JP3779566B2 - 浄水装置及びその設置施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は水道水から成る原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置に関し、詳しくはダミーカートリッジを備えたものに関する。
【0002】
【発明の背景】
水道水中には微細な砂,赤錆等濁りの元となる成分や殺菌用の塩素に起因するカルキ臭とか黴臭とかの臭いの元となる成分が含まれている。
そこで従来、水道水(原水)を内部に導き入れてこれを浄化するための浄化カートリッジに通し、浄水とした上で浄水吐水口から吐水する機能を有する浄水装置を水栓とは別体の単体のユニットとして構成し、これを水栓の蛇口、即ち吐水管の先端部に後付けで取り付けるといったことが行われている。
しかしながらこの単体且つ後付式の浄水装置の場合、これを水栓の吐水管の先端部に装着すると吐水管の先端部が不自然に大型化してしまって美観が損なわれてしまうといった問題がある。
【0003】
一方、図19に示しているように水栓200とは独立に構成された浄水装置202をキッチン等のキャビネット内部に設置し、水栓200からの水道水をこの浄水装置202に導いてここで浄化し、浄水とした上で再び水栓200に戻して吐水管204の先端部(蛇口)から吐水するといったことも行われている。
【0004】
この種形式の浄水装置202はビルトインタイプと称されているが、この浄水装置202を用いた場合、水栓200特に吐水管204の先端部の形状は通常の水栓と全く変らず、従って外部に現れる部分について美観を良好に保持することができる。
【0005】
一方でこの種形式の浄水装置202の場合、これをキャビネット内に設置するとキャビネット内部が煩雑化し、また浄水装置202の設置によってキャビネット内部の収納空間が狭められてしまうといった問題が生ずる。
近年キャビネット内の収納空間をできるだけ広く使おうとする傾向があり、このような中にあってこの種ビルトインタイプの浄水装置202を設置することが困難な場合も生じている。
【0006】
他方キッチン等のカウンター上に通常の水栓と併せて浄水専用の水栓を設置するといったことも行われている。
しかしながらこの場合通常の水栓と浄水専用の水栓との2つの水栓が必要となり、カウンター上のスペースがそれら水栓にて広く占有されてしまうとともにコストも高くなるといった問題がある。
【0007】
このようなことから、本発明者等はこの種の浄水機能即ち水道水からなる原水を浄化する機構を水栓に内蔵させたものを案出した。
図20はその一例を示している。
同図に示ししているようにここでは可撓性のホース206とともに引出可能な水栓の吐水ヘッド208の内部に浄化カートリッジ210を収容してその内側に浄水通路212を、また外周側に原水通路214を形成し、そして浄化カートリッジ210の下流部に設けた切替弁を操作部215の操作により作動させ、原水ストレート吐水口216からの原水ストレート吐水,原水シャワー吐水口218からの原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水口220からの浄水ストレート吐水を切り替えるようになしている。
【0008】
このように水道水を浄化するための機構を水栓に内蔵しておいた場合、水栓の外観をすっきりとしたものとなしてその外観,美観を良好に保持しつつキャビネット内の収納空間を広く確保することが可能となる。
【0009】
ところで、浄化カートリッジ210は使用を続けるうちにその機能が低下して来るため、これを一定期間ごとに交換する必要が生ずる。
このためここでは吐水ヘッド208を吐水ヘッド本体222と頭部224とに分離可能とし、その頭部224を吐水ヘッド本体222から取り外し、分離することで浄化カートリッジ210の交換を可能としている。
【0010】
ところでこの浄化カートリッジ210内蔵の水栓の場合、浄化カートリッジ210の交換を誤って水栓の主弁を開いたまま行ってしまったとき、或いは水栓の主弁を閉じた状態で浄化カートリッジ210の交換を行っても、その交換作業の際に誤って主弁操作用のハンドルに手が触れてこれを開操作してしまったとき、更にはまた何らかの原因で頭部224が吐水ヘッド本体222から外れてしまったりすると、湯水が使用者に向って勢い良く飛び出して来たり、或いはまた場合によって頭部224が湯水の勢いで使用者に向って飛んで来るといった恐れがある。
【0011】
そこで本発明者等は、浄化カートリッジに対して軸方向に且つ上流部に隣接する位置において、浄化カートリッジ組付状態で開弁状態を維持し、浄化カートリッジが組付位置から外れたときに閉弁して流路を遮断する緊急遮断弁を内蔵させたものを案出した。
【0012】
