JP3781179B2 - 物品取付具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁面構成部材の表面に手摺り等の物品を取付けるための物品取付具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
壁面構成部材の表面に手摺り等の物品を取付ける場合、壁面構成部材が例えば石膏ボードのように脆いものであると、壁面構成部材取付の表面側(物品が位置される側の面)から取付ねじ等によって物品の取付を行ったのでは、物品からの大きな荷重を支承することが不可能となり、採用できないものとなる。このため、壁面構成部材に開口部を形成して、アンカ片をこの開口部より挿通させて壁面構成部材の裏面側に配置して、壁面構成部材の裏面側に密着された状態のアンカ片によって物品からの荷重を支承させることが行われる。
【0003】
従来、開口部に挿通されるアンカ片を利用した物品取付具としては種々のものが提案されているが、壁面構成部材の表面側に配設される取付部材とアンカ片とを、壁面構成部材の開口部を挿通される取付ボルトを介して連結することにより、アンカ片と取付部材とで壁面構成部材を挟持するようにしたものがある。そして、
取付ボルトを有するものの中には、アンカ片にあらかじめ取付ボルトの一端部が連結されて、取付ボルトの基端部を把持しつつアンカ片が壁面構成部材の開口部よりその裏面側へと挿通させる作業を行うようにしたものもある(特開2000−145089号公報参照)。
【0004】
また、特開2001−32492号公報には、アンカ片のうち壁面構成部材の裏面側に当接される所定面に両面接着テープをあらかじめ貼り付けて、ボルトによる固定を行う前に、上記両面接着テープによってアンカ片を壁面構成部材の裏面にあらかじめ仮固定することも提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アンカ片による物品からの荷重の支承は、もっぱらアンカ片が壁面構成部材の裏面側に圧接されることに受け持たれるようになっている。例えば、アンカ片を壁面構成部材の開口部から上方へ伸びるように配置した場合、壁面構成部材の表面側に配置されて取付ボルトに連結される物品としての例えば手摺りに対して下方への荷重が作用したときは、アンカ片が壁面構成部材の裏面側に圧接されることになり、荷重支承が効果的に行われることになる。この一方、アンカ片が上記のように開口部から上方へ伸びた状態において、手摺りに上方への荷重が作用した場合は、開口部から上方へ伸びるアンカ片には壁面構成部材の裏面側から剥離されるような力を受けるので、この下方への荷重支承を効果的に行うことができないものとなる。
【0006】
このような問題を解消するために、物品に作用する荷重の作用方向というものをあらかじめ想定して、物品への荷重作用方向とは反対方向にアンカ片が伸びるように位置設定される。また、アンカ片を壁面構成部材の開口部を境にして例えば上下の両方向に伸びるように設定して、物品に対して作用する上方向および下方向の両方の荷重をに対しても対応できるようにすることも行われている。
【0007】
以上のような事情をも勘案しつつ、本出願人は、荷重を広い方向で支承できること、アンカ片をあらかじめ所望位置でもって壁面構成部材の裏面側に仮固定できること、アンカ片に対して壁面構成部材から剥離する方向への荷重をも支承できること、という観点から、次のような物品取付具を開発した。
【0008】
すなわち、壁面構成部材に形成された開口部を通してその裏面側に挿通されるアンカ片として、第1アンカ片と第2アンカ片とを用い、第1アンカ片を取付ボルトの一端部に当該取付ボルトと一体回転するように取付ける一方、第2アンカ片を第1アンカ片よりも取付ボルトの基端部側において当該取付ボルトに螺合させることなく回転自在に嵌合させる形式のものとしてある。そして、第1アンカ片と第2アンカ片とのうち、壁面構成部材の裏面側に当接される所定面にはそれぞれ接着材を設けるようにしてある。
【0009】
