JP3774379B2 - ホース収納式水栓の水切構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は可撓性のホースが吐水ヘッドとともに引出し及び収納可能とされたホース収納式水栓に関し、詳しくはホース表面の水切りを行うための水切構造に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
可撓性のホースを吐水ヘッドに接続し、そのホースを吐水ヘッドとともに引出及び収納可能となした形態のホース収納式の水栓が従来公知である。
この種のホース収納式の水栓は、シャワーヘッド等の吐水ヘッドをホースとともに引き出した状態でその吐水ヘッドから吐水を行い得ることから利便性が高く、キッチンの水栓や洗面化粧台の洗髪水栓等として従来から広く用いられている。
【0003】
しかしながらこの種ホース収納式の水栓の場合、可撓性のホースを伝って水が流下し、キャビネット内部に浸入してしまうといった困難な問題を内包していた。
【0004】
そこでこの種ホース収納式の水栓をキャビネット上に設置するに際しては、従来、図15に示しているようにキャビネット200内部に水受タンク202を配設し、可撓性のホース204を伝って流下しキャビネット200内部に浸入して来た水をこの水受タンク202で受け、そこに溜めるといったことが行われている。
【0005】
しかしながらこのようにするとホース収納式の水栓の設置に際して必ず水受タンク202が必要となり、その分コストが高くなるのに加えて、この水受タンク202の設置によってキャビネット200内部の収納スペースが狭くなってしまうといった問題を生ずる。
また水受タンク202に溜まった水を定期的に捨てるなどの作業を行わなければならず、そのためのメンテナンス作業が面倒になるといった問題が生ずる。
【0006】
そこで従来、ホースを水が伝って流下するのを防ぐために様々な工夫,対策が施されている。
図16はその一例を示している。
同図において、206はほぼ垂直に起立する水栓本体208から斜め上向きに延び出した、吐水ヘッドホルダとしての吐水管基部で、先端部に筒状をなすホースガイド208が装着されており、そのホースガイド208の先端部において吐水ヘッド210が取出可能に保持されている。
【0007】
ホースガイド208の内側にはホース挿通孔212が形成されていて、吐水ヘッド210に接続された可撓性のホース204がそのホース挿通孔212に摺動可能に挿通されている。
ここで吐水ヘッド212に接続されたホース204は、吐水ヘッドホルダとしての吐水管基部206内部の部分が斜め上向きをなしており、そしてその奥側の部分が水栓本体208内部、更にカウンターの下側の部分で下向きに垂れ下がっている。
【0008】
この例では、ホースガイド208の先端の開口214からホース204を伝って水が流下し、キャビネット内部に浸入するのを防ぐため、ホース挿通孔212とホース204との間の隙間を可及的に小さく(0.1mm程度)した上、ホースガイド208及び吐水管基部206に水抜孔216を設け、開口214から入り込んでホース204を伝う水をその水抜孔216から外部に排出するようになしている。
【0009】
その他従来にあっては様々な対策が考えられ提案されているが、何れもなおホースを伝ってキャビネット内部に水が浸入するのを十分には防止し得ず、依然としてキャビネット内部に水受タンクを設置することが不可避であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のホース収納式水栓の水切構造はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、吐水ヘッドに接続された可撓性のホースが該吐水ヘッドとともに引出し及び収納可能とされたホース収納式水栓におけるホース表面の水切構造であって、シート状を成して厚み方向に貫通する通孔が分散状に形成されて成る硬質の表面材と、該表面材の下側に重ねられ、該表面材の通孔を下側に通過して来た水を吸水する吸水材とを有する水切部材を、該表面材を前記ホース表面に摺接させる状態で配設してあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記吸水材が弾性を有するスポンジであることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記水切部材が水栓におけるホース収納部に内蔵してあることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記水切部材における前記吸水材は下端側が先細り形状をなしており、且つ該先細り形状の部分が下向き状態とされていることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、管状の吐水ヘッドホルダが斜め上向きに延び出していて該吐水ヘッドホルダ内部において、吐水ヘッドに接続された可撓性のホースが斜め上向きに摺動可能に挿通され、該ホースの該吐水ヘッドホルダ内の部分がその奥側の下向き垂下り状態の部分とともに該吐水ヘッドホルダを通じて前記吐水ヘッドとともに外部に引出可能且つ収納可能とされた形態のホース収納式水栓における水切構造であって、前記吐水ヘッドホルダの内部且つ水平方向に対し角度をなす基端位置に、前記ホースに摺接して該ホースの出し入れ時に該ホースの表面に付着した水を水切りする水切部材が配設してあるとともに、前記吐水ヘッドホルダには水切部材の下側位置において水抜孔が設けてあり、該水抜孔の内部に該水切部材の一部が入り込んでいることを特徴とする。