このようにすれば、誤って水栓の主弁を開いたまま浄化カートリッジの交換を行ってしまったとしても、或いはまた浄化カートリッジ交換作業の際に誤って主弁操作用のハンドルに手が触れてこれを開操作してしまっても、浄化カートリッジが組付位置から外れるのと同時に緊急遮断弁が閉弁して流路を遮断するため、使用者に向って湯水が飛び出して来てしまうといったことを防止することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記浄水装置を内蔵した水栓を現場で設置施工するに際し、水栓を設置した段階で通水検査を行うが、このとき浄化カートリッジを組付けた状態で通水検査を行うと、通水初期に配管内に含まれている多くのごみ等の異物が浄化カートリッジに流入して来、浄化カートリッジが目詰りを起してしまう。
即ち使用者が実際に浄水装置を内蔵した水栓を使用する前に、既に浄化カートリッジが汚れ或いは目詰りを起した状態となってしまう。
従って通水検査の際には、浄化カートリッジを外した状態でこれを行うことが望ましい。
【0014】
しかしながらこの場合、本来所定位置に来るべき浄化カートリッジがない状態で浄水装置ないし水栓の各部品を組付けることとなるため、浄化カートリッジに隣接する部品が本来の組付位置ないし組付状態に規制されないまま組み付いてしまうといった問題が生ずる。
【0015】
例えば上記の例で言えば、緊急遮断弁が本来の開弁状態で組み付けられず、閉弁状態で組み付いてしまうといった問題が生ずる。
而して緊急遮断弁が閉弁状態にあると通水検査そのものが行えなくなってしまう。
或いはまたこのような緊急遮断弁を備えていない浄水装置を組み付けた場合、更にはまたそのような浄水装置を内蔵した水栓を組み付けた場合、浄化カートリッジに隣接する部品が本来の組付位置に組み付けられない場合があるといった問題を生ずる。
【0016】
またこのような浄化カートリッジを外した状態で通水検査を行うと、例えば浄化カートリッジの下流側に異物除去のためのストレーナが配設してある場合、配管から流入して来たごみ等の異物が、使用者が実際に浄水装置或いは水栓を使用する以前にそのごみ等の異物によって目詰りをしてしまうといった問題を生ずる。
【0017】
以上水栓に内蔵の浄水装置を例として問題点を述べたが、同様の問題は水栓とは別体に構成される各種浄水装置においても共通に生じ得る問題である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の浄水装置及び浄水装置の設置施工方法はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは浄水装置に関するもので、水道水から成る原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置において、前記浄化カートリッジに隣接する部品を前記浄化カートリッジを組み込んだときの本来の組付位置ないし組付状態に規制する、浄水装置の設置段階での通水検査時に本来の前記浄化カートリッジの代りに組付状態とされる、該浄化カートリッジとは別の通水検査用のダミーカートリッジを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2のものは、請求項1において、前記ダミーカートリッジが軸方向に隣接する部品を本来の軸方向の組付位置ないし組付状態に規制するものであることを特徴とする。
【0020】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記浄化カートリッジに対して軸方向且つ上流側に隣接して位置し、該浄化カートリッジ組付状態で開弁状態を維持し、該浄化カートリッジが組付位置から外れたときに閉弁して流路を遮断する緊急遮断弁を備えており、前記ダミーカートリッジが組付位置で該緊急遮断弁を開弁状態に状態規制するものとなしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項4のものは、水道水から成る原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置において、浄水装置の設置段階での通水検査時に本来の前記浄化カートリッジの代りに組付状態とされる、該通水検査時に水道水中の異物を除去するためのストレーナを備えた、該浄化カートリッジとは別の通水検査用のダミーカートリッジを備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、水栓の吐水ヘッドに内蔵してあることを特徴とする。
【0023】
請求項6のものは、請求項5において、前記吐水ヘッドが可撓性のホースとともに引出し可能若しくは移動可能なものであることを特徴とする。
【0024】