上記の物品取付具によれば、第1アンカ片と第2アンカ片とを互いに取付ボルトの軸方向に重ねた状態で、壁面構成部材の開口部を通してその裏面側に挿通される。取付ボルトを壁面構成部材の開口部の長さ方向(壁面構成部材の厚さ方向)に伸びるようにすることによって、第2アンカ片は重力によって下方に伸びる姿勢とされ、第1アンカ片を取付ボルトの基端部を回動させることにより上方へ伸びる姿勢とすることにより、上下方向に長く伸びるアンカ片構造となる。そして、取付ボルトを手前側(壁面構成部材の表面側)に引張することにより、各アンカ片のうち接着材が設けられている所定面が壁面構成部材の裏面側に押しつけられて、各アンカ片が壁面構成部材の裏面に仮固定されることになる。
【0010】
接着材を利用した上記仮固定の状態で、壁面構成部材の表面側から取付ボルトに螺合される取付部材を締め付けることにより、各アンカ片と取付部材とによって壁面構成部材が挟持されることになる。
【0011】
しかしながら、本出願人が開発した上述の構造の物品取付具にあっては、第1アンカ片と第2アンカ片とを重ねた状態で壁面構成部材の開口部を挿通させるとき、第1アンカ片に設けられた接着材が第2アンカ片に付着してしまう事態を生じ易く、このことは各アンカ片を壁面構成部材の裏面側において所望方向へ展開させる上で問題となる。
【0012】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、取付ボルトに設けた第1アンカ片と第2アンカ片とのうち壁面構成部材の裏面側に当接される所定面にそれぞれ接着材を設けた物品取付具であることを前提として、第1アンカ片と第2アンカ片とを重ねたときに第1アンカ片の接着材が第2アンカ片に不用意に付着してしまう事態を確実に防止できるようにした物品取付具を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
壁面構成部材に形成された開口部より挿通されて該壁面構成部材の裏面側に配置されるアンカ片と該壁面構成部材の表面側に配設される取付部材とを、該開口部を挿通される取付ボルトを介して連結することにより、該アンカ片と該取付部材とで該壁面構成部材を挟持するようにした物品取付具であって、
前記アンカ片として、第1アンカ片と第2アンカ片とが設けられ、
前記第1アンカ片の基端部に前記取付ボルトの一端部が一体回転するように連結され、
前記第2アンカ片の基端部が、前記第1アンカ片よりも前記取付ボルトの基端部側において、該取付ボルトに対して螺合されることなく回転自在に嵌合されており、
前記第1アンカ片と第2アンカ片のうち前記壁面構成部材の裏面側に当接される所定面には、それぞれ接着材が設けられ、
前記第2アンカ片のうち前記所定面とは反対側の面には、前記第1アンカ片と第2アンカ片とを前記取付ボルトの軸方向において重合させたときに、該第1アンカ片との間に所定間隙を形成して該第1アンカ片に設けられた接着材が該第2アンカ片の前記反対側の面に付着するのを防止する突起部が形成され、
前記第1アンカ片に設けられた接着材と前記第2アンカ片に設けられた前記突起部との位置関係が、前記取付ボルトを中心にして該第1アンカ片と第2アンカ片とを相対回転させたときに、該第1アンカ片の接着材と該突起部とが干渉しないように設定されている、
ようにしてある。
【0014】
上記解決手法によれば、第2アンカ片をその自重を利用して例えば下方へ伸びる姿勢とする一方、第1アンカ片を取付ボルトの回転操作を利用して例えば上方へ伸びる姿勢として、2つのアンカ片の伸び方向を大きく相違させて、より広い方向の荷重をしっかりとを支承させることができる。また、取付完了後は、アンカ片は、壁面構成部材の裏面側に圧接されるような荷重に対してのみならず、剥離されるような荷重、さらには壁面構成部材の裏面を摺動するような方向の荷重をも支承することができ、広い方向の荷重を支承することができるする上で好ましいものとなる。さらに、各アンカ片を所望方向へ伸びる姿勢状態で、接着材を利用して壁面構成部材の裏面に仮固定させておくことにより、その後の取付作業が容易となる。以上に加えて、各アンカ片を重合させて壁面構成部材の開口部を挿通させるときでも、接着材によってアンカ片同士が付着しないので、壁面構成部材の裏面側に挿通された後に各アンカ片を所望方向へ容易に展開させることが可能となる。
【0015】