【0015】
【作用及び発明の効果】
上記のように本発明は、シート状をなし多数の通孔が分散状に形成されて成る硬質の表面材と、その下側に重ねられた吸水材とを有する水切部材を、その表面材がホース表面に摺接する状態で配設したもので、本発明によれば、ホースを伝って流下する水をその水切部材によって効果的に水切りし、そこで水の流下を食い止めることができる。
これによってホースを伝ってキャビネット内部に水が浸入するのを良好に防止することができる。
【0016】
ここで水切部材を、多数の通孔を分散状に有する硬質の表面材とその下側の吸水材とを重ねた形態で構成しているのは次の理由による。
例えば軟質の吸水材を直接ホース表面に摺接させる状態で配設しておいた場合、当初は良好にホース表面を伝う水を吸収し水切りすることができたとしても、ホースを何回も出し入れするうちにその表面が早期に損耗し、次第に水切効果が失われて行ってしまう。
【0017】
しかるに本発明では表面に多数の通孔を有する硬質の表面材を配しているため、そこでホース表面に付着している水をホース出し入れの際にしごくようにして良好に取り除くことができるとともに、その取り除いた水を下側の吸収材で吸収させ、それら役割の異なった2つの部材によって良好にホース表面の水を水切りすることができる。
即ちこのようにしておくことで、吸水材として吸水性能の高いスポンジのような軟質材を用いたとしても、その吸収材が損耗することなく長期に亘って良好な水切りを行うことができる。
【0018】
本発明によれば、従来キャビネット内部に設置が不可避であった水受タンクを省略することも可能となる。
従って水受タンクに要するコストを節減することが可能となり、或いはまた水受タンクの省略が可能となることによって、キャビネット内部の収納スペースを広く確保でき、或いはまた水受タンク内の水を捨てるためのメンテナンス作業を省略することも可能となる。
【0019】
ここで多数の通孔を有する硬質の表面材としてはメッシュメタル或いはパンチングメタル或いは同様のメッシュ或いはパンチ穴を有する樹脂等の硬質の材料を用いることができる。
また上記のように吸水材としてはスポンジを用いるのが好適である(請求項2)。
【0020】
上記水切部材は、水栓におけるホース収納部に内蔵しておくことができる(請求項3)。
更にまた水切部材における吸水材は下端側を先細り形状となしておき、そしてその先細り形状の部分を下向きとなるように配設しておくことができる(請求項4)。
このようにしておいた場合、吸水材にて吸収された水はその下端の先細り形状の部分から滴下して吸収材から自然に除かれて行き、従って吸水材は常に吸水能力を保持した状態に維持され、ある程度水を吸ったところで飽和点に達してしまって、以後吸水能力が低下してしまうといったことを良好に防止することができる。
【0021】
次に請求項5のものは、吐水ヘッドホルダが斜め上向きに延び出し、その内部に可撓性のホースが斜め上向き姿勢で摺動可能に挿通された上、その奥側の部分が下向き垂下り状態となるホース収納式水栓において、その吐水ヘッドホルダの内部且つ水平方向に対し角度をなす基端位置に水切部材を配設し、ホースの出し入れの際にその基端位置において水切部材によりホース表面の水切りを行うようになしたもので、この請求項5の水切構造にあっては、可撓性のホースが急カーブで出入りする部分に水切部材が位置して水切りを行うため、即ちホースとの間で摺接力が最も強くなる部分で水切部材による水切りを行うため、ホース表面に付着した水を効率的に除去することができる。
【0022】
またこのような位置に水切部材を設けて水切りするようになした場合、吐水ヘッドホルダの先端部分に水切構造を設けることで2段階に水切りを行うことが可能となり、吐水ヘッドホルダ先端部分で除ききれなかった水を、この基端位置の水切部材によって取り除くことができ、ホースを伝ってキャビネット内部に浸入する水を良好に阻止することができる。
【0023】
ここで上記水切部材はホースの下側位置に配設しておくことが望ましい。
また上記吐水ヘッドホルダは、起立状態の水栓本体より斜め上向きに延び出した吐水管基部にて構成することができる。
【0024】
