JP3779889B2 - 触媒の再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の再生方法に関する。さらに詳しくは、排ガス中に含まれる被毒物質により被毒を受け活性劣化した触媒を再生する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、燃焼排ガス中の有害物質を除去する方法として、処理効率やコストの面から触媒を用いた除去方法が様々な分野で用いられており、その例としては、火力発電所排ガスに含まれる窒素酸化物を還元除去する選択的触媒還元(SCR)法や、産業廃棄物や都市廃棄物の焼却施設から発生する排ガス中に含まれるダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を触媒に用いて酸化分解する方法などが挙げられる。
【0003】
これらの方法で用いられる一般的な触媒としては、チタン、バナジウム、タングステンおよびモリブデンなどの金属の酸化物を含有するものがある。
【0004】
火力発電所や廃棄物焼却炉から排出される排ガス中には、アンモニア、硫黄酸化物(SOx)、高沸点有機化合物、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属化合物などの触媒被毒物質が含まれており、350℃以下の比較的低温度域で上記の触媒を使用すると、SOxによりバナジウム酸化物が硫酸塩に変化して失活したり、触媒に酸性硫酸アンモニウムや硫酸アンモニウム、高沸点有機化合物の蓄積が生じて触媒の比表面積低下や細孔の閉塞を引き起こしたりするため、触媒性能が経時的に劣化する。
【0005】
このようにして被毒し活性劣化した触媒を再生する方法としては、(1)触媒を水または添加剤入りの水によって洗浄再生する方法、(2)反応装置から触媒を取り出して加熱炉で高温再生する方法、(3)予めバーナーなどで加熱されたガスを触媒に通すことによって熱処理再生する方法、などが知られている。
【0006】
これらの再生方法には、それぞれ次のような問題点があった。
【0007】
(1)の洗浄再生方法は、水および添加剤による触媒成分の流出、廃水処理の困難さを有することに加えて、再生効率が低い。(2)および(3)の加熱再生方法は、加熱方法の如何により、触媒の熱的劣化を生じさせたり再生効率の低下を引き起こしたりする。さらに、加熱によって主に発生する硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質を排ガス処理装置で処理する必要があるが、有害物質の最大濃度が数%に達するため、大規模な排ガス処理装置を設置しなければならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、加熱再生方法において、再生効率の低下がみられず、加熱によって発生する硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質の発生濃度を低く抑制できる触媒の再生方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の加熱再生方法について、以下の知見を得ることができた。すなわち、250〜450℃の再生温度で触媒を再生中、硫酸塩化したバナジウムや触媒に蓄積した酸性硫酸アンモニウムや硫酸アンモニウム、高沸点有機化合物等が加熱によって逐次分解し、硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質が発生する。触媒を再生する装置を集積化するために再生ガスの流量を下げると、これらの有害物質の発生濃度が最大数%に達する。
【0010】
本発明者は、これらの知見に基づき、鋭意検討した結果、触媒の再生中、触媒が接触する再生ガスの昇温速度を制御することによって、触媒に熱的損傷を与えることなく再生効率を向上させ、さらに、加熱によって発生する、硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質の発生濃度を制御できる、ことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明にかかる触媒の再生方法は、排ガス中の被毒物質により被毒して活性の劣化した触媒に再生ガスを流し昇温することによって前記触媒を再生する方法であって、昇温速度を制御することを特徴とする。
【0012】