前記解決手法を前提として、次のような種々の解決手法をさらに採択することができる。すなわち、前記開口部に、該開口部にほぼがたつきなく挿通されると共に前記取付ボルトが挿通される挿通孔を有し、しかも前記壁面構成部材の厚さとほぼ同一の厚さとされたスペーサが介在される、ようにすることができる。この場合、スペーサを開口部に嵌合させた状態で、取付ボルトの軸心が開口部のほぼ中心に自動的に位置合わせされることになる。
【0016】
上記スペーサが、その周方向一部に前記挿通孔に連なる切欠部を有して、該切欠部を通して、該スペーサが前記取付ボルトに対して径方向から嵌合可能とされている、ようにすることができる。この場合、スペーサは、取付ボルトの軸心方向からのみならず、径方向からも取付ボルトに取付可能となり、スペーサの取付ボルトへの取付作業を容易化する上で好ましいものとなる。
【0017】
前記第1アンカ片の基端部に、前記取付ボルトが螺合されるねじ部が形成され、
前記第1アンカ片と取付ボルトとが、該第1アンカ片のねじ部に該取付ボルトを螺合させた状態で、所定以上のトルクを受けたときに破断されるように仮固定されている、ようにすることができる。この場合、各アンカ片と取付部材とで壁面構成部材を挟持した状態で、取付ボルトを強制回転させて取付ボルトと第1アンカ片との仮固定を解除することにより、取付ボルトを壁面構成部材の裏面側に向けて進行させることができる。
【0018】
このことは、取付ボルトを長くして、つまり各アンカ片が壁面構成部材の裏面側に位置された状態で取付ボルトが壁面構成部材の表面側に十分長く伸びるように設定可能として、アンカ片を壁面構成部材の開口部より挿通させる作業や、挿通後に各アンカ片を所望方向に展開させる作業や、展開後に各アンカ片を壁面構成部材Hの裏面に向けて引張する作業等を容易に行うことができる。そして、各アンカ片と取付部材とで壁面構成部材を挟持した状態で、取付ボルトを回転操作することにより、第1アンカ片との間での仮固定を解除しつつ壁面構成部材の裏面側に奥深く進行させて、取付ボルトが壁面構成部材の表面側に長く突出したままとなってしまう事態を防止することができる。
【0019】
前記取付ボルトの基端部に、該取付ボルトの基端面に開口されると共に回転工具が相対回転不能に係合される係合孔が形成されている、ようにすることができる。この場合、例えば六角レンチ等の一般的な回転工具を取付ボルトの係合孔に係合させて回転させることにより、第1アンカ片と取付ボルトとの仮固定解除のための所定トルクの付与や、取付ボルトを壁面構成部材の裏面側に奥深く進行させるための回転作業を行うことができる。
【0020】
前記接着材が両面接着テープとされていて、該両面接着テープの一面側の接着面が前記所定面にあらかじめ接着されており、該両面接着テープの他面側の接着面が前記壁面構成部材の裏面側に接着される、ようにすることができる。この場合は、取り扱いの容易な両面接着テープを利用した接着を行うことができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、広い方向の荷重を支承することができる。また、接着材の接着力を利用して、アンカ片の壁面構成部材からの剥離方向への荷重をも支承することができる。さらに、各アンカ片を所望展開姿勢で壁面構成部材へ仮固定することができ、その後の取付作業を容易化することができる。さらに、各アンカ片を壁面構成部材の開口部を挿通させるときに、アンカ片同士が接着材によって付着してしまう事態を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態を示す図1〜図9において、物品取付具Mは、第1アンカ片1と、第2アンカ片2と、取付ボルト3と、取付部材4とを有する(取付部材4については取付作業の説明のときに説明することとし、図1〜図4では図示略)。各アンカ片1、2と取付部材4とで、後述するように壁面構成部材Hを挟持するものである。
【0023】
各アンカ片1と2は、それぞれ数mm厚の剛性に優れた金属材料(例えば鋼板)や合成樹脂(繊維強化された合成樹脂を含む−以下同じ)によって、全体的に細長くかつ湾曲された形状とされている。すなわち、各アンカ片1、2は、全体的に一方向に湾曲された形状とされ、特にその先端部側においては曲がりの度合いが強くなっていて、横方向に大きく曲げられている。そして、取付ボルト3を中心として両アンカ片1と2とを相対回転させて互いに重ね合わせたとき、幅方向においては互いにはみ出ないように整合されるように形状設定されている(ほぼ合同形状に設定)。
