JP2005014230A - 平版印刷版原版及び平版印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能であり、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版、及び、該平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷インキと湿し水とを供給して、画像記録層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷方法に関する。詳しくは、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザーを走査することにより直接製版することができる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版、及び、前記平版印刷版原版を印刷機上で現像して印刷する平版印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、非画像部を画像記録層に応じた現像液等によって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化し又は簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、平版印刷版原版の非画像部の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で非画像部を除去し、平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤又は湿し水とインキとの乳化物に溶解し又は分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機の圧胴やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力又は画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、圧胴やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の画像記録層の未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の画像記録層の未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法及び工程を指す。
【0005】
一方、近年、画像情報をコンピュータによって電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。従って、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0006】
上述したように、近年、製版作業の簡易化、乾式化及び無処理化は、地球環境への配慮とデジタル化への適合化との両面から、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
しかしながら、従来の紫外から可視領域の光を利用する画像記録方式を機上現像などの製版作業の簡易化に用いた場合、露光後も画像記録層が定着しないため室内光にたいする感光性を有し、平版印刷版原版を包装から出した後、機上現像が完了するまでの間、完全に遮光状態に保つ必要があった。
【0007】
最近、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の高出力レーザーが安価に入手できるようになってきたことから、デジタル化技術に組み込みやすい走査露光による平版印刷版の製造方法において、これらの高出力レーザーを画像記録光源として用いる方法が有望視されるようになっている。
従来の紫外から可視領域の光を利用する製版方法では、感光性の平版印刷版原版に対して低照度から中照度で像様露光を行い、画像記録層における光化学反応による像様の物性変化によって画像記録を行う。これに対して、上述した高出力レーザーを用いる方法では、露光領域に極短時間に大量の光エネルギーを照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換させ、その熱により、画像記録層において化学変化、相変化、形態又は構造の変化等の熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。従って、画像情報はレーザー光等の光エネルギーによって入力されるが、画像記録は光エネルギーに加えて熱エネルギーによる反応も加味された状態で行われる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、光エネルギーを熱エネルギーに変えることは光熱変換と呼ばれる。
【0008】
ヒートモード記録を用いる製版方法の大きな長所は、室内照明のような通常の照度レベルの光では画像記録層が感光しないこと、及び、高照度露光によって記録された画像の定着が必須ではないことにある。つまり、ヒートモード記録に用いられる平版印刷版原版は、露光前には室内光により感光してしまうおそれがなく、露光後には画像の定着が必須ではない。従って、例えば、高出力レーザーを用いた露光により不溶化し又は可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録層を像様にして平版印刷版とする製版工程を機上現像で行えば、露光後、たとえ室内の環境光に暴露されても画像が影響を受けない印刷システムが可能となることが期待され、その実現が望まれている。
【0009】
そのような平版印刷版原版として、例えば、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この平版印刷版原版は、赤外線レーザーにより露光して、疎水性熱可塑性重合体粒子を熱により合体させて画像を形成させた後、印刷機のシリンダー上に取り付け、湿し水及び/又はインキを供給することによって、機上現像することが可能である。
しかし、このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な機上現像性を示すものの、画像強度が極めて弱く、耐刷性が不十分であった。
【0010】
また、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層を有する平版印刷版原版が機上現像可能であることも知られている(特許文献2及び特許文献3参照。)。
さらに、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する感光層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が知られている(特許文献4参照。)。
上記のような重合反応を用いる方法では、引っ掻き傷、擦り傷等により非画像部に汚れが生じる場合があり、耐傷性の向上が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】
特許第2938397号明細書
【特許文献2】
特開2001−277740号公報
【特許文献3】
特開2001−277742号公報
【特許文献4】
特開2002−287334号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記欠点を改善することを目的になされたものである。すなわち、本発明の目的は、赤外線レーザー走査による画像記録が可能で、機上現像性、細線再現性及び耐刷性を良好に保持しつつ、しかも耐傷性に優れた平版印刷版原版及び平版印刷版の印刷方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、画像記録層に長鎖アルキル基含有ポリマーを用いることによって上記目的を達成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0014】
(1)支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能であり、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版。
【0015】
(2)支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、又は、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に、印刷インキと湿し水とを供給して、該画像記録層の赤外線レーザー未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
【0016】
本発明は、画像記録層に長鎖アルキル基含有ポリマーを用いることにより可能となったが、これは、次の知見に基づくものである。
支持体上に、画像記録層塗布液を塗布し、乾燥する工程において、画像記録層塗布液中の長鎖アルキル基含有ポリマーが相分離し、自己凝集により微粒子の形態をとることで、記録層表面に微小突起が形成される。