上記において、320℃から450℃の再生温度まで昇温させるとともに、昇温速度を、再生温度のどの部分においても50℃/h以下、250℃以上では15℃/h以下になるように制御する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒の再生方法において、再生温度とは、硫酸塩化したバナジウムや触媒に蓄積した酸性硫酸アンモニウムや硫酸アンモニウム、高沸点有機化合物等が加熱によって逐次分解する温度のことであり、たとえば、150〜500℃の範囲、好ましくは250〜450℃の範囲、さらに好ましくは320〜450℃の範囲である。前記範囲よりも加熱温度が低いと再生効率が低くなるため好ましくない。一方、前記範囲よりも加熱温度が高くなると、触媒成分のシンタリングなどの熱的損傷を受けやすくなるため好ましくない。
【0014】
本発明の触媒の再生方法は、250〜450℃の再生温度において再生ガスの昇温速度を特定範囲に制御することを特徴としており、再生温度のどの部分においても、昇温速度を50℃/h以下、好ましくは20℃/h以下に制御することが重要である。昇温速度が50℃/hを超えると、再生効率が低下したり、硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質の発生濃度が高くなったりする。しかも、触媒に流した再生ガスに含まれる有害物質を除去処理するために、大規模な排ガス処理装置が必要になる。
【0015】
再生ガスの昇温速度は、再生温度全体において一定範囲内の制御することも重要であり、再生温度全体において、平均1〜20℃/hの範囲に納まるように制御することが好ましく、平均1〜15℃/hの範囲に制御するとさらに好ましい。また、再生ガスの昇温パターンについては、特に限定はなく、再生すべき触媒や被毒物質の付着量や種類により適宜設定することができる。昇温パターンとしては、たとえば、再生温度を250℃で1時間保持し、その後、300℃に5時間で昇温し1時間保持して、さらに400℃の10時間で昇温するような階段状の昇温パターンでもよい。また、再生温度の範囲内で昇温速度を変化させても良い。たとえば、昇温速度を一定値に保つ直線状の昇温パターンでもよく、昇温速度を指数関数や対数関数的に変化させた曲線状の昇温パターンでもよい。このような場合も、再生温度のどの部分においても昇温速度が50℃/h以下になるように制御し、さらに、再生温度全体における昇温速度を平均1〜20℃/hの範囲なるように制御することが重要である。
【0016】
触媒の再生時に流す再生ガスの流量は、触媒1kgに対して0.5m3/h(Normal)以上であるのが好ましい。再生ガスの流量がこれよりも少ないと、再生効率が低く、また装置の放熱の影響を受けやすくなるため、好ましくない。
【0017】
触媒の再生時に流す再生ガスの線速は、0.1〜1.0m/s(Normal)、好ましくは0.1〜0.5m/s(Normal)に調整される。再生ガスの線速が上記範囲よりも遅いと、再生効率が低くなる。一方、再生ガスの線速が上記範囲よりも速いと、触媒での圧力損失も大きくなり、高い能力の吸気ブロアや排気ブロア等が必要となったり、エネルギー消費も多くなるため好ましくない。
【0018】
本発明で用いる再生ガスの組成としては、O2 が好ましくは5容量%以上、さらに好ましくは7容量%以上;H2Oが好ましくは40容量%以下;硫黄酸化物(SOx)が好ましくは2000容量ppm以下、さらに好ましくは1000容量ppm以下;NH3が好ましくは2000容量ppm以下、さらに好ましくは1000容量ppm以下;ダストが好ましくは0.1g/m3(Normal)以下であることが好適である。これらの範囲を外れると、再生効率は低くなる。特に、ダストが0.1g/m3(Normal)よりも多いと、ダスト成分による触媒の性能劣化も生じ、再生効率が特に低くなる。触媒に流した再生ガスに含まれる硫黄酸化物やアンモニアなどの有害物質の濃度が高くなり10000容量ppmを超える場合、有害物質処理装置が大規模になるため好ましくない。
【0019】
本発明にかかる触媒の再生方法の実施に用いる装置としては、たとえば、火力発電プラントや廃棄物焼却プラント等の設備から独立した装置であってもよく、それ自体がプラントの排ガス系内に組み込まれている形式のもの、すなわち、排ガス中の有害物質を除去するための反応に使用する触媒充填用の反応容器であってもよい。さらに、触媒での排ガス温度を触媒の処理効率が高くなる温度に昇温するために、触媒の前段に可燃物を燃焼する設備を設置するプロセスにおいて、この設備を触媒の再生用としても兼用する形式のものでもよい。