請求項7は浄水装置の設置施工方法に関するもので、水道水からなる原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置を施工現場で設置施工するに際し、該浄水装置の設置段階での通水検査時に請求項1〜6の何れかに記載の前記ダミーカートリッジを浄水装置に組付状態として、その状態で通水検査を行い、該通水検査後に該ダミーカートリッジを取り外して、代りに本来の正規の浄化カートリッジを組み付けることによって施工を完了することを特徴とする。
【0025】
【作用及び発明の効果】
上記のように請求項1のものは、浄化カートリッジに隣接する部品を本来の組付位置ないし組付状態に規制する、浄化カートリッジとは別のダミーカートリッジをスペーサ部材として浄水装置に備えたもので、本発明によれば、本来の浄化カートリッジを用いることなく各部品を本来の組付位置ないし組付状態に位置規制ないし状態規制した状態で良好に通水検査を行うことができる。
従って通水検査によって使用者が使用する前に浄化カートリッジを汚してしまうといった問題を解決することができる。
【0026】
ここで上記ダミーカートリッジは、軸方向に隣接する部品を本来の軸方向の組付位置ないし組付状態に規制するものとなしておくことができる(請求項2)。
即ちダミーカートリッジを軸方向のスペーサ部材として構成しておくことができる。
【0027】
本発明においては、浄水装置に且つ浄化カートリッジに対して軸方向の上流側に隣接する位置に緊急遮断弁を具備させ、ダミーカートリッジによりその緊急遮断弁を開弁状態に状態規制するようになすことができる(請求項3)。
この請求項3によれば、浄水装置に緊急遮断弁を備えた場合において、ダミーカートリッジの組付けによりその緊急遮断弁を開弁状態に維持し、従って現場での設置施工の際に支障なく通水検査を行うことが可能となる。
【0028】
請求項4のものは、ダミーカートリッジにストレーナを備えたもので、このようにしておけば通水検査の際に配管内等から流れ込んで来たごみ等の異物を、そのダミーカートリッジの部分で良好に捕集することができ、そのごみ等の異物が下流側にそのまま流れ込んでしまうのを防止することができる。
【0029】
従ってその下流側にストレーナが配設してある場合において、通過したごみ等の異物がその下流側のストレーナで捕集されてそのストレーナに目詰りを生ぜしめてしまうといった問題を解決することができる。
【0030】
本発明は、水栓の吐水ヘッドに内蔵してある浄水装置に対し好適に適用可能である(請求項5)。
更にまたその吐水ヘッドが可撓性のホースとともに引出し可能若しくは移動可能なものに対し好適に適用可能である(請求項6)。
【0031】
請求項7は浄水装置の設置施工方法に関するもので、この方法では通水検査に際してダミーカートリッジを用いて通水検査を行い、そして通水検査後にダミーカートリッジを取り外して、本来の正規の浄化カートリッジを浄水装置に組み付け、取付完了状態とする。
【0032】
【実施例】
次に本発明をキッチン水栓に内蔵した浄水装置に適用した場合の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、1はキッチンに設置されたキャビネットで、2はシンク、3はカウンターで、このカウンター3上にシングルレバー式の混合水栓(以下単に水栓とする)10が起立状態で設置されている。
同図において4は水栓10に対し水,湯を供給するためのサプライ管であって、下端部が止水栓5を介して元配管に接続され、また上端部が水栓10における水栓本体12にそれぞれ接続されている。
この水栓本体12からは下向きに接続管6が延び出しており、その接続管6に対して可撓性のホース22の端部が接続されている。
【0033】
水栓10は、水栓本体12の上部にシングルレバー式のハンドル14を備えており、更にまた水栓本体12からシンク2の上方に向って吐水管16が延び出している。
水栓本体12の内部には、図3に示しているように吐止水と吐水の水量調節及び温度調節を行う主弁7が内蔵されており、その主弁7に対し上記ハンドル14が作動的に連結されている。
この水栓10では、ハンドル14を左右に回動操作することで吐水の温度調節が行われ、また上下に回動操作することで吐止水及び吐水の水量調節が行われる。
【0034】
吐水管16は、水栓本体12に固定の吐水管基部18と、上記ホース22の端部が接続固定されてそのホース22とともに引出可能な吐水ヘッド20とを有している。
この吐水ヘッド20の先端部には、後に詳述する原水ストレート吐水,原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水を切替操作するためのレバー式且つ回転式の切替操作部24(図2参照)が外部に突き出す状態で設けられている。
【0035】
図4にも示しているように、吐水ヘッド20は吐水ヘッド本体(グリップ部)26とその先端側の頭部28とを有している。