【0024】
第1アンカ片1の基端部1eには、例えば図3、図5に示すようにねじ孔1aが形成され、このねじ孔1aに取付ボルト3の先端部3fが螺合されている。そして、取付ボルト3の先端部3fに第1アンカ片1が螺合された状態において、取付ボルト3と第1アンカ片1とが仮固定されている。この仮固定は、第1アンカ片1と取付ボルト3とが一体回転するように、かつ所定以上の相対トルクが作用したときには固定解除されるように設定されている。このような仮固定を行うには、例えば、かしめや部分溶接等によって得ることができる。
【0025】
第2アンカ片2は、取付ボルト3に対して、第1アンカ片1よりも取付ボルト3の基端部3e側において、第2アンカ片2の基端部2e(に形成された取付孔2a)が回転自在に嵌合されている。すなわち、第2アンカ片2は、取付ボルト3に対しては螺合されることなく自由に回転自在とされて、第1アンカ片1と取付ボルト3とに対してそれぞれ相対回転可能とされている。
【0026】
各アンカ片1、2は、図5、図6に示すように、壁面構成部材Hに形成された開口部11を通して壁面構成部材Hの裏面側に配設されるものであり、取付ボルト3を介して連結されたアンカ片1、2と後述する取付部材4とで壁面構成部材Hを挟持して、アンカ片1、2の壁面構成部材Hへの取付完了状態となる。なお、この取付作業の点については後述する。
【0027】
本実施形態では、スペーサ7が用いられる、このスペーサ7は、例えば合成樹脂により形成されて、壁面構成部材Hの厚さの相違つまり開口部11の長さの相違に対応するもので、第2アンカ片2よりも取付ボルト3の基端部3e側において、当該取付ボルト3に取付けられる。すなわち、スペーサ7は、壁面構成部材Hの厚さに対応した厚さとされ、その外径は開口部11の内径とほぼ同径とされて当該開口部11に嵌合される。スペーサ7は、その中心部に、取付ボルト3が挿通される挿通孔7aを有するが、取付ボルト3に対して取付、取外しを容易に行えるように、周方向に切欠部7bが形成されて、この切欠部7bを利用して取付ボルト3からの取外し、取付けが行われる。
【0028】
なお、切欠部7bの開口幅は取付ボルト3の直径よりも幾分小さくされて、取付け、取外しの際は、弾性変形を利用して切欠部7bの開口幅を広げることにより行われる。また、同形状で厚さの異なるスペーサを追加していくことで、壁面構成部材Hの厚さが異なる場合に適応させてもよい。
【0029】
取付ボルト3の基端部3eには、特に図8に示すように、その基端面に開口するようにして、六角レンチ等の回転工具が係合可能な係合孔3dが形成されている。なお、係合孔3dの断面形状は、回転工具が相対回転不能に係合される異形状であれば、四角形等適宜の形状を採択し得るものである。
【0030】
各アンカ片1、2のうち、壁面構成部材Hの裏面側に臨む側となる所定面1g、2gには、あらかじめ両面接着テープ9あるいは10が貼り付けられている(特に図1参照)。各両面接着テープ9、10は、回転抵抗力付与手段および剥離防止手段となるもので、施工前の状態では、両面接着テープ9、10の一方の接着面がアンカ片1、2の所定面1g、2g(壁面構成部材Hの裏面側を向くことなる面)にあらかじめ接着されており、他方の接着面は剥離紙によって覆われている。そして、施工直前に剥離紙がはがされて、他方の接着面が露出される。
【0031】
図1に示すように、第1アンカ片1の所定面1gに接着された両面接着テープ9は、その長手方向略中間部のみに位置するように小さい面積とされている。これに対して、第2アンカ片2の所定面2gに接着された両面接着テープ10は、その長手方向略中間部から先端付近にまで伸びる大きな面積を有するようにされている。
【0032】
第2アンカ片2のうち、両面接着テープ10が接着された所定面2gとは反対側の面には、複数の突起部2bが形成されている。より具体的には、突起部2bは合計4個形成されて、各アンカ片1と2とを重合させたときに、第1アンカ片1の両面接着テープ9を跨いで、2つの突起部2bが取付ボルト3に近い側に位置され、残りの2つの突起部2bが取付ボルト3よりも遠い側に位置されている。なお、突起部2bは、実施形態では、金属板からなる第2アンカ片2をプレス成形するときに合わせて成形されている。