この請求項5のものは、吐水ヘッドホルダにおける水切部材の下側位置に水抜孔を設けて、そこに水切部材の一部を入り込ませた点を特徴としており、このようにしておくことで、水切部材にて水切りされた水をその水抜孔を通じて良好に外部に排出することができる。
【0025】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、1はキッチンに設置されたキャビネットで、2はシンク、3はカウンターでこのカウンター3上にシングルレバー式の混合水栓(以下単に水栓とする)10が起立状態で設置されている。
同図において4は水栓10に対し水,湯を供給するためのサプライ管であって、下端部が止水栓5を介して元配管に接続され、また上端部が水栓10における水栓本体12にそれぞれ接続されている。
この水栓本体12からは下向きに接続管6が延び出しており、その接続管6に対して可撓性のホース22の端部が接続されている。
【0026】
水栓10は、水栓本体12の上部にシングルレバー式のハンドル14を備えており、更にまた水栓本体12からシンク2の上方に向って吐水管16が延び出している。
水栓本体12の内部には、図2に示しているように吐止水と吐水の水量調節及び温度調節を行う主弁7が内蔵されており、その主弁7に対し上記ハンドル14が作動的に連結されている。
この水栓10では、ハンドル14を左右に回動操作することで吐水の温度調節が行われ、また上下に回動操作することで吐止水及び吐水の水量調節が行われる。
【0027】
吐水管16は、水栓本体12に固定の吐水ヘッドホルダとしての吐水管基部18と、上記ホース22の端部が接続固定されてそのホース22とともに引出可能な吐水ヘッド20とを有している。
この吐水ヘッド20の先端部には、後に詳述する原水ストレート吐水,原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水を切替操作するためのレバー式且つ回転式の切替操作部24が外部に突き出す状態で設けられている。
【0028】
図5にも示しているように、吐水ヘッド20は吐水ヘッド本体(グリップ部)26とその先端側の頭部28とを有している。
ここで頭部28は吐水ヘッド本体26と別体とされていて、吐水ヘッド本体26に対し脱着可能とされている。
本例ではこの頭部28の脱着によって、その内部に収容されている後述のカートリッジ42が交換可能とされている。
【0029】
ここで頭部28は、吐水ヘッド本体26に取り付けられた状態でカートリッジ42を軸方向、詳しくは図5中左方向に押えるカートリッジ押えとしての働きも有している。
吐水ヘッド本体26には、その基端部に上記ホース22がシール部材30によるシールの下に水密に接続固定されている。
【0030】
ここでホース22は、吐水管基部18の先端部に備えられた筒状をなすホースガイド31の中心部のホース挿通孔32に軸方向に摺動可能に挿通されている。
この吐水管基部18は、その先端部に備えられたホースガイド31において吐水ヘッド20を保持する機能も有している。
【0031】
吐水ヘッド本体26は、筒状をなす化粧カバー(外筒)38と内筒40との二重筒構造をなしており、その内部に原水(水道水)を半径方向に通過させることによってこれを浄化するカートリッジ42が収容されている。
【0032】
カートリッジ42は全体として円筒形状をなす部材であって、中心部の円筒形状の多孔質のセラミックフィルタ44を有しており、これを支持体としてその外面に珪藻土46の層が、更にその外面に活性炭48の層が積層形成され、その外周面に不織布50が巻き付けられている。
【0033】
このカートリッジ42は前後端に非通水性のエンドキャップ52,54を有している。
これらエンドキャップ52,54はそれぞれ透光性の部材にて構成されており、これらエンドキャップ52,54を通じてカートリッジ42の端面、具体的にはセラミックフィルタ44,珪藻土46の層,活性炭48の層,不織布50の層の端面を外部から目視観察できるようになっている。
即ちこれらエンドキャップ52,54を通じてカートリッジ42の各層の汚れ具合を目視観察できるようになっている。
【0034】
これらエンドキャップ52,54の外周面には周方向に所定間隔でリブ56が形成されており、それらリブ56の外周端が内筒40の内周面に当接するようになっている。
即ちこれらリブ56によってカートリッジ42の外周側、詳しくはカートリッジ42の外周面と吐水ヘッド本体2626における内筒40の内周面との間に原水通路58Aが形成されている。
またカートリッジ42におけるセラミックフィルタ44の内側に浄水通路60Aが形成されている。
【0035】
上記頭部28には、図2及び図5に示しているようにその下面に、原水を整流束としてストレート吐水する原水ストレート吐水口62,原水をシャワー水としてシャワー吐水する原水シャワー吐水口64及び浄水を整流束としてストレート吐水する浄水ストレート吐水口66がそれぞれ別々に設けられている。
