JP3781282B2 - 平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版に関し、特にデジタル信号に基づいた走査露光による製版が可能であり、且つ、陽極酸化皮膜を有する支持体と同等の優れた感度、汚れ性及び耐刷性を有し、さらに、製造コストが削減できる平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版用原版の分野において、支持体として金属製のものを用いる事が広く行われている。中でも、アルミニウムは酸性溶液中で陽極にして直流電気を流すことで、酸化皮膜を生成する事が知られており、一般にアルマイト処理として知られている処理が可能な上、軽量、安価という様々の利点がある。アルミニウム表面にアルマイト処理を行うと、アルミナ酸化皮膜は金属アルミニウムに比べ、耐酸性や硬度が高い上に、皮膜構造にポアと呼ばれる細孔が規則的に多数生成し、BET法(気体吸着法)による表面積が大幅に上がるので、親水性の向上、塗膜を形成する際の密着力の向上等の利点がある事が知られている。
【0003】
また、近年、近赤外〜赤外線領域による露光で画像形成が可能で、特に該領域に発光領域を有するレーザーを用いて光照射の際に発生する発熱を利用して、画像を記録することによりコンピューター等のデジタルデータから直接製版が可能な、いわゆるヒートモード型CTP用平版印刷版用原版が注目されている。
これは、描画用の照射レーザー光を光熱変換材料等を使用して熱に変化させ、発生した熱で現像液に対する溶解性を変えたり、感光層を熱分解もしくは、急激な加熱による爆発的膨張除去(アブレーション)するものである。これらのヒートモード型CTP用平版印刷版用原版(以下単に、ヒートモード感材ともいう)の支持体としてアルミニウムを使用すると、熱伝導率が高い為、急速に、支持体側に放熱してしまって、発熱のロスが発生し、感度低下の原因の一つになっていた。逆に言えば、支持体表面の断熱性を向上させ、放熱を最小限に押さえる事ができれば、その分、高感度化する事が予想される。
【0004】
一方では、PETなど熱伝導率が低い有機素材を支持体にして、高感度化させる手法も試みられているが、金属素材に比べ、親水性が低く、印刷中に水分を吸湿して寸法精度が悪化するので、カラー印刷、高精細印刷等の高度な印刷には使用できないのが現状である。
ヒートモード感材用支持体として、アルミニウムの各種表面処理の簡便さや、親水性、寸法精度安定性など優れた点を活かしながら、唯一の欠点である断熱性を改善する事が課題であった。
【0005】
アルミニウムの断熱性を向上させる手段としては、陽極酸化皮膜自体の熱伝導率が低い性質を利用して、皮膜の厚みを厚くしたり、陽極酸化皮膜形成後、酸水溶液やアルカリ水溶液に浸漬し、ポア径を拡大し、空隙率を上げる方法がある。しかしながら、皮膜厚くすると、その分の電気量が余分に必要となりコストアップ要因になという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術の欠点を克服し、陽極酸化皮膜を有する支持体と同等の優れた感度、汚れ性及び耐刷性を有し、さらに、製造コストが削減できる平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意努力の結果、特定の組成の塗布液を金属基板上に塗布、乾燥するだけで、適度な空隙を有し、陽極酸化皮膜と同等の耐キズ性を持つ皮膜を得られることを見出し本発明を成すに至った。
即ち本発明は、以下の通りである。
【0008】
(1)アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布したことにより得られる、空隙率が10〜60%の中間層を有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
(2)前記層の上に、ケイ酸塩化合物及び親水性樹脂を含有する親水性層を有することを特徴とする前記(1)の平版印刷版用支持体。
(3)アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布したことにより得られる層を有する平版印刷版用支持体上に、光熱変換剤を含有する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
(4)前記画像形成層が、a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有し、赤外線露光により記録可能なものであることを特徴とする前記(3)の平版印刷版用原版。
【0009】
本発明の平版印刷版用支持体は、適度な空隙を有し、陽極酸化皮膜を有するものと同等の優れた感度、汚れ性及び耐刷性を有しながら、その製造は、金属基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布、乾燥するのみであり、製造工程が複雑でないため、コストの削減ができるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の平版印刷版用支持体および平版印刷版用原版について、さらに詳細に説明する。
[中間層]
本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布することにより高空隙で硬質のセラミック層(以下、高空隙硬質セラミック層または中間層ともいう)を形成したものである。
この高空隙硬質セラミック中間層の形成は、例えば、下記A液とB液を混合し、塗布乾燥(120〜180℃)させることによってなされる。その際の反応メカニズムも以下に示す。
【0011】
A液:アルミナ粉 + 85wt%リン酸 + クエン酸
B液:AlCl3(反応促進剤)
【0012】
【化1】
Figure 0003781282
【0013】
(2)、(3)式は塩化アルミニウムの反応促進効果を示し、(1)、(3)式の右辺が皮膜の組成成分である。
【0014】
この高空隙硬質セラミック中間層について、詳細に説明する。
この中間層となり得るの高空隙硬質セラミック層の形成については、FRANCIS L F(Univ.Minnesota,MN)著、 AD RepRP AD−A−322561,1997 p10に詳細に記載されている。よって、本発明の中間層を形成するためには、上記文献を適宜参照すればよい。
【0015】
本発明の平版印刷版用支持体の中間層を形成するために用いられるアルミナ粒子としては、特に限定されないが、平均粒径が0.05〜5μmのものが好ましく、より好ましくは0.08〜1μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。
感材の密着性が不足する場合等には、表面粗さを上げる為に、異なる平均粒子のものを2種以上含有させても良い。その場合、第1のアルミナ粒子の平均粒径は、0.05〜5μmのものが好ましく、より好ましくは0.08〜1μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。第2のアルミナ粒子の平均粒径は、第1のアルミナ粒子の平均粒径の2〜50倍が好ましく、より好ましくは3〜20倍、さらに好ましくは4〜10倍である。第2の粒子を混合することで、表面粗さを望みの荒さにすることが可能になる。具体的に例示すると、AKPシリーズ、AKP−Gシリーズ、HITシリーズ、AMシリーズ(住友化学工業(株)製)、ナノテック超微粒子(シーアイ化成(株))等各種アルミナ微粒子の市販品が利用可能である。
【0016】
該中間層を形成するために用いられる塗布液のアルミナ粒子の含有量としては、所望とする中間層の空隙率、厚さによって適宜調整されるものであるが、35〜55wt%が好ましく、より好ましくは40〜50wt%である。
該中間層を形成するために用いられる塗布液のリン酸の含有量としては、特に限定されないが、0.05〜12wt%が好ましく、より好ましくは0.1〜10wt%、さらに好ましくは0.3〜8wt%である。
【0017】
該中間層を形成するために用いられる塗布液には、必要に応じて、反応促進剤を添加してもよい。反応促進剤としては、特に限定されないが、塩化アルミニウム等が挙げられる。
反応促進剤として塩化アルミニウムを用いる際、その中間層を形成するために用いられる塗布液中での含有量としては、特に限定されないが、AlCl3:Al23=0.01:1〜0.3:1のものが好ましく、より好ましくはAlCl3:Al23=0.01:1〜0.2:1、さらに好ましくはAlCl3:Al23=0.01:1〜0.1:1である。
また、該中間層を形成するために用いられる塗布液に、アルミナを水中で均一に分散させるための各種分散剤を含有することが望ましい。分散剤としては特に限定されないが、一般的にアルミナの分散剤として知られている、クエン酸、ヘキサメタリン酸ソーダ等が使用できる。塗布液中の含有量は特に限定されないが、0.1wt%〜1wt%、望ましくは0.2wt%〜0.8wt%、さらに望ましくは0.2wt%〜0.5wt%の範囲である。
【0018】
本発明の平版印刷版用支持体の中間層の平均厚みは、1〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜40μm、さらに好ましくは5〜30μmである。1μm未満であると平版印刷版用原版とした場合に断熱性が不十分となり感度が小さくなったり、強度が低くなることがある。また50μmを超えると、それ以上の効果が得られない。
該中間層の空隙率は、5〜70%が好ましく、より好ましくは10〜60%、さらに好ましくは15〜50%である。5%未満であると平版印刷版用原版とした場合に断熱性が不十分となり感度が小さくなる。また50%を超えると、強度が低くなることがある。
【0019】
[親水性層]
上記の高空隙硬質セラミック中間層は、高空隙であるため、その表面に多数の細孔を有している。本発明の支持体を平版印刷版に適用するために、該高空隙硬質セラミック中間層上に、直接、画像形成層を設けると、該細孔に画像形成層成分である染料が入り込んで現像後も残ってしまう残色減少や、同じく画像形成層成分であるバインダーが現像後も残ってしまう残膜減少の原因となってしまう。
そこで、画像形成層を設ける前に、該高空隙硬質セラミック中間層を封孔処理を行う必要がある。
封孔処理には、封孔用親水性層(以下、単に、親水性層ともいう)を設けることが好ましい。
【0020】
封孔用親水性層としては、特に限定されないが、ケイ酸塩化合物及び親水性樹脂を含有する親水性層が好ましい。
この親水性層は、前記高空隙硬質セラミック中間層上に親水性組成物からなる親水性被膜を形成することで作成できる。親水性層の厚みは、所望の親水性や強度などの特性により適宜決定できるが、一般的には0.2μm〜50μmの範囲にあることが好ましく、1μm〜8μmの範囲がさらに好ましい。0.2μm未満では必要な親水性を得難く、皮膜厚みはが50μmを超えると、印刷等の際の少しの湾曲で、親水性皮膜が剥離したり、割れやすくなるので、好ましくない。
また、例えば、親水性層中にシラスバルーン等の比較的大径の中空粒子を用いた場合には、厚みと共にさらなる性能の向上も可能であり、また、前記比較的大径の粉体と、小径の粉体粒子とを混合して用いることで、断熱性、親水性、さらには、強度を合わせ持った被膜が可能で、感熱性の画像形成層を有する平版印刷版用支持体として特に望ましい態様となる。
【0021】
親水性層の最適な被覆量は、前記中間層の厚み、画像形成層中に含まれる光熱変換剤の量や分布、画像形成層の厚み、使用する露光装置のレーザー走査速度、レーザー出力、露光ビーム形状等によって異なるが、0.2μm〜50μmの範囲で、最適被覆量を実験的に決めることが可能である。親水性層の被膜量や、前記中間層が均一に封孔されているかどうかは、高倍率の電子顕微鏡により観察することができる。
本発明の親水性層に好ましく使用される珪酸塩化合物としては、珪酸ナトリウムや珪酸カリウム、リチウムシリケート等の珪酸アルカリ系水ガラスが好適である。珪酸塩化合物の含有量は、共に使用される親水性樹脂の種類にもよるが、一般的には、親水性層を構成する全固形分中、SiO2として30〜45重量%、Na2Oとして30〜45重量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
珪酸塩化合物、中でも好ましく用いられる水ガラスなどは特に親水性が高いので、親水化剤としての機能を有するが、水ガラスだけでは、乾燥過程で、脱水収縮を起こし、微細なひび割れが発生する上、皮膜が不均一になってしまう等の懸念があり、皮膜形成性に劣るため、単独で使用すると耐刷性能が悪化する。本発明では、親水性樹脂を併用しているため、乾燥過程における水ガラスと親水性樹脂の硬化挙動が異なる為、相補的作用によって、ひび割れの無い均一な皮膜が形成可能となる。
また、珪酸塩化合物には、添加剤として、キャスやPC−500等の商品名で知られる(いずれも、日産化学工業(株)製)珪酸アルカリ用硬化剤などを適量加えても良い。
【0023】
本発明の支持体の親水性層において、好ましく使用される親水性樹脂には、特に制限はなく、親水性に優れた公知の合成樹脂、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルホスホン酸など、さらには、アルカリ可溶性樹脂として知られるノボラック樹脂、フェノール―アルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂等の各種親水性樹脂化合物などが挙げられる。なお、珪酸塩化合物として水ガラスを用いる場合には、酸性の親水性樹脂化合物は、水ガラスが一般にアルカリ性のゾル状で存在するため、両者を混合するとゲル化して、通常の塗布法によっては均一な被膜形成が困難となるので、好ましくなく、この場合には、中性かアルカリ性の水溶媒に可溶な親水性樹脂を用いることが製造適性の観点から好ましい。
但し、水ガラスと酸性の親水性樹脂とを混合して得られたゲル状物を、乳鉢や高速剪断型ミキサーなどを用いて、1μm以下程度に粉砕して微細ゲルとし、これを十分に水洗して、アルカリ性水溶媒もしくは、水ガラスに再度分散させて用いることも可能であり、このように使用した場合には、所定の親水性と皮膜特性が得られるため必ずしも中性、アルカリ性の親水性樹脂に限定されるものではない。
【0024】
親水性樹脂の含有量は、所望の親水性や膜強度などの特性、共に使用される珪酸塩化合物の種類や量にもよるが、一般的には、親水性層を構成する全固形分中、4〜40重量%の範囲であることが好ましい。
水ガラスを用いずに親水性樹脂を単独で使用すると、親水性が不十分の為、汚れ、インキ払い性能が悪化する。
親水性層中における珪酸塩化合物〔SiO2+Na2O(重量%)〕と親水性樹脂〔重量%〕の含有比率〔(SiO2+Na2O)(重量%)/親水性樹脂(重量%)〕は1〜9の範囲であることが好ましく、珪酸塩化合物の比率が増えすぎると膜性が低下し、被膜に微細なひび割れが生じたり、汚れ性や耐刷性が低下する傾向があり、反対に親水性樹脂の比率が増えすぎると親水性が低下し、非画像部に汚れが発生しやすくなる傾向がある。