ここで頭部28は吐水ヘッド本体26と別体とされていて、吐水ヘッド本体26に対し脱着可能とされている。
本例ではこの頭部28の脱着によって、その内部に収容されている後述の浄化カートリッジ42が交換可能とされている。
【0036】
ここで頭部28は、吐水ヘッド本体26に取り付けられた状態で浄化カートリッジ42を軸方向、詳しくは図4中左方向に押えるカートリッジ押えとしての働きも有している。
吐水ヘッド本体26には、その基端部に上記ホース22がシール部材30によるシールの下に水密に接続固定されている。
【0037】
ここでホース22は、図4及び図5にも示しているように吐水管基部18の先端部に取付固定された筒状をなすホースガイド31の中心部のホース挿通孔32に軸方向に摺動可能に挿通されている。
このホースガイド31はまた、吐水ヘッド20をここに差し込むことでこれを保持する機能も有している。
これらホースガイド31及び吐水管基部18には、ホース22とホースガイド31との間の隙間から浸入して来た水を外部に排出するための水抜孔33及び35がそれぞれ形成されている。
【0038】
吐水ヘッド本体26は、筒状をなす化粧カバー(外筒)38と内筒40との二重筒構造をなしており、その内部に原水(水道水)を半径方向に通過させることによってこれを浄化する浄化カートリッジ42が収容されている。
【0039】
浄化カートリッジ42は、図6及び図7に示しているように全体として円筒形状をなす部材であって、中心部の円筒形状の多孔質のセラミックフィルタ44を有しており、これを支持体としてその外面に珪藻土46の層が、更にその外面に活性炭48の層が積層形成され、その外周面に不織布50が巻き付けられている。
【0040】
この浄化カートリッジ42は前後端に非通水性のエンドキャップ52,54を有している。
これらエンドキャップ52,54はそれぞれ透光性の部材にて構成されており、これらエンドキャップ52,54を通じて浄化カートリッジ42の端面、具体的にはセラミックフィルタ44,珪藻土46の層,活性炭48の層,不織布50の層の端面を外部から目視観察できるようになっている。
即ちこれらエンドキャップ52,54を通じて浄化カートリッジ42の各層の汚れ具合を目視観察できるようになっている。
【0041】
これらエンドキャップ52,54の外周面には周方向に所定間隔でリブ56が形成されており、図4に示しているようにそれらリブ56の外周端が内筒40の内周面に当接するようになっている。
即ちこれらリブ56によって浄化カートリッジ42の外周側、詳しくは浄化カートリッジ42の外周面と吐水ヘッド本体26における内筒40の内周面との間に原水通路58Aが形成されている。
また浄化カートリッジ42におけるセラミックフィルタ44の内側に浄水通路60Aが形成されている。
【0042】
図3〜図5に示しているように、吐水ヘッド20の基端部には緊急遮断弁51が設けられている。詳しくは吐水ヘッド20の基端部且つホース22の接続固定部において緊急遮断弁51が設けられている。
【0043】
ここで緊急遮断弁51は、浄化カートリッジ42が組付位置から外れたときに自動的に閉弁して流路を遮断するもので、筒状をなす弁ケーシング53と弁体55とを有している。
弁ケーシング53は軸方向の一端側(図中左端側)がホース22に固定されており、また他端側(図中右端側)が固定リング57によって吐水ヘッド20に固定されている。
【0044】
ここで固定リング57は吐水ヘッド20における内筒40に対しねじ結合されている。即ち固定リング57を内筒40にねじ込んで行くことで、弁ケーシング53が吐水ヘッド20の内筒40に接続固定される。
【0045】
弁体55には軸部59が設けられており、その軸部59の端部(図中右端側)に邪魔板61が設けられている。
この邪魔板61にはスプリング63の付勢力が図中右向きに作用しており、図5(B)に示しているように浄化カートリッジ42を取り外すと、弁体55はこのスプリング63の付勢力に基づいて弁ケーシング53の弁座65に着座し緊急遮断弁51が閉弁する。
即ち弁座65への弁体55の着座によって流路を遮断する。
但し通常時は図5(A)に示しているように浄化カートリッジ42が邪魔板61を介して弁体55をスプリング63の付勢力に抗して図中左向きに押し込んでおり、従って緊急遮断弁51は浄化カートリッジ42によって通常時は開弁状態に維持される。
【0046】
上記浄化カートリッジ42には、軸方向端部(図中左端部)に弁体55を押えるための弁押えとしての凸形状部67が設けられており、その凸形状部67が弁体55における邪魔板61に当接して、スプリング63の付勢力に抗し弁体55を図中左向きに押し込んでいる。
【0047】
凸形状部67には、弁体55における邪魔板61に対応する雌テーパ形状の保持部69が形成されており、この保持部69が邪魔板61の雄テーパ形状部に嵌合して軸直角方向に弁体55を位置保持している。