またそれら各吐水口62,64,66に連通して原水ストレート通路68,原水シャワー通路70及び浄水ストレート通路72がそれぞれ形成されている。
【0036】
上記カートリッジ42の下流側であって頭部28の内部には、原水ストレート吐水,原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水を切り替えるための切替弁74(図8参照)が配設されている。
この切替弁74はシリンダ式の弁であって、図8,図10に示しているように段付形状且つ円筒状をなす弁体76と、これに水密に外嵌する弁ケーシング78とを有している。
【0037】
弁体76は軸方向に突き出す軸部80を有しており、この軸部80に対しレバー式且つ回転式の切替操作部24の基部82及びスペーサリング84が一体回転状態に嵌合されている。
即ち、軸部80の外周には雄スプライン部86が形成される一方、切替操作部24の基部82及びスペーサリング84の内周には雌スプライン部88が形成されていて、それらが互いに噛み合う状態に軸部80と基部82及びスペーサリング84が嵌合され、それらスプライン部86,88の噛合いに基づいて軸部80と基部82及びスペーサリング84が一体回転するようになっている。
尚、軸部80には雌ねじ孔90が形成されていてそこに固定ねじ92がねじ込まれ、以って軸部80、即ち弁体76と切替操作部24とが軸方向に締結固定されている。
【0038】
上記弁体76には軸方向の異なった位置に大径部と小径部とが形成されており、その大径部によって原水弁部94が、また小径部によって浄水弁部96がそれぞれ構成されている。
原水弁部94の内部空間,浄水弁部96の内部空間はそれぞれ原水室98,浄水室100とされており、それらが仕切部材102にて軸方向に水密に仕切られている。
【0039】
尚、原水弁部94側の末端の開放部は閉鎖部材104にて閉鎖されている。
この閉鎖部材104には断面三角形状の仕切押え106が形成されており、その仕切押え106によって仕切部材102が軸方向に押えられている。
【0040】
上記弁ケーシング78には、図8及び図10に示しているように原水通路58Aからの原水を原水弁部94の内側の原水室98内部に流入させるための通水用の開口108と、浄水通路60Aからの浄水を浄水弁部96の内側の浄水室100内部に流入させるための通水用の開口110とが形成されている。
【0041】
この弁ケーシング78にはまた、円筒形状の差込嵌合部112が一体に形成されており、この差込嵌合部112が吐水ヘッド本体26における内筒40の先端部内周面にOリング114を介して水密に差込嵌合されている。
即ちこの差込嵌合部112を介して、弁ケーシング78と吐水ヘッド本体26の内筒40とが水密に接続されている。
【0042】
116は弁ケーシング78に形成された浄水を流入させるための通水用の開口110と、カートリッジ42の中心部の浄水通路60Aとを連絡する連絡管であって、大径部118とこれより偏心した位置に形成された小径部120とを有しており、その大径部118の内部に、上記エンドキャップ52に設けられた嵌合凸部122がOリング114を介して水密に嵌合されている。
また小径部120が弁ケーシング78に形成された嵌合凹部124内にOリング114を介して水密に嵌合されている。
【0043】
ここで連絡管116は、図8及び図10に示しているようにその内部に浄水通路60Aに続く浄水通路60Bを形成しており、またその外側に、詳しくは差込嵌合部112との間に原水通路58Aに続く原水通路58Bを形成している。
【0044】
上記弁ケーシング78には、弁体76における原水弁部94内部の原水室98を上記原水ストレート通路68に連通させるための原水ストレート吐水用開口126と、原水シャワー通路70に連通させるための原水シャワー吐水用開口128とが半径方向に貫通する状態で設けられている。
また一方浄水弁部96側においては、浄水室100を浄水ストレート通路72に連通させるための浄水用開口130が半径方向に貫通する状態で設けられている。
【0045】
上記弁体76における原水弁部94は、原水ストレート弁部及び原水シャワー弁部を兼ねたものであって、図9にも示しているように弁ケーシング78における開口108からの原水を原水室98内に流入させるための通水用の開口132と、原水室98を弁ケーシング78における原水ストレート吐水用開口126又は原水シャワー吐水用開口128を経て、原水ストレート通路68又は原水シャワー通路70に連通させるための通水用の開口134とが半径方向に貫通する状態で設けられている。
ここで開口132は回転方向に長い長穴形状とされている。
【0046】
また一方浄水弁部96には、弁ケーシング78における開口110からの浄水を浄水室100内に流入させるための通水用の開口136と、浄水室100を弁ケーシング78における浄水用開口130を経て浄水ストレート通路72に連通させるための通水用の開口138とが半径方向に貫通する状態で設けられている。