本発明においては、このような微小突起が画像記録層表面の摩擦力を低下させるため、引掻き傷、擦り傷に対する応力を緩和するものと考えられる。また、突起が微粒子状微小突起であることにより、機上現像における画像記録層の未露光部除去が阻害されることないため、細線再現性も良好に保持されると考えられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版は、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能であり、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能な画像記録層を有する。該画像記録層は、その表面に、該長鎖アルキル基含有ポリマーからなる微小突起が存在することを特徴とする。
【0018】
上記微小突起は、該長鎖アルキル基含有ポリマーが、画像記録層塗液中では他の成分とともに塗布溶媒に溶解しているが、塗布後の乾燥工程において、溶媒の除去に伴って他の成分と相分離し、且つ、自己凝集して最表面に突起として出てくることによって形成させる。したがって、この長鎖アルキル基含有ポリマーからなる微小突起は、従来の無機粒子、金属粒子、有機粒子の微粒子分散物を塗布液に添加して形成する表面突起とは、その製法、物性ともに異なるものであり、特に微小突起はマトリックスを構成する成分との密着性に優れるという利点を有する。
【0019】
本発明の画像記録層表面に存在する微小突起は、記録層表面を顕微鏡観察することにより容易に確認することができる。
表面突起を形成する微粒子の平均粒子径としては0.01〜10μmが好ましく、0.03〜5μmがより好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。この範囲内で、印刷物の解像度や下層との接着性などが低下する懸念がなく、良好な耐傷性向上効果が得られる。
表面突起の平均粒子径の測定方法としては、一般には、光学顕微鏡、電子顕微鏡等による観察により表面に存在する粒子径を測定し、その平均を算出する方法が挙げられる。即ち、ここでいう微粒子の平均粒子径とは、画像記録層表面に突出した長鎖アルキル基含有ポリマーからなる微粒子の粒子径を光学的に複数測定し、それらの平均値をとったものである。
また、画像記録層表面に存在する微小突起の高さは5.0〜1000nmが好ましく、10〜800nmがより好ましく、20〜500nmが最も好ましい。
表面突起の高さの測定方法としては、断面を電子顕微鏡観察して突起の高さを測定する方法、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定する方法等が挙げられる。
【0020】
本発明において、画像記録層表面に存在する長鎖アルキル基含有ポリマーからなる微小突起の粒経や高さを制御する要素としては、長鎖アルキル基含有ポリマーの極性、画像記録層に含まれる他の成分の種類、それぞれの添加量、塗布溶剤の種類、乾燥条件(温度、時間、湿度、圧力等)が挙げられる。
例えば、長鎖アルキル基含有ポリマーと、共存する相溶性を有さないバインダーポリマーとの極性の差が大きくなると、微小突起の粒径は大きくなり、また、乾燥温度を高くし、乾燥に要する時間を短くすることにより、微小突起の粒径は、小さくなる。
以下、平版印刷版原版の各構成成分について詳細に説明する。
【0021】
〔(D)長鎖アルキル基含有ポリマー〕
本発明に用いられる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、炭素数6以上、好ましくは炭素数12以上の長鎖アルキル基を有するモノマーの少なくとも1種以上を重合した高分子化合物であることが好ましい。
また、長鎖アルキル基を有するモノマーは、分子内に付加重合可能な、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、溶剤溶解性や平版印刷版原版を作製した場合の耐傷性改良効果、表面被覆性及び画像形成性への影響等の観点から、長鎖アルキル基を有するアクリレート系、メタクリレート系、アクリルアミド系、メタクリルアミド系、スチレン系、ビニル系、ビニルエーテル系、マレイン酸系、フマル酸系などの化合物であることが好ましい。
【0022】
(長鎖アルキル基を有するモノマー)
本発明に係る長鎖アルキル基含有ポリマーの形成に有用な長鎖アルキル基を有するモノマーの好ましい例として、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化1】
【0024】
式(I)中、nは6〜40の整数を表す。中でも、nは、10〜30の整数が好ましく、12〜20の整数がより好ましい。Xは2価の連結基を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。
【0025】
Xが表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、炭素数2〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(単環、複素環)、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SO2NR−、−SO2NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SO2O−、−SO2OAr−、−OSO2−、−OSO2Ar−、−NRSO2−、−NArSO2−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR’−、−N+RAr−、−N+ArAr’−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素及びイオウ等を少なくとも1個以上含み、炭素数3ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−等が挙げられる。ここで、R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子あるいは直鎖状、分岐状若しくは環状の、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。Ar及びAr’はそれぞれ独立にアリール基を表す。
【0026】
このような連結基の中でも、炭素数6〜20のアリーレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)−、−C(=O)Ar−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等が好ましく、炭素数6〜20のアリーレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等がより好ましい。
また、Xで表される連結基としては、ここで挙げた連結基の2種類以上を組み合わせたものであってもよい。
【0027】
また、上記連結基は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、炭素数1〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン、炭素数2〜20の、直鎖、分岐若しくは環状のアルケニレン、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリーレン、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、カルボキシル基、スルホ基、オキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜20のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0028】
また、Y、Y’及びY”は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル等)、炭素数2〜20、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルケニル基(例えばビニル、1−メチルビニル、シクロヘキセン−1−イル等)、炭素数2〜20のアルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル等)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル等)、炭素数1〜20のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、テトラデカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基など)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基など)、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ等)、炭素数1〜20のカルボンアミド基(例えば、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、ベンツアミド等)、炭素数1〜20のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ドデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、炭素数1〜20のカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メシルカルバモイル等)、炭素数0〜20のスルファモイル基(例えば、N−ブチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)スルファモイル等)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、ポリアルキレンオキシ等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ、ナフトキシ等)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等)、
