JP3778766B2 - 気泡有含焼菓子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、起泡安定性が改善されたホエー蛋白単離物を使用し、泡立てた成分を含有する焼菓子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、次のa)〜e)、
a)少なくともホエー蛋白単離物及び有機酸を水に溶解し、加熱し、吸光度を調整する工程、
b)冷却する工程、
c)前記b)工程で得られた混合物又はこれにその他の焼菓子成分を混合し、泡立てる工程、
d)前記c)工程で得られた混合物を耐熱性容器に所定量充填する工程、及び
e)混合物を充填した容器をオーブンにより焼成する工程、
の各工程からなる気泡含有焼菓子の製造方法である。
本明細書において百分率は、特に断りのない限り重量による表示である。
【0002】
【従来の技術】
ホエー蛋白単離物(whey protein isolate:以下、WPIと略記する。)については、従来から熱凝固性、ゲル化性、乳化性及び起泡安定性等の機能性が認められており、多くの研究がなされている。起泡安定性には起泡性(起泡能力、どの程度の泡を保持し得るか)と泡沫安定性(一度形成された泡をどの程度維持し得るか)の2つの見解があり、一般的にホエー蛋白質溶液の起泡安定性は蛋白質含量、pH、塩及びイオン強度、糖及び脂質含量、及び熱処理等に影響されるといわれている(堂迫俊一著、「食品タンパク質の科学−タンパク食品の製造と利用編−」、第107ページ、食品資材研究会、1987年)。
しかし、一般的に製造されているホエー蛋白質濃縮物(whey protein concentrate:以下、WPCと略記する。)、WPI等のホエー蛋白質は、乳原料の産地及び由来、並びに製造方法及び工程によりその蛋白質含量、pH、塩バランス、脂質含量等が異なっているのが現状である。即ち、多種多様なWPIにより、その起泡安定性が異なる可能性が考えられる。
【0003】
例えば、WPIの加熱ゲル物性に及ぼす蛋白質濃度、pH及び塩化カルシウムの影響について示されており、この中でpHの影響について他の研究者と異なる実験結果を得ているが、この理由としてホエー蛋白質原料の相違を指摘している(酪農科学の研究、第42巻、第3号、第A−117ページ、1993年)。このように、この文献ではゲル化性について記載されているが、起泡安定性についても同様にホエー原料由来の影響が十分考えられることである。
一方、このホエー蛋白質の有する起泡安定性を利用した食品の製造方法については、従来より種々の方法が知られている。例えば、膨脹した多孔性(フォーム)組織を有し、かつ全固形物の7〜20%の少なくとも1つの蛋白質と全固形物の10〜65%の穀物フレークとを含み、これらの蛋白質及び穀物フレークは膨脹した前記多孔性組織内に分散され含まれているクッキーが示されており(特開平6−90654号公報)、泡立たせることが可能であり、泡発生蛋白質の例の一つとしてミルク及びホエー蛋白質が列挙されているが、ここに列挙されている泡発生蛋白質は、何れも卵白蛋白質の一部置換として使用されており、ホエー蛋白単独使用での泡発生については何ら記載されていない。
【0004】
また、パン様の皮(casing)で被包された水分含有フィリング(filling)又は詰め物及びフィリングをパン様の皮から分離する中間層を含む食品及びその製造方法について開示されており(特許第2528734号公報)、その中間層が1.5乃至4.0m3/kg、望ましくは2.0乃至3.0m3/kg、の比容と完全に発達した気泡クラム構造を有するケーキ材料であること、その材料の例としてホエー蛋白質が例示されているが、目的の気泡クラム構造を得るためには、ホエー蛋白質を含む水溶性蛋白質の他に非常に特殊な乳化剤とともにC12〜C24の脂肪酸アシルラクテートが必要としており、かつケーキ材料の焼成を耐熱性容器に入れて行うことについては何ら記載されていない。
【0005】