【0047】
本例において、切替弁74は次のように作用する。以下これを図11及び図12に基づいて具体的に説明する。
図11(I)及び図12(I)は原水のストレート吐水状態を示している。
このときレバー式且つ回転式の切替操作部24は最も上方に持ち上げられた状態にあり、また切替弁74は、切替操作部24の操作に基づいて図11(I)に示しているように弁体76における原水弁部94の長穴形状の開口132を弁ケーシング78の開口108に連通させ、また弁体76における開口134を弁ケーシング78の原水ストレート吐水用開口126に連通させた状態にある。
また浄水弁部96は弁ケーシング78の開口110を閉鎖した状態にある。
【0048】
従ってこの状態の下では、吐水ヘッド本体26内部のカートリッジ42外周側に形成された原水通路58Aからの原水が、切替弁74を経て原水ストレート通路68及び原水ストレート吐水口62へと到り、そこから下向きに整流束としてストレート吐水される。
このとき当然ながら浄水ストレート吐水口66からの浄水の吐水は行われない。
【0049】
次にこの状態から切替操作部24を図11(II)の中間位置まで下向きに回転させると、図11(II)及び図12(II)に示しているように弁体76における開口132と弁ケーシング78の開口108との連通を保った状態で、弁体76における開口134が弁ケーシング78の開口128に一致する状態となり、ここにおいて原水通路58Aからの原水が、今度は原水シャワー通路70及び原水シャワー吐水口64に導かれて、そこより下向きにシャワー水として吐水される。
尚図12(II)に示しているように、このときにも切替弁74における弁体76の浄水弁部96は浄水の通路を遮断した状態にあり、従って浄水ストレート吐水口66からの浄水の吐水は行われない。
【0050】
この状態から図11(III)及び図12(III)に示しているように切替操作部24を更に下向きに回転操作すると、ここにおいてそれらの図に示しているように切替弁74により原水の通路が遮断される一方、浄水の通路が開放される。
【0051】
このとき原水通路58A内の原水は、原水の通路が切替弁74によって遮断された状態となるため給水圧によってカートリッジ42を半径方向に突き抜け、その中心部に形成されている浄水通路60Aへと到る。
そしてこのカートリッジ42を通過することによって原水の浄化が行われる。
【0052】
而してカートリッジ42を通過して浄化された後の浄水は、カートリッジ42内部の浄水通路60Aから弁ケーシング78の開口110及び弁体76における開口136を通じて浄水室100内に流入し、更にその浄水室100から弁体76の開口138及び弁ケーシング78の開口130を経て浄水ストレート通路72へと流出し、更にその先端の浄水ストレート吐水口66から下向きに整流束としてストレート吐水される。
【0053】
図5及び図6に示しているように、吐水ヘッド20の基端部には緊急遮断弁51が設けられている。詳しくは吐水ヘッド20の基端部且つホース22の接続固定部において緊急遮断弁51が設けられている。
【0054】
ここで緊急遮断弁51は、カートリッジ42が装着位置から外れたときに自動的に閉弁して流路を遮断するもので、筒状をなす弁ケーシング53と弁体55とを有している。
弁ケーシング53は軸方向の一端側(図中左端側)がホース22に固定されており、また他端側(図中右端側)が固定リング57によって吐水ヘッド20に固定されている。
【0055】
ここで固定リング57は吐水ヘッド20における内筒40に対しねじ結合されている。即ち固定リング57を内筒40にねじ込んで行くことで、弁ケーシング53が吐水ヘッド20の内筒40に接続固定される。
【0056】
弁体55には軸部59が設けられており、その軸部59の端部(図中右端側)に邪魔板61が設けられている。
この邪魔板61にはスプリング63の付勢力が図中右向きに作用しており、図6(B)に示しているようにカートリッジ42を取り外すと、弁体55はこのスプリング63の付勢力に基づいて弁ケーシング53の弁座65に着座し緊急遮断弁51が閉弁する。
即ち弁座65への弁体55の着座によって流路を遮断する。
但し通常時は図6(A)に示しているようにカートリッジ42が邪魔板61を介して弁体55をスプリング63の付勢力に抗して図中左向きに押し込んでおり、従って緊急遮断弁51はカートリッジ42によって通常時は開弁状態に維持される。
【0057】
上記カートリッジ42には、軸方向端部(図中左端部)に弁体55を押えるための弁押えとしての凸形状部67が設けられており、その凸形状部67が弁体55における邪魔板61に当接して、スプリング63の付勢力に抗し弁体55を図中左向きに押し込んでいる。
【0058】
凸形状部67には、弁体55における邪魔板61に対応する雌テーパ形状の保持部69が形成されており、この保持部69が邪魔板61の雄テーパ形状部に嵌合して軸直角方向に弁体55を位置保持している。