【0029】
炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等)、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基(例えば、N−テトラデカノイルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル等)、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基(例えばN−メタンスルホニルカルバモイル基など)、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクチルスルホニル、2−メトキシエチルスルホニル、2−ヘキシルデシルスルホニル等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、4−フェニルスルホニルフェニルスルホニル等)、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ等)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、ナフトキシカルボニルアミノ等)、炭素数0〜20のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、アニリノ、モルホリノ等)、炭素数3〜20のアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ基、ジメチルベンジルアンモニオ基など)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等)、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基(例えば、ベンゼンスルフィニル、4−クロロフェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニル等)、炭素数1〜20のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、炭素数6〜20のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、炭素数1〜20のウレイド基(例えば、3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド、1,3−ジフェニルウレイド等)、炭素数2〜20のヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素及びイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環で、例えば、2−フリル、2−ピラニル、2−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、モルホリノ、2−キノリル、2−ベンツイミダゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル等)、炭素数1〜20のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル等)、炭素数0〜20のスルファモイルアミノ基(例えば、N−ブチルスルファモイルアミノ、N−フェニルスルファモイルアミノ等)、炭素数3〜20のシリル基(例えば、トリメチルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、トリフェニルシリル等)、アゾ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)が挙げられる。上記の置換基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としてはここで挙げた置換基が挙げられる。
【0030】
また、Y、Y’及びY”のうち少なくとも2つが互いに環を形成していても良く、このような例としては脂肪族環、芳香族環、複素環基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(I)の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、式中n及びn’は、6〜40の整数を表し、点線で表される結合手は、その先端にメチル基又は水素原子が存在することを意味する。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
本発明に係る長鎖アルキル基含有ポリマーは、これらの長鎖アルキル基を有するモノマーの少なくとも1種以上を、重合あるいは共重合することで得られる。
また、本発明に係る長鎖アルキル基含有ポリマーは、上記長鎖アルキル基を有するモノマー以外に、下記一般式(II)のモノマー及びその他のモノマーから選ばれた1種以上との共重合体であっても良い。その場合、該共重合体中の長鎖アルキル基を有するモノマーのモル組成比は、表面微小突起形成の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが最も好ましい。
【0035】
(一般式(II)のモノマー)
上記長鎖アルキル基を有するモノマーと共重合させるモノマーとしては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化4】
【0037】
式中、Zは親水性基を含む1価の基を表し、W、W’及びW”は1価の有機基を表す。W、W’及びW”は、一般式(I)中の1価の有機基Y、Y’及びY”と同義である。Zにおける親水性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、オニウム基(アンモニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、ヨードニウム、イミニウム等)、炭素数1〜2000の(ポリ)アルキレンオキシド基、及び酸性基が挙げられる。中でも親水性基としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基が好ましい。
【0038】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)活性イミド基
(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R)
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0039】
上記(1)のフェノール基を有する一般式(II)のモノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0040】
上記(2)スルホンアミド基を有するモノマーとしては、上記構造のスルホンアミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、スルホンアミド基とを分子内に有する低分子化合物が好ましい。例えば、下記一般式(i)〜(v)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化5】
【0042】
上記一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、各々独立に、−O−又は−NR7−を表す。R1及びR4は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10及びR14は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、各々独立に、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合、又は−CO−を表す。
【0043】
一般式(i)〜(v)で表される化合物のうち、本発明の画像記録要素では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0044】
上記(3)活性イミド基を有するモノマーとしては、前記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。中でも、下記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が好ましい。
【0045】
【化6】