【0020】
本発明の触媒の再生方法では、触媒に流した再生ガスに含まれる有害物質を除去処理することが好ましい。その具体的な除去処理方法としては、スプレー塔、充填塔、気液塔、塗れ壁塔、スクラバ等を用い、水酸化ナトリウム溶液や水酸化マグネシウム溶液に湿式で除去する方法や、活性炭吸着法、ドライスクラバ法等の乾式で除去する方法、発生する硫酸ミスト等をデミスタ、パイプフィルタ等で除去する方法等を挙げることができる。また、触媒に流した再生ガスに含まれる未燃物や高沸点有機化合物は、酸化触媒等で除去すると好ましい。
【0021】
【実施例】
本発明においては、排ガス中の被毒物質、特に硫黄化合物や高沸点有機化合物により被毒を受け活性劣化した触媒をその再生の対象にしているが、特に制限はない。本発明で対象とする触媒のうち、温度350℃以下、好ましくは150〜300℃で、窒素酸化物および/または有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理に使用された触媒を再生する場合、特に有効である。このような触媒としては、たとえば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、リン、亜鉛、バナジウム、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、セリウム、ランタン、銅、銀、金、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含有する触媒を挙げることができる。これらのうちでも、特開平10−235191号公報および特開2001−062292号公報に記載されているような、チタン酸化物および/またはケイ素酸化物と、バナジウム、タングステンおよびモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属の酸化物とを含む触媒が、本発明の再生方法において特に好適に用いられる。
【0022】
本発明により再生する触媒の形状としては、粉体を使用してもよい。また、板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状等の形状の一体成形体でも良いし、アルミナ、シリカ、コーディライト、チタニア、ステンレス金属等よりなる板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状等の形状の担体に担持して使用しても良い。触媒はまた、ウォールフロー型等のセラミックフィルターに担持させても良い。
【0023】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例1〜3のうち、本発明の具体的実施技術は実施例1、2であり、実施例3は、本発明の技術的範囲からは外れる参考技術である。
【0024】
(参考例1)
排ガスに曝露される前の新品触媒を参考例1とする。この新品触媒は外形150mm×150mm×700mmのハニカム状触媒であり、触媒成分としてチタン酸化物を70重量%、ケイ素酸化物を9.5重量%、バナジウム酸化物を10重量%、モリブデン酸化物を5重量%、硫黄分を0.5重量%含有する触媒である。
【0025】
(参考例2)
参考例1の新品触媒を、ごみ焼却炉のバグフィルター後流で、温度200℃で、硫黄酸化物を20容量ppm、NH3を80容量ppm、窒素酸化物を100容量ppm、ダイオキシン類を2ng−TEQ/m3(Normal)、O2を10容量%含有する排ガスの処理に使用した。この排ガス曝露で被毒物質により被毒して活性の劣化した触媒を参考例2とする。
【0026】
(実施例1)
排ガス曝露で被毒物質により被毒し活性の劣化した、参考例2の触媒を以下の手順で熱処理し、再生した。
【0027】
(1)活性劣化した触媒を再生装置に充填し、再生ガスとして空気を用い、触媒1kgあたりの再生ガスの流量2m3/h(Normal)に調整した。このときの再生ガスの線速は0.18m/s(Normal)であった。
【0028】
(2)再生ガスを電気ヒーターで50℃/hの昇温速度で250℃まで昇温し、続いて10℃/hの昇温速度で400℃まで昇温し、触媒の再生処理を行った。昇温中の硫黄酸化物の濃度は最大1200ppmであった。