即ちこの保持部69の作用によって、流路を湯水が流通する際に弁体55が軸直角方向にぶれたりがたついたりするのが防止される。
【0048】
弁体55、詳しくは弁座65への当接部には切欠部71が設けられている。この切欠部71は、流路における緊急遮断弁51よりも上流側の圧力を下流側へとリークさせるためのリーク機構を成すもので、図5(C)に示しているように弁体55が弁座65に着座した状態の下で、切欠部71によってそれらの間に若干の隙間が形成され、同部分を通じて緊急遮断弁51よりも上流側の圧力が下流側へとリークする。
【0049】
上記頭部28には、図3,図4,図6及び図8に示しているようにその下面に、原水を整流束としてストレート吐水する原水ストレート吐水口62,原水をシャワー水としてシャワー吐水する原水シャワー吐水口64及び浄水を整流束としてストレート吐水する浄水ストレート吐水口66がそれぞれ別々に設けられている。
またそれら各吐水口62,64,66に連通して原水ストレート通路68,原水シャワー通路70及び浄水ストレート通路72がそれぞれ形成されている。
【0050】
上記浄化カートリッジ42の下流側であって頭部28の内部には、原水ストレート吐水,原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水を切り替えるための切替弁装置74(図8参照)が配設されている。
【0051】
この切替弁装置74はシリンダ式弁装置であって、その具体的構成が図9〜図12に詳しく示してある。
これらの図に示しているように、この切替弁装置74は弁体76とこれに水密に外嵌する弁ケーシング78とを有している。
図9に示しているように、弁ケーシング78には外筒部80と内筒部82とが一体に形成されていて、その外筒部80が吐水ヘッド本体26の端部内側にOリング114を介して水密に嵌合接続されている。
また一方、内筒部82が浄化カートリッジ42の軸方向端部に形成された筒状の嵌合凸部122の外側にOリング114を介して水密に嵌合接続されている。
【0052】
この状態において内筒部82の内側空間は、浄化カートリッジ42の中心部の浄水通路60Aに続く浄水通路60Bを形成しており、また外筒部80と内筒部82との間の環状の空間が、原水通路58Aに続く原水通路58Bを形成している。
尚原水通路58Bの端部には、原水通路58Bにごみ等の異物が浸入するのを防止するためのリング状のストレーナ100が装着されている。
【0053】
弁体76は、その主要素となる大径の円筒部84と軸部86とを有している。
軸部86は更に基端側の円形部88と角形部90とを有しており、その角形部90に対してスペーサリング94と切替操作部24の基部92とが一体回転状態に外嵌された上、それらが締結ねじ96にて軸方向に抜止状態に固定されている。
一方軸部86の円形部88は、弁ケーシング78に形成された円筒部128の内側にOリング114を介して水密に回転可能に嵌合されている。
尚98は締結ねじ96を隠蔽するためのキャップである。
【0054】
弁体76における大径の円筒部84は、図12に示しているように周壁部の内側空間が原水を通すための主通路102を成している。
この円筒部84の軸方向一端は円形の開放形状部とされるとともに他端が半月状の開放形状部とされており、それぞれが原水を主通路102に流入させるための主流入口104を成している。
即ち吐水ヘッド本体26内部の原水通路58Aからこれに続く原水通路58Bに流入して来た原水が、これら主流入口104から主通路102内部に流入する。
【0055】
この円筒部84の周壁部には、回転方向所定位置に主流出口106が設けられており、主通路102内部に流入して来た原水がこの主流出口106から外部に流出するようになっている。
これに対応して弁ケーシング78の周壁部には、原水を原水ストレート通路68を経て原水ストレート吐水口62に導く第1主流出口108と、原水を原水シャワー通路70を経て原水シャワー吐水口64に導く第2主流出口110が回転方向にほぼ並んだ位置に設けられている。
【0056】
このシリンダ式の切替弁装置74においては、弁体76の回転によって弁体76の主流出口106が弁ケーシング78の第1主流出口108に一致した状態の下では、主通路102内の原水が弁体76の主流出口106及び弁ケーシング78の第1主流出口108を通じて原水ストレート吐水口62へと流出する。
また一方、弁体76の主流出口106が弁ケーシング78の第2主流出口110に一致した状態の下では、主通路102内の原水がそれら主流出口106及び第2主流出口110を通じて原水シャワー吐水口64へと流出する。
【0057】
弁体76における円筒部84には、その周壁部に且つ回転方向に180°隔たる位置において副流入口112と副流出口116とが設けられている。