【0025】
本発明に係る親水性層中には、前記の成分に加えて、さらに、無機成分を主成分とする粉体(以下、適宜、無機微粒子と称する)を混合することにより、親水性層の硬度の向上、断熱性の向上、白色度、光沢度等の光学特性の改善、表面積が増えることによる基板や画像形成層との密着力向上効果が得られる。さらに、無機微粒子固有の特性が反映されることにより、露光に用いられる赤外線の反射、吸収効果の向上や、触媒作用等の様々な機能性を付加することもが可能となる。
本発明において、好ましく使用される無機微粒子としては、親水性層への分散性向上の観点から、親水性の無機成分を主成分とした無機微粒子を用いるか、無機微粒子表面に親水性の表面修飾処理を施したものを用いることが望ましい。
【0026】
使用し得る無機成分としては、例えば、金属としては、Al、Fe、Pt、Pd、Au合金等の親水性を有する金属材料が挙げられ、石炭、木炭、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクコーティング)、グラファイト、グラッシーカーボン等の炭素類、酸化物、チッ化物、ケイ化物、炭化物なども好ましく挙げられる。
酸化物、チッ化物、ケイ化物、炭化物の具体例を以下に挙げる。酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム、酸化錫、酸化インジウム、などがあげられる。また、チッ化物としては、チッ化アルミニウム、チッ化珪素、チッ化チタン、チッ化ジルコニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化タングステン、チッ化クロム、チッ化珪素、チッ化ホウ素などがあげられる。また、ケイ化物としては、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化クロムなどがあげられる。ホウ化物としては、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化クロムなどがあげられる。炭化物としては、炭化アルミニウム、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化クロムなどがあげられる。
【0027】
これらのなかでも、金属では、アルミニウム、チタン等が、酸化物では、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化珪素等が好ましく、これらのいずれかの成分を主成分とする微粒子が好ましい。
これらの無機成分は単体のみではなく、混合物として用いることもできる。
【0028】
無機微粒子の形状としては、球形、円柱形、フレーク状粉体、中空粒子、多孔質粒子、不定形微粒子のいずれでもよいが、親水性、感度向上効果などの観点から、フレーク状粉体、中空粒子、多孔質粒子が最も好適である。
微粒子の大きさは、親水性層の所望される特性にもよるが、一般的には直径0.01〜10μm程度が好ましく、粒径が大きすぎると均一な皮膜が得難く、また、親水性層から微粒子が脱落しやすくなり、小さすぎると断熱性や赤外線反射率、吸収率向上の効果が得難くなる。
【0029】
無機微粒子の含有量は、配合する目的により適宜選択されるが、一般的には4〜40重量%程度が好ましい。配合量が多すぎると皮膜強度が低下する傾向にあり、少なすぎると添加したときに得られる効果が不充分となる。
これらの無機微粒子は単独のみならず、複数種類混合して使用することもできる。複数の異なる種類の無機成分からなる粉体を混合して使用してもよく、また、先に述べたように大きさ(粒径)の異なる複数の無機微粒子を組合せて用いることもできる。
無機微粒子を配合する場合には、親水性層を構成する成分のうち、無機微粒子の配合量と同量の親水性樹脂の配合量を減らして配合することが好ましい。無機微粒子を含む親水性層の好ましい配合比は、1<〔(SiO2+Na2O)(重量%)/(親水性樹脂+無機微粒子)(重量%)〕<9の範囲である。
【0030】
親水性層を構成する親水性組成物には、ハンドリング性や被膜特性を向上させる目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、界面活性剤、溶剤などの添加剤を併用することができる。特に、親水性樹脂として汎用のポリビニルアルコール(PVA)などを用いる場合には、その耐水性を向上する目的で、エテストロンBN−69(第一工業製薬(株)製)等の熱反応型架橋剤を適量添加することが望ましい。
前記中間層上に親水性層を形成する方法としては、前記成分や所望により併用される添加剤を配合してなる親水性組成物を、スプレー法、バー塗布法などによって前記中間層上に塗布して液膜を形成し、100℃〜180℃の熱風によって乾燥させ、固化させる方法をとればよい。
【0031】
前記中間層上に、上記親水性層を形成することで本発明の平版印刷版用支持体として、より好ましいものが得られる。この支持体は、陽極酸化被膜を設けなくとも、前記中間層と親水性層の特性により、優れた表面親水性と断熱性とを発現し、さらに被膜特性が良好で画像形成層や基材との密着性に優れている。このため、この支持体を用いて平版印刷版を作成すると、赤外線レーザ中で発生した熱が効率よく画像形成に使用され、表面親水性に優れた非画像部は撥インク性に優れて汚れの発生もなく、耐刷性も良好な平版印刷版を形成しうる。
【0032】
上記中間層および親水性層を有する支持体上に、感熱型の画像形成層を設けることで、平版印刷版用原版を得ることができる。この構成によれば、書込みに使用されるレーザ光が効率よく画像形成必要な熱エネルギーとして利用される、高感度、高解像度の画像形成が可能で、印刷適性に優れる平版印刷版用原版を得る。
【0033】
[基板]
本発明の平版印刷版用支持体に用いられる基板としては、アルミニウム表面を有するものであれば、特に限定されず、アルミニウム基板やアルミニウムを被覆した基板等が挙げられる。
その中でも、防錆性に優れ、リサイクル性が高く、比重が軽いので取扱性に優れ、安価なアルミニウムが好適である。
この目的に供されるアルミニウム材質としては、JIS1050材、JIS1100材、JIS1070材、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Mg−Si系合金等が使用されている。
【0034】
JIS1050材に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号及び特開昭62−140894号各公報。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に開示された技術も知られている。
【0035】
JIS1070材に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号及び特開平8−92679号各公報。
Al−Mg系合金に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号及び特公平6−37116号各公報。また、特開平2−215599号、特開昭61−201747号各公報等にも開示されている。
【0036】
Al−Mn系合金に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特開昭60−230951号、特開平1−306288号及び特開平2−293189号各公報。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号各公報、米国特許5,009,722号及び同5,028,276号各明細書等にも開示されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特開昭62−86143号及び特開平3−222796号各公報。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号各公報、欧州特許223737号、米国特許4,818,300号、英国特許1,222,777号各明細書等にも開示されている。
【0037】
Al−Zr系合金に関しては、本発明者等によって開発された技術が下記の特許公報に開示されている。特公昭63−15978号及び特開昭61−51395号各公報。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号各公報等にも開示されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許1,421,710号明細書等に開示されている。
【0038】
平版印刷版用支持体に用いるアルミニウム又はアルミニウム合金板を得るには、一般に、先ず前記したような含有成分及び合金成分割合のアルミニウム合金溶湯を常法に従い清浄化処理を施し、鋳造する。
清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いた脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いたフィルタリング、或いは、脱ガスとフィルタリングを組み合わせた処理が行われる。これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが望ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては特開平5−51659号、実開平5−49148号各公報等に記載されている。本発明者らも特開平7−40017号公報に溶湯の脱ガスに関する技術を開示している。
【0039】
以上のように、清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。DC鋳造法を用いた場合、冷却速度は0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。0.5℃/秒未満であると粗大な金属間化合物が多数形成される。連続鋳造法には、ハンター法、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法が、また、ハズレー法、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くできる特徴がある。連続鋳造法に関しては、本発明者等によって、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号各公報等に開示されている。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊が製造できる。
【0040】
その鋳塊は、常法に従い、必要に応じて面削を行い、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。
その前後、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1時間以上、48時間以下の熱処理が施される。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となる。
次いで、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム圧延板とする。熱間圧延の前または後、またはその途中において中間焼鈍処理を施してもよい。この場合の中間焼鈍条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱する方法や、連続焼鈍炉を用いて、10〜200℃/秒の昇温速度で加熱すると、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、厚さ0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、平面性を改善するためにローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で平面性改善を行うことが好ましい。
【0041】
また、板巾を所定の巾に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同志の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
なお、冷間圧延に関して、本発明者等は、特開平6−210308号公報等に開示している。連続鋳造を行った場合、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いると板厚1〜10mmの鋳造板を直接連続鋳造でき、熱間圧延の工程を省略できるメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ロールを用いると、板厚10〜50mmの鋳造板が鋳造でき、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造の場合に説明したのと同じように、冷間圧延、中間焼鈍、平面性改良、スリット等の工程を経て0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件、冷間圧延条件については、本発明者等によって、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号各公報等に開示されている。
前記した方法で製造されたアルミニウム板を、平版印刷版用支持体として使用する場合、その用途によって、以下に述べる種々の特性が望まれる。
【0042】
強度に関して:印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上あることが望ましい。また、バーニング処理を行ったときにもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱後の0.2%耐力が80MPa以上、望ましくは100MPa以上あることがよい。特に、腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、印刷機の版胴へのフィットし易さは劣ってくるため、用途に応じて、材質、微量成分の添加量は適宜選択される。これらについて、本出願人は、特開平7−126820号、特開昭62−140894号各公報等に開示している。
【0043】
結晶組織に関して:平版印刷版用支持体として、化学的な表面処理、電気化学的な表面処理を行う場合、アルミニウム板の表面の結晶組織に起因する面質不良が発生する場合があり、表面の結晶組織は、あまり粗大でないことが好ましい。結晶組織の巾としては、200μm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下がよい。結晶組織の長さとしては、5000μm以下、好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下がよい。これらに関して、本出願人は、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号各公報等に開示している。