【0029】
(実施例2)
排ガス曝露で被毒物質により被毒し活性の劣化した、参考例2の触媒を以下の手順で熱処理し、再生した。
【0030】
(1)活性劣化した触媒を再生装置に充填し、再生ガスとして空気を用い、触媒1kgあたりの再生ガスの流量2m3/h(Normal)に調整した。このときの再生ガスの線速は0.18m/s(Normal)であった。
【0031】
(2)再生ガスを電気ヒーターで50℃/hの昇温速度で250℃まで昇温し、続いて15℃/hの昇温速度で340℃まで昇温し、2時間保持した。引き続いて、10℃/hの昇温速度で400℃まで昇温して1時間保持し、触媒の再生処理を行った。昇温中の硫黄酸化物の濃度は最大1500ppmであった。
【0032】
(実施例3)
排ガス曝露で被毒物質により被毒し活性の劣化した、参考例2の触媒を以下の手順で熱処理し、再生した。
【0033】
(1)活性劣化した触媒を再生装置に充填し、再生ガスとして空気を用い、触媒1kgあたりの再生ガスの流量2m3/h(Normal)に調整した。このときの再生ガスの線速は0.18m/s(Normal)であった。
【0034】
(2)再生ガスを電気ヒーターで50℃/hの昇温速度で250℃まで昇温し、続いて60℃/hの昇温速度で450℃まで昇温し、触媒の再生処理を行った。昇温中の硫黄酸化物の濃度は最大8000ppmであった。
【0035】
(試験例1)
実施例1〜3で熱処理再生を行った触媒、参考例1の新品触媒、および、参考例2の活性劣化した触媒の各触媒の一部を切り出し、粉砕後圧縮成形したものを分析サンプルとして蛍光X線測定装置で各触媒の硫黄分を定量した。
【0036】
そして、再生効率(%)を下記式にしたがって求めた。結果を表1に示した。
再生効率(%)
=〔再生前の触媒中の硫黄分(重量%)−再生後の触媒中の硫黄分(重量%)〕
÷〔再生前の触媒中の硫黄分(重量%)−新品の触媒中の硫黄分(重量%)〕
×100
(試験例2)
実施例1〜3で熱処理再生を行った触媒、参考例1の新品触媒、および、参考例2の活性劣化した触媒の各触媒を用い、以下に示す試験条件で脱硝反応を行った。
〔試験条件〕
ガス組成
NOx:100容量ppm(Dry)、NH3:100容量ppm(Dry)、
O2:10容量%(Dry)、H2O:15容量%、N2:バランス
ガス温度:250℃
空間速度:15000h−1
そして、脱硝率を下記式にしたがって求めた。結果を表3に示した。
脱硝率(%)=〔(反応器入口NOx濃度)−(反応器出口NOx濃度)〕
÷(反応器入口NOx濃度)×100
(試験例3)
実施例1〜3で熱処理再生を行った触媒、参考例1の新品触媒、および、参考例2の活性劣化した触媒の各触媒について、ダイオキシン類分解性能確認のため、代替物質としてクロロトルエンを用いて、以下に示す試験条件でクロロトルエン(CT)分解反応を行った。
〔試験条件〕
ガス組成
CT:50容量ppm(Dry)、O2:10容量%(Dry)
H2O:15容量%、N2:バランス
ガス温度:220℃
空間速度:4500h−1
そして、CT分解率を下記式にしたがって求めた。結果を表3に示した。
CT分解率(%)=(反応器入口CT濃度)−(反応器出口CT濃度)}
÷(反応器入口CT濃度)×100
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒を、触媒成分のシンタリング等の熱的損傷を生じさせず、効率よく再生することができる。
【0039】
本発明によればまた、再生ガスの昇温によって発生する硫黄酸化物やアンモニア等の有害物質の発生濃度を低く抑制できるため、触媒を再生する装置の後流側に大規模な排ガス処理装置を設置する必要がなく、触媒を経済的に大規模に再生することができる。
Claims (3)
- 排ガス中の被毒物質により被毒して活性の劣化した触媒に再生ガスを流し昇温することによって前記触媒を再生する方法であって、
320℃から450℃の再生温度まで昇温させるとともに、昇温速度を、再生温度のどの部分においても50℃/h以下、250℃以上では15℃/h以下になるように制御する、
ことを特徴とする、触媒の再生方法。 - 昇温パターンが階段状である、請求項1に記載の触媒の再生方法。
- 再生装置の後流側に有害物質処理装置を設けておいて前記再生を行うようにする、請求項1または2に記載の触媒の再生方法。
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