JP3780567B2 - ラクチド製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸オリゴマーを解重合して乳酸の環状二量体であるラクチドを製造するための触媒を用いるラクチドの製造方法に関し、より詳しくは、高光学純度のラクチドを高化学収率で製造することのできるラクチド化触媒を用いるラクチド製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸は、従来のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル等のプラスチックに対して、環境負荷の少ない生分解性プラスチックとして、医用分野、農業分野、食品包装分野、その他産業上広範囲に利用されることが期待される。すなわち、ポリ乳酸は、自然環境中で加水分解及び微生物による分解を受け、最終的には二酸化炭素と水にまで分解する。また、焼却を行なっても、燃焼カロリーが小さいため焼却炉を傷めることもなく、有害ガスの発生もない。このため、従来のプラスチックにおける廃棄物処理の問題が非常に軽減される。また、ポリ乳酸は、再生可能な植物資源から得られる乳酸を原料とするので、従来のプラスチックが石油原料から合成されているのに比べ、資源の面からも将来的に有望である。更に、他の生分解性ポリマーに比べて透明性が高いことが、ポリ乳酸の特徴となっている。
【0003】
ポリ乳酸は、乳酸モノマーを直接脱水縮合することによって、あるいは乳酸から一旦、乳酸の二量体である環状ラクチドを合成し、ラクチドを開環重合することによって得ることができる。
【0004】
従来より、ラクチド製造法としては、乳酸を減圧下で加熱して乳酸オリゴマー(又はポリ乳酸)とし、次いで乳酸オリゴマー(又はポリ乳酸)を触媒存在下、減圧下で加熱して解重合することによってラクチドに変換する方法がある。このラクチド製造法には多くの研究例が知られている。例えば、ドイツ特許第1083275号明細書には、周期律表VI族、V族、VIII族の金属又はその塩、例えば酸化鉛、酸化スズ、酸化アンチモンの存在下、ポリ乳酸からラクチドを製造する方法が記載されている。ドイツ特許第3708915号明細書には、スズ及びその化合物を触媒とする方法が記載されている。また、ドイツ特許第1234703号明細書にはチタンテトラアルコキシド触媒が、ドイツ特許第250413号明細書には酸化亜鉛触媒がそれぞれ使用されている。しかしながら、上記記載の方法はいずれも、触媒が不均一触媒であるため、ラクチドの化学収率が満足できるものではない。
【0005】
一方、有機スズ化合物はエステルに可溶であるため、高粘度ポリエステル化合物に対する均一触媒として有効である。例えば、特開昭63−101378号公報では、金属スズ(II)、ハロゲン化スズ(II)及びカルボン酸から誘導される有機スズ化合物存在下、乳酸又はポリ乳酸からラクチドを製造する方法が記載されている。ところが、二価スズの酸化によると思われる触媒失活のため化学収率はそれほど高くない(65〜70%)。
【0006】
さらに、解重合反応用の有機スズ触媒として、トリフルオロメタンスルホン酸(特開平5−105745号公報)、ジブチルスズ(特開平6−31175号公報)等の触媒が用いられている。しかしながら、トリフルオロメタンスルホン酸触媒は、高化学収率を与えるが、例えば170〜250℃程度の高い反応温度を必要とするため、得られるラクチドの光学純度は低いという問題があった。すなわち、乳酸オリゴマーの解重合時の高温によって、不斉炭素原子の反転が起こりラクチドの光学純度が低下するものと考えられる。また、ジブチルスズ触媒は化学収率がそれ程高くない(反応温度160℃で50〜60%程度)という問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、乳酸オリゴマーを比較的低温で解重合して高光学純度のラクチドを高化学収率で製造することのできるラクチド化触媒を用いるラクチド製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は鋭意検討した結果、特定構造のスズ化合物が乳酸オリゴマーの解重合触媒として優れていることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のラクチド製造方法で用いる乳酸オリゴマーのラクチド化触媒は、下記一般式(I) 、一般式(II)、一般式(III) 又は一般式(IV)で示される。
【0010】
【化5】
【0011】
一般式(I) において、R1は飽和アルキル基を表わし、X1、X2、X3は、同一又は異なっていても良く、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸から誘導されるアシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす。
【0012】
【化6】
【0013】