即ちこの保持部69の作用によって、流路を湯水が流通する際に弁体55が軸直角方向にぶれたりがたついたりするのが防止されている。
【0059】
弁体55、詳しくは弁座65への当接部には切欠部71が設けられている。この切欠部71は、流路における緊急遮断弁51よりも上流側の圧力を下流側へとリークさせるためのリーク機構を成すもので、図6(C)に示しているように弁体55が弁座65に着座した状態の下で、切欠部71によってそれらの間に若干の隙間が形成され、同部分を通じて緊急遮断弁51よりも上流側の圧力が下流側へとリークする。
【0060】
本例の水栓10の場合、上記緊急遮断弁51はカートリッジ42の押圧作用で通常時は開弁状態を維持しており、従ってハンドル14を開操作して主弁7を開くと、そこから湯水がホース22を経由して吐水ヘッド20へと到り、先端の吐水口62又は64から外部に吐水される。
またハンドル14を水側に開操作した状態で切替操作部24を切替操作することで、吐水ヘッド20へと送られて来た水が原水の状態で或いは原水を浄化した浄水の状態で各吐水口62,64,66の何れかから原水ストレート吐水,原水シャワー吐水若しくは浄水ストレート吐水される。
【0061】
一方カートリッジ42を交換する必要が生じたときには、ハンドル14を閉操作して主弁7を閉じた上で、吐水ヘッド20における頭部28を吐水ヘッド本体26から取り外す。
そして吐水ヘッド20、詳しくは吐水ヘッド本体26内部に収容状態にあるカートリッジ42を、頭部28の取外しによって開放された開口部を通じて新規のものと交換する。
このときカートリッジ42が本来の装着位置から外れると同時に緊急遮断弁51がスプリング63の付勢力により自動的に閉弁し流路を遮断する。
尤もこのときには通常主弁7は閉じているので流路内に給水圧は働いておらず、従って緊急遮断弁51がなくてもそこから湯水が勢い良く外部に飛び出すといったことはない。
【0062】
但しこのカートリッジ42の交換時において、使用者の操作忘れによってハンドル14が閉操作されていないとき、即ち主弁7が閉じていないとき、そのような緊急遮断弁51が設けられていないと、頭部28を取り外してカートリッジ42を交換する際に、ホース22からの湯水が勢い良く外部に飛び出して使用者の顔等に当ったりする恐れがある。
【0063】
しかるに本例の水栓10ではカートリッジ42の交換時に緊急遮断弁51が自動的に閉弁するため、カートリッジ42交換時において主弁7が閉じていなかった場合でも、或いはまた一旦は主弁7を閉じたとしてもカートリッジ42の交換の際に誤ってハンドル14に手が触れて主弁7が開いてしまった場合でも、緊急遮断弁51の閉弁により、ホース22からの湯水が勢い良く外部に飛び出すといったことはない。
【0064】
更にはまた、何らかの原因で頭部28が吐水ヘッド本体26から外れ、これによってカートリッジ42による弁押えとしての機能が消失した場合であっても、頭部28が湯水の勢いによって使用者に向って飛んで来るといった恐れがない。
【0065】
図6に示しているように、本例ではホースガイド31の内側のホース挿通孔32とホース22との間の隙間は可及的に小さな隙間(0.1mm程度の隙間)とされており、これによってホースガイド31の先端の開口からホース22を伝って水がその内部に侵入するのが抑制されている。即ちこの例ではホースガイド31自体が水切部材を兼ねている。
ここでホースガイド31及び吐水管基部18には、ホースガイド31の開口を通じホース22を伝って水が流下して来たとき、これを外部に排出するための水抜孔33,35が設けられている。
【0066】
本例において、吐水ヘッドホルダとしての吐水管基部18は、図2及び図3に示しているようにほぼ垂直に起立する水栓本体12から所定角度で斜め上向きに延び出している。
そして上記ホースガイド31の更に下側において、この吐水管基部18には別途の水切部材75が配設されている。
ここで水切部材75は吐水管基部18の、水平方向に対し所定角度をなす基端に且つホース22の下側位置に配設されている。
【0067】
この水切部材75は、ホース22に直接接触する表面材77とその下側に重ねられた吸水材79とを有している。
表面材77はメッシュメタルから成るシート状の部材であって、図4(B)の拡大図に示すように、全面に亘りこれを厚み方向に貫通する通孔を有している。
一方下側の吸水材79はここでは軟質のスポンジから成っている。
【0068】
この吸水材79は、その下端部が図4に示しているように先細り形状となっており、その先細り形状部分81が上側のシート状の表面材77とともに、吐水管基部18の基端に形成された水抜孔83の内部に一部入り込んでいる(図3参照)。
即ち吸水材79及び表面材77は、その下端部が斜め下向きに垂れた状態となって水抜孔83に入り込んでいる。
【0069】
この例では、水切部材75が下向きに垂下り状態から吐水管基部18内部に急カーブして入り込む部分、即ちホース22の急カーブとなる部分に配設されている。