【0046】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0047】
上記(4)カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(5)スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、スルホン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(6)リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、リン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。
【0048】
上記の酸基を有するモノマーの中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが好ましく、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが最も好ましい。
【0049】
(その他のモノマー)
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキレート等のアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等のメタクリレート。
【0050】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0051】
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0052】
以上に挙げた、長鎖アルキル基を有するモノマーと、一般式(II)のモノマー及びその他のモノマーから選ばれたモノマーとの共重合方法としては、従来知られているグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。また、この共重合において、それぞれのモノマーの2種類以上を混合して用いることができる。
【0053】
以上のようにして得られた長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、特に、下記一般式(III)で表される構造単位を有するポリマーであることがより好ましい。
【0054】
【化7】
【0055】
式(III)中、nは6〜40の整数を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。Xは2価の連結基を表す。Z’は、前記の一般式(II)及びその他のモノマー単位から誘導される2価の連結基を表す。mは共重合成分のモル比を示し、10≦m<100の実数を表す。耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点からより好ましくは、20≦m≦90であり、更に好ましくは25≦m≦85である。
これらY、Y’、Y”及びXの具体例としては、一般式(I)のものと同義のものが挙げられる。
【0056】
更に、本発明に係る長鎖アルキル基含有ポリマーは、一般式(IV)で表される構造単位を有することがより好ましい。
【0057】
【化8】
【0058】
上記一般式(IV)において、点線で表される結合手は、メチル基又は水素原子を表す。X及びZ’としては、一般式(III)のX、Z’と同義のものが好ましく、モル比を示すmは、耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点から20≦m≦90が好ましく、25≦m≦85がより好ましく、30≦m≦80が最も好ましい。nは6〜40整数であり、好ましくは10〜30の整数、より好ましくは12〜20の整数である。
【0059】
上記式(IV)の連結基Z’としては、ヒドロキシ基、アミド基、N−ヘテロ環基、(ポリ)アルキレンオキシド基、(ポリ)アリーレンオキシド基、フェノール基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格が好ましく、ヒドロキシ基、アミド基、N−ヘテロ環基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格がより好ましい。上記式(IV)のXとしては、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0060】
以下に、本発明に好適な長鎖アルキル基含有ポリマーの具体例を挙げるが、これらに限定されない。なお、各共重合成分の配合比はモル比を示す。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
長鎖アルキル基含有ポリマー中の残留モノマー量は、本発明の平版印刷版原版を積層する際に保護紙(合紙)、基板裏面への転写や平版印刷版原版製造時のローラーへの転写等の問題から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明に用いる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000〜5,000,000で、特に好ましくは5,000〜2,000,000、更に好ましくは10,000〜1,000,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明の平版印刷版原版は、上記長鎖アルキル基含有ポリマーと、後述するその他の画像記録層成分とを混合し、画像記録層塗布液として支持体上に塗布し、乾燥して作製される。この乾燥過程で、長鎖アルキル基含有ポリマーが相分離を起こし、自己凝集して、表面に微小突起を形成する。
このような長鎖アルキル基含有ポリマーの添加量は、画像記録層全固形分中に0.5〜30質量%程度が好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましい。この範囲内で、表面に十分な微小突起が形成され、良好な耐傷性向上効果が得られる。
【0067】
その他、本発明の効果を充分に発揮するための平版印刷版原版の好ましい特性としては、長鎖アルキル基含有ポリマーを含む画像記録層形成後の該画像記録層表面の空中水滴接触角が60°から140°の範囲であることや、長鎖アルキル基含有ポリマーを含む平版印刷版原版表面の動摩擦係数が0.38〜0.70の範囲にあることなどが挙げられ、これらを考慮して長鎖アルキル基含有ポリマーの種類や添加量を決定すればよい。なお、ここで言う動摩擦係数とは、平版印刷版原版表面とステンレススチールとを接触させて配置し、標準ASTMD1894に従って測定された値を指す。
【0068】
〔(A)赤外線吸収剤〕
本発明の画像記録層には、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源とする画像形成を効率的に行うことを可能にするため、赤外線吸収剤が含有される。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明で用いられるかかる赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0069】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0070】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収剤の好ましい他の例としては、特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0071】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(V)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0072】
【化12】
【0073】
一般式(V)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。
【0074】
【化13】
【0075】
ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0076】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0077】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(V)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0078】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(V)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として、特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素を挙げることができる。