一般式(II)において、R2は飽和アルキル基を表わし、Yは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸から誘導されるアシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす。
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(III) において、R31、R32、R33、R34は、同一又は異なっていても良く、飽和アルキル基又はアリール基を表わす。
【0016】
【化8】
【0017】
一般式(IV)において、R41、R42、R43、R44は、同一又は異なっていても良く、飽和アルキル基を表わし、Z1、Z2は、同一又は異なっていても良く、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸から誘導されるアシルオキシ基、チオシアネート(−NCS)基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす。また、一般式(IV)の化合物が二量体を形成していても良い。
【0018】
本発明のラクチド製造方法は、乳酸オリゴマーを、触媒存在下、減圧下に加熱し解重合させてラクチドを製造する方法において、触媒として、前記一般式(I) 、一般式(II)、一般式(III) 又は一般式(IV)で示されるラクチド化触媒のうちの少なくとも1種を用い、加熱温度を130〜190℃とすることを特徴とする。
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
まず、一般式(I) について詳しく説明する。
【化9】
【0020】
一般式(I) において、R1は直鎖状又は分枝状の飽和アルキル基を表わす。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常炭素数1〜17である。このような炭素数のものが、乳酸オリゴマーの解重合時に溶解性が良好であり、均一反応を効率良く行うことができる。好ましい炭素数は4〜17であり、より好ましい炭素数は4〜8である。R1の飽和アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル基等が挙げられる。これらのうち、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0021】
X1、X2、X3は、同一又は異なっていても良く、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸(RCOOH)から誘導されるアシルオキシ基(−OCOR)、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす。
【0022】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。これらハロゲン原子のうち、化合物の製造上及び取扱いの容易さの点から塩素原子が好ましい。
【0023】
炭素数18までのアシルオキシ基(−OCOR)としては、例えば、酢酸(R:CH3 )、プロピオン酸(R:C2 H5 )、酪酸(R:C3 H7 )、吉草酸(R:C4 H9 )、カプロン酸(R:C5 H11)、エナント酸(R:C6 H13)、カプリル酸(R:C7 H15)、ペラルゴン酸(R:C8 H17)、カプリン酸(R:C9 H19)、ウンデシル酸(R:C10H21)、ラウリン酸(R:C11H23)、トリデシル酸(R:C12H25)、ミリスチン酸(R:C13H27)、ペンタデシル酸(R:C14H29)、パルミチン酸(R:C15H31)、ヘプタデシル酸(R:C16H33)、ステアリン酸(R:C17H35)等よりそれぞれ誘導されるものが挙げられる。これらのうち、製造上の容易さの点からはアセトキシ基が好ましいが、加水分解を受けやすいという欠点があるため、カプリルオキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基が、触媒の溶解性の点からも好ましい。
【0024】
アルキルスルホニルオキシ基としては、一般に炭素数1〜4のアルキルスルホニルオキシ基が挙げられ、具体的には、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、n-プロパンスルホニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、製造上の容易さ、入手のしやすさの点から、メタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0025】
アリールスルホニルオキシ基としては、置換又は無置換のフェニルスルホニルオキシ基が挙げられ、具体的には、フェニルスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、製造上の容易さ、入手のしやすさの点から、トルエンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0026】