また、脂肪代替物として蛋白質凍結ゲルを添加することを特徴とするホイッピング・クリームの製造方法についても開示されているが(特許第2844376号公報)、蛋白質の例としてホエー蛋白質が例示されているが、蛋白質の使用までの間に、蛋白質溶液を加熱する工程、これを凍結する工程、凍結ゲルを解凍する工程及び解凍ゲルをホモミキサー等で細粒化しスラリー状にする工程があり、極めて作業が煩雑であり、連続的に製造することが困難であり、実用的ではない。
【0006】
更に、水溶性蛋白質を起泡し、加熱した糖液を添加し、泡立て、この泡状物に卵液を混合し、加熱調理して得られた卵食品及びその製造方法についても開示されており(特許第2710013号公報)、水溶性蛋白質の例としてホエー蛋白質が例示されている。この方法では蛋白質溶液を泡立てた後に115℃程度に加熱した糖液を混合しているが、重量比で泡状物1に対して糖液を4乃至7の割合で混合しており、均一に混合するには時間を有し、衛生的にも十分でない。
【0007】
一方、ホエー蛋白質の起泡安定性を向上させるために従来から種々の方法が知られている。例えば、WPCの起泡性がマイクロフィルトレーション処理(脱脂)により大幅に改善されたと記載されているが(日本食品工業学会誌、第32巻、第639頁、1985年)、マイクロフィルトレーションの工程が必要であり、脱脂処理をしても起泡性及び泡沫安定性ともWPIより劣っている。
【0008】
乳清蛋白質含有液のpHを4以下又は6以上に調製し、55℃以上に加熱した後に、10℃以下に冷却保存することにより、加熱や冷凍にも安定して、乳化性、乳化安定性、起泡性及び泡沫安定性等を良好に保つ透明な乳清蛋白質加工品を得る方法が開示されているが(特開平4−267850号公報)、起泡性及び泡沫安定性等を良好に保つための冷却時間が1週間と長く現実的でない。
【0009】
また、ホエー、又はホエー蛋白質若しくはその濃縮物をpH6.5乃至9及び温度20乃至55℃に調製した物に、トリプシンを酵素/基質重量比として1/5乃至1/90となるように添加して部分加水分解することを特徴とする起泡安定性が良好なホエー蛋白質の調製法が示されているが(特開昭61−96956号公報)、この方法では、泡沫安定性は向上する一方、起泡性は低下する。
【0010】
また、チーズホエー蛋白質の製造において、特に当該蛋白質含有組成液にトランスグルタミナーゼを作用させること、その際予熱処理とpH調整を適宜組み合わせることにより、特にその前段階でpH調整と予備加熱を行う等の方法により、得られるチーズホエー蛋白は、その後100℃以上で加熱しても蛋白の凝集不溶化が生ずることがなく、処理されたチーズホエーから得られるゲルや、利用された食品がざらつきのない喉ごし性に優れた食感を呈し、かつ乳化性、起泡性、保水性等の好ましい物理特性を高度に保持できると記載されているが(特開2000−4786号公報)、具体的に起泡性が改善された実施例が示されていない。
【0011】
従って、チーズ製造時の副産物であるホエー蛋白質の有効利用のため、WPIの起泡安定性を焼菓子製造に応用しようとした場合、先ず、WPIの原料由来(蛋白質含量、pH、塩バランス、脂質含量等)の影響を受けずに適切な起泡安定性を確保し、それを焼菓子製造に有効に利用する方法が待望されていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、原料由来の影響を受けず、かつ簡単な方法によりWPIの起泡安定性を向上させる方法及びそれを有効に焼菓子に利用する方法に関し、鋭意研究を重ねた結果、WPIを含む溶液に有機酸を添加して加熱し、蛋白質を部分的に変性させることにより、ホエー蛋白質分離物の起泡安定性が原料由来の影響を受けず且つ簡単な方法で改良することを見出し、それを有効に焼菓子製造利用することにより本発明を完成した。
【0013】
本発明は、起泡安定性の認められているWPIを焼菓子の製造に使用するにあたり、先ず、WPI原料由来(蛋白質含量、pH、塩バランス、脂質含量等)の影響を受けずに、かつ簡単な方法で起泡安定性を向上させ、これを焼菓子の製造に有効に利用し、外観、食感及び風味の優れた焼菓子を得ることを目的とした。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、次のa)〜e)、