【0033】
各突起部2bの突出高さは同一で、第1アンカ片1に接着された両面接着テープ9の厚さよりも幾分高くなるように形成されている。すなわち、各アンカ片1と2とを取付ボルト3の軸方向に重合させたときに、両アンカ片1と2との間に両面接着テープ9の厚さよりも大きい所定間隙が形成され、この所定間隙内に第1アンカ片1の両面接着テープ9が位置される。すなわち、各突起部2bに囲まれた空間(凹部とみることもできる)に、第1アンカ片1の両面接着テープ9が位置されることになる。
【0034】
各突起部2bは、第1アンカ片1と第2アンカ片2とを取付ボルト3を中心として相対回転させたときに、各突起部2bと第1アンカ片1の両面接着テープ9とが相互に干渉しないように位置設定されている。換言すれば、取付ボルト3を中心とした突起部2bの移動軌跡(回動軌跡)が、両面接着テープ9の移動軌跡(回動軌跡)とずれた位置関係となるように設定されている。すなわち、図4には、一点鎖線でもって、第1アンカ片1を取付ボルト3を中心にして回動させたときに、その両面接着テープ9の移動軌跡(回動軌跡)が示されるが、この移動軌跡範囲内に、突起部2bの移動軌跡が位置しないように設定されている。
【0035】
次に、図5〜図9を参照しつつ、物品取付具Mの壁面構成部材Hに対する取付手法について説明するが、その取付前の準備として、両面接着テープ9、10の剥離紙がはがされる。
【0036】
上述の事前準備が完了した後、まず、図5に示すように、2つのアンカ片1、2を互いに重なるようにした状態として、アンカ片1、2をその先端部側から開口部11内に挿入させる。両アンカ片1と2とを重ね合わせたとき、突起部2bによって、第1アンカ片1の両面接着テープ9が第2アンカ片2に接触しないようにされる。
【0037】
図5の状態から、2つのアンカ片1、2をねじり込むようにしてさらに開口部11内に深く挿入していく。この挿入の際、アンカ片1、2の湾曲形状設定によって、アンカ片が直線の場合に比して、壁面構成部材Hの裏面側に小さな間隔しかなくても挿入が可能である。このようにして2つのアンカ片1、2の開口部11内への挿通が進んで、やがてアンカ片1、2は、図6に示すように、完全に開口部11を通り抜けることになる。
【0038】
この後、スペーサ7を、その切欠部7bを利用して、取付ボルト3に対してその径方向から嵌合させる。そして、取付ボルト3がスペーサ7の挿通孔7aを挿通した状態で、スペーサ7を開口部11に嵌合させる(図7、図8参照)。スペーサ7が開口部11に嵌合された状態では、開口部11の中心と取付ボルト3の軸心とがほぼ一致した状態となる。ここまでは、各アンカ片1、2が、壁面構成部材Hの裏面から若干離れた状態でもって行われて、両面接着テープ9、10が壁面構成部材Hの裏面側に接触しないように行われる。
【0039】
スペーサ7を開口部11に嵌合させた状態からは、第2アンカ片2は自重でもって、下方へ伸びる展開姿勢となる。取付ボルト3の基端部を壁面構成部材Hの表面側から回転操作して、第1アンカ片1を上方へ向けて伸びる展開姿勢とする。そして、取付ボルト3を手前側つまり壁面構成部材Hの表面側にほぼまっすぐ引っ張ることにより、各アンカ片1、2を壁面構成部材Hの裏面に当接させるような力を与える。これにより、第1アンカ片1はその両面接着テープ9によって壁面構成部材Hの裏面に仮固定され、同様に第2アンカ片2はその両面接着テープ10により壁面構成部材Hの裏面に仮固定される(図8参照)。この仮固定後は、取付ボルト3から手を離しても、アンカ片1、2が壁面構成部材Hの裏面側に不用意に落下してしまう事態が防止される。
【0040】
この後、取付ボルト3の基端部3eに、開口部11のより大径のフランジ状の連結部材21、ワッシャ22を嵌合させた後、取付ボルト3に螺合したロックナット23を締め付けて、連結部材21を壁面構成部材Hの表面に圧接させる。上記連結部材21とロックナット23とが、実質的に取付部材4を構成する。各アンカ片1、2と取付部材4とによって壁面構成部材Hがしっかりと挟持される。なお、上記連結部材21の外周面には、後述する物品取付のために雄ねじ部21aが形成されている。
【0041】