尚、表面材77における上端部内面は、図3の部分拡大図及び図4(A)に示しているようにホース22の形状に対応した凹曲面85とされている。
【0070】
上記説明から明らかなように、本例においては吐水管基部18に沿って水切構造が2段に設けられている。
即ちホースガイド31及び水抜孔33,35にて第1段の水切りが行われ、そしてそれでもなお取り除き得なかったホース22表面の水を、次段の水切部材75及び水抜孔83によって水切りを行う構造とされている。
【0071】
このような本例の水切構造の場合、ホース22を吐水ヘッド20とともに出し入れする際、ホース22を伝って流下する水を水切部材75及び水抜孔83によって良好に水切りすることができ、そこで水の流下を食い止めることができる。
これによってホース22を伝ってキャビネット内部に水が浸入するのを良好に防止することができる。
【0072】
また本例の水切部材75は、表面に多数の通孔を有する硬質の表面材77を配しているため、そこでホース表面に付着している水をホース出し入れの際にしごくようにして良好に取り除くことができるとともに、その取り除いた水を下側の吸収材79で吸収させ、役割の異なった2つの部材によって良好にホース表面の水を水切りすることができる。
即ちこのようにしておくことで、吸水材79として吸水性能の高いスポンジのような軟質材を用いたとしても、その吸収材79が損耗することなく長期に亘って良好な水切りを行うことができる。
【0073】
また本例によれば、キャビネット内部の水受タンクを省略することができるため、水受タンクに要するコストの節減を図ることができる。またキャビネット内部の収納スペースを広く確保できるとともに、水受タンク内の水を捨てるためのメンテナンス作業を省略することも可能となる。
【0074】
本例では、吸水材79にて吸収された水はその下端の先細り形状部分81から滴下して吸収材79から自然に除かれて行く。このため吸水材79は常に吸水能力を保持した状態に維持され、ある程度水を吸ったところで飽和点に達してしまい、以後吸水能力が低下してしまうといったことを良好に防止できる。
【0075】
更に本例の水切構造にあっては、可撓性のホース22が急カーブで出入りする部分に水切部材75を配置して、ホース22と水切部材75との間で摺接力が最も強くなる部分で水切りを行うため、ホース表面に付着した水を効率的に除去することができる。
【0076】
またこのような基端位置に水切部材75を設けて水切りするようにしているため、吐水管基部18の先端部分に水切構造を設けることで2段階に水切りを行うことが可能となり、吐水管基部18の先端部分で除ききれなかった水を、この基端位置の水切部材75によって取り除くことができ、ホース22を伝ってキャビネット内部に浸入する水を良好に阻止することができる。
【0077】
また吐水管基部18における水切部材75の下側位置に水抜孔83を設けているため、水切部材75にて水切りされた水をその水抜孔83を通じて良好に外部に排出することができる。
【0078】
尚ここでは表面材77としてメッシュメタルを用いているが、パンチングメタルを用いることも可能であるし、或いはまたメッシュ或いはパンチ穴を有する樹脂その他の硬質材でこれを構成することもできる。
また上記吸水材79としてスポンジ以外の吸水材を用いることも可能である。
【0079】
次に図13,図14は本発明の他の実施例を示している。
この例はホルダに対して表面材と吸水材とを予め組み付けてユニットと成し、以って水切部材を構成した例である。
図において75はその水切部材であって、87はホルダである。この例ではホルダ87は樹脂製とされている。
【0080】
このホルダ87に対して硬質の表面材77と吸水材79とが組み付けられている。この例において、表面材77は上記実施例と同様にメッシュメタルにて構成されており、また吸水材79も上例と同じくスポンジにて構成されている。
【0081】
ここでホルダ87は平坦部89と下向きに湾曲する湾曲部91とを有しており、その平坦部89に上記表面材77が上向きに突出する状態で一体に設けられている。
尚この例において、表面材77は図14(B)に示しているように外周部にフランジ部93を有しており、そのフランジ部93が樹脂製のホルダ87の内部に埋込状態で固設されている。ここでは樹脂製のホルダ87を成形する際に、インサート成形により表面材77とホルダ87とが一体化されている。
【0082】
尚、ホルダ87における湾曲部91の先端部分には係合突起97が設けられている。一方ホルダ87の裏面には左右に一対の押え爪99が設けられており、この押え爪99によりスポンジから成る吸水材79がホルダ87の裏面側に保持されている。
【0083】
一方ホルダ87の裏面側には、左右の各端部に蟻溝状の被保持凹部101が設けられている。またこれに対応して吐水管基部18側には、図14(B)に示しているように蟻突条形態の保持突起103が設けられており、それら被保持凹部101と保持突起103との嵌合に基づいて、水切部材75が吐水管基部18に組み付けられ保持されるようになっている。