a)少なくともホエー蛋白単離物及び有機酸を水に溶解し、加熱し、混合物の濁度を420nmにおける吸光度で3.9乃至6.5に調整する工程、
b)冷却する工程、
c)前記b)工程で得られた混合物又はこれにその他の焼菓子成分を混合し、泡立てる工程、
d)前記c)工程で得られた混合物を耐熱性容器に所定量充填する工程、及び
e)混合物を充填した容器をオーブンにより焼成する工程、
の各工程からなる気泡含有焼菓子の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、有機酸が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸及びフマル酸からなる群より選択される1種又は2種以上であること、ホエー蛋白単離物及び有機酸を含有する混合物の加熱が、65乃至100℃で1乃至60分間実施されること、及び焼成が、120乃至250℃で行われることを望ましい態様としてもいる。
次に、本発明について具体的に説明する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するWPIは、チーズ製造工程の副産物として得られるホエーから常法のイオン交換樹脂により蛋白質を分離し、UF膜により脱塩し、濃縮し、殺菌し、噴霧乾燥された物であり、標準的な組成としては、脂肪1.0%、蛋白質90.0%、炭水化物1.0%、灰分2.0%及び水分6.0%である。
このWPIは、適切な起泡安定性を確保するために、濃度を3%前後に調整されることが好ましい。また、WPI及び有機酸の他に、適切な起泡安定性を確保するために、砂糖、ゼラチン等を適宜添加することも可能である。
【0017】
有機酸の添加量は、後記試験例から明らかなとおり、ホエー蛋白質に対して0.01乃至0.03%、望ましくは0.015乃至0.02%、であり、この添加量で混合物を65乃至100℃で1乃至60分間、望ましくは90℃で10分間、加熱し、加熱後の混合物の濁度を420nmにおける吸光度で3.9乃至6.5の範囲に調整される。
【0018】
420nmにおける吸光度を測定する意義は、脱脂粉乳を加工原料として使用する場合、用途別適合性の指標として得られた未変性ホエー蛋白態窒素量から加熱度を求めることによるものであり、Harland-Ashworth法[フード・リサーチ(Food Research )、第12巻、第247頁、1947年]により測定を実施した。
加熱後、速やかに成分を冷却する。冷却温度は、その後、この成分をその他の成分に混合して使用する際に問題が無い温度であればよいが、望ましくは10℃以下である。
【0019】
次に、冷却した前記混合物そのもの又はその他の成分を混合した混合物をミキサー等で攪拌して泡状物を調製し、泡状物を適当な耐熱性容器に充填し、これをオーブンにより120℃乃至250℃で20乃至120分間、望ましくは180℃で30分間、焼成し、外観、食感及び風味の優れた起泡含有焼菓子を得ることができる。
【0020】
以上記載した本発明の方法により、WPIの起泡性について原料に由来する蛋白質含量、pH、塩バランス、脂質含量等の影響を受けずに、かつ簡単な方法により起泡安定性を向上させることができ、これを焼菓子製造に利用することにより外観、食感及び風味の点で優れた焼菓子が得られる。
【0021】
次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。
試験例1
この試験は、WPIの塩バランスの相違による起泡安定性の差を確認するために行った。
【0022】
1)試料の調製
表1に示すとおり塩バランス(Ca及びNa含量)の異なるWPI(ミライ社製。ISOLAC)10種類を使用し、次の配合組成、
砂糖(ホクレン社製) 12.00(%)
WPI 3.00
水 85.00
からなるWPIを含む溶液を調製し、90℃で10分加熱し、10℃に冷却した。