【0044】
合金成分分布に関して:平版印刷版用支持体として、化学的な表面処理、電気化学的な表面処理を行う場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因する面質不良が発生する場合があり、表面の合金成分分布はあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本出願人は、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号各公報等に開示している。
金属間化合物に関して:平版印刷版用支持体として、化学的な表面処理、電気化学的な表面処理を行う場合、金属間化合物のサイズや密度の影響を受けることがある。これらに関して、本出願人は、特開平7−138687号、特開平4−254545号各公報に開示している。
【0045】
アルミニウムの荷姿としては、例えば鉄製パレットにハードボードとフェルトを敷き、製品両端にダンボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフイルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードが用いられる。この他いろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能な事が重要である。
【0046】
このようなアルミニウム板に以下の様な表面処理を行う。この前処理は、代表的には、トリクレン等の溶剤や界面活性剤を用いてのアルミニウム板表面の圧延油の除去や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリエッチング剤を用いての清浄なアルミニウム板表面の露出である。具体的には、溶剤脱脂方法としては、ガソリン、ケロシン、ベンジン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン等の石油系溶剤を用いる方法、トリクロルエチレン、メチレンクロライド、パークロルエチレン、1,1,1−トリクロルエタン等の塩素系溶剤を用いる方法がある。アルカリ脱脂方法としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等のソーダ塩の水溶液を用いる方法、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、二号ケイ酸ナトリウム、三号ケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩の水溶液を用いる方法、第一燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の燐酸塩水溶液を用いる方法等がある。アルカリ脱脂方法を用いる場合、処理時間、処理温度によって、アルミニウム表面が溶解する可能性があり得るので、脱脂処理については、溶解現象が伴わないようにする必要がある。界面活性剤による脱脂処理としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の水溶液が用いられ、各種の市販品等を用いることが出来る。脱脂方法としては、浸漬法、吹き付け法、液を布等に含ませて擦る方法等用いることが出来る。また、浸漬や吹き付け法には、超音波を用いてもよい。上記脱脂処理に関して、例えば特開平2−26793号公報を参照することができる。
【0047】
また、本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム表面を有する基板としては、完全なアルミニウム板である必要はなく、紙、PET等の基材にアルミニウム箔をラミネートしたものでもよい。また、鋼板等のアルミニウム以外の金属基板等にアルミニウムをラミネートまたは蒸着したものであってもよい。
【0048】
[画像形成層]
本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版用原版に好適に使用される画像形成層は、特に限定されないが、光熱変換剤を含有するもの(以下、感熱記録層または単に感熱層ともいう)が好ましい。
光熱変換剤を含有する画像形成層としては、様々なタイプのものがあり、代表的なものとして、以下の4タイプがある。
【0049】
タイプI:(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有し、露光部分では、微粒子ポリマーの融着またはマイクロカプセル中に含まれる化合物の反応によって親油性画像部を形成し、未露光部分は、水等によって溶解除去される。(熱融着)
タイプII:熱によって、溶融除去(アブレーション)して、最上層の画像形成可能な層のレーザー照射部分が空中に飛散し、最上層側に金属層が出現する。(アブレーションポジ)
タイプIII:最上層の画像形成可能な層が熱によって分解、軟化する等して、現像液に対して可溶な性質に変化したり、膜強度が著しく劣化し、その後、現像工程で、レーザー照射部が除去される。(サーマルポジ)
タイプIV:最上層の画像形成可能な層が熱によって重合、硬化する等して、現像液に対して不溶な性質に変化したり、膜強度が著しく強化し、その後、現像工程で、レーザー未照射部が除去される。(サーマルネガ)
【0050】
上記4タイプの中でも、本発明の平版印刷版用支持体との組み合わせに、最も好ましいのは、タイプIの熱融着型感熱層である。
この熱融着型感熱層を用いることで、優れた機上現像性を有する赤外線領域の放射線で記録可能な平版印刷版用原版を得ることができる。
【0051】
[熱融着型画像形成層]
タイプI:の熱融着型画像形成層は、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有するものである。
上記(a)および(b)に共通の熱反応性官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基)、同じく付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシル基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシル基が挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定されず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよい。
【0052】
まず、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーについて説明する。
(a)微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基およびそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0053】
熱反応性官能基をポリマーの重合時に導入する場合は、熱反応性官能基を有するモノマーを用いて乳化重合または懸濁重合を行うのが好ましい。
熱反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メタクリレートが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有するモノマーは、これらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有しないモノマーは、これらに限定されない。
【0054】
熱反応性官能基をポリマーの重合後に導入する場合に用いられる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応が挙げられる。
【0055】
上記(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの中でも、画像形成性の観点からは、微粒子ポリマー同志が熱により容易に融着、合体するものが好ましく、また、機上現像性の観点から、その表面が親水性で、水に分散するものが、特に好ましい。また、微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。
微粒子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーあるいはオリゴマー、または親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定されるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用することができる。
【0056】
(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの熱融着温度は、70℃以上であることが好ましいが、経時安定性を考えると80℃以上がさらに好ましい。ただし、あまり熱融着温度が高いと感度の観点からは好ましくないので、80〜250℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲であることがさらに好ましい。
(a)微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
(a)微粒子ポリマーの添加量は、感熱記録層固形分の50〜98重量%が好ましく、60〜95重量%がさらに好ましい。
【0057】
次に、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルについて説明する。
(b)マイクロカプセルに好適な熱反応性官能基としては、先に(a)、(b)に共通のものとして挙げた官能基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネートブロック体などが挙げられる。
【0058】
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であるのが好ましい。そのような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定されずに用いることができる。これらは、化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、二量体、三量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物、およびそれらの共重合体である。
【0059】
具体的には、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)、そのエステル、不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルおよび不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが好ましい。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミドと単官能もしくは多官能のイソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、および、単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に用いられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能のアルコール、アミンまたはチオールとの付加反応物、および、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能アルコール、アミンまたはチオールとの置換反応物も好適である。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
【0060】
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルである重合性化合物のうち、アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリス(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0061】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタンが挙げられる。
【0062】
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネートが挙げられる。
【0063】
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネートが挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネートが挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレートが挙げられる。
【0064】
その他のエステルとしては、例えば、特公昭46−27926号公報、同51−47334号公報、同57−196231号公報に記載されている脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、同59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載されている芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載されているアミノ基を含有するものが挙げられる。
【0065】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミドが挙げられる。
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、特公昭54−21726号公報に記載されているシクロへキシレン構造を有するものが挙げられる。
【0066】
また、イソシアネートとヒドロキシル基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、具体的には、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(A)で示されるヒドロキシル基を有する不飽和モノマーを付加させて得られる、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を含有するウレタン化合物が挙げられる。
【0067】
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH (A)
(ただし、R1およびR2は、それぞれHまたはCH3を表す。)