【0084】
吐水管基部18には、水抜孔83の部分において一対のリブ105の間に係合溝107が形成されており、その係合溝107に、ホルダ87における先端の前記係合突起97が係入させられており、ホルダ87即ち水切部材75の先端部分が吐水管基部18に対ししっかりと固定されている。
尚、図13(A)に示しているように表面材77の表面は上記実施例と同様に凹曲面85とされている。
【0085】
以上のように構成された水切部材75の場合、上記実施例と同様にして良好に水切作用を行うことができ、且つ良好な水切性能を長期に亘って維持することができる。
【0086】
加えてこの例の水切部材75の場合、吐水管基部18に対して極めて簡単に組付けることができる利点がある。即ちその組付性が上記実施例1のものに較べて良好である。
【0087】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上例の水栓は水道水を浄化する浄水機能を有しているが、本発明はそのような浄水機能を有しないホース収納式の水栓その他様々な形態の水栓に対して適用することが可能であるなど、その主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の適用対象であるホース収納式水栓の一例をキャビネット上に設置した状態で示す図である。
【図2】 図1の水栓の内部構造を示す図である。
【図3】 図2の水切構造を周辺部とともに拡大して示す図である。
【図4】 図3の水切構造を周辺部との関連で示した図である。
【図5】 図2に示すの吐水管の内部構造を拡大して示す図である。
【図6】 図5に示す緊急遮断弁の作用説明図である。
【図7】 図5に示す構造を各部材に分解した状態で示す図である。
【図8】 図5の吐水ヘッドの先端部の内部構造を拡大して示す図である。
【図9】 図8に示す切替弁の作用説明図である。
【図10】 図8の要部を各部材に分解して示す図である。
【図11】 図8に示す切替弁の作用を断面図で示す図である。
【図12】 同じ図8の切替弁の作用を切替操作部の操作状態との関連で示した図である。
【図13】 本発明の他の実施例における水切部材の図である。
【図14】 図13の水切部材を周辺部とともに示す図である。
【図15】 本発明の背景説明のための説明図である。
【図16】 従来採用されている水切構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 水栓
18 吐水管基部
20 吐水ヘッド
22 ホース
75 水切部材
77 表面材
79 吸水材
81 先細り形状部分
83 水抜孔

Claims (5)

  1. 吐水ヘッドに接続された可撓性のホースが該吐水ヘッドとともに引出し及び収納可能とされたホース収納式水栓におけるホース表面の水切構造であって、
    シート状を成して厚み方向に貫通する通孔が分散状に形成されて成る硬質の表面材と、該表面材の下側に重ねられ、該表面材の通孔を下側に通過して来た水を吸水する吸水材とを有する水切部材を、該表面材を前記ホース表面に摺接させる状態で配設してあることを特徴とするホース収納式水栓の水切構造。
  2. 請求項1において、前記吸水材が弾性を有するスポンジであることを特徴とするホース収納式水栓の水切構造。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記水切部材が水栓におけるホース収納部に内蔵してあることを特徴とするホース収納式水栓の水切構造。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記水切部材における前記吸水材は下端側が先細り形状をなしており、且つ該先細り形状の部分が下向き状態とされていることを特徴とするホース収納式水栓の水切構造。
  5. 管状の吐水ヘッドホルダが斜め上向きに延び出していて該吐水ヘッドホルダ内部において、吐水ヘッドに接続された可撓性のホースが斜め上向きに摺動可能に挿通され、該ホースの該吐水ヘッドホルダ内の部分がその奥側の下向き垂下り状態の部分とともに該吐水ヘッドホルダを通じて前記吐水ヘッドとともに外部に引出可能且つ収納可能とされた形態のホース収納式水栓における水切構造であって、
    前記吐水ヘッドホルダの内部且つ水平方向に対し角度をなす基端位置に、前記ホースに摺接して該ホースの出し入れ時に該ホースの表面に付着した水を水切りする水切部材が配設してあるとともに、前記吐水ヘッドホルダには水切部材の下側位置において水抜孔が設けてあり、該水抜孔の内部に該水切部材の一部が入り込んでいることを特徴とするホース収納式水栓の水切構造。
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