【0023】
2)試験方法
前記溶液200gを卓上型ミキサー(愛工舎製作所社製。KENMIX Chef )により180回転で6分間攪拌し、起泡性(オーバーラン%)及び泡沫安定性(泡の保持時間)を次の基準により評価して試験した。
▲1▼オーバーラン
200%以下 :×
200〜300% :△
300%以上 :○
▲2▼泡沫安定性(泡から溶液が分離を開始するまでの時間)
30分以下 :×
30分〜60分 :△
60分以上 :○
【0024】
3)試験結果
この試験の結果は表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、WPIの塩バランス(Ca及びNa含量)の相違により、その起泡性及び起泡安定性が異なることが確認された。即ち、Ca/Naが0.53以上の試料において起泡性及び起泡安定性が良好であり、Ca/Naが0.53未満の試料において起泡性及び起泡安定性が不良になることが判明した。
尚、WPIの種類を変更して試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0025】
【表1】
【0026】
試験例2
この試験は、試験例1において起泡安定性が不良であったWPIについて、適正な起泡安定性を得るために必要な有機酸添加量を求めるために行った。
1)試料の調製
試験例1の試料5及び試料10について、試験例1の配合に、更にクエン酸(三栄源FFI社製)を表2に示すとおり添加したことを除き、試験例1と同一の方法により試料を調製した。
【0027】
2)試験方法
各試料の部分変性した蛋白質を測定するために、試料の濁度を420nmにおける吸光度を分光光度計(日立社製。U−2000)により測定し、吸光度と起泡安定性との相関について試験した。
【0028】
3)試験結果
この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、次の事実が認められた。
▲1▼試験例1で起泡安定性が不足であったWPIについても、適正量のクエン酸を添加後に加熱することにより、著しく起泡安定性が改良されることが確認された。
▲2▼適正な起泡安定性を得るために必要なクエン酸添加量、及びその時の溶液のpHは、WPIにより必ずしも一致していないことが確認された。
▲3▼一方、良好な起泡安定性が得られた時のWPI及びクエン酸を含む溶液の加熱後の濁度を表わす420nmにおける吸光度は、WPIが異なった場合においても一定範囲の値を示し、その範囲は3.9乃至6.5であることが確認された。
【0029】
即ち、予めWPI及び有機酸を含む溶液の加熱後の濁度を420nmにおける吸光度で測定し、その値が3.9乃至6.5の範囲内の値が得られるように、有機酸の添加量を調整することにより、起泡安定性が不良なWPIにおいても、適正な有機酸量を添加し、加熱することにより、起泡安定性を改良し、良好な起泡安定性を得ることができるのである。
尚、WPIの種類、有機酸の種類及び濃度を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0030】
【表2】
【0031】
試験例3
この試験は、WPIを利用した泡状物を焼菓子製造に使用した場合の外観、食感及び風味を、常法により得られた該焼菓子のそれと比較するために行った。
1)試料の調製
試験例2における試料5のWPIを使用し、次の配合組成、
砂糖(ホクレン社製) 7.50(%)
WPI(ミライ社製) 1.80
クエン酸(三栄源FFI社製) 0.03
小麦粉(日清製粉社製) 10.00
加糖卵黄(キユーピー社製) 27.50
水 53.17
からなる原料を混合し、スポンジケーキを以下のとおり製造した。
砂糖、WPI及びクエン酸を水に混合して溶解し、これをステンレス製容器に入れて90℃で10分間加熱し、10℃に冷却した。この加熱溶液のクエン酸添加量は0.030%であり、試験例2と同一の方法により測定した吸光度は、4.9であった。
【0032】