【0068】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、同2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレートや、特公昭58−49860号公報、同56−17654号公報、同62−39417号公報、同62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適なものとして挙げられる。
【0069】
更に、特開昭63−277653号公報、同63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載されている、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物も好適なものとして挙げられる。
【0070】
その他の好適なものの例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、同52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、同1−40336号公報に記載されている特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載されているビニルホスホン酸系化合物等も好適なものとして挙げられる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載されているペルフルオロアルキル基を含有する化合物も好適に挙げられる。更に、日本接着協会誌、20巻7号、p.300〜308(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも好適に例示される。
【0071】
好適なエポキシ化合物としては、例えば、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0072】
好適なイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、または、それらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物が挙げられる。
【0073】
好適なアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0074】
好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類が挙げられる。
好適なカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
好適な酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が挙げられる。
【0075】
エチレン状不飽和化合物の共重合体の好適なものとしては、例えば、アリルメタクリレートの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0076】
マイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えば、マイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2,800,457号明細書、同第2,800,458号明細書に記載されているコアセルベーションを利用した方法、英国特許第99,0443号明細書、米国特許第3,287,154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−711号公報に記載されている界面重合法による方法、米国特許第3,418,250号明細書、同第3,660,304号明細書に記載されているポリマーの析出による方法、米国特許第3,796,669号明細書に記載されているイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3,914,511号明細書に記載されているイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4,001,140号明細書、同第4,087,376号明細書、同第4,089,802号明細書に記載されている尿素−ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4,025,445号明細書に記載されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報に記載されているモノマー重合によるin situ法、英国特許第930,422号明細書、米国特許第3,111,407号明細書に記載されているスプレードライング法、英国特許第952,807号明細書、同第967,074号明細書に記載されている電解分散冷却法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
(b)マイクロカプセルに好適に用いられるマイクロカプセル壁は、三次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0078】
(b)マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0079】
(b)熱反応性官能基を有するマイクロカプセルを用いた画像形成機構では、マイクロカプセル材料、そこに内包物された化合物、さらには、マイクロカプセルが分散された感熱層中に存在する他の任意成分などが、反応し、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領域)を形成するものであればよく、例えば、前記したようなマイクロカプセル同士が熱により融着するタイプ、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面あるいはマイクロカプセル外に滲み出した化合物、あるいは、マイクロカプセル壁に外部から浸入した化合物が、熱により化学反応を起こすタイプ、あるいは、それらのマイクロカプセル材料や内包された化合物が添加された親水性樹脂、あるいは、添加された低分子化合物と反応するタイプ、2種類以上のマイクロカプセル壁材あるいはその内包物に、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせるものを用いることによって、マイクロカプセル同士を反応させるタイプなどが挙げられる。
従って、熱によってマイクロカプセル同志が、溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0080】
(b)マイクロカプセルの感熱層への添加量は、固形分換算で、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度および耐刷性が得られる。
(b)マイクロカプセルを感熱層に添加する場合、内包物が溶解し、かつ、壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0081】
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、第三ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。また、これらの溶剤を2種以上併用してもよい。
【0082】
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、15〜85質量%であるのが特に好ましい。
【0083】
(その他の成分)
本発明に係る感熱層には、前記画像形成性を有する(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。
(反応開始剤、反応促進剤)
本発明係る感熱層においては、必要に応じてこれらの反応を開始しまたは促進する化合物を添加してもよい。反応を開始しまたは促進する化合物としては、例えば、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩またはジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。
これらの化合物は、感熱層固形分の1〜20質量%の範囲で添加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
【0084】
(親水性樹脂)
本発明の感熱層には親水性樹脂を添加しても良い。親水性樹脂を添加することにより機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強度も向上する。
親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
【0085】
親水性樹脂の具体的として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
親水性樹脂の感熱層への添加量は、感光層固形分の5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がさらに好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と皮膜強度が得られる。
【0086】
(多官能モノマー)
また、該感熱層には、さらに必要に応じて、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に内包することができるモノマーとして例示したものを用いることができる。特に好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0087】
(重合防止剤)
また、該感熱層塗布液の調製中または保存中においてエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。適当な熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01〜5質量%であるのが好ましい。
【0088】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、感熱層固形分の約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0089】
[アブレーションポジ型画像形成層]
タイプII型の具体例としては、無機物では、金属としてCr、Ti、活字合金として知られているPb−Sb−Snの3元合金等の疎水性を有する材料や、石炭、木炭、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクコーティング)、グラファイト、クラッシーカーボン等の炭素類、酸化物、チッ化物、ケイ化物、炭化物などである。また、単体のみではなく混合物でも良い。
【0090】
上記の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化クロムなどが挙げられる。また、チッ化アルミニウム、チッ化珪素、チッ化チタン、チッ化ジルコニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化タングステン、チッ化クロム、チッ化珪素、チッ化ホウ素などが挙げられる。また、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化クロムなどが挙げられる。また、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化クロムなどが挙げられる。また、炭化アルミニウム、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化クロムなどが挙げられる。
【0091】
これらの無機物は、無機物の中でもYAGレーザーやLDレーザー等の760〜1064nmの波長の光の吸収率が高いので、熱によって画像形成可能な層がアブレーションして、剥離する材料である。
中でも親インキ性を示す、Cr、Ti、Pb−Sb−Sn、ダイヤモンド、DLC、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、Si34、SiC等が望ましい。画像形成可能な層として形成するには蒸着、CVD、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散法、電着法、メッキ法などを適宜用いることができる。
また、アブレーション後に、一般的に行われているように、物理的にブラシ等で掻き取ったりする工程を併用し、残留物を除去してもよい。
【0092】
有機物の具体例としては、親インキ性のポリマーとして一般に知られている、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、EMA−スチレン、ポリスチレン、ノボラックがある。これらのポリマーは書き込み用レーザーの波長(760〜1064nm)の波長の光の吸収率が低いので、適当な光熱変換材料を、溶解、分散または混合する必要がある。光熱変換材料としては一般に市販されている各種のYAG、LDレーザーの波長の光吸収色素Cyabsorb IR−165(Amrican Cyanamid)、Epolight III−117、Epolight III−130、Epolight III−180等が使用可能であり、また、タイプIの無機物の具体例に記載した各種無機物を粉末としてポリマーに分散、混合してもよい。また、画像形成層と支持体との密着力を向上させる為、各種下塗り剤を塗布しても良い。
【0093】
[サーマルポジ型画像形成層]
タイプIIIのサーマルポジ型画像形成層は、少なくとも、熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物と後に詳述する光熱変換剤とを含有する。
サーマルポジ型画像形成層に用いられる、熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物としては、フェノール性水酸基やカルボキシ基等の酸基を有する樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する樹脂としてはレゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが挙げられるが、そのなかでもノボラック樹脂が好ましい。本発明に好適に使用できるノボラック樹脂としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−及びm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂のようなクレゾールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。レゾール型のフェノール樹脂類も好適に用いられ、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−及びm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂が好ましく、特に特開昭61−217034号公報に記載されているフェノール樹脂類が好ましい。