【0079】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0080】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0081】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0082】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0083】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0084】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作成した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像記録層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0085】
〔(B)重合開始剤〕
本発明に用いることができる重合開始剤は、熱、光又はその両方のエネルギーにより、ラジカルを発生させ、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる。このための重合開始剤としては、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤が有用である。このようなラジカル発生剤は前述した赤外線吸収剤と併用することで、赤外線レーザーを照射した際に赤外線吸収剤が発熱し、その熱によりラジカルを発生するものであり、これらの組合せによりヒートモード記録が可能となる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジドなどが挙げられるが、オニウム塩が高感度であり、好ましい。以下に、本発明においてラジカル重合開始剤として好適に用い得るオニウム塩について説明する。好ましいオニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。本発明において特に好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(VI)〜(VIII)で表されるオニウム塩である。
【0086】
【化14】
【0087】
式(VI)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0088】
式(VII)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21−はZ11−と同義の対イオンを表す。
【0089】
式(VIII)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31−はZ11−と同義の対イオンを表す。
【0090】
本発明において、ラジカル発生剤として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号、特開2001−343742号、特開2002−148790号の公報に記載されたもの等を挙げることができる。以下に、本発明において、好適に用いることのできる一般式(VI)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−10])、一般式(VII)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−5])、及び一般式(VIII)で示されるオニウム塩([OS−1]〜[OS−10])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化15】
【0092】
【化16】
【0093】
【化17】
【0094】
【化18】
【0095】
【化19】
【0096】
本発明において用いられるラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。より好ましくは、極大吸収波長が360nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0097】
これらの重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらの重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0098】
〔(C)重合性化合物〕
本発明に用いる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0099】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0100】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0101】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0102】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0103】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0104】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(IX)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0105】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (IX)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
【0106】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0107】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0108】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0109】
重合性化合物は、画像記録層中に、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0110】
本発明においては、上記の重合性化合物を画像記録層に含有させる方法として、重合性化合物を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散状に含有させる方法の他に、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、重合性化合物をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させる方法を用いることもできる。また、マイクロカプセルに内包させる方法とマイクロカプセル外に分子分散状に含有させる方法とを併用してもよい。
【0111】
上記の重合性化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、後述のバインダーポリマーに導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入しても良い。
【0113】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0114】
〔バインダーポリマー〕
本発明の画像記録層には、画像記録層の皮膜特性や機上現像性の向上のため、バインダーポリマーを含有させることができる。
かかるバインダーポリマーとしては、長鎖アルキル基含有ポリマーが画像記録層表面に微小突起を形成するのを妨げない範囲で、従来公知のものを制限なく使用できる。バインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
なかでも、皮膜性を有する線状有機ポリマーであって、長鎖アルキル基含有ポリマーと相溶性が良くないポリマーで、長鎖アルキル基含有ポリマーが相分離して微小突起を形成できるものが好ましい。
【0115】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0116】
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。
【0117】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又はCONHRのR)の少なくとも一部がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0118】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 )n CR1 =CR2 R3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n −O−CO−CR1 =CR2 R3 及び(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 又はR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0119】