次に、前記加熱溶液に小麦粉及び加糖卵黄を混合し、この混合物200gを卓上型ミキサー(愛工舎製作所社製。KENMIX Chef )により180回転で8分間攪拌し、オーバーラン150%のスポンジケーキ用の生地を得た。
このスポンジケーキ用生地550gを、市販の焼き型(遠藤商事社製)に充填し、オーブン(九電舎社製)により180℃で30分間焼成し、スポンジケーキを得た(試料1)。
これとは別に比較のために、次の配合組成
砂糖(ホクレン社製) 33.33(%)
全卵(市販品) 33.33
小麦粉(日清製粉社製) 33.33
からなる原料を混合し、常法によりスポンジケーキを製造した(試料2)。
【0033】
2)試験方法
前記試料1及び試料2について、20代から40代の男女各30名からなるパネラーにより外観、食感及び風味について官能的試験を行い、次の評価基準により評価した。
試料1の方がよい
どちらともいえない
試料2の方がよい
【0034】
3)試験結果
この試験の結果は表3に示すとおりであり、表3の数値は評価者の人数である。表3から明らかなとおり、試料1は、常法により製造した試料2と比較して外観、食感及び風味ともほぼ同等の良好な評価が得られた。尚、WPIの種類及び組成を変更して試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0035】
【表3】
【0036】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
実施例1
最初に試験例2と同様の方法により、この実施例において使用するWPIについて、乳酸とともに水に溶解し、溶液の加熱後の濁度を420nmにおける吸光度が3.9乃至6.5の範囲になるように乳酸添加量を求め、配合を決定した。その結果、乳酸添加量0.040%において吸光度は4.2であった。
【0038】
次の配合組成、
砂糖(ホクレン社製) 8.00 (kg)
WPI(ミライ社製) 2.20
乳酸(第一製薬社製) 0.040
クリームチーズ(クラフト社製) 15.00
レモン果汁(東京果汁工業社製) 1.50
加糖卵黄(キユーピー社製) 12.50
小麦粉(日清製粉社製) 10.00
水 50.76
からなる原料を使用し、スフレチーズケーキを以下のとおり製造した。
【0039】
砂糖、WPI及び乳酸を水に混合して溶解し、これをステンレス製容器に入れて90℃で10分間加熱し、のち10℃に冷却した。次いで、この混合物を連続ミキサー(ジェー・エム・シー社製。MO−30)により、900回転でベース流量1:エアー流量2の条件で攪拌し、オーバーラン300%の泡状物を得た。
【0040】
これとは別に、予め湯煎により溶融したクリームチーズ、レモン果汁及び加糖卵黄を泡状物に混合し、更に小麦粉を均一に混合し、最後に前記泡状物をこの混合物に均一に混合し、スフレ用の生地を得た。
220ml容の市販耐熱性容器(吉野工業所社製)に各80gを充填し、オーブン(九電舎社製)に入れ、湯煎焼により230℃で60分間焼成し、スフレチーズケーキ1,200個を得た。
得られたスフレチーズケーキを試験例3と同一の方法により評価した結果、外観、食感及び風味とも良好であった。
【0041】
実施例2
最初に試験例2と同様の方法により、この実施例において使用するWPIについて、クエン酸とともに水に溶解し、溶液の加熱後の濁度を420nmにおける吸光度が3.9乃至6.5の範囲になるようにクエン酸添加量を求め、配合を決定した。その結果、クエン酸添加量0.035%において吸光度は5.2であった。
【0042】
次の配合組成、
砂糖(ホクレン社製) 7.50(kg)
WPI(ミライ社製) 1.80
クエン酸(三栄源FFI社製) 0.035
チョコレート(カレボー社製) 5.00
小麦粉(日清製粉社製) 10.00
加糖卵黄(キューピー社製) 27.50
水 48.165
からなる原料を混合し、チョコレートケーキを以下のとおり製造した。
【0043】
