱し、110℃まで昇温し、110〜120℃で5時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却し、酢酸5gを添加し、中和した。中和後反応物を取り出し、濃縮し、エポキシ付加粗製物を得た。粗製物を再結晶し、目的とする下記化学式の2−ヒドロキシ−4,4′−ビス(2−ヒドロキシ−2−フェノキシプロポキシ)ベンゾフェノンの淡黄色粉末を収率75%で得た。生成物の融点は120℃で、クロロホルム溶液で測定した紫外線極大吸収波長は329及び290nmであり、 1H−NMR,IRはいずれも目的化合物であることを支持していた。
【0045】
【化13】
【0046】
比較例1
【0047】
【化14】
【0048】
で示される2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール。
比較例2
【0049】
【化15】
【0050】
で示される1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン。
比較例3
【0051】
【化16】
【0052】
で示される2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン。
減量率の測定
実施例1〜7及び比較例1〜3の化合物について熱重量分析した結果を表1に示す。分析は空気中、昇温速度5℃/分で行い、200℃で30分間保持し、減量率(%)を測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1〜7のいずれの化合物も熱減量率が小さく、優れた耐昇華性及び耐熱性を有していることが認められる。
繊維材料への使用例
〔水分散液の調製〕
下記の試験に供する実施例1〜7及び比較例1〜3の化合物の水分散液を次のようにして調製した。化合物150g、リポトールB−12(日華化学(株)製アニオン系界面活性剤)100g及び水250gを攪拌機で予備分散した後、五十嵐機械製造(株)製サンドグラインダーで4時間処理して、平均粒子径約0.4μmのそれぞれの微粒子水分散液を得た。粒子径を島津製作所(株)製粒度分布測定機SALD−1100により測定した。
【0055】
〔性能試験例1〕
上記で得られたそれぞれの微粒子水分散液を処理剤として用いて繊維材料を処理し、その性能を評価した。
(a)供試布
カーシート用ポリエステル立毛品(目付け650g/m2 )(供試布1)及びレギュラーポリエステル/カチオン可染型ポリエステル(50/50)交編布(供試布2)を下記の方法により処理した後、日光堅牢度試験及び吸着性試験に供した。
(b)処理方法
下記のそれぞれの処理浴組成で、130℃で30分間染色処理(テクサム技研(株)製染色機ミニカラーにて)した後、80℃で30分間還元洗浄し、水洗し、乾燥し、グレーの染色処理布を得た。次いで、上野山鉄工(株)製ピンテンターを用い、160℃で2分間の乾燥処理を行った。
(c)評価方法
(1)日光堅牢度
上記(b)の乾熱処理後のそれぞれの処理布に厚さ1cmのポリウレタン製スポンジを裏打ちし、高温フェード・オ・メーター(スガ試験機(株)製)を用い、83℃で400時間照射した。変褪色の度合いを変褪色グレースケール(JIS−0804−74)により級数で判定した。結果を下記の表2に示す。級数が大きいほど日光堅牢度は良好である。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明の実施例1〜7の処理剤は日光堅牢度に優れた性能を有していることが認められる。
(2)吸着性
上記(b)の乾燥後のそれぞれの処理布をソックスレー抽出(クロロホルムにて3時間)し、生地に吸着した化合物量を測定した。染色前の染色処理浴中に存在していた化合物量との比較により吸着率を算出した結果を表3に示す。
【0058】
吸着率=(抽出化合物量/染色処理液中の化合物量)×100
【0059】
【表3】
【0060】
(3)乾熱昇華性の評価
上記(b)の乾熱処理前後の処理布をソックスレー抽出(クロロホルムにて3時間)し、化合物の残存率を求めた結果を表4に示す。
残存率=(乾熱処理後の吸着量/乾熱処理前の吸着量)×100
【0061】
【表4】
【0062】
これらの結果から、本発明品は日光堅牢度、耐昇華性に非常に優れていることが解る。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性に優れたヒドロキシベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が得られる。従って、該紫外線吸収剤を含有した繊維処理剤を用いれば、高温条件での加工や、加工製品の高温時使用での昇華を押さえることができ、日光堅牢度の低下の少ないポリエステル系合成繊維材料の染色物又は捺染物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた化合物の 1H−NMRチャートである。
【図2】実施例1で得られた化合物のIRチャートである。
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