好ましい一般式(I) の化合物としては、R1:n-ブチル基、X1、X2、X3:Clの化合物; R1:n-ブチル基、X1:Cl、X2、X3:ヒドロキシ基の化合物; R1:n-ブチル基、X1、X2:Cl、X3:ヒドロキシ基の化合物; R1:n-ブチル基、X1、X2、X3:−OCOC7 H15の化合物; R1:n-オクチル基、X1、X2、X3:−OCOC9 H19の化合物等が挙げられる。
【0027】
次に、一般式(II)について詳しく説明する。
【化10】
【0028】
一般式(II)において、R2は直鎖状又は分枝状の飽和アルキル基を表わし、一般式(I) におけるR1と同義である。また、Yは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸(RCOOH)から誘導されるアシルオキシ基(−OCOR)、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わし、一般式(I) におけるX1〜X3と同義である。
【0029】
好ましい一般式(II)の化合物としては、R2:n-ブチル基、Y:ヒドロキシ基の化合物; R2:n-ブチル基、Y:アセトキシ基の化合物; R2:n-ブチル基、Y:−OCOC7 H15の化合物等が挙げられる。
【0030】
次に、一般式(III)について詳しく説明する。
【化11】
【0031】
一般式(III) において、R31、R32、R33、R34は、同一又は異なっていても良く、直鎖状又は分枝状の飽和アルキル基、又はアリール基を表わす。
【0032】
飽和アルキル基としては、前述の一般式(I) におけるR1が表わす飽和アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0033】
アリール基としては、置換又は無置換のフェニル基が挙げられ、具体的には、フェニル基、o-、m-、p-トルイル基、o-、m-、p-メトキシフェニル基等が挙げられる。これらのうち、製造上の容易さの点から、フェニル基が好ましい。
【0034】
好ましい一般式(III) の化合物としては、R31、R32、R33、R34:フェニル基の化合物; R31、R32、R33、R34:n-ブチル基の化合物; R31、R32、R33、R34:n-オクチル基の化合物等が挙げられる。
【0035】
次に、一般式(IV)について詳しく説明する。
【化12】
【0036】
一般式(IV)において、R41、R42、R43、R44は、同一又は異なっていても良く、直鎖状又は分枝状の飽和アルキル基を表わし、一般式(I) におけるR1と同義である。
【0037】
また、Z1、Z2は、同一又は異なっていても良く、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数18までの脂肪酸(RCOOH)から誘導されるアシルオキシ基(−OCOR)、チオシアネート基(−NCS)、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表わす。ハロゲン原子、炭素数18までの脂肪酸(RCOOH)から誘導されるアシルオキシ基(−OCOR)、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基については、一般式(I) におけるX1〜X3と同様のものが挙げられる。
【0038】
また、一般式(IV)の化合物が次のような二量体(1,3-disubstituted tetraorganodistannoxane) を形成していても良い。
【0039】
【化13】
【0040】
好ましい一般式(IV)の化合物としては、R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1、Z2:アセトキシ基の化合物; R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1、Z2:−OCOC11H23の化合物等が挙げられる。
【0041】
また、好ましい二量体形態の一般式(IV)の化合物としては、R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1、Z2:−NCS基の化合物; R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1:−NCS基、Z2:ヒドロキシ基の化合物; R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1、Z2:Clの化合物; R41、R42、R43、R44:n-ブチル基、Z1:Cl、Z2:ヒドロキシ基の化合物; R41、R42、R43、R44:メチル基、Z1、Z2:−NCS基の化合物等が挙げられる。
【0042】
一般式(I) 〜(III) の化合物は、例えば以下のような反応により得ることができる。
【0043】