【0094】
その他の、熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物としては、例えばカルボキシ基を含む共重合体が挙げられる。例えば、1分子中にカルボキシ基(COOH基)と重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ以上有するモノマーとの共重合体が好ましい。カルボキシ基を有するモノマーとしてはメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等が挙げられるが、それ以外にも以下の一般式(I)〜(III)に示すようなモノマーも好適に用いられる。
【0095】
【化2】
Figure 0003781282
【0096】
1、R3、R5は水素、又はメチル基を、R2、R4、R6、R7はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表し、Xは−O−又は−NR8−を表し、Yは単結合又は−CO−基を表す。R8は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。具体的にはN−(4−カルボキシフェニル)−メタクリルアミド、N−(2−カルボキシフェニル)−アクリルアミド、N−(4−クロロ−2−カルボキシフェニル)−メタクリルアミド、4−カルボキシフェニルエチルメタクリレート、4−カルボキシスチレン、2−カルボキシフェニロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0097】
上記のカルボキシ基を有するモノマー以外の高分子化合物に、熱によってアルカリ可溶性となる性質を付与するモノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなるモノマーが好ましい。その中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、無置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルアミノ基とを有する低分子化合物からなるモノマーが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記一般式(IV)〜(VIII)で示される化合物が挙げられる。
【0098】
【化3】
Figure 0003781282
【0099】
式中、X1、X2はそれぞれ−O−又は−NR17−を表す。R1、R4はそれぞれ水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R8、R11、R15はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R17、R12は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R16は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R7、R9、R13は、水素原子又は−CH3を表す。R10、R14はそれぞれ単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2はそれぞれ単結合又は−CO−を表す。
具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0100】
また上記(IV)〜(VIII)以外の他のモノマーとしては、1分子中に、−CO−NH−SO2−で表される活性イミノ基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなるモノマーも好ましい。このような化合物としては、具体的には、N−(m−アミノスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。また、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はヒドロキシスチレンからなるモノマーも他のモノマーとして好ましく用いられる。このような化合物としては、具体的にはN−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−、m−、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0101】
上記モノマーの共重合成分としては、例えば、下記(1)〜(11)に挙げるモノマーを用いることができ、下記モノマーを2成分以上含んでもよい。
(1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
【0102】
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0103】
これらの熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物の重量平均分子量は500〜200,000、数平均分子量は200〜60,000であることが好ましい。熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよく、サーマルポジ型画像形成層全固形分中5〜99重量%、好ましくは10〜95重量%、特に好ましくは20〜90重量%の添加量で用いられる。添加量が5重量%未満であると画像形成層の耐久性が悪化し、また、99重量%を越えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
サーマルポジ型画像形成層には、上記、熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物の他に、バインダーが好適に添加される。バインダーとしては、ウレタン樹脂が挙げられ、中でも、カルボキシ基或いはスルホンアミド基を有するウレタン樹脂が好ましい。即ち、本発明に好適に使用されるポリウレタン樹脂は、ジイソシアナート化合物と、N上に少なくとも1つのH原子が結合したスルホンアミド基を含有するジオール化合物との反応生成物を基本骨格とするポリウレタン樹脂である。
【0104】
本発明で好適に使用されるジイソシアナート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートの二量体、2,6−トリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート化合物;ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート、ダイマー酸ジイソシアナート等の如き脂肪酸ジイソシアナート化合物;イソホロンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアナート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアナート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアナート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアナートとの反応物であるジイソシアナート化合物等が挙げられる。
【0105】
また、N上に少なくとも1つのH原子が結合したスルホンアミド基を含有するジオール化合物としては、p−(1,1−ジヒドロキシメチルエチルカルボニルアミノ)ベンゼンスルホンアミド、p−(1,1−ジヒドロキシメチルエチルカルボニルアミノ)ベンゼンスルホンアミドのN−エチル体、N−(m−メチルスルホニルアミノフェニル)−2,2−ジヒドロキシメチルプロパンアミド、N−(p−メチルスルホニルアミノフェニル)−2,2−ジヒドロキシメチルプロパンアミド、N−(m−エチルスルホニルアミノフェニル)−2,2−ジヒドロキシメチルプロパンアミド、N−(p−エチルスルホニルアミノフェニル)−2,2−ジヒドロキシメチルプロパンアミド、N−(2,2−(ジヒドロキシエチルアミノカルボニル)エチル)メタンスルホンアミド、N−(2,2−(ジヒドロキシエチルアミノカルボニル)エチルベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−(ジヒドロキシエチルアミノカルボニル)エチル−p−トルエンスルホンアミド等が挙げられる。
【0106】
これらのスルホンアミド基を含有するジオール化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また更に、スルホンアミド基を有さず、イソシアナートと反応しない他の置換基を有していてもよいジオール化合物をスルホンアミド基を有するジオール化合物と併用することもできる。このようなジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−l,3−ペンタンジオール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、p−キシリレングリコール、ジヒドロキシエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4−トリレンジカルバメート、2,4−トリレン−ビス(2−ヒドロキシエチルカルバミド)、ビス(2−ヒドロキシエチル)−m−キシリレンジカルバメート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0107】
本発明に使用可能なポリウレタン樹脂は上記ジイソシアナート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。使用するジイソシアナート及びジオール化合物のモル比は好ましくは0.8:1〜1.2:1、より好ましくは0.85:1.1〜1.1:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、この末端をアルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアナート基が残存しないポリウレタン樹脂が合成される。
本発明に使用可能なウレタン樹脂の重量平均分子量は2,000以上が好ましく、より好ましくは5,000〜30万である。また、数平均分子量は1,000以上が好ましく、より好ましくは2,000〜25万の範囲である。また多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、より好ましくは1.1〜10の範囲である。
また、本発明に使用可能なバインダー中には、未反応の単量体が含まれていてもよい。この場合、単量体のバインダー中に占める割合は15重量%以下が望ましい。以上挙げたバインダーは単独でも用いることができるが、1種以上混合することも好ましい。中でもノボラック樹脂と他に挙げたバインダーを混合して用いることが好ましい。
【0108】
本発明のサーマルポジ型画像形成層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えばオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態では、熱によってアルカリ可溶性となる高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができる。
【0109】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974) 、T. S. Bal et al, Polymer, 21, 423(1980) 、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号、特開平3-140140号公報に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468(1984)、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J. V.Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31 (1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2-150848号、特開平2-296514号に記載のヨードニウム塩、J. V.Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al. J. Org.Chem., 43, 3055 (1978)、W. R. Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer Bull., 14, 279 (1985) 、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 14(5) ,1141(1981)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877 (1979) 、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979) に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, Teh,Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
【0110】
本発明において、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものが挙げられる。
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解によりバインダーの溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0111】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくはサーマルポジ型画像形成層全固形分に対し、1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0112】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、サーマルポジ型画像形成層全固形分に対し、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0113】