また周壁部の内側空間には、これを横切るようにして管部118が軸直角方向に設けられている。
この管部118の内側空間は、浄水を通すための副通路120を成しており、この副通路120によって副流入口112と副流出口116とが連絡されている。
ここで副通路120は、円筒部84における周壁部で囲まれた内側の上記主通路102とは独立した通路を形成している。
【0058】
他方弁ケーシング78には、これら副流入口112,副流出口116に対応して、周壁部を貫通する副流入口124及び副流出口126が回転方向に180°隔たった位置においてそれぞれ形成されている。
ここで副流入口124は上記の浄水通路60Bに連通して設けられており、また副流出口126は上記の浄水ストレート通路72に連通して設けられている。
【0059】
このシリンダ式の切替弁装置74にあっては、弁体76が副流入口112を弁ケーシング78の副流入口124に一致させ、また副流出口116を弁ケーシング78の副流出口126に一致させる状態にあるとき、浄水通路60Bを通じて送られた浄水が弁体76の副通路120を流通した後、弁ケーシング78の副流出口126を通じて浄水ストレート通路72へと流出し、そしてその先端の浄水ストレート吐水口66から外部にストレート吐水される。
【0060】
このとき、弁体76の主流出口106は弁ケーシング78の第1及び第2の主流出口108,110の何れに対しても不一致となっており、これら主流出口108,110から原水が流出するのが阻止されている。
尚図9において、130は弁ケーシング78の開放部132を閉鎖する閉鎖部材である。
【0061】
図14及び図15はこのシリンダ式の切替弁装置74の作用を示したものである。以下これらの図に基づいて切替弁装置74の作用を説明する。
先ず図14(A)及び図15(A)は原水のストレート吐水状態を示している。
このとき、切替操作部24は最も上方に持ち上げられた状態にあり、また切替弁装置74は、切替操作部24の操作に基づいて弁体76における主流出口106を弁ケーシング78の第1主流出口108に一致させた状態にある。
【0062】
この状態の下では、原水通路58A,58Bを通じて流れて来た原水が、弁体76における円筒部84の軸方向両端の主流入口104から周壁部内側の主通路102へと流れ込み、続いて弁体76における主流出口106及び弁ケーシング78における第1主流出口108から流出して原水ストレート通路68へと流れ込み、その後下端の原水ストレート吐水口62から下向きにストレート吐水される。
尚このとき、図14(A)に示しているように弁体76における副通路120は上流側の浄水通路60Bに対して遮断された状態にあり、従ってこの時点では当然ながら浄水吐水は禁止された状態にある。
【0063】
次にこの状態から切替操作部24を図14及び図15の中間位置まで下向きに回転させると、図14(B)及び図15(B)に示しているように弁体76の回転によってその主流出口106が弁ケーシング78における第2主流出口110に一致した状態となり、ここにおいて原水がそれら主流出口106及び第2主流出口110を通じて原水シャワー通路70へと流れ込み、その後下端の原水シャワー吐水口64から下向きにシャワー吐水される。
【0064】
この状態から図14(C)及び図15(C)に示しているように切替操作部24を最下端まで下向きに回転操作すると、ここにおいてそれらの図に示しているように弁体76の更なる回転によって、その主流出口106が弁ケーシング78における第1主流出口108,第2主流出口110の何れに対しても不一致の状態となるとともに、弁体76における副流入口112及び副流出口116が弁ケーシング78における副流入口124及び副流出口126にそれぞれ一致した状態となり、ここにおいて弁体76に設けられた副通路120が上流側の浄水通路60Bに連通した状態となる。
【0065】
この状態の下において、原水は切替弁装置74によってその流路が遮断された状態にあるため、原水通路58Aから浄化カートリッジ42を半径方向に通り抜けてその中心部の浄水通路60Aへと到り(このとき原水が浄化カートリッジ42を通過することで浄化される)、そして浄水通路60A内の浄水が頭部28側の浄水通路60Bを経て弁体76の副通路120内部に流れ込む。
【0066】
副通路120内に流れ込んだ浄水は、引き続いて弁体76における副流出口116及び弁ケーシング78における副流出口126を経て浄水ストレート通路72へと流れ込み、その後下端の浄水ストレート吐水口66から下向きにストレート吐水される。
【0067】
図13に吐水ヘッド20における頭部28と吐水ヘッド本体26との組付構造が具体的に示してある。
【0068】
ここでは頭部28を内筒40の先端部に対し軸方向に嵌め込んだ後回転操作することで、これを抜止状態に固定するようになっている。