一般にテトラアルキルスズ、テトラフェニルスズは、塩化スズ(4価)に対応するトリアルキルアルミニウム、アルキルクロライド、アルキルマグネシウムクロライドを反応させて合成することができる(稲葉、有機合成化学, 23, 806 (1965))。以下の式においてR' 、R''はアルキル基を表わす。
【0044】
【化14】
【0045】
トリハロゲン化モノアルキルスズは、テトラアルキルスズに塩化スズを反応させて合成することができる。
【0046】
【化15】
【0047】
トリハロゲン化モノアルキルスズは、さらにモノアルキルスズ誘導体に変換することができる。
【0048】
【化16】
【0049】
一般式(IV)の化合物は、例えば次のようにして合成することができる。すなわち、ジブチルスズオキサイド(2当量)に無水酢酸(1当量)を不活性溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン等)中で、50〜60℃、1〜2時間加熱し、溶媒を留去すれば、目的物を収率良く得ることができる。
【0050】
【化17】
【0051】
また、一般式(IV)の化合物が二量体である場合には、diorganotin dihalideをアルカリ存在下、部分加水分解することにより合成することができる(Okawara,R.; Wada,M. Adv. Organomet. Chem. 1967, 5, 137)。
【0052】
次に、本発明のラクチド製造方法について説明する。本発明の方法では、前記一般式(I) 、一般式(II)、一般式(III) 又は一般式(IV)で示されるラクチド化触媒のうちの少なくとも1種の触媒存在下、乳酸オリゴマーを減圧下に加熱し解重合させてラクチドに変換する。
【0053】
本発明の方法で用いる乳酸オリゴマーは、解重合の時にラクチド留出分中への乳酸あるいは乳酸の鎖状二量体の混入を防ぐという観点から、一般に重合度8〜25程度(分子量600〜2000程度)のものであるが、この範囲に限定されるものではない。このような乳酸オリゴマーは、乳酸モノマーを減圧(一般に15〜10mmHg程度)下で加熱(一般に120〜160℃)することによって得ることができる。
【0054】
本発明においては、単離された乳酸オリゴマーを用いても良いが、乳酸モノマーを減圧下加熱することによって得られた乳酸オリゴマーを単離せずに解重合反応に付しても良い。
【0055】
解重合反応における、前記一般式(I) 〜(IV)のいずれかで示されるラクチド化触媒の添加量は、処理すべき乳酸オリゴマーを構成する全乳酸単位の0.01〜1モル%であることが好ましい。0.01モル%未満では、触媒としての作用が不十分であり、一方、1モル%を超えて添加しても触媒作用に変化はなく、また経済的にも好ましくない。なお、一般式(IV)の二量体の場合は、単量体として上記添加量であれば良い。
【0056】
解重合反応における加熱温度は、減圧下で130℃以上190℃以下とする。好ましい加熱温度は、減圧下(3mmHg)で180〜190℃である。190℃を超えると、得られるラクチドの光学純度が低下し易い。
【0057】
すなわち、下式の乳酸オリゴマーの解重合反応によると、乳酸オリゴマーを構成する乳酸単位の不斉炭素原子の絶対配置に応じて、生成するラクチドの光学純度が定まってくる。
【0058】
【化18】
【0059】
ところが、解重合反応における加熱温度が高い場合、不斉炭素原子の立体反転が起こり、生成するラクチドの光学純度が低下するものと考えられる。本発明において前記特定構造の解重合触媒を用いると、乳酸オリゴマーを比較的低温で解重合することができるので、例えば、乳酸オリゴマーを構成する乳酸単位がL体:約98%、D体約2%のオリゴマーから光学純度99.5%ee以上のL,L−ラクチドを得ることができる。
【0060】
解重合反応における減圧度は、前記加熱温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力であり、通常1〜100mmHg程度である。より低圧とした方が加熱温度を低くすることができるので好ましく、従って1〜10mmHgが好ましく、1〜5mmHgがより好ましい。
【0061】
このような温度および減圧度にすることにより、乳酸オリゴマーが溶融し触媒と均一となり、解重合反応が進行し、生成したラクチドを留去することができる。例えば、2mmHgの減圧下では、90〜115℃の留分としてラクチドが得られる。解重合反応に要する時間は、通常2.5〜3.5時間程度である。
【0062】
本発明によると、特定構造のスズ化合物を乳酸オリゴマーの解重合触媒として用いるので、乳酸オリゴマーを比較的低温で解重合して高化学収率で高光学純度のラクチドを製造することができる。
【0063】
本発明により製造されたL,L−ラクチドは高光学純度を有しており、このラクチドを開環重合させて得られるポリL乳酸は結晶性が高く、ポリマーの成形がやや困難であるが、開環重合の際に適量のD,D−ラクチド又はメソD,L−ラクチドを用いることによって、ポリ乳酸の結晶性を容易に制御することができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0065】