更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等が使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタン等が挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類等があり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0114】
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の画像形成層中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、最も好ましくは0.1〜10重量%である。また、本発明における画像形成層中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0115】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤は、サーマルポジ型画像形成層全固形分に対し、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0116】
[サーマルネガ型画像形成層]
タイプIVのサーマルネガ型画像形成層は、少なくとも、下記一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマー、熱架橋剤、酸発生剤及び後に詳述する光熱変換剤を含有する。
【0117】
【化4】
Figure 0003781282
【0118】
一般式(IX)中、R1は、水素原子又はメチル基を示す。X1は、それ自体アルカリ可溶性を示すか、又は、アルカリ可溶性基を有する連結基を示す。ここで、アルカリ可溶性基とは、スルホン酸アミド、スルホン酸イミド又はカルボン酸イミドのような部分を含む基を指し、具体的には、−SO2NH−、−NHSO2−、−SO2NHCO−、−CONHSO2−、−CONHCO−等が挙げることができる。Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数20個以下の芳香族炭化水素基を示す。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素基のうち、入手性・経済性の観点から、ベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましい。
【0119】
また、これらの芳香族炭化水素基が有することができる好ましい置換基としては、炭素数20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルバモイル基等を挙げることができる。Y1は、N−R3、酸素原子又は硫黄原子を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。ここで、R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。R2及びR3において用いることのできる好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数20以下のアルコキシル基、炭素数20以下のペルフルオロアルキル基及び炭素数20以下のヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。また、nは1〜4の整数を示す。L1は、単結合、エステル結合、カルボン酸アミド結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合又はこれらの結合を含有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を示す。L2は、単結合又は炭素数20以下の炭化水素基を示すが、入手性・経済性の観点から、単結合であることが好ましい。
【0120】
なお、R2とAr1及びR3とAr1、さらにR2とR3は、それぞれシクロヘキサン環等の環構造を形成していてもよい。本発明において好適に用いられる、一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーは、下記一般式(X)で表される構成単位を有するポリマーである。なお、一般式(X)中、一般式(IX)の符号と同じものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0121】
【化5】
Figure 0003781282
【0122】
式中、R4及びR5は、同じでも異なっていてもよく、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。R4及びR5において用いることのできる好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数20以下のアルコキシル基、炭素数20以下のペルフルオロアルキル基及び炭素数20以下のヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。なお、R4とR5は、縮環したベンゼン環やシクロヘキサン環等の環構造を形成していてもよい。一般式(X)で表される構成単位を有するポリマーは、対応する一般式(XI)で表されるモノマーを用い、従来公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。
なお、一般式(XI)中、一般式(X)の符号と同じものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0123】
【化6】
Figure 0003781282
【0124】
本発明において、好適に用いられる一般式(XI)で表されるモノマーの例を式(XI−1)〜(XI−13)として以下に挙げる。なお、下記式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Z1は酸素原子又はNHを示す。
【0125】
【化7】
Figure 0003781282
【0126】
【化8】
Figure 0003781282
【0127】
【化9】
Figure 0003781282
【0128】
本発明において一般式(IX)で表される構成単位を有する好適なポリマーとしては、前記一般式(XI)で表されるモノマーの一種のみを用いた単独重合体や2種以上を用いた共重合体の双方を使用することができる。本発明で用い得る前記ポリマーは、一般式(XI)で表されるモノマーと、一般式(XI)で表されるモノマー以外の他の従来公知の重合性モノマーとの共重合体を使用することが塗布溶液に対する溶解性や塗膜の柔軟性の観点から、好ましい。
このような一般式(XI)で表されるモノマーと組み合わせて用いられる公知のモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0129】
本発明の一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーは、その部分構造としてアルカリ可溶性を有する連結基(例えば、酸性基等)であるX1を有しているため、アルカリ水に対する溶解性に優れているが、さらに補助的に他の酸性基を有するモノマーを用いた共重合体としても良い。用いられるモノマーとしては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、N−(2−カルボキシエチル)アクリルアミド、N−(2−カルボキシエチル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、カルボキシスチレン、マレイミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N−(クロロフェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(クロロフェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(メチルスルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(メチルスルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(トリルスルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−[(クロロフェニルスルファモイル)フェニル]アクリルアミド、N−[(クロロフェニルスルファモイル)フェニル]メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシナフチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシナフチル)メタクリルアミド等が挙げられる。
【0130】
また、酸性基ではないが、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩、3−スルホプロピルアクリレートのカリウム塩等の強酸の塩を含有するモノマーは、水に対する溶解性を向上でき、結果として画像形成層の水性現像液に対する現像性を向上できるので、共重合体の構成成分として好ましい。
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(IX)で表される構成単位の割合は、20〜95重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90重量%である。また、サーマルネガ型画像形成層に含有される一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0131】
一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーを合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーは単独で用いても混合して用いてもよく、サーマルネガ型画像形成層全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは40〜90重量%の割合で画像形成材料中に添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を越える場合は、画像形成されない。
【0132】
サーマルネガ型画像形成層に用いられる熱架橋剤としては、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基又はビニルエーテル基を有する化合物を挙げることができる。好ましくはこれらの架橋性官能基が芳香環に直接結合した化合物である。具体的には、メチロールメラミン、レゾール樹脂、エポキシ化されたノボラック樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。さらに、「架橋剤ハンドブック」(山下晋三、金子東助著、大成社(株))に記載されている化合物も好ましい。特に、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は画像形成した際の画像部の強度が良好であり好ましい。このようなフェノール誘導体として、具体的には、レゾール樹脂を挙げることができる。しかしながら、これらの熱架橋剤は当然ながら熱に対して不安定であり、画像形成材料を作成した後の保存時の安定性があまりよくない。これに対し、分子内に4〜8個のベンゼン核、少なくとも1個のフェノール性水酸基及び少なくとも2個の式(XII)で表される基を有するフェノール誘導体は保存時の安定性も良好であり、最も好適に用いられる。
【0133】
【化10】
Figure 0003781282
【0134】
前記(XII)のR6は、水素原子、アルキル基又はアシル基を示し、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はt−ブチル基のような炭素数1〜4のアルキル基が、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シンナモイル基、バレリル基が好ましい。また、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜4の置換アルキル基を用いることができる。
サーマルネガ型画像形成層に使用可能なフェノール誘導体は、公知のフェノール化合物、例えば、特開平1−289946号公報、同3−179353号公報、同3−200252号公報、同3−128959号公報、同3−200254号公報、同5−158233号公報、同5−224409号公報に記載されているフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとを強アルカリ性媒体中で約0〜80℃、好ましくは10〜60℃の温度で1〜30時間反応させることによりR6=Hのものが得られる。
【0135】
その後、さらに酸性条件下、炭素数1〜4のアルコール、置換アルコール、酸ハライド又は酸無水物と、0〜80℃で、1〜30時間反応させることにより、R6=アルキル、アシルのものが得られる。アルコール、置換アルコールと反応させる際の温度は、20〜80℃が好ましく、酸ハライド又は酸無水物と反応させる際の温度は、0〜30℃が好ましい。本発明に使用可能なフェノール誘導体の具体例としては、下記一般式(XIII)〜(XX)で表わされる化合物が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。これらのフェノール誘導体は、単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよいが、その際の使用量は、サーマルネガ型画像形成層中、0.2〜60重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。また、ベンゼン核が1〜3個で、フェノール性ヒドロキシル基と式(XII)で表わされる基を有する化合物は、着肉性、現像許容性の低下を招くため、サーマルネガ型画像形成層はこれらの化合物を実質的に含まないことが望ましい。より具体的には、サーマルネガ型画像形成層中5重量%以下であることが望ましく、更に好ましくは3重量%以下であり、最も好ましくは0重量%である。
【0136】
【化11】
Figure 0003781282
【0137】
【化12】
Figure 0003781282
【0138】
【化13】
Figure 0003781282
【0139】
【化14】
Figure 0003781282
【0140】