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 H5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 H5 、−CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、−CH2CH2OCOCH=CH2、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 及びCH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0120】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0121】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0122】
また、画像記録層未露光部の機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキ及び/又湿し水に対する溶解性又は分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
【0123】
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
【0124】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60質量%以上、好ましくは80質量%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0125】
バインダーポリマーは、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0126】
上記バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
かかるバインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。側鎖に架橋性基を有するバインダーポリマーは、ラジカル重合又は高分子反応によって容易に合成できる。
【0127】
バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、1〜90質量%であるのが好ましく、5〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0128】
〔その他の添加剤〕
本発明の画像記録層には、上記の成分以外の添加剤、例えば、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物等を含有させることができる。かかる添加剤は、画像記録層に分子分散状に添加することもできるが、必要に応じて前記重合性化合物と共にマイクロカプセルに内包することもできる。
【0129】
<界面活性剤>
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、及び、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0131】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0132】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0133】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0134】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0135】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%含有させることが好ましく、0.01〜5質量%含有させることがより好ましい。
【0136】
<着色剤>
本発明の画像記録層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録層の全固形分に対して、0.01〜10質量%の割合が好ましい。
【0137】
<焼き出し剤>
本発明の画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0138】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0139】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0140】
酸又はラジカルによって変色する染料は、画像記録層の全固形分に対して、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましい。
【0141】
<熱重合防止剤>
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中又は保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%含有させるのが好ましい。
【0142】
<高級脂肪酸誘導体等>
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0143】
<可塑剤>
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下の割合で含有させることが好ましい。
【0144】
<無機微粒子>
本発明の画像記録層は、表面粗面化による界面接着性の強化、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0145】
<低分子親水性化合物>
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が上げられる。
【0146】
〔画像記録層の形成〕
本発明の画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0147】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0148】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0149】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0150】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0151】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0152】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0153】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0154】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2 であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0155】
陽極酸化処理を施した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸せき処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0156】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0157】
〔バックコート〕
支持体に表面処理を施した後又は下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 )4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3 H7 )4 、Si(OC4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0158】
(下塗り層)
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。下塗り層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザーによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、エチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2 であるのが好ましく、3〜30mg/m2 であるのがより好ましい。
【0159】
〔平版印刷方法〕
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
【0160】
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく印刷インキと水性成分(湿し水)とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
【0161】