次に、取付ボルト3の基端部3eに形成された係合孔3dに回転工具をあてがって、取付ボルト3に対して第1アンカ片1に対して螺合が進む状態への回転力を与える。これにより、第1アンカ片1と取付ボルト3との仮固定が解除され、さらなる取付ボルト3への回転力付与によって、取付ボルト3は壁面構成部材Hの裏面側へと奥深く進行して、壁面構成部材Hの表面側への突出長さが小さくされる(図9参照)。
【0042】
以上の取付完了状態において、アンカ片1、2は、壁面構成部材Hの裏面側に圧接されるような方向の荷重は勿論のこと、剥離される方向の荷重、さらには壁面構成部材Hの裏面に沿って摺動(回転方向)される方向の荷重をも支承することができ、広い方向に渡っての荷重支承能力が大きなものとなる。ちなみに、図9の取付完了状態において、図示を略す物品からの荷重が下方向のときは、上方に向けて伸びる第1アンカ片1が壁面構成部材Hの裏面側に圧接される方向の力を受けて荷重支承が十分に行われ、これに加えて、下方に向けて伸びる第2アンカ片2は壁面構成部材Hの裏面側から剥離される方向の力を受けるが、第2アンカ片2は両面接着テープ9の接着作用によって剥離することが規制されるので、この分荷重支承能力が従来よりも大きくなる(このため両面接着テープ10を、その面積を大としかつ第2アンカ片2の少なくとも先端部に位置するように設定してある)。
【0043】
次に、図9を参照しつつ、物品としての手摺り35を固定する一例について説明する。手摺り35は、その端部にフランジ部35aを有し、このフランジ部35aに抜け止めされた状態で固定具36が手摺り35の端部に回転自在に嵌合されている。固定具36は、キャップ状に形成されて、その内面に雌ねじ部36aが形成されており、この雌ねじ部36aが、連結部材21の外周に形成された雄ねじ部21aに螺合される。なお、手摺り35のうち少なくともフランジ部35a側の端部は筒状とされて、固定具36を連結部材21に奥深く螺合させたときに、ロックナット23が手摺り35内に挿入状態とされる。
【0044】
図10は本発明の別の実施形態を示すもので、第2アンカ片2に形成された突起部の別の形成手法を示す。すなわち、第2アンカ片2のうち、第1アンカ片1に対向する側の面には、第2アンカ片1の両面接着テープ9に対応させて、凹部31が形成されており、この凹部31の周囲が、突起部2bとして機能されるようになっている。換言すれば、突起部2bは、全体的に、凹部31の周囲に位置された大きな面積を有する平坦面として構成されている。本実施形態の場合、第2アンカ片2を鋳造や射出成形する場合に好ましいものであり、凹部31は第第2アンカ片2の成形時に形成することができる。
【0045】
以上実施形態について説明したが、物品としては、手摺りに限らず、照明器具等の各種電気製品等、壁面構成部材Hへの取付を行うことが要求される種々のものとすることができる。また、第1アンカ片1と取付ボルト3との仮固定を行わないようにすることもできる(常時一体回転)。また、第1アンカ片1、第2アンカ片2の形状は、開口部11を挿通可能な適宜の形状を選択できる。さらに、両面接着テープ9、10に代えて、接着剤、特に速乾性の2液硬化型の接着剤を用いることもできる。
【0046】
取付ボルト3を利用した物品の固定手法は、実施形態に示すような連結部材21を利用する場合に限らず、例えば、ブラケットやハンガーのような物品をその背面部を保持部として直接取付ボルト3に固定する等、適宜の手法を選択できるものである。取付部材4としては、種々の形式のものを採択することができ、例えば複数の部材に分割した形式でなく、例えば連結部材21を取付ボルト3に螺合される形式として、1つの部材のみによって構成することもできる。また、取付部材4として、スペーサ7の機能をも合わせ持つ構成とすることもでき、例えばスペーサ7に相当する円筒部材を取付ボルト3に螺合されるねじ孔を有する構造にすると共に、開口部11の周縁部(壁面構成部材Hの表面側の周縁部)に当接される薄いフランジ部を有する構造として、このフランジ部が開口部11の周縁部に圧接されるように取付ボルト3に螺合させることによって、フランジ部とアンカ片1、2とで壁面構成部材Hを挟持する構造とすることができる。本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供すること、および本発明の主要構成要素となる部品の提供をも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、2つのアンカ片を両面接着テープを有する所定面側から見た斜視図。