図13において、150は抜け防止のためのロック部であって、外筒部80の外周面に突出状に設けられている。
この外筒部80の外周面にはまた、ロック部150に対し周方向に隔たった位置に戻り回転防止用の突起152が設けられている。
【0069】
一方内筒40の先端部内周面には、ロック部150を差し込むための差込溝154と、その差込溝154に続いて周方向に延びるロック溝156と、差込溝154に沿って軸方向に突設された戻り回転防止用の突起158とが設けられている。
【0070】
この例の場合、ロック部150を差込溝154に合せるようにして頭部28を内筒40の先端部、即ち吐水ヘッド本体26に嵌め合せ且つこれを軸方向に差し込む。
その後これを図中右回転(時計回りに回転)させると、ロック部150がロック溝156に入り込んでロック溝156の周方向端に当接ないし当接可能な状態となる。この時点で頭部28の更なる回転が阻止される。
このとき外筒部80側の突起152が、内筒40側の突起158を乗り越えて差込溝154内に落ち込み、ここにおいて頭部28の逆方向の回転が阻止される。
【0071】
即ちここにおいて頭部28が吐水ヘッド本体26に対し右方向にもまた左方向にも回転阻止された状態となる。
また同時にロック部150とロック溝156との係合作用により、頭部28が吐水口ヘッド本体26から抜け防止される。
尚、頭部28を吐水ヘッド本体26から取り外すには以上とは逆の操作を行えば良い。
【0072】
このように本例では頭部28を吐水ヘッド本体26に対し簡単に脱着することができる。
またその頭部28を脱着することによって、図6に示しているように浄化カートリッジ42を吐水ヘッド本体26から簡単に取り出し、更に新規のものを新たに装着することができる。即ち浄化カートリッジ42を簡単に交換することができる。
【0073】
図16に、水栓の現場での設置施工に際し、通水検査等を行う際に浄化カートリッジ42に代えて用いられるダミーカートリッジ134の具体的構成が示してある。
このダミーカートリッジ134は断面十字状且つ長手形状をなす本体部136と、円形の大径部138と、凸形状部140とを有している。
本体部136の大径部138とは反対側の端部近傍には段付部142が形成されており、この段付部142が、頭部28の内筒部82の先端に当接して軸方向位置が規定されるようになっている。
【0074】
凸形状部140は、図17に示しているように上記緊急遮断弁51における弁体55の邪魔板61に当接してこれを図中左向きに押し、弁体55を開弁状態に保持するための部分で、その端面には上記邪魔板61の雄テーパ部に対応した雌テーパ形状の保持部144が形成されている。
凸形状部140は、この保持部144において邪魔板61に対し嵌合し、弁体55を軸直角方向に位置決めし保持する働きをなす。
【0075】
一方上記大径部138は、水栓10の吐水ヘッド20に装着した状態でその外周面が吐水ヘッド本体26における内筒40の内周面に嵌合する大きさとされている。
この大径部138には、水道水中のごみ等の異物をろ過し除去するためのストレーナ146が略全周に亘り設けられている。
【0076】
尚、本体部136における段付部142よりも先端側の部分は、頭部28における内筒部82の内側に嵌合し、本体部136の大径部138と反対側の端部を軸直角方向に位置決めする嵌合部148として構成されている。
【0077】
この例のダミーカートリッジ134は、図18に示すようにしてこれを水栓10内に組付けることができる。
即ち、吐水ヘッド20における頭部28を吐水ヘッド本体26から取り外し、その状態でダミーカートリッジ134を吐水ヘッド本体26の内部に凸形状部140の側から挿入した後、吐水ヘッド本体26に頭部28を組付けることで、ダミーカートリッジ134を上記浄化カートリッジ42の組付状態と同様の組付状態に吐水ヘッド本体26の内部に組付けることができる。
【0078】
図17に示しているように、ダミーカートリッジ134を水栓10の吐水ヘッド20内部に他の部品とともに組付けると、ここにおいて緊急遮断弁51の弁体55がダミーカートリッジ134により図中左向きに押された状態となる。即ち緊急遮断弁51がダミーカートリッジ134によって開弁させられ且つその状態に維持される。
従ってこの状態で通水検査をしたとき、水栓本体12の主弁7を経て吐水管16内部に流入して来た水は円滑に緊急遮断弁51を通過して、頭部28の吐水口から下向きに吐水する。
【0079】
またその際、水道水の流路上においてダミーカートリッジ134にストレーナ146が設けられているため、配管内から流出して来た多くのごみ等の異物が、そのダミーカートリッジ134のストレーナ146によって捕集され、それより下流側に異物が流れて行くことはない。
【0080】