平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分及び/又は油性インキによって、未硬化の画像記録層が溶解し又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分及び油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【0162】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0163】
<支持体の作製>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。ついで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRa を0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
【0164】
まず、アルミニウム板の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施し、その後、30質量%硝酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和及びスマット除去処理を施した。
ついで、画像記録層と支持体との密着性を良好にし、かつ、非画像部に保水性を与えるため、粗面化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、硝酸1質量%及び硝酸アルミニウム0.5質量%を含有する水溶液(液温45℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度20A/dm2 、duty比1:1の交番波形で、アルミニウム板が陽極時の電気量が240C/dm2 となるように電解して、電気化学的粗面化処理を施した。
更に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で30秒間、エッチング処理を施し、その後、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和及びスマット除去処理を施した。
【0165】
その後、耐摩耗性、耐薬品性及び保水性を向上させるために、陽極酸化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、20質量%硫酸水溶液(液温35℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度14A/dm2 の直流で電解して、2.5g/m2 の陽極酸化皮膜を作製した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で15秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2 であった。その後、水洗して、支持体を得た。得られた支持体の中心線平均粗さRa は0.25μmであった。
【0166】
<平版印刷版原版の作製>
〔実施例1〕
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版(1)を得た。
【0167】
画像記録層塗布液(1)
・下記の赤外線吸収剤(1) 0.05g
・重合開始剤(本明細書例示化合物OS−7) 0.2g
・下記のバインダーポリマー(1)(平均分子量8万) 0.3g
・長鎖アルキル基含有ポリマー 0.2g
(本明細書例示化合物(1)、平均分子量6万)
・重合性化合物 1.0g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−315)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.02g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0168】
【化20】
【0169】
【化21】
【0170】
【化22】
【0171】
〔実施例2〜10〕
長鎖アルキルポリマーの種類を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様の方法で乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した平版印刷版原版(2)〜(10)を得た。
【0172】
〔比較例1〕
実施例1の画像記録層塗布液(1)のバインダーポリマー(1)を0.5gとし、長鎖アルキル基含有ポリマー(例示化合物(1))を入れない以外は、実施例1と同様の方法で乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した平版印刷版原版(1’)を得た。
【0173】
<露光及び印刷>
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインクを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測したところ、40枚程度で非画像部の汚れのない印刷物が得られた。
【0174】
<評価>
一般に、ネガ型平版印刷版原版の場合、露光量が少ないと画像記録層の硬化度が低くなり、露光量が多いと硬化度が高くなる。画像記録層の硬化度が低すぎる場合には、平版印刷版の耐刷性が低くなり、また、小点や細線の再現性が不良となる。一方、画像記録層の硬化度が高い場合には、耐刷性が高くなり、また、小点や細線の再現性が良好となる。また、膜に傷がついた場合、非画像部において汚れが生じてしまう。
本実施例では、以下に示すように、上記で得られたネガ型平版印刷版原版を、上述した露光量条件で耐刷性及び細線再現性を評価することにより、平版印刷版原版の感度の指標とした。即ち、耐刷性における印刷枚数が高いほど、また、細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷版原版の感度が高いと言える。一方、耐傷性の評価については平版印刷版原版表面に荷重を変化させながら引っ掻き傷をつけ、非画像部に汚れが観測された時点の荷重の大きさを評価した。
【0175】
(1)細線再現性
上述したように、100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100及び200μmの細線を露光したチャート)を25倍のルーペで観察し、途切れることなくインキで再現された細線幅により、細線再現性を評価した。結果を表1に示す。
【0176】
(2)耐刷性
上述したように、細線再現性の評価において印刷を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表1に示す。
【0177】
(3)耐傷性
上述したように、耐傷性の評価は平版印刷版原版表面に荷重を変化させながら引っ掻き傷をつけ、非画像部に汚れが観測された時点の荷重の大きさを評価した。機器としてはHEIDON社製Scratching TESTER HEIDON−14を用い、引っ掻き針として0.4mmRダイヤ針を用い、針上の荷重を変化させながら、400mm/minの速さで記録層表面を引っ掻いた。引っ掻いた後の原版を、印刷機上で機上現像を行い、機上現像終了後、100枚印刷した後に、非画像部に汚れが観測された荷重の大きさを評価した。荷重が大きいほど、非画像部の汚れが発生しにくく、耐傷性に優れることとなる。結果を表1に示す。
【0178】
(4)記録層表面に存在する微小突起形状の評価
得られた平版印刷版原版記録層の表面を電子顕微鏡で観察したところ、表面全域にわたって均一に微小突起が形成されるのが確認された。次に、電子顕微鏡観察により、微小突起を形成する粒子の粒径を測定し、測定を20個所行ってそれらより平均粒径を得た。平均粒径を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
表1から、本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーを用いた実施例の平版印刷版原版及びその平版印刷版原版を用いた平版印刷方法は、機上現像性、細線再現性及び耐刷性を良好なレベルに保持しつつ、さらに耐傷性が優れていることが分かる。
【0181】
【発明の効果】
本発明によれば、赤外線レーザー走査による画像記録が可能で、機上現像性、細線再現性及び耐刷性を良好に保持しつつ、耐傷性の優れた平版印刷版原版及び平版印刷版の印刷方法を提供できる。
Claims (2)
- 支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能であり、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版。
- 支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)長鎖アルキル基含有ポリマーを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、又は、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に、印刷インキと湿し水とを供給して、該画像記録層の赤外線レーザー未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
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