砂糖、WPI及びクエン酸を水に混合して溶解し、これをステンレス製容器に入れ90℃で10分間加熱し、のち10℃に冷却した。次いで、チョコレート、小麦粉及び加糖卵黄を混合し、ミキサー(愛工舎製作所社製。KENMIX Chef )により、180回転で6分間攪拌し、オーバーラン200%のチョコレートケーキ用生地を得た。
【0044】
240ml容の市販耐熱性紙容器(東罐興業社製)に各70gを充填し、オーブン(九電舎社製)に入れ、190℃で20分間焼成し、チョコレートケーキ1,300個を得た。
得られたチョコレートケーキを試験例3と同一の方法により評価した結果、外観、食感及び風味とも良好であった。
【0045】
実施例3
最初に試験例2と同様の方法により、この実施例において使用するWPIについて、リンゴ酸とともに水に溶解し、溶液の加熱後の濁度を420nmにおける吸光度が3.9乃至6.5の範囲になるようにリンゴ酸添加量を求め、配合を決定した。その結果、リンゴ酸添加量0.040%において吸光度は6.3であった。
【0046】
次の配合組成、
砂糖(ホクレン社製) 25.00(kg)
WPI(ミライ社製) 2.20
リンゴ酸(理研化学社製) 0.040
はちみつ(秋田屋社製) 3.00
オレンジ果汁(サンキスト社製) 3.00
小麦粉(日清製粉社製) 10.00
加糖卵黄(キユーピー社製) 20.00
サラダ油(日清製油社製) 5.00
水 31.76
からなる原料を混合し、オレンジカステラを以下のとおり製造した。
【0047】
砂糖の一部、WPI及びリンゴ酸を水に混合して溶解し、これをステンレス製容器に入れて90℃で10分間加熱し、のち10℃に冷却した。次いで、はちみつ、小麦粉及び加糖卵黄を混合し、更に残りの砂糖を混合しながら、ミキサー(愛工舎製作所社製。NAM−50)により、230回転で8分間攪拌し、オーバーラン200%の泡状物を得た。この泡状物に、はちみつ及びサラダ油を混合し、カステラ用生地を得た。
【0048】
240ml容の市販耐熱性紙容器(東罐興業社製)に各85g充填し、オーブン(九電舎社製)に入れ、180℃で20分間焼成し、更に160℃の温度で湯煎焼により40分間焼成し、オレンジカステラ1,000個を得た。
得られたオレンジカステラを試験例3と同一の方法により評価した結果、外観、食感及び風味とも良好であった。
【0049】
【発明の効果】
以上記載したとおり、本発明はホエー蛋白分離物の起泡安定性を改良し、これを有効に焼菓子に利用する方法に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
1)原料の由来に拘わらず、起泡安定性の不足したWPIの起泡安定性を改良できる。
2)起泡安定性が改良されたWPIを使用した泡状物を使用して、外観、食感及び風味に優れたスポンジ類、ケーキ類等の多様な焼菓子を製造することができる。
Claims (4)
- 次のa)〜e)、
a)少なくともホエー蛋白単離物及び有機酸を水に溶解し、加熱し、混合物の濁度を420nmにおける吸光度で3.9乃至6.5に調整する工程、
b)冷却する工程、
c)前記b)工程で得られた混合物又はこれにその他の焼菓子原料を混合し、泡立てる工程、
d)前記c)工程で得られた混合物を耐熱性容器に所定量充填する工程、及びe)混合物を充填した容器をオーブンにより焼成する工程、
の各工程からなる気泡含有焼菓子の製造方法。 - 有機酸が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸及びフマル酸からなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の気泡含有焼菓子の製造方法。
- ホエー蛋白単離物及び有機酸を含有する混合物の加熱が、65乃至100℃で1乃至60分間実施される請求項1又は請求項2のいずれかに記載の気泡含有焼菓子の製造方法。
- 焼成が、120乃至250℃で行われる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気泡含有焼菓子の製造方法。
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