(生成ラクチドのGC分析条件)
カラム:CHROMPACK 社製 キャピラリーカラム CP-Cyclodextrine−β−236M-19 (225-250 ℃)
0.25mmI.D×50m df=0.25μm
Shimadzu GC 9AM ガスクロマトグラフィー
H2 : 0.5Kg/cm2
Carrier gas He: 3.0Kg/cm2 , 50ml/min (make up gas)
Air :0.8Kg/cm2
カラム温度: 150℃
インジェクター温度: 250℃
検出器: FID
【0066】
[実施例1]
1l蒸留フラスコに90.1〜90.2%L−乳酸300g(3モル、L体98.4〜98.6%,D体1.6〜1.4%のもの、PURAC社製)を入れ、減圧下(10mmHg)、120〜150℃で7時間攪拌し乳酸オリゴマーとした。乳酸オリゴマーの分子量は約1000であった。
【0067】
これに触媒O=Sn(C4 H9 )(OH) (商品名:FASCAT 4100、ELF ATOCHEM North America 社製)を0.03モル(乳酸オリゴマーを構成する全乳酸単位の1モル%)加え、減圧下(2mmHg)で蒸留し、フラスコ内の温度は190℃以下に保ちながら、bp=90〜115℃のラクチド留分を分取した。分取時間は約3時間であった。ラクチド留分193g(ラクチドの化学収率:出発のL−乳酸を基準として89%)を得た。
【0068】
このようにして得られたラクチド留分について、上記のようにβ−シクロデキストリン担体のキャピラリーカラムを用いてGC分析し、生成物の分離定量を行なった。LL−ラクチド、DD−ラクチド、LD−ラクチド(メソ)、副生成物の生成比(GC面積%)を表1に示す。LL−ラクチドの光学純度を求めると、100%eeであった。
【0069】
[実施例2]
実施例1において、触媒としてSn(C4 H9 )(OH)2 Cl(商品名:FASCAT 4101、ELF ATOCHEM North America 社製)0.03モルを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行ない、ラクチド留分182g(84%)を得た。得られたラクチド留分について、GC分析し、生成物の分離定量を行なった。LL−ラクチドの光学純度は99.6%eeであった。
【0070】
[実施例3]
実施例1において、触媒としてSn(C4 H9 )Cl3 (商品名:CERTINCOAT TC−100、ELF ATOCHEM North America 社製)0.03モルを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行ない、ラクチド留分183g(85%)を得た。得られたラクチド留分について、GC分析し、生成物の分離定量を行なった。LL−ラクチドの光学純度は100%eeであった。
【0071】
[実施例4]
実施例1において、触媒としてSn(C5 H6 )4 0.03モルを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行ない、ラクチド留分149g(69%)を得た。得られたラクチド留分について、GC分析し、生成物の分離定量を行なった。LL−ラクチドの光学純度は99.5%eeであった。
【0072】
[実施例5]
実施例1において、触媒としてO−[Sn(C4 H9 )2 (OCOCH3 )]2 (商品名:TK−1、武田薬品社製)0.03モルを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行ない、ラクチド留分185g(86%)を得た。得られたラクチド留分について、GC分析し、生成物の分離定量を行なった。LL−ラクチドの光学純度は99.7%eeであった。
【0073】
以上の結果を表1にまとめて示す。表1より、本発明に従って、特定構造のスズ化合物を解重合触媒として用いると、高化学収率で高光学純度のラクチドを製造することができることが明らかである。
【0074】
【発明の効果】
本発明において用いるラクチド化触媒は、上述のように、特定構造のスズ化合物であり、優れた乳酸オリゴマーの解重合作用を有する。この触媒を用いる本発明のラクチド製造方法によれば、乳酸オリゴマーを比較的低温で解重合することができ、高化学収率で高光学純度のラクチドを製造することができる。
【0075】
【表1】
Claims (2)
- 乳酸オリゴマーを、触媒存在下、減圧下に加熱し解重合させてラクチドを製造する方法において、触媒として、下記一般式 (I) 、一般式 (II) 、一般式 (III) 又は一般式 (IV) で示されるラクチド化触媒のうちの少なくとも1種を用い、加熱温度を130〜190℃とすることを特徴とする、ラクチド製造方法。
- 用いる触媒の量が、処理すべき乳酸オリゴマーを構成する全乳酸単位の0.01〜1モル%である、請求項1に記載のラクチド製造方法。
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