式中、R7〜R9、R14、R22、R23は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、R10、R18〜R21は水素原子又はアルキル基を示し、R11〜R13は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R15〜R17は、単結合、置換基を有してもよいアルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド結合又はそれら二種以上の組み合わせを示し、Yは一般式(XII)で表わされる基を示し、a、b、c、d、x、yは、0〜3の整数を示すが、a+b+c+d+x+yは2〜16の整数であり、k、l、m、nは0〜3の整数を示すが、すべてが0になることはなく、e、f、g、h、p、q、r、s、t、uは0〜3の整数を示し、zは0又は1を示す。
前記一般式(XIII)〜(XX)で表わされる化合物のより具体的な例としては、例えば下記構造のものが挙げられる。
【0141】
【化15】
Figure 0003781282
【0142】
【化16】
Figure 0003781282
【0143】
【化17】
Figure 0003781282
【0144】
【化18】
Figure 0003781282
【0145】
式中、Y2〜Y13は、水素原子又は式(XII)で表わされる基を示すが、各化合物中、少なくとも2個は式(XII)で表わされる基を有しており、好ましくは、すべてが式(XII)で表わされる基である。本発明において好適に用いられる他の熱架橋剤としては、アルデヒドやケトン化合物を挙げることができる。好ましくは、分子内に2個以上のアルデヒド又はケトンを有する化合物である。これらの熱架橋剤は単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明において、熱架橋剤はサーマルネガ型画像形成層固形分中、5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%の添加量で用いられる。熱架橋剤の添加量が5重量%未満であると画像形成した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70重量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
【0146】
さらに、サーマルネガ型画像形成層には酸発生剤が添加される。酸発生剤とは、光又は100℃以上の加熱により分解し酸を発生する化合物であり、発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。
【0147】
ジアゾニウム塩としては、米国特許第3867147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2632703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、US5,135,838やUS5,200,544に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特開平9−197671号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの化合物は、サーマルネガ型画像形成層全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.5〜15重量%の割合で添加される。添加量が0.01重量%未満の場合は、画像が得られない。また添加量が50重量%を越える場合は、印刷時非画像部に汚れを発生する。
【0148】
サーマルネガ型画像形成層には更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーを添加することができる。このような化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのトリ−、テトラ−若しくはヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能モノマーの添加量は、サーマルネガ型画像形成層中30重量%以下である。
【0149】
以上詳述した熱融着型画像形成層、アブレーションポジ型画像形成層、サーマルポジ型画像形成層およびサーマルネガ型画像形成層には、共通して、レーザー光などの光を熱に変換するための光熱変換剤及び必要に応じて露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料や顔料または画像形成層に柔軟性等を付与するための可塑剤などが添加される。
【0150】
(光熱変換剤)
本発明の平版印刷版用原版において、含有させてもよい光熱変換剤としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質ならば全て使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、顔料、フタロシアニン系顔料、金属粉、金属化合物粉等が挙げられる。特に、好ましいのは、波長760nmから1200nmの赤外線を有効に吸収する染料、顔料、または金属粉、金属化合物粉である。
【0151】
本発明において光熱変換剤として使用しうる顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0152】
これら顔料は表面処理を施さずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法としては、例えば、親水性樹脂や親油性樹脂を表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤やエポキシ化合物、イソシアネート化合物)を顔料表面に結合させる方法が挙げられる。上記表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。これらの顔料中、赤外線を吸収するものが、赤外線を発光するレーザでの利用に適する点で好ましい。かかる赤外線を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好ましい。
【0153】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像形成層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像形成層の均一性の点で好ましくない。顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0154】
染料としては、市販の染料および、文献(例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)または特許に記載されている公知の染料が利用できる。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料、シアニン染料等の赤外線吸収染料が好ましい。
【0155】
更に、例えば、特開昭58−125246号公報、同59−84356号公報、同60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、同58−181690号公報、同58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、同58−224793号公報、同59−48187号公報、同59−73996号公報、同60−52940号公報、同60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム染料、英国特許第434,875号明細書に記載されているシアニン染料、米国特許第4,756,993号明細書に記載されている染料、米国特許第4,973,572号明細書に記載されているシアニン染料、特開平10−268512号公報に記載されている染料、同11−235883号公報に記載されているフタロシアニン化合物が挙げられる。
【0156】
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン染料、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物、エポリン社製のエポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125等も好適に用いられる。
【0157】
また、染料として特に好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
以下にいくつかの具体例を示す。
【0158】
【化19】
Figure 0003781282
【0159】
【化20】
Figure 0003781282
【0160】
これらの顔料もしくは染料は、画像形成層全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10重量%の割合で画像形成層中に添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると画像形成層の均一性が失われ、画像形成層の耐久性が悪くなる。
【0161】
本発明に係る感熱層には、光熱変換剤として金属微粒子を用いることもできる。金属微粒子の多くは光熱変換性であって、かつ自己発熱性である。好ましい金属微粒子として、例えば、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbの単体もしくは合金、または、それらの酸化物もしくは硫化物の微粒子が挙げられる。
これらの金属微粒子を構成する金属の中でも好ましい金属は、光照射時に熱による合体をしやすい、融点が約1000℃以下で赤外、可視または紫外線領域に吸収をもつ金属、例えば、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Snである。
また、特に好ましいのは、融点も比較的低く、赤外線に対する吸光度も比較的高い金属の微粒子、例えば、Ag、Au、Cu、Sb、Ge、Pbで、最も好ましい元素としては、Ag、Au、Cuが挙げられる。
【0162】
また、例えば、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn等の低融点金属の微粒子と、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge等の自己発熱性金属の微粒子とを混合使用するなど、2種以上の光熱変換物質で構成されていてもよい。また、Ag、Pt、Pd等の、微小片としたときに光吸収が特に大きい金属種の微小片と他の金属微小片とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0163】
本発明に用いうる金属微粒子の平均経は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜50nmである。その分散度は多分散でよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
【0164】
これらの粒子の粒径は、10μm以下であるのが好ましく、0.003〜5μmであるのがより好ましく、0.01〜3μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な感度と解像力が得られる。
【0165】
本発明において、これらの金属微粒子を光熱変換剤として用いる場合、その添加量は、感熱層固形分の10〜50質量%であるのが好ましく、20〜45質量%であるのがより好ましく、30〜40質量%の範囲であるのが特に好ましい。上記範囲内であると、高い感度が得られる。
【0166】
光熱変換剤は、必ずしも感熱層に含まれなくても、例えば、感熱記録層の隣接層である下塗層や、後述する水溶性オーバーコート層が含有してもよい。感熱層、下塗層およびオーバーコート層のうち少なくとも一つの層が光熱変換剤を含有することにより、赤外線吸収効率が高まり、感度を向上させることができる。
【0167】
(焼き出し剤)
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0168】
(画像着色剤)
画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。好適な染料としては、塩形成性有機染料の他に、油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料等を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。これらの染料は、画像形成層全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で画像形成層中に添加することができる。
【0169】
(可塑剤)
更に、感熱層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。可塑剤としては、例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が挙げられる。
【0170】
(感熱層の形成)
本発明の感熱層は、必要な上記各成分を溶剤に溶解、もしくは分散し、塗布液を調製し、前記支持体の親水性表面上に塗布される。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0171】
これらの溶媒は単独で又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版用原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。
なお、塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。添加量は、好ましくは画像形成層の0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0172】
〔その他の構成要素〕
[オーバーコート層]
本発明の平版印刷版用原版においては、親油性物質による感熱層表面の汚染防止のため、感熱層上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。本発明に使用される水溶性オーバーコート層は印刷時容易に除去できるものが好ましく、水溶性の有機高分子化合物から選ばれた樹脂を含有する。
ここで用いる水溶性の有機高分子化合物としては、塗布乾燥によってできた被膜がフィルム形成能を有するもので、具体的には、ポリ酢酸ビニル(但し、加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)およびその変性体 、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。
【0173】