従って頭部28に設けてあるストレーナ100に対し、流れて来たごみ等の異物が引っ掛かってその頭部28のストレーナ100を目詰りさせてしまうといった不都合を生じない。
【0081】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明のダミーカートリッジは上例以外の他の様々な形態で構成することが可能であるし、更にはまた上例以外の他の様々な浄水装置用のダミーカートリッジとして適用することが可能であるなど、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の浄水装置を内蔵した水栓を設置状態で示す図である。
【図2】 図1の切替操作部とその周辺部を示す要部拡大図である。
【図3】 図1の水栓の内部構造を示す図である。
【図4】 図3の吐水管の先端部の内部構造を拡大して示す図である。
【図5】 図3及び図4の緊急遮断弁とその周辺部を拡大して示す図である。
【図6】 図3の吐水管を各部材に分解して示す図である。
【図7】 図3の浄化カートリッジを拡大して示す図である。
【図8】 吐水管先端部に内蔵した切替弁装置とその周辺部を拡大して示す図である。
【図9】 図8の切替弁装置を各部材に分解して示す図である。
【図10】 図9における弁体と弁ケーシングとをそれぞれ単独で示す図である。
【図11】 図10の弁体と弁ケーシングとを組み付けた状態で示す図である。
【図12】 図8〜図11の弁体の構成を詳しく示す図である。
【図13】 吐水ヘッドにおける頭部と吐水ヘッド本体との組付構造を示す図である。
【図14】 図8〜図11の切替弁装置の作用説明図である。
【図15】 切替操作部の操作状態と吐水状態とを示す作用説明図である。
【図16】 浄水装置の通水検査等において用いられるダミーカートリッジを示す図である。
【図17】 図16のダミーカートリッジを水栓の吐水ヘッド内部に組み付けた状態を示す図である。
【図18】 図16及び図17のダミーカートリッジを吐水ヘッド内部に組み付ける際の手順の説明図である。
【図19】 従来のビルトインタイプの浄水装置をキャビネット内に設置した状態で示す図である。
【図20】 従来公知の浄水機能付きの水栓の要部を一部切り欠いて示す図である。
【符号の説明】
10 混合水栓
20 吐水ヘッド
22 ホース
42 浄化カートリッジ
51 緊急遮断弁
134 ダミーカートリッジ
146 ストレーナ
Claims (7)
- 水道水から成る原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置において、
前記浄化カートリッジに隣接する部品を前記浄化カートリッジを組み込んだときの本来の組付位置ないし組付状態に規制する、浄水装置の設置段階での通水検査時に本来の前記浄化カートリッジの代りに組付状態とされる、該浄化カートリッジとは別の通水検査用のダミーカートリッジを備えたことを特徴とする浄水装置。 - 請求項1において、前記ダミーカートリッジが軸方向に隣接する部品を本来の軸方向の組付位置ないし組付状態に規制するものであることを特徴とする浄水装置。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記浄化カートリッジに対して軸方向且つ上流側に隣接して位置し、該浄化カートリッジ組付状態で開弁状態を維持し、該浄化カートリッジが組付位置から外れたときに閉弁して流路を遮断する緊急遮断弁を備えており、前記ダミーカートリッジが組付位置で該緊急遮断弁を開弁状態に状態規制するものとなしてあることを特徴とする浄水装置。
- 水道水から成る原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置において、
浄水装置の設置段階での通水検査時に本来の前記浄化カートリッジの代りに組付状態とされる、該通水検査時に水道水中の異物を除去するためのストレーナを備えた、該浄化カートリッジとは別の通水検査用のダミーカートリッジを備えたことを特徴とする浄水装置。 - 請求項1〜4の何れかにおいて、水栓の吐水ヘッドに内蔵してあることを特徴とする浄水装置。
- 請求項5において、前記吐水ヘッドが可撓性のホースとともに引出し可能若しくは移動可能なものであることを特徴とする浄水装置。
- 水道水からなる原水を浄化カートリッジに通して浄化し、浄水として吐水する浄水装置を施工現場で設置施工するに際し、該浄水装置の設置段階での通水検査時に請求項1〜6の何れかに記載の前記ダミーカートリッジを浄水装置に組付状態として、その状態で通水検査を行い、該通水検査後に該ダミーカートリッジを取り外して、代りに本来の正規の浄化カートリッジを組み付けることによって施工を完了することを特徴とする浄水装置の設置施工方法。
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