【図2】図1の反対側の面から見た斜視図。
【図3】2つのアンカ片を重合させた状態を示す側面図。
【図4】図3の右側面図。
【図5】2つのアンカ片を壁面構成部材の開口部に挿入している状態を示す要部断面斜視図。
【図6】図5の状態から2つのアンカ片を壁面構成部材の裏面側に位置させた状態を示す一部断面斜視図。
【図7】図6の状態から、2つのアンカ片を上下方向に離れる方向に伸ばして展開して、両面接着テープによって壁面構成部材の裏面に接着した状態を示す一部断面斜視図。
【図8】図7の状態での側面断面図。
【図9】図7の状態から取付ボルトを壁面構成部材の裏面側に深く進入させた状態を示すと共に、物品としての手摺りの取付手法を示す側面断面図。
【図10】本発明の別の実施形態を示すもので、図1に対応した斜視図。
【符号の説明】
1:第1アンカ片
1a:ねじ孔
1e:基端部
1g:所定面
2:第2アンカ片
2a:取付孔
2b:突起部
2e:基端部
2g:所定面
3:取付ボルト
3e:基端部
3f:先端部
3d:係合孔
4:取付部材
9:両面接着テープ
10:両面接着テープ
11:開口部
21:連結部材(取付部材)
21b:雄ねじ部
23:ロックナット(取付部材)
31:凹部(突起部形成用)
35:手摺り(物品)
M:物品取付具
H:壁面構成部材
Claims (5)
- 壁面構成部材に形成された開口部より挿通されて該壁面構成部材の裏面側に配置されるアンカ片と該壁面構成部材の表面側に配設される取付部材とを、該開口部を挿通される取付ボルトを介して連結することにより、該アンカ片と該取付部材とで該壁面構成部材を挟持するようにした物品取付具であって、
前記アンカ片として、第1アンカ片と第2アンカ片とが設けられ、
前記第1アンカ片の基端部に前記取付ボルトの一端部が一体回転するように連結され、
前記第2アンカ片の基端部が、前記第1アンカ片よりも前記取付ボルトの基端部側において、該取付ボルトに対して螺合されることなく回転自在に嵌合されており、
前記第1アンカ片と第2アンカ片のうち前記壁面構成部材の裏面側に当接される所定面には、それぞれ接着材が設けられ、
前記第2アンカ片のうち前記所定面とは反対側の面には、前記第1アンカ片と第2アンカ片とを前記取付ボルトの軸方向において重合させたときに、該第1アンカ片との間に所定間隙を形成して該第1アンカ片に設けられた接着材が該第2アンカ片の前記反対側の面に付着するのを防止する突起部が形成され、
前記第1アンカ片に設けられた接着材と前記第2アンカ片に設けられた前記突起部との位置関係が、前記取付ボルトを中心にして該第1アンカ片と第2アンカ片とを相対回転させたときに、該第1アンカ片の接着材と該突起部とが干渉しないように設定されている、
ことを特徴とする物品取付具。 - 請求項1において、
前記開口部に、該開口部にほぼ同径に嵌合されると共に前記取付ボルトが挿通される挿通孔を有し、しかも前記壁面構成部材の厚さとほぼ同一の厚さとされたスペーサが介在される、ことを特徴とする物品取付具。 - 請求項2において、
前記スペーサが、その周方向一部に前記挿通孔に連なる切欠部を有して、該切欠部を通して、該スペーサが前記取付ボルトに対して径方向から嵌合可能とされている、ことを特徴とする物品取付具。 - 請求項1において、
前記第1アンカ片の基端部に、前記取付ボルトが螺合されるねじ部が形成され、
前記第1アンカ片と取付ボルトとが、該第1アンカ片のねじ部に該取付ボルトを螺合させた状態で、所定以上のトルクを受けたときに破断されるように仮固定されている、ことを特徴とする物品取付具。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記接着材が両面接着テープとされていて、該両面接着テープの一面側の接着面が前記所定面にあらかじめ接着されており、該両面接着テープの他面側の接着面が前記壁面構成部材の裏面側に接着される、ことを特徴とする物品取付具。
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