また、オーバーコート層には、前記光熱変換剤のうち水溶性のものを添加しても良い。さらに、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどの非イオン系界面活性剤を添加することができる。
オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜2.0g/m2が好ましい。この範囲内で、機上現像性を損なわず、指紋付着汚れなどの親油性物質による感熱層表面の良好な汚染防止ができる。
【0174】
[製版方法]
次に、平版印刷版用原版を用いた平版印刷版の製版方法について説明する。上記した感熱型画像形成層を有する平版印刷版用原版は、例えば、熱記録ヘッドなどにより直接画像様に感熱記録を施したり、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザー、あるいは赤外線灯を用いたり、あるいはキセノン放電灯などによる高照度の紫外線又は可視光線のフラッシュ露光を行うなどの方法で画像露光される。
画像の書き込みは、面露光方式、走査方式のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、キセノン放電灯の高照度の短時間光を原版上に照射して光・熱変換によって熱を発生させる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化するが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2の範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cm2の範囲であることがより好ましい。
【0175】
後者の場合には、赤外線成分を多く含むレーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調して原版上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げることができる。ピーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場合の露光量は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2の範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cm2の範囲であることがより好ましい。
画像露光された平版印刷版用原版は、露光後に現像し、更に必要であればガム引きを行ったのち、印刷機に版を装着し印刷を行うこともできる。また、露光後ただちに(現像工程を経ずに)印刷機に版を装着し印刷を行うこともできる。この場合は、湿し水等により、加熱部あるいは露光部が膨潤し、印刷初期に膨潤部が除去され、平版印刷版が形成される。即ち、本発明の平版印刷版用原版を使用する製版方法では、特に現像処理を経ることなく平版印刷版を製版し得る。ここでいう現像とは、水或いは水を主成分とするpH2以上の現像液により現像することを指す。
【0176】
現像を行う場合も、現像処理を行わない場合も、露光後に加熱処理を行うことが記録時の感度向上の観点から好ましい。加熱処理の条件は、80〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。即ち、この加熱処理を施すことにより、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
このような処理によって得られた本発明の平版印刷版用原版は現像されるかあるいは現像工程を経ずにそのままオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0177】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔1.支持体の作製〕
(1−1)中間層の形成
基板上に、下記表1に示す組成の中間層塗布液を、市販のワイヤーバー(ワイヤー太さ0.25mm)で、乾燥膜厚が表1に示す乾燥膜厚になるように、塗布、乾燥して、中間層を形成した。
【0178】
なお、基板として、以下のものを用いた。
1)0.24mmの厚みのアルカリ脱脂処理済みのアルミニウム板、
2)アルミニウムをラミネートした紙(王子製紙(株)製上質紙(180μm厚)に、コニシ(株)製多用途ボンド(接着層50μm)、住友軽金属(株)製アルミニウム箔(10μm厚)、TOLAMI製ラミネーターDX−700を用いて作製)
3)アルミニウムをラミネートしたPET(東レ(株)製PET(220μm厚)に、セメダイン(株)製3000DXF(接着層10μm)、住友軽金属(株)製アルミニウム箔(10μm厚)、TOLAMI製ラミネーターDX−700を用いて作製)
4)アルミニウムを蒸着した鋼板(神戸製鋼(株)製鉄鋼板(240μm厚)に、真空度10-6Torr、基板温度250℃の条件で最表層に99.9%のアルミニウムを蒸着して作製)
5)陽極酸化処理したアルミニウム板
形成された中間層の空隙率、厚みも下記表1に示す。
【0179】
【表1】
Figure 0003781282
【0180】
なお、比較例用支持体24は、0.24mmの厚みのアルカリ脱脂処理済みのアルミニウム板に陽極酸化処理を行い、1.0μm厚の陽極酸化皮膜を設けたものである。
【0181】
(1−2)親水性層の形成
上記の通りに形成した中間層の上に、下記表2に示す組成の親水性層塗布液を、市販のワイヤーバー(ワイヤー太さ0.25mm)で、乾燥膜厚が表2に示す乾燥膜厚になるように、塗布、乾燥して、親水性層を形成した。
得られた親水性層の厚さ、支持体としての空隙率も下記表2に示す。なお、支持体としての空隙率とは、中間層とその上の親水性層とを総合しての空隙率のことである。
【0182】
〔実施例1〜30及び比較例1〕
〔2.画像形成層の形成〕
(2−a−1)微粒子ポリマーの合成
アリルメタクリレート7.5g、ブチルメタクリレート7.5g、ポリオキシエチレンノニルフェノール水溶液(濃度9.84×10-3mol/L)200mlを加え、250rpmでかくはんしながら、系内を窒素ガスで置換した。この液を25℃にした後、セリウム(IV)アンモニウム塩水溶液(濃度0.984×10-3mol/L)10mlを添加した。この際、硝酸アンモニウム水溶液(濃度58.8×10-3mol/L)を加え、pHを1.3〜1.4に調整した。その後、8時間かくはんして、微粒子ポリマーを含有する液を得た。得られた液の固形分濃度は9.5%であり、微粒子ポリマーの平均粒径は0.2μmであった。
【0183】
(2−b)画像形成層の塗布
上記で得られた親水性層の上に、下記組成の画像形成層(1)用塗布液を塗布し、オーブンにて60℃で150秒間乾燥して、平版印刷版用原版を得た。画像形成層(1)の乾燥塗布量は0.5g/m2であった。
【0184】
Figure 0003781282
【0185】
〔3.印刷特性評価〕
(クリア感度の測定)
上記の作製した平版印刷版用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したクレオ社製トレンドセッター3244VFSを用いて、解像度2400dpiの条件で出力して露光した。この際、外面ドラム回転数を変化させることにより版面エネルギを変化させて、画像形成できる最低露光量により感度を評価した。結果を下記表2に示した。
【0186】
(汚れ性評価)
印刷機を一時停止させて、印刷機のブランケット部分のインキを日東電工製PETテープにて写し取り、非画像部のインキによる汚れて具合を目視にて、以下の基準により評価した。結果を下記表2に示した。
【0187】
Figure 0003781282
【0188】
(耐刷性)
同様の条件で、残色、残膜、汚れのない印刷物が何枚得られるかを計測した。即ち、残色、残膜、汚れのいずれかが、印刷物許容レベル以下のなった時点で、刷了とし、その時点の枚数を印刷枚数を刷了枚数とした。結果を下記表2に示した。
【0189】
Figure 0003781282
【0190】
【表2】
Figure 0003781282
【0191】
【表3】
Figure 0003781282
【0192】
【表4】
Figure 0003781282
【0193】
上記表2の結果より、本発明の平版印刷版用支持体を用いた本実施例の平版印刷版用原版は、いずれも、陽極酸化皮膜を有する従来のもの(比較例)より、感度、放置汚れ性、耐刷性が同等以上に優れていた。
【0194】
〔実施例31〜60及び比較例2〕
〔2.画像形成層の形成〕
(2−a−2)マイクロカプセルの調製
キシレンジイソシアネート40g、トリメチロールプロパンジアクリレート10g、アリルメタクリレートとブチルメタクリレートの共重合体(モル比7/3)10gおよび界面活性剤(パイオニンA41C、竹本油脂社製)0.1gを酢酸エチル60gに溶解させて、油相成分とした。一方、ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ社製)の4%水溶液を120g調製し、水相成分とした。油相成分および水相成分をホモジナイザーに投入し、10000rpmで用いて乳化させた。その後、水を40g添加し、室温で30分かくはんし、更に40℃で3時間かくはんし、マイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は20質量%であり、マイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった。
【0195】
上記で得られた支持体の親水性層の上に、下記組成の画像形成層(2)塗布液を塗布し、オーブンにて60℃で150秒間乾燥して、平版印刷版用原版を得た。画像形成層(2)の乾燥塗布量は0.7g/m2であった。
【0196】
Figure 0003781282
【0197】
上記の作製した平版印刷版用原版について、前記実施例1と同様に、クリア感度、汚れ性、耐刷性を評価した。結果を下記表3に示した。
【0198】
【表5】
Figure 0003781282
【0199】
【表6】
Figure 0003781282
【0200】
【表7】
Figure 0003781282
【0201】
上記表3の結果より、本発明の平版印刷版用支持体を用いた本実施例の平版印刷版用原版は、いずれも、陽極酸化皮膜を有する従来のもの(比較例)より、感度、放置汚れ性、耐刷性が同等以上に優れていた。
【0202】
〔実施例61〜90及び比較例3〕
〔2.画像形成層(サーマルポジ)の形成〕
上記で得られた支持体の親水性層の上に、以下の感光液1を塗布量が1.0g/m2になるように塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVENPH200にてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥し、平版印刷版用原版を得た。
【0203】
Figure 0003781282
【0204】
[シロキサン構造含有アルカリ可溶性樹脂(F−1)の合成]
クレゾールノボラック(m/p=60/40、Mw=5.2×103)120gをメタノール400mlに溶解し、ナトリウムメトキシド5.4gを加え、30分間攪拌した。メタノールを減圧留去し、テトラヒドロフラン400mlを加え、溶媒を置換した。エポキシ型末端反応性シリコーンMCR−E11((株)チッソ製)17gを加え、6時間、加熱、還流した。反応液を室温まで冷却し、水8000mlに注ぎ込み、分離物をろ取、水洗、乾燥することによりシロキサン構造含有アルカリ可溶性樹脂(F−1)132gを得た。
【0205】
【化21】
Figure 0003781282
【0206】
上記の作製した平版印刷版用原版について、前記実施例1と同様に、クリア感度、汚れ性、耐刷性を評価した。なお、このサーマルポジ型の平版印刷版用原版については、画像露光後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−1(1:8で希釈したもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP2W(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温30℃、現像時間12秒にて現像した(このときの現像液の電導度は45mS/cmであった。)。結果を下記表4に示した。
【0207】
【表8】
Figure 0003781282
【0208】
【表9】
Figure 0003781282
【0209】
【表10】
Figure 0003781282
【0210】
上記表4の結果より、本発明の平版印刷版用支持体を用いた本実施例の平版印刷版用原版は、いずれも、陽極酸化皮膜を有する従来のもの(比較例)より、感度、放置汚れ性、耐刷性が同等以上に優れていた。
【0211】
【発明の効果】
本発明に係わる平版印刷版用支持体は、適度な空隙を有するため、光熱変換剤を含有する画像形成層を有する平版印刷版用原版とした場合、陽極酸化皮膜を有する支持体を用いたものと同等の優れた感度、汚れ性及び耐刷性を有する。さらに、塗布、乾燥という簡易な処理で作製できるため、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、陽極酸化処理等が不要になり、製造コストが大幅に削減できるものである。

Claims (5)

  1. アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布したことにより得られる、空隙率が10〜60%の中間層を有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
  2. 該中間層の上に、ケイ酸塩化合物及び親水性樹脂を含有する親水性層を有することを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用支持体。
  3. 該中間層が、該塗布液を塗布後、120〜180℃で乾燥して得られることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
  4. アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子及びリン酸を主成分とする塗布液を塗布したことにより得られる、空隙率が10〜60%の中間層を有する平版印刷版用支持体上に、光熱変換剤を含有する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
  5. 前記画像形成層が、a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有し、赤外線露光により記録可能なものであることを特徴とする請求項に記載の平版印刷版用原版。
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